JP5438276B2 - 溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法とその装置 - Google Patents
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Description
そこで、炉底耐火物の浸食を的確に把握し、これに応じた運転計画を立てることが重要となる。従来、炉底耐火物の浸食量を把握する際には、図30に示されるように、運転停止時に酸素ランス120によってメタル層107を溶断して炉底レンガ111表面を露出させ、耐火物厚さを測定していた。しかし、メタル層107は分厚く硬いため、除去するのに時間がかかるという問題があった。また、メタル除去にランスなどを用いると、炉底レンガ111が損傷することがあり、健全であった耐火レンガ111も交換しなければならないことがある。
このように、上記した炉底監視方法に加えて本発明を行い、侵食予測結果の妥当性を判断することにより、より精度の高い炉底監視が可能となる。
上記構成によれば、厚さ測定の前段で、メタル層固有の横波低周波等の音波速度を求めておくことで、被処理物の成分、投入量に関わらず精度の高い測定を行うことが可能となる。
図1及び図2は本発明の参考例1に係る図、図3は本発明の実施例1の基本構成を示す図、図4及び図5は実施例1−1に係る図、図6〜図14は実施例1−2に係る図、図15〜図19は実施例1−3に係る図、図20〜図22は本発明の実施例2に係る図、図23は本発明の参考例2に係る図、図24及び図25は本発明の実施例3に係る図、図26は本発明の実施例4に係る図、図27及び図28は本発明の実施例5に係る図、図29は本発明の実施例6に係る図である。図32乃至図36は本発明の実施例7に係る図である。
尚、本実施例及び参考例では、焼却残渣、都市ごみ、或いは産業廃棄物を溶融処理する溶融炉を対象とし、特に廃棄物を焼却処理後の灰を処理する灰溶融炉に適している。尚、以下の実施例ではプラズマ式溶融炉を例に挙げて説明しているが、限定的な記載がない限り、プラズマ式溶融炉の他にも電気抵抗式溶融炉、バーナ式溶融炉、旋回式溶融炉、反射式溶融炉等の溶融炉全般に適用可能である。
(参考例1)
プラズマ式溶融炉10は、炉本体14の炉蓋から主電極11が垂下され、これに対向して炉底から炉底電極12が挿設されている。主電極11は不図示の可動装置により昇降可能で、炉底電極12は炉本体14に固定される。プラズマ式溶融炉10では、これらの電極間に直流電源により直流電流を通流して炉内にプラズマアーク24を発生させる。投入ホッパ21より投入された被処理物は、炉壁に設けられた被処理物投入口20より炉内に投下され、プラズマアーク熱及び前記電極間を流れる電流のジュール熱により溶融処理されて炉底に溜まる。溶融処理された被処理物は、溶融スラグ22と、溶融スラグ22の下部に比重差により形成されている溶融メタル23からなる。溶融後は、適宜出滓口25より排出される。
炉本体14の側壁及び蓋部の内側は不定形耐火材15で形成され、炉底17には、浸食に強いアーチ状の耐火レンガ18が内側に配設され、その下に耐火レンガ19が配設される。これらの耐火物の外表面は鋼板製のケーシング16で被覆されている。尚、夫々の耐火物の構造は特に上記に限定されない。
Qp=(CpTs+Hf)×M+Qr ・・・(1)
ここで、Qp:入熱(電力)、Cp:被処理物の比熱、Hf:被処理物の潜熱、M:処理量、Qr:炉体放熱量である。
この浸食量算出装置30は、予め求めておいたスラグ温度と炉底耐火物温度の相関関係と、予め求めておいた炉底耐火物の浸食速度式とが蓄積された記憶部31と、各種演算を行う演算部32と、温度計側手段により取得したスラグ温度を入力するスラグ温度入力部33と、出力部34と、を備える。
まず、予めスラグ温度−炉底耐火物温度の相関関係を求めておき、記憶部31に格納しておく(S1)。また、予め炉底耐火物の浸食速度式を取得し、記憶部31に格納しておく(S2)。この浸食速度式は、熱伝導解析により求める方法、実測値から求める方法などがある。浸食速度式の一例を以下の式(2)に示す。
dx/dt=exp{−A/(Tb+273)+B} ・・・(2)
ここで、dx/dt:耐火物浸食速度、Tb:炉底耐火物表面温度、Ts:スラグ温度、A,B:浸食速度式の定数、a,b:炉底温度推定式の定数である。
Tb=a×Ts+b ・・・(3)
ここで、Tb:炉底耐火物表面温度、Ts:スラグ温度、a,b:炉底温度推定式の定数である。
