JP5447284B2 - 硬化性組成物、粘着体、粘着積層体および粘着体の製造方法 - Google Patents

硬化性組成物、粘着体、粘着積層体および粘着体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、分子末端に加水分解性シリル基を有するシリル基含有重合体と、硬化触媒とを含む硬化性組成物、該硬化性組成物を用いた粘着体および粘着積層体、ならびに該硬化性組成物を用いた粘着体の製造方法に関する。
加水分解性シリル基を有する硬化性樹脂の硬化触媒として、従来、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセトナート等の有機スズ化合物が汎用されている(例えば、特許文献1)。
特許文献2には、加水分解性シリル基を有する有機重合体と、チタニウムキレートと、高分子可塑剤を含有する硬化性組成物が記載されている。
特許第3030020号公報 国際公開第2005/108491号パンフレット
しかし、有機スズ化合物は環境負荷が大きいため、使用量を減らすことが望まれている。また反応性が比較的大きく可使時間が短いため、作業の制約が大きくなる。
一方、非有機スズ系触媒であるチタニウムキレートは比較的高価である。しかも、反応性が劣るため、好ましい硬化速度を得るためには添加量を多くしなければならないという問題がある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、可使時間を長く調整することができるとともに、硬化時の反応性に優れ良好な硬化状態が得られる硬化性組成物、これを用いた粘着体および粘着積層体、ならびに該硬化性組成物を用いた粘着体の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の硬化性組成物は、主鎖に、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、および/またはポリカーボネート鎖を有し分子末端に加水分解性シリル基を有するシリル基含有重合体(S)、および硬化触媒(A)を含有し、該硬化触媒(A)が鉄キレート化合物(A1)と鉄キレート化合物以外の金属化合物(A2)とを含むことを特徴とする。
前記金属化合物(A2)が、カルシウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物、カリウム化合物、バリウム化合物、マンガン化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物およびビスマス化合物からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記シリル基含有重合体(S)100質量部に対して、前記硬化触媒(A)を0.001〜10質量部含むことが好ましい。
前記鉄キレート化合物(A1)と前記金属化合物(A2)の使用割合が、質量比(A1)/(A2)で0.01/1〜10/1であることが好ましい。
前記加水分解性シリル基がトリアルコキシシリル基であることが好ましい。
本発明は、本発明の硬化性組成物が硬化してなる粘着体を提供する。
本発明は、基材上に、本発明の粘着体からなる粘着体層を有する粘着積層体を提供する。
本発明は、本発明の硬化性組成物を加熱して硬化させる工程を有する、粘着体の製造方法を提供する。
本発明の硬化性組成物は、可使時間を長く調整することができるとともに、硬化時の反応性に優れ良好な硬化状態を得ることができる。また本発明の硬化性組成物は表面および内部において良好な硬化状態が得られ、良好な再剥離性を示す。本発明によれば、使用する硬化性組成物の可使時間が長く優れた硬化性を示すとともに、良好な再剥離性を有する粘着体および粘着積層体を提供できる。
本発明の硬化性組成物は、これを加熱して硬化させる工程を有する方法で、粘着体を好ましく製造できる。
本明細書における数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)は、分子量既知の標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定することによって得られるポリスチレン換算分子量である。
本明細書における平均水酸基価(OHV)は、JIS−K−1557−6.4に基づいた測定値である。
本明細書において、ポリエーテルポリエステルポリオールとは、エーテル結合およびエステル結合を有するポリオールである。
本明細書において、粘着性(adherence property)とは、軽い圧力で被着材に接着し、かつ、任意に再剥離可能な性質である。粘着剤(pressure sensitive adhesive)とは、粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質である。また再剥離性を有し、一時的な接着に用いる。一方、接着剤は永久接着性能を有し再剥離性を有しない点で、粘着剤とは異なる。
粘着体(adherence substance)とは、粘着性を有する成形体である。また粘着性シート(単に、粘着シートともいう。)(pressure sensitive adhesive sheet)とは、粘着性を有するシートである。ただし本明細書においては厚さは問わず、シートとフィルムとは区別しない。粘着性シートは、通常は、少なくとも基材層と粘着体層とを構成要素として有する積層体である。また粘着性テープ(単に、粘着テープともいう。)(pressure sensitive adhesive tape)とは、テープ形状の粘着性シートである。
本明細書において、剥離粘着力(被着体からの剥離強度)の強さにより、粘着剤を分類することがある。剥離粘着力が0N/25mmを超え1N/25mm以下の場合を微粘着、剥離粘着力が1N/25mmを超え8N/25mm以下の場合を低粘着、剥離粘着力が8N/25mmを超え15N/25mm以下の場合を中粘着、剥離粘着力が15N/25mmを超え50N/25mm以下の場合を強粘着という。なお特に断りがない場合には、剥離粘着力はJIS−Z−0237(1999)−8.3.1に規定される180度引きはがし法に準拠し、以下の試験方法に従う。
すなわち、23℃の環境で、厚さ1.5mmのブライトアニール処理したステンレス鋼板(SUS304(JIS))に、測定する粘着シート試験片(幅:25mm)を貼着し、質量が2kgのゴムロールで圧着する。30分後、JIS−B−7721に規定する引張り試験機を用い、剥離強度(180度ピール、引張り速度300mm/分)を測定する。こうして得られる貼着30分後の剥離強度の値を本発明における「剥離粘着力」とする。
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、シリル基含有重合体(S)、硬化触媒(A)、および必要に応じて任意に配合される添加剤等を混合して得られる。
<シリル基含有重合体(S)>
本発明におけるシリル基含有重合体(S)は、主鎖にポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、および/またはポリカーボネート鎖を有し分子末端に加水分解性シリル基を有する。
すなわちシリル基含有重合体(S)の主鎖は、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、およびポリカーボネート鎖から選ばれる1種または2種を有する。主鎖としては、特にポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリカーボネート鎖、または、ポリエーテル鎖とポリエステル鎖との組み合わせを有することが好ましい。
シリル基含有重合体(S)は、下記(S1)〜(S3)のうちいずれか1種、または、2種以上を混合して用いることが好ましい。特に、得られる硬化物が柔軟性と濡れ性に優れる点から(S1)が好ましい。
シリル基含有重合体(S)は、下記(S1)〜(S3)のいずれにも含まれない、加水分解性シリル基を有する重合体(以下、「他の加水分解性シリル基を有する重合体」という。)を含んでいてもよい。他の加水分解性シリル基を有する重合体の割合は、シリル基含有重合体(S)の30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
[シリル基含有重合体(S1)]
シリル基含有重合体(S1)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物の末端に加水分解性シリル基を導入して得られる。
シリル基含有重合体(S1)は、特に、上記ポリオール化合物に、後述する(PQ1)〜(PQ5)のいずれかに記載の方法で加水分解性シリル基を導入して得られるものが好ましい。
[シリル基含有重合体(S2)]
シリル基含有重合体(S2)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーの末端に加水分解性シリル基を導入して得られるシリル基含有重合体である。
シリル基含有重合体(S2)は、特に、ポリウレタンプレポリマーに、後述する(PQ1)〜(PQ5)のいずれかに記載の方法で加水分解性シリル基を導入して得られるものが好ましい。
[シリル基含有重合体(S3)]
シリル基含有重合体(S3)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および、ポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンプレポリマーを、さらに鎖延長剤を用いて鎖延長反応させて得られるポリウレタン重合体の分子末端に加水分解性シリル基を導入して得られるシリル基含有重合体である。
シリル基含有重合体(S3)は、特に、ポリウレタン重合体に、後述する(PQ1)〜(PQ5)のいずれかに記載の方法で加水分解性シリル基を導入して得られるものが好ましい。
[ポリオール化合物]
本発明におけるポリエーテルポリオールは、ポリエーテル鎖(−OR−)n1[Rは炭素数2〜4のアルキレン基、n1は1〜1000の整数]を有するポリオールであり、ポリエステル鎖を有さない。
ポリエステルポリオールは、ポリエステル鎖(−OC(O)−R−)n2[Rは炭素数2〜8のアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基、n2は1〜1000の整数]を有するポリオールであり、ポリエーテル鎖を有さない。
ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネート鎖(−OC(O)−O−R−)n3[Rは炭素数2〜20のアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基、n3は1〜1000の整数]を有するポリオールであり、ポリエーテル鎖およびポリエステル鎖のいずれも有さない。
ポリエーテルポリエステルポリオールは、ポリエーテル鎖およびポリエステル鎖の両方を有するポリオールである。
ポリオール化合物として1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特にポリエーテル骨格を有するポリオールの少なくとも1種を用いることが粘着体の柔軟性を確保する点で好ましい。ポリエーテル骨格を有するポリオールとは、例えばポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオールなどのようにポリエーテル鎖を有するポリオールを意味する。
粘着体が柔軟であることは、被着体から粘着体を剥離する際に、滑らかに剥離することなくバリバリという音を発する現象、いわゆるジッピングの抑制に効果的であると考えられる。またポリエーテル骨格を有することにより、硬化性組成物の粘度を低くできる。さらにポリエーテル骨格を有することにより、粘着体の表面抵抗を低くでき、剥離帯電を抑制できる。
またポリエーテル鎖の一部としてオキシエチレン基を使用してもよく、これを使用すると表面抵抗をより小さくできる。使用する場合、全ポリエーテル鎖のうちのオキチレン基の割合は、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。オキシエチレン基は、ポリエーテル鎖の中にブロックで存在していてもよく、ランダムに存在していてもよい。
シリル基含有重合体(S)におけるエーテル結合(−OR−)の割合は、エーテル結合とエステル結合(−OC(O)−R−)との合計(100モル%)に対して、40〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましく、60〜100モル%がさらに好ましい。
シリル基含有重合体(S)を得るためのポリオール化合物として、特にポリエーテルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールから選ばれる1種または2種以上のポリオールを用いる場合か、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールから選ばれる1種または2種以上のポリオールと、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールから選ばれる1種または2種以上のポリオールとを併用する場合が好ましい。ポリエーテルポリオールのみ、ポリエーテルポリエステルポリオールのみ、またはポリエーテルポリオールとポリエーテルポリエステルポリオールの組み合わせを用いるのがさらに好ましい。
上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。
ポリオキシアルキレンポリオールを構成するアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルトリメチレン基等が挙げられる。これらは対応する環状エーテル化合物を開環重合することにより得られる。環状エーテル化合物としては、三員環を有する、エポキシド化合物であるアルキレンオキシド、四員環を有するオキセタン類、五員環であるテトラヒドロフラン、六員環であるテトラヒドロピランなどが挙げられる。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールが挙げられる。
上記ポリエーテルポリエステルポリオールとしては、エーテルジオール類と二塩基酸化合物との縮合重合で得られるポリオール、エポキシド化合物と環状エステル類との開環共重合(特にランダム共重合が好ましい)で得られるポリオールなどが例示できる。エーテルジオール類としては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが例示できる。二塩基酸化合物としては、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸、フマル酸などが例示できる。環状エステル類(ラクトン類)としては、β−プロピオラクトン(炭素数3)、δ−バレロラクトン(炭素数5)、ε−カプロラクトン(炭素数6)が挙げられる。これらのうちでもε−カプロラクトンがより好ましい。エポキシド化合物は前述のとおりである。
上記ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの低分子ジオール類と前述の二塩基酸化合物との縮合重合で得られるポリオールが例示できる。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートからなる低分子カーボネート化合物と、ジオール化合物とを反応させて得られるものが好ましい。具体的には、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチルペンテンカーボネート)ジオール、ポリプロピレンカーボネートジオールなどが例示できる。また、それらの混合物またはそれらの共重合物などであってもよい。
ポリオール化合物の水酸基数は2〜3が好ましい。水酸基数がこの範囲であれば、得られるシリル基含有重合体(S)の粘度を低く抑えやすいため好ましい。
またポリオール化合物の平均水酸基価は5〜225mgKOH/gが好ましく、7〜115mgKOH/gがより好ましく、10〜112mgKOH/gが特に好ましい。平均水酸基価がこの範囲であれば、得られるシリル基含有重合体(S)の粘度を低く抑えやすいため好ましい。
特にシリル基含有重合体(S1)を得る場合のポリオール化合物の平均水酸基価は5〜112mgKOH/gが好ましく、7〜56mgKOH/gがより好ましい。
またシリル基含有重合体(S2)または(S3)を得る場合のポリオール化合物の平均水酸基価は25〜225mgKOH/gが好ましく、30〜115mgKOH/gがより好ましい。
[ポリイソシアネート化合物]
シリル基含有重合体(S2)または(S3)を得るためにはポリウレタンプレポリマーを用いる。このポリウレタンプレポリマーの合成に用いるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを使用することができる。具体的にはジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物が挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を併用してもよい。得られる粘着体の柔軟性が向上することから屈曲鎖を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。このうちトリレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
[ポリウレタンプレポリマー]
シリル基含有重合体(S2)または(S3)を得るためのポリウレタンプレポリマーは、前記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる。ポリウレタンプレポリマーの末端はイソシアネート基または水酸基であり、加水分解性シリル基の導入方法により適宜選択される。すなわちイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーであっても、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーであってもよい。
ポリウレタンプレポリマーを合成する際、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを得る場合には、反応させる前記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との割合は、「ポリイソシアネート化合物のNCO基/ポリオール化合物のOH基」のモル比の100倍の値で定義されるイソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、105〜170がより好ましい。水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを得る場合には、前記反応させるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との割合は、イソシアネート指数で50〜100未満が好ましく、50〜98がより好ましい。
ポリウレタンプレポリマーの分子量は、数平均分子量で2,000〜100,000が好ましい。より好ましくは3,000〜80,000である。
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応には触媒(ウレタン化反応触媒)を用いてもよい。触媒としては、公知のウレタン化反応触媒が用いられる。ウレタン化反応触媒の例としては、有機酸塩・有機金属化合物類、第三級アミン類等が挙げられる。
具体的な有機酸塩・有機金属化合物類としては、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)等のスズ触媒、2−エチルヘキサン酸ビスマス[ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)]等のビスマス触媒、ナフテン酸亜鉛等の亜鉛触媒、ナフテン酸コバルト等のコバルト触媒、2−エチルヘキサン酸銅等の銅触媒等が例示できる。第三級アミン類としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。
該反応の温度は40〜160℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
[ポリウレタン重合体]
シリル基含有重合体(S3)を得るためのポリウレタン重合体は、ポリウレタンプレポリマーを、さらに鎖延長剤を用いて鎖延長反応させて得られる。このとき用いられるポリウレタンプレポリマーは、シリル基含有重合体(S2)の場合と同様である。
