JP5434644B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に係り、特に磁区細分化処理を施すことにより鉄損特性を改善した方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、主として変圧器等の鉄心として使用され、その磁気特性の改善が常に要求されている。とりわけ鉄損の低減は省エネルギーの観点から極めて重要であり、昨今省エネルギー化の要請が高まる中、更なる鉄損の低減が必須とされている。
方向性電磁鋼板の一般的な製造工程は次のとおりである。Si:2〜4mass%程度含有する鋼を熱間圧延、次いで熱延板焼鈍し、1回もしくは中間焼鈍をはさむ2回の冷間圧延工程により最終板厚に仕上げた冷延鋼板を得る。次いで脱炭焼鈍により一次再結晶を行った後、例えばMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して仕上げ焼鈍を施す。仕上げ焼鈍工程では、まず二次再結晶焼鈍を施すことにより{110}<100>方位を持った二次再結晶を発達させ、更に純化焼鈍を施すことにより不純物を除去する。以上の工程により、結晶組織がゴス方位に高度に集積され、且つ、磁気の流れの妨げとなる不純物や析出物が低減される。また、仕上げ焼鈍時にはフォルステライト等が形成されるが、必要に応じて更に絶縁コーティング被膜を形成することにより、最終製品としての方向性電磁鋼板が得られる。
以上のように、方向性電磁鋼板では、鋼板のゴス方位集積度を高めること、並びに、最終製品としての電磁鋼板に存在する不純物や析出物を低減することによりヒステリシス損を抑制し、方向性電磁鋼板の鉄損が低減されている。しかしながら、ヒステリシス損の抑制のみによって鉄損を十分に低減することはできず、鉄損の更なる低減に有効な技術として磁区細分化処理が挙げられる。
二次再結晶焼鈍によりゴス方位に大きく成長した結晶粒は大きな磁区幅を有するが、磁区幅が大きいと磁化する際に鋼板中に生じる渦電流の増大に伴い鉄損特性は低下する。そこで、仕上げ焼鈍後の方向性電磁鋼板に歪み等を付与する磁区細分化処理を施し、磁区幅を狭くすることにより、上記渦電流に起因する鉄損が抑制され、鉄損の更なる低減が可能となる。
磁区細分化処理技術に関し、例えば特許文献1では、仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板の表面に、圧延方向にほぼ直角にレーザービームを数mm間隔で照射し、鋼板表層に高転位密度領域を形成することにより磁区幅を細分化して鉄損を低減する技術が提案されている。また、特許文献2では仕上げ焼鈍済みの方向性珪素鋼板の圧延方向とほぼ直角な向きにプラズマ炎を照射する技術が、更に、特許文献3では仕上げ焼鈍された方向性電磁鋼板の表面に、金属粒、合成樹脂粒等の粒状体を投射する技術がそれぞれ提案されている。
特公昭57−2252号公報 特開昭62−96617号公報 特開昭58−16027号公報
しかしながら、特許文献1に提案された鋼板表面にパルスレーザーを照射する技術では、パルスレーザー照射スポットの走査に精密な光学系を要する等、パルスレーザー照射装置の構成が複雑かつ高価であるという問題があった。
一方、特許文献2で提案されているようにプラズマトーチを鋼板に対して相対的に移動させることによりプラズマ炎を放射する技術では、パルスレーザー照射装置のような複雑かつ高価な設備は不要となる。しかしながら、プラズマ炎の温度はプラズマトーチのノズル出口からの距離に大きく依存するため、プラズマトーチと鋼板との間隔変動により鉄損低減効果が大きく変動するという問題があった。
また、特許文献3で提案されているように、鋼板表面に金属粒、合成樹脂粒等の粒状体を投射する粒子投射技術では、粒子を鋼板表面上の所望の領域に衝突させることが困難である。すなわち、粒子の照射領域を狭めるスリット状のマスクを使用する等、粒子の照射領域を制御する方法が必要となり、生産効率性が低下する問題が見られた。