そして、得られた炉底耐火物温度を用いて、記憶部31に格納された浸食速度式(2)に基づき、一定時間内での浸食速度を算出する(S5)。
算出した浸食量を積算することにより、現時点における浸食量の総計が求められる(S6)。これを一定時間毎に繰り返し行うことにより、炉底耐火物の浸食量をリアルタイムで求めることが可能となる。
尚、本参考例において、炉底耐火物の温度推定にスラグ温度に加えてメタル厚さを考慮すると精度が向上する。オーバーフロー面は一定なので、スラグ深さを主電極挿入法により計測すると、メタル厚さを算出することができる。
尚、以下の実施例1乃至7及び参考例2において、上記した参考例1と同様の構成については、その詳細な説明を省略する。
図3に、本発明の実施例1に係る装置の全体構成を示す。これは後述する実施例1−1乃至1−3に共通する構成である。本実施例1は、運転停止時に適用され、固化したスラグ層22を除去して露出させたメタル面を打診して弾性波を発振する打診装置35と、メタル面で反射した弾性波が入射され、波形を取得する波形計測装置36とを備える。尚、ここで弾性波とは、打診装置35により媒質(メタル層)を打撃したときに発生する周波数の低い波をいう。
また、炉本体14のスラグ面より上方で、耐火物の浸食の影響を受けない位置を基準位置Aとして設定しておく。この基準位置Aは、例えば主電極11の挿入孔、補助電極39の挿入孔38などが適している。
ここでメタル層23固有の弾性波速度や減衰特性等の物性を求めておく。弾性波速度を求める場合、図4(a)に示されるように、まずメタル面に所定距離だけ離間させて受振センサ37a、37bを設置する。受振センサ37a側にこれと離間させて打診装置35を設置して、メタル面を打診する。メタル層23表面を横方向に伝播した弾性波は、受振センサ37aと受振センサ37bにて時間差を持って受振される。この時間差に基づいて、メタル層23の固有の弾性波速度が求められる。
また、厚さ計測で一般的に用いられている超音波は、数MHzと高周波であるため、比較的薄いものは計測できるが、メタル層23のように500mmを超えると減衰して計測できない。弾性波は数kHzで減衰が少ないため、弾性波を用いることでメタル層23の厚さを計測することが可能となる。ただし、溶融炉10内のメタル層23は不純物や空隙があるので、これに応じて好適な周波数を設定する。打診装置35に鉄球を用いた場合、鉄球の大きさによって周波数を変更することができる。
即ち、受振センサ37により図5(a)のような振幅と時間の波形が得られ、これをフーリエ変換により周波数分析することにより(b)のような振幅と周波数の波形が得られる。これを周波数分析し、以下の式(4)を用いることによりメタル厚さH2が算出できる。
d=v/2f ・・・(4)
ここで、d:メタル厚さ、v:メタル層の弾性波速度、f:固有周波数である。
尚、初期距離Hは、溶融炉の設計図から取得してもよいし、溶融炉施工後に実測して取得してもよい。
さらに、灰投入側は浸食が少ないので、出滓口側と灰投入側の少なくとも2点の浸食量を測定し、これらを比較することで出滓口側の炉底耐火物の浸食量を把握するようにしてもよい。
上記したように、運転停止時に炉底耐火物浸食量を把握し、プラズマ時間(灰投入時間、灰投入量)から浸食速度を計算し、次の運転期間を決定することが好ましい。
溶融炉10の運転中には、メタル層23は、Cuを多く含有し比重の大きいメタル下層のCuリッチ層(比重7.6)と、Feを多く含有し比重の小さいメタル上層のFeリッチ層(比重7.0)に分かれて存在している。溶融炉10をそのまま停止すると、まずメタル層上層部で融点の高いFeリッチ層が凝固しその後に融点の低い下層部のCuリッチ層が凝固するため、Cuリッチ層が凝固する際の収縮によってせんだん応力が発生してFeリッチ層とCuリッチ層の境界で分離し、空間が発生する場合がある。これを防止するためには、溶融炉10を休炉する直前に傾動して上部スラグ層を排出すると共に、Feリッチ層も出来る限り排出し、傾動後はすぐに元の水平に戻すことで残ったFeリッチ層とCuリッチ層を混合し、急冷することが有効であり、急冷することでFeリッチ層とCuリッチ層が再分離することを防止することが可能となる。
次に、上記した実施例1−1を応用した実施例1−2につき説明する。
図6を参照して、実施例1−2は、実施例1−1と同様に固化したスラグ層を除去して露出させたメタル層23の上面を打診して弾性波を発振する打診装置35と、メタル面で反射した弾性波を受振する受振センサ37と、該受振センサ37に接続され、受振した波形を取得する波形計測装置36(図1参照)とを備える。