ポリウレタン重合体の末端はイソシアネート基、水酸基、またはアミノ基であり、加水分解性シリル基の導入方法により適宜選択される。すなわちイソシアネート基末端ポリウレタン重合体であっても、水酸基末端ポリウレタン重合体であっても、アミノ基末端ポリウレタン重合体であってもよい。
ポリウレタン重合体の分子量は、数平均分子量で4,000〜500,000が好ましい。より好ましくは8,000〜250,000である。
[鎖延長剤]
ポリウレタンプレポリマーとしてイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを用いる場合は、鎖延長剤として、低分子ジオール類、低分子ジアミン類が好ましい。低分子ジオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが好適に例示できる。低分子ジアミン類としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;ピペラジン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ジアミン;及びトリレンジアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
ポリウレタンプレポリマーとして水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを用いる場合は、鎖延長剤としてジイソシアネート化合物が好ましい。ジイソシアネート化合物はポリウレタンプレポリマーに用いるものと同様である。
ポリウレタン重合体を合成する際に、前記ポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを反応させる割合は、ポリウレタンプレポリマーの分子量および目標とするポリウレタン重合体の分子量によって適宜選択される。
イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを、低分子ジオール類を鎖延長剤として用いて、鎖延長する場合、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーと低分子ジオール類との割合は、イソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、100超〜150がより好ましい。この範囲であるとイソシアネート基末端ポリウレタン重合体が得られる。また水酸基末端ポリウレタン重合体を得る場合には、該イソシアネート指数が50〜100未満であることが好ましく、50〜98がより好ましい。
なおイソシアネート指数とは、イソシアネート基(NCO基)の量(モル数)をイソシアネート基と反応しうる基(OH基またはNH基)の量(モル数)で割った値の100倍の値である。
イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを、低分子ジアミン類を鎖延長剤として用いて鎖延長する場合、ポリウレタンプレポリマーと低分子ジアミン類との割合は、イソシアネート指数が50〜100未満であることが好ましく、50〜98がより好ましい。この範囲であるとアミノ基末端ポリウレタン重合体が得られる。
また、イソシアネート基末端ポリウレタン重合体を得る場合は、イソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、100超〜150がより好ましい。
水酸基末端ポリウレタンプレポリマーを、鎖延長剤としてジイソシアネート化合物を用いて鎖延長して、イソシアネート基末端ポリウレタン重合体を得る場合、ポリウレタンプレポリマーとジイソシアネート化合物との割合は、イソシアネート指数が100超〜200であることが好ましく、101〜150がより好ましい。
また水酸基末端ポリウレタン重合体を得る場合には、該イソシアネート指数が50〜100未満であることが好ましく、50〜98がより好ましい。
ポリウレタンプレポリマーと鎖延長剤との反応には触媒を用いてもよい。触媒としては、上述のウレタン化反応触媒が用いられる。反応の温度は40〜160℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
[加水分解性シリル基]
本発明において加水分解性シリル基とは、加水分解性基を有するシリル基である。具体的には、−SiX (3−a)で表されるシリル基が好ましい。ここで、aは1〜3の整数を示す。aは好ましくは2〜3であり、3が最も好ましい。
またRは炭素数1〜20の1価の有機基であり、炭素数1〜6の1価の有機基が好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。Rは置換基を有していてもよい。該置換基の例としてはメチル基、フェニル基等が挙げられる。
加水分解性シリル基がRを複数有する場合、該複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、aが1である場合、1個のケイ素原子(Si)に結合している2個のRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基を示す。
また上記Xは水酸基(−OH)又は加水分解性基を示す。該加水分解性基としては、例えば−OR基(Rは炭素数4以下の炭化水素基)が挙げられる。かかる−OR基は、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。
アルコキシ基又はアルケニルオキシ基の炭素数は4以下が好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はプロペニルオキシ基等が挙げられる。これらの中でもメトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。この場合、硬化時の反応性が向上し硬化速度がより速くなる。
加水分解性シリル基中にXが複数個存在する場合、該複数のXは互いに同一でも異なってもよい。すなわち、aが2または3である場合、Xはそれぞれ独立に、水酸基又は加水分解性基を示す。
特に、シリル基含有重合体(S)の貯蔵安定性が良好であるとともに、硬化時の反応性に優れ、硬化速度が速い点で、加水分解性シリル基としては、トリアルコキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基またはトリエトキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
[加水分解性シリル基の導入]
本発明においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の分子末端に加水分解性シリル基を導入する。加水分解性シリル基の導入方法としては、イソシアネートシラン類を用いる方法(PQ1)、アミノシラン類を用いる方法(PQ2)、メルカプトシラン類を用いる方法(PQ3)、エポキシシラン類を用いる方法(PQ4)、およびヒドロシラン類を用いる方法(PQ5)が例示できる。
ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の分子末端に加水分解性シリル基を導入する割合(以下、加水分解性シリル基導入割合ということもある。)は、理論的に反応しうる末端基の全部を100モル%とした場合に、50〜100モル%導入することが好ましく、80〜100モル%導入することがより好ましい。
シリル基含有重合体(S)がウレタン結合またはウレア結合を有する場合において、ウレタン結合とウレア結合との合計量(MU)と加水分解性シリル基の量(MS)との割合(MU/MSのモル比)は特に制限はないが、MU/MS(モル比)が1/1〜100/1であることが好ましい。この範囲にあることにより粘着体の粘着力と柔軟性が制御される。また粘着力の安定性も良好となる。ウレタン結合はイソシアネート基と水酸基との反応により形成され、ウレア結合はイソシアネート基とアミノ基との反応により形成される。シリル基含有重合体(S2)または(S3)の場合、MU/MSのモル比はポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の分子量などにより制御できる。
[イソシアネートシラン類を用いる方法(PQ1)]
方法(PQ1)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がイソシアネート基と反応しうる基であり、該末端の官能基とイソシアネートシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。
イソシアネートシラン類としては、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリメトキシシラン、5−イソシアネートペンチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、4−イソシアネートブチルトリエトキシシラン、5−イソシアネートペンチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルメチルジメトキシシシラン、2−イソシアネートエチルエチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン又は3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン又は3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。
イソシアネート基と反応しうる基としては、水酸基、アミノ基が例示できる。水酸基を用いる場合は、ポリオール化合物、水酸基末端ポリウレタンプレポリマー、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーをさらにジイソシアネート化合物を用いて鎖延長反応させて得られた水酸基末端ポリウレタン重合体、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーに低分子ジオール類を反応させて得られた水酸基末端ポリウレタン重合体等を用いることができる。
またアミノ基を用いる場合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーをさらに低分子ジアミン類を用いて鎖延長反応させて得られたアミノ基末端ポリウレタン重合体等を用いることができる。
