JP5453553B2 - シガレット用フィルタおよびフィルタ付きシガレット - Google Patents

Description

本発明は、シガレット用フィルタおよびフィルタ付きシガレットに関する。

タバコ煙改質剤を含む糸を組み込んだタバコフィルタを備えるシガレットが知られている（例えば、特許文献１、２）。かかるシガレットを喫煙すると、タバコ煙改質剤は、フィルタを通るタバコ主流煙中に、味または芳香を添加し得る。

特公昭６３−３８１８７号公報 英国特許出願公開第２０７０４０９号明細書

上記先行技術文献は、１本の糸に２種以上の煙改質剤を担持させること、および２本あるいはそれ以上の糸に同種または異種の煙改質剤を担持させることを開示している。しかしながら、シガレットを喫煙したときに、パフ毎に異なる香りを味わうようにさせるという技術思想は示されていない。

本発明は、シガレットを喫煙したときに、パフ毎に異なる香りを味わうことを可能にするシガレット用フィルタおよび係るフィルタを備えたシガレットを提供することを目的とする。

本発明の一つの側面によれば、フィルタ本体、および１本以上の個別糸からなる香料担体と、前記香料担体に担持された複数の香気放出成分とを含む香気放出部材を備え、前記香気放出部材は、前記フィルタ本体の中心軸に沿って延びるように前記フィルタ本体内に組み込まれ、一の香気放出成分は、他の一またはそれ以上の香気放出成分とは異なる香料香気を放出し、一の香気放出成分の香料放出挙動は、他の一またはそれ以上の香気放出成分の香料放出挙動と異なり、前記香気放出成分は、純香料、サイクロデキストリンと組み合わされた純香料およびデキストリンと組み合わされた純香料からなる群の中から選ばれるシガレット用フィルタが提供される。

本発明の他の側面によれば、シガレットロッドと、前記シガレットロッドの一端に接続されたフィルタを備え、前記フィルタが本発明のフィルタにより構成されるフィルタ付きシガレットが提供される。

本発明のシガレット用フィルタは、シガレットを喫煙したときに、パフ毎に異なる香りを味わうことを可能にする。

本発明の第１の態様に係るフィルタの一例を拡大して示す概略斜視図である。 本発明の第１の態様に係るフィルタの別の例を拡大して示す概略斜視図である。 本発明の第２の態様に係るフィルタの一例を拡大して示す概略図である。 本発明によるシガレットの一例を拡大して示す概略斜視図である。 本発明によるシガレットの一例を喫煙したときのパフ回数に対するタバコ主流煙中への香料香気のデリバリー量の変化を説明するためのグラフ。 後述する例１で作製したフィルタ付きシガレットにおけるパフ毎の官能評価結果を示すグラフである。 後述する例２で作製したフィルタ付きシガレットにおける香料の放出挙動を示すグラフ。

以下、本発明の態様を説明する。

本発明の一つの側面によるシガレット用フィルタは、フィルタ本体、および少なくとも１本の個別糸からなる香料担体と、香料担体に担持された複数の香気放出成分とを含む香気放出部材を備える。香気放出部材は、フィルタ本体の中心軸に沿って延びるようにフィルタ本体内に組み込まれている。一の香気放出成分は、他の一またはそれ以上の香気放出成分とは異なる香料香気を放出する。一の香気放出成分の香料香気放出挙動は、他の一またはそれ以上の香気放出成分の香料香気放出挙動と異なる。そして、香気放出成分は、純香料、サイクロデキストリンと組み合わされた純香料およびデキストリンと組み合わされた純香料からなる群の中から選ばれる。

香気放出部材が組み込まれるフィルタ本体は、例えば、セルロースアセテート繊維のトウを含み、通常、円柱状である。フィルタ本体の長さは、通常、１００ｍｍ〜１４０ｍｍであり、直径は、通常、１５ｍｍ〜２６ｍｍである。

香気放出部材は、少なくとも１本の個別糸からなる香料担体と、香料担体に担持された複数の香気放出成分とを含む。香気放出部材は、香料担体と複数の香気放出成分からなり得る。

香料担体を構成する糸は、１本の繊維（フィラメント）あるいは複数本の繊維（フィラメント）の束からなることができ、モノフィラメント糸およびマルチフィラメント糸が含まれる。マルチフィラメント糸には、種々の加工糸が含まれる。

