図により本発明に係るマンホールの浮上防止構造の一実施形態を具体的に説明する。図1において、1は地盤9内に埋設されるコンクリート製筒状管からなるマンホールであり、底版2、直壁管3,4、斜壁管5、高さ及び角度調整リング6、マンホール蓋受けリング8を有している。マンホール蓋受けリング8にはマンホール蓋18が取り付けられる。直壁管3には排水管10が接続されている。直壁管3,4、斜壁管5の外周面にはインサートナット13が埋設されており、連結金具17の両端部に設けられた貫通穴にボルト11を挿入してインサートナット13に螺合締結することで直壁管3,4、斜壁管5相互が連結される。
マンホール1の直壁管4の外周部には、所定の重量を有する浮上防止環状体14が配置され、図3に示す金属製プレート12によりマンホール1の直壁管4と浮上防止環状体14とが結合される。浮上防止環状体14の上部には上に凸の突出部14aが設けられ、該突出部14aの両側に外側テーパ面14bと内側テーパ面14cが形成され、該外側テーパ面14bと内側テーパ面14cと、これらを接続する第1の水平上面となる天面14fとにより突出部14aが形成されている。また、突出部14aの一部を切り欠いて金属製プレート12を取り付けるための平坦面14gが形成されている。金属製プレート12は、図3に示すように、直壁管4に取り付けられる起立片12aと、浮上防止環状体14の平坦面14gに取り付けられる水平片12bと、該起立片12aと水平片12bとを接続する傾斜片12cとを有して構成される。浮上防止環状体14の平坦面14gにはインサートナット13が埋設されており、金属製プレート12の起立片12aと水平片12bとにそれぞれ設けられた貫通穴12a1,12b1にボルト11を挿入して直壁管4の外周面及び浮上防止環状体14の平坦面14gにそれぞれ埋設されたインサートナット13にそれぞれ螺合締結することで直壁管4と浮上防止環状体14とが剛に連結固定される。
本実施形態では、比較的径の小さい0号、1号マンホール用浮上防止環状体(外径1600mm、外径1800mm)14の場合は、図1及び図4に示すように、浮上防止環状体14の上部に形成された上に凸の突出部14aを180度ずれた対向する位置に2箇所切り欠いて形成した平坦面14gに2個の金属製プレート12の水平片12bをボルト止めし、起立片12aを直壁管4の外周面上に180度ずれた位置にボルト止めして固定する。また、比較的径の大きい2号、3号マンホール用浮上防止環状体(外径2300mm、外径2800mm)14の場合は、図6に示すように、浮上防止環状体14の上部に形成された上に凸の突出部14aを互いに90度ずれた位置に4箇所切り欠いて形成した平坦面14gに4個の金属製プレート12の水平片12bをボルト止めし、起立片12aを直壁管4の外周面上に互いに90度ずれた位置にボルト止めして固定する。尚、金属製プレート12の個数や配置は本実施形態に限定されるものではなく、他の所定の筒状管の外周面で他の所定の角度で所定の個数を配置することでも良い。
既設のマンホール1に対して金属製プレート12を取り付ける場合には地盤9を開削して直壁管4を露出させる。そして、該直壁管4に予めインサートナット13が既に取り付けられている場合には、予め浮上防止環状体14の平坦面14gに水平片12bをボルト止めした金属製プレート12の起立片12aを直壁管4の外周面に当接し、ボルト止めして固定する。また、直壁管4にインサートナット13が取り付けられていない既設マンホール1の場合には、ボルト型アンカーボルト又はナット型アンカーボルトを既設マンホール1の直壁管4に設置した後、ナット又はボルトにて金属製プレート12の起立片12aを直壁管4に固定する。
地盤9内で且つマンホール1の外周には、該マンホール1の直壁管4の外周面に金属製プレート12により固定され、所定の重量を有し、直壁管4の外形よりも大きな内径を有するコンクリート製の浮上防止環状体14が配置して埋設される。浮上防止環状体14の下面直下の地固めは該浮上防止環状体14を設置する前に行うことが出来る。浮上防止環状体14は、上部に上に凸の突出部14aが設けられ、該突出部14aの両側に外側テーパ面14bと、内側テーパ面14cとが形成され、更に該外側テーパ面14bと、内側テーパ面14cとを接続する第1の水平上面からなる天面14fと、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lと、底面14d、内外側面14e,14hとを有する断面7角形状で構成される。突出部14aの一部には図4及び図6に示すように、金属製プレート12が取り付けられる位置に平坦面14gが形成されている。
図8(a)において、浮上防止環状体14の一部の縦断面の図心(図8(a)に示す7角形断面図上の重心)をmとし、図心mを原点として、マンホール1に作用する浮揚力が金属製プレート12を介して浮上防止環状体14に作用した際に、外側テーパ面14bに作用する力をベクトルFAとし、内側テーパ面14cに作用する力をベクトルFBとし、第1の水平上面となる天面14fに作用する力をベクトルFCとし、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lに作用する力をベクトルFDとし、ベクトルFAとベクトルFBとベクトルFCとベクトルFDとを合成した力をベクトルFRとする。ベクトルFAとベクトルFBの大きさは、浮上防止環状体14に土砂が載荷する外側テーパ面14b及び内側テーパ面14cの鉛直方向(図8(a)の上下方向)におけるそれぞれの投影面積A,B(図1(b)参照)に比例すると考えることが出来、ベクトルFC,FDの大きさはそれぞれ天面14fの面積と第2の水平上面14lの面積とにそれぞれ比例すると考えることが出来る。
