JP5447135B2 - 偏光板 - Google Patents

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Description

本発明は、偏光板に関する。
偏光板の一般的な構成は、例えば一軸延伸されかつヨウ素染色されたポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の両面に、セルローストリアセテートフィルムからなる保護フィルムが、ポリビニルアルコールのような粘着剤を介して貼り合わせられたものである。
セルローストリアセテートフィルムは、もともと等方性が高く複屈折発現性が弱いため、視野角拡大等の光学補償を目的とした位相差フィルムには適していない。そこで、偏光板の液晶セル側に、セルローストリアセテート樹脂にいわゆるリターデーション上昇剤を添加した位相差フィルムや、セルローストリアセテート樹脂よりも複屈折発現性の高い、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースの混合脂肪酸エステル、またはセルローストリアセテート樹脂よりもアシル基置換度の低いジアセチルセルロース樹脂の使用などが検討されてきた。
しかしながら、これら位相差フィルムを粘着層を介して液晶セルに接着して液晶パネルとした場合、熱や湿度の影響で基材の伸縮に基づく熱ジワや輝度ムラを生じさせる問題があった。
特許文献1、及び特許文献2には、偏光子の一方の面にセルローストリアセテートフィルム、反対側の面に位相差フィルムであるジアセチルセルロースフィルムが貼合されている偏光板が開示されているが、熱や湿度の影響による上記熱ジワの発生や輝度ムラの発生が見られる。
このような問題は、特に大型TVや外部モニターなどの大型の液晶表示装置として用いられる場合には、バックライトの高輝度化や、外部環境下で用いられることで従来よりも過酷な環境下で用いられる為改善が必要である。
また、視認側の保護フィルム表面の耐傷性を高めようとして、保護フィルム上にハードコート層を設けたハードコートフィルムを用いた偏光板は、上記熱ジワや輝度ムラの発生以外にも、熱や湿度の影響によって基材フィルムとハードコート層間で気泡の発生が見られ、改善が求められている状況にある。
特開2009−265598号公報 特開2009−269944号公報
従って、本発明の目的は、熱や湿度の影響による熱ジワの発生や輝度ムラの発生がなく、更に視認側の保護フィルム表面にハードコート層を設けた際に基材フィルムとハードコート層間で見られる気泡の発生のない偏光板を提供することにある。
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
1.保護フィルム1及び保護フィルム2によって偏光子が挟持された偏光板において、
保護フィルム1は、平均アセチル基置換度が2.80〜2.95のセルロースエステルを含み、フィルム膜厚が20〜38μmであり、フタル酸、アジピン酸、少なくとも一種のベンゼンモノカルボン酸および少なくとも一種の炭素数2〜12のアルキレングリコールのいずれかを反応させて得られたエステル化合物を1〜35質量%含有し、かつフィルムのtanδが下記式(1)の条件を満たすセルロースエステルフィルムであり、
保護フィルム2は、平均アセチル基置換度が保護フィルム1に含まれるセルロースエステルよりも0.3〜0.9低く、炭素数3以上のアシル基置換度が0〜0.5であるセルロースエステルを含むセルロースエステルフィルムであることを特徴とする偏光板。
式(1) 0.058≧tanδ−40/tanδpeak/√膜厚≧0.0345(単位:(μm) -1/2
(ここで、tanδpeakとは、25℃〜210℃のtanδ値を測定した最大値、tanδ−40とは、tanδpeakを示した時の温度−40℃でのtanδの値をいう。膜厚とは、フィルムの厚さをμm単位で表したときの値をいう。
2.前記保護フィルム1に含有されるセルロースアセテートの数平均分子量が125000〜155000であることを特徴とする前記1に記載の偏光板。
3.前記保護フィルム2のアセチル基置換度が2.1〜2.5で、下記一般式(3)で表され、総平均置換度が6.1〜6.9である化合物を含有していることを特徴とする前記1または2に記載の偏光板。
Figure 0005447135
(式中、R〜Rは、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、或いは、置換又は無置換のアリルカルボニル基を表し、R〜Rは、同じであっても、異なっていてもよい。)
4.前記保護フィルム1がハードコート層を有していることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の偏光板。
本発明によれば、熱や湿度の影響による熱ジワの発生や輝度ムラの発生がなく、更に視認側の保護フィルム表面にハードコート層を設けた際に基材フィルムとハードコート層間で見られる気泡の発生のない偏光板を提供することができる。
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の偏光板は、保護フィルム1及び保護フィルム2によって偏光子が挟持された偏光板であり、保護フィルム1は、平均アセチル基置換度が2.80〜2.95のセルロースエステルを含み、フィルム膜厚が20〜38μmであり、フタル酸、アジピン酸、少なくとも一種のベンゼンモノカルボン酸および少なくとも一種の炭素数2〜12のアルキレングリコールのいずれかを反応させて得られたエステル化合物を1〜35質量%含有し、かつフィルムのtanδが下記式(1)の条件を満たすセルロースエステルフィルムであり、保護フィルム2は、平均アセチル基置換度が保護フィルム1に含まれるセルロースエステルよりも0.3〜0.9低く、炭素数3以上のアシル基置換度が0〜0.5である特定のセルロースエステルを含むセルロースエステルフィルムをその構成とし、熱や湿度の影響による熱ジワの発生や輝度ムラの発生がないことを特徴とする偏光板である。
式(1) 0.058≧tanδ−40/tanδpeak/√膜厚≧0.0345(単位:(μm) -1/2
(ここで、tanδpeakとは、25℃〜210℃のtanδ値を測定した最大値、tanδ−40とは、tanδpeakを示した時の温度−40℃でのtanδの値をいう。膜厚とは、フィルムの厚さをμm単位で表したときの値をいう。
