JP5440669B2 - 違法電波の判定方法、判定装置及びコンピュータプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)を実施する際に有用となる電波監視装置による違法電波の判定方法等に関する。
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を受信し、この情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システムが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
かかる交通システムは、主に、インフラ側の無線通信装置である複数の路側通信機と、各車両に搭載される無線通信装置である複数の車載通信機とによって構成される。
この場合、各通信主体間で行う通信の組み合わせには、路側通信機同士が行う路路間通信と、路側通信機と車載通信機とが行う路車(又は車路)間通信と、車載通信機同士が行う車車間通信とが含まれる。
特許第2806801号公報
ところで、例えば携帯電話のようなユニキャスト通信においては、路側通信機(基地局)が携帯電話からのアクセスを受け付けたあと、その信号の正当性やパワーを元に、以後の通信を行う許可を与えたり送信信号の強さを指示したりしている。
これに対して、上記高度道路交通システムにおいては、各車両が位置や速度などのデータを送信することで、出会い頭の衝突の危険性などを判断し、ドライバーに警告することが検討されているが、このようなシステムでは、各車両の位置や速度等の現時情報を周囲の全車両にほぼリアルタイムで通知する必要がある。
この現時情報の通知は、1対1のユニキャスト通信では間に合わないので、各車載通信機が1対多のブロードキャスト通信で行うことになるが、この場合、車載通信機に対する送信制御を路側で行うことができない。
このため、送信レベルが異常に大きい違法電波(送信周波数が異なる場合も含む。)を継続的に送信する車載通信機があった場合でも、路側でその違法電波を止めさせる手立てがなく、当該違法電波によって通信エリア内での路車間、路路間及び車車間通信が阻害される恐れがある。
一方、路側通信機は車載通信機からの送信信号も受信可能であるから、ある特定の路側通信機が過大な受信レベルの異常電波を検出すれば、これにより、違法電波を発する違法な車載通信機の存在の可能性を一応は推定することができる。
しかし、極めて近距離にある車載通信機からの送信信号を受信した場合や、フェージングの影響で増幅された送信信号を受信した場合でも、路側通信機での受信レベルが一時的に大きくなるので、単一又は複数の路側通信機において過大な受信レベルの異常電波が1回検出されたという事象だけで、違法電波の発信源となる違法な車載通信機が存在すると断定するのは早計である。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、監視エリア内にある複数の路側通信機を利用して、道路上を移動する移動送信機が違法電波の発信源であるか否かの判定を正確に行うことができる違法電波の判定方法等を提供することを目的とする。
本発明に係る違法電波の判定方法(請求項1)は、路側に設置された複数の路側通信機が受信した、道路上を移動する移動送信機が発信源である異常電波が、違法電波であるか否かを判定する違法電波の判定方法であって、複数の前記路側通信機の通信エリアで構成される監視エリアにおいて、予め設定された監視周期内の複数の時点で前記異常電波が検出されたことを条件として、前記違法電波を発する違法な前記移動送信機が前記監視エリア内に存在すると判定することを特徴とする。
本発明の判定方法によれば、違法な移動送信機が存在すると判定するための条件として、単一又は複数の路側通信機が異常電波を1回検出しただけでなく、複数の路側通信機の通信エリアを構成する監視エリアにおいて、予め設定された監視周期内の複数の時点で当該異常電波が検出されたことを条件としている。
このため、道路上を移動する移動送信機が違法電波の発信源であるか否かの判定を正確に行うことができる。
上記構成の判定方法において、「監視エリア」とは、複数の路側通信機によってカバーされる通信エリアのことをいう。また、「監視周期」とは、違法電波の監視を実施するのに実質的に有効な比較的短い周期のことをいい、例えば、数十秒から1分間程度に設定される。
