JP5445421B2 - 予混合圧縮自己着火エンジン - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも部分的にガソリンを含有する燃料により駆動され、エンジンの少なくとも低負荷域で、上記燃料と空気とが混合された混合気を圧縮、高温化して自着火させる予混合圧縮自己着火エンジンに関する。
従来、下記特許文献1に示されるように、天然ガスを燃料とする予混合圧縮自己着火エンジンにおいて、エンジンが低負荷域で運転されているときに、グロープラグ(加熱手段)を用いて筒内を加熱しながら予混合圧縮自己着火燃焼を行わせる技術が知られている。
具体的に、この特許文献1では、エンジンの低負荷域で、吸気弁と排気弁とをともに閉じる期間を排気行程から吸気行程にかけて設定することにより、既燃ガスの一部を次回サイクルの混合気と混合させるとともに、このように既燃ガスと混合された混合気をグロープラグによって燃料の自着火温度以上に加熱するようにしている。
上記のように、グロープラグを用いて混合気を加熱するようにすれば、燃料が少なく筒内温度の低い低負荷域であっても、着火性を充分に確保して、混合気を確実に自着火させることができる。
特開2004−316593号公報
上記特許文献1に開示された予混合圧縮自己着火エンジンは、天然ガスを燃料とするエンジンであったが、例えば自動車用の動力源としては、ガソリンを燃料とするガソリンエンジンがより広く使用されている。当然ながら、このようなガソリンエンジンにおいても、燃料と空気との混合気を圧縮して自着火させる予混合圧縮自己着火燃焼を適用する研究が盛んに行われている。
上記のようにガソリンを燃料とした予混合圧縮自己着火エンジンであっても、例えば燃料の噴射量の少ない低負荷域では着火性が悪いという事情は同じであり、そこでの着火性をいかに確保するかが問題となる。もちろん、上記特許文献1と同様に、低負荷域でグロープラグによる加熱を行うことも考えられるが、例えば、エンジンの圧縮比を充分に高くすれば、筒内が充分に高温化し、着火性が高まるため、燃料噴射量が少ない低負荷域であってもグロープラグを使用する必要はない。実際のところ、本願発明者等による研究によれば、圧縮比を一般的なガソリンエンジンの圧縮比(例えば9〜11程度)よりもある程度高めたエンジンであれば、たとえ低負荷であっても、グロープラグ等の着火アシスト手段を用いることなく、混合気を安定的に自着火させられることが既に確認されている。
ただし、このように圧縮比を高めたガソリンエンジンにおいて、低負荷域での運転状態から加速が開始され、負荷が高い(燃料の噴射量が多い)運転領域に移行したときには、低負荷域と同じ条件で適正な予混合圧縮自己着火燃焼を行わせることは困難となる。すなわち、低負荷域だけでなく、燃料噴射量が増大される加速時(高負荷時)においても、低負荷域と同じ燃料噴射時期(例えば吸気行程中)を維持しつつ予混合圧縮自己着火燃焼を継続させようとした場合には、筒内の高温化に起因して、混合気の自着火のタイミングが早くなり過ぎるプリイグニッションと呼ばれる異常燃焼が発生するおそれがある。
なお、この場合に、筒内への燃料噴射時期を遅らせて、例えば圧縮行程の後半以降に燃料を噴射すれば、燃料が高温に晒される時間が短くなるため、その分だけ自着火のタイミングが遅くなり、プリイグニッションを回避できると考えられる。しかしながら、燃料噴射の遅延に伴って自着火のタイミングが遅くなることで、今度は、自着火の直後に急激に熱エネルギーが発生するノッキングと呼ばれる異常燃焼が起きるおそれがある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、燃料の噴射量が増大される加速時においても、適正なタイミングで混合気を自着火させることが可能な予混合圧縮自己着火エンジンを提供することを目的とする。
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、少なくとも部分的にガソリンを含有する燃料により駆動され、エンジンの少なくとも低負荷域に設定された第1自着火領域で、上記燃料と空気とが混合された混合気を圧縮、高温化して自着火させる予混合圧縮自己着火エンジンであって、上記エンジンの筒内温度を強制的に上昇させる加熱手段と、上記燃料を筒内に噴射するインジェクタと、上記加熱手段およびインジェクタを制御する制御手段とを備え、上記制御手段は、上記第1自着火領域での運転から加速が開始され、上記第1自着火領域よりも負荷が高くかつ上記燃料の噴射量が増大される第2自着火領域に移行すると、少なくとも加速中の所定期間の間、上記インジェクタによる燃料噴射時期を圧縮行程後半から膨張行程前半までの間の所定時期に設定し、かつ上記加熱手段を作動させることにより、混合気を自着火させることを特徴とするものである(請求項1)。
なお、「筒内温度を強制的に上昇させる加熱手段」とは、ピストンによる圧縮作用以外の方法で筒内温度を上昇させる手段をいう。
本発明では、燃料噴射量が増大される加速時に、加熱手段を作動させて筒内温度(特に圧縮上死点付近の温度)を充分に上昇させつつ、圧縮行程後半から膨張行程前半までというかなり遅めのタイミングでインジェクタから燃料を噴射することにより、圧縮上死点の比較的近くで混合気を自着火させることができ、例えば熱発生率のピークが圧縮上死点から少し遅れて生じるような適正な圧縮自己着火燃焼を確実に行わせることができる。これにより、圧縮上死点よりもかなり前に熱発生率がピークを迎えるような異常燃焼(プリイグニッション)や、圧縮上死点よりも大幅に遅れて自着火が起き、その自着火をきっかけに一気に大きな熱エネルギーが発生するような異常燃焼(ノッキング)を効果的に防止できるとともに、加速時に必要な高出力を適正な燃焼に基づき効率よく確保できるという利点がある。