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、偏光子を挟持する保護フィルム1が平均アセチル基置換度2.80〜2.95のセルロースエステルを含有するセルロースエステルフィルム(TACフィルムと呼称)であり、保護フィルム2が保護フィルム1のセルロースエステルの平均アセチル基置換度より0.3〜0.9低く、炭素数3以上のアシル基置換度が0〜0.5であるセルロースエステルを含有するセルロースエステルフィルム(DACフィルムと呼称)である場合、TACフィルムとDACフィルムの引張応力の違いから、熱や湿度の影響によって偏光板自体に歪みが生じ、熱ジワ・輝度ムラが起こることを突き止めた。一般にDACフィルムの応力はTACフィルムの応力よりも高い。
本発明では、上記保護フィルムの引張応力を調整する検討過程において、保護フィルム1であるTACフィルムの膜厚の影響について検討した結果、TACフィルムの膜厚が40μm以上の場合はTACフィルムとDACフィルムの引張応力のバランスが悪いが、本発明の範囲の膜厚までTACフィルムを薄膜化していくと、次第にDACフィルムの引張応力が支配的となり、この結果偏光板全体の歪みが小さくなり熱ジワが起こりにくくなることを見出したものである。
また、特定の範囲の粘弾性を有するTACフィルムを用いることで、熱や湿度の影響による歪みが更に小さくなり、熱ジワのみならず輝度ムラの低減にも効果があることを見出した。
更に、視認側に配置する保護フィルム1が本発明に係る構成であると、該保護フィルム1上にハードコート層を設けたハードコートフィルムを偏光板に貼合して長尺ロール状で長期間保管しても、熱や湿度の影響による基材の伸縮によってフィルムとハードコート層間で発生する気泡を、生じ難くすることが可能になることを見出したものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
<保護フィルム1>
保護フィルム1は、平均アセチル基置換度が2.80〜2.95の特定のセルロースエステルを含み、フィルム膜厚が20〜38μmであり、かつフィルムの粘弾性の指標であるtanδが前記式(1)の条件を満たすセルロースエステルフィルムであることを特徴とする。
フィルム膜厚は、保護フィルム2との引張応力の調整の為、20〜38μmであることは必須であり、好ましくは25〜35μmである。膜厚はドープの流延条件、延伸条件によって調整される。
(セルロースエステル)
本発明に係る保護フィルム1に用いるセルロースエステルは、アセチル基置換度が2.80〜2.95のセルロースアセテートである。アセチル基置換度は2.84〜2.94が好ましい。アセチル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
また、上記セルロースエステルの数平均分子量125000〜155000であることが好ましい。数平均分子量(Mn)は、129000〜152000であることが好ましい。さらに、重量平均分子量(Mw)は、265000〜310000であることが好ましい。Mw/Mnは、1.9〜2.1であることが好ましい。
前記平均分子量(Mn、Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースアセテートは、慣用の方法、例えば、硫酸触媒法、酢酸法、メチレンクロライド法などの方法で製造でき、原材料は特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースアセテートはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。
本発明に係るセルロースエステルは、例えば、特開平10−45804号、特開2005−281645号に記載の方法を参考にして合成することができる。
(tanδ)
本発明に係る保護フィルム1はフィルムの粘弾性と膜厚の関係で、下記式(1)を満たすことを特徴としている。
式(1) 0.058≧tanδ−40/tanδpeak/√膜厚≧0.0345(単位:(μm) -1/2
(ここで、tanδpeakとは、25℃〜210℃のtanδ値を測定した最大値、tanδ−40とは、tanδpeakを示した時の温度−40℃でのtanδの値をいう。膜厚とは、フィルムの厚さをμm単位で表したときの値をいう。
[tanδ−40/tanδpeak/√膜厚]の値が、0.0345未満の場合や、0.08を越えた時は寸法安定性が悪くなる。この値が高すぎても低すぎても寸法安定性に対し、バランスが良くないということが分かっている。
式(1)のより好ましい範囲は、0.05≧tanδ−40/tanδpeak/√膜厚≧0.0345(単位:(μm) -1/2 である。
tanδとは、損失正接とも呼ばれ、tanδ=G’/G”(G’:貯蔵弾性率、G”:損失弾性率)として定義される値である。貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)は、動的粘弾性測定装置DVA−225(アイティー計測制御(株)製)で透明フィルムを測定することによって得られる。貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)とは、試料に対し振動により正弦波形のひずみ(変形)を与えたときに生ずる複素弾性率の中の、ひずみと同位相でひずみのエネルギーが応力として貯蔵される実数成分、ひずみγより90°位相が進んでおりひずみエネルギーが他のエネルギーに変換されるなどして損失を発生させる虚数成分を表している。なお、本発明におけるtanδは測定周波数1Hzでの値である。動的粘弾性の測定は、特に限定しないが、機械方向または機械方向に垂直な方向で行うことが好ましい。本発明において「機械方向」とは、例えば、後述の溶液流延法によりフィルムを作製する場合においてはフィルムの流延方向と同じ方向を意味し、この場合、機械的方向はフィルムの長手方向に一致する。
tanδの最大値とは、tanδ−温度(℃)吸収曲線(温度範囲25〜210℃)における最も高いtanδをいう。
tanδの測定の一例を示すと、試料をあらかじめ23℃55%RHの雰囲気下24時間調湿したものを使用し、湿度55%RH、下記条件で昇温させながら、または温度設定して測定する。
測定装置:動的粘弾性測定装置DVA−225(アイティー計測制御(株)製)
試料:幅5mm、長さ50mm(ギャップ20mmに設定)
測定条件:引張モード
測定温度:25〜210℃
昇温条件:5℃/min
周波数:1Hz
tanδの制御は、セルロースエステルの種類、後述するエステル化合物の種類、添加量、製膜条件、特に膜厚と延伸条件によって行うことができる。
(エステル化合物)
本発明に係る保護フィルム1は、フタル酸、アジピン酸、少なくとも一種のベンゼンモノカルボン酸および少なくとも一種の炭素数2〜12のアルキレングリコールとのいずれかを反応させて得られたエステル化合物を含むことが、tanδに係る前記式(1)を満足する上で必要である。
本発明に係るエステル化合物におけるベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。安息香酸であることが最も好ましい。
炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。特に1,2−プロピレングリコールが好ましい。
本発明に係るエステル化合物は、最終的な化合物の構造としてアジピン酸残基およびフタル酸残基を有していればよく、エステル化合物を製造する際には、ジカルボン酸の酸無水物またはエステル化物として反応させてもよい。
本発明に係るエステル化合物は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000である。また、その酸価は、1.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.5mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものである。
本発明に係るエステル化合物は、公知の方法で合成することができる。本発明では、アジピン酸残基およびフタル酸残基のいずれも有するエステル化合物であることが好ましく、ジカルボン酸成分としてアジピン酸、フタル酸を同時に存在させて合成することで得ることができる。
本発明に係るエステル化合物は、その合成時点では分子量および分子構造に分布を有する混合物であるが、そのなかに本発明に好ましい成分である、フタル酸残基およびアジピン酸残基を構造として有するエステル化合物を少なくとも1種類有していればよい。
本発明に係るエステル化合物を使用した保護フィルム1は、ジカルボン酸成分としてアジピン酸単独、フタル酸単独で合成したエステル化合物の混合物よりも本発明の効果が大きい。
上記化合物は、保護フィルム1中に1〜35質量%、特に5〜30質量%含むことが好ましい。この範囲内であれば、ブリードアウトなどもなく好ましい。
以下に、エステル化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
Figure 0005447135
Figure 0005447135
Figure 0005447135
(その他の可塑剤)
本発明に係る保護フィルム1は、本発明に係るエステル化合物以外に、本発明の効果を得る上で必要に応じて他の可塑剤を含有することができる。好ましくは、1)多価アルコールエステル系可塑剤、2)多価カルボン酸エステル系可塑剤、3)グリコレート系可塑剤、4)フタル酸エステル系可塑剤、5)脂肪酸エステル系可塑剤、6)リン酸エステル系可塑剤等から選択される。これらの可塑剤は、セルロースエステルに対して1〜30質量%の範囲で使用されることが好ましい。
1)多価アルコールエステル系可塑剤は下記一般式(1)で表される多価アルコールのエステル化合物である。
一般式(1) R1−(OH)n
(式中、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に、安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
この他、トリメチロールプロパントリアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテートなども好ましく用いられる。特開2008−88292号に記載の一般式(I)で表されるエステル化合物(A)を使用することも好ましい。
2)多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は2価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(2)で表される。
一般式(2) R2(COOH)m(OH)n
(但し、R2は(m+n)価の有機基、mは2以上の正の整数、nは0以上の整数、COOH基はカルボキシル基、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基を表す)
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような2価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマール酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールを好ましく用いることができる。
炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができ、フェノールとしては、フェノール、パラクレゾール、ジメチルフェノール等を単独または2種以上を併用して使用することができる。
特開2008−88292号に記載の一般式(II)で表されるエステル化合物(B)を使用することも好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがさらに好ましい。
多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
3)グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート等が挙げられる。
4)フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
5)脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
6)リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
(紫外線吸収剤)
本発明に係る保護フィルム1は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、よりさらに好ましくは5%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、保護フィルム1の乾燥膜厚が20〜38μmの場合は、保護フィルム1に対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%がさらに好ましい。
(微粒子)
本発明に係る保護フィルム1は、微粒子を含有することが滑り性、保管安定性の観点で好ましい。
微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素については疎水化処理をされたものが滑り性とヘイズを両立する上で好ましい。4個のシラノール基のうち、2個以上が疎水性の置換基で置換わったものが好ましく、3個以上が置換わったものがより好ましい。疎水性の置換基はメチル基である事が好ましい。
