JP5445386B2 - 地金除去装置 - Google Patents
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Description
そこで、従来は、地金が大きく成長しないうちに、転炉を傾動させて炉口を側方に向け、作業者が酸素用パイプを持って付着した地金に酸素ガスを吹付け溶断していた。しかし、このような方法では、地金の溶断に長時間を要するため作業性が悪く、転炉の稼働率低下を招いて生産性を悪化させる。
特許文献1には、ランスの円周方向に分割された中空リングと、中空リングの上面に設けられ、複数のランス孔にそれぞれ挿入される差込み管と、中空リングの外周円筒面に取付けられた複数本の噴出管とからなる酸素ガス噴出ユニットを、連結手段により相互に連結する装置が開示されている。
また、特許文献2には、ランスのノズル先端部の内側、かつ中央に設けられた取付け部に回転可能に装着され、ノズルの端面との間にリング状スリットを形成し、酸素流をノズルの外方方向に変換する酸素流変換部材と、この酸素流変換部材と取付け部との間で、酸素流変換部材の回転に付随して回動され、リング状スリットの一部を塞ぐスリット閉塞部材とから構成される装置が開示されている。
特許文献1、3、4に記載の装置は、いずれも装置構成が複雑であるため、地金除去時に高温に曝され焼きつき等が発生することで、装置の着脱が困難になる恐れがある。また、地金除去時に酸素が吹出されるランス孔を使用して、装置をランスに取付けるため、ランス孔への装置の挿入部分が損傷し易く、ランスから装置が脱落する恐れや、装置の寿命が短くなる恐れがある。特に、特許文献1では、複数のランス孔の傾斜を利用してランスに装置を取付けているため、差込み管が損傷した場合には、差込み管がランス孔から滑り落ち、装置がランスから脱落する恐れがある。また、特許文献3、4では、対となる固定アームの先端部に設けられた引掛け部分が損傷し易く、しかも引掛け部分の幅がランス孔の内幅よりも小さいため、引掛け部分が外れて装置がランスから脱落する恐れがある。
また、特許文献2に記載の装置は、装置を取付けるためにランスを改造する必要があるため、製造コストがかかる。また、スリット閉塞部材を用いることから、酸素の吹付けが部分的に行われるため、地金の溶断に時間を要する。更に、酸素流変換部材のランスへの取付けを、ボルトによって行っているため、地金除去時に高温に曝され焼きつき等が発生することで、装置の着脱が困難になる恐れがある。
前記酸素噴出口内に外部から挿入され、挿入側先部が前記酸素噴出口の基端部から前記転炉製鋼用ランスの内側へ突出する筒状の取付けロッドと、
前記取付けロッドの前記挿入側先部に傾倒可能に設けられ、傾倒時に前記取付けロッドを含めた最大幅Lを、該取付けロッドが挿入された前記酸素噴出口の基端部内幅Dの1.1倍以上2.1倍以下とする掛止部と、
前記取付けロッド内に装着され、先部が前記掛止部に接触して該掛止部の傾倒状態を維持すると共に、基部が前記酸素噴出口の外部へ突出する固定部材と、
前記固定部材の基部に設けられ、前記取付けロッドが挿入されていない前記酸素噴出口から吹出す酸素を、前記転炉製鋼用ランスの軸心に対して直交する方向に吹出す酸素吹付け手段とを有する。
また、固定部材は、掛止部の傾倒状態を維持するために取付けロッド内に装着され、地金除去時の高温環境に曝されないため、取付けロッドと固定部材との焼きつきを抑制、更には防止できる。
更に、酸素吹付け手段から吹出される酸素は、取付けロッドが挿入された酸素噴出口以外の酸素噴出口から吹出された酸素であるため、取付けロッドの損傷を抑制できる。
以上のことから、装置構成が簡単で転炉製鋼用ランスへの着脱も容易であり、地金除去を短時間で実施できると共に長寿命化が図れる。
ここで、酸素流変更部は、転炉製鋼用ランスの軸心に対し直交して取付けられているため、取付けロッドを、転炉製鋼用ランスの軸心に位置する酸素噴出口に挿入した場合には、他の酸素噴出口から吹出す酸素を転炉製鋼用ランスの軸心に対して直交する方向に吹出させるための装置構成を簡単にできる。
図1〜図5に示すように、本発明の一実施の形態に係る地金除去装置10は、複数の酸素噴出口11、12(ここでは、2個のみ図示)を備えた転炉製鋼用ランス(以下、単にランスともいう)13の先端部に取付けられ、転炉炉口(図示しない)に付着した地金を除去する装置であり、装置構成が簡単でランス13への着脱も容易であり、地金除去を短時間で実施できると共に長寿命化が図れる装置である。以下、詳しく説明する。
