以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る第1の実施の形態の気流発生装置10の断面を示す図である。
図1に示すように、気流発生装置10は、第1の誘電層21および第2の誘電層22の異なる2つの誘電層を積層して構成された誘電体20と、第1の誘電層21の表面に設けられた第1の電極23と、第2の誘電層22の、第1の誘電層21側とは異なる側の表面に設けられた第2の電極24とを備えている。また、第2の誘電層22は、基材25に接合されている。また、第1の誘電層21は、セラミックス材料からなる緻密質層で構成され、第2の誘電層22は、セラミックス材料からなる多孔質層で構成されている。
なお、ここでは、第1の電極23の一方の表面が第1の誘電層21の表面と同一平面となるように構成されているが、第1の電極23は、第1の誘電層21の表面から突出して設けられても、第1の誘電層21に埋設されてもよい。また、第2の電極24の一方の表面が第2の誘電層22の表面と同一平面となるように構成されているが、第2の電極24は、第2の誘電層22の表面から突出して設けられても、第2の誘電層22に埋設されてもよい。
第1の誘電層21を構成する緻密質層は、例えば、窒化アルミ、アルミナ、ジルコニア、ハフニア、チタニア、シリカなどを主成分としたセラミックス材料から構成されている。この緻密質層は、気孔率が10%以下、好ましくは5%以下となるように構成されることが好ましい。このように気孔率を制限することで、第1の誘電層21の表面に付着した水などの水分が、第1の誘電層21から気流発生装置10内、すなわち第2の誘電層22側に含浸することを防止することができる。これによって、絶縁耐力の低下を防止することができる。
第2の誘電層22を構成する多孔質層は、例えば、窒化アルミ、アルミナ、ジルコニア、ハフニア、チタニア、シリカなどを主成分としたセラミックス材料から構成されている。一般に、電極を構成する金属と、誘電層を構成する誘電体とでは線膨張係数が異なるため、接合部にせん断力が生じる。しかし、上記したように、第2の電極24と接合される第2の誘電層22を多孔質とすることで、せん断力を緩和させ、接合部の破壊を防止することができる。
第1の電極23および第2の電極24は、公知な固体の導電材料で構成される。第1の電極23および第2の電極24は、例えば、銅箔などを用いることができるが、これに限られるものではない。第1の電極23および第2の電極24として、例えば、ステンレス、インコネル(商品名)、ハステロイ(商品名)、チタン、白金、タングステン、モリブデン、ニッケル、銅、金、銀、すず、クロム等の金属や、これらの金属元素を主成分とする合金、カーボンナノチューブ、導電性セラミックス等の無機良導電体や、導電性プラスチック等の有機良導電体等を使用する環境下に応じて使用することもできる。
特に、インコネル、ハステロイ、チタン等の耐熱または耐腐食性金属を導電体に用いた場合には、高温多湿、酸化性等の高腐食雰囲気においても長期間使用することができる電極を実現することができる。また、金属でなく導電性プラスチックを導電体に用いた場合には、製造コストを大幅に削減できるだけでなく、加工性がよくなり、複雑曲面等の複雑形状の気流発生装置が実現できる。
基材25は、第1の誘電層21や第2の誘電層22を構成する材料と同様のセラミックス材料で構成される。ここで、基材25は、第2の電極24との接合部を有するため、基材25を多孔質で構成し、第2の電極24との接合部で生じるせん断力を緩和させ、破壊を防止することが好ましい。
次に、第1の実施の形態の気流発生装置10の製造方法の一例について説明する。
図2A〜図2Dは、第1の実施の形態の気流発生装置10の製造工程を説明するための、各工程における形成物の断面を示す図である。
ここでは、誘電層を溶射やEB−PVD(電子ビーム物理蒸着法)で形成する一例について説明する。
まず、基材25の一方の表面上に第2の電極24を設置し、基材25の表面に密着させて固定する(図2A)。
続いて、基材25の一方の表面上に、溶射やEB−PVDにより第2の誘電層22を形成する(図2B)。
ここで、溶射を用いた場合、プラズマで溶融させたセラミックス粒子を基材25の表面に吹き付けるので、皮膜は偏平形状のセラミック粒子で構成される。また、プラズマで溶融させたセラミックス粒子は、基材25の表面に半溶融状態で到達するため、偏平粒子間は結合せず隙間となり、多孔質層を形成する。また、EB−PVDを用いた場合、セラミック分子、クラスタを基材25の表面に蒸着させて成長させるため、皮膜は柱状構造となる。この柱状結晶間には結合力が働かないため隙間となり、多孔質層を形成する。
なお、溶射の場合には、一層の厚さが約10μmで、全体として300μm程度の厚さに成膜が可能である。また、EB−PVDの場合には、100nmの精度で膜の厚さを制御可能であり、全体として1mm程度の厚さの膜を形成することができる。
続いて、第2の誘電層22の表面上に、溶射やEB−PVDにより第1の誘電層21を形成し、その途中ですでに形成された第1の誘電層21上に第1の電極23を設置して固定し、再度溶射やEB−PVDにより第1の誘電層21を形成する(図2C)。なお、第1の電極23の表面にマスキング(テープ等)することが好ましい。また、第2の誘電層22の表面上に、直接、第1の電極23を設置して固定し、溶射やEB−PVDにより第1の誘電層21を形成してもよい。
この第1の誘電層21は、緻密質層で構成される。上記したように、一般に、溶射やEB−PVDでセラミックス層を形成した場合には、多孔質層が形成される。そこで、ここでは、次に示す方法で、溶射やEB−PVDによって緻密質層を形成する。
溶射の場合、溶射粉末として溶融粉砕粉を使用して、溶射粉末の平均粒径が44μm(325メッシュ)以下のものを使用することが好ましい。このように、溶射を用いてセラミックスの緻密質層を形成することができる。なお、溶射粉末の平均粒径を44μm以下とするのは、上記した気孔率が10%以下となるような緻密質層を形成するためである。また、この平均粒径とは、積算分布(累積分布)の中位径(累積分布曲線で累積量が50%時の粒子径)である。また、平均粒径は、メッシュ法(ふるい)、比表面積測定法(BET法)、沈降法などによって測定される。