糸の材質に特に制限はない。例えば、糸は、綿、ウール、シルク等の天然素材、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロースアセテート等の合成素材により作ることができる。

糸の直径は、通常、０．３〜２．５ｍｍ、好ましくは０．７ｍｍ〜１．５ｍｍである。糸の長さは、通常、フィルタ本体の長さと同じである。糸は、通常、フィルタ本体の中心軸に沿って、フィルタ本体の全長にわたって、すなわちフィルタ本体の先端から基端まで、延びる。フィルタ本体は、外周が薄葉紙等のフィルタラッパーにより巻かれてフィルタを提供する。

香気放出成分は、（ｉ）純香料、（ｉｉ）サイクロデキストリンと組み合わされた純香料および（ｉｉｉ）デキストリンと組み合わされた純香料からなる群の中から選ばれる。純香料は、香料それ自体である。純香料の例には、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、２−アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス−アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、２，３−ブタンジオン、２−ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブロリュート、β−カロテン、ニンジンジュース、Ｌ−カルボン、β−カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミル油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、ＤＬ−シントネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ−デカラクトン、γ−デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、３，４−ジメチル−１，２−シクロペンタンジオン、４，５−ジメチル−３−ヒドロキシ−２，６−ジヒドロフラン−２−オン、３，７−ジメチル−６−オクテン酸、２，３−ジメチルピラジン、２，５−ジメチルピラジン、２，６−ジメチルピラジン、２−メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリル酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、２−エチル−３，（５または６）−ジメチルピラジン、５−メチル−３−ヒドロキシ−４−メチル−２（５Ｈ）−フラノン、２−エチル−３−メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブゾリュート、ジェネアブゾリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ−ヘプタラクトン、γ−ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス−３−ヘキサン−１−オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、４−ヒドロキシ−３−ペンテン酸ラクトン、４−ヒドロキシ−４−（３−ヒドロキシ−１−ブテニル）−３，５，５−トリメチル−２−シクロヘキサン−１−オン、４−（パラ−ヒドロキシフェニル）−２−ブタノン、４−ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブゾリュート、β−イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、ココナッツティンクチャー、ラプダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナル、ロページ根油、マルトール、メープルシロップ、メントール（Ｌ−メントール）、メントン、酢酸Ｌ−メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル−２−ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、４’−メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、３−メチル吉草酸、ミモザアブロリュート、トウミツ、ミリチン酸、ネロール、ネロリドール、γ−ノナラクトン、ナツメグ油、δ−オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス油、パルミチン酸、ペパーミント油、プリグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、３−プロビリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ディーディスティレート、α−テルピネオール、酢酸テルピニル、５，６，７，８−テトラヒドロキサリン、１，５，５，９−テトラメチル−１３−オキサクロロ（８．３．０．０（４．９））トリデカン、２，３，５，６−テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、２−トリデカノン、クエン酸トリメチル、４−（２，６，６−トリメチル−１，３−シクロヘキセニル）２−ブテン−４−オン、２，６，６−トリメチル−２−シクロヘキセン−１，４−ジオン、４−（２，６，６−トリメチル−１、３−シクロヘキサジエニル）２−ブテン−４−オン、２，３，５−トリメチルピラジン、γ−ウンデカラクトン、γ−バレロラクトン、バニラエキス、バニリン、ペラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート等が含まれる。

純香料からなる香気放出成分は、ポリプロピレングリコール、グリセリン、エタノール、水、トリグリセリド、トリアセチン、クエン酸トリエチル等に溶解し、その溶液を糸にしみこませることによって糸に担持させることができる。サイクロデキストリンと組み合わされた純香料からなる香気放出成分は、ポリプロピレングリコール、グリセリン、エタノール、水、トリグリセリド、トリアセチン、クエン酸トリエチル等中に懸濁させ、その懸濁液を糸にしみこませることによって糸に担持させることができる。懸濁液には、ショ糖脂肪酸エステルのような乳化剤、分散剤、消泡剤を加えることができる。また、デキストリンと組み合わされた純香料からなる香気放出成分は、ポリプロピレングリコール、グリセリン、エタノール、水、トリグリセリド、トリアセチン、クエン酸トリエチル等中に懸濁させ、その懸濁液を糸にしみこませることによって糸に担持させることができる。懸濁液には、ショ糖脂肪酸エステルのような乳化剤、分散剤、消泡剤を加えることができる。一例として、デキストリンと組み合わされた純香料からなる香気放出成分は、任意に乳化剤等を溶解したデキストリンの水溶液に香料を添加し、ホモミキサーで乳化させ、これをスプレードライヤーを用いて噴霧し、乾燥することにより、香料を含有するデキストリン微粉末の形態で得ることができる。