この反応には触媒を用いてもよい。触媒としては、上述のウレタン化反応触媒が用いられる
[アミノシラン類を用いる方法(PQ2)]
方法(PQ2)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がアミノ基と反応しうる基であり、該末端の官能基とアミノシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、アミノ基と反応しうる基を導入してもよい。
アミノシラン類としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−(2−(2−アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等が挙げられる。
これらの中でも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
アミノ基と反応しうる基としては、イソシアネート基、アクリロイル基、メタクリロイル基が例示できる。イソシアネート基を用いる場合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーをさらにジイソシアネート化合物を用いて鎖延長反応させて得られたイソシアネート基末端ポリウレタン重合体、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーをさらに低分子ジオール化合物を用いて鎖延長反応させて得られたイソシアネート基末端ポリウレタン重合体等を用いることができる。
またアクリロイル基やメタクリロイル基を用いる場合は、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーにヒドロキシアルキルアクリレート類またはヒドロキシアルキルメタクリレート類を反応させたもの、ポリオール化合物、水酸基末端ポリウレタンプレポリマーまたは水酸基末端ポリウレタン重合体にアクリル酸類またはメタクリル酸類を反応させたものなどを用いることができる。ヒドロキシアルキルアクリレート類としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート等が例示できる。ヒドロキシアルキルメタクリレート類としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等が例示できる。アミノ基とイソシアネート基との反応はウレア結合生成の反応である。この反応には上述のウレタン化反応触媒を用いてもよい。またアミノ基とアクリロイル基との反応はマイケル付加反応である。
[メルカプトシラン類を用いる方法(PQ3)]
方法(PQ3)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がメルカプト基と反応しうる基であり、該末端の官能基とメルカプトシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、メルカプト基と反応しうる基を導入してもよい。
メルカプトシラン類としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン又は3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
メルカプト基と反応しうる基としては、イソシアネート基、アクリロイル基、アリル基が例示できる。イソシアネート基およびアクリロイル基の場合については、アミノシラン類を用いる方法(PQ2)の場合と同様である。アリル基を用いる場合は、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端をイソシアネート基とした後、アリルアルコールと反応させることによりアリル基とすることができる。
メルカプト基とイソシアネート基との反応はウレタン化反応と同様であり、触媒を用いてもよい。メルカプト基とアクリロイル基またはアリル基との反応は、ラジカル開始剤を用いることが好ましい。ラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が例示できる。
[エポキシシラン類を用いる方法(PQ4)]
方法(PQ4)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がエポキシ基と反応しうる基の場合であり、該末端の官能基とエポキシシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、エポキシ基と反応しうる基を導入してもよい。
エポキシシラン類としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等好ましい。これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又は3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
エポキシ基と反応しうる基としては、水酸基、アミノ基が例示できる。それぞれイソシアネートシラン類を用いる方法(PQ1)の場合と同様である。エポキシ基との反応における触媒としては、アミン類、酸無水物類など公知のものが使用される。例えば鎖状脂肪族系ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、変性脂肪族系ポリアミン、イミダゾール化合物等が挙げられる。特に、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、ベンジルジメチルアミン(BDMA)等の三級アミンが好ましい。
[ヒドロシラン類を用いる方法(PQ5)]
方法(PQ5)においては、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端の官能基がヒドロシリル化反応しうる基であり、該末端の官能基とヒドロシラン類とを反応させることにより加水分解性シリル基を導入する。必要に応じて、ポリオール化合物、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン重合体の末端に、ヒドロシリル化反応しうる基を導入してもよい。
ヒドロシラン類としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、1−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
ヒドロシリル化反応しうる基としては、アクリロイル基、アリル基が例示できる。それぞれメルカプトシラン類を用いる方法(PQ3)と同様である。この反応にはヒドロシリル化触媒を用いることが好ましい。ヒドロシリル化触媒としては、塩化白金酸などが例示できる。
<硬化触媒(A)>
本発明の硬化性組成物には、加水分解性シリル基の加水分解及び/又は架橋反応を促進するための硬化触媒として、鉄キレート化合物(A1)と、鉄キレート化合物以外の金属化合物(A2)(本明細書では単に「金属化合物(A2)」ということもある。)を含む硬化触媒(A)を含有させる。
[鉄キレート化合物(A1)]
鉄キレート化合物(A1)としてはトリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(ベンゾイルアセトナート)鉄、トリス(アセチルアセト酢酸)鉄が挙げられる。これらのうち、反応性、硬化性の点でトリス(アセチルアセト酢酸)鉄がより好ましい。
鉄キレート化合物(A1)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
[金属化合物(A2)]
金属化合物(A2)は、分子末端に加水分解性シリル基を有する重合体の硬化触媒として公知の金属化合物を適宜用いることができる。
金属化合物(A2)は、カルシウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物、カリウム化合物、バリウム化合物、マンガン化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物およびビスマス化合物からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。金属化合物(A2)のうちの50質量%以上が、上記の群から選ばれる1種以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が最も好ましい。金属化合物(A1)と組み合わせて反応性、硬化性を発現しやすい点で、チタン化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物またはビスマス化合物を含むことが好ましく、チタン化合物がより好ましい。
金属化合物(A2)として、加水分解性シリル基を有する重合体の硬化触媒として公知の有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセトナート等)の1種以上を用いてもよい。環境負荷の点からは有機スズ化合物の使用量は少ない方が好ましい。金属化合物(A2)中において有機スズ化合物が占める割合は、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、ゼロが最も好ましい。
金属化合物(A2)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
金属化合物(A2)は、(i)金属塩、(ii)金属アルコキシド類、または(iii)金属キレート化合物が好ましい。
(i)金属塩
金属塩としては、カルボン酸金属塩が好ましい。具体的にはCa(OCOR)、V(OCOR)、Ti(OCOR)、K(OCOR)、Ba(OCOR)、Mn(OCOR)、Ni(OCOR)、Co(OCOR)、Zr(O)(OCOR)、Bi(OCOR)が挙げられる。(OCOR)はカルボン酸から水素原子を除いた一価の残基(以下、カルボン酸基という。)を表わす。
カルボン酸金属塩を構成するカルボン酸としては、カルボニル炭素を含めた炭素数が2〜40の炭化水素系のカルボン酸基含有化合物が好ましく、入手性の点から炭素数2〜20の炭化水素系のカルボン酸基含有化合物がより好ましい。
