JP5440586B2 - 摺動部品 - Google Patents

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本発明は、軸受などの摺動部品に関する。
摩擦抵抗の削減と耐久性の向上を図ることができ、ノイズの発生を防止することができる摺動部品として、鉄系と銅系の原料粉末を成形金型の充填部に充填すると共に、振動を加え、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結してなり、前記銅系の原料粉末が前記鉄系の原料粉末よりアスペクト比が大きな偏平粉であり、表面側に銅が偏析しているもの(例えば特許文献1)や、鉄系と銅系の原料粉末を成形金型の充填部に充填すると共に、振動を加え、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結してなり、前記銅系原料粉末は銅又は銅合金の偏平粉を含み、前記偏平粉の最大投影面積の平均値が前記鉄系原料粉末の最大投影面積の平均値より大きく、表面側に銅が偏析しているもの(例えば特許文献2)が知られている。
さらに、Cu、C、弗化カルシウムを含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成、並びにパーライトおよびベーナイトを主体とした素地を有し、前記弗化カルシウムが素地に分散分布して耐焼付性を著しく向上させると共に、素地に分散分布するCuを微細化するほか、Cuの素地への固溶を抑制して、できるだけ多くのCuが素地中に分散分布するように作用して靭性が向上するFe系焼結合金軸受が知られている(例えば特許文献3)。
特開2003−221606号公報 特開2004−84038号公報 特開2001−303217号公報
しかし、特許文献1、2の従来技術においては鉄系原料粉末と、該鉄系原料粉末よりアスペクト比が大きな偏平粉からなる銅系偏平原料粉末とを混合したものを成形金型の充填部に充填すると共に、振動を加えることにより、銅系偏平原粉末が充填部内の外側に偏析し、厚さ方向に重なり合うと共に、厚さと交叉する方向を表面側の長さ方向に合わせるようにして集まり表面側に銅系偏平原料粉末が偏析するものであるが、表面には偏析した銅系偏平原粉末のみならずその一部には鉄系原料粉末があらわれたり、表面にあらわれ隣接する銅系偏平原粉末の間に隙間が形成されたりし、その結果表面には銅系原粉末と鉄系原料粉末との隙間や、銅系偏平原粉末相互の隙間が形成されることとなり、この隙間によって摺動部の表面銅被覆率を向上することができないというおそれがあった。
さらに、特許文献3の従来技術においては耐焼付性を向上することができるものの、特許文献1、2と同様に摺動部の表面銅被覆率を向上することができないというおそれがあった。
解決しようとする問題点は、鉄系原料粉末と、該鉄系原料粉末よりアスペクト比が大きな銅系原料粉末を成形金型の充填部に充填し、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結して表面側に銅を偏析してなる摺動部品において、耐焼付性を向上すると共に摺動部の表面銅被覆率を向上する点である。
請求項1の発明は、鉄系と銅系の原料粉末を成形金型の充填部に充填し、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結してなる摺動部品において、前記銅系原料粉末は、前記鉄系原料粉末より最大投影面積の平均値が小さくかつ該鉄系原料粉末よりアスペクト比が大きな偏平状の銅系偏平原料粉末と、該銅系偏平原料粉末より最大投影面積の平均値が小さい銅系小原料粉末からなり、表面側に銅が偏析し、かつ弗化カルシウムを素地に分散分布してなり、偏析した前記銅系偏平原粉末のほかに、該銅系偏平原粉末の相互間に前記鉄系原料粉末があらわれ、このように外側にあらわれた前記鉄系原料粉末と前記銅系偏平原粉末との隙間に前記銅系小原料粉末が入り込んで、この入り込んだ前記銅系小原料粉末が外側にあらわれ、外側にあらわれた前記銅系偏平原粉末相互間の隙間に前記銅系小原料粉末が入り込んで、この入り込んだ前記銅系小原料粉末が外側にあらわれることを特徴とする摺動部品である。
請求項2の発明は、摺動部の表面銅被覆率が80%以上であることを特徴とする請求項1記載の摺動部品である。