一の香気放出成分は、他の一またはそれ以上の香気放出成分とは異なる香料香気を放出する。すなわち、一の香気放出成分に含まれる純香料は、他の一またはそれ以上の香気放出成分に含まれる純香料とは異なる香気を発する香料である。

一の香気放出成分の香料香気放出挙動は、他の一またはそれ以上の香気放出成分の香料香気放出挙動と異なる。純香料からなる香気放出成分は、シガレットを喫煙したとき、フィルタに流入するシガレット主流煙中のタール量にほぼ比例して香気を放出する。サイクロデキストリンと組み合わされた純香料（この場合、純香料はサイクロデキストリンに包接される）からなる香気放出成分は、シガレットを喫煙したとき、フィルタに流入するシガレット主流煙中の特定の煙成分（特に、常温で液相と固相との両相に分配するレベルの蒸気圧を有する成分）および熱の上昇により香気を放出する。デキストリンと組み合わされた（デキストリンと混合された）純香料からなる香気放出成分は、主に、フィルタに流入するシガレット主流煙中の水分、および熱の上昇により香気を放出する。

すなわち、純香料からなる香気放出成分と、サイクロデキストリンと組み合わされた純香料からなる香気放出成分と、デキストリンと組み合わされた純香料からなる香気放出成分とは、シガレットを喫煙したとき、パフ毎にそれらが放出する香料香気の量が異なる。かくして、異なる複数の香気放出成分を含むフィルタを備えたシガレットは、これを喫煙したとき、シガレット自体の香喫味に加えて、パフ毎に異なる量の異種香料香気のブレンドを味わうことができる。

香気放出部材が組み込まれたフィルタ本体を製造するためには、例えば特公昭６３−３８１８７号公報に記載されている方法を適用することができる。すなわち、例えば、一般的なシガレットフィルタ製造機械において、開繊したセルロースアセテート繊維束をフィルタラッパーで包みロッド状に成形する工程の直前に、セルロースアセテート繊維束の円周方向の所定位置に、糸を案内するガイドとマンドレルを設置し、糸をそのガイドとマンドレルに通じることでセルロースアセテート繊維束内に挿入することができる。いうまでもなく、その糸は、セルロースアセテート繊維束に挿入する前に、上述の通り、香料放出成分をしみこませておく。

本発明の第１の態様において、香料担体は、複数の個別糸からなり、複数の香気放出成分は、それぞれ異なる個別糸に担持され得る。この第１の態様によるシガレット用フィルタは、香気放出成分を含む１本以上の個別糸からそれぞれなる複数の香気放出部材が組み込まれたフィルタ本体を含み、一の香気放出部材における香料は同じであるが、他の一またはそれ以上の香気放出部材における香料とは異なり、かつ一の香気放出部材の香料放出挙動が他の一またはそれ以上の香気放出部材の香料放出挙動と異なるフィルタということができる。第１の態様において、異なる香気放出成分を担持する異なる糸は互いに異なる色に着色させることができる。

本発明の第２の態様において、香料担体は１本以上の個別糸からなり、各個別糸が、異種純香料を含む複数の香気放出成分を担持する。この場合、個別糸を複数のフィラメントから構成し、一のフィラメントに一の香気放出成分を担持させ、他の一またはそれ以上のフィラメントに他の香気放出成分を担持させて、これらフィラメントを撚り合わせて１本の糸を作ることが好都合である。すなわち、第２の態様において、香気放出部材は、それぞれ異なる香気放出成分を担持した１本以上の個別糸からなる。

本発明のシガレットは、上記本発明のフィルタを、シガレットロッドの一端に備える。シガレットロッドは、通常のフィルタ付きシガレットのシガレットロッドと同様のものであり、タバコ刻等のタバコ充填材のロッドと、タバコ充填材ロッドの外周面を包むシガレット巻紙により構成される。フィルタは、チップペーパーによりシガレットロッドに接続される。シガレットロッドの長さは、通常、４０ｍｍ〜７０ｍｍであり、直径は、フィルタの直径と同じ場合もあるし、あるいは糊を用いたチップペーパーによるフィルタとの接続をより確実にするために、フィルタの直径よりもやや（最大で０．５ｍｍ）大きい場合もある。

