図1は本発明の一実施形態の燃料改質装置1の概略構成図、図2は本発明の燃料改質装置1を搭載したエンジンの概略構成図である。
図1に示したように筒状の管2に上流側(図で左側)より円柱状の吸着材3Aと改質触媒3Bとが隙間無く介装されている。
上記吸着材3Aの上流には、燃料噴射弁4(燃料噴射装置)を配置し、この燃料噴射弁4には燃料タンク5内の燃料を燃料供給ポンプ6により圧送する。ここで、燃料としては自動車用燃料(ガソリンや軽油)を考えている。
燃料噴射弁4から吸着材3A及び改質触媒3Bに向けて燃料を噴射したとき、燃料噴射弁4から噴射された燃料噴霧が、周囲に空気を流さなくてもその噴霧の貫徹力だけで改質触媒3Bに到達するように、燃料噴射弁4の位置と燃料噴射弁4に供給する燃料圧力とを定める。燃料噴射弁4より噴射された燃料の霧化を促進させるため、燃料噴射弁4の上流側より吸着材3A及び改質触媒3Bに向けて空気を流すようにしてもかまわない。
上記吸着材3A及び改質触媒3Bの周囲には改質触媒3Bを活性温度(例えば200〜400℃)へと上昇させるため、円筒状のヒータ8を吸着材3A(後述する)及び改質触媒Bを被覆するように設けておく。このヒータ8により活性温度範囲(改質触媒3Bが水素を生成し得る能力を発揮できる温度範囲)にある改質触媒3Bでは、
HC+H2O→H2+CO …(1)
の化学反応式で示される脱水素反応を行って燃料から水素を生成する。
本発明において、改質触媒とは、燃料成分の中の少なくとも一部から脱水素過程(脱水素反応)を経て水素を生成しうる能力を持つ触媒のことである。改質触媒としては、市販の有無を問わず、公知の触媒および同様の機能を有する触媒を用いることができる。以下に改質触媒の実施例を示すが、この実施例にとらわれるものでは無い。
触媒は、触媒活性粉末が支持担体に塗布された形態をなし、触媒活性粉末は、酸化物粉末上に金属が高分散に担持されてなるものを言う。ここで金属とは例えば、ロジウム、白金、パラジウムなどの貴金属であり、そのほかに、鉄、コバルト、マンガン、ニッケルなどの非貴金属(卑金属)を用いることができる。酸化物粉末には、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、チタニアなどや、それらを少なくとも一部に含む複合酸化物を用いることができる。支持担体としては、ハニカム形状や球状、リング状のコージェライト、シリコンカーバイド、ステンレス材質などからなる支持担体を挙げることができる。
次に、触媒の実施例の詳細を示す。水中に分散させたアルミナ『酸化物粉体』中に『金属』前駆体としてジニトロジアミン白金塩を加え、60分攪拌した。その後、150度で1昼夜乾燥させ、粉砕の後に400度で1時間の焼成を行なった。以上の方法で『触媒活性粉末』を調製した。このように調整した『触媒活性粉末』をべ一マイト、水と攪拌し、スラリー状になったものを、コージェライトでできたハニカム担体(支持担体)に塗布、乾燥、焼成の後に『触媒』を得た。
上記の吸着材3Aとしては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ゼオライト(高Si/2Al比タイプ)、Al分を含有しないシリカライト等の耐火性無機化合物や活性炭などの吸着材成分を含むことができる。使用される燃料の種類に応じて適宜、吸着材を選定することが望ましい。また、これらの吸着材の表面特性の制御のために、アルカリ金属、アルカリ土類金属または希土類金属などを添加することもできる。
図2に示したように、エンジン本体21には、空気が吸気通路22を介して図示しない燃焼室に供給される。燃料タンク23からの燃料は燃料供給ポンプ24により燃料噴射弁25に圧送され、エンジンコントローラ31からの信号を受けて燃料噴射弁25が開くことで燃料がエンジン本体21に供給される。これらの燃料と空気とは混合気を形成して図示しない燃焼室で燃焼され、燃焼後のガスは排気通路26に設けている排気後処理装置27によって浄化される。
エンジンとしては、ガソリンを使用燃料として火花点火により混合気に着火して燃焼させるガソリンエンジン、軽油を使用燃料として圧縮着火により混合気を燃焼させるディーゼルエンジンのいずれでもかまわない。
こうしたエンジンを有する車両に対して、本発明の燃料改質装置1を搭載するときには、燃焼に用いる燃料を貯蔵している燃料タンク23内の燃料を燃料供給ポンプ6によって燃料噴射弁4に圧送し、燃料噴射弁4より燃料タンク23内の燃料を改質触媒3Bに供給する。また、ヒータ8に代えて、排気熱などの熱源との間で熱交換を行い得る熱交換器28を設ける。そして、改質触媒3Bによって改質された燃料(水素を含んだ燃料)は、燃料供給通路41を介して吸気通路22に導入する。図2の排気後処理装置27は、例えば三元触媒である。あるいは図16に示したように、改質触媒3Bによって改質された燃料(水素を含んだ燃料)を、燃料供給通路41を介して排気後処理装置27上流の排気通路26に導入する。図16の排気後処理装置27は、例えばNOxトラップ触媒である。