更に、「違法電波」とは、無許可の通信機等から送信される、電波法等で規定された送信レベルや周波数帯域から外れた電波のことをいう。また、「異常電波」とは、受信機での受信信号から検出可能な受信レベル等の検出値に基づいて、違法電波の疑いを受信側で推定可能な電波のことをいう。
一方、本発明の判定方法では、違法な移動送信機の存在を判定するために、複数の時点で異常電波が検出されたことを条件とするので、複数の時点でそれぞれ検出された異常電波の送信主体が同一か否かを判定するための同一性判定を行う必要がある。
かかる送信主体の同一性判定は、例えば、複数の時点での前記異常電波の送信位置とその複数の時点間の時間差とに基づいて行うこともできるし(請求項)、前記路側通信機が受信した複数の時点での受信信号に基づいて行うこともできる(請求項)。
以上の通り、本発明によれば、複数の路側通信機を含む監視エリアにおいて、予め設定された監視周期内の複数の時点で違法電波が検出されたことを条件として、違法電波の発信源となっている移動送信機が監視エリア内に存在すると判定するので、移動送信機が違法電波の発信源であるか否かの判定を正確に行うことができる。
高度道路交通システムの全体構成を示す概略斜視図である。 高度道路交通システムを構成する監視エリアの一部を示す平面図である。 路側通信機と車載通信機の内部構成を示すブロック図である。 車載通信機が送信するデータフォーマットの一例を示す図である。 中央装置の内部構成を示すブロック図である。 中央装置の制御部が行う違法電波の監視処理のフローチャートである。 違法電波の判定原理を示すための道路の側面図である。 (a)は受信レベルの観測地点A〜Cの配置を示す道路平面図であり、(b)は各時点t1〜t4において4つの地点A〜Dで観測された受信レベルを示す表である。 地点A〜Dごとの受信レベルの時間的変化を示すグラフである。 地点A〜Dごとの受信レベルの時間的変化を示すグラフである。
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、交通信号機1、路側通信機2、車載通信機3(図2及び図3参照)、中央装置4、車載通信機3を搭載した車両5、及び、監視カメラ6等を含む。
各交通信号機1は、複数の交差点Ci(図例では、i=1〜12)のそれぞれに設置されており、電話回線等の通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
中央装置4は、自身が管轄する監視エリアに含まれる各交差点Ciの交通信号機1及び路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。従って、中央装置4は、各交通信号機1及び各路側通信機2との間で双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
監視カメラ6は、各交差点Ciに流入する車両台数をカウントする等の目的で、監視エリア内の道路の各所に設置されている。この監視カメラ6は、道路の交通状況を時系列に撮影し、その画像データは前記通信回線7を介して中央装置4にほぼリアルタイムに送信される。
なお、図1及び図2では、図示を簡略化するために、各交差点Ciに信号灯器が1つだけ描写されているが、実際の各交差点Ciには、互いに交差する道路の上り下り用として少なくとも4つの信号灯器が設置されている。
〔無線通信の方式等〕
図2は、上記高度道路交通システムの監視エリアの一部を示す道路平面図である。
図2では、互いに交差する2つの道路の各々が上りと下りで片側1車線のものとして例示されているが、道路構造はこれに限られるものではない。
図2にも示すように、本実施形態の交通システムは、車載通信機3との間で無線通信が可能な複数の路側通信機2と、キャリアセンス方式で他の通信機2,3と無線通信を行う移動無線送受信機の一種である車載通信機3と備えている。
複数の路側通信機2は、それぞれ路側の交差点ごとに設置されていて、図1及び図2の例では交通信号機1の支柱に取り付けられている。一方、車載通信機3は、道路を走行する各車両5にそれぞれ搭載されている。
各路側通信機2は、その周囲に広がる所定範囲の通信エリアAをそれぞれ有し、この通信エリアAを走行する各車両5の車載通信機3と通信可能である。また、各路側通信機2は、通信エリアAが重複(一部重複でも全部重複でもよい。)する他の路側通信機2とも通信可能であり、路側通信機2によってカバーされる各通信エリアAの集合体により、電波監視装置として機能する中央装置4の監視エリアが構成されている。