次に、図面を参照して、本発明の態様を説明する。全図にわたり、同様の要素には同じ符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。

図１は、本発明の第１の態様に係るフィルタの一例を拡大して示す概略斜視図である。図１に示されるフィルタ１０は、例えばトリアセチンのような可塑剤で結着されたセルロースアセテート繊維のトウからなる、円柱状フィルタ本体１１０を有する。フィルタ本体１１０内には、それぞれフィルタ本体１１０の中心軸に平行に延びる複数の香気放出部材が組み込まれている。複数の香気放出部材は、それぞれ純香料を含む香気放出成分を担持した複数の個別糸からなる。これら香気放出部材のうちの一つは、他の一つまたはそれ以上の香気放出部材に含まれる純香料とは異なる純香料を含む。図１においては、２つの香気放出部材１２１および１２２がフィルタ本体１１０内に組み込まれている。例えば、香気放出部材１２１は、純香料Ａからなる香気放出成分を担持した綿糸１２１ａからなり、香気放出部材１２２は、サイクロデキストリンと組み合わされた純香料Ｂもしくはデキストリンと組み合わされた純香料Ｃからなる香気放出成分を担持した綿糸１２２ａからなり、ここで、純香料Ａは、純香料Ｂおよび／または純香料Ｃと異なる香料である。綿糸１２１ａ、１２２ａは互いに異なる色に着色することができる。フィルタ本体１１０は、その外周面がフィルタラッパー１３０により包まれて、フィルタ１０を提供する。フィルタ１０は、先端面１０ａと基端面１０ｂを規定する。フィルタ１０をシガレットロッドと接続するとき、先端面１０ａがシガレットロッドの基端面と当接し得る。フィルタ１０の基端面１０ｂを含むフィルタ領域が喫煙者により銜えられる。

図２は、本発明の第１の態様に係るフィルタの別の例を拡大して示す概略斜視図である。図２に示すフィルタ２０は、３つの香気放出部材２２１、２２２、２２３がフィルタ本体１１０内に組み込まれていること以外は、図１のフィルタ１０と同様の構造を有する。例えば、香気放出部材２２１は、純香料Ａからなる香気放出成分を担持した綿糸２２１ａからなり、香気放出部材２２２は、サイクロデキストリンと組み合わされた純香料Ｂからなる香気放出成分を担持した綿糸２２２ａからなり、香気放出部材２２３は、デキストリンと組み合わされた純香料Ｃからなる香気放出成分を担持した綿糸２２３ａからなる。ここで、例えば、純香料Ａと純香料Ｂと純香料Ｃとは互いに異なる香料であり、従って互いに異なる香気を発する。そして、綿糸２２１ａ、２２２ａ、２２３ａは互いに異なる色に着色することができる。例えば、綿糸２２１ａは、ブルーに、綿糸２２２ａは、イエローに、綿糸２２３ａは、ピンクに着色することができる。

図３は、本発明の第２の態様に係るフィルタの一例を拡大して示す概略図である。図３に示すフィルタ３０は、香気放出部材１２１および１２２の代わりに、複数の香気放出成分を担持した１本の糸３１０ａからなる香気放出部材３１０がフィルタ本体１１０内に組み込まれている以外は、図１に示すフィルタ１０と同様の構造を有する。複数の香気成分を担持した糸３１０ａは、例えば、純香料Ａからなる香気放出成分を担持した綿フィラメントと、サイクロデキストリンと組み合わされた純香料Ｂからなる香気放出成分を担持した綿フィラメントと、デキストリンと組み合わされた純香料Ｃからなる香気放出成分を担持した綿フィラメントを互いに撚り合わせて作ることができる。ここで、純香料Ａと純香料Ｂと純香料Ｃとは互いに異なる香料であり得、従って互いに異なる香気を発する。香気放出部材３１０は２本以上をフィルタ本体１１０に挿通させることができる。