次に、改質触媒3Bの上流に新たに吸着材3Aを設けた理由を説明する。図3(A)は吸着材3Aを設けていない状態かつ活性温度範囲(改質触媒3Bが水素を生成し得る能力を発揮できる温度範囲)にある改質触媒3Bに対してt0のタイミングより燃料噴射を行ったときに、水素生成量と改質触媒3Bの触媒温度[℃]とがどのように変化するのかを示したものである。触媒温度としては改質触媒3Bにより脱水素反応が行われる部位の温度を採用する。具体的には図1に示したように改質触媒3Bのうち中央より下流側(図で右側)に設けた温度センサ10により触媒温度を検出すればよい。
図3(A)に示したように、燃料噴射開始前の触媒温度を所定温度T0[℃](=大気温度)とすると、触媒温度は燃料噴射を開始するt0のタイミングで所定温度T0より一気に所定温度Ta[℃]へと低下した後、その所定温度Taに暫く維持され、このとき改質触媒3Bより水素が生成されている。t0のタイミングより水素が生成されるとき、触媒温度が燃料噴射開始前の温度である所定温度T0より低下するのは、上記(1)式が脱水素反応(吸熱反応)であるからである。しかしながら、所定の期間(時間)が経過したt1のタイミングで、触媒温度は所定温度Taを離れて所定温度Tb[℃]へと上昇し所定温度Tbを維持する。触媒温度が所定温度Tbへと上昇してからは改質触媒3Bより水素は生成されていない。
このように、触媒温度は脱水素反応(吸熱反応)により低下するのに、水素の生成が長くは続かない結果に終わっている。図3(B)は図3(A)に示した触媒温度の変化と同じもので、所定温度Tbから所定温度Taを差し引いた値は改質触媒3Bの吸熱度合ΔT[℃](=Tb−Ta)を表している。また、t0のタイミングからt1のタイミングまでの期間が水素生成期間Δt[min](=t1−t0)を表す。
水素の生成が長く続かない原因を本発明者が解析したのが図3(A)の下段に示したモデル図である。上記の自動車用燃料(ガソリンや軽油)は、脂肪族、ナフテン族、芳香族からなる様々な燃料種の混合物であるが、ここでは、相対的に低沸点の燃料種からなる燃料(この燃料を以下単に、「低沸点燃料」という。)と、相対的に高沸点の燃料種からなる燃料(この燃料を以下単に、「高沸点燃料」という。)とに大きく分けて考える。
まず、図3(A)下段の左側に示したように、燃料噴射を開始した当初は、低沸点燃料(丸形状で示している)と、高沸点燃料(楕円形状で示している)とが均等に触媒表面と接触し、触媒によりいずれの燃料との間でも脱水素反応(吸熱反応)が行われる。詳細にはパラフィンの重縮合による脱水素反応やナフテン(シクロアルカン)の脱水素反応がおきていると考えられる。
さて、低沸点燃料は気化(蒸発)して触媒表面から脱離するのに対して、高沸点燃料は気化できないため、触媒表面に吸着したままとなる。こうした低沸点燃料と高沸点燃料の挙動の相違により、気化して低沸点燃料がいなくなった触媒表面にも高沸点燃料が付着してゆく。つまり、触媒表面を覆う高沸点燃料の割合が増加してゆくと、やがて図3(A)下段の右側に示したように、低沸点燃料が付着する触媒表面が無くなり、このタイミングで改質触媒による水素生成がやむと考えられる。言い換えると、燃料噴霧の触媒表面への燃料の付着と、触媒表面からの燃料の気化とが連続的に繰り返されるのであれば、水素生成が良好に行われるところ、触媒に付着している燃料が気化できなくなったタイミングで水素が生成されなくなると考えられるのである。従って、ここでいう「低沸点燃料」とは、上記(1)式の脱水素反応(吸熱反応)が行われているときの触媒温度(またはこの温度以下)で気化し得る燃料のことであり、これに対して「高沸点燃料」とは上記(1)式の脱水素反応(吸熱反応)が行われているときの触媒温度(またはこの温度以下)で気化し得ない燃料のこととなる。
こうした燃料挙動の解析の結果より、高沸点燃料を改質触媒3Bの上流側に設けた吸着材3Aで吸着させることにより、高沸点燃料が改質触媒3Bに到達するのを遅らせ、これによって改質触媒3Bでの水素生成期間が拡大するようにしたものである。なお、実施形態では、吸着材3Aと改質触媒3Bとを別個の構成としているが、吸着材3Aと改質触媒3Bとが共存するように吸着材3Aを改質触媒3Bの近傍に配置してもかまわない。
吸着材3Aは高沸点燃料が改質触媒3Bに到達するのを遅らせるものであるため、吸着材3Aにその能力一杯にまで高沸点燃料が吸着した後には、もはや高沸点燃料が吸着材3Aに吸着されなくなりオーバーフローして改質触媒3Bに到達し、やがて上記のように改質触媒3Bの触媒表面が全て高沸点燃料で覆われてしまえば、水素の生成がやむ。
この場合に、吸着材3Aと改質触媒3Bの両方から高沸点燃料を取り除いてやれば、つまり吸着材3Aと改質触媒3Bとを再生すれば、改質触媒3Bにより再び水素を生成させることが可能となる。そこで、図1、図2に示したように、改質触媒3Bに燃料成分を含まない流体を供給する流体供給装置14を設ける。流体供給装置14はガス供給管15と電動ポンプ16からなっている。すなわち、改質触媒3B上流の管2内にガス供給管15を突出して設け、電動ポンプ16により空気と、空気及び水蒸気のガスとのいずれか(燃料成分を含まない流体)をこのガス供給管15を介して吸着材3Aに向けて吹きつける。なお、ガス供給管15は、燃料噴射弁4からの燃料噴霧の邪魔にならない位置に設けておく。