該カルボン酸基含有化合物の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの直鎖飽和脂肪酸類;ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、2−ヘキサデセン酸、6−ヘキサデセン酸、7−ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸などのモノエン不飽和脂肪酸類;リノール酸、10,12−オクタデカジエン酸、ヒラゴ酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、プニカ酸、リノレン酸、8,11,14−エイコサトリエン酸、7,10,13−ドコサトリエン酸、4,8,11,14−ヘキサデカテトラエン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、8,12,16,19−ドコサテトラエン酸、4,8,12,15,18−エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ニシン酸、ドコサヘキサエン酸などのポリエン不飽和脂肪酸類;イソ酸、アンテイソ酸、ツベルクロステアリン酸、ピバル酸、ネオデカン酸などの枝分れ脂肪酸類;タリリン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸、7−ヘキサデシン酸などの三重結合をもつ脂肪酸類;ナフテン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルビン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸などの脂環式カルボン酸類;サビニン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、イプロール酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニペリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、18−ヒドロキシオクタデカン酸、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸、カムロレン酸、リカン酸、フェロン酸、セレブロン酸などの含酸素脂肪酸類;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類等が挙げられる。
カルボン酸の融点が高い(結晶性が高い)場合には、そのカルボン酸基を有するカルボン酸金属塩もまた同様に融点が高くなり、取り扱い難い(作業性の悪い)ものとなる。従って、カルボン酸の融点は65℃以下であることが好ましく、−50〜50℃であることがより好ましく、−40〜35℃であることが特に好ましい。
カルボン酸の炭素数が大きい(分子量が大きい)場合には、その酸基を有するカルボン酸金属塩は、固状または粘度の高い液状となり、取り扱い難い(作業性の悪い)ものとなる。逆に、前記カルボン酸の炭素数が小さい(分子量が小さい)場合には、そのカルボン酸基を有するカルボン酸金属塩は、加熱によって揮発しやすい成分を多く含み、カルボン酸金属塩の触媒能が低下する場合がある。特に、硬化性組成物を薄く引き延ばした(薄層)状態で硬化させる場合は、加熱による揮発が大きく、カルボン酸金属塩の触媒能が大きく低下する場合がある。
これらの点から、カルボン酸は、カルボニル基の炭素を含めた炭素数が、2〜17であるカルボン酸基含有化合物がより好ましく、3〜13であるカルボン酸基含有化合物がさらに好ましく、5〜10であることが特に好ましい。
入手性と相溶性の観点から、好ましいカルボン酸金属塩の具体例としては、オクチル酸ビスマス(2価)、2−エチルヘキサン酸チタニウム(4価)、2−エチルヘキサン酸バナジウム(3価)、2−エチルヘキサン酸カルシウム(2価)、2−エチルヘキサン酸カリウム(1価)、2−エチルヘキサン酸バリウム(2価)、2−エチルヘキサン酸マンガン(2価)、2−エチルヘキサン酸ニッケル(2価)、2−エチルヘキサン酸コバルト(2価)、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム(4価)、ネオデカン酸チタニウム(4価)、ネオデカン酸バナジウム(3価)、ネオデカン酸カルシウム(2価)、ネオデカン酸カリウム(1価)、ネオデカン酸バリウム(2価)、ネオデカン酸ジルコニウム(4価)、オレイン酸チタニウム(4価)、オレイン酸バナジウム(3価)、オレイン酸カルシウム(2価)、オレイン酸カリウム(1価)、オレイン酸バリウム(2価)、オレイン酸マンガン(2価)、オレイン酸ニッケル(2価)、オレイン酸コバルト(2価)、オレイン酸ジルコニウム(4価)、ナフテン酸チタニウム(4価)、ナフテン酸バナジウム(3価)、ナフテン酸カルシウム(2価)、ナフテン酸カリウム(1価)、ナフテン酸バリウム(2価)、ナフテン酸マンガン(2価)、ナフテン酸ニッケル(2価)、ナフテン酸コバルト(2価)、ナフテン酸ジルコニウム(4価)、等が挙げられる。
触媒活性、硬化性の観点から、オクチル酸ビスマス(2価)、2−エチルヘキサン酸チタニウム(4価)、2−エチルヘキサン酸カルシウム(2価)、2−エチルヘキサン酸カリウム(1価)、2−エチルヘキサン酸バリウム(2価)、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム(4価)、ネオデカン酸チタニウム(4価)、ネオデカン酸カルシウム(2価)、ネオデカン酸カリウム(1価)、ネオデカン酸バリウム(2価)、ネオデカン酸ジルコニウム(4価)、オレイン酸チタニウム(4価)、オレイン酸カルシウム(2価)、オレイン酸カリウム(1価)、オレイン酸バリウム(2価)、オレイン酸ジルコニウム(4価)、ナフテン酸チタニウム(4価)、ナフテン酸カルシウム(2価)、ナフテン酸カリウム(1価)、ナフテン酸バリウム(2価)、ナフテン酸ジルコニウム(4価)がより好ましい。
カルボン酸金属塩の製造方法としては、カルボン酸基含有化合物またはそのエステルと水酸化ナトリウムとを反応させてナトリウム石鹸の水溶液を作り、これとは別に調製した金属塩の水溶液を加えて、金属石鹸を沈殿させる沈殿法;カルボン酸基含有化合物またはそのエステルと金属の水酸化物、酸化物、弱酸塩を高温で反応させる溶融法;カルボン酸基含有化合物と金属粉末とを反応させる直接法;無水有機溶剤中でアルコラートまたは塩化物とカルボン酸基含有化合物を反応させる方法などを用いることができる。
カルボン酸金属塩はミネラルスピリットやトルエン、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、白灯油、ジオクチルフタレートなどの希釈溶剤により希釈し、金属含有率が1〜40質量%程度の溶液の形態で使用することが好ましい。
(ii)金属アルコキシド類
金属アルコキシド類としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラ(2−エチルへキシルチタネート)等のチタンアルコキシド類;アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウムアルコキシド類;ジルコニウム−n−プロピレート、ジルコニウム−n−ブチレート等のジルコニウムアルコキシド類が挙げられる。
(iii)金属キレート化合物
金属キレート化合物のキレート化剤としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル等のβ−ケトエステル類;アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、5−メチル−ヘキサン−2,4−ジオン等のβ−ジケトン類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸類;エチレングリコール等のグリコール類;オキシ酢酸等のグリコール酸類;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びそのナトリウム塩、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリ(ピリジニルメチル)アミン等の含窒素化合物;フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、フェナントロリン、ジフェナントロリン、置換フェナントロリン、2,2’,6’,2”−ターピリジン、ピリジンイミン、架橋脂肪族ジアミン、4,4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン、O,S,Se,Teの配位したビピリジン、アルキルイミノピリジン、アルキルビピリジニルアミン、アルキル置換トリピリジン、ジ(アルキルアミノ)アルキルピリジン、エチレンジアミンジピリジン、その他の複素環化合物;2−メルカプトエタノール等のマルカプトアルコール類;エタンジチオール等のジチオール類;2−メルカプトエチルアミン等のメルカプトアミン類;2,4−ペンタンジチオン等のジチオケトン類;等の硫黄含有化合物等が挙げられる。
金属キレート化合物としては、例えば一般式Zr(OR11(R12COCHCOR134−p、Ti(OR11(R12COCHCOR134−qおよびAl(OR11(R12COCHCOR133−rで表される化合物が好ましい。
上記一般式においてR11およびR12は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基(エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基など)である。R13は、前記と同様の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜16のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリル基、ステアリル基など)である。またp〜qは0〜3の整数、rは0〜2の整数を示す。
金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウムであり、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウムが最も好ましい。