本実施例1−2で求めた平均音速を前記実施例1−1に適用することにより、より正確にメタル厚さを求めることができ、さらには炉底耐火物の浸食量を精度良く求めることを可能とする。
そこで実施例1−2では、基準位置から等距離にある場所を起振点−受振点とし、反射波の到達時間を計測することによって深さ及び平均音速を求めることができるため、メタル厚さ或いは炉底耐火物浸食量を高精度で推定することができる。
本実施例では、前記受振センサ37を介して波形計測装置36に入力される波形は加速度波形とする。図9に、該加速度波形の一例を示す。同図に示されるように、打診−受振点間距離Lが異なる波形が複数得られる。
次いで、多重反射の往復時間を求める。これは、図6に示した基準位置の打診装置35’を用い、該打診装置35’の打診時間から反射波を受振するまでの時間から得られる。
図7は、直接波、表面波、反射波、屈折波の夫々の波における距離(打点−受振点間距離)と時間の関係を示しており、図中Eが基準位置におけるデータで、この時の時間が多重反射の往復時間となる。
前記テンプレート波形とは、図10に示される複数の速度波形のうち、明瞭に直接波が判別できる波形を抽出し、これをテンプレート波形としたものである。同図では、サイン波状の波形形状がクリアに判別できるch12の直接波をテンプレート波形とした。他の波形は反射波等が重なっており明瞭でなく、テンプレート波形としては不適である。
次に、上記した実施例1−1を応用した実施例1−3につき説明する。
図15を参照して、実施例1−3は、実施例1−1と同様に固化したスラグ層を除去して露出させたメタル層23の上面を打診して弾性波を発振する打診点(打診装置)35と、メタル面で反射した弾性波を受振する受振センサ37と、該受振センサ37に接続され、受振した波形を取得する波形計測装置36とを備える。
最初に、これらの受振センサ37のうち、受振センサ(1)から受振センサ(16)までを波形計測装置36に接続する。そして、打診点35にてメタル層23表面を打撃して弾性波を発生させ、これを波形計測装置36に接続された16個の受振センサ37にて受振する。これにより波形計測装置36には、16個の波形データが入力される。
次いで、打診点35を受振センサ37側に移動させるとともに、受振センサ(2)から受振センサ(17)までを波形計測装置36に接続し、上記と同様にして波形データを取得する。同様にして、波形を受振させる受振センサ37を1個ずつずらし、これに合わせて打診点35を移動させ、測定を繰り返し行なう。
この表面波探査計測法は周知の方法であり、レイリー波の位相速度の分散特性からS波速度及び深さ分布を求めるものである。この分散特性を図16に示す。図16(a)は異なる媒質におけるS波速度と周波数との関係を示すグラフで、(b)はその概念図である。これらの図に示されるように、媒質が薄いとS波速度が遅く、厚いとS波速度が速くなる。また、軟らかい媒質だとS波速度が遅く、硬い媒質だとS波速度が速くなる。従って、S波速度は媒質であるメタル層の状態、性質に影響を及ぼされることとなる。
この過程で図18に示される分散曲線が算出され、これを上記手法にて解析することにより図19のような速度を示す分布図が得られる。ここからメタル層23と炉底耐火物の境界面が明瞭に判別できる。同図では、約10cmの所に境界面が認められ、これは実測値の10cmと同一となるため誤差はほぼ0となる。
図22のフローを参照しながら、本実施例につき説明する。
まず、炉本体上方に設定された基準位置Aから炉底耐火物表面までの初期距離Hを求めておく(S11)。尚、初期距離Hは、溶融炉の設計図から取得してもよいし、溶融炉施工後に実測して取得してもよい。
基準位置Aからスラグ層表面までの距離H3を求める(S14)。
また、測定孔40を用いて、スラグ表面から炉底耐火物表面までの距離H4を求める(S15)。この距離H3+距離H4と、予め求めておいた基準位置Aから炉底耐火物表面までの初期距離Hとを比較することにより、炉底耐火物の浸食量を求めることができる(S16)。
(参考例2)
参考例2は、炉底電極12の長さを超音波若しくは弾性波により厚さ計測するものである。基準位置Aを炉底電極12の端部に設定し、溶融炉10の運転前に、予め基準位置Aから炉底電極12の炉内側端部までの初期距離Hを計測しておく。
そして、一定時間運転後に、超音波若しくは弾性波の発振装置45と、受振センサ(不図示)を炉底電極12の炉外側端部に設置し、該受振センサにより受振した波形に基づいて波形計測装置46により炉底電極長さH5を算出する。炉底電極12は、炉底耐火物とともに浸食するため、算出した炉底電極長さH5と、予め求めた初期距離Hとを比較することにより炉底耐火物の浸食量が求められる。
