JP5439650B2 - ナノゲル−アパタイト複合体の調製 - Google Patents

ナノゲル−アパタイト複合体の調製 Download PDF

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Description

本発明は、ナノゲルおよびナノゲル複合体をテンプレートとするナノゲル−アパタイト複合体の調製方法およびその用途に関する。
リン酸カルシウムは哺乳類の硬組織を構成する無機成分である。その生体適合性ゆえに様々なリン酸カルシウム系バイオマテリアルが開発され、骨疾患の治療に利用されてきた。また、細胞への遺伝子導入にリン酸カルシウムを用いる手法は古くから行われている。
近年、リン酸カルシウム粒子をナノメートルサイズに制御することにより、バイオマテリアルの機能が向上することが見出されている。たとえば、Mozumdarらは粒径を約80nmに制御したプラスミドDNA/リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)複合体が、粒径を制御していない従来のリン酸カルシウム法よりも高いDNAトランスフェクション効率を示すことを報告した(非特許文献1)。
また、片岡らは、プラスミドDNA・ヒドロキシアパタイト・ポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体からなる粒径数百nmのハイブリッドミセルを構築し(非特許文献2)、トランスフェクション効率を調べている(非特許文献3)。このようなハイブリッドミセルはオリゴDNAやsiRNAの運搬にも効果的である(非特許文献4)。ヒドロキシアパタイトのナノ粒子にシスプラチンを吸着させ、徐放性のドラッグデリバリーシステム(DDS)に利用する試みもなされている(非特許文献5)。
リン酸カルシウムのナノ粒子の調製法には、高周波プラズマを用いる方法(非特許文献6)、結晶形成直後に溶液から分離する方法(非特許文献7および8)、ポリマーの結晶成長制御効果を利用する方法(非特許文献2−4、9)などが報告されている。また、マイクロエマルジョン(非特許文献1および10)やリポソーム(非特許文献11)をテンプレートとして用いた例もある。
一方、ナノ微粒子とゲルの特性を併せ持つナノメーターサイズ(特に100 nm以下)の高分子ゲル微粒子(ナノゲル)は、特にドラッグデリバリーシステムやナノテクノロジー分野で注目されるようになってきた。一般に化学架橋ナノゲルはマイクロエマルション重合法や高分子分子内での架橋反応により合成されてきた。本発明者らは、疎水化高分子の自己組織化による物理架橋ナノゲルの新規な調製法を報告した(非特許文献12)。すなわち、比較的疎水性の高い疎水基(コレステロール基)を部分的に導入した水溶性多糖類が、希薄水溶液中で自己組織的に会合し、疎水基の会合領域を架橋点とする単分散なナノゲルを形成することを見出した。発明者らの知る限り、物理架橋点を有する50nm以下のサイズの揃ったナノゲルとしては、初めての報告であった。
通常のナノ微粒子は、その表面の特性を利用した研究がほとんどであるが、ナノゲルはさらにその内部の空間に疎水性の薬物やタンパク質といった物質を取り込めるスペースを有することが最大の特色である。コレステロール置換プルラン(CHP)のナノゲルは、タンパク質と選択的に相互作用するホストとして機能し、ドラッグデリバリーシステムのキャリアーとして有効であることを報告している。さらに、ナノゲルはシクロデキストリンの添加により崩壊し、取り込んだ物質を放出することが可能である。
また、第2の利点は物理架橋点を有することから、架橋構造の動的構造制御が可能であることである。疎水基の構造を変えることでゲルネットワークの動的特性を制御しえることやシクロデキストリンとのホスト−ゲスト相互作用を利用することで、ナノゲルの生成と崩壊を動的に制御しえる。この性質を利用して、変性タンパク質の取り込みと放出を制御した人工分子シャペロンの開発に成功している。
I. Roy, S. Mitra, A. Maitra, S. Mozumdar, Int. J. Pharm. (2003) 250, 25-33. Y. Kakizawa, K. Kataoka, Langmuir (2002) 18, 4549-4543. Y. Kakizawa, K. Miyata, S. Furukawa, K. Kataoka, Adv. Mater.(2004)16, 699-702. Y. Kakizawa, S. Furukawa, K. Kataoka, J. Control. Release (2004)97,345-356. A. Barroug, L. T. Kuhn, L. C. Gerstenfeld, M. J. Glimcher, J. Orthop.Res. (2004) 22, 703-708. R. Kumar, P. Cheang, K. A. Khor, J. Mater. Pro. Technol. (2001) 113,456-462. D. Tadic, F. Peters, M. Epple, Biomater. (2002) 23, 2553-2559. T. Welzel, W. M.-Zaika,M. Epple, Chem. Commun. (2004) 1204-1205. C. S. Ashamol, S. Padalkar, S. Radhakrishnan, Polymer (2001) 42,2255-2258. G. K. Lim, J. Wang, S. C. Ng, C. H. Chew, L. M. Gan, Biomater.(1997) 18, 1433-1439. H. T. Schmidt, A. E. Ostafin, Adv. Mater. (2002) 14, 532-535. Akiyoshi, K. et. al., Macromolecules (1993) 26, 3062
本発明の課題は、ナノゲルとアパタイト微粒子の複合体である、ナノゲル−アパタイトナノ微粒子の合成とその利用を達成することである。
本発明者は、疎水化多糖ナノゲルについての知見をもとに、ナノゲルおよびその誘導体をテンプレートとし、カルシウムイオンとリン酸イオンの交互添加法、またはCO2ガスを利用する新規な方法(以下、pH-gradient法と呼称することがある)により、比較的単分散なリン酸カルシウムナノ微粒子から様々なナノ構造制御された新規有機−無機ハイブリッドナノ微粒子(ナノゲル−アパタイトナノ微粒子)の合成が可能であることを見出し、本発明を完成した。つまり、本発明は、
「1.カルシウムイオンとリン酸イオンとの交互添加法によりアパタイトナノ微粒子を合成することを特徴とする、アパタイトナノ微粒子の調製方法。
2.疎水化高分子からなるナノ粒子(ナノゲル)またはナノゲル複合体をテンプレートとしてナノゲル−アパタイトナノ微粒子を合成することを特徴とする、ナノゲル−アパタイトナノ微粒子の調製方法。
3.カルシウムイオンとリン酸イオンとの交互添加法を用いることを特徴とする、前項2に記載の調製方法。
4.中性pH(pH 7)条件下でカルシウムイオンとリン酸イオンとの交互添加法が行われることを特徴とする、前項2また3に記載の調製方法。
5.少なくとも以下の工程を含むことを特徴とする、前項2に記載の調製方法;
1)リン酸カルシウム塩類の水溶液にCO2ガスを溶解させることにより、該水溶液のpHを弱酸性(pH 3-6)とする、
2)工程1)で調製したリン酸カルシウム塩類の水溶液とナノゲル水溶液を混合し、pHを中性(pH 6-8)とする。