この酸素噴出口11は、ランス13の軸心位置(酸素噴出口11の軸心とランス13の軸心を一致させている)に形成され、酸素噴出口11以外の他の酸素噴出口12は、ランス13の軸心を中心として周方向に等ピッチで複数(例えば、2〜8個、ここでは4個)形成されている。なお、複数の酸素噴出口12は、ランス13の基側(内側)から先側(外側)へ向けて、隣り合う酸素噴出口12の間隔が広がるように、その軸心をランス13の軸心に対して傾斜させた状態で、ランス13に形成されている。
本実施の形態では、ランス13の軸心位置に形成された酸素噴出口11を用いて、地金除去装置10をランス13に取付けている。図1〜図3に示すように、地金除去装置10は、酸素噴出口11内に外部から挿入される取付けロッド14と、取付けロッド14の挿入側先部に設けられた掛止部15と、取付けロッド14内に装着される固定部材16と、固定部材16の基部に設けられた酸素吹付け手段17とを有している。
この取付けロッド14は、その外径が酸素噴出口11の最小内径より小さく、酸素噴出口11内に外部から挿入された際に、挿入側先部が酸素噴出口11の基端部からランス13の内側に突出し、基端部(挿入側先部の反対側)が酸素噴出口11の外部に突出する長さ(ランス13の底部厚みより長い長さ)を有している。なお、取付けロッド14の長さは、取付けロッド14を酸素噴出口11に取付けるに際し、取付けロッド14の基端部が、酸素噴出口11の外部に突出する長さとしているが、酸素噴出口11の外部に突出しない長さとしてもよい。
掛止部15は、取付けロッド14を酸素噴出口11へ挿入する際は起立状態を維持し(先端部が酸素噴出口11内面に接触してもよい)、挿入後は取付けロッド14に振動等を付与することで傾倒し、この傾倒時に、先部下面19(起立時の先部側面)が酸素噴出口11の基端に位置するランス13の内面20に当接するものである。なお、掛止部15の基端から先端までの長さは、掛止部15の傾倒時に、取付けロッド14を含めた最大幅Lが、取付けロッド14の挿入された酸素噴出口11の基端部内幅Dの1.1倍以上2.1倍以下となる長さに調整されている。この取付けロッド14を含めた最大幅Lとは、掛止部15の幅のみならず、平面視して、傾倒時の掛止部15から突出する取付けロッド14の部分も含めた幅である(図1参照)。なお、平面視して、傾倒時の掛止部15の幅内に取付けロッド14が収まれば(取付けロッド14の径が小さい場合)、掛止部15の幅が最大幅Dとなる。
図6に示すように、比L/Dが1.1未満の場合、基端部内幅Dに対する最大幅Lが短過ぎるため、地金除去装置の長期の使用によって掛止部が損傷し、装置がランスから脱落し易くなる。一方、比L/Dが2.1を超える場合、基端部内幅Dに対する最大幅Lが長過ぎるため、ランスからの装置の脱落は抑制できるものの、掛止部を傾倒や起立させることが難しくなり、取付けロッドの取付け取外しが困難になる。
従って、取付けロッドを含めた掛止部の最大幅Lを、酸素噴出口の基端部内幅Dの1.1倍以上2.1倍以下(最適範囲)としたが、下限を1.2倍、更には1.5倍とし、上限を2.0倍とすることが好ましい。
この固定部材16は、取付けロッド14内に装着されるものであり、先部21(取付けロッド14内への装着側)先端が掛止部15の基部に接触して掛止部15の傾倒状態を維持させると共に、基部が酸素噴出口11の外部へ突出する長さ(取付けロッド14より長い長さ)を有している。
また、固定部材16の基部には、ボルト22が取付けられているため、スパナ等の治具を用いることにより、取付けロッド14に対する固定部材16の着脱を容易に実施できる。
酸素流変更部23は、その外径が転炉炉口の内径の3〜15%程度であり、取付けロッド14が挿入された酸素噴出口11以外の酸素噴出口12から吹出す酸素を衝突させて、その流れをランス13の軸心に対して直交する方向(水平方向)に変えるものである。
この酸素流変更部23の軸心位置には、固定部材16に挿通するための貫通孔25が形成され、貫通孔25のランス13側の周縁には、ランス13の先端が接触可能な厚肉部26が設けられている。このように、厚肉部26を設けることで、酸素噴出口11以外(取付けロッド14が挿入されていない)の酸素噴出口12と酸素流変更部23の上面(厚肉部26を除く)との間の間隔が広げられ、各酸素噴出口12からの酸素の吹出しをスムーズにできる。
