JP5457215B2 - 裏面注入止水工法 - Google Patents

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本発明は裏面注入止水工法に関し、詳しくは、コンクリート構造物の漏水を止水するために、該コンクリート構造物の裏面に止水剤を注入する裏面注入止水工法に関する。
土木、建築構造物からの水漏れや雨漏りは、当該構造物を供用、使用する上で非常な障害となる。特に構造物が鉄筋コンクリート等のコンクリート構造物である場合、該構造物のひび割れ、コールドジョイント、ジャンカ等から漏水を起こすおそれがあり、この漏水が原因で、内部鉄筋の発錆やコンクリートの中性化が進み、構造物そのものの耐久性を著しく低下させる。
このような漏水を防止する対策としては、導水工法、シール工法、充填工法、注入工法が知られている。
導水工法は、漏水は止めないで、樋、ホース埋め込み、溝切り等によって障害の少ない箇所に水を導き、逃す方法である。しかし、この工法では導水管の内部に遊離石灰などが沈着し、閉塞して、短時間で再漏水してしまう。また、鉄筋コンクリートの早期劣化は止められず、一時しのぎにしか過ぎない。
シール工法は、ひび割れや各種目地部を表側からシールすることにより漏水する出口を閉塞する方法である。シール材にはポリマー系、無機質セメント系など各種がある。しかし、漏水の出口を塞ぐと近くの別な個所で漏水が始まる問題がある。また、シール材の耐久性が短く、短時間で再漏水する問題もある。この方法はごく軽微な漏水に対して、短期的な効果はあるが、本格的な止水工法ではない。
充填工法は、漏水経路の空隙を表側からはつり閉塞する方法であり、ひび割れ、目地、打ち継ぎ部、コールドジョイント等の漏水原因と特定できる空隙を閉塞するものである。しかし、この方法は、はつりの作業を伴い、騒音、粉塵、コンクリートガラなど建設廃材が多量に発生し、コストが高いわりには止水効果が不安定である。
注入工法は、漏水経路の空隙に止水剤を注入する方法であり、特定できる漏水経路の空隙に止水剤を注入して、空隙を表側から閉塞するものである。止水剤は、コンクリートに削孔した注入孔から圧入される。空隙は構造物の内部で閉塞するため、この方法は、特定できる限定された箇所の漏水対策としては有効である。しかし、漏水ひび割れが多数、高密度に存在する箇所、コンクリートの組織の空隙から漏水する箇所(ジャンカ、豆板)、漏水経路が特定できない箇所の止水工法としては不向きである。
このため、コンクリート構造物に壁面を貫通する注入孔を形成し、この注入孔から該構造物の裏面に止水剤を注入する裏面注入止水工法が提案されている(特許文献1)。この方法によれば、構造物の裏面に注入された止水剤によって漏水箇所を水の浸入側で遮断するので、止水効果が高く、水による内部鉄筋の発錆やコンクリートの中性化による早期劣化が予防でき、コンクリート構造物の耐久性向上にも貢献できると考えられる。
特開平5−247958号公報
従来、このような裏面注入止水工法として、微粒子のセメントをスラリー状にした止水剤を用いて行う工法(スーパーロック工法)が知られている。止水剤は注入孔からコンクリート構造物の裏面にポンプを用いて注入されることで、コンクリート構造物の裏面に止水膜を形成するものである。
しかしながら、セメントのスラリー状の止水剤は、比重が2.0〜3.0と大きいため、このような止水剤を注入孔からコンクリート構造物の裏面に注入すると、注入孔の出口の周囲では注入圧の影響で僅かに拡散するが、特に縦壁面では、図5に示すように、注入孔10の出口から直ぐに下方に向けて沈降してしまう。このため、注入孔10を中心としてその周囲に広範囲に止水膜を形成することができずに局所的な止水膜20が形成されるだけとなり、縦壁面において漏水ひび割れが多数、高密度に存在する場合あるいは漏水経路が特定できない場合には、有効な止水膜を形成するために極めて多量の止水剤を注入しなくてはならない問題がある。