6.バブリング法により、リン酸カルシウム塩類の水溶液にCO2ガスを溶解させることを特徴とする、前項5に記載の調製方法。
7.工程2)において、リン酸カルシウム塩類の水溶液とナノゲル水溶液の混合液を攪拌することにより、該混合液のpHを中性とすることを特徴とする、前項6に記載の調製方法。
8.ナノゲルがコレステロール導入プルラン(以下、CHP)またはCHP誘導体により形成されるナノゲルである、前項2〜7の何れか一に記載の調製方法。
9.CHP誘導体がアミノ基またはカルボキシル基が導入されたCHP誘導体である、前項8に記載の調製方法。
10.ナノゲルが有機分子および/または分子集合体と複合体を形成していることを特徴とする、前項5〜9の何れか一に記載の調製方法。
11.ナノゲルがリポソームと複合体を形成していることを特徴とする、前項10に記載の調製方法。
12.合成されるナノゲル−アパタイトナノ微粒子がナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子である、前項1〜10の何れか一に記載の調製方法。
13.前項1〜12の何れか一に記載の調製方法により調製されるアパタイトナノ微粒子。
14.前項10または11に記載の調製方法により調製されるナノゲル被覆リポソームーアパタイトナノ微粒子。
15.粒径(直径)が約1-200 nmである前項1に記載の調製方法により調製されるアパタイトナノ微粒子。
16.粒径(直径)が約20-500 nmである前項2〜12の何れか一に記載の調製方法により製造されるナノゲル−アパタイトナノ微粒子。
17.ナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子である、前項16に記載のナノゲルーアパタイトナノ微粒子。
18.ドラッグデリバリーシステムの担体用の前項13〜17の何れか一に記載のアパタイトナノ微粒子。
19.再生医療用材料を製造するための前項13〜17の何れか一に記載のアパタイトナノ微粒子。
20.前項13〜17の何れか一に記載のアパタイトナノ微粒子を原料とするドラッグデリバリー製剤または再生医療用材料の製造方法。
21.CHPにアミノ基またはカルボキシル基が導入されたCHP誘導体またはその塩。
22.CHPのグルコース100単糖あたり1〜50のアミノ基またはカルボキシル基が導入されたCHP誘導体またはその塩。」からなる。
本発明のナノゲル−アパタイト複合体は、ドラッグデリバリーシステム、再生医療等のバイオマテリアル、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーへの応用において大きな利点がある。
本明細書中で使用されている技術的および科学的用語は、別途定義されていない限り、当業者により普通に理解される意味を持つ。以下、本発明について、発明の実施の態様をさらに詳しく説明する。以下の詳細な説明は例示であり、説明のためのものに過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
(ナノゲル)
本発明に使用する疎水化高分子からなるナノゲル(ナノゲル)は公知である。例えばWO00/12564(高純度疎水性基含有多糖類およびその製造方法)に開示がある。それによると、第1段階反応は、炭素数12〜50の水酸基含有炭化水素またはステロールと、OCN-R1NCO(式中、R1は炭素数1〜50の炭化水素基である。)で表されるジイソシアナート化合物を反応させて、炭素数12〜50の水酸基含有炭化水素またはステロールが1分子反応したイソシアナート基含有疎水性化合物を製造する。
第2段階反応は、前記第1段階反応で得られたイソシアナート基含有疎水性化合物と多糖類とをさらに反応させて、疎水性基として炭素数12〜50の炭化水素基またはコレステリル基を含有する疎水性基含有多糖類を製造する。この第2段階反応の反応生成物をケトン系溶媒で精製して高純度疎水性基含有多糖類の製造が可能である。使用されうる多糖類としては、デキストラン、マンノース、アミロースなど、疎水基を置換される高分子、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアルギン酸、ポリアルギニン、ポリイソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)、MPCからなる群より選択される1種以上である。
このうち好適なナノゲルとしてはコレステロール置換プルラン(以下、CHPと略称する。分子量108,000のプルランに100単糖あたりコレステロールが1〜10個、好ましくは1〜数個置換)およびCHP誘導体が例示される。疎水化高分子の性状は、タンパク質のサイズや疎水性の程度により、コレステロール置換量を変え変更可能である。疎水性をコントロールするためには、炭素数10〜30、好ましくは炭素数12〜20程度のアルキル基を導入することも好適である。本発明で使用するナノゲルは、粒径10〜40nm、好ましくは20〜30 nmである。CHP誘導体の好適な例として、アミノ基あるいはカルボキシル基を導入したCHP誘導体が挙げられる。ナノゲルは既に広く市販されており、本発明では、これら市販品を広く利用可能である。
本発明に使用するナノゲルには、種々の物質とナノゲルとの複合体を用いることもできる。種々の物質とナノゲルとの複合体の具体例として、ナノゲル−タンパク質複合体、ナノゲル−核酸複合体、ナノゲル−薬物複合体が挙げられる。ナノゲル−タンパク質複合体のタンパク質として、酵素、サイトカインが好適に挙げられる。より好ましくは、SOD、カタラーゼ、ALP、リパーゼ、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経成長因子(NGF)等の増殖因子、アクチビン、骨形成因子(BMP)、インターロイキン、インターフェロンα,β,γ、腫瘍壊死因子(TNF)、インホトキシン、造血因子のコロニー刺激因子(CSF)やエリスロポエチン等のサイトカインが挙げられる。
ナノゲル−核酸複合体の核酸として、DNAおよびRNA、より好ましくはプラスミド、RNAiが挙げられる。ナノゲル−薬物複合体の薬物として、アドレアマイシン、シスプラチン、シスプラチン誘導体、プロスタグランジン、プロスタグランジン誘導体が好適に挙げられる。このような物質としては、動物、好ましくはヒトに投与できる任意の化合物又は物質組成物であれば、特に限定されない。例えば、物質としては、体内で生理活性を発揮し、疾患の予防または治療に有効な化合物または組成物、例えば造影剤等の診断に用いる化合物または組成物、さらに遺伝子治療に有用な遺伝子等も含まれる。
前記生理活性を発揮する成分としては、例えば、活性型ビタミンD3(例、1α−ヒドロキシビタミンD3、1α−2,5−ジヒドロキシビタミンD3、フロカルシトリオール、セカルシフェロール等)、カルシトニンおよびその誘導体、ペプチド類、β−アラニル−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、キサンチン誘導体、トロンボモデュリン、17β−エストラジオール、ノルエチンドロン等のステロイド系ホルモン、ポリフェノール化合物、プロスタグランジン類、インターフェロン等の公知の骨疾患または関節疾患の予防・治療剤を挙げることができる。