リング部材24は、その上面にランス13の先側面が当接又は近接配置され、しかも酸素噴出口11、12を外側から取囲むように配置され、各酸素噴出口12から吹出される酸素が、ランス13とリング部材24の間から漏出すことを抑制するものである。
なお、隙間Δhから吹出される酸素の流量をQ(m3/時間)とすると、この酸素の流量Qと隙間Δhとの比Q/Δhを、500以上3000以下とすることが好ましい。この酸素の流量Qは、15000〜30000(m3/時間)程度である。
図7に示すように、比Q/Δhが500未満の場合、隙間Δhに対する酸素の流量Qが少な過ぎるため、地金溶流に長時間を要して地金除去装置が損傷し易くなり、装置の寿命が短くなる傾向にある。一方、比Q/Δhが3000を超える場合、酸素吹付け手段が変形し、溶断に適した酸素の流速が得難い場合があった。これは、隙間Δhが狭いの対して、酸素の流量Qが大きくなり過ぎたため、溶断時の発熱量が増加し、熱を受けた酸素吹付け手段が変形したことによるものと推定される。このため、地金溶流に要する時間が僅かに上昇すると共に、装置の寿命が短くなる傾向にある。
従って、酸素の流量Qと隙間Δhとの比Q/Δhを500以上3000以下(最適範囲)としたが、下限を700とし、上限を2000とすることが好ましい。
取付けナット29の上面には、酸素流変更部23の貫通孔25内に嵌まり込む位置決め部31が設けられている。これにより、固定部材16に対する酸素吹付け手段17の横方向の位置ずれを防止しながら、固定部材16に酸素吹付け手段17を取付け固定できる。
また、取付けナット29の下方には、ワッシャー32を介して、袋ナット30が配置されている。この袋ナット30は、固定部材16の基部(ボルト22を含む)を囲むように、固定部材16に取付けられ、固定部材16からの酸素吹付け手段17の脱落を、確実に防止するためのものである。
なお、酸素吹付け手段の固定部材への取付けは、固定部材へ酸素吹付け手段を取付けることができれば、上記した装置構成に限定されるものではない。
図4(A)に示すように、転炉の操業時は、転炉製鋼用ランス13の各酸素噴出口11、12から、転炉内に酸素を吹付ける。このような転炉操業を行うことにより、転炉炉口に地金が付着し、除去する必要が生じた場合には、地金除去装置10を用いて地金の除去作業を行う。
地金除去装置10は、予備の転炉製鋼用ランス13の先端部に取付ける。以下、取付け方法について説明する。
そして、図4(C)に示すように、固定部材16の先部21先端が、傾倒した又は傾倒過程にある掛止部15の基部に接触するまで、固定部材16の基部にあるボルト22を、スパナ等の治具を用いて回す。これにより、掛止部15が傾倒状態を維持するため、取付けロッド14を酸素噴出口11内に取付け固定できる。
そして、図5(B)に示すように、固定部材16の基部に、ワッシャー32と袋ナット30を取付けた後、図5(C)に示すように、酸素吹付け手段17の下方に位置する取付けナット29、ワッシャー32、及び袋ナット30を覆うように、モルタル34を付着させる。
上記した方法で地金除去装置10を取付けたランス13を、転炉炉口に挿入した後、取付けロッド14を挿入した酸素噴出口11からの酸素の吹出しを停止した状態で、取付けロッド14が挿入されていない酸素噴出口12から酸素を吹出す。
地金の溶断が終了した後は、各酸素噴出口12からの酸素の吹出しを停止して、ランス13を転炉炉口から取出し、更に地金除去装置10を冷却する。そして、モルタル34を除去した後、袋ナット30、ワッシャー32、及び取付けナット29を、固定部材16から順次取外して、酸素吹付け手段17を取外す。ここで、袋ナット30と取付けナット29は、モルタル34で覆われていたため、固定部材16に対する焼きつきを抑制でき、取外し作業を容易にできる。
なお、地金除去装置10は、予備のランス13に取付けているため、地金除去装置10を取付けたランス13を転炉から取出すことで、通常の転炉操業を実施できる。また、転炉操業を実施するためのランスの交換が必要となり、地金除去装置10が取付けられた予備のランス13を使用する必要が生じた場合でも、地金除去装置10の取外しを短時間に実施できるため、転炉操業の停止時間を短くできる。
以上のことから、本発明の地金除去装置10を使用することで、地金除去を短時間で実施でき、転炉の稼働率低下を抑制して生産性を向上できると共に、長寿命化が図れる。