EB−PVDの場合、第1の誘電層21を形成する面を蒸発源に対向するように、基材25を設置する。この際、基材25は回転等しないように、静止した状態に設置する。そして、電子ビームを照射して蒸発源を溶融し蒸発させ、発生した蒸発源物質の分子またはクラスタを基材25の対向面に蒸着させる。また、イオン銃等によりアルゴン、酸素等のイオン化したガス分子を発生させ、基材25にプラス電圧をかけることで電場を形成する。この電場でイオン化したガス分子を加速し、上記した蒸発分子またはクラスタと一緒に基材25の表面に蒸着させることで成膜速度を促進させ、皮膜の緻密化や密着性を向上させることができる。
なお、溶射やEB−PVDにより誘電層を形成する際、例えば、溶射の場合は粒子径や溶射距離、EB−PVDの場合は蒸発速度(電子ビーム出力)を連続的に、または段階的に変えること、厚み方向に連続的に緻密度の異なるセラミックス層を形成することができる。例えば、第1の誘電層21を形成する際、表面側の緻密度を高くして水などの水分の含浸を防止し、内側に行くに伴って緻密度が低くなるように形成してもよい。この場合、この緻密度を低くした層を第2の誘電層22として機能させてもよい。
最後に、機械加工により表面を平滑に仕上げるとともに、第1の電極23を露出させる(図2D)。なお、第1の電極23上にマスキング(テープ等)を備えることで、第1の電極23の表面の損傷などを防止することができる。
上記したように作製された気流発生装置10の第1の電極23と第2の電極24との間にケーブルを介して放電用電源によって所定の電圧を印加することで、バリア放電が生じ、低温プラズマが生成され、第1の誘電層21の表面に誘起気流が生じる。
上記した第1の実施の形態の気流発生装置10によれば、気流発生装置10の表面側となる第1の誘電層21を緻密質層とすることで、水分が、第1の誘電層21から気流発生装置10内に含浸することを防止することができる。これによって、絶縁耐力の低下を防止することができる。
また、第2の電極24と接合される第2の誘電層22を多孔質とすることで、せん断力を緩和させ、接合部の破壊を防止することができる。
なお、第1の実施の形態の気流発生装置10において、第1の誘電層21と第2の誘電層22の配置位置を入れ替えて誘電体20を構成してもよい。すなわち、第1の電極23側に第2の誘電層22を、第2の電極24側に第1の誘電層21を配置して誘電体20を構成してもよい。この構成においても、第1の誘電層21が緻密質層であるため、水分が、第1の誘電層21から第2の電極24側に含浸することを防止することができる。これによって、絶縁耐力の低下を防止することができる。
なお、ここでは、溶射やEB−PVDを用いて誘電層が形成された気流発生装置10の一例を示したが、次のように、第1の実施の形態の気流発生装置10を作製してもよい。
図3は、第1の実施の形態の他の構成の気流発生装置10の断面を示す図である。
図3に示すように、気流発生装置10は、第1の誘電層21および第2の誘電層22の異なる2つの誘電層を積層して構成された誘電体20と、第1の誘電層21の表面に設けられた第1の電極23と、第2の誘電層22の、第1の誘電層21側とは異なる側の表面に接合された第2の電極24を備えている。なお、第2の電極24は、基材としても機能している。
ここで、第1の誘電層21として、例えば、ドクターブレード等で作製された薄いセラミックスシートを焼成した緻密質セラミックスシートなどが用いられる。また、第2の誘電層22は、多孔質のセラミックスシートなどが用いられる。そして、図3に示すように、この気流発生装置10は、第2の電極24上に、第2の誘電層22、第1の誘電層21、第1の電極23の順に、それぞれの間に接着部材(図示しない)を介して積層して作製される。接着方法としては、ハンダ、ろう材、拡散接合法などが用いられる。
なお、第2の電極24、第1の電極23が銅で形成されている場合、接着部材を用いなくても、例えばダイレクト・ボンディング・カッパー法(DBC)により、これらの電極を誘電層に接合することができる。
このように形成された気流発生装置10においても、上記した、溶射やEB−PVDを用いて誘電層が形成された気流発生装置10における作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
(第2の実施の形態)
図4は、本発明に係る第2の実施の形態の気流発生装置11の断面を示す図である。図5は、本発明に係る第2の実施の形態の気流発生装置11を第1の誘電層31側から見たときの平面図である。なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態の気流発生装置10の構成と同一部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
図4に示すように、気流発生装置11は、第1の誘電層31および第2の誘電層32の異なる2つの誘電層を積層して構成された誘電体30と、第1の誘電層31の表面に設けられた第1の電極23と、第2の誘電層32の、第1の誘電層31側とは異なる側の表面に設けられた第2の電極24とを備えている。また、第2の誘電層32は、基材33に接合されている。また、第1の誘電層31は、セラミックス材料からなるセラミックス層で構成され、第2の誘電層32は、樹脂材料からなる樹脂層で構成されている。
なお、ここでは、第1の電極23の一方の表面が第1の誘電層31の表面と同一平面となるように構成されているが、第1の電極23は、第1の誘電層31の表面から突出して設けられても、第1の誘電層31に埋設されてもよい。また、第2の電極24の一方の表面が第2の誘電層32の表面と同一平面となるように構成されているが、第2の電極24は、第2の誘電層32の表面から突出して設けられても、第2の誘電層32に埋設されてもよい。
第1の誘電層31を構成するセラミックス層は、例えば、窒化アルミ、アルミナ、ジルコニア、ハフニア、チタニア、シリカなどを主成分としたセラミックス材料から構成されている。この第1の誘電層31は、多孔質層、緻密質層のいずれから構成されてもよい。また、図5に示すように、第1の誘電層31は、複数に分割して構成されることが好ましい。このようにセラミックス材料からなる第1の誘電層31を複数に分割して構成することで、可撓性に優れた気流発生装置11を構成することができる。