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記第2自着火領域での運転から、負荷の低い上記第1自着火領域での運転に復帰した後でも、上記加熱手段の温度が所定量以上低下するまでの間は、上記インジェクタによる燃料の噴射時期を上記圧縮行程後半から膨張行程前半までの間の所定時期に維持する(請求項2)。
この構成によれば、加熱手段の作動が停止された後、加熱手段の温度が充分に低下するまでの間に、燃料噴射時期が第1自着火領域での本来の噴射時期まで不用意に早められることがなく、加熱手段の残熱に起因した異常燃焼を効果的に防止することができる。
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記加熱手段の作動開始後、加熱手段の温度が所定値以上に上昇するまでの間は、圧縮行程後半および膨張行程前半の少なくとも2回に分けて上記インジェクタから燃料を噴射させることにより、混合気を自着火させる(請求項3)。
この構成によれば、負荷の高まりに応じた多量の燃料を1回で噴射した場合と異なり、燃料の気化潜熱による筒内温度の低下を抑制できるため、加熱手段による加熱が充分でない状態でも混合気を確実に自着火させることができる。
本発明のエンジンが、筒内に火花を放電する点火プラグを備える場合、上記制御手段は、上記加熱手段の作動開始後、加熱手段の温度が所定値以上に上昇するまでの間は、上記インジェクタによる燃料噴射時期を膨張行程前半に設定するとともに、上記点火プラグによる火花放電に基づき混合気を強制的に着火させるようにしてもよい(請求項4)。
この構成によれば、点火プラグから放電される火花を利用して、プリイグニッションやノッキング等を伴わない適正な燃焼を行わせることができ、加熱手段の温度が充分に高まるまで着火性を適正に確保することができる。
上記加熱手段としては、通電により発熱する発熱部を筒内に有したグロープラグが好適である。この場合、上記制御手段は、上記グロープラグの温度が所定値以上に上昇した後、依然としてエンジンが上記第2自着火領域で運転されている場合には、上記グロープラグへの通電量を低下させつつ通電を継続することが好ましい(請求項5)。
この構成によれば、筒内温度が必要以上に上昇するのを防止できるとともに、グロープラグの信頼性を適正に確保することができる。
以上説明したように、本発明の予混合圧縮自己着火エンジンによれば、燃料の噴射量が増大される加速時においても、適正なタイミングで混合気を自着火させることができる。
本発明の一実施形態にかかるエンジンの全体構成を示す図である。 エンジンの制御系を示すブロック図である。 エンジンの運転状態に応じた燃焼形態を選択するための制御マップの一例を示す図である。 図3の第1自着火領域(A1)における燃料噴射時期と、その燃料噴射に基づく熱発生率とを示す図である。 図3の第2自着火領域(A2)における燃料噴射時期と、その燃料噴射に基づく熱発生率とを示す図である。 異常燃焼が起きるケースを説明するための図であり、(a)はプリイグニッションの発生を、(b)はノッキングの発生を示している。 図3のSI領域(B)における燃料噴射時期と、その燃料噴射に基づく熱発生率とを示す図である。 実際のエンジンの運転モードの中で、燃料噴射時期およびグロー通電量がどのように制御されるかを示すタイムチャートである。 上記第1自着火領域から第2自着火領域に移行した直後に行われる制御例を説明するための図である。
(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかるエンジンの全体構成を示す図である。本図に示されるエンジンは、走行駆動用の動力源として車両に搭載される往復ピストン型の多気筒ガソリンエンジンである。このエンジンのエンジン本体1は、紙面に直交する方向に並ぶ複数の気筒2(図中ではそのうちの1つのみを示す)を有するシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、シリンダブロック3の各気筒2に往復摺動可能に挿入されたピストン5とを有している。なお、エンジン本体1に供給される燃料は、ガソリンを主成分とするものであればよく、その中身は、全てガソリンであってもよいし、ガソリンにエタノール(エチルアルコール)等を含有させたものでもよい。
上記ピストン5はコネクティングロッド8を介してクランク軸7と連結されており、上記ピストン5の往復運動に応じて上記クランク軸7が中心軸回りに回転駆動されるようになっている。
上記ピストン5の上方には燃焼室6が形成され、燃焼室6に吸気ポート9および排気ポート10が開口し、各ポート9,10を開閉する吸気弁11および排気弁12が、上記シリンダヘッド4にそれぞれ設けられている。
ここで、「燃焼室」とは、狭義には、ピストン5が上死点にあるときにその上方に形成される空間のことを指すため、ここでは、ピストン5の上下位置にかかわらずその上方に形成される空間のことを指すときは、「気筒2の内部」、あるいは単に「筒内」と称することとする。
上記吸気弁11および排気弁12は、それぞれ、シリンダヘッド4に配設された一対のカムシャフト等を含む動弁機構13,14によりクランク軸7の回転に連動して開閉駆動される。
上記吸気弁11および排気弁12用の各動弁機構13,14には、VVT15,16がそれぞれ組み込まれている。VVT15,16は、可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing Mechanism)と呼ばれるものであり、吸排気弁11,12の動作タイミングを可変的に設定するものである。なお、VVT(可変バルブタイミング機構)としては既に様々な形式のものが実用化されて公知であるため、ここでは上記VVT15,16の構造についての詳細な説明は省略する。