本実施形態の交通システムでは、路側通信機2同士(路路間通信)については無線通信が用いられ、また、路側通信機2と車載通信機3との間(「路」から「車」への路車間通信と「車」から「路」への車路間通信との双方を含む。)と車載通信機3同士(車車間通信)についても、無線通信が用いられている。
なお、前記した通り、交通管制センターに設けられた中央装置4は、各路側通信機2と有線での双方向通信が可能となっているが、これらの間も無線通信であってもよい。
中央装置4が統括制御する各路側通信機2は、例えば、次のようにして路車間通信と車車間通信の通信制御を行う。すなわち、本実施形態の路側通信機2は、自身が送信する時間スロットについてはTDMA(Time Division Multiple Access)方式で割り当て、残った時間スロットをCSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式による車車間通信に開放するようになっている。
また、各路側通信機2は、自身の送信タイミングを制御するために他の路側通信機2との時刻同期機能を有している。この路側通信機2の時刻同期は、例えば、自身の時計をGPS時刻に合わせるGPS同期や、自身の時計を他の路側通信機2からの送信信号に合わせるエア同期等によって行われる。
〔路側通信機〕
図3は、路側通信機2と車載通信機3の内部構成を示すブロック図である。
このうち、路側通信機2は、無線通信のためのアンテナ20に接続された無線通信部(送受信部)21と、中央装置4と双方向通信する有線通信部22と、それらの通信制御を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)等よりなる制御部23と、制御部23に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部24とを備えている。
記憶部24は、制御部23が実行する通信制御のためのコンピュータプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。
路側通信機2の制御部23は、時分割多重方式によって路車間、車路間及び路路間の無線通信を無線通信部21に行わせるものである。
このため、制御部23は、上記コンピュータプログラムの実行によって達成される機能部として、路側通信機2自身が無線送信する第1時間スロットと、車載通信機3の無線送信を許容する第2時間スロットとを、一定の周期ごとに時分割で割り当てる割当手段23Aを備えている。
更に、路側通信機2の制御部23は、上記コンピュータプログラムを実行することで達成される機能部であるデータ転送手段23Bを備えている。
このデータ転送手段23Bは、有線通信部22が受信した中央装置4の渋滞情報等の交通情報をいったん記憶部24に一時的に記憶させ、無線通信部21を介して車載通信機3に対してブロードキャスト送信する。
また、データ転送手段23Bは、無線通信部21が受信した受信信号のレベル(受信レベル)を、有線通信部22を通じてほぼリアルタイムに中央装置4に転送する。
〔車載通信機〕
一方、車載通信機3は、無線通信のためのアンテナ30に接続された通信部(送受信部)31と、この通信部31に対する通信制御を行うプロセッサ等よりなる制御部32と、この制御部32に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部33とを備えている。
記憶部33は、制御部32が実行する通信制御のためのコンピュータプログラムや、各通信装置2,3の通信機ID等を記憶している。
車載通信機3の制御部32は、車車間通信のためにキャリアセンス方式による無線通信を通信部31に行わせるものであり、路側通信機2との間の時分割多重方式での通信制御機能は有していない。
従って、車載通信機3の通信部31は、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行うようになっている。
なお、車載通信機3の制御部32は、車両5の現時の位置情報や速度情報等を通信部31から外部に無線送信させている。
このため、上記位置情報や速度情報等を受信した他の車両5や路側通信機2において、例えば、右直衝突や出合い頭衝突等を回避するための安全運転支援制御を行うことができる。
図4は、車載通信機3が送信するデータフォーマットの一例を示す図である。
図4に示すように、車載通信機3の送信信号には、プリアンブル、ヘッダ、データ、CRC(Cyclic Redundancy Check)が含まれている。このうち、データには、車両5の位置、方向(進行方向)及び速度などが含まれている。