また、ナノゲルと複合体を形成する物質としては、モルフィン、コデイン及びペンタゾシン等の中枢性鎮痛剤、プレドニゾロン、デキサメタゾン及びベタメタゾン等のステロイド剤、アスピリン、インドメタシン、ロキソプロフェン及びジクロフェナクナトリウム等の非ステロイド性抗炎症剤、並びに、ブロメルシン、リゾチーム及びプロクターゼ等の消炎酵素剤等の消炎鎮痛剤を挙げることができる。さらに、物質としては、金チオリンゴ酸ナトリウム、オーラノフィン、D−ペニシラミン、ブシラミン、ロベンザリット、アクタリット、サラゾスルファピリジン等の抗リウマチ薬を挙げることができる。
さらにまた、ナノゲルと複合体を形成する物質としては、メトトレキサート、サイクロフォスファミド、アザチオプリン及びミゾリビン等の免疫抑制剤、アシクロビル、ジドブディン(zidovudin)及びインターフェロン類等の抗ウイルス剤、アミノグリコシド、セファロスポリン及びテトラサイクリン等の抗菌剤、ポリエン系抗生物質、並びに、イミダゾール及びトリアゾール等の抗真菌剤を挙げることができる。
また、ナノゲルと複合体を形成する物質としては、その他にも、コレステロール等のステロールや、例えば糖やデンプン等の炭水化物、細胞受容体蛋白質、免疫グロブリン、酵素、ホルモン、神経伝達物質、糖蛋白質、ペプチド、蛋白質、色素、放射性同位体及び放射性同位体標識化合物等の放射線標識、放射線不透過性化合物、蛍光性化合物、気管支拡張剤、局所麻酔薬等を挙げることができる。
さらに、本発明に使用するナノゲルとして、ナノゲル−リポソーム複合体、ナノゲル−エマルション複合体、ナノゲル−固体界面複合体、ナノゲル−微粒子複合体を用いることもできる。
ナノゲル−リポソーム複合体のリポソームとは、脂質人工膜の一種であり、リン脂質、グリセロ糖脂質を重量比50%以上の水に、当該脂質が持つゲルー液晶相転移温度以上で懸濁することにより形成される脂質二重層からなる閉鎖小胞である。リポソームとして、逆相蒸発法リポソーム(REV)、プロテオリポソーム、温度感受性リポソーム、pH感受性リポソーム、イムノリポソーム、血中滞留型リポソーム等が挙げられる。リポソームに利用するリン脂質として、レシチン、リゾレシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン等が挙げられる。また、リポソームの具体例としては、ホスファチジルコリン(PC)・リポソーム、特にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)が挙げられる。本発明に係るナノゲルーリポソーム複合体におけるナノゲルとリポソームの重量比は、好ましくは1:0.5〜4、より好ましくは1:1〜2である。
ナノゲル−エマルション複合体のエマルションとは、互いに混ざり合わない2液相間で、一方が他方の相に微粒子状に分散している系をいう。エマルションには、連続相が水の場合の油−水エマルションと、油の場合の水−油エマルションがある。ナノゲル−固体界面複合体の固体界面とは、例えば、歯科、整形外科領域で使われているステンレス鋼、コバルトクロム合金、チタンおよびチタン合金、ニッケルチタン合金などが挙げられる。ナノゲル−微粒子複合体の微粒子として、PLA微粒子、ミクロスフェアー微粒子が好適に例示される。
(アパタイトナノ微粒子の合成)
本発明に係るアパタイトナノ微粒子は、カルシウムイオンとリン酸イオンとの交互添加法により合成することができる。カルシウムイオンとリン酸イオンとの交互添加法とは、アンモニア水溶液にカルシウム水溶液とリン酸水溶液を交互に添加する方法をいう。アパタイトナノ微粒子の合成方法の具体例の一つとして、常温常圧で20〜25%のアンモニア水溶液(pH9.5〜11.5、好ましくはpH 11.5)に対し、カルシウム水溶液を加えて2〜15分間、好ましくは8〜12分間攪拌した後に、Ca:P=1〜2:1好ましくはCa:P= 1.67:1のモル比のリン酸水溶液を加えて2〜15分間、好ましくは8〜12分間攪拌する操作を1サイクルとし、少なくとも1サイクル、好ましくは6サイクル繰り返す。その後、各水溶液の添加の間隔を1〜5分間、好ましくは1〜3分間に短縮して1〜20サイクル、好ましくは10サイクルの添加を行い、1〜7日間、好ましくは2日間静置する。合成されるアパタイトナノ微粒子の粒径(直径)は約1〜200nm、好ましくは1〜20 nm、より好ましくは約2〜12 nmである。
合成されたアパタイトナノ微粒子は公知の方法を用いて解析することができる。例えば、KBr錠剤法による赤外吸収スペクトル(IR)測定により解析することができる。赤外吸収スペクトル(IR)とは、物質中を通過する赤外線により与えられる物質ごとに特有な吸収スペクトルをいう。KBr錠剤法とは、固体試料の赤外スペクトルを測定するときの試料調製法の一種で、試料粉末をKBrの粉末と混合し錠剤成形器でプレスして錠剤を作る方法をいう。KBr錠剤法による赤外吸収スペクトル(IR)測定の具体例の一つとして、約1mgの試料を100〜1000倍のKBr粉末(200メッシュ以下)とよく混ぜ合わせ、微粉砕し、数mmHgの真空中で約5〜10 t/cm2の圧力で約2〜10分間圧縮して得られた錠剤を用いて、赤外吸収スペクトルを測定することができる。
(カルシウムイオンとリン酸イオンの交互添加法によるナノゲル−アパタイトナノ微粒子の合成)
本発明に係るナノゲル−アパタイトナノ微粒子は、上記ナノゲルをテンプレートとして、前記カルシウムイオンとリン酸イオンとの交互添加法を用いて合成することができる。ナノゲル−アパタイトナノ微粒子の合成方法の具体例の一つとして、常温常圧でナノゲルを分散させたナノゲル水溶液に、アンモニア水溶液を加えてpH9.5〜11.5、好ましくはpH 11.5に調製し、この溶液を用いて前記カルシウムイオンとリン酸イオンとの交互添加法を行い、ナノゲル−アパタイトナノ粒子を合成する。合成されるナノゲル−アパタイトナノ微粒子の粒径は合成に用いるナノゲルの種類により変化するが、一般的には粒径(直径)約20〜500nm、好ましくは約20〜100 nm、より好ましくは約20〜30 nmである。合成されたナノゲル−アパタイトナノ微粒子は前記KBr錠剤法による赤外吸収スペクトル(IR)測定により解析することができる。
(ナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子の合成)
前記カルシウムイオンとリン酸イオンの交互添加法によるナノゲル−アパタイトナノ微粒子の合成は、中性pH(pH 7)条件で行うことができる。具体的には、アンモニア水溶液を無添加のナノゲル水溶液を用いて、カルシウムイオンとリン酸イオンの交互添加法を行うことによりナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子が合成される。中性pH条件でナノゲル−アパタイトナノ微粒子を合成することにより、バイオマテリアル応用により好ましいナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子を提供することができる。中性pH条件下におけるナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子の合成には、ナノゲル誘導体、好ましくはCHP誘導体が適しており、CHP誘導体としてアミノ基あるいはカルボキシル基を導入したCHP誘導体を使用することができる。