上記シリンダブロック3やシリンダヘッド4の内部には、冷却水が流通する図外のウォータジャケットが設けられており、このウォータジャケット内の冷却水の温度を検出するためのエンジン水温センサSW1が、上記シリンダブロック3に設けられている。
また、上記シリンダブロック3には、クランク軸7の回転速度をエンジンの回転速度として検出するエンジン回転速度センサSW2が設けられている。
上記シリンダヘッド4には、点火プラグ20、インジェクタ21、およびグロープラグ22が、各気筒2につき1組ずつ設けられている。
上記点火プラグ20は、排気側(図1の左側)の側方から筒内(気筒2の内部)を臨むように設けられている。点火プラグ20の先端は、筒内に突出する電極部とされ、図外の点火回路からの給電に応じて電極部から筒内に向けて火花が放電されるようになっている。
上記インジェクタ21は、筒内をその上方から臨むように設けられており、図外の燃料供給管から供給される燃料(ガソリンを含む燃料)を筒内に向けて噴射する噴射口を先端に有している。そして、このインジェクタ21の噴射口から噴射された燃料と筒内の空気とが混合されることで、燃料と空気からなる混合気が筒内に形成されるようになっている。
上記グロープラグ22は、本発明にかかる加熱手段に相当するもので、吸気側(図1の右側)の側方から筒内を臨むように設けられている。グロープラグ22の先端は、筒内に突出する発熱部とされ、この発熱部が必要に応じ通電されることにより、筒内が加熱されるようになっている。
また、上記グロープラグ22には、その発熱部の温度を検出するためのグロー温度センサSW3(図2参照)が設けられている。
以上のように構成されたエンジン本体1は、その幾何学的圧縮比が16以上22以下に設定されている。すなわち、一般的なガソリンエンジンの幾何学的圧縮比が約9〜11程度であるのに対し、当実施形態のエンジン本体1では、その幾何学的圧縮比が、16以上22以下というかなり高い値に設定されている。
上記エンジン本体1の吸気ポート9および排気ポート10には、吸気通路23および排気通路24がそれぞれ接続されている。すなわち、外部からの吸入空気(新気)が上記吸気通路23を通じて筒内に供給されるとともに、筒内で生成された既燃ガス(排気ガス)が上記排気通路24を通じて外部に排出されるようになっている。
上記吸気通路23には、その内部を流通して筒内に導入される新気の量を調節するためのスロットル弁25が設けられている。このスロットル弁25は、電子制御式のスロットル弁からなり、車両(図1のエンジンが搭載された車両)に備わる図外のアクセルペダルの開度に応じて電気的に開閉駆動される。すなわち、アクセルペダルにはアクセル開度センサSW4(図2)が設けられており、このアクセル開度センサ33により検出されたアクセルペダルの開度(アクセル開度)に基づいて、図外の電気式のアクチュエータがスロットル弁25を開閉駆動する。
上記排気通路24には、排気ガス浄化用の触媒コンバータ26が設けられている。触媒コンバータ26には例えば三元触媒が内蔵されており、排気通路24を通過する排気ガス中の有害成分が上記三元触媒の作用により浄化されるようになっている。
(2)制御系
図2は、エンジンの制御系を示すブロック図である。本図に示されるECU30は、エンジンの各部を統括的に制御するための装置であり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
上記ECU30には、各種センサからの種々の情報が入力される。例えば、ECU30は、上記エンジン水温センサSW1、エンジン回転速度センサSW2、グロー温度センサSW3、およびアクセル開度センサSW4と電気的に接続されており、これら各センサSW1〜SW4による検出情報として、エンジンの冷却水温Tw、エンジンの回転速度Ne、グロープラグ22の発熱部の温度(発熱温度)Tg、アクセル開度Acといった種々の情報が、それぞれECU30に入力されるようになっている。
また、上記ECU30は、上記VVT15,16、点火プラグ20、インジェクタ21、グロープラグ22、およびスロットル弁25とも電気的に接続されており、これらの装置にそれぞれ駆動用の制御信号を出力するように構成されている。
上記ECU30が有するより具体的な機能について説明すると、上記ECU30は、その主な機能的要素として、判定手段31、燃料制御手段32、点火制御手段32、グロー制御手段34、およびバルブ制御手段35を有している。
上記判定手段31は、エンジン回転速度センサSW2およびアクセル開度センサSW4の各検出値から特定されるエンジンの回転速度Neおよび負荷T(目標トルク)に基づいて、エンジンの運転状態が、図3に示す制御マップにおけるいずれの運転領域に該当するかを判定するものである。
具体的に、図3の制御マップでは、エンジン回転速度Neおよび負荷Tが比較的低い領域(低回転・低負荷域)に、第1自着火領域A1が設定されている。また、この第1自着火領域A1よりも高負荷側の領域には第2自着火領域が設定されており、第1自着火領域A1よりも高回転側の領域には第3自着火領域A3が設定されている。さらに、これら第1〜第3自着火領域A1〜A3よりも外側であって、エンジンの全負荷領域(図中の最上辺部)および高回転かつ高負荷領域(右上の角部領域)を含む領域には、ハッチングで示すSI領域Bが設定されている。
エンジンの運転中においては、上記図3の制御マップにおけるどの運転領域(A1〜A3,B)であるかに応じて、それぞれ適切な燃焼形態が選択されるようになっている。なお、各運転領域でそれぞれどのような燃焼形態が選択されるかについては後述する。