図４は、本発明のフィルタ付きシガレットの一例を拡大して示す概略斜視図である。図４に示すフィルタ付きシガレット４０は、着火端を構成する先端４１０ａと基端４１０ｂを有するシガレットロッド４１０、および先端４２０ａと基端４２０ｂを有するフィルタ４２０を備える。シガレットロッド４１０とフィルタ４２０とは、シガレットロッドの基端４１０ｂとフィルタの先端４２０ａとが当接して、チップペーパー４３０により接続されている。シガレットロッド４１０は、上に述べたタバコ充填材のロッド４１１と、タバコ充填材ロッド４１１の外周面を包むシガレット巻紙４１２から構成される。フィルタ４２０は、本発明のフィルタにより構成される。例えば、フィルタ４２０は、図１に示すフィルタ１０、図２に示すフィルタ２０または図３に示すフィルタ３０により構成することができる。

図５は、フィルタ４２０として図２に示すフィルタ２０を備えた図４に示すシガレットを喫煙したとき、フィルタ４２０を通過するシガレット主流煙中にフィルタから送給される香料の量（デリバリー量）のパフ毎の変化を説明するためのグラフである。

例えば、フィルタ２０の本体１１０内には、純香料Ａからなる香気放出成分を担持した綿糸２２１ａからなる香気放出部材（香気放出部材Ａ）、サイクロデキストリンと組み合わされた純香料Ｂからなる香気放出成分を担持した綿糸２２２ａからなる香気放出部材（香気放出部材Ｂ）、デキストリンと組み合わされた純香料Ｃからなる香気放出成分を担持した綿糸２２３ａからなる香気放出部材（香気放出部材Ｃ）が組み込まれており、ここで、純香料Ａと純香料Ｂと純香料Ｃとは互いに異なる。香気放出部材Ａからタバコ主流煙中に送給される香料の量は、パフ毎にほぼ直線的に漸増する（曲線ａ）。香気放出部材Ｂからタバコ主流煙中に送給される香料の量は、パフの初期から中期に掛けては香気放出部材Ａの場合よりも多いが、その後漸減し、パフ後期には香料のデリバリー量は、香気放出部材Ａの場合よりも少なくなる（曲線ｂ）。香気放出部材Ｃからタバコ主流煙中に送給される香料の量は、パフ初期から中期にかけては非常に少ないが、パフ後期に急激に増加し、香気放出部材ＡおよびＢからの香料デリバリー量よりも多くなる（曲線ｃ）。かくして、喫煙者は、本発明のフィルタ付きシガレットを喫煙したとき、シガレット自体の香喫味に加えて、パフ毎に異なる量の異種香料香気のブレンドを味わうことができる。

以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。

例１
本例では、図１に示す構造のフィルタを作製し、これをシガレットロッドに接続してフィルタ付きシガレットを作製し、官能評価に供した。

具体的には、特公昭６３−３８１８７号公報に記載の方法に倣い、通常のフィルタ製造機に、イギリス式番手表示で２０／８の漂白綿糸のチーズ、香料槽、香料送給ポンプ、香料アプリケータ等からなる香料放出部材製造装置を２組付設し、一方の香料放出部材製造装置の香料槽にＬ−メントールのポリプロプレン溶液（濃度７０％）を入れ、他方の香料放出部材製造装置の香料槽にポリプロピレングリコールに分散させたα−サイクロデキストリン包接酪酸エチル（甘み香料）（濃度５０％）を入れた。両香料放出部材製造装置とフィルタ製造機を駆動し、所望のフィルタ長尺体を作製した。フィルタ本体を構成するセルロースアセテート繊維トウの仕様は、単繊度２．５デニール、総繊度３５０００デニールであり、各繊維の断面形状はＹ字状であった。フィルタラッパーは、通気度が１００００コレスタ単位（ＣＵ）であり、坪量が２４．０ｇ／ｍ²であり、幅が２６．５ｍｍであった。得られたフィルタ長尺体は、円周が２４．５ｍｍであり、長さが１００ｍｍであった。

このフィルタ長尺体と、市販のシガレット製品（セーラム・アラスカ）のシガレットロッドを作製するに必要なタバコ充填材、シガレット巻紙、チップペーパーを用い、通常のシガレット巻き上げ機でフィルタ付きシガレットを製造した。その際、フィルタ長尺体は４つに分割され、シガレット１本当たり、２５ｍｍの長さ分がシガレットロッドと突き合わされた。

シガレットロッドの仕様は、円周長が２４．５ｍｍであり、長さが８４ｍｍであった。

作製したフィルタ付きシガレット２０本を通常のシガレットパッケージに入れ、密封した。シガレットパッケージを温度２２℃、相対湿度６０％の環境下に１ヶ月保管した。保管後、フィルタ付きシガレットをパッケージから取り出し、７人のパネラーにより喫煙し、香喫味の官能評価を行った。

