JP5457159B2 - 新規セスキテルペン合成酵素遺伝子及びそれを利用したセスキテルペンの製造方法 - Google Patents
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Description
即ち、本発明は、以下の〔1〕〜〔6〕を提供する。
〔1〕以下の(a)、(b)、(c)、又は(d)に示す遺伝子、
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつファルネシル二リン酸をβ-ビサボレンに変換する活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子、
(c)配列番号3記載の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、
(d)配列番号3記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつファルネシル二リン酸をβ-ビサボレンに変換する活性を有するポリペプチドをコードするDNAからなる遺伝子。
〔2〕以下の(e)、(f)、(g)、又は(h)に示す遺伝子、
(e)配列番号10記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子、
(f)配列番号10記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつファルネシル二リン酸をγ-アモルフェンに変換する活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子、
(g)配列番号9記載の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、
(h)配列番号9記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつファルネシル二リン酸をγ-アモルフェンに変換する活性を有するポリペプチドをコードするDNAからなる遺伝子。
〔3〕〔1〕又は〔2〕に記載の遺伝子を導入し、発現させた組換え大腸菌。
〔4〕〔1〕又は〔2〕に記載の遺伝子に加えて、以下の(1)〜(2)の遺伝子を導入し発現させた組換え大腸菌、
(1)メバロン酸又はメバロノラクトンからイソペンテニル二リン酸までの合成を行うメバロン酸経路遺伝子群、
(2)イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ遺伝子。
〔5〕メバロン酸又はメバロノラクトンからイソペンテニル二リン酸までの合成を行うメバロン酸経路遺伝子群及びイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ遺伝子が、ストレプトミセス属CL190株由来の遺伝子群である〔4〕に記載の組換え大腸菌。
〔6〕〔3〕乃至〔5〕のいずれかに記載の組換え大腸菌を、メバロン酸又はメバロノラクトンを含む培地で培養して培養物又は菌体からβ-ビサボレン又はγ-アモルフェンを得ることを特徴とする、セスキテルペンの製造方法。
培地中に添加されたD-メバロノラクトン(D-mevalonolactone;MVL;自然にD-メバロン酸に変換される)を利用するためには、それを基質とするメバロン酸キナーゼから始まる4つのメバロン酸経路遺伝子、すなわち、メバロン酸キナーゼ(mevalonate kinase;MVA kinase)、ホスホメバロン酸キナーゼ(phosphomevalonate kinase; PMVA kinase)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(diphosphomevalonate decarboxylase;DPMVA decarboxylase)とIPPイソメラーゼ(Idi;IPP isomerase)が必要である。Idiには互いに構造が異なる、1型(type 1)と2型(type 2)のものが存在している。どちらのIdiを用いてもよいが、発明者らは実施例では2型のIdiを用いた。その理由は、発明者らが実施例で用いたストレプトミセス(Streptomyces)属CL190株由来のメバロン酸経路遺伝子群(非特許文献4;Accession no AB037666)では、MVA kinase、DPMVA decarboxylase、PMVA kinase、2型IPP isomerase遺伝子がこの順番で遺伝子群を形成していたので、この遺伝子群をそのままの形で用いる方がプラスミドの作製が容易であったからである。上記4遺伝子群の発現用プラスミドの一例が、発明者らが実施例で用いたpAC-Mev(大腸菌ベクターpACYC184を使用;クロラムフェニコール(Cm)耐性;非特許文献6)である。また、メバロン酸経路遺伝子群のソースであるが、発明者らは実施例ではストレプトミセス属CL190株由来のものを用いたが、酵母や他の細菌由来の相当遺伝子群を用いても問題ないことは言うまでもない(そのような例は非特許文献7に示されている)。また、発明者らは実施例では示していないが、2型idi遺伝子に加えて1型のidi遺伝子をさらに加えると、組換え大腸菌内でFPPの生産量が若干増量されることが分かっている(非特許文献6)。