中性pH条件で合成されるナノゲル−アパタイトナノ微粒子はアモルファス(非結晶)のリン酸カルシウムである。アモルファスとは、構造的に原子配列が規則的ではなく、短距離秩序はあるが、長距離秩序がない固体のことである。アモルファスは結晶と比較して、1)長距離秩序がないため組成比などの物理的定数を連続的に変化できる、2)均質で粒界がない、3)構造に乱れがある、4)熱力学的に非平衡系である、等の特徴を有し、これらの性質を活かしたバイオマテリアル応用の可能性があると思われる。合成されるナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子の粒径は使用するナノゲルの種類により異なるが、約20〜100nmである。
(pH-gradient法によるナノゲルーアパタイトナノ微粒子の合成)
本発明に係るナノゲル−アパタイトナノ微粒子は、上記ナノゲルをテンプレートとして、pH-gradient法を用いて合成することができる。合成されるナノゲル−アパタイトナノ微粒子の粒径は合成に用いるナノゲルの種類により変化するが、一般的には粒径(直径)約20〜500nm、好ましくは約20〜100 nm、より好ましくは約20〜30 nmである。合成されたナノゲル−アパタイトナノ微粒子は前記KBr錠剤法による赤外吸収スペクトル(IR)測定により解析することができる。また、本発明に係るpH-gradient法によっても前記ナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子を合成することが可能である。
pH-gradient法とは、具体的には、少なくとも次の工程を含む方法である。
1)リン酸カルシウム塩類の水溶液にCO2ガスを溶解させることにより、該水溶液のpHを弱酸性(pH 3-6)とする工程。
工程1)では、リン酸カルシウム塩類の水溶液のpHを弱酸性(pH 3-6、好ましくはpH 4-6、より好ましくはpH 5-6、特に好ましくはpH 5.6)に調整する。リン酸カルシウム塩類の水溶液は、0.08〜0.2重量%、好ましくは0.08〜0.15重量%、より好ましくは0.08〜0.1重量%のリン酸カルシウム塩を水に溶解させて調製する。リン酸カルシウム塩水溶液のpHを弱酸性に調整する方法として、バブリング法が好適に挙げられる。バブリング法とは、気体を液中に溶解させるための気泡溶解法の1種であり、溶解槽の下部よりバブラー等を通じて気体を液中に気泡として噴出し、液中に気体を溶解させる方法である。バブリング法の具体例としては、リン酸カルシウム塩を分散させた液を室温で攪拌しながら、CO2ガス(CO2100%)(好ましくは流量30〜200 ml/分、より好ましくは50〜80 ml/分)を約2〜4時間溶解する。リン酸カルシウム塩を溶解させた液から溶け残ったリン酸カルシウム塩を濾過で除き、リン酸カルシウム塩水溶液として工程2)で用いる。
2)工程1)で調製したリン酸カルシウム塩水溶液とナノゲル水溶液を混合し、pHを中性(pH 6-8)とする工程。
工程2)では、工程1)で調製したリン酸カルシウム塩水溶液とナノゲル水溶液を混合し、当該混合溶液のpHを中性(pH 6-8、好ましくはpH 7-8、より好ましくはpH7.9)に調整する。リン酸カルシウム塩水溶液とナノゲル水溶液の混合溶液中におけるリン酸カルシウム塩とナノゲルの混合比は、重量比で1:0.5〜10、好ましくは1:5〜7である。当該混合溶液のpHを中性に調整する方法として、一定温度(20〜40℃、好ましくは20〜30℃、より好ましくは25℃で2〜12時間、好ましくは6〜10時間、より好ましくは8時間攪拌し反応させる方法が好適に挙げられる。攪拌することにより、混合溶液中のCO2ガスが蒸散しpHが弱酸性から中性へと上昇する。このpHの上昇に伴いナノゲルーアパタイトナノ微粒子が形成される。
(ナノゲルーアパタイトナノ微粒子の応用)
ナノゲルはその内部の空間に疎水性の薬物やタンパク質といった物質を取り込めるスペースを有しており、アパタイトは生体適合性を有することから、本発明に係るアパタイトナノ微粒子に酵素や細胞を固定化することが可能である。したがって、本発明に係るナノゲル−アパタイトナノ微粒子をバイオリアクターへ応用して医薬品や化学品を製造することができ、また診断や治療に利用できる。
本発明に係るナノゲル−アパタイトナノ微粒子に医薬品を結合することによって医薬を必要な時に、必要な量だけ、必要な所へ送達することが可能であり、すなわちドラッグデリバリーシステムの担体として利用できる。また、本発明のナノゲル−アパタイトナノ微粒子による薬物内包ナノゲルを用い、ハイブリッドナノ粒子を作製することにより、物質の放出制御が可能なドラッグデリバリーシステムを構築できる可能性がある。さらに本発明のアパタイトナノ微粒子およびその集積体は再生医療用材料として用いることができ、再生医療へ応用することができる。
(CHP誘導体)
本発明はCHP誘導体、より詳しくはアミノ基あるいはカルボキシル基を導入したCHP誘導体またはその塩を提供する。
1)アミノ基導入CHP誘導体
アミノ基導入CHP誘導体を以下の一般式(I)に示す。
(式中、n:50〜500の整数、R1:-(CH2)m-NH2、m:0〜10の整数)
一般式(I)において、アミノ基はCHPのグルコース100単糖あたり1〜50、より好ましくは5〜30である。アミノ基はアルキル基で置換されたアルキルアミノ基でもよい。アルキルアミノ基として、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノおよびジペンチルアミノなどの直鎖状または分子鎖状C1−6アルキル基で置換されたアミノ基が挙げられる。また、芳香族アルキルフェニル基、アルキルベンジル基でもよい。
アミノ基の保護基としては、通常のアミノ基の保護基として使用し得るすべての基を含み、例えば、トリクロロエトキシカルボニル、トリブロモエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルカルボニル、o−ブロモベンジルオキシカルボニル、(モノ−、ジ−、トリ−)クロロアセチル、トリフルオロアセチル、フェニルアセチル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、tert−アミルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4-(フェニルアゾ)ベンジルオキシカルボニル、2-フルフリルオキシカルボニル、ジフェニルメトキシカルボニル、1,1−ジメチルプロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、フタロイル、スクシニル、アラニル、ロイシル、1−アダマンチルオキシカルボニルおよび8−キノリルオキシカルボニルなどのアシル基;ベンジル、ジフェニルメチルおよびトリチルなどのアルアルキル基;2−ニトロフェニルチオおよび2,4−ジニトロフェニルチオなどのアリールチオ基;メタンスルホニルおよびp−トルエンスルホニルなどのアルキル−もしくはアリール−スルホニル基;N,N−ジメチルアミノエチレンなどのジアルキルアミノ−アルキリデン基;ベンジリデン、2−ヒドロキシベンジリデン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンジリデンおよび2−ヒドロキシ−1−ナフチルメチレンなどのアルアルキリデン基;3−ヒドロキシ−4−ピリジルメチレンなどのアルアルキリデン基;3−ヒドロキシ−4−ピリジルメチレンなどの含窒素複素環式アルキリデン基;シクロヘキシリデン、2−エトキシカルボニルシクロヘキシリデン、2−エトキシカルボニルシクロペンチリデン、2−アセチルシクロヘキシリデンおよび3,3−ジメチル−5−オキシシクロヘキシリデンなどのシクロアルキリデン基;ジフェニルホスホリルおよびジベンジルホスホリルナドノジアリールーもしくはジアルアルキルホスホリル基;5−メチル−2−オキソ−2H−1,3−ジオキソール−4−イル−メチルなどの置換シリル基などが挙げられる。