そこで、本発明は、注入孔からコンクリート構造物の裏面側に注入した止水剤が、縦壁面であっても下方に沈降することなく、注入孔の出口から該裏面に沿うように放射状に拡散させて広範囲に亘る止水膜を形成できるようにすることにより、従来の技術では不完全であった(1)漏水ひび割れが多数、高密度に存在する箇所、(2)コンクリートの組織の空隙から漏水する箇所(ジャンカ、豆板)、(3)漏水経路が特定できない箇所について効率的で且つ確実な止水を行うことができる裏面注入止水工法を提供することを課題とする。
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
(請求項1)
コンクリート構造物の表面から裏面に向かって貫通する注入孔を設ける工程と、
該注入孔に止水剤を注入する工程と、
該コンクリート構造物の裏面と該裏面に接する被覆土壌の間に、前記止水剤を硬化させた止水膜を形成する工程と、を有する裏面注入止水工法において、
前記止水剤を注入する工程に用いる止水剤は、少なくとも水性ポリマー系分散液と硬化促進剤とを含み、該止水剤の比重は、1.03〜1.04であり、
前記止水膜を形成する工程が、前記コンクリート構造物の縦壁の裏面に、前記注入孔の出口を中心として該裏面に沿うように放射状に拡散すると共に、下方拡散領域の面積よりも上方拡散領域の面積が大きくなるように拡散して硬化させることを特徴とする裏面注入止水工法。
本発明によれば、注入孔からコンクリート構造物の裏面側に注入した止水剤の比重が、1.03〜1.04であり、水と差異がない程度であるので、注入孔の出口から該裏面に沿うように放射状に拡散・硬化させて、また縦壁に対しては、放射状の拡散のみならず、下方拡散領域の面積よりも上方拡散領域の面積が大きくなるように拡散・硬化させて、広範囲に亘る止水膜を形成できる。その結果、従来の技術では不完全であった(1)漏水ひび割れが多数、高密度に存在する箇所、(2)コンクリートの組織の空隙から漏水する箇所(ジャンカ、豆板)、(3)漏水経路が特定できない箇所について効率的で且つ確実な止水を行うことができる。
比重1.03〜1.04の止水剤を用いた注入、拡散確認試験の様子を示す写真 比重1.03〜1.04の止水剤を用いた注入、拡散確認試験の様子を示す写真 比重1.03〜1.04の止水剤を用いた注入、拡散確認試験の様子を示す写真 本発明に係る裏面注入止水工法をトンネルの漏水対策として適用する例を示す断面図 従来のセメントのスラリー状の止水剤を注入孔からコンクリート構造物の裏面に注入した様子を示す図
本発明の第1の工程は、コンクリート構造物の表面から裏面に向かって貫通する注入孔を設ける工程である。
本発明におけるコンクリート構造物とは、一般には型枠内にコンクリートを流し込んで構築された構造物であり、代表的には鉄筋コンクリート、プレキャストコンクリート、ALC(軽量気泡コンクリート)等が挙げられるが、石造、レンガ積み造の構造物であってもよい。
このようなコンクリート構造物の具体例としては、トンネル(共同溝を含む)、用水路、各種水槽の他、ビル、マンション、住宅の地下室やエレベータ、地下駐車場等の地下ピットがある。
コンクリート構造物の裏面は、水を含む土壌、SMW(Soil Mixing Wall)、シートパイル等の被覆物と接している。水を含む土壌と表現しているのは、以下の理由による。たとえばトンネルのような場合には、水圧が該裏面にかかっていることが普通であり、該裏面は被覆土壌によって均一に被覆されている訳ではない。水が該裏面に直接接している部位や、被覆土壌が接している部位が混在している。このため、コンクリート構造物の裏面を被覆している対象を、「水を含む土壌」と表現している。
本発明では、コンクリート構造物の裏面からの漏水対策として本発明を適用することができ、縦壁に対しても本発明は良好な止水効果を発揮する。
注入孔の形成方法は、構造物の厚みに影響され、たとえば、1000mm以下ならば、ドリルなどで10mmφ程度の注入孔を形成する。それより厚くなれば、コアマシン、削岩機などを用い、10mmφを越える注入孔を形成する。
本発明では、注入孔の数を、従来法と比較して、少なくできる効果がある。後述する止水剤の拡散範囲が広く、しかも上方に多く拡散するために、1つの孔の止水範囲のエリアが大きいからである。