上記燃料制御手段32は、上記インジェクタ21から筒内に噴射される燃料の噴射量や噴射時期を制御するものである。具体的に、この燃料制御手段32は、アクセル開度センサSW4の検出値(アクセル開度Ac)から演算される負荷T(目標トルク)や、エンジン回転速度センサSW2から特定されるエンジン回転速度Ne等の情報に基づいて、目標とする燃料の噴射量および噴射時期を演算し、その演算結果に基づいてインジェクタ21の開弁時期および開弁期間を制御する。
上記点火制御手段33は、エンジンの運転状態に応じ予め定められた所定のタイミングで点火プラグ20の点火回路に給電信号を出力することにより、上記点火プラグ20が火花放電を行うタイミング(点火時期)等を制御するものである。ただし、当実施形態において、少なくとも図3に示した第1〜第3自着火領域A1〜A3では、火花点火によらず混合気を自着火させる燃焼形態(圧縮自己着火燃焼)が実行されるため、上記領域A1〜A3での運転時には、基本的に点火プラグ20からの火花点火は停止される。
上記グロー制御手段34は、グロープラグ22に電流を供給してその発熱部を昇温させるとともに、上記グロー温度センサSW3の検出値に基づいて、グロープラグの発熱温度Tg(発熱部の温度)が所望の温度になるように制御するものである。
上記バルブ制御手段35は、上記VVT15,16を駆動して吸排気弁11,12の動作タイミングを変更する制御を行うものである。特に、図3中の負荷Tが比較的低い領域(第1自着火領域A1や、第3自着火領域A3の低負荷側)において、バルブ制御手段35は、上記のような吸排気弁11,12の動作タイミングの制御に基づき、筒内に残留する既燃ガス(内部EGRガス)の量を増減させて筒内温度の上昇幅を調節する機能を有している。
(3)各運転領域での燃焼形態
次に、以上のような機能を有するECU30の制御に基づき、図3に示した各運転領域(A1,A2,A3,B)で、それぞれどのような燃焼形態が選択されるのかを説明する。
エンジンの運転が開始されると、上記エンジン回転速度センサSW2およびアクセル開度センサSW4の各検出値に基づいて、エンジンの運転状態(回転速度Ne、負荷T)が図3の制御マップにおけるいずれの運転領域に該当するかが逐次判定される。そして、判定された運転領域が、図3中の第1自着火領域A1、第2自着火領域A2、第3自着火領域A3、およびSI領域Bの中のいずれであるかに応じて、それぞれ以下のような燃焼形態が選択される。
(i)第1自着火領域A1
エンジンが第1自着火領域A1で運転されている場合は、燃料と空気との混合気をピストン5の圧縮作用によって自着火させる、いわゆる予混合圧縮自己着火燃焼が実行される。具体的に、この第1自着火領域A1では、圧縮上死点(圧縮行程と膨張行程との間の上死点)よりもかなり手前の段階で(例えば吸気行程中に)インジェクタ21から筒内に燃料を噴射し、この噴射された燃料と、吸気通路23から筒内に導入される空気(新気)とが混合して形成された混合気を、ピストン5の圧縮作用で充分に高温、高圧化することにより、混合気を自着火させる。
図4は、上記第1自着火領域A1における燃料噴射の時期θi(°CA)と、その燃料噴射に基づく燃焼により生じる熱発生率RH(J/deg)とを示している。図4の例では、吸気行程の前半、より具体的には、排気上死点(排気行程と吸気行程との間の上死点)から40°CA程度経過した時点で、燃料噴射を開始している。このように吸気行程中に噴射された燃料は、圧縮上死点に至るまでに充分に空気と混合され、それによって形成された均一な混合気が圧縮されて高温化し、圧縮上死点付近で自着火する(予混合圧縮自己着火燃焼)。この燃焼により生じる熱発生率の波形J1は、例えば、圧縮上死点の手前から上昇し始め、圧縮上死点を少し過ぎた時点でピークを迎えるような形状となる。
ここで、第1自着火領域A1の中でも特に低負荷寄りの領域では、燃料の噴射量がかなり少ないため、当実施形態のエンジンの圧縮比が比較的高い値(16以上22以下)に設定されているとはいっても、ピストン5による圧縮作用だけでは混合気を確実に自着火させることができないと考えられる。そこで、第1自着火領域A1における特に低負荷寄りの領域では、上記VVT15,16による吸排気弁11,12の動作タイミングの設定により、排気行程の途中から吸気行程にかけて吸気弁11および排気弁12の双方が閉じられる期間(いわゆるネガティブオーバーラップ期間)が設けられる。このようなネガティブオーバーラップ期間が設けられると、筒内で生成された高温の既燃ガスの一部が筒内に残留するため(内部EGR)、この残留した既燃ガスの存在によって筒内温度が上昇し、混合気の自着火が促進される。また、既燃ガスを筒内に残留させることにより、スロットル弁25を大幅に絞らなくても新気の量が調節されるため、ポンピングロスが低減される。
ただし、エンジンが冷間始動された直後のような、エンジンの冷却水温Twが充分に上昇していない状況では、上記のような内部EGR(既燃ガスの残留操作)を行っても、混合気を確実に自着火させることができない場合がある。そこで、このような場合には、グロープラグ22を作動させる(つまりグロープラグ22に通電してその発熱部の温度Tgを上昇させる)操作が行われることにより、筒内のさらなる高温化が図られる。なお、図3では、このようにエンジンの冷間時(ウォーミングアップ時)にグロープラグ22で加熱しながら混合気を自着火させるケースを、破線で囲まれたウォームアップ領域A1’として示している。
以上のように、上記第1自着火領域A1(ウォームアップ領域A1’)では、必要に応じ内部EGRやグロープラグ22による加熱を行いながら混合気を自着火させるという燃焼形態が選択される。