空気をガス供給管15より吸着材3Aに向けて吹きつける(供給する)のは、吸着材3Aから高沸点燃料を吹き飛ばして(取り去って)下流の改質触媒3Bに運ぶためである。また空気及び水蒸気のガスを吸着材3Aに向けて吹き付けるのは、吸着材3Aから高沸点燃料を洗い流して(取り去って)下流の改質触媒3Bに運ぶためである。これによって、吸着材3Aは高沸点燃料が吸着されていない状態へと戻される(再生される)。
一方、ガス供給管15より空気を供給するときには、改質触媒3Bでは空気中の酸素を用いて
HC+O2→H2+CO …(2)
の反応式で示される部分酸化反応(発熱反応)を行って水素を生成することとなる。これによって改質触媒3Bの触媒表面を被覆している高沸点燃料が取り去られる。あるいは改質触媒3Bでは、空気中の酸素を用いて
HC+O2→H2O+CO2 …(3)
の反応式で示される完全酸化反応(発熱反応)を行うこととなる。これによっても改質触媒3Bの触媒表面を被覆している高沸点燃料が取り去られる。
また、ガス供給管15より空気及び水蒸気のガスを供給するときには、改質触媒3Bでは水蒸気を用いて
HC+H2O→H2+CO …(4)
の反応式で示される脱水素反応(吸熱反応)を行って水素を生成することとなる。これによって改質触媒3Bの触媒表面を被覆している高沸点燃料が取り去られる。
さらに、改質触媒3BでATR(Auto Thermal Reforming)を行わせることにより、改質触媒3Bの触媒表面を被覆している高沸点燃料を取り去るようにしてもかまない。ATRとは自己熱バランス改質のことで、上記(2)式の発熱反応と(4)式の吸熱反応とを組み合わせることにより発熱も吸熱も生じないようにするものである。
これをさらに図4を用いて考察すると、図4は吸着触媒4Aを追加して設けた場合に水素生成量と改質触媒3Bの触媒温度とがどのように変化するのかを示している。ただし、ガス供給管15からは空気及び水蒸気を吸着材3Aに吹き付ける場合とする。
改質触媒3Bの上流に吸着材3Aを設けて高沸点燃料を吸着させ、高沸点燃料が改質触媒3Bに到達するのを遅らさせているので、水素生成期間の終期がt1のタイミングよりt1’のタイミングへと拡大している。なお、t1のタイミングは図3(A)のt1のタイミングに対応する。
さらに、触媒温度が所定温度Tbへと上昇したt1’のタイミングより余裕代を考慮したt2のタイミングで燃料噴射弁4による燃料噴射を中止すると共に、電動ポンプ16を作動させてガス供給管15から空気及び水蒸気を吸着材3Aに吹き付ける。これによって、吸着材3Aから高沸点燃料が吹き飛ばされ(脱離され)ると共に、改質触媒3Bでは上記(4)式の脱水素反応(吸熱反応)が行われることから、触媒温度がt2のタイミングより低下して暫く所定温度Tcを保つ。このように、空気及び水蒸気の吹きつけ開始より触媒温度が低下するのは、改質触媒3Bで行われる上記(2)式の反応式が吸熱反応であるためである。そして、上記(2)式の反応が進み、改質触媒3Bの触媒表面を覆っていた高沸点燃料が無くなりかけると吸熱の程度が小さくなるため触媒温度が所定温度Tcから上昇し、高沸点燃料が全て無くなるt3のタイミング以降は、環境温度である所定温度T0に戻って所定温度T0を維持する。電動ポンプ16はt3のタイミングで停止する。
これで、吸着材3A及び改質触媒3Bの再生を終了するので、再び燃料噴射弁4による燃料供給を行って改質触媒3Bにより改質を行わせることができる。つまり、t0からt3までの区間が1サイクルとなり、このサイクルを繰り返すことで、間欠的ではあるが、1つの改質触媒3Bにより、水素生成を継続して行わせることが可能になることがわかる。
さらに考察する。通常、触媒反応では、単位時間により多くの反応を起こしたいために、燃料をできる限り頻繁に触媒に供給して燃料改質を行わせることとなる。すなわち、図5最上段に示したように、1回当たり噴射の噴射実行期間Δt3を定め、連続する2つの1回当たり噴射の間の期間である噴射中止期間をできるだけ短くして1回当たり噴射を連続的に行わせるわけである。ここで、噴射中止期間は燃料噴射弁4の物理的構成により定まり、噴射中止期間を無限に小さくすることはできない。
しかしながら、このように単位時間当たりの1回当たり噴射の回数、つまり単位時間当たりの燃料噴射量を増やすほど、改質触媒3Bの触媒表面が高沸点燃料で覆われるまでの期間が短くなり水素生成期間が短くなってしまう。
そこで本発明者は、こうした通常の燃料噴射方法に逆行して、単位時間当たりの燃料噴射量を減らす、つまり図5第2段目に示したように、一回当たり噴射の噴射実行期間Δt3(一回当たり噴射量)は通常の燃料噴射方法と同じにしたままで噴射中止期間Δt2を通常の燃料噴射方法とは逆に長くしたらどうなるかを実験を行って確かめたところ、噴射中止期間Δt2を通常の燃料噴射方法の場合より長くして単位時間当たりの噴射量(触媒反応量)を抑えたほうが、却って燃料改質を促進させる大きな効果があることを新たに見出した。これを本発明者が解析したのが、図5最下段に示したモデル図である。
図5最下段の左側に示したように、脱水素反応過程では、低沸点燃料(丸形状で示している)と、高沸点燃料(楕円形状で示している)とが均等に改質触媒3Bの触媒表面と接触し、触媒によりいずれの燃料との間でも脱水素反応(吸熱反応)が行われる。これは、図3(A)下段の左側に示したところと同じである。