官能評価は、シガレット１本に付き、１パフ目から７パフ目まで、各パフ毎に以下の香喫味評価項目に対して採点を行った。

＜香喫味評価項目＞
メントール感：シガレットの香喫味評価の専門訓練を受けており、香喫味の評価や香喫味開発を担当している出願人会社の専門評価者７名により以下の基準で官能スコアをつけ、平均値を算出した。

出願人会社が販売するシガレット製品のうち、最も強いメントール感を示すシガレット製品のメントール感の官能スコアを２．０点（基準点）に設定し、メントール感のないシガレット製品のメントール感の官能スコアを１．０点（基準点）に設定し、例１で作製したシガレットが、両基準点と比較して何点の評価となるか、０．１点刻で採点した。

甘さ感：上記７名の専門評価者により以下の基準で官能スコアをつけ、平均値を算出した。

出願人会社が販売するシガレット製品のうち、最も強い甘さ感を示すシガレット製品の甘さ感の官能スコアを２．０点（基準点）に設定し、甘さ感の最も弱いシガレット製品の甘さ感の官能スコアを１．０点（基準点）に設定し、例１で作製したシガレットが、両基準点と比較して何点の評価となるか、０．１点刻で採点した。

この７人の評価結果を平均した結果を官能スコアとして下記表１に示す。

また、表１に示す結果をグラフとして図６に示す。図６において線分ａは甘さ感についての結果を、線分ｂはメントール感についての結果を示す。

上記結果からわかるように、甘さ感とメントール感がパフの進行につれ、大きく変化した。すなわち、サイクロデキストリンに包接されていないメントールは、前記保管中に綿糸から他の部位（タバコ刻、セルロースアセテート繊維等）に移行し、シガレット内で平衡状態に近い状態で分布したものと考えられ、シガレット主流煙中へのメントールのデリバリーは、シガレット主流煙中のタールのパフ毎の挙動と類似するものとなっている。他方、サイクロデキストリンに包接した甘み香料（酪酸エチル）は、上記保管中も綿糸中にとどまり、喫煙により主流煙がフィルタ中を通過した時点から、通過する主流煙の量に強く依存して放出されるため、サイクロデキストリンに包接されていないメントールに比べて、吸煙の前半に強く甘さ感が発現されている。

例２
この例では、以下の通り、Ｌ−メントール含有デキストリン粉末を製造した。
すなわち、精製水５９重量部に、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル（三菱化学フーズ社製「リョートーシュガーエステルＳ−１１７０」）１重量部を添加し、６０℃で１０分間攪拌した。得られた溶液に、デキストリン（三和澱粉社製「サンデック＃１８５」）４０重量部を添加し、３０分間攪拌した。得られた溶液を５０〜６０℃に保持しながら、Ｌ−メントール１３．６７重量部を添加し、溶解させた。得られた溶液を、ＴＫホモミキサーにより１２０００ｒｐｍで１０分間乳化させてスプレー溶液を得た。このスプレー溶液を５０〜６０℃に保持しながら、スプレードライヤー（藤崎電機社製「スプレードライヤーＭＤＬ−０５０Ｍ」に送り、１８０℃で噴霧乾燥した。こうして、Ｌ−メントール２５重量％を含有したデキストリン粉末を得た。

次に、通常のフィルタ製造機に、イギリス式番手表示で２０／１６の漂白綿糸のチーズ、香料槽、香料送給ポンプ、香料アプリケータ等からなる香料放出部材製造装置を付設し、その香料槽にＬ−メントールのポリプロプレン溶液（濃度７０％）またはポリプロピレングリコールに分散させた上記Ｌ−メントール含有デキストリン粉末を入れた。香料放出部材製造装置とフィルタ製造機を駆動し、所望のフィルタ長尺体を作製した。フィルタ本体を構成するセルロースアセテート繊維トウの仕様は、単繊度３．５デニール、総繊度３５０００デニールであり、各繊維の断面形状はＹ字状であった。フィルタラッパーは、例１で用いたものと同じであった。得られたフィルタ長尺体は、円周が２４．５ｍｍであり、長さが１００ｍｍであった。香料を担持した綿糸は、フィルタ長尺体の中央に挿通された。