(ii)第2自着火領域A2
エンジンが第2自着火領域A2で運転されている場合も、上記第1自着火領域A1のときと同様、混合気を自着火させる燃焼形態が選択される。ただし、第1自着火領域A1のときと異なり、インジェクタ21からの燃料噴射時期θiが大幅に遅延されて、圧縮行程後半から膨張行程前半までの間の所定時期に設定されるとともに、グロープラグ22を作動させて筒内温度を上昇させる操作が実行される(図5参照)。なお、圧縮行程後半とは、圧縮上死点(圧縮行程と膨張行程との間の上死点)からその手前90°CA(クランク角)までの範囲をいい、膨張行程前半とは、圧縮上死点からその経過後90°CAまでの範囲をいう。
上記のような燃焼形態でエンジンを運転するのは、第2自着火領域A2では、第1自着火領域A1よりも負荷が高く、噴射される燃料の量が多いことから、プリイグニッションやノッキングが起き易いためである。
すなわち、第2自着火領域A2では、燃料噴射量が多いため、発生する熱エネルギーが大きく、筒内が高温化し易い。このため、比較的負荷が低く燃料噴射量の少ない第1自着火領域A1と同じタイミング(例えば吸気行程中)で燃料を噴射すると、筒内の高温化に起因して、図6(a)の波形J2’に示すように、圧縮行程中の比較的早いタイミングで混合気が自着火してしまい、圧縮上死点よりもかなり前に熱発生率RHがピークを迎えるような異常燃焼(プリイグニッション)が起きるおそれがある。
このとき、筒内への燃料噴射時期θiを遅らせて、例えば圧縮行程の後半以降に燃料を噴射すれば、燃料が高温に晒される時間が短くなるため、その分だけ自着火のタイミングが遅くなり、上記のようなプリイグニッションを回避できると考えられる。しかしながら、燃料噴射の遅延に伴って自着火のタイミングが遅くなることで、今度は、図6(b)の波形J2’’に示すように、自着火をきっかけに一気に大きな熱エネルギーが発生するような異常燃焼(ノッキング)が発生するおそれがある。
上述したプリイグニッションやノッキングが発生すると、エンジンの効率が悪化するばかりでなく、大きな騒音や振動が発生し、ひいてはピストン等の損傷につながる。そこで、プリイグニッションおよびノッキングをともに回避し、適正な圧縮自己着火燃焼を行わせるべく、上記第2自着火領域A2では、図5に示すように、燃料噴射時期θiを圧縮行程後半から膨張行程前半までの間の所定時期(図5では圧縮行程後半)に設定しながら、グロープラグ22を作動させて筒内温度を強制的に上昇させるようにしている。このように、グロープラグ22による加熱を行うことで、燃料噴射時期θiが遅くても、その噴射から大きく遅れることなく自着火が開始されるため、図5の波形J2に示すように、圧縮上死点から少し遅れて熱発生率RHがピークを迎えるような適正な圧縮自己着火燃焼が起きるようになる。なお、図5では、圧縮行程後半にインジェクタ21から燃料を噴射した例を示したが、例えば負荷Tがエンジンの全負荷の近傍(SI領域Bの近く)まで高まったようなときには、さらに燃料噴射時期θiが遅らされて、膨張行程前半に燃料噴射が行われる場合もある。
ここで、上記グロープラグ22による加熱温度(発熱部の温度)Tgは、エンジンの運転状態が第2自着火領域A2に移行した後、一旦かなりの高温(例えば1000℃以上)に設定されるが、その後さらに第2自着火領域A2での運転が継続されれば、加熱温度Tgは相対的に低く設定される。つまり、エンジンの運転状態が第2自着火領域A2に移行すると、グロープラグ22への通電量が直ちに上限値(100%)に設定され、グロープラグ22の発熱部の温度Tgが急速に上昇するが、温度Tgが所定値以上に上昇した後、なおも上記第2自着火領域A2での運転が継続された場合は、グロープラグ22による加熱にそれほど頼らなくても筒内が充分に高温化するため、グロープラグ22への通電量が低減される(アフターグロー)。
(iii)第3自着火領域A3
エンジンが第3自着火領域A3で運転されている場合も、上記第2自着火領域A2のときと同様、グロープラグ22を用いて混合気を自着火させる燃焼形態が選択される。ただし、この第3自着火領域A3では、エンジンの回転速度Neが比較的高いため、燃料の受熱期間(燃料が圧縮上死点付近の高温環境下に晒される時間)が短く、混合気の自着火が起き難い。このため、第3自着火領域A3でのグロープラグ22の使用は、第2自着火領域A2のときのようにプリイグニッションやノッキングを防止するという目的ではなく、混合気の自着火をアシストする目的で使用される。この場合、燃料の受熱期間が短く混合気が自着火し難いという事情から、インジェクタ21からの燃料の噴射時期θiは、上記第2自着火領域A2のときよりも若干進角側にずらされる。
また、第3自着火領域A3において、その中の特に低負荷域では、内部EGR(筒内に高温の既燃ガスを残留させる操作)を行うことにより、筒内をさらに高温化させ、混合気を確実に自着火させるようにする。
(iv)SI領域B
エンジンがSI領域Bで運転されている場合には、上述した各自着火領域A1,A2,A3のときと異なり、点火プラグ20による火花点火をきっかけに混合気を強制的に着火させる燃焼形態が選択される。
すなわち、エンジンの負荷Tが略全負荷まで高まっているか、もしくは、エンジンの回転速度Neおよび負荷Tの両方ともが高い状態にあるSI領域Bでは、プリイグニッションやノッキングを起すことなく確実に混合気を自着火させることが困難であるため、火花点火によりコントロールされた燃焼を行う。このとき、プリイグニッションやノッキングを回避するために、インジェクタ21からの燃料の噴射時期θiは、例えば膨張行程の前半まで大幅に遅らされる。そして、このように大幅に遅い時期に噴射される燃料を強制着火させるため、図7に示すように、点火プラグ20による火花点火を行うだけでなく、さらにグロープラグ22による加熱を行う。これにより、点火プラグ20の電極部およびグロープラグ22の発熱部の2箇所が火種となるため、確実に混合気が着火するとともに、火炎の伝播速度が向上して、通常の火花点火による燃焼よりも燃焼期間を短縮することができる(図中の波形J3)。