t0で開始した初めての1回当たり噴射を、噴射実行期間Δt3が経過したt11のタイミングで中止し、噴射中止期間Δt2が終了するt12のタイミングで2回目の1回当たり噴射を再開する。そして、図5第3段目に示したように、t11からt12までの区間である噴射中止期間Δt2(1回当たり噴射を中止している期間)で電動ポンプ16を駆動して空気と、空気及び水蒸気のガスとのいずれか(燃料成分を含まない流体)を吸着材3Aに向けて吹きつけ、吸着材3Aに吸着されている高沸点燃料を脱離して改質触媒3Bに運ぶ。改質触媒3Bでは、ガス供給管15より空気を供給するときには、空気中の酸素を用いて上記(2)式の反応式で示される部分酸化反応(発熱反応)を行って水素を生成することにより、改質触媒3Bの触媒表面を被覆している高沸点燃料が、あるいは空気中の酸素を用いて上記(3)式の反応式で示される完全酸化反応(発熱反応)を行うことにより、改質触媒3Bの触媒表面を被覆している高沸点燃料が、図5最下段の中央に示したように取り去られ、やがて図5最下段の右側に示したように改質触媒3Bが(吸着材3Aについても)再生される。また、ガス供給管15より空気及び水蒸気のガスを供給するときには、水蒸気を用いて上記(4)式の反応式で示される脱水素反応(吸熱反応)を行って水素を生成することにより、改質触媒3Bの触媒表面を被覆している高沸点燃料が、図5最下段の中央に示したように取り去られ、やがて図5最下段の右側に示したように改質触媒3Bが(吸着材3Aについても)再生される。
このようにして、t12のタイミングの直前で吸着材3A及び改質触媒3Bが再生されるのであれば、t12のタイミングより再び1回当たり噴射を行わせることができる。t0からt12までの一連の操作、t12から14までの一連の操作、t14からt16までの一連の操作、t16から18までの一連の操作はすべて同じ操作であり、これら一連の操作を繰り返せば、吸着材3A及び改質触媒3Bを再生しつつ、1つの改質触媒3Bであっても継続して水素を生成することができる。言い換えると、連続する先と後の1回当たり噴射(第1期間での燃料噴射)のうち先の1回当たり噴射により噴射実行期間Δt3(第1期間)で燃料噴射された燃料のうち高沸点燃料(改質触媒3Bによる化学反応を阻害する燃料)の全てが改質触媒3Bから取り去られる前に後の1回当たり噴射が行われることがないように噴射中止期間Δt2(第2期間)を設定するのである。
この結果、図17に示したように、対策前に対して対策後には単位燃料当たりで比較して水素生成量が480%上昇することが分かっている。この結果、仮に水素生成量が同一であっても供給燃料量は1/5程度で済むので、燃料供給ポンプ6の駆動力を低減することができるとともに、未改質燃料の分離(回収)に要するエネルギも少なくて済む。ここで、対策前とは、吸着材3Aを設けておらずかつ図5最上段で示したように噴射中止期間を最低限にとどめて1回当たり噴射を連続して行う場合である。これに対して対策後とは、吸着材3Aを設けかつ図5第2段目、第3段目で示したように通常の燃料噴射方法の場合よりも噴射中止期間Δt2を長くして、具体的には噴射中止期間Δt2(第1期間)を噴射実行期間Δt3(第2期間)と等しいかまたは噴射実行期間Δt3よりも大きく設定して、1回当たり噴射を連続して行うとともに、噴射中止期間Δt2で電動ポンプ16を駆動し、水及び水蒸気を供給する場合である。
次には噴射中止期間Δt2を具体的にはどのように設定すべきかであるが、噴射中止期間Δt2に影響を与えるパラメータとして、高沸点燃料の含有割合、キャリアガス流量、改質触媒3Bの触媒温度、燃料噴射弁4からの1回当たり噴射量を考えると、これらに対する噴射中止期間Δt2の特性は、図6〜図9に示したようになる。
ここで、上記のパラメータについて先に説明しておくと、高沸点燃料の含有割合は、
高沸点燃料の含有割合=高沸点燃料の量/(高沸点燃料の量+低沸点燃料の量)
…(5)
の式で定義される値である。燃料のうちの高沸点燃料の含有割合を検出できるのであれば、これを検出すればよいし、次のようにしてもかまわない。すなわち、高沸点の燃料種の具体例として、n−パラフィン、iso−パラフィン、ナフテン、アロマ、オレフィンといった燃料種があり、これら燃料種のうち一つの燃料種の燃料中における含有割合を公知の技術を用いて検出し、検出した一つの燃料種の燃料中における含有割合で高沸点燃料の含有割合を代表させることができる。あるいは、高沸点燃料の含有割合が相対的に大きい燃料とは概ねオクタン価が相対的に高い燃料であり、また高沸点燃料の含有割合が相対的に小さい燃料とは概ねオクタン価が相対的に低い燃料であるので、燃料のオクタン価を公知の方法で検出し、検出したオクタン価が相対的に高ければ、高沸点燃料の含有割合が相対的に大きいと、この逆に検出したオクタン価が相対的に低いと、高沸点燃料の含有割合が相対的に小さいとみなすことができる。
上記のキャリアガスとは、上記のガス供給管15から吸着材3Aに向けて吹きつける(供給する)ガス、つまり空気と、空気及び水蒸気のガスとのいずれか(燃料成分を含まない流体)のことである。空気と、空気及び水蒸気のガスとのいずれかは吸着材3Aに吸着している高沸点燃料を下流へと運ぶので、このように命名している。キャリアガスの流量は電動ポンプ16の能力に依存する。電動ポンプ16の下流にオリフィスを設ける場合には、このオリフィス径にも依存する。