第2の工程は、第1の工程で形成された注入孔に止水剤を注入する工程であり、第3の工程は、コンクリート構造物の裏面と該裏面に接する被覆土壌の間に、前記止水剤を硬化させた止水膜を形成する工程である。
本発明において、止水剤は、少なくとも水性ポリマー系分散液と硬化促進剤とを含み、該止水剤の比重は、1.03〜1.04である。
本発明の止水剤には、水性ポリマー系分散液と硬化促進剤以外に、希釈水などを含むことができる。
本発明において止水剤の比重は、比重計によって測定でき、たとえば1リットルのメスシリンダーに投入後、浮標によって計測できる。
本発明では、止水剤の比重が重要であり、比重が水に極めて近いため、コンクリート構造物の裏面に注入されると(裏面には漏水の元となる水が存在している)、注入箇所が縦壁面の場合であっても、注入孔の出口を中心として、その多くが裏面に沿うように上方に向かって放射状に拡散していく。
注入された止水剤は、やがて時間の経過とともに注入孔の出口を中心として周囲に広範囲に広がっていく。
本発明の裏面注入止水工法は 縦壁の裏面のみならず、当然ながら天井面、床面の裏面にも適用できる。
止水剤は横壁(たとえば天井や床など)の裏面に注入されれば、比重が 1.03〜1.04のため、水中に浮遊したりすることはなく、また裏面に沿って放射状に拡散する。
また止水剤が縦壁の裏面に注入されれば、下方に沈降したりすることはなく、逆に放射状に拡散することはもとより、下方拡散領域の面積よりも上方拡散領域の面積が大きくなるように拡散する。ここで、下方拡散領域というのは、注入孔を基準とする水平線よりも下方の領域であり、上方拡散領域は、注入孔を基準とする水平線よりも上方の領域である。
本発明では、注入された止水剤が、コンクリート構造物の裏面に沿って放射状の広範囲に拡散し、所定の時間経過後に硬化して、止水膜を形成することが可能となる。
このため、従来の技術では不完全であった漏水ひび割れが多数、高密度に存在する箇所、コンクリートの組織の空隙から漏水する箇所(ジャンカ、豆板)、漏水経路が特定できない箇所についても効率的で且つ確実な止水を達成することができる。
本発明に用いられる水性ポリマー系分散液は、例えば、高分子物質として 石油アスファルト(ストレート、ブローン)、熱可塑性樹脂(ブタジエン樹脂、エチレン酢酸ビニル、石油樹脂)の単体あるいは2種類以上を組み合わせたものに、ポバールの水溶液を混合して連続的に分散させ、製造されるもので、上記1.03〜1.04の比重範囲を満足するものが挙げられる。また本発明では、上記比重特性を満足する範囲内で、上記の水性ポリマー系分散液に、合成ゴムラテックス及び又はアクリル系ポリマーデイスパージョンを混合して得られるものを使用することもできる。
水性ポリマー系分散液には、微粉末にした固体(例えば、シリカなどの無機系物質、エポキシ、ポリエステルなどのような熱硬化性樹脂、及び高軟化点の熱可塑性樹脂など)を混合して使用することができる。
ポバールの水溶液としては、上記比重の条件を満たし、コンクリート構造物の裏面に注入された際に、縦壁面であっても上方に向けて拡散できるようにする点で、重合度が300〜3,000、好ましくは500〜2,000、鹸化度が70〜98、好ましくは80〜90の部分鹸化ポバールの水溶液であることが好ましい。ポバールの濃度は、作業性や高濃度の分散液を製造する観点から10重量%程度が好ましく、この程度の濃度であれば数分で製造でき、製造時間の短縮上好ましい。
ポバール水溶液の添加量は、粘度適正や注入後の拡散性、耐水性等を考慮し、高分子物質からなる原料に対して0.5〜10%(高分子物質からなる原料及びポバールを固形分として)が好ましく、より好ましくは1〜3%である。
また、乳化剤としてポバールの水溶液を使用するだけでエマルジョンは製造できるが、エマルジョンの粒子径をより小さく均質化するために界面活性剤を併用することが好ましい。界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれのものも用いることができる。界面活性剤の添加量は種類にもよるが、高分子物質からなる原料に対して、0.01〜5%(高分子物質からなる原料及び界面活性剤を固形分として)が好ましい。