セスキテルペンは植物や微生物等(植物が主体)からすでに7,000種以上が単離され、化学構造がわかっているが、まだ、多くのセスキテルペン合成酵素(シンターゼ)遺伝子が未知である(非特許文献7)。触媒機能が明らかになっている植物等のセスキテルペン合成酵素(及びそれをコードする遺伝子)の例は非特許文献7にまとめられているので、それを参照されたいが、1例を挙げると、アメリカオオモミ(ベイモミ;grand fir)から単離されたδ-セリネン合成酵素やγ-フムレン合成酵素遺伝子(C. L. Steele, J. Crock, J. Bohlmann, R. Croteau, Sesquiterpene synthases from grand fir (Abies grandis). Comparison of constitutive and wound-induced activities, and cDNA isolation, characterization, and bacterial expression of δ-selinene synthase and γ-humulene synthase. J. Biol. Chem. 273:2078-2089, 1998)がある。
2で作製した、セスキテルペン合成酵素遺伝子候補の全長cDNA断片を大腸菌ベクターpETDuet-1(Novagen社製)に挿入したプラスミド(一例がpET-Zo506FL3及びpET-Zo501FL2;Ap耐性)の各々について、1で作製したプラスミドpAC-Mev(Cm耐性)と共に大腸菌BL21(DE3)に導入し、ApとCmの2つに薬剤に対して耐性の組換え大腸菌を作製した。得られた組換え大腸菌を、D-メバロノラクトン(MVL;濃度の1例は0.5 mg/mL)を培地に加えて培養を行った。その際、大腸菌に導入されたセスキテルペン合成酵素遺伝子候補のcDNA断片が実際にセスキテルペン合成酵素を合成できる場合は、その合成酵素の働きにより、組換え大腸菌はセスキテルペンを生産するようになる。発明者らは、プラスミドpET-Zo506FL3を有する組換え大腸菌がβ-ビサボレンを合成すること、すなわちそのプラスミドに挿入されたcDNA(ZoTps1遺伝子と命名;この塩基配列は配列番号4に示されている)がβ-ビサボレン合成酵素(ZoTPS1;このアミノ酸配列は配列番号3に示されている)を合成する(コードする)こと、及びプラスミドpET-Zo501FL2を有する組換え大腸菌がγ-アモルフェンを合成すること、すなわちそのプラスミドに挿入されたcDNA(ZoTps5遺伝子と命名;この塩基配列は配列番号10に示されている)がγ-アモルフェン合成酵素(ZoTPS5;このアミノ酸配列は配列番号9に示されている)を合成すること(コードすること)を見出し、本発明を完成するに至った。
発明者らは大腸菌B株のBL21(DE3)を用いたが、大腸菌の株には、大腸菌K12株のJM109(DE3)など種々の株が存在するので、大腸菌の株としてBL21(DE3)に限定されるものでない。また、組換え大腸菌の培養培地として、発明者らはLB培地を利用したが、大腸菌の培養培地としては、2x YT培地、TB培地等多くの培地が存在するので、LB培地に限定されるものでない。また、発明者らが用いている遺伝子組換え実験方法としては、実施例で示されているメーカーによる実施マニュアル以外に、多くの手引書が存在している。たとえば、Sambrook and Russel, Molecular Cloning A Laboratory Manual (Third edition) Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001が例示できる。本手引書は包括的であり、通常の遺伝子組換え実験方法以外に、大腸菌株の種類、ベクターの種類、培養法等が示されているので、参考にして実験を行うことができる。
本発明のβ-ビサボレン合成酵素遺伝子は、(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子、(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつファルネシル二リン酸をβ-ビサボレンに変換する活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子、(c)配列番号3記載の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、(d)配列番号3記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつファルネシル二リン酸をβ-ビサボレンに変換する活性を有するポリペプチドをコードするDNAからなる遺伝子を含む。
本発明のγ−アモルフェン合成酵素遺伝子は、(e)配列番号10記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子、(f)配列番号10記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつファルネシル二リン酸をγ−アモルフェンに変換する活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子、(g)配列番号9記載の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、(h)配列番号9記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつファルネシル二リン酸をγ−アモルフェンに変換する活性を有するポリペプチドをコードするDNAからなる遺伝子を含む。
本発明の組換え大腸菌は、上記β−ビサボレン合成酵素遺伝子又は上記γ−アモルフェン合成酵素遺伝子を導入し、発現させたものである。