上記の1回当たり噴射量とは、図5に示した1回当たり噴射の噴射実行期間Δt3で燃料噴射弁4から噴射される燃料量のことである。1回当たり噴射量は、噴射実行期間Δt3と燃料噴射弁4に作用している燃料圧力とに依存する。
図6に示したように噴射中止期間Δt2は、高沸点燃料の含有割合が大きくなるほど大きくなる。高沸点燃料の含有割合が大きくなるほど噴射中止期間Δt2が大きくなるのは、高沸点燃料の含有割合が大きいほど吸着材3Aへの高沸点燃料の吸着量が多くなり、そのぶん吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離(取り去り)が進みにくくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りが遅れるためである。
図7に示したように噴射中止期間Δt2は、キャリアガス流量が多くなるほど小さくなる。キャリアガス流量が多くなるほど噴射中止期間Δt2が小さくなるのは、キャリアガス流量が多くなるほど吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離が進みやすくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りも早まるためである。
図8に示したように噴射中止期間Δt2は、触媒温度が高くなるほど小さくなる。触媒温度が高くなるほど噴射中止期間Δt2が小さくなるのは、触媒温度が高くなるほど吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離が進みやすくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りも早まるためである。
図9に示したように噴射中止期間Δt2は、1回当たり噴射量が多くなるほど大きくなる。1回当たり噴射量が多くなるほど噴射中止期間Δt2が大きくなるのは、1回当たり噴射量が多くなるほど吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離が進みにくくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りが遅れるためである。
このように本発明では、噴射中止期間Δt2を、高沸点燃料の含有割合、キャリアガス流量、触媒温度及び1回当たり噴射量に基づいて設定し、設定した噴射中止期間Δt2と噴射実行期間Δt3とに基づいて燃料噴射弁4を開閉駆動しかつ電動ポンプ16を駆動する。
図1、図2に戻り、こうした制御のため、燃料改質装置コントローラ11を設け、燃料改質装置コントローラ11により、本発明の燃料改質装置1をエンジンに搭載しない場合には燃料ポンプ6、燃料噴射弁4、ヒータ8及び電動ポンプ16を、本発明の燃料改質装置1をエンジンに搭載する場合には燃料ポンプ6、燃料噴射弁4及び電動ポンプ16を駆動可能に構成すると共に、温度センサ10により検出される触媒温度を燃料改質装置コントローラ11に入力させる。
そして、燃料改質装置コントローラ11で次のような制御を行わせる。すなわち、燃料改質を行わせるに際しては、燃料改質装置コントローラ11を作動させ、ヒータ8を駆動し(本発明の燃料改質装置1をエンジンに搭載しない場合のみ)、改質触媒3Bの触媒温度を活性温度まで高める。ポンプ6を作動させて燃料噴射弁4に燃料タンク5(あるいは燃料タンク23)内の燃料を圧送する。温度センサ10により検出される改質触媒3Bの触媒温度が活性温度となったら、燃料噴射弁4を開いて1回当たり噴射を行わせ噴射実行期間Δt3が経過したら全閉とし、噴射中止期間Δt2のあいだ待つ。そして、噴射中止期間Δt2が経過したら燃料噴射弁4を開いて1回当たり噴射を行わせ噴射実行期間Δt3が経過したら全閉とし、噴射中止期間Δt2のあいだ待つ。そして、噴射中止期間Δt2が経過したら燃料噴射弁4を開いて1回当たり噴射を行わせ噴射実行期間Δt3が経過したら全閉とし、噴射中止期間Δt2のあいだ待つ。以降、燃料噴射弁4についてこのような操作を繰り返す。一方、噴射中止期間Δt2となる度に電動ポンプ16を駆動する。
1回当たり噴射の開始当初は高沸点燃料が吸着材3Aに吸着され、低沸点燃料のほうは吸着材3Aをすり抜けて改質触媒3Bに到達する。この低沸点燃料の改質触媒3Bへの到達によって改質触媒3Bにおいて水素の生成が開始される。吸着材3Aでその能力一杯にまで高沸点燃料が吸着されると、その後には吸着材3Aに吸着されない高沸点燃料がオーバーフローして改質触媒3Bに到達することになる。改質触媒3Bの触媒表面を高沸点燃料が覆い尽くすまでは水素生成が続くのであるが、改質触媒3Bの触媒表面を高沸点燃料が覆い尽くす前に噴射実行期間Δt3が終了するため、燃料改質装置コントローラ11では、燃料噴射弁4からの1回当たり噴射を中止するとともに、吸着材3A及び改質触媒3Bの再生処理に移行する。すなわち、電動ポンプ16を作動させてキャリアガス(空気及び水蒸気のガス)を吸着材3Aに吹きつける。これによって吸着材3Aから高沸点燃料が全て洗い流されて改質触媒3Bに供給され、改質触媒3Bでは、水蒸気を用いた脱水素反応(吸熱)を行って水素を生成させることにより、改質触媒3Bの触媒表面を覆う高沸点燃料を取り去る。改質触媒3Bの触媒表面を覆う高沸点燃料がなくなるタイミングは適合により予め把握しており、従って、改質触媒3Bの触媒表面を覆う高沸点燃料がなくなるタイミング(つまり噴射中止期間Δt2が経過したタイミング)で燃料改質装置コントローラ11では、電動ポンプ16を停止して吸着材3A及び改質触媒3Bの再生処理が終了したと判断し、再び燃料噴射弁4を開いて1回当たり噴射を開始する。