2)カルボキシル基導入CHP誘導体
カルボキシル基導入CHP誘導体を以下の一般式(II)に示す。
(式中、n:50〜500の整数、R2:-(CH2)m-COOH、m:0〜10の整数)
一般式(II)において、カルボキシル基はCHPのグルコース100単糖あたり1〜50、より好ましくは5〜30である。カルボキシル保護基としては、通常のカルボキシル基の保護基として使用し得るすべての基を含み、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、1,1−ジメチルプロピル、n−ブチルおよびtert−ブチルなどのアルキル基;フェニルおよびナフチルなどのアリール基;ベンジル、ジフェニルメチル、トリチル、p−ニトロベンジル、p−メトキシベンジルおよび(p−メトキシフェニル)メチルなどのアリルアルキル基;アセチルメチル、ベンゾイルメチル、p−ニトロベンゾイルメチル、p−ブロモベンゾイルメチルおよびp−メタンスルホニルベンゾイルメチルなどのアシル−アルキル基;2−テトラヒドロピラニルおよび2−テトラヒドロフラニルなどの含酸素複素環式基;2,2,2−トリクロロエチルなどのハロゲノ−アルキル基;2−(トリメチルシリル)エチルなどのアルキルシリルアルキル基;アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチルおよびピバロイルオキシメチルなどのアシルオキシアルキル基;フタルイミドメチルなどのシクロアルキル基;メトキシメチル、メトキシエトキシメチルおよび2−(トリメチルシリル)エトキシメチルなどのアルコキシ−アルキル基;ベンジルオキシメチルなどのアル−アルコキシーアルキル基;メチルチオメチルおよび2−メチルチオエチルなどのアルキルチオ−アルキル基;フェニルチオメチルなどのアリールチオ−アルキル基;1,1−ジメチル−2-プロペニル、3−メチル−3−ブテニルおよびアリルなどのアルケニル基;並びにトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、ジフェニルメチルシリルおよびtert−ブチルメトキシフェニルシリルなどの置換シリル基などが挙げられる。
本発明に係るCHP誘導体により、アパタイト化の促進や生体高分子との複合化の促進といった有利な効果を得ることができる。
一般式(I)および(II)の化合物は、塩とすることもでき、アミノ基またはカルボキシル基における塩を挙げることができる。アミノ基の塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸および硫酸などの鉱酸との塩;酒石酸、ギ酸、クエン酸、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸との塩;並びにメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩を挙げることができる。
カルボキシル基の塩としては、例えば、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルモノホリン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N−ベンジル−β−フェネチルアミン、1−エフェネミンおよびN,N´−ジベンジルエチレンジアミンなどの含窒素有機塩基との塩などを挙げることができる。
本発明に係るCHP誘導体は、例えば、次に示す調製方法によって合成することができる。
調製方法1:アミノ基導入CHP誘導体
(1)CHPをジメチルアミノピリジン(CHPのグルコース単糖に対して0.1モル比)に溶媒中で反応させる。ここでジメチルアミノピリジンはピリジンであってもよい。また、この反応で使用する溶媒としては、ジメチルスルホキシド/ピリジン、ジメチルホルムアミド/ピリジンなどが挙げられる。この反応は、通常、20〜30℃で、15分〜2時間、好ましくは25℃で1時間実施すればよい。
(2)(1)で得られた溶液に対し0.5倍容量の4−ニトロフェニルクロロホルメート(CHPのグルコース単糖と等モル比)/ジメチルスルホキシド溶液をゆっくり滴下し、攪拌する。ここで、4−ニトロフェニルクロロホルメートはN,N'-カルボニルイミダゾールであってもよい。この反応は、通常、0〜5℃で、3時間〜6時間、好ましくは0℃で4時間実施すればよい。この反応により、CHPの水酸基がニトロフェニルエステル化された活性化CHPが得られる。
(3)(2)で得られた溶液を、20倍容量の溶媒中にて再沈澱を行う。この反応は、通常、5〜30℃で、30分〜12時間、好ましくは5℃で12時間実施すればよい。また、この反応で使用する溶媒としては、エタノール、エタノール/ジエチルエーテル(v/v=1/1)などが挙げられる。その後、沈殿物を回収し、常温で減圧乾燥させる。
(4)(3)で得られた沈殿物を減圧乾燥させたものをジメチルスルホキシド/ピリジン混合溶媒に溶解させ、0.03倍容量のエチレンジアミン/ジメチルスルホキシド/ピリジン溶液をゆっくり滴下し、攪拌する。この反応は、通常、20〜30℃で、3日間〜5日間、好ましくは25℃で4日間実施すればよい。この反応により、CHPの水酸基がカルバミン酸エステル化される。
(5)(4)で得られた溶液を、20倍容量の溶媒中にて再沈澱を行う。この反応は、通常、5〜30℃で、30分〜12時間、好ましくは5℃で12時間実施すればよい。また、この反応で使用する溶媒としては、エタノール、エタノール/ジエチルエーテル(v/v=1/1)などが挙げられる。その後、沈殿物を回収し、常温で減圧乾燥させる。
(6)(5)で得られた沈殿物を減圧乾燥させたものをジメチルスルホキシドに溶解し、蒸留水に対して透析を行う。その後水酸化ナトリウム溶液(pH 12.8)に対する透析を行い、塩酸により中和させた後、さらに蒸留水に対する透析を行い、凍結乾燥させる。通常、透析は20〜25℃で、5日間〜8日間、好ましくは20℃で7日間実施すればよい。
調製方法2:カルボキシル基導入CHP誘導体
(1)CHP、ジメチルアミノピリジン(CHPのグルコース単糖に対して0.1モル比)に溶媒中で反応させる。また、この反応で使用する溶媒としては、ジメチルスルホキシド/ピリジン、ジメチルホルムアミド/ピリジンなどが挙げられる。この反応は、通常、20〜30℃で、15分〜2時間、好ましくは25℃で1時間実施すればよい。
(2)(1)で得られた溶液に対し0.5倍容量の4−ニトロフェニルクロロホルメート(CHPのグルコース単糖と等モル比)/ジメチルスルホキシド溶液をゆっくり滴下し、攪拌する。ここで、4−ニトロフェニルクロロホルメートはN,N'-カルボニルイミダゾールであってもよい。この反応は、通常、0〜5℃で、3時間〜6時間、好ましくは0℃で4時間実施すればよい。この反応により、CHPの水酸基がニトロフェニルエステル化された活性化CHPが得られる。
(3)(2)で得られた溶液に対し、CHPに対して2.5倍重量のβ−アラニンエチルエステル塩酸塩を添加する。この反応は、通常、20〜30℃で、3日間〜5日間、好ましくは25℃で4日間実施すればよい。この反応により、CHPの水酸基がカルバミン酸エステル化される。
(4)(3)で得られた溶液を、20倍容量の溶媒中にて再沈澱を行う。この反応は、通常、5〜30℃で、30分〜12時間、好ましくは5℃で12時間実施すればよい。また、この反応で使用する溶媒としては、エタノール、エタノール/ジエチルエーテル(v/v=1/1)、エタノール/ジエチルエーテル(v/v=8/2)が挙げられる。その後、沈殿物を回収し、常温で減圧乾燥させる。