第2の誘電層32を構成する樹脂層は、例えば、次に示す熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、芳香族樹脂等から選択された樹脂材料で構成される。選択される樹脂材料として、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミノビシマレイミド、ポリケトン、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。具体的には、第2の誘電層32を、例えば、上記した樹脂材料からなるフィルムなどで構成することができる。第2の誘電層32を樹脂材料で構成することで、可撓性に優れた気流発生装置11を構成することができる。
なお、第1の実施の形態の気流発生装置10の場合と同様に、第1の電極23および第2の電極24を公知な固体の導電材料で構成することができるが、特に、ここでは可撓性に優れた導電性プラスチックなどの導電性樹脂などで構成することが好ましい。
基材33は、第2の誘電層32を構成する材料と同様の樹脂材料で構成される。具体的には、基材33を、例えば、第2の誘電層32を構成する材料と同様の樹脂材料からなるフィルムなどで構成することができる。基材33を樹脂材料で構成することで、可撓性に優れた気流発生装置11を構成することができる。
次に、第2の実施の形態の気流発生装置11の製造方法の一例について説明する。
図6A〜図6Dは、第2の実施の形態の気流発生装置11の製造工程を説明するための、各工程における形成物の断面を示す図である。
まず、シート状の基材33の一方の表面上に第2の電極24を設置し、例えば、加熱加圧により一体化処理を施し、第2の電極24を基材33の表面に密着させて固定する(図6A)。
続いて、第2の電極24が固定された基材33上に、第2の誘電層32を構成するシート状の樹脂を積層し、例えば、加熱加圧により一体化処理を施し、基材33と第2の誘電層32とを接合する(図6B)。
続いて、第1の誘電層31を複数に分割して形成するために、第2の誘電層32の表面上を例えばマスキング(テープ等)により複数に区分する。そして、マスキングにより複数に区分された第2の誘電層32の表面上に、溶射やEB−PVDにより第1の誘電層31を形成し、その途中ですでに形成された第1の誘電層31上に第1の電極23を設置して固定し、再度溶射やEB−PVDにより第1の誘電層31を形成する(図6C)。なお、第1の電極23の表面にマスキング(テープ等)することが好ましい。また、溶射やEB−PVDは、第2の誘電層32の融点以下の温度条件で実施される。また、第1の誘電層31を緻密質層とする場合には、第1の誘電層31は、第1の実施の形態で説明した方法と同様な方法で作製される。また、第2の誘電層32の表面上に、直接、第1の電極23を設置して固定し、溶射やEB−PVDにより第1の誘電層31を形成してもよい。
最後に、機械加工により表面を平滑に仕上げるとともに、第1の電極23を露出させる(図6D)。また、第2の誘電層32の表面上および第1の電極23上のマスキングは除去される。なお、第1の電極23上にマスキング(テープ等)を備えることで、第1の電極23の表面の損傷などを防止することができる。
なお、基材33と第2の誘電層32とを接合する前に、基材33と第2の誘電層32との接合面に接着性を向上させるための前処理を施すことも有効である。この前処理として、例えば、ピーニング処理、酸処理等を行い、接合面を凹凸にしたり、接合面に付着している不純物を取り除いたりすることが挙げられる。これらの処理を施すことで強固な接合部を形成することができる。
また、上記した製造工程では、第2の電極24の基材33の表面上への接合や、基材33と第2の誘電層32との接合を、加熱加圧により行う一例を示したが、これに限られるものではない。例えば、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、フェノール系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、塩化ビニル系接着剤などの接着剤で接合してもよい。また、接着剤中に、難燃性接着剤を配合すれば、電圧印加時に万一絶縁破壊が生じても焼損を避けることができる。また、超高温下で溶損する可能性が考えられる場合には、環境負荷を低減させるため、ハロゲンフリーの難燃性接着剤を使用することが好ましい。
すなわち、第2の電極24の基材33の表面上への接合方法や、基材33と第2の誘電層32との接合方法は、特に限定されるものではなく、加熱加圧と同等の密着性を得られる方法で一体化されていればよい。
上記したように作製された気流発生装置11の第1の電極23と第2の電極24との間にケーブルを介して放電用電源によって所定の電圧を印加することで、バリア放電が生じ、低温プラズマが生成され、第1の誘電層31の表面に誘起気流が生じる。
上記した第2の実施の形態の気流発生装置10によれば、第2の誘電層32および基材33をシート状の樹脂層で構成し、セラミックス層である第1の誘電層31を複数に分割して構成することで、可撓性に優れた気流発生装置を得ることができる。
また、樹脂材料は、放電による劣化により絶縁耐力が損なわれることがあるが、放電に接する第1の誘電層31をセラミックス材料で構成することで、優れた放電耐久性を得ることができる。さらに、第2の誘電層32を樹脂層で構成することで、水分が、第2の誘電層32から第2の電極24側に含浸することを防止することができる。これによって、絶縁耐力の低下を防止することができる。
このように、第2の実施の形態の気流発生装置10によれば、可撓性、放電耐久性および絶縁耐力に優れた気流発生装置を提供することができる。また、第2の実施の形態の気流発生装置10は、可撓性に優れているため、例えば、複雑な表面形状を有するような部位にも容易にかつ的確に配置することができる。
なお、第2の実施の形態の気流発生装置11において、第1の誘電層31と第2の誘電層32の配置位置を入れ替えて誘電体30を構成してもよい。すなわち、第1の電極23側に第2の誘電層32を、第2の電極24側に第1の誘電層31を配置して誘電体20を構成してもよい。この構成においても、第2の誘電層32が樹脂層であるため、気流発生装置11内への水分の侵入を防止することができる。これによって、絶縁耐力の低下を防止することができ、可撓性、絶縁耐力に優れた気流発生装置を提供することができる。