そして、図8(a),(b)に示すように、各ベクトルFA,FB,FC,FDのX成分であるFAX,FBX,FCX,FDX、各ベクトルFA,FB,FC,FDのY成分であるFAY,FBY,FCY,FDYを用いて以下の数2式に示す合成ベクトルFRのスカラー量(絶対値の大きさ;長さ)が最小値となるように設定することで、地震による液状化現象によりマンホール1に作用する浮揚力が金属製プレート12を介して浮上防止環状体14に作用した際に、該浮上防止環状体14が周囲地盤に及ぼす浮揚力を最小限に軽減し、周囲地盤のせん断破壊を防止して金属製プレート12により固定されたマンホール1の浮上を効果的に防止することができる。マンホール1に作用する浮揚力が金属製プレート12を介して浮上防止環状体14に作用した際に外側テーパ面14bと内側テーパ面14cと天面14fに作用する土圧により該浮上防止環状体14を押圧し、その押圧力と浮上防止環状体14の重量が協働して作用することで該金属製プレート12により固定されたマンホール1の浮上を防止することが出来る。
図8(c)に示すように、浮上防止環状体14に作用する上向きの浮上がり力が同じである場合、コンクリート製品からなる浮上防止環状体14と周囲の地盤との接触面に作用する力(有効応力)を小さくすれば見掛け上の土のせん断抵抗力は増加する。そこで、本実施形態の浮上防止環状体14は、その上部形状を上の凸の突出部14aを形成する外側テーパ面14bと内側テーパ面14cと平坦な第1の水平上面からなる天面14fと内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lとにより構成したことで、浮上防止環状体14と周囲の地盤との接触面に作用する力(有効応力)を3方向に分散させて周囲の地盤に作用する力を軽減し、見掛け上の土壌の抵抗力を増加させ、その結果として浮上抑制効果を高めることが出来る。このため、外側テーパ面14bと内側テーパ面14cと第1の水平上面となる天面14fと第2の水平上面14lとにそれぞれ作用する力となる各ベクトルFA,FB,FC,FDの合成ベクトルFRが最小値となるように設定することにより浮上防止環状体14の周囲の地盤に作用する力を最小とし、その結果、浮上抑制効果を高めることが出来る。
次に上記数2式に示される各ベクトルFA,FB,FC,FDのX成分であるFAX,FBX,FCX,FDX、各ベクトルFA,FB,FC,FDのY成分であるFAY,FBY,FCY,FDYを以下の数3式のように、外側テーパ面14bの軸方向に対する投影面積A、内側テーパ面14cの軸方向に対する投影面積B、第1の水平上面となる天面14fの面積C、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの面積D、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θA、内側テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θBにより定義する方法について図8(d)を用いて以下に説明する。
ここで、図8(b)に示すように、ベクトルFBをX−Y座標で表すと以下の数4式で表すことが出来る。
[数4]
FB(X,Y)=(FBsinθB,FBcosθB)
次に図8(d)を用いてベクトルFBと投影面積Bとの関係について考察する。ベクトルFBは内側テーパ面14cが該内側テーパ面14cに対向する周囲の地盤に作用する力であるから該内側テーパ面14cの面積に比例すると考えると、図8(d)に示すように、該ベクトルFBを傾斜角度θBの三角形の斜辺の長さに設定し、該内側テーパ面14cの軸方向に対する投影面積Bをその三角形の底辺の長さに設定して三角関数により以下の数5式で表すことが出来る。
[数5]
B/FB=cosθB
だから
FB=B/cosθB
従って、上記数5式を上記数4式に代入してFBのX−Y座標を求めると以下の数6式で表すことが出来る。
[数6]
FB(X,Y)=(FBsinθB,FBcosθB)=(BsinθB/cosθB,B)
同様にしてFA,FC,FDのそれぞれのX−Y座標は以下の数7式で表すことが出来る。
[数7]
FA(X,Y)=(FAsinθA,FAcosθA)=(AsinθA/cosθA,A)
FC(X,Y)=(0,FC)=(0,C)
FD(X,Y)=(0,FD)=(0,D)
このようにして求めたFA,FB,FC,FDのそれぞれのX−Y座標を前記数2式に代入して以下の数3式を求めることが出来る。これにより、ベクトルFA,FB,FC,FDの大きさを浮上防止環状体14の土砂が載荷する外側テーパ面14b及び内側テーパ面14cの鉛直方向(図8(a)の上下方向)におけるそれぞれの投影面積A,B、第1の水平上面となる天面14fの面積C、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの面積D(図1(b)参照)と、該外側テーパ面14bの水平面(図8(a)の左右方向)に対する傾斜角度θA、該内側テーパ面14cの水平面(図8の左右方向)に対する傾斜角度θBを用いて簡易に換算することが出来るものである。
そして、ベクトルFAとベクトルFBとベクトルFCとベクトルFDとを合成した上記数3式により求められるベクトルFRのスカラー量(絶対値の大きさ;長さ)が最小値になるように設定することで、地震による液状化現象によりマンホール1に作用する浮揚力が金属製プレート12を介して浮上防止環状体14に作用した際に、該浮上防止環状体14が周囲地盤に及ぼす浮揚力を最小限に軽減し、周囲地盤のせん断破壊を防止して金属製プレート12により固定されたマンホール1の浮上を効果的に防止することができる。
マンホール1に作用する浮揚力は浮上防止環状体14の外側テーパ面14b、第1の水平上面となる天面14f、内側テーパ面14c、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14l、外側面14eによりそれぞれ周囲の地盤に分散して伝達され、地盤9のせん断破壊を軽減し、マンホール1の浮き上がり抵抗力を高める。
本実施形態では、図8(a)に示すように、浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの軸方向(図8(a)の上下方向)に対する投影面積をA、該浮上防止環状体14の内側テーパ面14cの軸方向に対する投影面積をB、外側テーパ面14bと内側テーパ面14cとを接続する浮上防止環状体14の天面14fの面積をC、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの面積をD、該外側テーパ面14bの水平面(図8(a)の左右方向)に対する傾斜角度をθA、該内側テーパ面14cの水平面(図8の左右方向)に対する傾斜角度をθBとすると、上記数3式に示されるベクトルFRのスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)が最小値となるように図11及び図12に示す実施例1〜実施例38に示すように適宜設定される。