金属化合物(A2)としては、金属化合物(A1)と組み合わせて反応性、硬化性を発現しやすい点で(iii)金属キレート化合物が好ましい。そのうちでも、より反応性、硬化性を発現しやすい点で、チタニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、またはアルミニウムキレート化合物がより好ましく、チタニウムキレート化合物がさらに好ましい。
本発明の硬化性組成物における硬化触媒(A)の含有量は、シリル基含有重合体(S)の100質量部に対して0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。硬化触媒(A)の添加量を0.001質量部以上とすることにより硬化時の反応性を充分に向上させやすく、速い硬化速度が得られやすい。10質量部以下とすることにより可使時間を確保しやすい。
硬化触媒(A)における、鉄キレート化合物(A1)と金属化合物(A2)の割合は、質量比(A1)/(A2)=0.01/1〜10/1が好ましく、0.05/1〜5/1がより好ましい。金属化合物(A2)の1に対して、鉄キレート化合物(A1)の割合が0.01以上、10以下であると十分な可使時間内で硬化速度を調整でき、内部硬化を含めた硬化状態が良好となりやすい。
<添加剤>
本発明の硬化性組成物には、硬化触媒(A)以外に添加剤を含有させることができる。
添加剤は公知のものを適宜使用できる。例えば、後述の硬化剤、脱水剤、基材投錨力改良剤(P)、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物は、低粘度であり無溶剤での塗工が可能であるが、溶剤を含有させてもよい。
本発明の硬化性組成物においては、可塑剤を用いないことが好ましい。特にフタル酸ジオクチル等のエステル系可塑剤は、用いないことが好ましい。エステル系可塑剤を用いると、硬化物(粘着体)と、これと一体的に剥離されるフィルム等の基材との接着力が低下し、糊残り(adhesive deposit)が発生する場合があるからである。
[硬化剤]
シリル基含有重合体(S)を含む硬化性組成物は水と接触することにより硬化する。したがって大気中の水と反応して湿気硬化する。また、硬化させる直前に、硬化剤として水(HO)を添加してもよい。この場合の水の添加量は、シリル基含有重合体(S1)〜(S3)、他の加水分解性シリル基を有する重合体および加水分解性シリル基を有する基材投錨力改良剤(P)の合計量の100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.05〜0.5質量部が特に好ましい。硬化剤の添加量を0.01質量部以上とすることにより硬化を有効に促進でき、硬化剤の添加量を5質量部以下とすると可使時間を確保しやすい。
[脱水剤]
硬化性組成物には、貯蔵安定性を改良するために、本発明の効果を損なわない範囲で少量の脱水剤を含有させてもよい。
かかる脱水剤の具体例としては、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のオルトギ酸アルキル;オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等のオルト酢酸アルキル;メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシラン等の加水分解性有機シリコーン化合物;加水分解性有機チタン化合物等が挙げられる。これらの中でもビニルトリメトキシシラン又はテトラエトキシシランがコスト、脱水能力の点から好ましい。
硬化性組成物に脱水剤を添加する場合、その添加量は、シリル基含有重合体(S1)〜(S3)、他の加水分解性シリル基を有する重合体および基材投錨力改良剤(P)の合計量の100質量部に対して0.001〜30質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。
[基材投錨力改良剤(P)]
硬化性組成物に、基材投錨力改良剤を含有させてもよい。基材投錨力改良剤(P)とは、粘着体層と基材との接着力を向上させる添加剤である。
基材投錨力改良剤(P)としては、シランカップリング剤、イソシアネート化合物、および、ウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。特に比較的少量の添加により、基材への接着力が向上すると同時に粘着体からのブリードアウトもほとんど無いことからシランカップリング剤を用いることが特に好ましい。
前記シランカップリング剤としては、加水分解性基を有するシランカップリング剤が好ましい。具体的な加水分解性基を有するシランカップリング剤としては、イソシアネートシラン類、アミノシラン類、メルカプトシラン類、エポキシシラン類などが好ましく、アミノシラン類、エポキシシラン類が特に好ましい。これらのシラン類としては、前述の加水分解性シリル基の導入方法(PQ1)〜(PQ4)において具体的に例示される化合物が好適に例示できる。
基材投錨力改良剤(P)としてのイソシアネート化合物としては、公知のポリイソシアネート化合物の変性体等の多官能ポリイソシアネートが好適に例示できる。変性体としては、トリメチロールプロパンアダクト型変性体、ビュウレット型変性体、またはイソシアヌレート型変性体等が挙げられる。具体的にはデュラネートP301−75E(旭化成社製、トリメチロールプロパンアダクト型HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、イソシアネート基含有量:12.9質量%、固形分:75質量%)、コロネートL(日本ポリウレタン社製、トリメチロールプロパンアダクト型TDI(トリレンジイソシアネート)、イソシアネート基含有量:13.5質量%、固形分:75質量%)等が例示できる。
基材投錨力改良剤(P)としてのウレタン樹脂としては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー、水酸基末端ウレタンプレポリマーが利用できる。水酸基末端ウレタンプレポリマーとしては、MP2000(セメダイン社製)などが例示できる。
基材投錨力改良剤(P)を用いる場合、その添加量は、シリル基含有重合体(S1)〜(S3)および他の加水分解性シリル基を有する重合体の合計量の100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.01〜6質量部がより好ましい。0.01質量部以上、10質量部以下であると糊残りが抑えられる。
[その他の添加剤]
硬化性組成物に下記の安定剤、難燃剤、帯電防止剤又は離型剤等を配合してもよい。
安定剤としては、たとえば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、または光安定剤などが挙げられる。
難燃剤としては、たとえば、クロロアルキルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、アンモニウムポリホスフェート、又は有機臭素化合物等が挙げられる。
帯電防止剤としては、高分子界面活性剤や無機塩類、イオン性流体等が挙げられる。
離型剤としては、たとえば、ワックス、石鹸類、又はシリコーンオイル等が挙げられる。
[溶剤]
溶剤は特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、エステルアルコール類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類又はエステルエーテル類が挙げられる。
これらの中でも、溶剤としてアルコール類を用いると、硬化性組成物の保存安定性を向上させることができるため好ましい。このアルコール類としては、炭素数1〜10のアルキルアルコールであることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソペンチルアルコール又はヘキシルアルコールであることがより好ましく、メタノール又はエタノールであることが更に好ましい。特にメタノールを用いた場合に、添加量を増やすと、硬化性組成物の可使時間を長くすることができる。すなわち硬化性組成物を調製後の所定粘度まで達する時間、所謂ポットライフを長くするために有効な手法である。
第1、第2の硬化性組成物に溶剤を添加する場合、その添加量は、シリル基含有重合体(S1)〜(S3)、他の加水分解性シリル基を有する重合体および基材投錨力改良剤(P)の合計量100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。添加量が500質量部を超えると、溶剤の揮発に伴って硬化物の収縮が生じる場合がある。
<粘着体>
本発明の粘着体は、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる。硬化性組成物の硬化後に成形することも可能である。例えば硬化性組成物を、シート状などの適当な形状に硬化させた後、型抜きを行うなどで所定の形状に成形し、単独で粘着体として利用することが可能である。しかし、基材に硬化性組成物を塗工し、硬化させて積層体として利用することが好ましい。
硬化性組成物の硬化条件は、必要に応じて設定される。硬化性組成物を加熱して硬化させる工程を有することが好ましい。例えば硬化性組成物を、必要に応じて所定量の水を硬化剤として添加、混合した後、基材の上に塗工する。塗工厚さは適宜設定される。この後オーブン等で加熱し、必要に応じて室温で養生することにより硬化性組成物を硬化させることができる。室温で養生する際または養生した後に加湿環境に放置することも有効である。硬化性組成物に対する加熱は、基材の耐熱温度等にもよるが、加熱温度は60〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。該加熱温度に保持する時間(加熱時間)は0.5〜30分が好ましく、1〜5分程度が好ましい。特に溶剤を用いた場合には、溶剤が乾燥するように加熱時間を設定することが好ましい。ただし急激な乾燥は、発泡の原因になるため好ましくない。またオーブン内でまたはオーブンから取り出した後に、スチームを当ててもよい。
硬化性組成物の塗工は、連続的に行うこともできる。すなわちロールから取り出した基材に、硬化性組成物を塗工し、インラインオーブンで加熱乾燥させる。得られた成形体(積層体)に、必要に応じてセパレータを合わせ、巻き取る。これを必要に応じて加湿した室温環境に保管し養生することにより成形された粘着体が得られる。また別の塗工方法としては、上記の方法において基材とセパレータを逆にしてもよい。すなわち最初にセパレータ上に塗工し、後から基材を貼着させてもよい。