(第3の実施の形態)
図7は、本発明に係る第3の実施の形態の気流発生装置12の断面を示す図である。
図7に示すように、気流発生装置12は、第1の誘電層41および第2の誘電層42の異なる2つの誘電層を積層して構成された誘電体40と、第1の誘電層41の表面に設けられた第1の電極23と、第2の誘電層42の第1の誘電層41側とは異なる側の表面に設けられた第2の電極24とを備えている。また、第2の誘電層22は、基材43に接合されている。また、第1の誘電層41は、セラミックス材料からなる多孔質層の気孔に、誘電材料からなる封孔材を充填した封孔材充填層で構成され、第2の誘電層42は、セラミックス材料からなる多孔質層で構成されている。
なお、ここでは、第1の電極23の一方の表面が第1の誘電層41の表面と同一平面となるように構成されているが、第1の電極23は、第1の誘電層41の表面から突出して設けられても、第1の誘電層41に埋設されてもよい。また、第2の電極24の一方の表面が第2の誘電層42の表面と同一平面となるように構成されているが、第2の電極24は、第2の誘電層42の表面から突出して設けられても、第2の誘電層42に埋設されてもよい。
第1の誘電層41を構成する封孔材充填層は、例えば、窒化アルミ、アルミナ、ジルコニア、ハフニア、チタニア、シリカなどを主成分としたセラミックス材料からなる多孔質層の気孔に、誘電材料からなる封孔材を充填した材料から構成されている。このように、封孔材を多孔質層の気孔に含浸させて、気孔を封孔することで、第1の誘電層41の表面に付着した水などの水分が、第1の誘電層41から気流発生装置12内、すなわち第2の誘電層42側に含浸することを防止することができる。これによって、絶縁耐力の低下を防止することができる。
封孔材としては、例えば、エポキシ系樹脂、テフロン(登録商標)系樹脂、スラリー状のアルミナなどのセラミックス系材料、シリカなどを主成分とするガラス系材料、または、これらを混合させた金属とセラミックスの複合材料などを用いることができる。なお、セラミックス材料を用いる場合には、第1の誘電層41を構成するセラミックス材料と同じ材料を用いることが好ましい。
第2の誘電層42を構成する多孔質層は、例えば、窒化アルミ、アルミナ、ジルコニア、ハフニア、チタニア、シリカなどを主成分としたセラミックス材料から構成されている。一般に、電極を構成する金属と、誘電層を構成する誘電体とでは線膨張係数が異なるため、接合部にせん断力が生じる。しかし、上記したように、第2の電極24と接合される第2の誘電層42を多孔質とすることで、せん断力を緩和させ、接合部の破壊を防止することができる。
基材43は、第1の誘電層41や第2の誘電層42を構成する材料と同様のセラミックス材料で構成される。ここで、基材43は、第2の電極24との接合部を有するため、基材43を多孔質で構成し、第2の電極24との接合部で生じるせん断力を緩和させ、破壊を防止することが好ましい。
次に、第3の実施の形態の気流発生装置12の製造方法の一例について説明する。
図8A〜図8Eは、第3の実施の形態の気流発生装置12の製造工程を説明するための、各工程における形成物の断面を示す図である。
まず、基材43の一方の表面上に第2の電極24を設置し、基材43の表面に密着させて固定する(図8A)。
続いて、基材43の一方の表面上に、溶射やEB−PVDにより第2の誘電層42を形成する(図8B)。
ここで、溶射を用いた場合、プラズマで溶融させたセラミックス粒子を基材43の表面に吹き付けるので、皮膜は偏平形状のセラミック粒子で構成される。また、プラズマで溶融させたセラミックス粒子は、基材43の表面に半溶融状態で到達するため、偏平粒子間は結合せず隙間となり、多孔質層を形成する。また、EB−PVDを用いた場合、セラミック分子、クラスタを基材43の表面に蒸着させて成長させるため、皮膜は柱状構造となる。この柱状結晶間には結合力が働かないため隙間となり、多孔質層を形成する。
なお、溶射の場合には、一層の厚さが約10μmで、全体として300μm程度の厚さに成膜が可能である。また、EB−PVDの場合には、100nmの精度で膜の厚さを制御可能であり、全体として1mm程度の厚さの膜を形成することができる。
続いて、第2の誘電層42の表面上に、溶射やEB−PVDにより第1の誘電層41を構成するための多孔質層45を形成し、その途中ですでに形成された多孔質層45上に第1の電極23を設置して固定し、再度溶射やEB−PVDにより多孔質層45を形成する(図8C)。なお、第1の電極23の表面にマスキング(テープ等)することが好ましい。また、第2の誘電層42の表面上に、直接、第1の電極23を設置して固定し、溶射やEB−PVDにより多孔質層45を形成してもよい。
続いて、多孔質層45に誘電材料からなる封孔材を含浸させ、第1の誘電層41である封孔材充填層を形成する(図8D)。
封孔材として、例えばエポキシ系樹脂を使用する場合には、液状のエポキシ系樹脂を多孔質層45の気孔に含浸させ、樹脂が硬化する温度に加熱して封孔材充填層を形成する。
封孔材として、例えば、テフロン(登録商標)系樹脂を使用する場合には、液状のテフロン(登録商標)系樹脂を多孔質層45の気孔に含浸させ、焼付処理を行って封孔材充填層を形成する。この場合、焼付処理を行うため、強固な封孔材充填層を形成することができる。
封孔材として、例えば、セラミックス材料を使用する場合には、微細なセラミックス粒子が溶媒中に懸濁したスラリーを多孔質層45の気孔に含浸させ、加熱して焼成することで溶媒を蒸発させ、セラミックス粒子を多孔質層45と一体化させることによって封孔材充填層を形成する。ここで、スラリー中のセラミックス粒子の粒径が小さい方が焼成温度を低温化でき、さらには、多孔質層45の気孔に的確にセラミックス粒子を分散させることができる。そのため、セラミックス粒子の平均粒径は、10〜500nm程度であることが好ましい。なお、この平均粒径は積算分布(累積分布)の中位径(累積分布曲線で累積量が50%時の粒子径)である。また、平均粒径は、動的光散乱法、誘電泳動現象と回折光を利用した方法などによって測定される。また、溶媒として、水、アルコール、アセトンなどを使用することができる。