二酸化珪素の一次粒径は20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが保護フィルム1のヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく、本発明に於いてはアエロジルR812が最も好ましく用いられる。本発明に係る保護フィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
(染料)
本発明に係る保護フィルム1には、色味調整のため染料を添加することもできる。例えば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
<保護フィルム2>
本発明に係る保護フィルム2は、平均アセチル基置換度が前記保護フィルム1に含まれるセルロースエステルよりも0.3〜0.9低く、炭素数3以上のアシル基置換度が0〜0.5である特定のセルロースエステルを含むセルロースエステルフィルムである。
(セルロースエステル)
本発明に係るセルロースエステルフィルムとしては、位相差発現性が高く、高い位相差を有する位相差フィルムとする場合であっても薄膜化可能であること、位相差を発現させるための延伸倍率を低く抑えることができる観点から、前記平均アセチル基置換度を有するセルロースエステルであり、特にセルロースアセテートであることが好ましい。
本発明に係る保護フィルム2は、求められる光学補償効果によって必要とされる位相差は異なるものの、高い位相差発現性を生かす観点から、面内方向におけるリターデーションRoが30nm以上であることが好ましく、30〜200nmの範囲であることがより好ましく、30〜90nmの範囲であることが更に好ましく、厚み方向のリターデーションRthは70nm以上であることが好ましく、70〜300nmの範囲であることがより好ましい。
位相差の調整方法としては、特に制限はないが、延伸処理によって調整する方法が一般的である。詳しい調整方法について後述する。
本発明に用いられるセルロースアセテートは、公知の方法により製造することができる。具体的には特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
(糖エステル化合物)
本発明に係る保護フィルム2は、下記一般式(3)で表される化合物(本発明では糖エステル化合物と呼称)を含有するセルロースアセテートフィルムであることが安定な位相差発現を促す上で好ましい。
一般式(3)で表される化合物、及び参考化合物を、以下に記載するが本発明はこれらに限定されない。
一般式(3)において、R〜Rは、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、或いは、置換又は無置換のアリルカルボニル基を表し、R〜Rは、同じであっても、異なっていてもよい。
Figure 0005447135
Figure 0005447135
(合成例:本発明に用いられる化合物の合成)
Figure 0005447135
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行なった。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
本発明でセルロースアセテートフィルムに添加される、一般式(3)で表される化合物の総平均置換度は6.1〜6.9であるが、当該置換度の範囲は4〜8であることが好ましい。置換度分布は、エステル化反応時間の調節、または置換度違いの化合物を混合することにより目的の置換度に調整してもよい。
(その他の添加剤)
本発明に係る保護フィルム2には、前記保護フィルム1で用いられる可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子、染料等を適宜用いることができる。
<保護フィルムの製造方法>
次に、本発明に係る保護フィルム1、及び保護フィルム2の製造方法についてまとめて説明する。(以降、簡単に保護フィルムと呼称する。)
本発明に係る保護フィルムは通常の溶液流延法、溶融流延法のいずれの方法でも製造することができる。
本発明に係る保護フィルムの溶液流延法による製造は、セルロースエステル及び前記添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤として特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられ、貧溶剤として、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。また、セルロースエステルの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
濾材さらには特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
ついで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。
流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、好ましい支持体温度は0〜40℃であり、5〜30℃がさらに好ましい。
保護フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、保護フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、さらに乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明に係る保護フィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで多いところで長手方向(MD方向)に延伸し、さらにウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅手方向(TD方向)に延伸を行うことが好ましい。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は90℃〜200℃が好ましく、より好ましくは110℃〜190℃である。乾燥温度は段階的に高くしていくことが好ましい。
好ましい乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、5分〜60分が好ましく、10分〜30分がより好ましい。
保護フィルム1の膜厚は前述の通りであるが、保護フィルム2の膜厚は、特に限定はされず10〜200μmが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。さらに好ましくは20〜60μmである。
本発明に係る保護フィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。生産性の観点から幅1.6〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.8〜3.6mである。4mを超えると搬送が困難となる。