<粘着積層体(粘着シート)>
本発明は、少なくとも1層の基材層と、本発明の粘着体からなる粘着体層とを有する粘着積層体(以下、単に積層体ということもある)を提供する。積層体がシート形状である場合にはこの積層体は粘着シートとなる。また積層体をテープ形状に成形加工すれば粘着テープが得られる。
なお基材を用いずに、セパレータに、硬化性組成物を塗工し、硬化させて硬化体を得た後に、該セパレータを剥離すると、粘着体単体で扱うことも可能となる。この場合に例えば両面粘着シート等が得られる。本発明の硬化性組成物は溶剤を用いない場合であっても低粘度で塗工特性に優れる。このためセパレータに対しても、良好な塗工が可能である。
具体的にはセパレータに対して硬化性組成物を塗工し、加熱乾燥させて、さらに別のセパレータを積層させ、養生することで、基材を有していない粘着体のみの粘着性シートが得られる。このとき別のセパレータを用いずに、最初に塗工したセパレータの背面を用いて、巻き取りを行い、粘着体のロールを製造してもよい。
積層体は、必要に応じて他の層を有していてもよい。例えば基材層と粘着体層との間に接着層(プライマー層を含む)を設け、基材と粘着体の剥離を防止してもよい。また基材層と粘着体層との間に発泡体等からなる緩衝体層を設けてもよい。また基材層と粘着体層との間に導電材層を設けてもよい。導電材層は、金属系導電材、イオン性導電材、カーボン系導電材等の導電材料を基材層に塗工することで得られる。導電材料は単独で塗工してもよく、各種樹脂等のバインダーを併用して塗工してもよい。また粘着体層の基材層とは反対側に、セパレータ(剥離ライナー)層を設けてもよい。また基材層の粘着体層とは反対側に印刷層を設けてもよい。印刷層を設けると、印字を行うことが可能となり、また意匠性を高くすることも可能である。また基材層を挟んで両面に粘着体層を設けてもよい。
この場合に両面粘着シート等が得られる。
<基材>
基材の材質は特に限定されない。好ましい例としてはポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体(ブロック共重合体、ランダム共重合体)等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリオレフィン類;ボール紙等の紙類;織布、不織布等の布類;アルミニウム箔等の金属箔等が挙げられる。これらの基材は組み合わせて用いてもよい。例えばPET層、金属箔層、ポリエチレン層を積層した積層体を用いてもよい。
基材の表面は事前の加工を行わなくてもよい。特にポリエステル類、紙類の粘着体層との接合面は事前の加工を行わなくても硬化性組成物の硬化に伴う接着効果により剥離しにくくなる。必要に応じてプライマー処理等の易接着処理を施しておいてもよい。
一方ポリオレフィン類を基材に用いる場合には、硬化性組成物を塗工する面を事前に易接着処理しておくことが好ましい。未処理の面に対しては剥離粘着力が低くなる場合があるためである。かかる易接着処理としては、コロナ処理(コロナ放電処理)、プライマー処理が例示できる。特に処理が簡単で工程が簡略化できるためにコロナ処理を行うことが好ましい。
例えば厚さが100μmのポリプロピレンフィルムの片面にコロナ処理を行い、この処理面に硬化性組成物を塗工する。塗工後加熱乾燥を行う。このようにして得られたフィルムは、粘着体を設けていない面(背面)がそのままセパレータとして利用できる。すなわちこのフィルムをそのまま巻き取ることにより粘着フィルムが製造できる。すなわちセパレータを介装することなくロール状に巻回することができる。
<粘着体層>
本発明の粘着シート等において、粘着体層の厚さは特に限定されない。例えば、塗工精度の点からは5μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。また粘着力の安定性、経済性の点からは200μm以下が好ましく、100μm以下がさらに好ましく、80μm以下がより好ましい。
<セパレータ>
上記の粘着体層の粘着面(被着体を貼着させる面)にセパレータを貼付させてもよい。
セパレータとしては、一般の剥離剤で表面処理を行った紙類の他に、上述の未処理のポリオレフィン類を用いることができる。また紙類等の基材にポリオレフィン類を積層したものも使用できる。従来のセパレータに含まれるシリコーンオイルは電子部品の汚染の原因となるが、ポリオレフィン類をセパレータに用いるとシリコーンオイル等による汚染が防止できる。これは電子部品等の保護シートとして上記粘着シートを適用する際に有益である。またポリオレフィン類を単独でセパレータとして用いると、廃棄物のリサイクルが容易になる。
<粘着シートの用途>
本発明によれば、特に、被着体への濡れ性および密着性が良好であるとともに、低い粘着力を有し再剥離性に優れた粘着シートが得られる。また、剥離帯電量が抑制され、かつ高速剥離特性にも優れた粘着シートが得られる。したがって、粘着シートの用途としては、具体的には、電子基板、ICチップ等の電子材料用保護シート;偏光板、光拡散板、光拡散シート、プリズムシート等の光学部材用保護シート;各種ディスプレイ用保護シート;自動車用保護シート;建築板材用表面保護フィルム;壁装用化粧シート;金属板、塗装鋼板、合成樹脂板、化粧合板、熱反射ガラスなどの製品の表面保護等が好適に例示される。自動車用保護シート等の比較的大型の保護シートや仮止め用途の場合には、風等ではがれないように、低粘着領域程度の一定の粘着力が要求される場合もある。建築板材用表面保護フィルムは施工時保護のため使用され、内装終了後は撤去される。
金属板、塗装鋼板、合成樹脂板、化粧合板、熱反射ガラスなどの製品の表面保護用途では、塵の付着や傷つきが無いようにし、使用後に各種被着体の表面を粘着剤で汚染することなく容易に剥がすことが要求されている。
保護シートや保護テープは、部品の一時的固定や保護の役割が終了した時点で、剥離除去される。しかし保護シートが貼着されていた部材から剥離される際に、保護シートと部品との間に静電気(いわゆる剥離帯電)が発生する。この静電気が電子部品の回路に悪影響を与えたり、静電気によって塵やゴミが部材表面に付着しやすくなるという問題がある。また、液晶ディスプレイ(LCD)の表面保護フィルムも、使用時には剥離除去される。保護フィルムが液晶ディスプレイから剥離される時に、剥離帯電が生じる場合がある。
この剥離帯電により、液晶配列が乱され、画像が乱れるという障害を生じる場合がある。
したがって、貼着後に剥離される粘着性シートにおいては、剥離帯電に起因する静電気の発生の抑制や、発生した静電気の速やかな除電が要求される。これは被着体の表面帯電が、異物や塵埃の被着体への付着の原因となるため、または、被着体の機能低下の原因となるためである。
またディスプレイ、偏光板、電子基板、ICチップ等の電子部品等の表面保護シートは、高速でスムーズに剥離できることが好ましい。一般的に粘着性シートを剥離するために必要な引っ張り力(剥離強度)は、引っ張り速度(剥離速度)が速いほど大きくなる傾向がある。しかし低速度で剥離する場合の剥離強度に対して、高速で剥離する場合の剥離強度が大きくならないことが要求される。すなわち保護シートは、剥離強度の剥離速度依存性が低く、高速剥離特性が優れることが要求される。
本発明の粘着シートは、このような要求を満たすことができ、特に、電子材料用保護シートや光学部材用保護シートなど、製造工程中で剥離される保護シートとして、本発明の粘着シートは好適である。これは、粘着力が低く再剥離性が良好であるとともに、剥離帯電量が小さく、高速剥離特性に優れるためである。
本発明の粘着体は柔軟性に優れるとともに、濡れ性に優れる。このため被着体の表面に凹凸が存在する場合であっても、良好な密着性が確保される。したがって光学部材保護用粘着シートとして好適である。また本発明の粘着シートは、密着性に優れ、貼着した被着体の貼着面内でのずれはほとんど発生しないにもかかわらず、剥離粘着力が低く簡単に剥離可能であり、液晶パネル等の製造工程の生産性向上に有用である。
すなわち本発明の粘着シートは、光拡散板またはプリズムシートの保護フィルム、特にその凹凸面の保護フィルムとして好適である。また本発明の粘着シートを貼着した光学部材は、粘着体の粘着力の経時変化が小さいために、長期間保管しても低い剥離粘着力で剥離することができ、かつ、その剥離粘着力がほとんど変化しない。このため、光学部材の長期間の保管が可能となる。
また本発明の粘着シートはバックグラインドテープとしても好適である。バックグラインドテープとは、半導体ウエハに電子回路を形成後、バックグラインド(ウエハ裏面の研削)時にウエハ表面を保護するテープである。バックグラインドテープを回路面に貼着し、回路面の損傷、研削水・研削屑の浸入によるウエハ表面の汚染を防止できる。
また本発明の粘着シートは、密着性に優れると共に、剥離粘着力が低く容易に被着体から剥離可能である。ポリオレフィン類を基材に用いた場合には、セパレータが不要であり、シリコーンなどの汚染も発生しない。また剥離帯電が抑制されるため回路に損傷を与える危険が少ない。
本発明によれば、シリル基含有重合体(S)を硬化成分とする硬化性組成物に、硬化触媒(A)として、鉄キレート化合物(A1)と鉄キレート化合物以外の金属化合物(A2)を併用することにより、硬化時の反応性が良好に向上して、硬化速度が良好に増大するとともに、良好な硬化状態が得られる。すなわち硬化性が良い。また硬化性組成物の可使時間も長い。硬化物は表面にタックがなく、表面および内部の硬化状態が良好であり良好な再剥離性を示す。したがって粘着体として好適である。
かかる効果が得られる理由は明確ではないが、後述の実施例および比較例の結果に示されるように、鉄キレート化合物(A1)は可使時間が長くて、加熱時の硬化反応速度が大きい。これを用いることにより、特に加熱時に硬化物表面における硬化が促進される。
さらに金属化合物(A2)を併用することにより硬化物の内部の硬化性が向上する。したがって、鉄キレート化合物(A1)と鉄キレート化合物以外の金属化合物(A2)を併用することにより、可使時間が長くて表面および内部の硬化状態が良好な硬化物(粘着体層)が得られると考えられる。