イソペンテニル二リン酸までの合成を行うメバロン酸経路遺伝子群としては、前述したストレプトミセス属CL190株由来のメバロン酸経路遺伝子群(非特許文献4)を用いることができるが、これ以外にも出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のメバロン酸経路遺伝子群(V. J. J. Martin, D. J. Pitera, S. T. Withers, J. D. Newman, J. D. Keasling, Nature Biotechonosy, 21: 796-802, 2003)、細菌ストレプトコッカス・プノイモニエ(Streptococcus pneumoniae)由来のメバロン酸経路遺伝子群(S. H. Yoon, Y. M. Lee, J. E. Kim, S. H. Lee, J. H. Lee, J. Y. Kim, K. H. Jung, Y. C. Shin, J. D. Keasling, S. W. Kim, Biotechnology & Bioengineering, 94: 1025-1032, 2006)なども用いることができる。
イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ遺伝子としては、前述したストレプトミセス属CL190株由来のイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ遺伝子(非特許文献4)を用いることができるが、これ以外にも大腸菌由来のイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ遺伝子(V. J. J. Martin, D. J. Pitera, S. T. Withers, J. D. Newman, J. D. Keasling, Nature Biotechonosy, 21: 796-802, 2003)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ遺伝子(S. Kajiwara, P. D. Fraser, K. Kondo, N. Misawa, Biochemical Journal, 324: 421-426, 1997)、緑藻ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)由来のイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ遺伝子(前述のJ. J. Martinらの文献、及び前述のS. Kajiwaraらの文献)なども用いることができる。
本発明のセスキテルペンの製造方法は、上記組換え大腸菌を、メバロン酸又はメバロノラクトンを含む培地で培養して培養物又は菌体からβ−ビサボレン又はγ−アモルフェンを得ることを特徴とするものである。
金時ショウガ(Zingiber officinale Roscoe, Kintoki cultivar)の幼根茎(図1)から、RNeasy Plant Mini Kit(Qiagen社製)を用いて全RNAを抽出した。Reverse Transcription Reagent (Takara Bio社製) を用いて、製造元の指示に従いオリゴdTプライミングにより、全RNA 0.5 μgをcDNAに逆転写した。非特許文献3に記された高等植物のセスキテルペンシンターゼの保存ドメインの配列に基づく縮重オリゴヌクレオチドプライマー対(フォワード:5’-TTYCGAYTIYTIMGRMARCAIGG-3’(配列番号17)及びリバース:5’-TAIGHRTCAWAIRTRTCRTC-3’(配列番号18))を用いて、非特許文献3にある通りの条件でcDNAを鋳型としたPCRを行い、590 bpの増幅断片を得た。得られた増幅断片をpGEM-T Easy Vector System(Promega社製)を用いてクローン化し塩基配列を決定した。全長cDNAを単離するために、Smart RACE cDNA Amplification Kit(BD社製)、オリゴヌクレオチドプライマー対(506FLフォワード:5’-TGAAGTCCAACTTTGCAAGCTC-3’(配列番号1)及び506FLリバース:5’-GAAACGGCTTTTCACAAGATGC-3’(配列番号2))及びAdvantage2 Polymerase Mix(Clontech社製)を用いて、製造元の指示に従い断片を5’末端および3’末端に向かって伸長させ、全長cDNA配列を決定した。これらのcDNAのヌクレオチド配列を配列番号3に、該cDNAによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号4に示す。また、配列番号3により特定されるcDNAをZoTps1と命名し、ZoTps1がコードする配列番号4により特定されるタンパク質をZoTPS1と命名した。
ZoTps1に特異的なオリゴヌクレオチドプライマー対506-F(5’-AGACAGACATATGGAACTTGTTGATACTCC-3’(配列番号5)、下線はNdeI認識部位を示す)及び506-R(5’-GAGGTACGGTACCTCAAATAGGGATAGGATGAAC-3’ (配列番号6)、下線はKpnI認識部位を示す)及びAdvantage2 Polymerase Mix(Clontech社製)を用いて、金時ショウガcDNAを鋳型としたPCR(反応組成:製造元の指示に従った;反応条件:変性94℃で2分間、次に、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で4分間を5サイクル、次いで94℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で4分間を25サイクル)を行い、全長ZoTps1配列を含むcDNAを増幅した。得られたcDNAはプラスミドpGEM-T Easy Vector System(Promega社製)によりクローン化し、pGEMT-Zo506FL3を作製した。このプラスミドDNAを制限酵素NdeI-KpnIで消化し、得られた全長ZoTps1配列をpETDuet-1プラスミド(Novagen社製)のマルチクローニングサイト2(MCS2)のNdeI-KpnI部位に連結して、pET-Zo506FL3プラスミドを作製した(図3)。