(延伸操作)
延伸操作は、フィルムの長手方向(MD方向)、及び幅手方向(TD方向)に対して、逐次または同時に延伸することができる。互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的にはMD方向に1.0〜2.0倍、TD方向に1.07〜2.0倍の範囲とすることが好ましく、MD方向に1.0〜1.5倍、TD方向に1.07〜2.0倍の範囲で行うことが好ましい。
例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、或いはMD/TD方向同時に広げてMD/TD両方向に延伸する方法などが挙げられる。
製膜工程のこれらの幅保持或いは幅手方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120N/m〜200N/mが好ましく、140N/m〜200N/mがさらに好ましい。140N/m〜160N/mが最も好ましい。
延伸する際は、本発明に係る保護フィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃、さらに好ましく(Tg−5)〜(Tg+20)℃である。
保護フィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。本発明の用途においてはフィルムの乾燥時のTgは110℃以上が好ましく、さらに120℃以上が好ましい。
従ってガラス転移温度は190℃以下、より好ましくは170℃以下であることが好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法などによって求めることができる。
本発明では、延伸する際の温度は150℃以上、延伸倍率は1.15倍以上にすると、表面が適度に粗れる為好ましい。フィルム表面を粗らす事は、滑り性を向上させるのみでなく、表面加工性、特にハードコート層との密着性が向上するため好ましい。平均表面粗さRaは、好ましくは2.0nm〜4.0nm、より好ましくは2.5nm〜3.5nmである。その際、フィルム中には先に述べた疎水化処理された二酸化珪素微粒子を含有している事が好ましく、特にR972VおよびR812がヘイズ安定性向上のために好ましい。
保護フィルムは延伸後、熱固定されることが好ましいが、熱固定はその最終TD方向延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定することが好ましい。この際、2つ以上に分割された領域で温度差が1〜100℃となる範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、TD方向及び/またはMD方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。
また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。
尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとした時、(T1−Tg)/tで求めた値である。
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するセルロースエステルや可塑剤等の添加剤種により異なるので、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
本発明に係る保護フィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与し、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
<物性、光学特性>
本発明に保護係るフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで10〜1200g/m・24hが好ましく、さらに20〜1000g/m・24hが好ましく、20〜850g/m・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
本発明に係る保護フィルムは、30℃での貯蔵弾性率が、MD方向に3.2〜4.7GPa、TD方向に4.7〜7.0GPaである事が、縦ツレが改良されて好ましい。貯蔵弾性率はtanδと同じ測定で求めることができる。
本発明に係る保護フィルムは脆性指標となる引裂き強度が35mN以上である事が好ましく、50mN以上である事がより好ましい。
本発明に係る保護フィルムは破断伸度は5〜80%であることが好ましく8〜50%であることがさらに好ましい。
本発明に係る保護フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。
本発明に係る保護フィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく0〜0.4%であることが特に好ましい。
本発明に係る保護フィルム1は、下記式で表されるリターデーション値Roが0〜150nm、Rthが−100〜300nmであることが好ましく、特に好ましくはRoが0〜10nm、Rthが0〜100nmである。
式(i) Ro=(nx−ny)×d
式(ii) Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、Roはフィルム面内リターデーション値、Rthはフィルム厚み方向リターデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
上記リターデーションは、例えばKOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
(ハードコート層)
本発明に係る保護フィルム1は、高硬度を発揮する点からハードコート層を設けることが好ましく、該ハードコート層の膜厚(ドライ膜厚)は3μm以上、30μm以下であり、好ましくは5μm以上、15μm以下である。
高硬度は、LCD等の表示装置の表面における使用や偏光板化工程において傷が付きにくいことから望まれおり、本発明でいう高硬度とは、硬度の指標で有る鉛筆硬度が3H以上であり、より好ましくは4H以上である。
鉛筆硬度は、作製したハードコートフィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、JIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
また、ハードコートのマルテンス硬さ(HMs)が、400N/mm以上、800N/mm以下であることが好ましい。