本参考例2によれば、炉内に作業員が侵入することなく炉底耐火物厚さを測定することが可能である。また、溶融炉10の運転中、休炉中の何れにも適用可能である。
図24は実施例3に係る装置の全体構成を示している。溶融炉10はフレーム51により支持されている。該溶融炉10は、運転中メタルを排出する傾動時に、炉本体14の出滓口25側下方に設けられた傾動軸52を支点として、油圧駆動されるリフター(図示略)により図中矢印方向に傾動されて出滓口25より溶融メタルを排出するように構成されている。
歪ゲージ53は応力によって抵抗値が変化することにより圧力等を検出する周知のセンサである。該歪ゲージ53は応力がかかる位置、即ち溶融炉10を支持するフレーム51に取り付けられる。
炉底耐火物浸食前は、傾動の周期ごとに同じような波形を得ることができる。しかしながら、炉底耐火物が浸食すると重量が増大する曲線と傾動の周期の和の波形となる。従って、初期レベル(炉底耐火物浸食前)との差によって現状の浸食状況を把握することが可能となる。
本実施例3に係る炉底耐火物の監視方法は、運転中に実施することが可能であるため、上記した参考例1若しくは参考例2の炉底監視方法の確認として用いられることが好ましい。即ち、運転中に歪ゲージ53により連側データを測定し、参考例1若しくは実施例3における浸食予測結果と照らし合わせて妥当性を判断する。
尚、上記実施例3では、歪ゲージ53により重量を測定したが、傾動時の油圧の圧力で検知する構成としてもよい。この場合も図25と同様の波形データが得られる。
このように、参考例1若しくは参考例2の炉底監視方法に加えて、本実施例3を実施して浸食予測結果の妥当性を判断することにより、より精度の高い炉底監視が可能となる。
本実施例4は、中性子を用いてメタルを透過した中性子量からメタル層23の厚さを求める構成となっている。中性子の場合、原子量が小さい物質の方が透過しづらい性質がある。従って、原子量の大きいメタル層23は透過できるため、メタル厚さの計測に適している。
同図に示されるように、本実施例の装置構成は、固化したスラグ層を除去して露出させたメタル層23の上面に、SUS等の材料で形成した板状体65を配置し、該板状体65上に放射線源66を設ける。そして該放射線源66を設置した空間を鉄製筐体62により遮蔽し、さらに該鉄製筐体62を防爆容器61で囲繞する。前記鉄製筐体62の内部には、前記放射線源66から放射される中性子量を検出するセンサ(計数管)63が設置される。
即ち、メタル層23の厚さが増すと熱中性子が増加するので、メタル厚さxと熱中性子の量Iの相関が得られる。尚、使用上の問題として、中性子は常に放射線を発しており放射能I0が減衰するため、計測頻度が少ない場合にはメタル厚さと熱中性子線との相関のキャリブレーションをその都度行なうようにする。(αの校正)
そして、照射中性子の量I0と帰ってきた熱中性子の量Iを計測して、以下の式(5)によりメタル厚さxを推定する。
I=I0exp(−α・x) ・・・(5)
I=I0exp(−β・x) ・・・(6)
図27に実施例5に係る装置の構成を示す。本実施例の装置構成は、固化したスラグ層を除去して露出させたメタル層23の上面に、超音波を発生させる発信器(探触子)71と、該超音波を受振するセンサ(探触子)72を設置する。前記発信器71と前記センサ72は夫々計測器73に接続される。また、各探触子とメタル面には水溶性のグリスを塗り、密着させる。本実施例では、2探触子法が好適に用いられるため、発信器71とセンサ72は異なる位置に設置される。
図29に示すように本実施例6では、溶融炉10の運転を開始したら(S21)、運転中に参考例1若しくは参考例2を用いて炉耐火物の浸食量をリアルタイムで測定し(S22)、測定した浸食量に基づいて溶融炉の運転計画を修正し(S23)、運転を続行する。メンテナンス等により溶融炉10を立ち下げたら(S24)、休炉中に実施例1乃至5の何れかを用いて炉底耐火物の浸食量を詳細に測定する。測定した浸食量に基づいて、新たな溶融炉の運転計画立案若しくは運転計画の大幅修正を行う(S25)。
尚、運転中の測定方法と休炉中の測定方法は、上記した実施例から適宜選択することができる。ここでは、一例として参考例1と実施例1を用いて炉底耐火物監視を行う方法につき説明する。
このように、溶融炉10の運転中にリアルタイムで耐火物浸食量を求めるとともに、休炉中に詳細に耐火物浸食量を求めることにより、最適な運転計画を立てることが可能となり、安全で円滑な運転が可能となる。