プラスミドpET-Zo506FL3及びプラスミドpAC-Mev(非特許文献6)を用いた大腸菌の形質転換法、組換え大腸菌の培養法、培養した大腸菌の菌体からのβ-ビサボレン(β-bisabolene)の抽出、同定法は非特許文献2、3、6の通りである。ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いた分析の結果、ZoTps1を含まないプラスミドpET21a及びプラスミドpAC-Mevを保持する対照大腸菌株では、菌体からのドデカン抽出液中にいずれのセスキテルペンの生成も確認されなかったのに対し、ZoTps1を含むプラスミドpET-Zo506FL3及びプラスミドpAC-Mevを保持する大腸菌株では、菌体からのドデカン抽出液中に新規なピークが見られた。マススペクトルの比較により、このピーク1はβ-ビサボレンであると同定された(図4)。この結果から、ZoTps1がβ-ビサボレンシンターゼ(β-bisabolene synthase)をコードする遺伝子であることが判明した。β-ビサボレンの化学構造は図5に示されている。
図1に示す金時ショウガの各器官(葉、幼根茎、成熟根茎及び根)から上述のように全RNAを抽出してcDNAを調製した。ZoTps1に特異的なオリゴヌクレオチドプライマー対(5’-ATGGTTCGCAAGCTTTCCTAAG-3’(配列番号7)及び 5’-ATTCGGTAGATCGCGAAGAGTG-3’ (配列番号8))を用いて、各器官それぞれのcDNAを鋳型としたPCR(反応液組成:全量20μl中にcDNA調製液2 μl、0.3 μM 各プライマー、200 μM 各dNTP、および0.5 U GoTaq DNAポリメラーゼ(Promega社製)を含む;反応条件:変性96℃で5分間、次に、96℃で1分間、58℃で1分間、72℃で1分間を30サイクル、最後に72℃で1分間伸長)を行い、各器官におけるZoTps1の発現様式を調べた。その結果、ZoTps1は幼根茎でのみ転写産物の増幅が確認され、幼根茎に特異的に発現していることが判明した(図6)。
実施例1で示した方法と同じ方法で、金時ショウガ(Z. officinale Roscoe, Kintoki cultivar)の幼根茎(図1)から全RNAを抽出し、cDNAに逆転写した。非特許文献3に記された高等植物のセスキテルペンシンターゼの保存ドメインの配列に基づく縮重オリゴヌクレオチドプライマー対(フォワード:5’-TTYCGAYTIYTIMGRMARCAIGG-3’(配列番号17)及びリバース:5’-TAIGHRTCAWAIRTRTCRTC-3’(配列番号18))を用いて、非特許文献3にある通りの条件でcDNAを鋳型としたPCRを行い、590 bpの増幅断片を得た。得られた増幅断片をpGEM-T Easy Vector System(Promega社製)を用いてクローン化し塩基配列を決定した。全長cDNAを単離するために、Smart RACE cDNA Amplification Kit(BD社製)、オリゴヌクレオチドプライマー対(ZoZSS-5race, 5’-TGAAGTCCAACTTTGCAAGCTC-3’(5’-RACE用;配列番号11)及びZSS5-01-5F, 5’-GACAAACCTCTTGATCACTACTTCCTAAG-3’( 3’-RACE用;配列番号12)及びAdvantage2 Polymerase Mix(Clontech社製)を用いて、製造元の指示に従い断片を5’末端および3’末端に向かって伸長させ、全長cDNA配列を決定した。これらのcDNAのヌクレオチド配列を配列番号9に、該cDNAによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号10に示す。また、配列番号9により特定されるcDNAをZoTps5と命名し、ZoTps5がコードする配列番号10により特定されるタンパク質をZoTPS5と命名した。
ZoTps5に特異的なオリゴヌクレオチドプライマー対501-F(5’-AGACAGACATATGGAGAAGCAATCAACCAC-3’(配列番号13)、下線はNdeI認識部位を示す)及び501-R(5’-GAGGTACGGTACCTTAAATAAGAACAGATTCAACC-3’(配列番号14)、下線はKpnI認識部位を示す)及びAdvantage2 Polymerase Mix(Clontech社製)を用いて、金時ショウガcDNAを鋳型としたPCR(反応組成:製造元の指示に従った;反応条件:変性94℃で2分間、次に、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で4分間を5サイクル、次いで94℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で4分間を25サイクル)を行い、全長ZoTps5配列を含むcDNAを増幅した。得られたcDNAはプラスミドpGEM-T Easy Vector System(Promega社製)によりクローン化し、pGEMT-Zo506FL3を作製した。このプラスミドDNAを制限酵素NdeI-KpnIで消化し、得られた全長ZoTps5配列をpETDuet-1プラスミド(Novagen社製)のマルチクローニングサイト2(MCS2)のNdeI-KpnI部位に連結して、pET-Zo501FL2プラスミドを作製した。