封孔材として、例えば、ガラス材料を使用する場合には、微細なガラス粒子が溶媒中に懸濁したスラリーを多孔質層45の気孔に含浸させ、加熱して焼成することで溶媒を蒸発させ、ガラス粒子を多孔質層45と一体化させることによって封孔材充填層を形成する。ここで、スラリー中のガラス粒子の粒径が小さい方が焼成温度を低温化でき、さらには、多孔質層45の気孔に的確にガラス粒子を分散させることができる。そのため、ガラス粒子の平均粒径は、10〜500nm程度であることが好ましい。なお、この平均粒径は、積算分布(累積分布)の中位径(累積分布曲線で累積量が50%時の粒子径)である。また、平均粒径は、動的光散乱法、誘電泳動現象と回折光を利用した方法などによって測定される。また、溶媒として、水、アルコール、アセトンなどを使用することができる。
最後に、機械加工により表面を平滑に仕上げるとともに、第1の電極23を露出させる(図8E)。なお、第1の電極23上にマスキング(テープ等)を備えることで、第1の電極23の表面の損傷などを防止することができる。
上記したように作製された気流発生装置12の第1の電極23と第2の電極24との間にケーブルを介して放電用電源によって所定の電圧を印加することで、バリア放電が生じ、低温プラズマが生成され、第1の誘電層41の表面に誘起気流が生じる。
上記した第3の実施の形態の気流発生装置12によれば、気流発生装置12の表面側となる第1の誘電層41を封孔材充填層とすることで、水分が、第1の誘電層41から気流発生装置12内に含浸することを防止することができる。これによって、絶縁耐力の低下を防止することができる。
また、第2の電極24と接合される第2の誘電層42を多孔質とすることで、せん断力を緩和させ、接合部の破壊を防止することができる。
なお、第3の実施の形態の気流発生装置12において、第1の誘電層41以外にも、例えば、第2の誘電層42や基材43の気孔に上記した方法と同様な方法で、封孔材を充填した構成としてもよい。この場合も、上記した第1の誘電層41に封孔材を充填した場合における作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
(第4の実施の形態)
図9は、本発明に係る第4の実施の形態の気流発生装置13の断面を示す図である。
図9に示すように、気流発生装置13は、第1の誘電層51および第2の誘電層52の異なる2つの誘電層を積層して構成された誘電体50と、第1の誘電層51の表面に設けられた第1の電極23と、第2の誘電層52の第1の誘電層51側とは異なる側の表面に設けられた第2の電極24とを備えている。また、第2の誘電層52は、基材53に接合されている。また、第1の誘電層51は、無機質材料の微粒子を分散して含有する樹脂材料からなる微粒子含有樹脂層で構成され、第2の誘電層52は、樹脂材料からなる樹脂層で構成されている。
なお、ここでは、第1の電極23の一方の表面が第1の誘電層51の表面と同一平面となるように構成されているが、第1の電極23は、第1の誘電層51の表面から突出して設けられても、第1の誘電層51に埋設されてもよい。また、第2の電極24の一方の表面が第2の誘電層52の表面と同一平面となるように構成されているが、第2の電極24は、第2の誘電層52の表面から突出して設けられても、第2の誘電層52に埋設されてもよい。
第1の誘電層51を構成する微粒子含有樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリビニールホルマール(PVF)、ポリエステル(PE)、ポリエステルイミド(EI)、ポリアミドイミド(AI)、ポリイミド(PI)等を用いる。これらの材料を用いることで、樹脂部分の耐部分放電性、耐熱性の向上を図ることができる。また、可撓性に優れた気流発生装置13を構成することができる。
また、微粒子含有樹脂層に分散して含有される無機質材料は、例えば層状粘土化合物で構成され、例えば、スメクタイト群、マイカ群、バーミキュライト群からなる鉱物群から選択された少なくとも1種以上の材料で構成される。例えば、スメクタイト群としては、モンモリナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライト、ステブンサイト、ノントロナイト等が挙げられる。マイカ群としては、クロライト、フロゴバイト、レピドライト、マスコバイト、バイオタイト、パラゴナイト、マーガライト、テニオライト、テトラシリシックマイカ等が挙げられる。バーミキュライト群としては、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラツバーミキュライト等が挙げられる。
層状粘土化合物の大きさの平均、すなわち積算分布(累積分布)の中位径(累積分布曲線で累積量が50%時の粒子径)は、1μm以下であることが好ましい。この範囲が好ましいのは、層状粘土化合物の大きさの平均が1μmを超えると、表面平滑性や可撓性に劣るからである。また、樹脂中に均一に分散させて、できるだけ多くの放電経路を遮断するため、層状粘土化合物の大きさの平均を0.1μm以下とすることがさらに好ましい。なお、層状粘土化合物の大きさの平均は、製作上の観点から0.1nm程度が下限となる。また、層状粘土化合物の大きさは、動的光散乱法、誘電泳動現象と回折光を利用した方法などによって測定される。
また、層状粘土化合物の添加量は、樹脂材料100重量部に対して0.5〜15重量部である。この範囲が好ましいのは、層状粘土化合物の添加量が、0.5重量部よりも少ない場合には、樹脂中に層状粘土化合物が十分に分散しないため、耐サージ性が向上しないことがあり、15重量部よりも多い場合には、樹脂の硬化時に粘土化合物間に十分に樹脂が浸透せずに空隙が生じることがあるからである。また、樹脂中に均一に分散させて、できるだけ多くの放電経路を遮断するため、層状粘土化合物の添加量を、樹脂材料100重量部に対して1〜10重量部とすることがさらに好ましい。
また、無機質材料として、上記した材料以外に、例えば、窒化ホウ素を用いることもできる。無機質材料として窒化ホウ素を用いることで、第1の誘電層51を低誘電率化することができるため、電界を緩和して部分放電が発生する電圧を高くすることができる。また、熱伝導率が向上するため、部分放電で生じた熱を周囲に拡散させ、部分放電個所の温度を低下させる効果が得られる。