請求項3の発明は、前記銅系偏平原料粉末のアスペクト比が10以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の摺動部品である。
請求項4の発明は、前記銅系原料粉末の割合が全体の20〜40重量%であることを特徴とする請求項2記載の摺動部品である。
請求項1の発明によれば、摺動部品により軸受を構成した場合では、銅系偏平原料粉末のみならず銅系小原料粉末もあらわれて銅に覆われた表面側に回転体が摺動し、回転軸と表面側との摩擦係数が低く、円滑な回転が可能となり、同時に鉄により所定の強度と耐久性とが得られる。また、この構造では、回転体が摺動する表面側が摩耗しても、表面側の下には銅が所定の割合で含まれているから、摺動部分の耐久性に優れたものとなる。しかも、弗化カルシウムによって耐焼付性を向上することができる。
請求項2の発明によれば、摺動部の摩擦係数を極めていっそう低く抑えることができる。
請求項3の発明によれば、アスペクト比を10以上とすることにより、振動を加えると、偏平粉が表面側に良好に偏析し、表面側の銅濃度の高い摺動部品が得られる。
請求項4の発明によれば、銅系原料粉末の割合が20重量%未満であると、表面側における銅の割合が低下し、摩擦抵抗が大きくなり、40重量%を超えると、全体に示す銅系の割合が多くなり、強度的に不利となる。したがって、上記割合を採用することによって、摩擦抵抗を削減し、かつ強度的に優れた摺動部品を得ることができる。
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
本発明の製造方法につき説明すると、鉄系原料粉末1と銅系偏平原料粉末2と銅系小原料粉末3と弗化カルシウム(CaF2)粉末4を所定の割合で混合(S1)する。図2に示すように、鉄系原料粉末1にはアトマイズ粉などの略球状の不規則形状粉を用いる。この鉄系原料粉末1の平均直径は50〜100μm、好ましくは60〜80μmとする。また、図3に示すように、銅系原料粉末2には偏平粉を用い、この偏平粉のアスペクト比(直径D/厚さT)は10以上、好ましくは20〜50とする。この偏平な銅系原料粉末2の平均直径Dは80μmで、平均厚さTは1〜5μmとする。尚、銅系偏平原料粉末2には、銅粉末を主体とし、錫粉末を2〜30重量%混合したものを用いることができる。さらに図4に示すように銅系小原料粉末3には略球状の不規則形状粉を用いる。この銅系小原料粉末3の平均直径は30〜50μm、好ましくは20μm程度とする。
これにより、銅系偏平原料粉末2の平均直径は、鉄系原料粉末1の平均直径より小さく、銅系小原料粉末3の平均直径より大きく形成されている。このような大きさの比較により、銅系偏平原料粉末2の最大投影面積Aの平均値は、鉄系原料粉末1の最大投影面積Bの平均値より小さく、また、最大投影面積Aの平均値は、銅系小原料粉末3の最大投影面積Cの平均値より大きく形成されている。
図5に示すように、軸受5は略円筒形をなし、その中央には回転体たる回転軸(図示せず)が回転摺動するほぼ円筒状の摺動面51が形成され、この摺動部たる摺動面51の長さ方向両側には平行で平坦な端面52,53が設けられ、その外周面54は円筒状に形成されている。
前記混合(S1)した鉄系原料粉末1と銅系偏平原料粉末2と銅系小原料粉末3の混合したものを成形金型11の充填部16に充填する。この充填した混合粉において、銅系偏平原料粉末の割合は全体の20〜40重量%とする。
また、弗化カルシウム粉末4の割合は全体の0.1〜5重量%、好ましくは3〜5重量%とする。弗化カルシウム含有量は、その含有量が0.1%未満では靭性の向上作用に所望の効果が得られず、一方その含有量が5%を越えると急激に靭性が低下し、所望のすぐれた耐焼付性を確保することができなくなることから、その含有量を0.1〜5%、好ましくは2〜5%と定めた。