車両の位置や方向は、GPSや車両5側のセンサ等から得られた情報であり、通常は車両5側で取得された情報に基づくものであるが、光ビーコン等のインフラ側から取得可能な場合もある。速度は、車両5の速度センサに基づいた情報である。
〔中央装置〕
図5は、中央装置4の内部構成を示すブロック図である。
図5に示すように、本実施形態の中央装置4は、制御部41、表示部42、通信部43、記憶部44及び操作部45を含んでいる。
中央装置4の制御部41は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなり、路側通信機2、監視カメラ6及び車両感知器(図示せず)からの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
中央装置4の制御部41は、内部バスを介して上記ハードウェア各部と繋がっており、これら各部の動作も制御する。
また、この制御部41は、自身のネットワークに属する交差点Ciの交通信号機1に対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を行うことができる。
中央装置4の通信部43は、通信回線7を介してLAN側と接続された通信インタフェースである。この通信部43は、信号灯器の灯色切り替えタイミングに関する信号制御指令S1や、渋滞情報等を含む交通情報S2を所定時間ごとに各交通信号機1に送信している(図1参照)。
信号制御指令S1は、前記系統制御や広域制御を行う場合の信号制御パラメータの演算周期(例えば、1.0〜2.5分)ごとに送信され、交通情報S2は、例えば5分ごとに送信される。
また、中央装置4の通信部43は、各交差点Ciに対応する路側通信機2から、その通信機2が受信した信号の受信レベル情報S3、車両通過時に生じるパルス信号よりなる車両感知器(図示せず)の感知情報S4、及び、監視カメラ6が撮影した道路のデジタル情報よりなる画像データS5等を受信している。
中央装置4の記憶部44は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、交通信号機1に対する前記系統制御及び広域制御を行う信号制御プログラムや、後述する違法電波の監視用プログラム等の各種のプログラムを記憶している。
また、記憶部44は、制御部41が生成した信号制御指令S1及び交通情報S2や、LAN側から取得した受信レベル情報S3、感知情報S4及び画像データS5等を一時的に記憶する。
中央装置4の表示部42は、自身が管理するエリアの道路地図と、この道路地図上のすべての交通信号機1や車両感知器等の位置が表示された表示画面により構成され、中央オペレータに渋滞や事故等の交通状況を報知するものである。
中央装置4の操作部45は、キーボードやマウス等の入力インタフェースよりなり、この操作部45によってオペレータが上記表示部42に対する表示切り替え操作等を行えるようになっている。
本実施形態の中央装置4は、自身の監視エリア内に含まれる複数の路側通信機2を利用して、いずれかの車載通信機3から送信された違法電波を監視する電波監視装置としても機能する。すなわち、中央装置4の制御部41は、記憶部44に記憶された前記監視用プログラムを実行することで、監視エリア内の違法電波を監視するものである。
図6は、中央装置4の制御部41が行う違法電波の監視処理のフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って、中央装置4による違法電波の監視処理について説明する。
〔違法電波の監視処理〕
〔異常電波の検出〕
図6に示す通り、中央装置4の制御部41は、まず、自身の監視エリア内にあるすべての路側通信機2から、通信部43を介して受信レベル情報S3をほぼリアルタイムに取得しており(図6のステップS1)、この受信レベル情報S3には、路側通信機2の通信機IDと受信時刻が含まれている。
従って、制御部41は、監視エリアに含まれる路側通信機2ごとの受信レベルを時系列データとして把握している。
次に、中央装置4の制御部41は、いずれかの路側通信機2が受信した受信信号の中から、異常電波が検出されているか否かを判定する(図6のステップS2)。この異常電波の有無の判定は、例えば、車載通信機3からの正常な信号の送信電力が20dBmと定められている場合、路側通信機2の受信レベルが所定の閾値(例えば、−25dBm)以上であるか否かによって行われる。