マルテンス硬さ(ビッカース硬さ)とは、ビッカース圧子及び稜線同士の角度が115度の三角錐圧子を用いた微小硬度計で、フィルムのハードコート表面を、ハードコート層の膜厚の略1/10の厚みまで圧子を押し込んだ時の負荷試験力−押し込み深さ曲線において、該負荷試験力−押し込み深さ曲線から求められる最大負荷試験力(Fmax)の50%値から90%値までの押し込み深さが負荷試験力の平方根に比例する傾き(m)より、下記式で定義される値をいう。
1HMs=1/(26.4m
本発明に係るハードコート層は、公知のものがそのまま使用することができる。ハードコート層を形成する樹脂バインダーについて説明する。樹脂バインダーとしては、活性エネルギー線硬化樹脂が好ましい。活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。
活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、特に、紫外線硬化樹脂が機械的膜強度(耐擦性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。
紫外線硬化樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。
ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。
また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。エネルギー活性線硬化性樹脂の添加量は、ハードコート層形成組成物中(以下、ハードコート層塗布液とも言う。)では、固形分中の15質量%以上70質量%未満であることが好ましい。
また、ハードコート層にはエネルギー活性線硬化性樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤;エネルギー活性線硬化性樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
ハードコート層には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはゼラチン等の親水性樹脂等のバインダーを用いることもできる。また、ハードコート層には滑り性や屈折率を調整するために無機化合物または有機化合物の粒子を含んでもよい。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.01〜5μmが好ましく0.1〜5.0μm、さらに、0.1〜4.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有することが好ましい。硬化性樹脂組成物と微粒子の割合は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
本発明においては、ハードコート層に重合性不飽和基を有する有機化合物によって表面処理された反応性シリカ粒子(Xa)を含有させることが好ましい。
〈シリカ粒子〉
シリカ粒子としては、公知のものを使用することができる。また、その形状は、球状でも不定形のものでもよく、通常のコロイダルシリカに限らず中空粒子、多孔質粒子、コア/シェル型粒子等であっても構わない。
また、動的光散乱法で求めたシリカ粒子の数平均粒子径は30nm以上が好ましく、さらに好ましくは30〜200nmであり、特に好ましくは、40〜80nmである。
市販品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製MEK−ST−L、IPA−ST−L、IPA−ST−ZL等を挙げることができる。
(塗工工程)
本発明に係るハードコート層は公知の方法で塗設することができる。
ハードコート層を塗設する際の溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用できる。
好ましくは、プロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルまたはプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、さらに好ましくは5〜80質量%以上含有する溶媒が用いられる。
クリアーハードコート層を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cmである。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用できる。
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥された後、紫外線を光源より照射するが、照射時間は0.5秒〜5分がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率などから3秒〜2分がより好ましい。
(機能性層)
本発明に係る保護フィルム1には、延伸の前または後で帯電防止層、バックコート層、易滑性層、接着層、バリアー層、防眩層、反射防止層、光学補償層等の機能性層を塗設してもよい。
<偏光板、液晶表示装置>
本発明の偏光板、それを用いた液晶表示装置について説明する。
(偏光板)
本発明の偏光板は、本発明に係る保護フィルム1、及び2により、偏光子を挟持してなる偏光板である。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明に係る保護フィルム1、及び2の偏光子側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
(液晶表示装置)
本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。本発明の偏光板はSTN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPSなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。特に好ましくはVA(MVA、PVA)型、及びIPS型液晶表示装置である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
<保護フィルム1−1〜1−15の作製>
<保護フィルム1−1の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにアセチル基置換度2.88のセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアセテート(アセチル基置換度2.88、数平均分子量130000)
100質量部
エステル化合物2−16 10質量部
微粒子添加液1 1質量部