プラスミドpET-Zo501FL2及びプラスミドpAC-Mevを持つ大腸菌によるγ-アモルフェン生産
プラスミドpET-Zo501FL2及びプラスミドpAC-Mev(非特許文献6)を用いた大腸菌の形質転換法、組換え大腸菌の培養法、培養した大腸菌の菌体からのγ-アモルフェン(γ-amorphene)の抽出法は非特許文献2、3、6の通りである。ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いた分析の結果、ZoTps5を含まないプラスミドpET21a及びプラスミドpAC-Mevを保持する対照大腸菌株では、菌体からのドデカン抽出液中にいずれのセスキテルペンの生成も確認されなかったのに対し、ZoTps5を含むプラスミドpET-Zo501FL2及びプラスミドpAC-Mevを保持する大腸菌株では、菌体からのドデカン抽出液中に新規なピークが見られた。この新規なピーク2を与える炭化水素は、ジクロロメタン中1 mMのp-トルエンスルホン酸一水和物の存在下、2時間の反応で、ピーク3及びピーク4の異性化産物を生成した。マススペクトルの比較により、これらのピークはそれぞれα-アモルフェン及びδ-アモルフェンと同定されたことから、ピーク2はγ-アモルフェンであると同定された(図8、非特許文献:N. Bulow, W. A. Konig, Phytochemistry 55: 141-168, 2000、W. N. Setzer, Int. J. Mol. Sci. 9: 89-97, 2008及びA. M. Adio, Tetrahedron 65: 1533-1552, 2009)。これらの結果から、ZoTps5がγ-アモルフェンシンターゼ(γ-amorphene synthase)をコードする遺伝子であることが判明した。γ-アモルフェンの化学構造は図5に示されている。以上の結果より、プラスミドpET-Zo501FL2及びプラスミドpAC-Mevを導入した大腸菌を用いて、γ-アモルフェンの生産が可能であることが示された。
図1に示す金時ショウガの各器官(葉、幼根茎、成熟根茎及び根)から上述のように全RNAを抽出してcDNAを調製した。ZoTps5に特異的なオリゴヌクレオチドプライマー対(5’-CAGCTTCCCCAAATCATCAAAG-3’(配列番号15)及び5’-GATCGAGGCATTCTTTGTTGTG-3’(配列番号16))を用いて、各器官それぞれのcDNAを鋳型としたPCR(反応液組成:全量20μl中にcDNA調製液2 μl、0.3 μM 各プライマー、200 μM 各dNTP、および0.5 U GoTaq DNAポリメラーゼ(Promega社製)を含む;反応条件:変性96℃で5分間、次に、96℃で1分間、58℃で1分間、72℃で1分間を30サイクル、最後に72℃で1分間伸長)を行い、各器官におけるZoTps5の発現様式を調べた。その結果、ZoTps5は幼根茎で強い転写産物の増幅が確認され、根で弱い増幅が確認された。葉及び成熟根茎では発現は認められなかった(図9)。
Claims (6)
- 以下の(a)、(b)、又は(c)に示す遺伝子、
(a)配列番号4記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子、
(b)配列番号4記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつファルネシル二リン酸をβ-ビサボレンに変換する活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子、
(c)配列番号3記載の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子。 - 以下の(e)、(f)、又は(g)に示す遺伝子、
(e)配列番号10記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子、
(f)配列番号10記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつファルネシル二リン酸をγ-アモルフェンに変換する活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子、
(g)配列番号9記載の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子。 - 請求項1又は請求項2に記載の遺伝子を導入し、発現させた組換え大腸菌。
- 請求項1又は請求項2に記載の遺伝子に加えて、以下の(1)及び(2)の遺伝子を導入し発現させた組換え大腸菌、
(1)メバロン酸又はメバロノラクトンからイソペンテニル二リン酸までの合成を行うメバロン酸経路遺伝子群、
(2)イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ遺伝子。 - メバロン酸又はメバロノラクトンからイソペンテニル二リン酸までの合成を行うメバロン酸経路遺伝子群及びイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ遺伝子が、ストレプトミセス属CL190株由来の遺伝子群である請求項4に記載の組換え大腸菌。
- 請求項3乃至5のいずれか一項に記載の組換え大腸菌を、メバロン酸又はメバロノラクトンを含む培地で培養して培養物又は菌体からβ-ビサボレン又はγ-アモルフェンを得ることを特徴とする、セスキテルペンの製造方法。
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