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、高価な設備を用いることなく、簡便且つ効率的に磁区細分化処理を施し、鉄損を低減することが可能な方向性電磁鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、高価な設備を要しない手段として方向性電磁鋼板表面に高圧流体を噴射して磁区細分化処理を施す手段を採用し、高圧流体が噴射される領域に付与される圧力(以下、単に射出圧力とも称する)を方向性電磁鋼板の降伏応力に応じて規定することにより、高圧流体の適正な供給の下に鉄損を効率的に低減することができるという新たな知見を得た。また、高圧流体を噴射するノズルのノズル孔径と、方向性電磁鋼板表面−ノズル間の距離との比率を、所望の値に設定することにより、方向性電磁鋼板に噴射される高圧流体を、磁区細分化処理に適した噴射形態に調整できることを新たに知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)仕上げ焼鈍を経た後、張力絶縁被膜を形成した方向性電磁鋼板に高圧流体を噴射するに際し、高圧流体を噴射するノズルを前記方向性電磁鋼板の圧延方向を横切る向きへ線状に走査させ、且つ、前記方向性電磁鋼板の表面の高圧流体が噴射される領域に付与される圧力が前記方向性電磁鋼板の降伏応力の0.5倍以上2倍以下となるように、前記高圧流体を前記方向性電磁鋼板の表面に噴射し、さらに、前記高圧流体を噴射するノズルのノズル孔の孔径a(mm)と、前記方向性電磁鋼板の表面の前記高圧流体が噴射される領域と前記ノズル孔との距離b(mm)との比率b/aを110以上2000以下とすることを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
(2)前記高圧流体が噴射される領域に付与される圧力を前記方向性電磁鋼板の降伏応力の0.7倍以上とすることを特徴とする、前記(1)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法によると、高価な設備を用いることなく、簡便且つ効率的に磁区細分化処理を施すことが可能となる。そのため、本発明は、鉄損が十分に低減された方向性電磁鋼板を安価に製造する上で極めて有益である。
本発明の方法に用いる高圧流体噴射装置の一例を示す図である。 方向性電磁鋼板の表面において、歪みが導入される領域を示す図である。 高圧流体の射出圧力が、方向性電磁鋼板の鉄損改善量に及ぼす影響を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、仕上げ焼鈍を経た後、張力絶縁被膜を形成した方向性電磁鋼板に高圧流体を噴射するに際し、方向性電磁鋼板の表面の高圧流体が噴射される領域に付与される圧力を前記方向性電磁鋼板の降伏応力の0.5倍以上2倍以下とし、前記ノズルを前記方向性電磁鋼板の圧延方向を横切る向きへ線状に走査させることを特徴とする。
本発明は、仕上げ焼鈍を経た後、張力絶縁被膜を形成した方向性電磁鋼板、すなわち、二次再結晶焼鈍(仕上げ焼鈍)により結晶粒がゴス方位に成長して大きな磁区幅を有する方向性電磁鋼板に対し、高圧流体を噴射して方向性電磁鋼板表面に歪みを導入することにより、磁区幅を細分化して方向性電磁鋼板の鉄損を低減する技術である。
本発明が対象とする方向性電磁鋼板は、その種類を問わず公知の方向性電磁鋼板を対象とすることができ、例えば、C:0.08mass%以下、Si:2〜4mass%、Mn:0.005〜1.0mass%等を含む方向性電磁鋼板が挙げられる。
方向性電磁鋼板の仕上げ焼鈍までの製造工程についても、公知の方法が利用できる。例えば、所定の成分組成を有するスラブを加熱後、熱間圧延を行い、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施した後、一次再結晶焼鈍を行ない、二次再結晶を目的とした仕上げ焼鈍が施される。なお、仕上げ焼鈍後の鋼板表面には通常、フォルステライト被膜が形成される。
上記フォルステライトは張力絶縁被膜として機能するが、フォルステライトの上層に、