さて、前記したように本発明に適用されるプラズマ溶融炉のメタル層23は、Cuを多く含有し比重の大きいメタル下層のCuリッチ層(比重7.6)と、Feを多く含有し比重の小さいメタル上層のFeリッチ層(比重7.0)に分かれて存在し、そして実施例5の試験10及び試験11に示す超音波検査では主に縦波型探触子が用いられ、その周波数は広帯域の超音波(2KHz〜0.7MHz)を用いているが、図32に示すように超音波波形が、波の進行方向に対して平行である縦波(P波)の超音波を使用した場合は、計測対象物に不純物や気泡、隙間等が多い場合横波などにモード変換してしまい、縦波が弱くなるために、Cuリッチ層とFeリッチ層が明りょうに分かれている場合は計測精度が低下する。(図32(a)、(b)、(c)参照)
一方、超音波波形が、波の進行方向に対して垂直であるものを横波(S波)とすると、前記した欠点が解消されると共に、特に溶融炉10のメタル層23は、メタル上層のFeリッチ層とCuリッチ層に分かれて存在している場合は、前記層境界で分離し、前記メタル上層のFeリッチ層が溶融炉10のメタル層23であると測定してしまう恐れがあるが、このような場合でも横波超音波を用いた場合は、前記した欠点が解消されることが知見できた。
一方、横波形低周波を利用した探触子は図33(b)に示すように針状であるために、140mm×105mm領域で5mm以上の大きな凹凸のみを除去することで計測可能となり、又複数の探触子から発信、受信が行われるために、伝搬波の指向性がよく、例えば炉底電極の表面中央部に指向することも容易である。(図33(b)参照)
又構成はコンパクトな装置本体と探触子のみのシンプルなもので溶融炉内にも持ち込み可能であり、扱いやすい。
更に図33の(d)で示すように計測値の読みとりはある程度の読みとり範囲を指定すれば計測値のポイントは計測器が自動判定してくれるために、人による誤差がなくなる。
先ず本実施例に用いる探触子本体の構造を、図34を用いて説明する。
探触子本体50は、複数の発振探触子50Aと受振探触子50Bを左右に振り分けてそれぞれ複数個で構成されている(本実施例の場合は発振探触子50Aと受振探触子50Bの数は同数で12個ずつ)。
発振探触子50Aと受振探触子50Bの単体53はそれぞれが独立で上下動作し、スプリング55で押さえつけられる構造で、メタル層表面の凹凸面に対しそれぞれが接触する仕組みとなっている。発振探触子50Aはコネクタ57から発振回路58に電気信号が送られ、その信号により発振するための電力がケーブル56を介して振動子51に送られ、該振動子51が振動し、メタル層に横波を発生させる構造となっている。受振探触子50Bは逆に振動子51がセンサとなり、受けた振動を電気信号として受振回路59が受取り、コネクタ57に送る。発振探触子50Aと受振探触子50Bの夫々の探触子単体53は、中芯側の振動子51が発振回路58からの電気信号により振動するが、その外側が円筒ガイド54に接触しながら上下動作するため、円筒ガイド54には振動が伝わらないように振動子51の外側を防振ゴムで覆っている。
確認手順は、図35に示すとおりである。
即ち、前記プラズマ式溶融炉の炉本体と炉蓋の間にあるスリーブ(前記溶融炉上方で耐火物の浸食の影響を受けない位置)を基準位置として設定し、該溶融炉新設時にスリーブから炉底電極面までの高さh0を測定する。(ステップ1)
次に炉底電極長さheを測定し、後記する低周波横波超音波計測装置を用いて炉底電極の往復時間tより炉底電極中の音速を求める。(ステップ2)
その後メタル層の厚みが700mmとなる程度に所定時間運転してスラグ層とメタル層を堆積させた後、炉を傾動させてすぐに炉停止(停止後残存スラグ厚さ:70〜80mm)させて炉内部冷却を行う。
スラグ層の中央部位をはつり、スリーブからメタル層表面までの高さh1と炉底電極長さhe‘を測定する。(ステップ3)
これにより「h0+he」は一定であるから
「h0+he」=「h1+he‘」+h(メタル厚さ)となり、
前記式よりh(メタル厚さ)が求まる(ステップ4)。
次に、低周波横波超音波計測装置で炉中心のメタル厚さを計測し、それと上記メタル厚さ実測値から炉中心でのメタル層中の音速を得る。(低周波超音波による音速2539m/s)
この音速を使って各点((2)−1及び(2)−3)のメタル厚さを求めた(ステップ5)ところ、その精度は±0〜−2.1%以内と極めて精度のよいことが確認された。(図36参照)
尚、図35(b)に示すように、溶融炉10のメタル層23は、メタル上層のFeリッチ層とCuリッチ層に分かれて存在しているために前記層境界でも反射波があり、2つの値(図36内参照)が得られた。