燃料改質装置コントローラ11でこのような制御を行わせることで、1つの改質触媒3Bであっても、継続して燃料改質を行わせることが可能となった。
なお、図2の場合に、本発明の燃料改質装置1をどの運転条件で作動させるかは予め定めておき、その指示を、運転条件を検出しているエンジンコントローラ31より得るようにする。このため、燃料改質装置コントローラ11とエンジンコントローラ31とを双方向通信により結んでおく。
燃料改質装置コントローラ11により行われるこの制御を図10、図15のフローチャートを参照して詳述する。図10、図15は燃料改質装置コントローラ11における制御の流れを示すもので、一定周期で繰り返し実行するものではない。
図10は給油時に、給油された燃料に合わせて噴射中止期間Δt2を設定するためのものである。ステップ1では給油フラグをみる。給油が行われたか否かはエンジンコントローラ31の側で検出し、給油が行われたことを検出したとき給油フラグ=1としているため、エンジンコントローラ31と通信を行って給油フラグをみる。給油フラグ=0であれば給油が行われていないと判断しそのまま待機する。
給油フラグ=1であるときには給油が行われたと判断しステップ2に進んで給油された燃料のうちの高沸点燃料の含有割合を推定(算出)する。高沸点燃料の含有割合の推定方法は前述したように公知の方法でかまわない。
ステップ3では、このようにして推定した高沸点燃料の含有割合から図11を内容とするテーブルを検索することにより、基本噴射中止期間Δt20[msec]を算出する。ステップ4ではキャリアガス流量Qcaryから図12を内容とするテーブルを検索することによりキャリアガス流量補正係数K1[無名数]を、ステップ5では温度センサ10により検出される触媒温度Tcatから図13を内容とするテーブルを検索することにより触媒温度補正係数K2[無名数]を、ステップ6では1回当たり噴射量Qfから図14を内容とするテーブルを検索することにより1回当たり噴射量補正係数K3[無名数]をそれぞれ算出し、ステップ7でこれら4つの値を用いて、噴射中止期間Δt2[msec]を、
Δt2=Δt20×K1×K2×K3 …(6)
の式により、つまり4つの値を乗算することにより噴射中止期間Δt2を設定する。
基本噴射中止期間Δt20は、基準のキャリアガス流量Qcary0、基準の触媒温度Tcat0、基準の1回当たり噴射量Qf0の条件で適合しており、図11に示したように高沸点燃料の含有割合が大きくなるほど大きくなる値である。高沸点燃料の含有割合が大きくなるほど基本噴射中止期間Δt20を大きくしているのは、高沸点燃料の含有割合が大きいほど吸着材3Aへの高沸点燃料の吸着量が多くなり、そのぶん吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離が進みにくくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りが遅れるためである。
一方、キャリアガス流量補正係数K1、触媒温度補正係数K2、1回当たり噴射量補正係数K3は基準のキャリアガス流量Qcary0、基準の触媒温度Tcat0、基準の1回当たり燃料噴射量Qf0の条件から外れた場合にも、精度よく噴射中止期間を与えるためのものである。具体的には、図12に示したようにキャリアガス流量補正係数K1は基準のキャリアガス流量Qcary0のとき1.0で、基準のキャリアガス流量Qcary0よりキャリアガス流量Qcaryが多くなるほど1.0より小さくなり、また基準のキャリアガス流量Qcary0よりキャリアガス流量Qcary小さくなるほど1.0より大きくなる正の値である。これは、基準のキャリアガス流量Qcary0よりキャリアガス流量Qcaryが多くなると、その多くなった分だけ吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離が進みやすくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りも早まり噴射中止期間Δt2を基本噴射中止期間Δt20より短くできるためである。また、基準のキャリアガス流量Qcary0よりキャリアガス流量Qcaryが少なくなると、その少なくなった分だけ吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離が進みにくくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りが遅れ噴射中止期間Δt2を基本噴射中止期間Δt20より長くする必要があるためである。