この閾値は、例えば路側通信機2の付近にある車載通信機3の信号が、正常な信号を送信した場合の、路側通信機2での受信レベルを元に設定する。この閾値を超える受信レベルの電波(異常電波)を検出した場合には、一応、これによって違法電波を発する車載通信機3の存在が推認される。
しかし、例えば、極めて近距離にある車載通信機3からの送信信号を受信した場合や、フェージングの影響で増幅された送信信号を受信した場合にも、路側通信機2での受信レベルが一時的に大きくなる。
このように、単一又は複数の路側通信機2における受信レベルが1回だけ過大であったというだけでは、必ずしも車載通信機3が違法電波を発しているとは言い難いので、過大な受信レベル(異常電波)の検出事実を違法電波であると結論付けるためには、より確実な判定ロジックが必要である。
〔違法電波の判定原理〕
そこで、中央装置4の制御部41は、自身の監視エリアに含まれる複数の路側通信機2が、予め設定された監視周期T(T=数十秒〜1分程度)内における複数の時点t1,t2で異常電波が検出されたことを条件として、当該違法電波を発する違法な車載通信機3が監視エリア内に存在すると判定するようになっている。
図7は、上記違法電波の判定原理を示すための道路の側面図である。
図7に示すように、同じ時点t1において、地点Aと地点Bに設置された2つの路側通信機2A,2Bが同時に異常電波を受信したとすると、その地点A,B間を走行する車両5の車載通信機3が違法電波を発している蓋然性が高い。
そこで、中央装置4の制御部41は、2つの路側通信機2A,2Bが同じ時点t1で異常電波を受信した場合には「要注意」のフラグを立て、要注意モードに移行する(図6のステップS3)。
本実施形態では、中央装置4の制御部41は、上記要注意モードにおいて異常電波の送信位置P1の測位を実行する。すなわち、中央装置4の制御部41は、路側通信機2A,2Bが受信した受信信号を用いた異常電波の測位機能を有している。
この送信位置P1の簡易な測位方法としては、路側通信機2A,2Bにおける受信レベルの比率やレベル差に基づいて、時点t1における異常電波の送信位置P1を求める方法がある。
また、路側通信機2A,2Bを互いに時刻同期させておけば、路側通信機2A,2Bを含む複数の路側通信機2に到達する異常電波の到達時刻差を元に、異常電波の送信位置P1を特定することも可能である。
その手順としては、まず、異常電波の到達時刻差に電波の速度(ほぼ光速)を掛け合わせることで、送信位置P1から路側通信機2Aの距離と、送信位置P1から路側通信機2Bまでの距離の差を求める。この距離差が一定の位置は、路側通信機2Aと2Bを焦点とする回転双曲面上にあるので、この回転双曲面と道路の交線上に送信位置P1が存在すると算出することができる。また、3つ以上の路側通信機2で信号を受信することで、複数の回転双曲面の交線上に送信位置P1を求めても良い。
一方、ある時点t1における1回だけの異常電波の同時検出では、それだけで違法性を確定するのは未だ早計である。
その理由は、異なる車両5A及び5Bに搭載された車載通信機3A及び3Bが、路側通信機2Aに近い地点Aと、路側通信機2に近い地点Bにおいてほぼ同時に電波を送信する場合があり、この場合には、車載通信機3が正常な電波を送信していて適法なものであっても、各路側通信機2A,2Bにおいて過大な受信レベルの異常電波をほぼ同時に受信することがあり得るからである。
そこで、中央装置4の制御部41は、前記要注意モードに移行したあと、更に一定の待ち時間Δtが経過してから(図6のステップS4)、その待ち時間Δtが経過した後の時点t2に受信レベル情報S3を取得するとともに(図6のステップS5)、いずれかの路側通信機2が受信した受信信号の中から異常電波があるか否かを再度判定する(図6のステップS6)。
なお、上記待ち時間Δtの長さは、前記監視周期Tよりも短い一定長さに設定されており、例えば、概ね数秒〜数十秒に程度に設定される。
〔送信主体の同一性判定〕
図7の例では、上記待ち時間Δtが経過した後の時点t2において、車載通信機3を搭載した車両5が地点Bを通過し、地点Bと地点Cの間に到達する場合を例示しており、地点Bの路側通信機2Bと地点Cの路側通信機2Cで異常電波が検出されたものと仮定している。
中央装置4の制御部41は、図7に示すように2回目の時点t2でもいずれかの路側通信機2が異常電波を受信している場合(図6のステップS6でYES)には、更に、最初の異常電波の送信主体と2回目の異常電波の送信主体の同一性を判定する(図6のステップS7)。
この同一性判定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、中央装置4の制御部41は、最初の時点t1での異常電波の送信位置P1に加えて、次の時点t2における異常電波の送信位置P2を求める。