(5)(4)で得られた沈殿物を減圧乾燥させたものをジメチルスルホキシドに溶解させ、蒸留水による透析を行う。その後水酸化ナトリウム溶液(pH 12.8)に対する溶液を行うことにより、エチル基の脱保護を行う。さらに蒸留水に対する透析を行い、凍結乾燥させる。通常、透析は20〜25℃で、5日間〜8日間、好ましくは20℃で7日間実施すればよい。
以下、本発明を実施例で説明するが、実施例は本発明の一例を示すものであって、その技術的範囲を限定するものではない。
実施例1
結晶アパタイトナノ粒子の合成
実験1.1 カルシウムイオンとリン酸イオンの交互添加法による結晶アパタイトナノ粒子の合成
結晶アパタイトナノ粒子の合成は非特許文献11を参考にして行った。10 mlの25%アンモニア水溶液(pH 11.5)に対し、80 μlの3.75 mMCa(NO3)2・4H2O (関東化学社製)水溶液を加えて10分間撹拌し、続いて80 μlの2.26mM (NH4) 2HPO4(和光純薬工業社製)水溶液を加え、10分間撹拌した。この操作を1サイクルとし、全部で6サイクル行った。その後、各水溶液の添加の間隔を2分に短縮して10サイクルの添加を行った。実験操作は室温で行った。この溶液を2日間放置したものを結晶アパタイトナノ粒子水溶液とし、各種測定を行った。
実験1.2 結晶アパタイトナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察
実験1.1で合成された結晶アパタイトナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)(H-600、HITACHI社製)により観察を行った。サンプルは、約100 μlの実験1.1で得られた結晶アパタイトナノ粒子の水溶液を、シートメッシュにネオプレンのトルエン溶液を滴下することにより調製したコロジオン膜に滴下し自然乾燥させたものとした。
その結果、図2(a)に示すように粒径約2-12 nmの球状微粒子が観察された。電子回折像より、これらの粒子はヒドロキシアパタイト(HAp)と同定された。
実施例2
ナノゲル−結晶アパタイトナノ微粒子の合成
実験2.1 ナノゲルの調製
ナノゲルとしてプルランのコレステロール誘導体(CHP)(プルランの分子量108×103、100単糖あたりコレステリル基を1.2個または1.4個含有)を用いた。CHP誘導体は、CHP-1.4にカルボキシル基を導入した化合物(CHP-COOH)(100単糖あたりのCOOH基:10.7個)、CHP-1.2にアミノ基を導入した化合物(CHP-NH2)(100単糖あたりのNH2基:25.0個)をそれぞれ合成した(図1)。
CHP-NH2の合成は以下の手順で行った。CHP 1.0 gとジメチルアミノピリジン 35 mgをジメチルスルホキシド/ピリジン混合溶媒(v/v=1/1)20 mlに溶解させた。これに、4-ニトロフェニルクロロホルメート(0.25 g/ml) ジメチルスルホキシド/ピリジン(v/v=1/1)溶液10 mlを0℃の条件でゆっくり滴下し、4時間攪拌した。エタノール/ジエチルエーテル混合溶媒(v/v=1/1)にて再沈殿を行い、沈殿物を回収した。これをジメチルスルホキシド/ピリジン混合溶媒(v/v=1/1)300 mlに溶解させ、エチレンジアミン(0.285 g/ml ジメチルスルホキシド/ピリジン(v/v=1/1))溶液10 mlをゆっくりと滴下した。室温で4日間攪拌させた後、エタノール/ジエチルエーテル混合溶媒(v/v=1/1)にて再沈殿を行い、沈殿物を回収し、減圧乾燥させた。これをジメチルスルホキシドに溶解させ、蒸留水による透析を行った。さらに水酸化ナトリウム溶液(0.1N)に対して透析を行い、これを塩酸により中和させ、最後に蒸留水に対して透析を行った。この溶液を凍結乾燥し、乳白色の固体を得た。
CHP-COOHの合成は以下の手順で行った。CHP 1.33 gとジメチルアミノピリジン 30 mgをジメチルスルホキシド/ピリジン混合溶媒(v/v=1/1)40 mlに溶解させた。これに、4-ニトロフェニルクロロホルメート 2.23 gを粉末のまま加え、4時間攪拌した。その後この溶液にアラニンエチルエステル塩酸塩3.40 gを加え、4日間常温で攪拌した。次にこの溶液をエタノール/ジエチルエーテル混合溶媒(v/v=8/2)に滴下し再沈殿を行った。沈殿物を回収し、これをジメチルスルホキシドに溶解させて蒸留水に対して透析を行い、その後水酸化ナトリウム溶液(pH12.8)に対して透析を行い、最後にもう一度蒸留水に対して透析を行った。この溶液を凍結乾燥し、淡黄色の固体を得た。
CHPおよびCHP誘導体を3 mg/mlとなるようにMilliQ水に添加し、加熱・撹拌して分散させた。超音波プローブ(Sonifier、Branson社製)を用いて氷浴中で15分間超音波を照射(40W)したのち、0.8、0.45および0.22 μmのミリポアフィルター(MillexR、ミリポア社)で順次ろ過し、透明な溶液を得た。この得られた溶液をCHPナノゲル水溶液とした。
実験2.2 カルシウムイオンとリン酸イオンを交互に添加する方法によるナノゲル−結晶アパタイトナノ微粒子の合成
0.3 mM(グルコースユニットで計算)のCHPナノゲル水溶液に25% アンモニア水を加えてpH 11.5に調整した。この溶液10 mlに対し、80 μlの3.75mM Ca(NO3)2・4H2O水溶液を加えて10分間撹拌し、続いて80 μlの2.26mM (NH4)2HPO4水溶液を加え、10分間撹拌した。この操作を1サイクルとし、全部で6サイクル行った。その後、各水溶液の添加の間隔を2分に短縮して10サイクルの添加を行った。実験操作は室温で行った。この溶液を2日間放置したものをナノゲル−結晶アパタイトナノ微粒子の水溶液とし、各種測定を行った。
実験2.3 ナノゲル−結晶アパタイトナノ微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)による解析
実験2.2で得られたナノゲル−結晶アパタイトナノ微粒子の水溶液を用い、実験1.2と同様の方法で透過型電子顕微鏡(TEM)による解析を行った。
その結果、CHPを含むナノゲル水溶液からは、図2(b)に示すように30 nm程度の直径を有するヒドロキシアパタイト(HAp)結晶球状微粒子が得られた。この直径はCHPナノゲルの粒径と同程度であることから、ナノゲルをテンプレートとして生成したものと考えられた。粒子の内部と外周とでTEM像のコントラストに差がないことから、HAp結晶はナノゲル全体にわたって結晶化していることがわかった。また、CHP-NH2またはCHP-COOHを含むナノゲル水溶液からは、図2(c)および(d)に示すように粒径が30-50nmと比較的大きく、よく分散したHAp微粒子が得られた。
実験2.4 ナノゲル−結晶アパタイトナノ微粒子の赤外吸収スペクトル(IR)測定による解析
12 mlの実験2.2で得られたナノゲル−結晶アパタイトナノ微粒子の水溶液を遠心分離(4℃、10,000 rpm、15分間)によって沈殿させたを真空乾燥させ、KBr錠剤法により赤外吸収スペクトル(IR)測定(FT/IR-500、日本分光社製)を行った。