図13に示したように触媒温度補正係数K2は基準の触媒温度Tcat0のとき1.0で、基準の触媒温度Tcat0より触媒温度Tcat高くなるほど1.0より小さくなり、また基準の触媒温度Tcat0より触媒温度Tcat低くなるほど1.0より大きくなる正の値である。これは、基準の触媒温度Tcat0より触媒温度Tcatが高くなると、その高くなった分だけ吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離が進みやすくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りも早まり噴射中止期間Δt2を基本噴射中止期間Δt20より短くできるためである。また、基準の触媒温度Tcat0より触媒温度Tcatが低くなると、その低くなった分だけ吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離が進みにくくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りが遅れ噴射中止期間Δt2を基本噴射中止期間Δt20より長くする必要があるためである。
図14に示したように噴射量補正係数K3は基準の1回当たり噴射量Qf0のとき1.0で、基準の1回当たり噴射量Qf0より1回当たり噴射量Qfが多くなるほど1.0より大きくなり、また基準の噴射量Qf0より1回当たり噴射量Qfが少なくなるほど1.0より小さくなる正の値である。これは、基準の1回当たり噴射量Qf0より1回当たり噴射量Qfが多くなると、その多くなった分だけ吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離が進みにくくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りが遅れ噴射中止期間Δt2を基本噴射中止期間Δt20より長くする必要があるためである。また、基準の一回当たり噴射量Qf0より1回当たり噴射量Qfが少なくなると、その少なくなった分だけ吸着材3Aからの高沸点燃料の脱離が進みやすくかつ改質触媒3Bの触媒表面を被覆する高沸点燃料の取り去りも早まり噴射中止期間Δt2を基本噴射中止期間Δt20より短くできるためである。
上記のキャリアガス流量Qcaryと1回当たり噴射量Qfとは本実施形態では一定値で、適合により予め定めている。
これで給油時の噴射中止期間Δt2の設定を終了するので、次回の給油に備えるためステップ8で給油フラグ=0とする。この給油フラグ=0により次回にはステップ1よりステップ2以降に進むことができない。つまり、噴射中止期間Δt2の設定は給油時に1回だけ行う。
次に、図15は燃料改質装置1の作動、非作動を制御するためのものである。ここでは、燃料改質装置1の作動、終了を、エンジンコントローラ31からの開始指令フラグと終了指令フラグとで制御する。すなわち、エンジンコントローラ31では、燃料改質装置1を作動させたいときに開始指令フラグ(ゼロに初期設定)をゼロから1へと切換え、また燃料改質装置1の作動を終了させたいときに終了指令フラグ(ゼロに初期設定)をゼロから1へと切換える。例えば、水素は燃焼速度が早く良好な燃焼が得られるので、エンジンの暖機促進や排気後処理装置27の早期活性化のため、エンジン冷間始動直後に開始指令フラグ=1とし、エンジンの暖機が完了したときや排気後処理装置27の活性化が終了したとき開始指令フラグ=0とすると共に終了指令フラグ=1とする。
ステップ11では、エンジンコントローラ31との通信を行いこの開始指令フラグをみる。開始指令フラグ=0であればそのまま待機する。開始指令フラグ=1であればステップ12に進み、燃料噴射弁4を開いて吸着材3A及び改質触媒3Bに燃料を供給する。なお、図示しないが、燃料供給ポンプ6はエンジン始動時に作動させて燃料を燃料噴射弁4に圧送させているものとする。
ステップ13では第1タイマ値time1と噴射実行期間Δt3とを比較する。第1タイマは燃料噴射弁4を開いたタイミングで起動されるため、燃料噴射弁4を開いたタイミングからの経過時間を計測している。噴射実行期間Δt3は、前述のように適合により予め定めている。第1タイマ値time1が噴射実行期間Δt3未満であるあいだはステップ12に戻って燃料噴射を継続する。
やがてステップ13で第1タイマ値time1が噴射実行期間Δt3以上になるとステップ14に進んで燃料噴射弁4を全閉として燃料噴射を停止する。
ステップ15では吸着材3A及び改質触媒3Bの再生処理を開始するため、電動ポンプ16を駆動しキャリアガス(空気と水蒸気のガス)を吸着材3A及び改質触媒3Bに供給する。これによって吸着材3Aから高沸点燃料の脱離が開始される。改質触媒3Bでは水蒸気を用いた脱水素反応が行われ、これによって改質触媒3Bの触媒表面を覆う高沸点燃料の取り去りが開始される。
ステップ16では第2タイマ値time2と噴射中止期間Δt2(図10により設定済み)とを比較する。第2タイマは燃料噴射弁4を全閉としたタイミングで起動されるため、燃料噴射弁4を全閉としたタイミングからの経過時間を計測している。第2タイマ値time2が噴射中止期間Δt2未満であるあいだはステップ15に戻って電動ポンプ16の駆動を継続する。