また、中央装置4の制御部41は、測位によって求めた送信位置P1,P2間の距離Lと、待ち時間Δtに想定される車両速度Vを乗じて算出される想定距離との差を算出するとともに、この距離差が所定の閾値内である場合に、異常電波の送信主体が同一であると判定する。
なお、送信主体の同一性判定をより簡易に行う方法としては、いずれかの路側通信機2A,2B,2Cが受信した複数時点(時点t1と時点t2)での受信信号に基づいて、当該異常電波の送信主体が同一か否かを判定する方法もある。
例えば、図7に示す例において、路側通信機2Bが時点t1と時点t2で得られた受信レベルと送信周波数の少なくとも1つが所定の閾値内である場合には、異常電波の送信主体が同一であると判定することができる。
〔トレースモード〕
図6に戻り、中央装置4の制御部41は、異常電波の送信主体の同一性が認められる場合には、その送信主体が違法電波を発する違法な車載通信機3であると判定し(図6のステップS8)、その後、当該車載通信機3の移動履歴を追跡するトレースモードに移行する(図6のステップS9)。
このトレースモードでは、中央装置4の制御部41は、異常電波の送信位置Pj(j=3,4,……)の時系列データを収集し続け、この時系列データよりなる違法な車載通信機3の移動履歴を生成する。
具体的には、中央装置4の制御部41は、違法な車載通信機3の存在確認後においても送信主体の同一性判定を実行し続け、異常電波の送信位置Pjの測位を継続する。
すなわち、図7に示すように、中央装置4の制御部41は、時点t2から待ち時間Δtが経過した時点t3における異常電波の送信位置P3を求めるとともに、それ以降も異常電波が観測されなくなるまで、待ち時間Δtが経過する毎の各時点tj(j=3,4,……)における異常電波の送信位置Pjを測位し続ける。
〔出力モード〕
上記トレースモードの後、中央装置4の制御部41は、違法な車載通信機3の捜索に役立つための各種処理が含まれる出力モードに移行する(図6のステップS10)。
具体的には、中央装置4の制御部41は、違法な車載通信機3の移動履歴を記憶部44に記憶させるとともに、表示部43の道路地図上に表示させる。これにより、中央装置4のオペレータは、違法な車載通信機3を搭載した車両5(以下、違法車両ということがある。)の現在位置を把握することができる。
また、中央装置4の制御部41は、違法な車載通信機3の移動履歴に対応する時刻(前記各時点tj)に監視カメラ6で撮影された画像データを抽出するとともに、そのいずれにも写っている車両5を特定することにより、違法な車載通信機3を搭載した違法車両5を検出し、この検出した違法車両5を表示部43に画面表示させたりプリンタ(図示せず)に印刷させたりして出力する。
また、測位の精度が十分でない場合でも、中央装置4のオペレータは、移動履歴に対応する時刻に監視カメラ6で撮影された画像データを抽出し、そのいずれにも写っている車両5を選別することで、違法な車載送信機3を搭載した車両5を検出することができる。
なお、車両5の認識は、例えば、ナンバープレートの車番を読み取ったり、形状や車色等の車両5の特徴を認識したりすることによって行うことができる。
更に、後述のように、中央装置4の制御部41が、違法な車載通信機3の移動履歴に基づいてその車載通信機3の今後の移動経路を予測する場合には、当該制御部41は、その移動経路に含まれる路側通信機2に対して、違法車両5が通行する旨の情報を送信する。
この場合、上記情報を受けた路側通信機2が、自身の通信エリアAに向けて当該情報をブロードキャスト送信するようにすれば、その通信エリアAを走行中の各車両5に対して通信障害の危険性を事前に通知することができる。
なお、中央装置4の制御部41が違法な車載通信機3の存在を確認した後は、中央装置4の通信部43を通じて自動的に、或いは、中央装置4のオペレータによる電話通報等の人為的作業により、監視エリア内において違法電波が発生した事実が、総合通信局や警察等の管轄官庁に通報されるようになっている。
〔受信レベル推移の具体例〕
図8及び図9は、複数の路側通信機2で生じ得る異常電波の推移例を示すための説明図である。以下、この図8及び図9を参照しつつ、中央装置4の制御部41が行う監視処理を更に詳細に説明する。
図8(a)は受信レベルの観測地点A〜Cの配置を示す道路平面図であり、ここでは、交差点に対応する4つの地点A〜Dを、違法車両5が地点A→地点B→地点C→地点Dのルートで通過するものと仮定している。