その結果、3734 cm-1にOHの吸収、1040、604、565、および471 cm-1にPO4 3-の吸収が見られた。また、1419および874cm-1に見られる吸収は炭酸イオン (CO3 2-)に由来するものであり、生成したアパタイトが炭酸イオンを含むことを示している。3400および1652cm-1付近のブロードな吸収はH2Oによるものであり、アパタイト結晶が水を含んでいることが示唆された。また、1152cm-1にCHPに特徴的な吸収が見られることから、これらの粒子はCHPとハイブリッドを形成していることが確認できた。
実施例3
ナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子の合成
実験3.1 ナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子の合成
実験2.1と同様の方法で得られた0.3 mM(グルコースユニットで計算)のCHPナノゲル水溶液を用い、アンモニア水溶液無添加(中性pHの条件下)で、80 μlの3.75mM Ca(NO3)2・4H2O 水溶液を加えて10分間撹拌し、続いて80 μlの2.26mM (NH4) 2HPO4水溶液を加え、10分間撹拌した。この操作を1サイクルとし、全部で6サイクル行った。その後、各水溶液の添加の間隔を2分に短縮して10サイクルの添加を行った。実験操作は室温で行った。この溶液を2日間放置したものをナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子の水溶液とし、各種測定を行った。
実験3.2 ナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)による解析
実験3.1で得られたナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子の水溶液を用い、実験1.2と同様の方法で透過型電子顕微鏡(TEM)による解析を行った。
その結果、CHPナノゲルの非存在下、および未修飾のCHPナノゲルの存在下では、結晶の形成は見られなかった。これに対し、図3(a)に示すように、CHP-NH2ナノゲルの存在下では、粒径30nm程度の微粒子が生成した。電子回折像より、この粒子はアモルファスのリン酸カルシウムであることが示された。TEM像のコントラストが低く、結晶の形成量はアルカリ条件と比較して少ないと考えられる。また、図3(b)に示すように、CHP-COOHナノゲルの存在下では粒径が60-100nm程度のアモルファス粒子の形成がみられた。
実施例4
pH-gradient法によるナノゲル−アパタイトナノ微粒子の合成
実験4.1 ナノゲル−アパタイトナノ微粒子の合成
アパタイトはHAP-100(粒径1.7 mm以下のヒドロキシアパタイト粒子)(太平化学産業社製)を用いた。ナノゲルとしてプルランのコレステロール誘導体(CHP)(プルランの分子量108×103、100単糖あたりコレステリル基を1.4個含有)(日本油脂社製)を用いた。CHP誘導体は、CHP-1.4にカルボキシル基を導入した化合物(CHP-COOH)(100単糖あたりのCOOH基:21.7個)を合成した(図1)。CHP-COOHは実験2.1と同様の方法で合成した。また、プルラン(林原社製)は分子量108×103のものを用いた。
ヒドロキシアパタイト粉末(HAP-100) 0.25 gをMilliQ水250 mlに分散させ、室温で攪拌しながらCO2ガス(CO2100%、流量60 ml/分)を120分間バブリングすることにより溶液を弱酸性(pH 5.6)とし、ヒドロキシアパタイト(HAp)を溶解させた。溶け残ったHApを濾過で除いたのち、濾液のカルシウムイオン濃度をEDTAとカルシウム標準液を用いた逆滴定法により求めた。このHAp水溶液にMilliQ水を加えてカルシウムイオン濃度を[Ca2+]= 0.8 mMとした。HAp水溶液15 mlとナノゲル分散水溶液15 mlをナスフラスコで混合し、スターラーで攪拌しながら25℃の恒温槽で8時間反応させた。その結果、図4に示すように攪拌により溶液内のCO2が蒸散し、溶液のpHが5.6から7.9まで上昇した(図4)。このpH上昇に伴いリン酸カルシウムが形成される。その後、調製したサンプルを25℃で2日間静置し、各種分析を行った。
実験4.2 ナノゲル−アパタイトナノ微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)による解析
得られたナノゲル−アパタイトナノ微粒子の水溶液を用い、実験1.2と同様の方法で透過型電子顕微鏡(TEM)による解析を行った。その結果、溶液に添加物が存在しない場合、析出物は見られなかった。これに対し、CHPおよびCHP-COOHナノゲルの存在下ではよく分散したナノゲルサイズのアモルファス粒子が形成された(図5(b)および(c))。ナノゲルがミネラリゼーションの核となっていると考えられる。これらのナノ粒子は25℃ で2ヶ月以上安定に分散状態を保っていた。一方、プルラン添加条件ではナノ粒子の凝集体のみが得られた(図5(d))。表1にTEMにより形態および多形体を解析した結果のまとめを示す。
また、TEM像からCHPナノゲルを含むHAp水溶液から生成したナノ粒子のサイズ分布を求めた。その結果、図6に示すように平均粒径は26.4 nmと、CHPナノゲルのサイズとほぼ一致していた。
さらに、原子間力顕微鏡(atomic force microscope、AFM、SPI300、セイコーインスツルメンツ社製)で解析した。その結果、図7に示すようにTEMの観察結果と同様に分散したナノ粒子が観察された。有機/無機ハイブリッドの状態でも粒径は30nm程度であり、凝集などは起こしていないことが示された。
これらの結果から、pH-gradient法の条件の最適化によって、安定に分散した粒径30 nm程度のCHPナノゲル−リン酸カルシウムハイブリッドナノ粒子が得られることがわかった。
実施例5
ナノゲル被覆リポソーム−リン酸カルシウム微粒子複合体の合成
ナノゲルは様々な有機分子(タンパク質・核酸など)や分子集合体(リポソーム・エマルジョン)と相互作用し、複合体を形成する。このようなナノゲル複合体をさらにリン酸カルシウムとハイブリッド化できれば、バイオマテリアルとしての応用の幅が広がると期待できる。実施例5では、本発明に係るpH-gradient法がナノゲル複合体のミネラリゼーションにも応用可能であることを示す。その一例として、ナノゲル被覆リポソームをテンプレートとして“CHPナノゲル被覆リポソーム−リン酸カルシウム複合体”を作製した。
実験5.1 DPPC/コレステロール リポソームの調製
DPPC(L-α-Dipalmitoylphosphatidylcholine、Nacalai社製) 44 mg(6.0 × 10-5mol)とコレステロール(Wako社製) 7.7 mg (2.0 × 10-5 mol) をナスフラスコ中でCHCl38.0 mlに溶解させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去してフラスコ壁面に脂質フィルムを形成させたのち、真空ポンプでさらに1時間フィルムを乾燥させた。これにMilliQ水20mlを加え、37 ℃で1週間フィルムを水和させた。この水和フィルムをExtruderで処理し(フィルター:1.0 μm × 2、0.6 μm × 2、0.4μm × 3、0.2 μm × 5)、リポソーム溶液を得た。動的光散乱(DLS) 測定(DLS-70、大塚電子社製)により粒径を求め、リン脂質Cテストワコー(Wako社製)を用いた紫外可視スペクトル測定によりDPPC濃度を求めた。
実験5.2 CHPナノゲルとリポソームの複合化