ここで、図8(b)に示すように、水平方向をX軸、鉛直方向をY軸とし、浮上防止環状体14の一部の縦断面の図心(図8(a)に示す7角形断面図上の重心)をmとし、該図心mを原点とすると、ベクトルFAのX軸成分は、−FAsinθAとなり、Y軸成分は、+FAcosθAとなり、ベクトルFBのX軸成分は、+FBsinθBとなり、Y軸成分は、+FBcosθBとなり、ベクトルFC及びベクトルFDのX軸成分は、それぞれ「0」となり、Y軸成分は、それぞれ+FC、+FDとなる。そして、合成ベクトルFRのスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)は上記数3式により求められ、そのFRが最小値となれば浮揚力を最小とすることができる。
尚、本実施形態では、浮上防止環状体14の水平上面として、外側テーパ面14bと内側テーパ面14cとを接続する第1の水平上面としての天面14fと、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lとの2つの水平上面を考慮して上記数3式を用いて合成ベクトルFRのスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)が最小値となるように設定する一例を示したが、他の例として、1つの水平上面、或いは他の複数の水平上面を考慮して上記数1式を用いて合成ベクトルFRのスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)が最小値となるように設定するすることができる。前記数1式では浮上防止環状体14の全ての水平上面の合計の面積をCとして包括的に示したものであり、前記数3式は2つの水平上面を考慮した場合の一例を示す式である。各水平上面のベクトルFCのX軸成分は、それぞれ「0」となり、Y軸成分は、それぞれを加算した+FCとなる。そして、前記数1式により求めた合成ベクトルFRのスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)が最小値となれば浮揚力を最小とすることができる。
以下に具体例における試算結果について図9〜図12を用いて説明する。具体例として0号、1号、2号、3号組立てマンホール1に使用する0号、1号、2号、3号マンホール用浮上防止環状体14についてそれぞれ試算を行う。例えば、図9(a)に示す具体例では、外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2よりも大きい場合の0号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが1600mm、内径直径φiが920mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が150mm、水平方向の幅w1が100mm、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が100mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が340mm、該浮上防止環状体14の第1の水平上面としての天面14fの水平方向の幅w4が50mm、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの水平方向の幅w5が90mmとした。
同様に1号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが1800mm、内径直径φiが1070mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が150mm、水平方向の幅w1が100mm、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が365mm、該浮上防止環状体14の第1の水平上面としての天面14fの水平方向の幅w4が50mm、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの水平方向の幅w5が65mmとした。
同様に2号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが2300mm、内径直径φiが1420mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が150mm、水平方向の幅w1が100mm、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が440mm、該浮上防止環状体14の第1の水平上面としての天面14fの水平方向の幅w4が50mm、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの水平方向の幅w5が140mmとした。
同様に3号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが2800mm、内径直径φiが1770mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が150mm、水平方向の幅w1が100mm、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が515mm、該浮上防止環状体14の第1の水平上面としての天面14fの水平方向の幅w4が50mm、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの水平方向の幅w5が215mmとした。