尚、比較例として弾性波レーダシステムを用いてインパクタによる弾性波(縦波)を発生させて音速の確認と(直接波による音速は出滓口付近が最も大きく約2840m/sであり、これを採用した。)各点((2)−1及び(2)−3)のメタル厚さを求めたところ弾性波レーダシステムはメタル上層200mm付近の層の影響によりメタル層底面のレンガ境界からの信号を確認することができなかった。
尚、使用計測器は下記の通りである。
(1)低周波横波超音波計測装置:低周波横波超音波(周波数:55KHz)
・送受信デバイス:12個のスプリング付インパクト針(アンテナアレイ)寸法:〔本体〕245×120×40mm、〔アンテナアレイ〕145×90×75mm
(2)弾性波レーダシステム(アプライド・リサーチ社、iTECS−5)
・弾性波による速度・厚さ測定
・送受信デバイス:〔送信〕インパクタによる弾性波発生〔受信〕加速度センサ・寸法:〔本体〕290mm×200mm×70mm
11 主電極
12 炉底電極
14 炉本体
16 鉄皮
17 炉底
18、19 炉底レンガ
20 被処理物投入口
22 スラグ層
23 メタル層
25 出滓口
28 放射温度計
30 浸食量算出装置
35’ 打診−受振装置
36、46 波形計測装置
37、37a、37b 受振センサ
38 挿入孔
39 補助電極
40 測定孔
45 発振装置
46 波形測定装置
51 フレーム
53 歪ゲージ
61 防爆容器
62 鉄製筐体
63、67 センサ(計数管)
66 放射線源
71 超音波発信器(探触子)
72 受振センサ(探触子)
73 超音波計測器
Claims (23)
- 炉内に投入された被処理物を溶融処理することにより、炉底にスラグ層と、その下方にメタル層とが堆積された溶融炉にて、炉底耐火物の浸食量を測定する溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法において、
前記溶融炉上方で耐火物の浸食の影響を受けない位置を基準位置に設定し、
前記溶融炉の運転前に、前記基準位置から炉底電極面までの初期距離h0を測定しておき,前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去してメタル面を露出させ、前記基準位置からメタル面までの距離h1を測定して前記メタル層の厚さであるメタル厚さhを非破壊で計測することを特徴とする溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。 - 炉内に投入された被処理物を溶融処理することにより、炉底にスラグ層と、その下方にメタル層とが堆積された溶融炉の炉底耐火物浸食検知装置において、
前記溶融炉上方で耐火物の浸食の影響を受けない位置を基準位置に設定し、
前記溶融炉の運転前に、前記基準位置から炉底電極面までの初期距離h0を測定しておき,前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去して前記メタル面を露出させ、前記基準位置からメタル面までの距離h1を測定してメタル厚さhを計測する非破壊検査装置を備え,該非破壊検査装置にて炉底耐火物の浸食を検知することを特徴とする溶融炉の炉底耐火物浸食検知装置。 - 前記溶融炉の運転停止前に該溶融炉を傾動し,前記スラグ層と,前記メタル層のうちFeを多く含有する上層の少なくとも一部とを排出した後,該溶融炉を元の水平状態に戻して急冷した後にメタル厚さhを非破壊で計測することを特徴とする請求項1記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 前記溶融炉を支持するフレームに歪ゲージを設置し、該歪ゲージにて検出された時系列的な重量変化を示す連続データに基づいて、メタル厚さhを求め,請求項1若しくは3にて算出された前記炉底耐火物の浸食量の測定精度を確認することを特徴とする溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 炉内に投入された被処理物を溶融処理することにより、炉底にスラグ層と、その下方にメタル層とが堆積された溶融炉にて、炉底耐火物の浸食量を測定する溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法において、