(4)動作例
次に、実際のエンジンの運転例を想定して、インジェクタ21からの燃料の噴射時期およびグロープラグ22の通電量が運転状態の変化とともにどのように制御されるかを、図8に基づき説明する。
図8の各グラフは、上から順に、アクセル開度Ac、エンジン回転速度Ne、エンジン負荷T、エンジン水温(エンジンの冷却水温)Tw、インジェクタ21からの燃料噴射時期θi、およびグロー通電量(グロープラグ22への通電量)Igの時間変化を示している。本図に示す運転例では、まず、時点t0でエンジンが始動され、その後しばらくの間アイドリング運転が継続されていることにより、時点t1でエンジンの冷却水温Twが充分に暖まり、暖機が完了している。暖機完了後は、時点t2までアイドリング運転が継続され、その時点t2で、アクセルペダルが踏み込まれて加速が開始されている。そして、時点t4まで加速が継続されると、アクセルペダルの踏み込みが緩められて定常運転に復帰し、時点t6まではその状態が継続している。最後に、時点t6でほぼアクセル全開での急加速が行われ、時点t8でその急加速が終了している。
以上のような運転モードの場合、エンジンの始動時点t0から暖機完了時点t1までの期間が、図3のウォームアップ領域A1’に対応し、暖機完了時点t1から加速開始時点t2までの期間が、図3の第1自着火領域A1に対応することとなる。
また、時点t2で加速が開始されると、これに伴いエンジン負荷Tが増大するとともに、エンジン回転速度Neが上昇するため、エンジンの運転状態は、例えば図3中の矢印X1に示すように、第1自着火領域A1から第2自着火領域A2へと移行する。その後、時点t4で加速が終了すると、この時点t4以降は、図3中の矢印X2に示すように、再び第1自着火領域A1へと復帰することになる。つまり、加速中である時点t2〜t4の期間が、第2自着火領域A2に対応し、加速終了後の時点t4〜t6の期間が、第1自着火領域A1に対応している。
最後に、時点t6でほぼアクセル全開による急加速が開始されると、エンジンの運転状態は、全負荷付近を含む図3のSI領域Bに移行し、時点t8までその状態が継続する。つまり、急加速中である時点t6〜t8の期間は、SI領域Bに対応している。
以上のような運転モードでエンジンが運転された場合、燃料噴射時期θiおよびグロー通電量Igは、それぞれ以下のように制御されることになる。
エンジン始動直後である時点t0〜t1では、インジェクタ21からの燃料の噴射時期が吸気行程中に設定されるとともに、グロープラグ22への通電が行われる。すなわち、上記時点t0〜t1の期間は、燃料噴射量が少なく筒内温度が低い(つまり着火性の悪い)環境下で予混合圧縮自己着火燃焼を行うウォームアップ領域A1’に対応するため、ここでは、圧縮上死点の充分手前から燃料を噴射するとともに、グロープラグ22により筒内温度を強制的に上昇させることにより、混合気を自着火させる制御が実行される。
次いで、暖機完了後の時点t1〜t2では、燃料噴射時期が吸気行程中に維持される一方、グロープラグ22への通電が停止される。すなわち、上記時点t1〜t2の期間は、エンジン水温Twが充分に暖まった状態でアイドリング運転が行われている期間であり、図3の第1自着火領域A1に対応するため、上記ウォームアップ領域A1’(期間t0〜t1)のときのようにグロープラグ22による加熱を行わなくても、予混合圧縮自己着火燃焼が可能である。このため、上記領域A1に対応する期間t1〜t2では、インジェクタ21からの燃料噴射時期θiを吸気行程中に設定するとともに、グロープラグ22への通電をキャンセルする(通電量Igをゼロにする)制御が実行される。
次いで、加速中の期間である時点t2〜t4では、インジェクタ21からの燃料の噴射時期θiが大幅に遅らされるともに、グロープラグ22への通電が行われる。すなわち、上記時点t2〜t4の期間(加速中の期間)は、負荷Tが比較的高い図3の第2自着火領域A2に対応するため、ここでは、燃料噴射量が多く筒内温度が高い環境下においてもプリイグニッションやノッキングを起こさないようにするべく、インジェクタ21からの燃料の噴射時期θiを大幅に(例えば図示のように圧縮行程後半まで)遅らせるともに、グロープラグ22に通電してその発熱部の温度を上昇させることにより、混合気を自着火させる制御が実行される。
このとき、グロープラグ22の通電量Igは、加速が開始されてから所定期間は上限値(100%)に設定されるが、その後は、筒内が必要以上に高温化しないように、上限値よりも低い値に低減される(アフターグロー)。
次いで、加速が終了した後の定常運転期間である時点t4〜t6では、上記時点t1〜t2のときと同様、第1自着火領域A1に対応する制御として、インジェクタ21からの燃料噴射時期θiを吸気行程中に設定するとともに、グロープラグ22への通電をキャンセルする(通電量Igをゼロにする)制御が実行される。ただし、燃料噴射時期θiを吸気行程中に戻す制御は、加速終了時点t4で直ちに実行されるのではなく、しばらく時間が過ぎた時点t5まで待ってから実行される。これは、グロープラグ22の発熱部は、通電を終了した後でもしばらくの間は高温に維持されることから、その高温の期間が過ぎてグロープラグ22の温度が充分に低下するまでの間は、燃料噴射時期θiを吸気行程中に戻さない方がよいためである。