また、図9(b)に示す具体例では、外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1と、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2とが等しい場合の0号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが1600mm、内径直径φiが920mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が100mm、水平方向の幅w1が100mm、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が100mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が340mm、該浮上防止環状体14の第1の水平上面としての天面14fの水平方向の幅w4が50mm、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの水平方向の幅w5が90mmとした。
同様に1号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが1800mm、内径直径φiが1070mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が100mm、水平方向の幅w1が100mm、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が365mm、該浮上防止環状体14の第1の水平上面としての天面14fの水平方向の幅w4が50mm、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの水平方向の幅w5が65mmとした。
同様に2号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが2300mm、内径直径φiが1420mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が100mm、水平方向の幅w1が100mm、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が440mm、該浮上防止環状体14の第1の水平上面としての天面14fの水平方向の幅w4が50mm、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの水平方向の幅w5が140mmとした。
同様に3号マンホール用浮上防止環状体14は、外径直径φoが2800mm、内径直径φiが1770mm、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が100mm、水平方向の幅w1が100mm、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2が100mm、水平方向の幅w2が150mm、該浮上防止環状体14の内径と外径との間の水平方向の幅w3が515mm、該浮上防止環状体14の第1の水平上面としての天面14fの水平方向の幅w4が50mm、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの水平方向の幅w5が215mmとした。
そして、図9(a),(b)に示す内側テーパ面14cの外径直径をφa、外側テーパ面14bの内径直径をφbとして、当該外径直径φa,内径直径φbを適宜変更した場合の浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの軸方向に対する投影面積A、浮上防止環状体14の内側テーパ面14cの軸方向に対する投影面積B、第1の水平上面としての天面14fの面積C、内側テーパ面14cの下端部と浮上防止環状体14の内側面14hの上端部とを接続する第2の水平上面14lの面積D、外側テーパ面14bの水平面(図8(a)の左右方向)に対する傾斜角度θA、該内側テーパ面14cの水平面(図8(a)の左右方向)に対する傾斜角度θB、該傾斜角度θAから傾斜角度θBを引いた角度差(θA−θB)、図8(a),(b)に示す各ベクトルFA,FB,FC,FDの各X軸成分FAX,FBX,FCX,FDX、合成ベクトルFRのX軸成分(FAX+FBX+FCX+FDX)、各ベクトルFA,FB,FC,FDの各Y軸成分FAY,FBY,FCY,FDY、合成ベクトルFRのY軸成分(FAY+FBY+FCY+FDY)、合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をそれぞれ図11及び図12に示す。
図11及び図12に示す実施例1〜実施例38は、前記数3式のFRの最小値を求める際に、便宜的に図9(a),(b)に示す浮上防止環状体14の外径直径φo及び内径直径φiをそれぞれ所定の値に固定すると共に、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1及び内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2をそれぞれ所定の値に固定し、図10(a)〜(d)、或いは図10(e)〜(h)に示すように、浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの上端部と、内側テーパ面14cの上端部とに接続される該浮上防止環状体14の天面14fの幅w4を所定の値(図10では50mm)に固定した状態で該天面14fの位置を水平方向(図10の天面14fに沿った左右方向)に移動した時に変化する投影面積A,B(図4(a)、図6(a)参照)、傾斜角度θA,θB、のそれぞれの値に基づいて、前記数3式により求められるFRの値を複数算出し、その算出した複数のFRの値の最小値に対応する投影面積A,B、傾斜角度θA,θBに基づいて浮上防止環状体14を設計した場合の一例を示す。