請求項1記載の炉底耐火物浸食検知方法とともに、溶融炉を支持するフレームに歪ゲージを設置し,該歪ゲージにて検出された時系列的な重量変化を示す連続データに基づいて、メタル厚さhを求めることを特徴とする溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。 - 前記メタル面に2k〜0.7MHzの範囲の低周波超音波を発振探触子から発振し,該発振した超音波を前記メタル層底面側の耐火物境界面から反射させて得た反射波を受振センサで受振して得たメタル層の往復時間と,予め得たメタル層中の音速とに基づいてメタル厚さhを求めることを特徴とする請求項1記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去して前記メタル面を露出させ、該露出させた該メタル面に、2k〜0.7MHzの範囲の低周波超音波を発振する発振探触子と、該探触子より発振した超音波をメタル層底面側の耐火物境界面から反射させて得た反射波を受振する受振センサを併置し、
前記発振探触子より発振した超音波を、前記メタル層底面側の耐火物境界面から反射させて得た反射波を受振センサで受振して得たメタル層の往復時間と、予め得たメタル層中の音速とに基づいてメタル厚さhを求めることを特徴とする請求項2記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知装置。 - 前記超音波は、横波超音波であることを特徴とする請求項6記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 前記超音波は、横波超音波であることを特徴とする請求項7記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知装置。
- 前記発振探触子と受振センサは、それぞれ同数の複数対配設され、探触子はそれぞれが接触面方向に押圧力が付勢されて独立で上下動作し、メタル層表面の凹凸面に追従してそれぞれが接触する探触子であることを特徴とする請求項9記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知装置。
- メタル厚さhの測定が弾性波により行われるものであることを特徴とする請求項1記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 請求項2記載の非破壊検査装置が弾性波による検査装置であることを特徴とする溶融炉の炉底耐火物浸食検知装置。
- 溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去して前記メタル面を露出させ、前記弾性波を受振する受振センサを一定間隔で直線上に複数配置し,該複数の受振センサにより検出した複数の波形データに基づいて表面探査計測法を用いて前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項11記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去して前記メタル面を露出させ、前記メタル層の水平方向を伝播する弾性波を発振させる打振装置と該打振装置より発振した弾性波を受振する受振センサを備え,前記弾性波を受振する前記受振センサを一定間隔で直線上に複数配置し,該複数の受振センサにより検出した複数の波形データに基づいて表面探査計測法を用いて前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項12記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知装置。
- 前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去してメタル面を露出させ、該メタル面から中性子を照射し、前記メタル層を透過して該中性子照射側に戻ってきた熱中性子量若しくは前記メタル層を透過して対向面に到達した熱中性子量を計測し、予め求めておいた前記メタル厚さhと熱中性子量の相関関係から前記メタル厚さhを求めることを特徴とする請求項1記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去してメタル面を露出させ、該メタル面から中性子を照射する放射線源と、前記メタル層内で変化した熱中性子の量を検知する計数管を装備し,前記メタル面から中性子を照射し、前記メタル層を透過して該中性子照射側に戻ってきた熱中性子量若しくは前記メタル層を透過して対向面に到達した熱中性子量を計測し、予め求めておいた前記メタル厚さhと熱中性子量の相関関係から前記メタル厚さhを求めることを特徴とする請求項2記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知装置。