まず、取付けロッドを含めた掛止部の最大幅Lと酸素噴出口の基端部内幅Dとの比L/Dを種々変更した地金除去装置を使用し、その寿命と着脱負荷について検討した結果を説明する。この検討に際しては、酸素の流量Q(m3/時間)と隙間Δh(mm)との比Q/Δhを3000で一定にした。また、ここでは、断熱材の使用の有無(係止金具が設けられた袋ナットを使用)についても検討した。この検討条件と結果を、表1に示す。
特に、比L/Dが上記した最適範囲を満足すると共に、取付けナットや袋ナット等を断熱材で覆った実施例2、4、6については、固定部材に対する焼きつきを抑制でき、装置の着脱を短時間に実施できた。
この実施例7では、酸素吹付け手段が変形し、溶断に適した酸素の流速が得難い場合があった。これは、隙間Δhが狭いの対して、酸素の流量Qが大き過ぎたため、溶断時の発熱量が増加し、熱を受けた酸素吹付け手段が変形したことによるものと推定される。
また、実施例10では、隙間Δhが広いため、酸素の流量Qを大きくすることができず、地金除去時間の短縮がしにくかった。なお、時間をかければ、地金の除去は可能である。
上記した実施例7、10は、実施例3、8、9と比較して、地金除去時間が長くかかっているが、従来よりも大幅に短縮できている。
以上のことから、本発明の地金除去装置を使用することで、転炉製鋼用ランスへの着脱が容易であり、地金除去を短時間で実施できると共に長寿命化が図れることを確認できた。
また、前記実施の形態においては、ランスの軸心位置に形成された酸素噴出口に、地金除去装置を取付けた場合について説明したが、他の酸素噴出口に地金除去装置を取付けることもできる。この場合、取付け対象となる酸素噴出口の基端部内幅をDとし、傾倒時に取付けロッドを含めた最大幅Lが、前記した実施の形態の範囲を満足する掛止部を、取付けロッドに設ける。ここで、使用する取付けロッドの本数は、1本でもよく、また取付けロッドが挿入されない酸素噴出口を確保できれば、2本又は3本でもよい(取付けロッドを挿入する酸素噴出口の数に対応)。このとき、酸素吹付け手段の酸素流変更部が、ランスの軸心に対して直交するように、固定部材に設けた酸素吹付け手段の取付け部分を曲げるのがよい。
Claims (4)
- 複数の酸素噴出口を備えた転炉製鋼用ランスの先端部に取付けられ、転炉炉口に付着した地金を除去する地金除去装置において、
前記酸素噴出口内に外部から挿入され、挿入側先部が前記酸素噴出口の基端部から前記転炉製鋼用ランスの内側へ突出する筒状の取付けロッドと、
前記取付けロッドの前記挿入側先部に傾倒可能に設けられ、傾倒時に前記取付けロッドを含めた最大幅Lを、該取付けロッドが挿入された前記酸素噴出口の基端部内幅Dの1.1倍以上2.1倍以下とする掛止部と、
前記取付けロッド内に装着され、先部が前記掛止部に接触して該掛止部の傾倒状態を維持すると共に、基部が前記酸素噴出口の外部へ突出する固定部材と、
前記固定部材の基部に設けられ、前記取付けロッドが挿入されていない前記酸素噴出口から吹出す酸素を、前記転炉製鋼用ランスの軸心に対して直交する方向に吹出す酸素吹付け手段とを有することを特徴とする地金除去装置。 - 請求項1記載の地金除去装置において、前記酸素吹付け手段の前記固定部材への取付けはねじ部材によって行われ、しかも該ねじ部材の周囲には、該ねじ部材の周囲に付着させる断熱材の付着状態を維持するための係止金具が設けられていることを特徴とする地金除去装置。
- 請求項1又は2記載の地金除去装置において、前記取付けロッドが挿入される前記酸素噴出口は、前記転炉製鋼用ランスの軸心に位置することを特徴とする地金除去装置。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の地金除去装置において、前記酸素吹付け手段は、前記転炉製鋼用ランスの軸心に対し直交して取付けられた円盤状の酸素流変更部と、該酸素流変更部と軸心を合わせ、該酸素流変更部の前記転炉製鋼用ランス側に、該酸素流変更部とは隙間Δh(mm)をあけて設けられたリング部材とを有し、該隙間Δhから吹出される酸素の流量をQ(m3/時間)とすると、該酸素の流量Qと前記隙間Δhとの比Q/Δhが500以上3000以下であることを特徴とする地金除去装置。
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