本発明の硬化性組成物によれば、従来の有機スズ化合物を使用しなくても、有機スズ化合物を硬化触媒として用いた場合と同等の硬化性を得ることができ、可使時間は有機スズ化合物を用い場合よりも長くできる。本発明において有機スズ化合物を併用することも可能であり、この場合は硬化性を低下させることなく、有機スズ化合物の使用量を低減することができ、環境的に好ましい。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下において、プロピレンオキシドをPO、ジブチルスズジラウレートをDBTDLと略記する。水は純水を用いた。
(参考製造例1:複合金属シアン化物錯体触媒の製造)
以下の方法で、有機配位子としてtert−ブチルアルコールを有する亜鉛ヘキサシアノコバルテート(以下、TBA−DMC触媒という。)を製造した。本例中のポリオールXは、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合して得られた、数平均分子量(Mn1)が1000のポリオールである。
まず、500mlのフラスコに、塩化亜鉛10.2gと水10gからなる水溶液を入れ、この水溶液を40℃に保温しつつ、300rpmで撹拌しながら、ここへ4.2gのカリウムヘキサシアノコバルテート(K3[Co(CN)]6)と水75gからなる水溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに混合物を30分撹拌した後、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル(以下、EGMTBEと略す。)の40g、tert−ブチルアルコール(以下、TBAと略す。)の40g、水の80g、およびポリオールXの0.6gからなる混合物を前記混合物中に添加し、40℃で30分、さらに60℃で60分間撹拌した。得られた反応混合物を、直径125mmの円形ろ板と微粒子用の定量ろ紙(ADVANTEC社製のNo.5C)とを用いて加圧下(0.25MPa)で50分かけてろ過を行い、固体(複合金属シアン化物錯体を含むケーキ)を分離した。
次に、この複合金属シアン化物錯体を含むケーキに18gのEGMTBE、18gのTBA、および84gの水からなる混合物を添加して30分撹拌した後、加圧ろ過(ろ過時間:15分)を行った。ろ過により得られた複合金属シアン化物錯体を含むケーキに、さらに54gのEGMTBE、54gのTBA、および12gの水からなる混合物を添加して30分撹拌し、有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体を含むEGMTBE/TBAのスラリーを得た。
このスラリーを5gほどフラスコに秤り取り、窒素気流で概ね乾かした後、80℃で4時間減圧乾燥した。得られた固体を秤量した結果、スラリー中に含まれる複合金属シアン化物錯体の濃度は4.70質量%であることがわかった。
(製造例:ポリエーテル系シリル基含有重合体(S1−1)の製造)
[第1のステップ]
グリセリンにPOを開環重合して得られたMn=1000のトリオール295gを開始剤として用い、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下で4130gのPOを重合させて、平均水酸基価11.2mgKOH/gのポリオキシプロピレンポリオール(Mn=15000。以下、ポリオールYという。)を得た。
[第2のステップ]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、上記で得たポリオールYの1000gと、イソシアネートシラン類としてTMS(3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネート基の含有率=17.87)の47gを加え、ウレタン化触媒としてDBTDLを加えた。DBTDLの使用量はポリオールYとTMSの合計量に対して50ppmに相当する量とした。そして80℃まで徐々に昇温し、IRにてNCOのピークが消失するまで反応を行い、シリル基含有重合体(S1−1)を得た。ポリオールYの全水酸基に対する加水分解性シリル基導入割合は97%であった。
(実施例1〜4および比較例1〜7)
[硬化性組成物の調製]
表1、2に示す配合で、上記で得たシリル基含有重合体(S1−1)、下記の硬化触媒(A)、および溶剤としてメタノールを混合して硬化性組成物を調製した。表中の配合量の単位は、特に断りが無い限り「質量部」である。
[硬化触媒(A)]
鉄キレート化合物A1−1:鉄トリスアセチルアセトナート(日本化学産業社製、製品名:ナーセム第二鉄)。
チタン化合物A2−1:ジブトキシチタンビスアセチルアセトナート(日本化学産業社製、製品名:ナーセムチタン)。
有機スズ化合物A2−2:ジブチルスズビスアセチルアセトナート(日東化成社製、製品名:ネオスタンU−220)。
ジルコニウム化合物A2−3:テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム(日本化学産業社製、製品名:ナーセムジルコニウム)。
[粘着体・粘着シートの製造]
基材として、易接着処理された厚さ38μmのPETフィルムを用いた。
上記で得た硬化性組成物を、基材の易接着処理面上に、乾燥後の膜厚が15μmになるように塗工した後、循環式オーブンにて100℃で1分加熱し、23℃かつ相対湿度65%の雰囲気下で168時間保存することにより、硬化性組成物を硬化させて粘着体層を形成した。こうして基材上に粘着体層を有する粘着シートを得た。
(評価方法)
硬化性組成物の可使時間、硬化性、粘着体層の剥離強度を下記の方法で評価した。結果を表1、2に示す。
[可使時間]
シリル基含有重合体(S1−1)、硬化触媒(A)、および溶剤を混合して得られた硬化性組成物を、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で保管し、1時間ごとに基材上に塗布する試験を行った。混合直後から、塗布したときに塗膜に筋状痕が見られるまでの時間、または硬化性組成物にゲル化が見られるまでの時間のいずれか早い方を可使時間とした。
[硬化性]
上記循環式オーブンにて100℃で1分加熱した粘着体層を、23℃かつ相対湿度65%の雰囲気下で168時間養生した後、指で粘着体層の表面に触れ、タックがなく指紋跡も残らないものを○、タックはあるが指紋跡が残らないものを△、タックもあり指紋跡が残るものを×とした。
[剥離強度]
被着体として、ガラス板、またはJISに規定されるSUS−304合金からなるステンレス鋼板(厚さ1.5mm)にブライトアニール処理したもの(表にはSUS−BAと記載する。)を用いた。このステンレス鋼板のブライトアニール処理した表面は、ほぼ平滑で光沢を有する。
上記で得た粘着シートからなる試験片(幅:25mm)の粘着体層を、23℃雰囲気中で被着体に貼着し、2kgのゴムロールで圧着した。30分後、24時間(1日)、168時間(7日)、336時間(14日)、672時間(28日)経過後に、それぞれJIS B 7721に規定する引張り試験機(オリエンテック社製、RTE−1210)を用い、剥離強度(180度ピール、引張り速度300mm/分)を測定した。測定値(単位:N/25mm)を表1、2に示す。表中の「C」とは、粘着体層の内部硬化が不充分なために、凝集破壊した部分があることを表わす。
なお、硬化性の評価が△または×である場合は、剥離強度の測定は行わない。
Figure 0005447284
Figure 0005447284
表1の結果に示されるように、硬化触媒として鉄キレート化合物(A1)とチタン化合物またはジルコニウム化合物(A2)を併用した実施例1〜4の硬化性組成物は、加熱による硬化反応速度が速く、100℃、1分間の加熱でタックがなく指紋跡も残らない良好な硬化状態が得られた。また可使時間は6時間以上と長く良好であった。さらに実施例1〜4の硬化性組成物が硬化した粘着体層は、内部の硬化状態も良好であり、良好な再剥離性、すなわち良好な粘着性を示した。
これに対して、表2に示されるように、硬化触媒として有機スズ化合物を単独で用いた比較例1は、硬化速度は速く、表面および内部の硬化状態も良好であったが、可使時間が短かった。
比較例2〜4および比較例7は、鉄キレート化合物(A1)を用いず、チタン化合物(A2−1)を単独で用いた例であるが、チタン化合物(A2−1)の添加量が1質量部以下の比較例2、3、7では充分な硬化性が得られなかった。比較例4において1.2質量部まで多くすれば硬化性は良くなったが、コスト面で好ましくない。
比較例5、6は、鉄キレート化合物(A1−1)を単独で用いた例であるが、鉄キレート化合物(A1−1)の添加量が0.1質量部である比較例5では、粘着体層の表面にタックがあり指紋跡も残って硬化性が良くなかった。0.3質量部添加した比較例6では、表面のタックや指紋跡が改善されたが、内部硬化性が不充分なため、剥離試験時に凝集破壊が生じ、再剥離性が良くなかった。

Claims (5)

  1. 主鎖に、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、および/またはポリカーボネート鎖を有し分子末端に加水分解性シリル基を有するシリル基含有重合体(S)、および硬化触媒(A)を含有し、該硬化触媒(A)が鉄キレート化合物(A1)と鉄キレート化合物以外の金属化合物(A2)とを含み、
    前記鉄キレート化合物(A1)が、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(ベンゾイルアセトナート)鉄およびトリス(アセチルアセト酢酸)鉄からなる群から選ばれる1種以上であり、
    前記金属化合物(A2)が、チタン化合物およびジルコニウム化合物のいずれか一方又は両方であり、
    前記シリル基含有重合体(S)100質量部に対して、前記硬化触媒(A)を0.001〜10質量部含み、
    前記鉄キレート化合物(A1)と前記金属化合物(A2)の使用割合が、質量比(A1)/(A2)で0.01/1〜10/1であることを特徴とする硬化性組成物。
  2. 前記加水分解性シリル基がトリアルコキシシリル基である、請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 請求項1または2に記載の硬化性組成物が硬化してなる粘着体。
  4. 基材上に、請求項3に記載の粘着体からなる粘着体層を有する粘着積層体。
  5. 請求項1または2に記載の硬化性組成物を加熱して硬化させる工程を有する、粘着体の製造方法。
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