尚、図10(a)〜(d)は外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2よりも50mm高い場合で傾斜角度θAをそれぞれ31°、45°、56°、90°に設定した場合の形状を示し、図10(e)〜(h)は外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1と、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2とが等しい場合で傾斜角度θAをそれぞれ22°、34°、45°、90°に設定した場合の形状を示す。この場合、傾斜角度θB、外側テーパ面14bの水平方向の幅w1、内側テーパ面14cの水平方向の幅w2は傾斜角度θAに連動して変化する。
このような設計方法によれば、上記数3式により求められるFRの最小値を求める方法として、便宜的に浮上防止環状体14の外径直径φo及び内径直径φiをそれぞれ所定の値に固定すると共に、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1及び内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2をそれぞれ所定の値に固定し、該浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの上端部と、内側テーパ面14cの上端部とに接続される該浮上防止環状体14の天面14fの幅を所定の値に固定した状態で該天面14fの位置を水平方向に移動した時に変化する投影面積A,B、傾斜角度θA,θB、のそれぞれの値に基づいて、上記数3式により求められるFRの値を複数算出し、その算出した複数のFRの値の最小値を上記数3式により求められるFRの最小値として便宜的に採用することができ、そのFRの最小値に対応する投影面積A,B、固定された面積C、傾斜角度θA,θBに基づいて浮上防止環状体14を容易に設計することができるものである。
図11に示すように、浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1が内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2よりも50mm大きい場合において、マンホール1の外径が900mm(0号マンホール)の場合には、実施例2に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θAから内側テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θBを引いた角度差(θA−θB)を11°に設定した場合には、0号マンホールについて合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例1〜実施例4の中では実施例2が合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
また、マンホール1の外径が1050mm(1号マンホール)の場合には、実施例7に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θAから内側テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θBを引いた角度差(θA−θB)を22°に設定した場合には、1号マンホールについても合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例5〜実施例9の中では実施例7が合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
また、マンホール1の外径が1400mm(2号マンホール)の場合には、実施例12に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θAから内側テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θBを引いた角度差(θA−θB)を22°に設定した場合には、2号マンホールについても合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例10〜実施例14の中では実施例12が合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
また、マンホール1の外径が1750mm(3号マンホール)の場合には、実施例17に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θAから内側テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θBを引いた角度差(θA−θB)を22°に設定した場合には、3号マンホールについても合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例15〜実施例19の中では実施例17が合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
図12に示すように、浮上防止環状体14の外側テーパ面14bの鉛直方向の高さh1と、内側テーパ面14cの鉛直方向の高さh2とが等しい場合において、マンホール1の外径が900mm(0号マンホール)の場合には、実施例21に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θAから内側テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θBを引いた角度差(θA−θB)を0°に設定した場合には、0号マンホールについて合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例20〜実施例23の中では実施例21が合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