第2の誘電層52を構成する樹脂層は、前述した第2の誘電層32を構成する樹脂層と同様の樹脂材料で構成され、例えば、次に示す熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、芳香族樹脂等から選択された樹脂材料で構成される。選択される樹脂材料として、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミノビシマレイミド、ポリケトン、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。具体的には、第2の誘電層52を、例えば、上記した樹脂材料からなるフィルムなどで構成することができる。第2の誘電層52を樹脂材料で構成することで、可撓性に優れた気流発生装置13を構成することができる。
なお、第1の実施の形態の気流発生装置10の場合と同様に、第1の電極23および第2の電極24を公知な固体の導電材料で構成することができるが、特に、ここでは可撓性に優れた導電性プラスチックなどの導電性樹脂などで構成することが好ましい。
基材53は、第2の誘電層52を構成する材料と同様の樹脂材料で構成される。具体的には、基材53を、例えば、第2の誘電層52を構成する材料と同様の樹脂材料からなるフィルムなどで構成することができる。基材53を樹脂材料で構成することで、可撓性に優れた気流発生装置13を構成することができる。
次に、第4の実施の形態の気流発生装置13の製造方法の一例について説明する。
図10A〜図10Dは、第4の実施の形態の気流発生装置13の製造工程を説明するための、各工程における形成物の断面を示す図である。
まず、シート状の基材53の一方の表面上に第2の電極24を設置し、例えば、加熱加圧により一体化処理を施し、第2の電極24を基材53の表面に密着させて固定する(図10A)。
続いて、第2の電極24が固定された基材53上に、第2の誘電層52を構成するシート状の樹脂を積層し、例えば、加熱加圧により一体化処理を施し、基材53と第2の誘電層52とを接合する(図10B)。
続いて、第1の誘電層51を作製する。第1の誘電層51は、次のように作製される。
まず、第1の誘電層51を構成する液状の樹脂材料および所定量の無機質材料を攪拌機に投入して攪拌混合する。層状粘土化合物は、シリケート層が積層した構造をしており、樹脂との複合において、単なる撹拌ではシリケート層の剥離分散が難しい。そのため、このように、ボールミル、アトライタ、ロールなどの攪拌機を用いる。また、層状粘土化合物は、シリケート層を積層した構造を有しており、層間が金属陽イオンで結合されている。この金属陽イオンを有機化合物で置換することにより、樹脂との親和性が向上され、攪拌時の層剥離性が向上して分散がよくなる。そのため、このイオン交換の有機化合物としては、第四級アンモニウム塩を攪拌機に投入することが好ましい。
続いて、第2の誘電層52の表面上に第1の電極23を設置して固定し、第2の誘電層52の表面上に、上記したように作製された第1の誘電層51を構成するためのスラリーを塗布する(図10C)。なお、第1の電極23の表面にマスキング(テープ等)することが好ましい。そして、第1の誘電層51を構成するためのスラリーが硬化する温度に加熱する。
最後に、機械加工により表面を平滑に仕上げるとともに、第1の電極23を露出させる(図10D)。また、第1の電極23上のマスキングは除去される。なお、第1の電極23上にマスキング(テープ等)を備えることで、第1の電極23の表面の損傷などを防止することができる。
なお、基材53と第2の誘電層52とを接合する前に、基材53と第2の誘電層52との接合面に接着性を向上させるための前処理を施すことも有効である。この前処理として、例えば、ピーニング処理、酸処理等を行い、接合面を凹凸にしたり、接合面に付着している不純物を取り除いたりすることが挙げられる。これらの処理を施すことで強固な接合部を形成することができる。
また、上記した製造工程では、第2の電極24の基材53の表面上への接合や、基材53と第2の誘電層52との接合を、加熱加圧により行う一例を示したが、これに限られるものではない。例えば、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、フェノール系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、塩化ビニル系接着剤などの接着剤などで接合してもよい。また、接着剤中に、難燃性接着剤を配合すれば、電圧印加時に万一絶縁破壊が生じても焼損を避けることができる。また、超高温下で溶損する可能性が考えられる場合には、環境負荷を低減させるため、ハロゲンフリーの難燃性接着剤の使用が好ましい。
すなわち、第2の電極24の基材53の表面上への接合方法や、基材53と第2の誘電層52との接合方法は、特に限定されるものではなく、加熱加圧と同等の密着性を得られる方法で一体化されていればよい。
また、第1の誘電層51を形成する際、第2の誘電層52の表面上に、上記した第1の誘電層51を構成するためのスラリーを塗布する一例を示したが、この方法に限られるものではない。例えば、上記スラリーから予めシート状の第1の誘電層51を形成しておき、このシート状の第1の誘電層51を、加熱加圧処理や接着剤などによって第2の誘電層52の表面上に接合してもよい。
上記したように作製された気流発生装置13の第1の電極23と第2の電極24との間にケーブルを介して放電用電源によって所定の電圧を印加することで、バリア放電が生じ、低温プラズマが生成され、第1の誘電層51の表面に誘起気流が生じる。
上記した第4の実施の形態の気流発生装置13によれば、放電と接触する気流発生装置13の表面となる第1の誘電層51を、無機質材料の微粒子を分散して含有する樹脂材料からなる微粒子含有樹脂層で構成することで、表面から発達した電気的トリーが、無機質材料の微粒子に衝突して停止する。そのため、電気的トリーの進展速度を低下させ、誘電体の寿命を向上させることができる。また、微粒子含有樹脂層を備えることで、熱伝導率が向上するため、部分放電で生じた熱を周囲に拡散させ、部分放電個所の温度を低下させる効果が得られる。