チヌビン109(チバ・ジャパン社製) 1質量部
チヌビン171(チバ・ジャパン社製) 1質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したセルロースアセテートフィルムを、160℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に10%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、乾燥膜厚37μmの保護フィルム1−1を得た。
<保護フィルム1−2〜1−15の作製>
保護フィルム1−1の作製において、表1記載のセルロースアセテートの種類、膜厚、及びエステル化合物の量と延伸条件を適宜変更した以外は同様にして、保護フィルム1−2〜1−15を作製した。
<保護フィルム2−1の作製>
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにアセチル基置換度2.14のセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアセテート(アセチル基置換度2.14、数平均分子量145000)
100質量部
糖エステル化合物1−2 10質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
剥離したセルロースアセテートフィルムを、160℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に36%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
以上のようにして、乾燥膜厚50μmの保護フィルム2−1を得た。
保護フィルム2−1のリターデーションはRo:50nm、Rth:145nmであり、位相差フィルムとして使用が可能であった。
<保護フィルム2−2〜2−15の作製>
保護フィルム2−1の作製において、表1記載のセルロースアセテートの種類、膜厚、に変更した以外は同様にして、保護フィルム2−2〜2−15を作製した。
<偏光板101の作製>
(アルカリ鹸化処理)
保護フィルム1−1と保護フィルム2−1の各々1枚を偏光板の保護フィルムとして用いて、偏光板101を作製した。
(a)偏光膜の作製
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)100質量部に、グリセリン10質量部、及び水170質量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理して、PVAフィルムを得た。
得られたPVAフィルムは、平均厚みが25μm、水分率が4.4%、フィルム幅が1500mm、フィルム長が3000mであった。
次に、得られたPVAフィルムを、予備膨潤、染色、湿式法による一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で、連続的に処理して、偏光膜を作製した。すなわち、PVAフィルムを温度30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの温度35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中でフィルムにかかる張力が700N/mの条件下で、6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの温度30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、温度40℃で熱風乾燥し、更に温度100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光膜は、平均厚みが13μm、偏光性能については透過率が43.0%、偏光度が99.5%、2色性比が40.1であった。
(b)偏光板の作製
下記工程1〜4に従って、偏光膜と、保護フィルム1−1と保護フィルム2−1を貼り合わせて偏光板101を作製した。
工程1:前述の偏光膜を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤溶液の貯留槽中に1〜2秒間浸漬した。
工程2:保護フィルム1−1と保護フィルム2−1を下記条件でアルカリ鹸化処理を実施した。次いで、工程1でポリビニルアルコール接着剤溶液に浸漬した偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、この偏光膜を保護フィルム1−1と保護フィルム2−1とで挟み込んで、積層配置した。
(アルカリ鹸化処理)
ケン化工程 2.5M−KOH 50℃ 120秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
中和工程 10質量部HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 60秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで100℃で乾燥。
工程3:積層物を、2つの回転するローラにて20〜30N/cmの圧力で約2m/minの速度で貼り合わせた。このとき、気泡が入らないように注意して実施した。
工程4:工程3で作製した試料を、温度100℃の乾燥機中にて5分間乾燥処理し、偏光板を作製した。
工程5:工程4で作製した偏光板の保護フィルム2に市販のアクリル系粘着剤を乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、110℃のオーブンで5分間乾燥して粘着層を形成し、粘着層に剥離性の保護フィルムを張り付けた。この偏光板を576×324mmサイズに裁断(打ち抜き)し、偏光板101を作製した。
<偏光板102〜115の作製>
偏光板101の作製において、保護フィルム1−1を保護フィルム1−2〜1−15に、保護フィルム2−1を保護フィルム2−2〜2−15に、それぞれ変更した以外は同様にして偏光板102〜115を作製した。
《評価》
(tanδの測定)
上記作製した保護フィルム1−1〜1−15のtanδを測定した。
試料をあらかじめ23℃55%RHの雰囲気下24時間調湿したものを使用し、湿度55%RH、下記条件で昇温させながら、または温度設定して測定する。
測定装置:動的粘弾性測定装置DVA−225(アイティー計測制御(株)製)
試料:幅5mm、長さ50mm(ギャップ20mmに設定)
測定条件:引張モード
測定温度:25〜210℃
昇温条件:5℃/min
周波数:1Hz
また、下記式(1)の値を求めた。
式(1) 0.08≧tanδ−40/tanδpeak/√膜厚≧0.0345(単位:(μm) -1/2