図6は成形金型11の一例を示し、この成形金型11は、上下方向を軸方向(プレス上下軸方向)としており、ダイ12、コアロッド13、下パンチ14および上パンチ15を備えている。ダイ12はほぼ円筒形状で、このダイ12内にほぼ円柱形状のコアロッド13が同軸的に位置している。下パンチ14は、ほぼ円筒形状で、ダイ12およびコアロッド13間に下方から上下動自在に嵌合している。上パンチ15は、ほぼ円筒形状で、ダイ12およびコアロッド13間に上方から上下動自在にかつ挿脱自在に嵌合するものである。そして、ダイ12とコアロッド13と下パンチ14との間に充填部16が形成され、前記ダイ12の内周面が前記外周面54を形成し、前記下パンチ14の上面が前記端面53を形成し、前記上パンチ15の下面が前記端面52を形成し、コアロッド13の外周面が前記摺動面51を形成する。
図6に示すように、前記充填部16に、混合した鉄系原料粉末1と銅系偏平原料粉末2と銅系小原料粉末3を充填し、これら原料粉末1,2,3に振動(S2)を与える。この場合、充填部16の上部を上パンチ15により塞ぎ、パンチ14,15により加圧することなく、充填部16に加速度0.01〜3G程度の振動を与える。振動を受けると、偏平粉である銅系偏平原粉末2が充填部16内の外側、すなわち摺動面51や外周面54に偏析し、厚さ方向に重なり合うと共に、厚さと交叉する方向を表面側の長さ方向に合わせるようにして集まる。さらに、充填部16内の外側においては、偏析した銅系偏平原粉末2のほかに、該銅系偏平原粉末2の相互間に鉄系原料粉末1があらわれることがあるが、このように外側にあらわれた鉄系原料粉末1と銅系偏平原粉末2との隙間に銅系小原料粉末3Aが入り込んで、この入り込んだ銅系小原料粉末3Aが外側にあらわれることによって、さらには、外側にあらわれた銅系偏平原粉末2相互間の隙間に銅系小原料粉末3Bが入り込んで、この入り込んだ銅系小原料粉末3Bが外側にあらわれることによって、摺動面51の表面銅被覆率を80%以上、さらには85%以上に形成する。尚、表面銅被覆率は前述した後者の従来技術のように気孔範囲を除いた表面の被覆率をいう。
尚、振動以外でも、銅系原料粉末2は略平坦な面が大きいから、充填部16を囲む成形金型11の面に静電気を発生させて充填部16の外側に銅系原料粉末2を偏析させたり、磁力を用いて充填部16の外側に銅系原料粉末2を偏析させたりするようにしてもよい。
一方、充填部16内の内側、すなわち摺動面51と外周面54との間においては、外側に偏析しないで内側に残った銅系偏平原材粉末2Aの一部は、複数の鉄系原料粉末1を多数の銅系小原料粉末3で含むように包囲するように配置される。
この後、上,下パンチ15,14により充填部16内の原料粉末1,2,3を加圧することにより圧粉体6を成形(S3)する。この圧粉体6は図8に示すように、表面側に偏平粉である銅系偏平原料粉末2が集まり、内部に向って鉄系原料粉末1の割合が増加する。その圧粉体を焼結(S4)することにより、焼結品である軸受5が形成される。この焼結品である軸受5においては、弗化カルシウムが素地に分散分布して耐焼付性を著しく向上させると共に、素地に分散分布するCuを微細化するほか、Cuの素地への固溶を抑制して、できるだけ多くのCuが素地中に分散分布するように作用することから、靭性が向上する。この後、軸受5は必要に応じてサイジング工程、含油工程を行なう。
このように本実施形態では、請求項1に対応して、原料粉末を成形金型11の充填部16に充填し、この原料粉末を加圧して圧粉体6を成形し、この圧粉体6を焼結してなる摺動部品たる軸受5において、前記銅系原料粉末は、前記鉄系原料粉末1より最大投影面積の平均値が小さくかつ該鉄系原料粉末1よりアスペクト比が大きな偏平状の銅系偏平原料粉末2と、該銅系偏平原料粉末2より最大投影面積の平均値が小さい銅系小原料粉末3からなり、表面側に銅が偏析しているから、この偏平粉である銅系の原料粉末2と鉄系の原料粉末1とを充填部16に充填して振動を加えることにより、銅系の偏平粉が表面側に偏析し、得られた軸受5は、表面側が銅系偏平原料粉末2のみならず銅系小原料粉末3もあらわれて銅に覆われ、表面銅被覆率を向上することができる。しかも、弗化カルシウムによって耐焼付性を向上することができる。
したがって、銅に覆われた表面たる摺動面51に回転体が摺動し、回転軸と摺動面51との摩擦係数が低く、円滑な回転が可能となり、同時に鉄により所定の強度と耐久性を得ることができる。また、この構造では、回転体が摺動する摺動面51が摩耗しても、摺動面51の下には所定の割合で銅が含まれているから、摺動部分の耐久性に優れたものとなる。