得られたフィルタ長尺体を用いた以外は、例１と同様に、２種類のフィルタ付きシガレット試料ＡおよびＢを作製した。フィルタ付きシガレット試料Ａは、デキストリンに含有させていないＬ−メントール（添加量：２５ｍｍのフィルタ長当たり１１．５ｇ）を含むものであり、フィルタ付きシガレット試料Ｂは、上記デキストリン粉末に含有させたＬ−メントール（添加量：２５ｍｍのフィルタ長当たり１０．０ｇ）を含むものであった。なお、フィルタシガレット試料ＡおよびＢにおいて、両フィルタの通気抵抗は、同じであった。

得られたフィルタ付きシガレット試料ＡおよびＢを、例１と同様に１ヶ月保管した後、パフ毎の主流煙中のメントール量を以下のように測定した。

５本掛けロータリー型自動喫煙器を用い、同じ仕様のフィルタ付きシガレット試料を５本セットし、ＩＳＯ標準喫煙条件下で７パフまで喫煙を行った。パフ毎に、予め設置したガラス繊維フィルタにシガレット主流煙成分を捕集し、これをエタノールで抽出し、ガスクロマトグラフによりメントール量を測定した。同じ仕様のシガレット試料につき同じ操作を２回行い、パフ毎の主流煙中のメントール量の平均値を算出し、その平均値を、７パフ合計のメントール量の平均値で除して、百分率で表し、評価結果とした。結果を下記表２に示す。

また、表２に示す結果をグラフとして図７に示す。図７において線分ａは、試料Ａについての結果を、線分ｂは、試料Ｂについての結果を示す。

試料Ａと試料Ｂについての結果を比較してわかるように、パフの進行につれ、主流煙中のメントールの量、すなわちメントール感の強さが両者間で大きく異なる。試料Ｂにおいては、メントールをデキストリンに含有（担持）させているので、フィルタを通過する主流煙中の水分によってメントールがデキストリンから放出されるので、７パフ目で主流煙中のメントール量が著しく増加している。この現象は、６パフまでの水分の累積と、フィルタに燃焼部が近づくことで通気性を有するシガレット巻紙による主流煙の希釈が相対的に減少することにより、フィルタを通過する主流煙中の水分温度が上昇することがその要因と考えられる。

例１および例２に示すように、種々の香料を担持した香気放出部材からの香気放出挙動が明らかとなった。これらの香気放出挙動の結果から、本発明に従い、それぞれ異なる香料を担持する複数本の香料放出部材を組み込んだフィルタを付設したシガレットが、パフ毎に異なる香りを味わうことを可能にすることが明らかであろう。

１０，２０，３０，４２０…フィルタ、１１０…フィルタ本体、１２１〜１２２，２２１〜２２３，３１０…香気放出部材、１２１ａ，１２２ａ，２２１ａ，２２２ａ，２２３ａ，３１０ａ…個別糸、１３０…フィルタラッパー、４０…フィルタ付きシガレット、４１０…シガレットロッド、４１１…タバコ充填材ロッド、４１２…シガレット巻紙、４３０…チップペーパー

Claims (5)

1. フィルタ本体、および１本以上の個別糸からなる香料担体と、前記香料担体に担持された複数の香気放出成分とを含む香気放出部材を備え、前記香気放出部材は、前記フィルタ本体の中心軸に沿って延びるように前記フィルタ本体内に組み込まれ、一の香気放出成分は、他の一またはそれ以上の香気放出成分とは異なる香料香気を放出し、一の香気放出成分の香料放出挙動は、他の一またはそれ以上の香気放出成分の香料放出挙動と異なり、前記香気放出成分は、純香料、サイクロデキストリンと組み合わされた純香料およびデキストリンと組み合わされた純香料からなる群の中から選ばれることを特徴とするシガレット用フィルタ。
2. 前記香料担体が、複数の個別糸からなり、前記複数の香気放出成分は、それぞれ異なる個別糸に担持されている請求項１に記載のシガレット用フィルタ。
3. 前記複数の香気放出成分が、１本の個別糸に担持されている請求項１に記載のシガレット用フィルタ。
4. 前記個別糸が、着色されている請求項１〜３のいずれか１項に記載のシガレット用フィルタ。
5. シガレットロッドと、前記シガレットロッドの一端に接続されたフィルタを備え、前記フィルタが請求項１〜４のいずれか一項に記載のフィルタにより構成されるフィルタ付きシガレット。

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