最後に、ほぼアクセル全開による急加速が行われる期間である時点t6〜t8では、インジェクタ21からの燃料の噴射時期θiが、上記加速中の期間t2〜t4のときよりもさらに遅い膨張行程前半まで遅らされるとともに、グロープラグ22を発熱させるための通電が行われる。また、図8には示さないが、点火プラグ20による火花点火も行われる。すなわち、上記時点t6〜t8の期間(急加速中の期間)は、エンジンの全負荷付近を含む図3のSI領域Bに対応するため、ここでは、燃料噴射量や筒内温度が最も高い環境下においても確実に異常燃焼を防止すべく、インジェクタ21からの燃料の噴射時期θiを圧縮上死点よりも後の膨張行程前半まで遅らせるとともに、点火プラグ20による火花点火とグロープラグ22による加熱とを合わせて行うことにより、混合気を強制的に着火させる制御が実行される。
なお、このときのグロープラグ22の通電量Igは、急加速が開始されてから所定期間は上限値(100%)に設定されるが、その後は、筒内が必要以上に高温化しないように、上限値よりも低い値に低減される(アフターグロー)。
(5)作用効果等
以上説明したように、当実施形態のエンジンは、少なくとも部分的にガソリンを含有する燃料を筒内に噴射するインジェクタ21と、筒内温度を強制的に上昇させるグロープラグ22(加熱手段)と、上記インジェクタ21およびグロープラグ22を制御するECU30(制御手段)とを備える。そして、このエンジンでは、上記ECU30の制御の下、エンジンの低回転かつ低負荷域に設定された第1自着火領域A1(図3)で、上記インジェクタ21から噴射された燃料と空気とが混合された混合気を圧縮、高温化して自着火させる予混合圧縮自己着火燃焼が行われる。一方、上記第1自着火領域A1での運転から加速が開始され、図3の矢印X1に示すように、上記第1自着火領域A1よりも負荷Tが高くかつ上記燃料の噴射量が増大される第2自着火領域A2に移行すると、上記インジェクタ21による燃料噴射時期θiを圧縮行程後半から膨張行程前半までの間の所定時期に設定し、かつ上記グロープラグ22を作動させることにより、混合気を自着火させる制御が実行される。このような構成によれば、燃料の噴射量が増大される加速時においても、適正なタイミングで混合気を自着火させることができる。
すなわち、上記実施形態では、燃料噴射量が増大される加速時(例えば図8の期間t2〜t4)に、グロープラグ22を作動させて筒内温度(特に圧縮上死点付近の温度)を充分に上昇させつつ、圧縮行程後半から膨張行程前半までというかなり遅めのタイミングでインジェクタ21から燃料を噴射することにより、圧縮上死点の比較的近くで混合気を自着火させることができ、例えば熱発生率のピークが圧縮上死点から少し遅れて生じるような適正な圧縮自己着火燃焼を確実に行わせることができる。これにより、圧縮上死点よりもかなり前に熱発生率がピークを迎えるような異常燃焼(プリイグニッション)や、圧縮上死点よりも大幅に遅れて自着火が起き、その自着火をきっかけに一気に大きな熱エネルギーが発生するような異常燃焼(ノッキング)を効果的に防止できるとともに、加速時に必要な高出力を適正な燃焼に基づき効率よく確保できるという利点がある。
また、上記実施形態では、図3の矢印X2に示すように、グロープラグ22が作動する上記第2自着火領域A2での運転から、負荷の低い第1自着火領域A1での運転に復帰した後でも、上記グロープラグ22の温度Tgが所定量以上低下するまでの間は、上記インジェクタ21による燃料の噴射時期θiが上記所定時期(圧縮行程後半から膨張行程前半までの間)に維持されるようになっている(例えば図8の期間t4〜t5参照)。これにより、グロープラグ22の作動が停止された後、グロープラグ22の温度Tgが充分に低下するまでの間に、燃料噴射時期θiが第1自着火領域A1での本来の噴射時期(例えば吸気行程中)まで不用意に早められることがなく、グロープラグ22の残熱に起因した異常燃焼を効果的に防止することができる。
すなわち、グロープラグ22の発熱部は、通電を終了した後でもしばらくの間は高温に維持されるため、この期間中に燃料噴射時期θiを例えば吸気行程中まで早めてしまうと、上記グロープラグ22の残熱により、混合気の自着火のタイミングが早くなり過ぎ、プリイグニッションが起きるおそれがある。これに対し、上記実施形態のように、グロープラグ22の温度Tgが充分に低下するまで燃料噴射時期θiを早めないようにすれば、上記プリイグニッションのような異常燃焼を回避して、第1自着火領域A1に復帰した直後においても適正な燃焼を行わせることができる。
また、上記実施形態では、グロープラグ22の温度Tgが所定値以上に上昇した後、依然としてエンジンが上記第2自着火領域A2で運転されている場合には、上記グロープラグ22への通電量を低下させつつ通電を継続するようにした(例えば図8の期間t3〜t4参照)。これにより、筒内温度が必要以上に上昇するのを防止できるとともに、グロープラグ22の信頼性を適正に確保することができる。
なお、上記実施形態では、第1自着火領域A1での運転から加速が開始され、負荷Tの高い第2自着火領域A2に移行した場合に、この第2自着火領域A2での運転が続いている間は、グロープラグ22への通電を継続するようにしたが(例えば図8の時点t2〜t4)、第2自着火領域A2での運転中に筒内温度が充分に高まり、グロープラグ22による加熱が必要ないと判断された時点で、グロープラグ22への通電を完全に停止してもよい。つまり、第2自着火領域A2での運転中(加速中)は、異常燃焼が起きない範囲で、少なくとも所定期間の間グロープラグ22への通電を継続すればよい。