界面活性剤を使用する場合、アニオン系とノニオン系を組み合わせて使用することが好ましく、好ましい添加量としてはアニオン系2%、ノニオン系0.3%になるように配合することである。
高分子物質とポバール水溶液を混合する設備としては、格別限定されず、各種混練機やミル等を使用することができる。
本発明に用いられる止水剤は、粒子径が0.4〜0.6μmであることが好ましい。コンクリート構造物の縦壁面の裏面に注入された場合でも上方に向かってより良好に拡散させることができるようにするためである。
粒子径が細かいことで、コンクリート構造物の裏面にある微細な漏水経路の空隙に逆流、浸透し易く、また、漏水箇所内部においてコンクリートとも良好に密着して漏水経路をより効率良く且つ確実に遮断することができる効果が得られる。
なお、セメントのスラリー状の止水剤は、粒子径が3.0μm以上と大きいため、コンクリート構造物の裏面に存在する水との拡散性も良くなく、漏水経路に浸透しにくく、コンクリート構造物との付着力も小さい。しかも、止水膜が固く、脆いため、構造物の動きに追随できない問題がある。
本発明において、水性ポリマー系分散液の硬化促進剤としてイソシアネートプレポリマーを、水性ポリマー系分散液に対して3〜5重量%添加混合する方法が望ましい。この方法では、比重特性が満足し、粒子径も0.4〜0.6μmの範囲に収まる。
硬化時間は、裏面の温度の影響を受け、硬化促進剤を5%添加すると、水中でも5℃ならば、24時間、30℃ならば4時間で硬化し、止水膜を形成する。
なお、硬化促進剤として、上記の他に、セメントスラリーを5〜10重量%添加混合する手法もある。この方法では、比重が大きくなり、拡散性が低下し、更に粒子径も粗くなって、微細な空隙を充填、閉塞できない。更に硬化時間も、20℃でも24時間を必要とし、実用的ではない。
本発明では、止水剤の比重が水に近いため、縦壁面であっても下方に沈降することなく広範囲に亘って薄く拡散して止水膜を形成することができるので、使用量を抑えることができる。一つの注入孔における止水範囲が大きいからである。本発明では、1注入孔あたりの注入量は6〜10kg/mとすることが好ましく、従来のセメントスラリー状の止水剤を用いた場合(スーパーロック工法)の使用量(15〜20kg/m)に比べて半分で済む。
また、本発明では、コンクリート構造物からの漏水の量及び漏水の吐出圧が異常に大きい場合には、注入した止水剤が短時間に押し出されるおそれがあるため、水と超短時間で反応し発泡するウレタン樹脂などを事前に注入し、水の吐出量を低減したり、あるいは、当該止水剤を注入した直後に発泡ウレタン樹脂を注入して硬化時間を著しく短縮し、止水剤が押し出されるのを抑制することができる。
以下、実施例により、本発明を更に詳述する。
実施例1
<水性ポリマー系分散液の物性>
1.比重
本発明に用いる止水剤である水性ポリマー系分散液をして、三生化工社製「アルファー・ゾルG」を用いる。この水性ポリマー系分散液について、比重計を用いて、比重を測定した。その結果を表1に示す。
硬化剤5%添加した水性ポリマー系分散液の比重測定
「アルファー・ゾルG」1kgに対して、50gの硬化剤と、50gの水を添加して、電動攪拌機にて60秒攪拌し、1Lのメスシリンダーに全量投入後、比重計で比重を測定した。その結果を表1に示す。
比較品である市販の止水剤「ビトグラウト」(ナルライトとも称する)について、「ビトグラウト」単独の比重、上記(2)と同様な硬化剤5%添加した「ビトグラウト」の比重を測定し、その結果を表1に示す。
以上の表1より、アルファー・ゾルGのみ、及び硬化剤添加アルファー・ゾルGは、いずれも本発明の比重範囲1.03〜1.04を満足する。
これに対して、市販品ビトグラウトのみ、及び硬化剤添加ビトグラウトは、本発明の比重範囲を満足せず、本発明の止水剤としては使用できない。
2.pH