図8に概略正面図で示されるラジアル式摩耗試験機を用い、保持用の支持治具71に軸受6を嵌め込んだ状態で、軸受6と回転軸72とにクリアランスを形成し、回転軸72に軸受6、支持治具71を介して荷重Wを付加して摩耗試験を行なった。図中73はロードセル、74はダンパーを示している。そして、軸受6は試料Iとして、弗化カルシウムのないもの、試料II、IIIとして弗化カルシウムを全体との重量比で3%、5%のものとして焼付き判定を行なった。焼付き判定は、摩擦係数の急激な変動、上昇、異音を生じた荷重の前時点の荷重を測定したものである。判定では、図9に示すように試料II、IIIはいずれも試料Iより耐焼付きが向上していることが判明した。
また、このように本実施形態では、請求項2に対応して、摺動部たる摺動面51の表面銅被覆率が80%以上であるから、摺動面の摩擦係数を極めていっそう低く抑えることができる。
また、このように本実施形態では、請求項3に対応して、銅系偏平原料粉末2のアスペクト比が10以上であるから、振動を加えると、銅系偏平原料粉末2が表面側に良好に偏析し、表面側の銅濃度の高い軸受5を得ることができる。
また、このように本実施形態では、請求項4に対応して、銅系偏平原料粉末2の割合が全体の20〜40重量%であるから、低い摩擦抵抗と強度とを兼ね備えた軸受5を得ることができる。
そして、本実施形態では、表面側が銅系偏平原料粉末2のみならず銅系小原料粉末3もあらわれて銅に覆われ、表面銅被覆率を向上することができる軸受5を提供することができ、さらに弗化カルシウムにより耐焼付性を向上できる。
また、本実施形態では、20〜40重量%の割合を採用することによって、摩擦抵抗を削減し、かつ強度的に優れた軸受5を得ることができる。
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、偏平粉には、棒状のものも含まれ、この場合は長さと直径の比がアスペクト比となる。
以上のように本発明にかかる摺動部品は、軸受以外の摺動部品など用途にも適用できる。
本発明の実施例1を示す製造方法を説明するフローチャート図である。 本発明の実施例1を示す鉄系原料粉末の概略正面図である。 本発明の実施例1を示す銅系偏平原料粉末を示し、図3(A)は概略側面図、図3(B)は概略正面図である。 本発明の実施例1を示す銅系小原料粉末の概略正面図である。 本発明の実施例1を示す軸受の斜視図である。 本発明の実施例1を示す成形金型の断面図である。 本発明の実施例1を示す圧粉体の概略断面図であり、一部を拡大表示している。 本発明の実施例1を示すラジアル式摩耗試験機の概略図である。 本発明の実施例1を示す耐焼付き性のグラフである。
1 鉄系原料粉末
2 銅系偏平原料粉末
3 銅系小原料粉末
4 弗化カルシウム粉末
5 軸受
6 圧粉体
11 成形金型
16 充填部
51 摺動面(摺動部)

Claims (4)

  1. 鉄系と銅系の原料粉末を成形金型の充填部に充填し、この原料粉末を加圧して圧粉体を成形し、この圧粉体を焼結してなる摺動部品において、前記銅系原料粉末は、前記鉄系原料粉末より最大投影面積の平均値が小さくかつ該鉄系原料粉末よりアスペクト比が大きな偏平状の銅系偏平原料粉末と、該銅系偏平原料粉末より最大投影面積の平均値が小さい銅系小原料粉末からなり、表面側に銅が偏析し、かつ弗化カルシウムを素地に分散分布してなり、偏析した前記銅系偏平原粉末のほかに、該銅系偏平原粉末の相互間に前記鉄系原料粉末があらわれ、このように外側にあらわれた前記鉄系原料粉末と前記銅系偏平原粉末との隙間に前記銅系小原料粉末が入り込んで、この入り込んだ前記銅系小原料粉末が外側にあらわれ、外側にあらわれた前記銅系偏平原粉末相互間の隙間に前記銅系小原料粉末が入り込んで、この入り込んだ前記銅系小原料粉末が外側にあらわれることを特徴とする摺動部品。
  2. 摺動部の表面銅被覆率が80%以上であることを特徴とする請求項1記載の摺動部品。
  3. 前記銅系偏平原料粉末のアスペクト比が10以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の摺動部品。
  4. 前記銅系原料粉末の割合が全体の20〜40重量%であることを特徴とする請求項2記載の摺動部品。
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