やがてステップ16で第2タイマ値time2が噴射中止期間Δt2以上になると吸着材3A及び改質触媒3Bの再生が終了したと判断し、ステップ17で電動ポンプ16の駆動を停止する。
ステップ18ではエンジンコントローラ31との通信を行い終了指令フラグをみる。終了指令フラグ=0、つまり終了指令が出ていなければ、ステップ12に戻ってステップ12〜17の操作を繰り返す。すなわち、噴射実行期間Δt3では電動ポンプ16の駆動を停止するとともに1回当たり噴射を行い、噴射中止期間Δt2では1回当たり噴射を中止するとともに電動ポンプ16を駆動する、ことを一連の操作としてこの一連の操作を繰り返す。
ステップ18で終了指令フラグ=1、つまり終了指令が出ていれば、次回の燃料改質に備えて、ステップ11に戻り待機する。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、改質触媒3B(化学反応させることにより燃料を改質する改質触媒)と、燃料噴射弁4(燃料噴射装置)と、流体供給装置14と、この流体供給装置14と燃料噴射弁4とを用いて噴射実行期間Δt3(第1期間)で燃料噴射を行い、その噴射実行期間Δt3に続く噴射中止期間Δt2(第2期間)で燃料噴射を中止すると共に燃料成分を含まない流体(例えば水及び水蒸気)の供給を行い、これら燃料噴射と、燃料噴射の中止及び流体供給とを繰り返すと共に、噴射中止期間Δt2を噴射実行期間Δt3と等しいかまたは噴射実行期間Δt3よりも長く設定するので、1つの改質触媒3Bでも水素生成を継続して行わせることができることになった。
本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、改質触媒3Bは燃料の少なくとも一部から脱水素反応を経て水素を生成し得る能力を有する改質触媒であるので、改質触媒3Bによる水素の生成量を多くすることができる。
高沸点燃料の含有割合に関係なく、噴射中止期間Δt2を設定したのでは、連続する先と後の1回当たり噴射(第1期間での燃料噴射)のうち先の1回当たり噴射の噴射実行期間Δt3で噴射された燃料のうち高沸点燃料(改質触媒3Bによる化学反応を阻害する燃料)の全てが改質触媒3Bから取り去られる前に後の1回当たり噴射が行われる事態が生じ、やがては改質触媒3Bの触媒表面が全て高沸点燃料で被覆されてしまい、水素を生成できないことになってしまうのであるが、本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、燃料は高沸点燃料と低沸点燃料との混合物であり、高沸点燃料の含有割合に基づいて噴射中止期間Δt2を設定するので、連続する先と後の1回当たり噴射のうち先の1回当たり噴射で噴射された燃料のうち高沸点燃料の全てが改質触媒3Bから取り去られる前に後の1回当たり噴射が行われることがないように、高沸点燃料の含有割合に関係なく噴射中止期間Δt2を最適に設定することができる。
本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、高沸点燃料の含有割合が相対的に大きい場合に、高沸点燃料の含有割合が相対的に小さい場合より噴射中止期間Δt2を長く設定するので(図6参照)、高沸点燃料の含有割合に応じた最適な噴射中止期間Δt2を与えることができる。
本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、燃料成分を含まない流体の流量が相対的に多い場合に、燃料成分を含まない流体の流量が相対的に少ない場合より噴射中止期間Δt2を短く設定するので(図7参照)、燃料成分を含まない流体の流量に応じた最適な噴射中止期間Δt2を与えることができる。
本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、改質触媒3Bの触媒温度が相対的に高い場合に、改質触媒3Bの触媒温度が相対的に低い場合より噴射中止期間Δt2を短く設定するので(図8参照)、改質触媒3Bの触媒温度に応じた最適な噴射中止期間Δt2を与えることができる。
本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、1回当たり噴射量(第1期間での燃料噴射量)が相対的に多い場合に、1回当たり噴射量が相対的に少ない場合より噴射中止期間Δt2を長く設定するので(図9参照)、1回当たり噴射量に応じた最適な噴射中止期間Δt2を与えることができる。
実施形態では、改質触媒が燃料の少なくとも一部から脱水素反応を経て水素を生成し得る能力を有する改質触媒である場合で説明したが、化学反応させることにより燃料を改質する改質触媒であれば本発明の適用がある。
実施形態では、高沸点燃料(第1燃料種の燃料)の含有割合に基づいて噴射停止期間(第2期間)を設定する場合で説明したが、または低沸点燃料(第2燃料種の燃料)の含有割合に基づいて噴射停止期間を設定するようにしてもかまわない。
実施形態では、吸着材3Aを改質触媒3Bの上流または近傍に備える場合で説明したが、吸着材3Aを備えない場合にも本発明の適用がある。