図8(a)では、各地点A〜Dの路側通信機2A〜2Dの図示を省略しているが、実際には、図7と同様に各地点A〜Dに路側通信機2A〜2Dが設置されている。
図8(b)は、違法車両5が上記ルートを走行中の各時点t1〜t4において、4つの地点A〜Dで観測された受信レベルを示す表である。また、図9は、図8(b)の表を地点A〜Dごとの受信レベルの時間的変化を示すグラフに書き直したものであり、このグラフは、横軸が時間で縦軸が受信レベルになっている。
図8(b)及び図9に示すように、本推移例では、時点t1において、地点Aで−20dBm、地点Bで−15dBm以上、地点Cで−35dBmの受信レベルが観測されている。なお、地点Bにおける「−15dBm以上」とは、路側通信機2の受信レベルの上限を超える程の高レベルであることを意味する。
この場合、地点Aと地点Bの2箇所において閾値(−25dBm)以上の受信レベルになっているので、中央装置4の制御部41が行う違法電波の監視処理が「要注意モード」(図6のステップS3)に移行し、当該時点t1における異常電波の送信位置P1の測位が行われる。
次に、時点t2(=t1+Δt)においては、地点Aで−25dBm、地点Bで−15dBm、地点Cで−25dBmの受信レベルが観測されている。
この場合、要注意モードに移行直後の時点t2において、複数の地点(地点A、地点B及び地点C)で閾値(−25dBm)以上の受信レベルになっているので、中央装置4の制御部41は、時点t1と時点t2における異常電波の「送信主体の同一性判定」(図6のステップS7)を行い、観測された異常電波が違法電波か否かの判定を行う。
具体的には、同一性判定の結果、時点t1と時点t2での送信主体が同一と判定された場合には、当該送信主体が違法電波を発する違法な車載通信機3であると判定され(図6のステップS8)、時点t2における異常電波の送信位置P2の測位が行われた上で、違法電波の監視処理が「トレースモード」に移行する(図6のステップS9)。
図8(b)及び図9に示す推移例では、時点t3(=t2+Δt)において、地点Aで−35dBm、地点Bで−20dBm、地点Cで−20dBmの受信レベルが観測されている。
また、時点t4(=t3+Δt)において、地点Cで−15dBm、地点Dで−20dBmの受信レベルが観測されている。
この場合、トレースモード中のいずれの時点t3,t4においても、複数の地点で閾値(−25dBm)以上の受信レベルになっているので、中央装置4の制御部41は、時点t2と時点t3の間、及び、時点t3と時点t4の間においても、異常電波の送信主体の同一性判定を継続して行い、送信主体の同一性が認められる限りにおいて、時点t3と時点t4における異常電波の送信位置P3,P4の測位を行う。
このように、中央装置4の制御部41は、時点t3以降においても、送信主体の同一性判定と異常電波の送信位置Pj(j=3,4,……)の測位を継続して行うようになっており、これにより、異常電波の送信位置Pjの時系列データよりなる違法な車載通信機3の移動履歴が生成される。
一方、図8(b)及び図9に示す推移例では、時点t3で異常電波を観測していない地点Dでの受信レベルが、時点t4(=t3+Δt)においては−20dBmとなって異常電波が観測されている。従って、時点t3〜時点t4の間に、違法車両5が地点Cを左折して地点Dに向かっているものと予想される。
そこで、中央装置4の制御部41は、違法車両5の過去の移動履歴(地点A→地点B→地点C)に基づいて、違法車両5の今後の移動経路(地点C→地点D)を予測し、その移動経路に含まれる路側通信機2Dに対して、違法車両5が通行する旨の情報を送信するようになっている。
図10は、路側通信機2に生じ得る受信レベルのその他の推移例を示すための、地点A〜Dごとの受信レベルの時間的変化を示すグラフである。
この図10に示す受信レベルの推移例は、違法電波の送信元が当該違法電波を連続して送信し続ける場合の例である。かかる連続的な送信の場合でも、図10に破線で示すように、監視処理を行う場合の各地点A〜Dでの受信時間間隔を適当に定義することにより、これまで説明した違法電波の監視処理(図6)を同様に実施することができる。
以上の通り、本実施形態の中央装置(電波監視装置)4によれば、違法な車載通信機3が存在すると判定するための条件として、単一又は複数の路側通信機2が異常電波を1回検出しただけでなく、複数の路側通信機2の通信エリアAを構成する監視エリアにおいて、予め設定された監視周期T内の複数の時点t1,t2で当該異常電波が検出されたことを条件としているので、道路上を移動する車載通信機3が違法電波の発信源であるか否かの判定を正確に行うことができる。