また、マンホール1の外径が1050mm(1号マンホール)の場合には、実施例26に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θAから内側テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θBを引いた角度差(θA−θB)を11°に設定した場合には、1号マンホールについても合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例24〜実施例28の中では実施例26が合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
また、マンホール1の外径が1400mm(2号マンホール)の場合には、実施例31に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θAから内側テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θBを引いた角度差(θA−θB)を11°に設定した場合には、2号マンホールについても合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例29〜実施例33の中では実施例31が合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
また、マンホール1の外径が1750mm(3号マンホール)の場合には、実施例36に示すように、外側テーパ面14bの水平面に対する傾斜角度θAから内側テーパ面14cの水平面に対する傾斜角度θBを引いた角度差(θA−θB)を11°に設定した場合には、3号マンホールについても合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)をより小さく設定することができ、実施例34〜実施例38の中では実施例36が合成ベクトルFRの上記数3式により求められるスカラー量(絶対値の大きさ;ベクトルの長さ)を最小値として採用することができる。
図2(a)は浮上防止環状体14の下部に所定の重量を有する1個のウエイトリング15を取り付けた場合、図2(b)は浮上防止環状体14に2個のウエイトリング15を取り付けた場合のそれぞれの構成を示す。比較的径の小さい0号、1号マンホール用浮上防止環状体14では、図4(a),(c)に示すように、浮上防止環状体14の外周部の所定位置で金属製プレート12を取り付ける平坦面14gからずれた位置で互いに180度ずれた位置に2箇所の平坦面14jが外側テーパ面14bの一部を切り欠いて設けられており、その平坦面14gを貫通して連結ボルト挿入孔14iが設けられている。比較的径の小さい0号、1号マンホール用浮上防止環状体14の下部に取り付けられる図5に示すウエイトリング15の外周部にも互いに90度ずつずれた位置に4箇所の連結ボルト挿入孔15aが貫通して設けられている。
また、比較的径の大きい2号、3号マンホール用浮上防止環状体14では、図6(a),(c)に示すように、浮上防止環状体14の外周部の所定位置で金属製プレート12を取り付ける平坦面14gからずれた位置で互いに90度ずれた位置に4箇所の平坦面14jが外側テーパ面14bの一部を切り欠いて設けられており、その平坦面14gを貫通して連結ボルト挿入孔14iが設けられている。比較的径の大きい2号、3号マンホール用浮上防止環状体14の下部に取り付けられる図7に示すウエイトリング15の外周部にも互いに45度ずつずれた位置に8箇所の連結ボルト挿入孔15aが貫通して設けられている。
なお、図4〜図7中の浮上防止環状体14とウエイトリング15のそれぞれの側面外周部に水平に埋設されたインサートナット13はクレーン等の吊り下げ用フックを螺合締結するためのものである。また、浮上防止環状体14とウエイトリング15のそれぞれの内周面に設けられた切欠溝14k,15bは、直壁管3,4、斜壁管5の外周面相互に連結された連結金具17を避けるためのものである。
そして、浮上防止環状体14の下面にウエイトリング15の上面を当接させ、対応する2箇所或いは4箇所の連結ボルト挿入孔14i,15aに連結ボルト16をそれぞれ挿入し、ナット止めにより浮上防止環状体14とウエイトリング15とを連結固定することが出来る。また、そのウエイトリング15の下部に更に別のウエイトリング15を取り付ける場合には、図2(b)に示すように、別のウエイトリング15を円周方向に図5に示すウエイトリング15では90度、図7に示すウエイトリング15では45度それぞれずらして、その上面を先に取り付けたウエイトリング15の下面に当接し、先に取り付けたウエイトリング15の残り2箇所或いは4箇所の連結ボルト挿入孔15aと、後から取り付けるウエイトリング15の対応する2箇所或いは4箇所の連結ボルト挿入孔15aに連結ボルト16をそれぞれ挿入し、ナット止めによりウエイトリング15相互を連結固定することが出来る。更にウエイトリング15を増設したい場合には同様にして増設することが出来る。
ウエイトリング15は互いに周方向に位置を90度、或いは45度ずらすことにより順次重ね合わせが出来る構造であるのでマンホール1に作用する浮揚力の程度に応じてウエイトリング15の取り付け枚数を適宜調整することが出来、経済的で最適な浮上防止構造を構築することが出来る。
本実施形態では、0号、1号、2号、3号マンホール用浮上防止環状体14の重量は、それぞれ766kg、956kg、2025kg、2908kgに設定され、更にそれぞれの浮上防止環状体14に対応する0号、1号、2号、3号マンホール用ウエイトリング15の個々の重量は639kg、785kg、1826kg、2653kgに設定される。
マンホール1に特殊な加工を施すことなく簡易な方法により低コストで施工できるため、新規のマンホール1のみならず、既設のマンホール1に対しても容易に浮き上がり抑制対策を施すことが出来る。また、浮上防止環状体14の使用材料は市販のプレキャストコンクリート製品であるため経済的である。また、浮上防止環状体14は、金属製プレート12によりマンホール1の外周面に固定され、転圧した地盤9の上に載せるだけの単純な構造であるため特殊な施工作業が必要でなく、施工性が良い。