アルファー・ゾルG:pH7.0〜7.5
ビトグラウト:pH4.7〜5.7
止水剤には、硬化促進剤を含むが、この硬化促進剤は中和作用があり、ビトグラウトに多く加えれば中和できる。しかし添加量が少なかったり、ばらつくと酸性になり、コンクリートの裏面やひび割れ入り込むと、コンクリートの早期劣化を招く欠点があるので、本発明では使用できない。
これに対して、本発明に用いるアルファー・ゾルGは、pH7.0〜7.5であり、上記の問題がない点で優れている。
実施例2
図1〜図3は、かかる比重1.03〜1.04の水性ポリマー系分散液を用いた注入、拡散確認試験の様子を示している。
試験装置は、コンクリート製U字溝の側面に、縦壁面として透明のアクリル板(厚10mm)をハラミのないように金属棒で固定して構成した。この試験装置の内部に、締め固めた土砂を充填し、土砂全体が湿潤状態になるまで水を浸した。アクリル板の下部中央には注入孔をドリルで貫通形成し、この注入孔にプラグを取り付けて高圧注入ポンプを用いて水性ポリマー系分散液(三生化工社製「アルファー・ゾルG」、比重1.03)を注入した(注入量:10kg/m)。
アクリル板には、拡散具合の確認のため、注入孔を中心とする10cm間隔の同心円状の目盛が付されている(図1)。
注入孔の出口からアクリル板の裏面と土砂との間に浸透した注入直後の止水剤(図中白色で示される。)は、下方に沈降することなく、その多くがアクリル板の裏面に沿うように上方に向けて放射状に拡散した(図2)。
その後、所定量の止水剤を注入し終えると、止水剤は注入孔の出口を中心として、その周囲に放射状に拡散し、アクリル板の裏面に沿うように広範囲に亘って止水膜を形成した(図3)。
このように比重1.03〜1.04の水性ポリマー系分散液からなる止水剤を用いることにより、縦壁面であっても注入孔の出口を中心としてその上方に向かって放射状に拡散させることができ、止水膜が局所的にならず広範囲に亘る止水膜を形成できることがわかる。
実施例3
本発明に係る裏面注入止水工法の具体的な適用例を図4に示す。図4は本発明に係る裏面注入止水工法をトンネルの漏水対策として適用する例を示しており、トンネル壁面の裏面に止水剤を注入する場合の断面図を示している。図中、1はトンネル、2はコンクリート構造物であるトンネル壁面、3はトンネル壁面2の裏面(トンネル1の反対面)に接する土であり、トンネル壁面2の裏面との間には水が存在している空隙4を有する箇所もある。
注入孔5は、トンネル壁面2を完全に貫通する直径10mm程度の貫通孔を、トンネル壁面2に1000mmピッチで形成した。この注入孔5にプラグ(図示せず)を装着し、高圧注入ポンプで上述した止水剤を注入すると、止水剤はトンネル壁面2の裏面の空隙4内の水に注入される。この空隙4内の水にはトンネル壁面2に均等に圧がかかっているため、止水剤はトンネル壁面2に沿って放射状に拡散し、また、縦壁面の裏面においても下方に沈降することなく、トンネル壁面2の裏面の広範囲に亘って所定厚の止水膜6を形成することができ、効率的で且つ確実な止水を行うことができる。
1:トンネル
2:トンネル壁面
3:土
4:空隙
5:注入孔
6:止水膜

Claims (1)

  1. コンクリート構造物の表面から裏面に向かって貫通する注入孔を設ける工程と、
    該注入孔に止水剤を注入する工程と、
    該コンクリート構造物の裏面と該裏面に接する被覆土壌の間に、前記止水剤を硬化させた止水膜を形成する工程と、を有する裏面注入止水工法において、
    前記止水剤を注入する工程に用いる止水剤は、少なくとも水性ポリマー系分散液と硬化促進剤とを含み、該止水剤の比重は、1.03〜1.04であり、
    前記止水膜を形成する工程が、前記コンクリート構造物の縦壁の裏面に、前記注入孔の出口を中心として該裏面に沿うように放射状に拡散すると共に、下方拡散領域の面積よりも上方拡散領域の面積が大きくなるように拡散して硬化させることを特徴とする裏面注入止水工法。
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