〔その他の変形例〕
今回開示した各実施形態は本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲とその構成と均等な意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば、上記実施形態では、中央装置4の制御部41が違法電波の監視処理を行う場合を例示したが、複数の路側通信機2,2…の中から選択した1つのマスター通信機2の制御部23に、当該監視処理を行わせることも可能である。
この場合、違法電波の監視処理を行うマスター通信機2は、他の路側通信機2において計測された受信レベル情報を、路路間通信を通じて他の路側通信機2から収集する必要がある。
また、上記実施形態の高度道路交通システムおいて、車載通信機3の代わりに或いは車載通信機3に加えて、歩行者が携帯する通信機(携帯通信端末)を用いることもできる。この場合には、当該携帯通信端末が発信源となる違法電波についても、車載通信機3と同様に監視対象にすることができる。
更に、上記実施形態では、過大な送信レベルの違法電波を車載通信機3が送信する場合を例示したが、規定の周波数帯域外である違法電波を車載通信機3が送信する場合にも本発明を適用することができる。
もっとも、この場合には、路側通信機2が、車載通信機3が使用する規定の周波数帯域から外れた周波数の異常電波を検出する機能を有している必要がある。
1 交通信号機
2 路側通信機
3 車載通信機(移動送信機)
4 中央装置
5 車両
6 監視カメラ
7 通信回線
8 ルータ
20 アンテナ
21 無線通信部
22 有線通信部
23 制御部
24 記憶部
30 アンテナ
31 通信部
32 制御部
33 記憶部
41 制御部(検出手段、判定手段、測位手段、生成手段、選択手段、特定手段)
42 表示部(出力手段)
43 通信部(取得手段)
44 記憶部
45 操作部
S1 信号制御情報
S2 交通情報
S3 受信レベル情報
S4 感知情報
S5 画像データ

Claims (5)

  1. 路側に設置された複数の路側通信機が受信した、道路上を移動する移動送信機が発信源である異常電波が、違法電波であるか否かを判定する違法電波の判定方法であって、
    複数の前記路側通信機の通信エリアで構成される監視エリアにおいて、予め設定された監視周期内の複数の時点で前記異常電波が検出されたことを条件として、前記違法電波を発する違法な前記移動送信機が前記監視エリア内に存在すると判定することを特徴とする違法電波の判定方法
  2. 数の時点での前記異常電波の送信位置とその複数の時点間の時間差とに基づいて、当該異常電波の送信主体が同一か否かを判定し、同一と判定したことを条件として、前記違法電波を発する違法な前記移動送信機が前記監視エリア内に存在すると判定する請求項に記載の違法電波の判定方法
  3. 記路側通信機が受信した複数の時点での受信信号に基づいて、当該異常電波の送信主体が同一か否かを判定し、同一と判定したことを条件として、前記違法電波を発する違法な前記移動送信機が前記監視エリア内に存在すると判定する請求項1又は2に記載の違法電波の判定方法
  4. 路側に設置された複数の路側通信機が受信した、道路上を移動する移動送信機が発信源である異常電波が、違法電波であるか否かを判定する違法電波の判定装置であって、
    複数の前記路側通信機の通信エリアで構成される監視エリアにおいて、予め設定された監視周期内の複数の時点で異常電波が検出されたことを条件として、前記違法電波を発する違法な前記移動送信機が前記監視エリア内に存在すると判定することを特徴とする違法電波の判定装置。
  5. 路側に設置された複数の路側通信機が受信した、道路上を移動する移動送信機が発信源である異常電波が、違法電波であるか否かを判定する違法電波の判定装置として、コンピュータを動作させるためのコンピュータプログラムであって、
    複数の前記路側通信機の通信エリアで構成される監視エリアにおいて、予め設定された監視周期内の複数の時点で異常電波が検出されたことを条件として、前記違法電波を発する違法な前記移動送信機が前記監視エリア内に存在すると判定するステップを含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
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