ナノゲルとしてプルランのコレステロール誘導体(CHP)(プルランの分子量108×103、100単糖)あたりコレステリル基を1.4個含有)を用いた。CHP誘導体は、CHP-1.4にカルボキシル基を導入した化合物(CHP-COOH)(100単糖あたりのCOOH基:10.7個)を合成した(図1)。CHP-COOHは実験2.1と同様の方法で合成した。CHPナノゲル分散液(1.0mg/ml) 20 mlとリポソーム溶液(DPPC濃度 1.5 mg/ml) 20 mlを混合し、50℃で12時間静置した。その後DLS測定により複合化を確認した。
実験5.3 CHPナノゲル被覆リポソーム−リン酸カルシウム複合体の作製
実験5.2で作製したナノゲル被覆リポソーム水溶液、実験4.1と同様の方法で調製したヒドロキシアパタイト水溶液を用いて、実験4.1と同様にCO2ガスを用いたpH-gradient法によりCHPナノゲル被覆リポソーム−リン酸カルシウム複合体を作製した。HAp水溶液([Ca2+]= 0.8 mM)15 mlとナノゲル被覆リポソーム水溶液15 ml(CHPナノゲル濃度 0.05 mg/ml)をナスフラスコで混合し、スターラーで攪拌しながら25℃の恒温槽で8時間反応させた後、25℃で2日間静置した。
実験5.4 CHPナノゲル被覆リポソーム−リン酸カルシウム複合体の動的光散乱(DLS)測定による解析
実験5.3で得られたCHPナノゲル被覆リポソーム−リン酸カルシウム複合体の水溶液を用い、DLS測定による解析を行った。サンプルはフィルター処理せず、25℃の条件で測定を行った。その結果を表2に示す。DPPC/コレステロールリポソームの粒径は約170nmであった。これをCHPナノゲルとインキュベートすることにより粒径が約200 nmに増加したことから、複合化が示唆された。また、リン酸カルシウムとの複合化では、CHP被覆リポソームを用いた場合には複合化前後で粒径がほとんど変化しなかったのに対し、CHP被覆していないリポソームを用いた場合には平均粒径が10nm程度増加し、多分散指数の値も増加した。
実験5.5 CHPナノゲル被覆リポソーム−リン酸カルシウム複合体の透過型電子顕微鏡(TEM)による解析
実験5.3で得られたCHPナノゲル被覆リポソーム−リン酸カルシウム複合体の水溶液を用い、透過型電子顕微鏡(TEM)による解析を行った。その結果、CHP被覆リポソームをテンプレートとした場合、粒径200nm程度の粒子表面にさらに20 nm程度のナノ粒子が存在していることを確認することができた(図8(a))。これは、リポソームを覆っているナノゲルがミネラリゼーションされた結果であると考えられる。
一方、CHP被覆していないリポソームを用いた場合、リポソームをテンプレートとしたと考えられるアモルファス粒子が観察されたが、ナノゲルサイズの粒子は見られなかった(図8(b))。また、この場合、リポソームの大きさに比べて、得られたリン酸カルシウム粒子のサイズが大きかったことから、ミネラリゼーションの過程でリポソームが崩壊した可能性がある。
これらの結果から、CHPナノゲル被覆リポソームをテンプレートとする、“CHPナノゲル被覆リポソーム−リン酸カルシウム複合体”の安定な形成が可能であることがわかった。
上記述べてきたように、本発明のナノゲル−アパタイトナノ微粒子はドラッグデリバリーシステム、骨再生医療へ応用することができる。
CHPおよびCHP誘導体の構造式を示す。(実施例2) (a)ナノゲル無添加、(b) CHP、(c)CHP-NH2、(d)CHP-COOH ナノゲルの存在下で生成したヒドロキシアパタイトナノ粒子のTEM像および電子回折像を示す。(実施例1および2) 中性pH条件で形成したリン酸カルシウムナノ粒子のTEM像および電子回折像を示す。(a) CHP-NH2、(b)CHP-COOHナノゲルの存在下で生成を行った。(実施例3) pH-gradient法におけるヒドロキシアパタイト水溶液のpH変化を示す。(実施例4) pH-gradient法により合成したリン酸カルシウムナノ粒子のTEM像を示す。(a)添加物無し、(b)CHPナノゲル(0.5 mg/ml)、(c)CHP-COOH(0.5mg/ml)、(d)プルラン(0.5 mg/ml)。(実施例4) pH-gradient法により合成したリン酸カルシウムナノ粒子の粒径分布を示す。(実施例4) pH-gradient法により合成したリン酸カルシウムナノ粒子のAFM像を示す。(実施例4) CHPナノゲル被覆リポソーム−リン酸カルシウム複合体のTEM像を示す。(実施例5)

Claims (10)

  1. カルシウムイオンとリン酸イオンとの以下の工程よりなる交互添加法によりアパタイトナノ微粒子を合成することを特徴とする、アパタイトナノ微粒子の調製方法;
    アンモニア水溶液に対し、カルシウム水溶液を加え撹拌する操作とリン酸水溶液を加えて操作する操作を1サイクルとするサイクルを繰り返し、アパタイトナノ微粒子を合成する。
  2. 中性pH(pH 7)条件下でカルシウムイオンとリン酸イオンとの以下の工程よりなる交互添加法が行われることを特徴とする、疎水化高分子からなるナノ粒子(以下ナノゲルという)またはナノゲル複合体(前記ナノゲルと蛋白質、核酸若しくは薬物との複合体を意味する)をテンプレートとしてナノゲル−アパタイトナノ微粒子を合成する、ナノゲル−アパタイトナノ微粒子の調製方法
    前記テンプレートを分散させた水溶液に、アンモニア水溶液を加え、この溶液に、カルシウム水溶液を加え撹拌する操作とリン酸水溶液を加えて操作する操作を1サイクルとするサイクルを繰り返し、ナノゲル−アパタイトナノ微粒子を合成する。
  3. 少なくとも以下の工程を含むことを特徴とする、疎水化高分子からなるナノ粒子(以下ナノゲルという)またはナノゲル複合体(前記ナノゲルと蛋白質、核酸若しくは薬物との複合体を意味する)をテンプレートとしてナノゲル−アパタイトナノ微粒子を合成する、ナノゲル−アパタイトナノ微粒子の調製方法;
    1)リン酸カルシウム塩類の水溶液にCO2ガスを溶解させることにより、該水溶液のpHを弱酸性(pH 3-6)とする、
    2)工程1)で調製したリン酸カルシウム塩類の水溶液と前記テンプレートを分散させた水溶液を混合し、pHを中性(pH 6-8)とする。
  4. バブリング法により、リン酸カルシウム塩類の水溶液にCO2ガスを溶解させることを特徴とする、請求項3に記載の調製方法。
  5. 工程2)において、リン酸カルシウム塩類の水溶液とナノゲル水溶液の混合液を攪拌することにより、該混合液のpHを中性とすることを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。
  6. ナノゲルがコレステロール導入プルラン(以下、CHP)またはCHP誘導体により形成されるナノゲルである、請求項2〜5の何れか一に記載の調製方法。
  7. CHP誘導体がアミノ基またはカルボキシル基が導入されたCHP誘導体である、請求項6に記載の調製方法。
  8. ナノゲルが有機分子および/または分子集合体と複合体を形成していることを特徴とする、請求項4〜7の何れか一に記載の調製方法。
  9. ナノゲルがリポソームと複合体を形成していることを特徴とする、請求項8に記載の調製方法。
  10. 合成されるナノゲル−アパタイトナノ微粒子がナノゲル−アモルファスアパタイトナノ微粒子である、請求項〜8の何れか一に記載の調製方法。
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