また、上記実施形態では、比較的負荷の低い領域(第1自着火領域A1や、第3自着火領域A3の低負荷側)での着火性を確保するために、吸気弁11および排気弁12の双方が閉じられるネガティブオーバーラップ期間を排気行程から吸気行程にかけて設けることにより、高温の既燃ガスの一部を筒内に残留させる内部EGRを行うようにしたが、例えば排気弁12を排気行程だけでなく吸気行程でも開弁させて、既燃ガスを吸気ポートから筒内に逆流させることにより、内部EGRを実現させてもよい。
また、上記のような内部EGRによる筒内の高温化により、比較的負荷の低い領域での着火性を確保する態様に代えて、点火プラグ20を補助的に点火することで混合気を自着火させる、いわゆる着火アシストを行ってもよい。
また、上記実施形態では、エンジンの筒内温度を強制的に上昇させる加熱手段としてグロープラグ22を用いたが、短時間で昇温が可能なものであればこれに限られない。
また、上記実施形態の中では特に説明しなかったが、第1自着火領域A1での運転から加速が開始され、負荷Tの高い第2自着火領域A2に移行した直後は、グロープラグ22が充分に昇温せず、上記実施形態で説明したような燃焼形態で運転することが困難な場合もある。すなわち、グロープラグ22は、通電を開始することで急速に昇温するものの、充分に高い温度になるまでにはわずかながら時間がかかり(例えば500msec)、その間は、単に燃料噴射時期θiを遅らせただけでは混合気が確実に自着火しないおそれがある。そこで、グロープラグ22の温度Tgが所定値以上に上昇するまでの間は、着火性を確保するための過渡的な処置として、以下に示す制御のいずれかを実施することが考えられる。
(i)分割噴射による自着火
1つ目の対策として、グロープラグ22の温度Tgが所定値以上に上昇するまでの間、圧縮行程後半および膨張行程前半の少なくとも2回(θ1,θ2)に分けてインジェクタ21から燃料を噴射させることが考えられる(例えば図9参照)。このようにすれば、負荷の高まりに応じた多量の燃料を1回で噴射した場合と異なり、燃料の気化潜熱による筒内温度の低下を抑制できるため、グロープラグ22による加熱が充分でない状態でも混合気を確実に自着火させることができる(J4)。
(ii)火花点火による燃焼
2つ目の対策として、上記SI領域Bのときと同様、インジェクタ21による燃料噴射時期θiを膨張行程前半に設定するとともに、上記点火プラグ20による火花放電に基づき混合気を強制的に着火させるようにしてもよい。つまり、グロープラグ22が充分に昇温するまでのわずかな時間に限り、火花点火による強制燃焼に切り替えるようにする。このようにすれば、点火プラグ20から放電される火花を利用して、プリイグニッションやノッキング等を伴わない適正な燃焼を行わせることができ、グロープラグ22の温度Tgが充分に高まるまで着火性を適正に確保することができる。
20 点火プラグ
21 インジェクタ
22 グロープラグ(加熱手段)
30 ECU(制御手段)
A1 第1自着火領域
A2 第2自着火領域

Claims (5)

  1. 少なくとも部分的にガソリンを含有する燃料により駆動され、エンジンの少なくとも低負荷域に設定された第1自着火領域で、上記燃料と空気とが混合された混合気を圧縮、高温化して自着火させる予混合圧縮自己着火エンジンであって、
    上記エンジンの筒内温度を強制的に上昇させる加熱手段と、
    上記燃料を筒内に噴射するインジェクタと、
    上記加熱手段およびインジェクタを制御する制御手段とを備え、
    上記制御手段は、上記第1自着火領域での運転から加速が開始され、上記第1自着火領域よりも負荷が高くかつ上記燃料の噴射量が増大される第2自着火領域に移行すると、少なくとも加速中の所定期間の間、上記インジェクタによる燃料噴射時期を圧縮行程後半から膨張行程前半までの間の所定時期に設定し、かつ上記加熱手段を作動させることにより、混合気を自着火させることを特徴とする予混合圧縮自己着火エンジン。
  2. 請求項1記載の予混合圧縮自己着火エンジンにおいて、
    上記制御手段は、上記第2自着火領域での運転から、負荷の低い上記第1自着火領域での運転に復帰した後でも、上記加熱手段の温度が所定量以上低下するまでの間は、上記インジェクタによる燃料の噴射時期を上記圧縮行程後半から膨張行程前半までの間の所定時期に維持することを特徴とする予混合圧縮自己着火エンジン。
  3. 請求項1または2記載の予混合圧縮自己着火エンジンにおいて、
    上記制御手段は、上記加熱手段の作動開始後、加熱手段の温度が所定値以上に上昇するまでの間は、圧縮行程後半および膨張行程前半の少なくとも2回に分けて上記インジェクタから燃料を噴射させることにより、混合気を自着火させることを特徴とする予混合圧縮自己着火エンジン。
  4. 請求項1または2記載の予混合圧縮自己着火エンジンにおいて、
    筒内に火花を放電する点火プラグを備え、
    上記制御手段は、上記加熱手段の作動開始後、加熱手段の温度が所定値以上に上昇するまでの間は、上記インジェクタによる燃料噴射時期を膨張行程前半に設定するとともに、上記点火プラグによる火花放電に基づき混合気を強制的に着火させることを特徴とする予混合圧縮自己着火エンジン。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の予混合圧縮自己着火エンジンにおいて、
    上記加熱手段が、通電により発熱する発熱部を筒内に有したグロープラグであり、
    上記制御手段は、上記グロープラグの温度が所定値以上に上昇した後、依然としてエンジンが上記第2自着火領域で運転されている場合には、上記グロープラグへの通電量を低下させつつ通電を継続することを特徴とする予混合圧縮自己着火エンジン。
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