- 炉内に投入された被処理物を溶融処理することにより、炉底にスラグ層と、その下方にメタル層とが堆積された溶融炉にて、炉底耐火物の浸食量を測定する溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法において、
前記溶融炉上方で耐火物の浸食の影響を受けない位置を基準位置に設定し、前記溶融炉の運転前に該基準位置からメタル層と炉底耐火物の境界面までの初期距離h0を計測しておき、
前記溶融炉の運転休止前に前記溶融炉の炉頂部から垂下される主電極を炉底耐火物近傍まで降下させ、
運転を休止しスラグ層及びメタル層が固化した後、前記基準位置からスラグ層表面までの距離h3を測定するとともに、前記主電極のスラグ層及びメタル層埋設部位の少なくとも一部を高さ方向に削孔して炉底耐火物境界面まで連通する測定孔を形成し、該測定孔によりスラグ層及びメタル層の積層厚さh4を測定し、前記距離h3と前記積層厚さh4の計と、前記初期距離h0とを比較することにより炉底耐火物の浸食量を求めることを特徴とする請求項1記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。 - 前記メタル厚さhを求める前段で、該メタル層の水平方向を伝播する低周波超音波の速度から前記メタル層固有の低周波超音波の速度を計測し、該低周波超音波の速度を用いてメタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項6又は請求項8記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 前記メタル厚さhを求める前段で、該メタル層の水平方向を伝播する弾性波の速度から前記メタル層固有の弾性波の速度を計測し、該弾性波の速度を用いて前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項11又は請求項13記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 前記超音波の反射位置が同一となるように複数の発振装置とこれに対応した受振センサとを距離を異ならせて設置するとともに、前記反射位置の直上に発振部と受振部を備えた発振装置を設置し、前記受振センサにて得られた複数の波形データと、前記受振部にて得られた反射波到達時間とに基づいて前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項6又は請求項8記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 前記弾性波の反射位置が同一となるように複数の発振装置とこれに対応した受振センサとを距離を異ならせて設置するとともに、前記反射位置の直上に発振部と受振部を備えた発振装置を設置し、前記受振センサにて得られた複数の波形データと、前記受振部にて得られた反射波到達時間とに基づいて前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項11又は請求項13記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 前記波形データから速度波形を取得し、該速度波形から直接波を抽出するとともに、前記反射波到達時間に基づいて反射波を抽出し、前記反射波の平均速度及び深さをパラメータとして回帰計算によるフィッティング処理することにより前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項20又は請求項21記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
- 前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去してメタル面を露出させ、前記基準位置からメタル面までの距離h1と前記炉底電極の長さheを測定して得た中心メタル厚さと、発振探触子から発振した低周波超音波又は横波超音波又は弾性波を、炉底電極表面から反射させて得た反射波を受振センサで受振して得たメタル層の往復時間と、によりメタル層中の音速を求めることを特徴とする請求項6,8,11のいずれか一項に記載の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
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