さらに、第1の誘電層51、第2の誘電層52および基材53をシート状の樹脂層で構成することで、可撓性に優れた気流発生装置を得ることができる。また、第1の誘電層51は、無機質材料を含有するものの樹脂で形成されているため、水分が、気流発生装置13内に侵入するのを防止することができる。これによって、絶縁耐力の低下を防止することができる。
このように、第4の実施の形態の気流発生装置13によれば、可撓性、放電耐久性および絶縁耐力に優れた気流発生装置を提供することができる。また、第4の実施の形態の気流発生装置13は、可撓性に優れているため、例えば、複雑な表面形状を有するような部位にも容易にかつ的確に配置することができる。
なお、第4の実施の形態の気流発生装置13において、第1の誘電層51以外にも、例えば、第2の誘電層52や基材53を、第1の誘電層51と同様に微粒子含有樹脂層で構成してもよい。この構成においても、第1の誘電層51のみを微粒子含有樹脂層とする場合おける作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
(第5の実施の形態)
図11は、本発明に係る第1の実施の形態の気流発生装置10に電極カバー60を備えた構成を示す斜視図である。図12は、図11のA−A断面を示す図であり、気流発生装置10を作動させていない状態(放電OFF)の様子を示す図である。図13は、図11のA−A断面を示す図であり、気流発生装置10を作動させた状態(放電ON)の様子を示す図である。
図11に示すように、気流発生装置10の第1の電極23と所定の空隙をおいて電極を覆う電極カバー60を備えてもよい。電極カバー60を備える際、誘起気流が発生する方向が開口するように、誘起気流が発生する方向に沿う電極カバー60の両端縁が電極カバー支持部61によって支持され固定されている。
電極カバー60は、例えば、鋼板や強化プラスチックなどの板状部材で構成される。なお、例えば表面に第1の電極23が露出する場合には、この第1の電極23を接地極にするか、または電極カバー60を電極系から絶縁することで、第1の電極23から電極カバー60への放電を防止することができる。また、電極カバー60を可撓性金属や可塑性樹脂で構成することで、電極カバー60の表面形状を容易に曲面に成型することができ、例えば、複雑曲面に対応して気流発生装置を設置することができる。また、電極カバー60を、電極を覆うときには、電極上に移動可能であり、電極を覆う必要のないときには、収納部(図示しない)に移動可能に構成してもよい。
図11および図12に示すように、電極カバー60と気流発生装置10との間を空気が吹きぬける構造になっているが、この電極カバー60と気流発生装置10とで構成されるスリット状の流路62における圧力損失は高い。そのため、気流発生装置10を作動させていない状態(放電OFF)では、周囲の空気に流れが生じているときであっても、流路62にはほとんど周囲の空気は流入しない。
ここで、気流発生装置10を作動させた状態(放電ON)にすると、図13に示すように、誘起気流63が発生する。これにより、少なくとも気流発生装置10の表面における境界層での気流の流れが加速されるため、スリット流路の圧力損失は低下する。そのため、流路62を周囲の空気が通過しやすくなるとともに、誘起気流63の流れによって周囲の空気を流路62の開口部から誘起気流63の発生する方向に流引する作用も生じる。このように、流路62の開口部において、放電と連動した空気の吸い込みや吹き出しが実現できる。この開口部に対応する部分を、例えば、物体表面の剥離点近傍におくことで、境界層における流れを加速したり、境界層における流れに擾乱を与えることができ、流れ制御が実現できる。なお、例えば、流路62に流入する気流の方向に対向して誘起気流63が発生するように気流発生装置10を設置した場合には、放電OFFのときの方が流路62における圧力損失は低下する。
また、気流発生装置10を複数個並設することで、誘起気流の強さを増加させることができる。なお、気流発生装置10は、主流方向に対して水平に誘起気流を発生させるように配置されることに限られない。例えば、気流発生装置10は、主流方向に対して垂直に誘起気流を発生するように配置されてもよい。
上記したように、気流発生装置10に電極カバー60を備えることで、電極に雨やほこりが付着するのを防止することができる。そのため、雨などの環境下で使用された場合においても、安定して一様な誘起気流を発生させることができる気流発生装置を提供することができる。
なお、ここでは、第1の実施の形態の気流発生装置10に電極カバー60を備えた一例を示したが、第2の実施の形態から第4の実施の形態で示された気流発生装置11、12、13に電極カバー60を備えてもよい。この場合においても、上記した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
(接合部における熱応力の評価)
ここでは、多孔質層と金属との接合層、および緻密質層と金属との接合層における熱応力の影響を熱サイクル試験結果に基づいて評価した。
熱サイクル試験は次のように行った。
厚さが10mmの銅基材上に、溶射によりアルミナをコーティングしてコーティング膜を形成した。ここで、コーティング条件を変えて、気孔率が大きい(気孔率が16%)コーティング膜と、気孔率が小さい(気孔率が5%)コーティング膜を作製した。試料はそれぞれ3個ずつ作製した。ここで、気孔率が大きい試料が、多孔質層に相当し、気孔率が小さい試料が、緻密質層に相当する。気孔率は、溶射皮膜の断面組織を走査型電子顕微鏡で観察し、得られた組織写真を画像解析することによって測定された。なお、コーティング膜の厚さは、250μmであった。
これらの試料に対して、温度差が300℃の500回の熱サイクル試験を行った。熱サイクル試験結果を表1に示す。なお、表1に示された結果は、各サイクル数までにコーティング膜の剥離が生じなかった試料の個数を示している。
表1に示すように、空孔率が小さい試料では、100サイクル以内で、すべての試料においてコーティング膜の剥離が確認された。一方、空孔率の大きい試料では、500サイクルでも、コーティング膜の剥離が生じないものがあった。
この結果から、空孔率の大きい試料では、空孔によって熱応力が緩和され、接合部におけるせん断力が分散され、剥離が生じ難かったものと考えられる。