(ここで、 ここでtanδpeakとは、25℃〜210℃のtanδ値を測定した最大値、tanδ−40とは、tanδpeakを示した時の温度−40℃でのtanδの値をいう。膜厚とは、フィルムの厚さをμm単位で表したときの値をいう。
(熱ジワの評価)
偏光板101〜115を85℃95%の条件で168時間保存し、熱ジワの発生を目視にて評価した。
○:熱ジワが認められない
△:熱ジワが少し発生している
×:熱ジワが大きく発生している
(輝度ムラ評価)
偏光板を、ガラス板(厚さ1100μm)の両側に吸収軸が互いに直交するようにアクリル系粘着剤層(厚さ23μm)を介して貼り合せた後、80℃で50時間の加熱を行った。加熱後のサンプルを面状光源の上に配置し法線方向から輝度ムラを目視にて観察した。
○:輝度ムラがない
△:わずかに輝度ムラが観察される
×:輝度ムラが観察される
以上の評価結果を表1に示す。
Figure 0005447135
表1より本発明の偏光板は熱ジワ、輝度ムラに優れた偏光板であることが明かである。
実施例2
実施例1の保護フィルム1−1で用いた可塑剤であるエステル化合物2−16、及び保護フィルム2で用いた糖エステル化合物1−2の替わりに、表2記載の可塑剤を同質量部用いた以外は同様にして、保護フィルム1−16〜1−20、保護フィルム2−16〜2−20を作製した。
表2記載の可塑剤において、TPP:トリフェニルフォスフェート、EPEG:エチルフタリルエチルグリコレート、BDP:ビフェニルジフェニルフォスフェートを表す。
作製した保護フィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光板を作製し、熱ジワ、輝度ムラを評価した。
Figure 0005447135
表2より、可塑剤として保護フィルム1には前記エステル化合物、保護フィルム2には前記糖エステル化合物を用いることによって、熱ジワ、輝度ムラが優れることが分かる。
実施例3
表3に記載のセルロースアセテートの種類、及び膜厚に変更した以外は、実施例1と同様にして、3000m長の保護フィルム1−21〜1−26、及び保護フィルム2−21〜2−26を作製した。
次いで、上記保護フィルム1−21〜1−26の表面上に下記ハードコート層を設けた。
ハードコート層塗布組成物1−1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液を調製し、マイクログラビアコーターを用いて塗布し、80℃で乾燥の後、紫外線ランプを用いて、照射部の照度が80mW/cm、照射量を80mJ/cmとして塗布層を硬化させ、ドライ膜厚8μmのハードコート層を形成し、巻き取ってロール状のハードコートフィルム1−21〜1−26を作製した。
(ハードコート層塗布組成物)
下記材料を攪拌、混合しハードコート層塗布組成物1とした。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 20質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 30質量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 30質量部
イルガキュア184(チバ・ジャパン社製) 5.0質量部
ポリエーテル変性シリコーン(KF354L、信越化学社製) 2.0質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
酢酸メチル 45質量部
メチルエチルケトン 65質量部
シクロヘキサノン 10質量部
作製したハードコートフィルム1−21〜1−26と保護フィルム2−21〜2−26を用いて、実施例1と同様な工程によって、ロールtoロールで長尺状偏光板301〜306を作製し巻き取った。その際、ハードコートフィルムはハードコート層側が視認側に位置するように偏光膜に貼合した。
《評価》
(気泡の評価)
巻き取った長尺ロール状偏光板301〜306を85℃95%の条件で150時間保存し、次いで巻きを繰り出しながらハードコート層と基材である保護フィルム1間で気泡の発生がないか目視にて評価した。
○:気泡が全く観察されない
△:1mあたり1〜2個の気泡が観察される
×:1mあたり3個以上の気泡が観察される
Figure 0005447135
表3より本発明の偏光板は気泡の発生に優れた偏光板であることが明かである。

Claims (4)

  1. 保護フィルム1及び保護フィルム2によって偏光子が挟持された偏光板において、
    保護フィルム1は、平均アセチル基置換度が2.80〜2.95のセルロースエステルを含み、フィルム膜厚が20〜38μmであり、フタル酸、アジピン酸、少なくとも一種のベンゼンモノカルボン酸および少なくとも一種の炭素数2〜12のアルキレングリコールのいずれかを反応させて得られたエステル化合物を1〜35質量%含有し、かつフィルムのtanδが下記式(1)の条件を満たすセルロースエステルフィルムであり、
    保護フィルム2は、平均アセチル基置換度が保護フィルム1に含まれるセルロースエステルよりも0.3〜0.9低く、炭素数3以上のアシル基置換度が0〜0.5であるセルロースエステルを含むセルロースエステルフィルムであることを特徴とする偏光板。
    式(1) 0.058≧tanδ−40/tanδpeak/√膜厚≧0.0345(単位:(μm) -1/2
    (ここで、tanδpeakとは、25℃〜210℃のtanδ値を測定した最大値、tanδ−40とは、tanδpeakを示した時の温度−40℃でのtanδの値をいう。膜厚とは、フィルムの厚さをμm単位で表したときの値をいう。
  2. 前記保護フィルム1に含有されるセルロースアセテートの数平均分子量が125000〜155000であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板。
  3. 前記保護フィルム2のアセチル基置換度が2.1〜2.5で、下記一般式(3)で表され、総平均置換度が6.1〜6.9である化合物を含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光板。
    Figure 0005447135
    (式中、R〜Rは、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、或いは、置換又は無置換のアリルカルボニル基を表し、R〜Rは、同じであっても、異なっていてもよい。)
  4. 前記保護フィルム1がハードコート層を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板。
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