(絶縁耐力の評価)
(封孔処理の影響)
ここでは、第1の誘電層、すなわち放電と接する気流発生装置の表面の層を、セラミックス材料からなる多孔質層で構成した場合、およびセラミックス材料からなる多孔質層に封孔処理を施して、気孔に誘電材料からなる封孔材を充填した封孔材充填層で構成した場合における絶縁耐力を部分放電開始電圧の測定結果に基づいて評価した。
多孔質層として、アルミナからなる幅が20mm、長さが100mm、厚さが250μmの部材を使用した。また、多孔質層の気孔率は、溶射皮膜の断面組織を画像解析することで測定した結果12%であった。
封孔材充填層の多孔質層として、上記した多孔質層と同様の多孔質を用いた。封孔材として、平均粒径が100nmのアルミナ粒子を主成分とするスラリーを用いた。皮膜表面に、上記したスラリーを塗布し減圧することで、スラリーを空孔内に含浸させるとともに、スラリー中の溶媒を蒸発させて除去した。そして、この工程を複数回繰返すことで、表面近傍の空孔内にアルミナ粒子を充填した。その後、アルゴンガス雰囲気中で500℃に加熱して焼成し、封孔材充填層を得た。
部分放電開始電圧は、上記した多孔質層、封孔材充填層のそれぞれを、銅からなる幅が10mm、長さが80mm、厚さが2mmの2枚の金属平板で挟んで、両金属平板間に高電圧を印加することで測定した。ここで、部分放電開始電圧とは、両金属平板間に印加する電圧を徐々に増加させ、放電を最初に開始したときの電圧である。また、部分放電開始電圧の測定は、温度が25℃で湿度が1%のドライ条件と、温度が25℃で湿度が100%のウェット条件とで行った。図14は、部分放電開始電圧の測定結果を示す図である。
図14に示すように、封孔処理を施すことによって部分放電開始電圧が上昇し、絶縁耐力が向上していることがわかった。特に、ウェット条件でその効果が顕著であることがわかった。
(無機質材料含有の影響)
ここでは、第1の誘電層、すなわち放電と接する気流発生装置の表面の層を、樹脂材料からなる樹脂層で構成した場合、および無機質材料の微粒子を分散して含有する樹脂材料からなる微粒子含有樹脂層で構成した場合における絶縁耐力を絶縁破壊までの時間の測定結果に基づいて評価した。
無機質材料含有の影響評価試験に用いた気流発生装置80の製造方法を図15A〜図15Eを参照して説明する。
図15A〜図15Eは、無機質材料含有の影響評価試験に用いた気流発生装置の製造工程を説明するための、各工程における形成物の断面を示す図である。なお、ここでは、第1の誘電層84および第2の誘電層82を微粒子含有樹脂層で構成した気流発生装置(実施例)と、第1の誘電層84および第2の誘電層82を樹脂層で構成した気流発生装置(比較例)を作製した。
まず、第1の誘電層84および第2の誘電層82が微粒子含有樹脂層で構成される気流発生装置の作製工程について説明する。
アルミニウムからなる幅が15mm、長さが400mmの基材の一方の表面上に厚さが2mmの凸状部を形成し、第2の電極81を形成した(図15A)。
次に、液状のポリアミドイミド100重量部に対して層状粘土化合物を5重量部添加し、これを攪拌機に投入して攪拌混合し、液状混合物を作製した。
続いて、第2の電極81を上記した液状混合物に浸漬させ、徐々に引き上げて、第2の電極81の表面全体に液状混合物を付着させた。そして、液状混合物が硬化する温度(300℃)に加熱して、第2の誘電層82を形成した(図15B)。
続いて、第2の電極81の凸状部側となる第2の誘電層82の表面上に、第1の電極83を設置して固定した(図15C)。
続いて、第1の電極83を設置した側の、第2の電極81の表面上に、上記した液状混合物を塗布した。そして、液状混合物が硬化する温度(300℃)に加熱して、第1の誘電層84を形成した(図15D)。
最後に、機械加工により表面を平滑に仕上げるとともに、第1の電極83を露出させ、第1の誘電層84および第2の誘電層82が微粒子含有樹脂層で構成された気流発生装置80を得た(図15E)。
次に、第1の誘電層84および第2の誘電層82が樹脂層で構成される気流発生装置の作製工程について説明する。
アルミニウムからなる幅が15mm、長さが400mmの基材の一方の表面上に厚さが2mmの凸状部を形成し、第2の電極81を形成した(図15A)。
次に、液状のポリアミドイミドに、第2の電極81を浸漬させ、徐々に引き上げて、第2の電極81の表面全体にポリアミドイミドを付着させた。そして、ポリアミドイミドが硬化する温度(300℃)に加熱して、第2の誘電層82を形成した(図15B)。
続いて、第2の電極81の凸状部側となる第2の誘電層82の表面上に、第1の電極83を設置して固定した(図15C)。
続いて、第1の電極83を設置した側の、第2の電極81の表面上に、上記した液状のポリアミドイミドを塗布した。そして、ポリアミドイミドが硬化する温度(300℃)に加熱して、第1の誘電層84を形成した(図15D)。
最後に、機械加工により表面を平滑に仕上げるとともに、第1の電極83を露出させ、第1の誘電層84および第2の誘電層82が樹脂層で構成された気流発生装置80を得た(図15E)。
上記のようにして、第1の誘電層84および第2の誘電層82を微粒子含有樹脂層で構成した気流発生装置、および第1の誘電層84および第2の誘電層82を樹脂層で構成した気流発生装置を作製した。また、上記した方法で、第1の誘電層84および第2の誘電層82の厚さが異なる数種類の気流発生装置をそれぞれ作製した。
絶縁破壊までの時間の測定は、第1の電極83と第2の電極81との間に、交流電圧(4kV、15kHz)を印加して放電させ、誘起気流を発生させた状態を維持し、絶縁破壊に至るまでの時間を測定した。図16は、絶縁破壊までの時間の測定結果を示す図である。
図16に示すように、第1の誘電層84および第2の誘電層82を、樹脂層で構成した場合よりも微粒子含有樹脂層で構成した場合の方が、絶縁破壊までの時間が長く、絶縁耐力に優れていることがわかった。樹脂の厚みによっては、第1の誘電層84および第2の誘電層82を、樹脂層で構成した場合よりも微粒子含有樹脂層で構成した場合の方が、10倍から100倍程度、絶縁破壊までの時間が長いことがわかった。
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。