公知の張力絶縁被膜を形成することができる。例えば、金属酸化物、 金属酸化物の水和物、 金属水酸化物、シュウ酸塩、 炭酸塩、 硝酸塩、 硫酸塩、 あるいはこれらの複合体など、焼付け後にセラミックスとなる粒子を原材料とする。セラミックスの材質は限定されないが、酸化アルミニウム、酸化珪素、 酸化チタン、コーディエライト、ムライト、スピネル、ジルコン等が好適に用いられる。これらは、無機溶液、 有機溶液、 無機有機複合溶液として用いられることが多い。具体的には、 リン酸−(クロム酸)−コロイダルシリカを主成分とする液、リン酸アルミニウム−(無水クロム酸)を主成分とする液、リン酸マグネシウム−(無水クロム酸)を主成分とする液、リン酸アルミニウム−(無水クロム酸)−コロイダルシリカを主成分とする液、リン酸マグネシウム−(無水クロム酸)−コロイダルシリカを主成分とする液、酸化アルミニウム−酸化ほう素系複合被膜またはほう酸アルミニウム質被膜が得られるアルミナゾルとほう酸とを含む微粒子分散液等があげられる。特にリン酸アルミニウムまたはリン酸マグネシウムとシリカを主成分とするガラス質の張力絶縁被膜を形成することが好ましい。その形成方法については特に問わず、例えば、仕上げ焼鈍後の方向性電磁鋼板表面に絶縁被膜処理液を塗布し、400〜900℃程度に加熱する焼付け処理を施す方法等、従前の方法に従い形成することができる。また、二次再結晶焼鈍時にフォルステライトを形成することなく上記ガラス質等の張力絶縁被膜のみを素地鋼板に形成することもできる。
本発明においては、仕上げ焼鈍が施され、張力絶縁被膜が形成された後の方向性電磁鋼板に対して高圧流体を噴射する必要がある。本発明では高圧流体を噴射して方向性電磁鋼板表面に所望の歪みを導入することにより磁区幅を細分化する。ここで、先述のとおり高温加熱処理を伴う仕上げ焼鈍および絶縁被膜形成を高圧流体噴射後に施すと、高圧流体により導入された歪みが加熱処理によって緩和または完全に除去されてしまう。そのため、本発明では、仕上げ焼鈍が施され、張力絶縁被膜が形成された後の方向性電磁鋼板に対して高圧流体を噴射する。
また、磁区細分化処理を施す前の方向性電磁鋼板については、二次再結晶のゴス方位集積度が高いほど、磁区細分化処理後の鉄損特性に優れることが知られている。そのため、本発明は、高圧流体を噴射する前の方向性電磁鋼板(仕上げ焼鈍を経た後、張力絶縁被膜を形成した方向性電磁鋼板)として、B8(800A/mで磁化したときの磁束密度)が1.88T以上、より好ましくは1.92T以上のものに適用することが、特に有効である。
先述のとおり、高圧流体の噴射は方向性電磁鋼板表面に歪みを導入することを目的とするものであるが、歪みの導入に適した高圧流体の射出圧力は方向性電磁鋼板の降伏応力に依存する。ここで、本発明者らは、方向性電磁鋼板表面に噴射する高圧流体の射出圧力を、方向性電磁鋼板の降伏応力に応じて規定する必要があることを新たに知見した。更に、本発明者らは、後述の実施例および図3に示すように、方向性電磁鋼板表面に高圧流体を噴射するに際し、高圧流体の射出圧力が方向性電磁鋼板の降伏応力の0.5倍以上2倍以下にすると鉄損が好適に改善されることを新たに知見した。
射出圧力が方向性電磁鋼板の降伏応力の0.5倍に満たないと、方向性電磁鋼板表面に歪みを残留させることができない。一方、射出圧力が降伏応力の2倍を超えると、方向性電磁鋼板表面に導入される歪みが過大となるため、鉄損が却って劣化したり、更には方向性電磁鋼板に亀裂が生じる等の支障をきたす。
更に、本発明においては、前記ノズル孔の孔径a(mm)と前記距離b(mm)との比率b/aを110以上2000以下とする。b/aが110に満たないと、高圧流体が液滴状に分散せずに連続流となり易く、方向性電磁鋼板表面に負荷する衝撃力が小さくなり、歪み導入効果が低下する。そのため、前記ノズルを鋼板幅方向に走査しながら高圧流体を噴射するに際し、適度な歪みを導入するためにはノズル走査速度を低減することが余儀なくされ、生産効率の低下が懸念される。
一方、b/aが2000を超えると、ノズルから噴射する高圧流体が広く分散し、方向性電磁鋼板表面への歪み導入領域が広くなり過ぎるため、鉄損の劣化が懸念される。また、同時に、高圧流体が方向性電磁鋼板表面に衝突する際の衝突速度も低下するため、方向性電磁鋼板表面への歪み導入効果が低下する恐れもある。なお、b/aは110以上とすることが、鋼板表面ではね返った水流により噴流全体が乱されるおそれがなくなる。
高圧流体の噴射は、切断加工装置等と同様な公知の装置を用いて行うことができ、その一例の概略図を図1に示す。例えば、図1に示す高圧流体噴射装置1では、方向性電磁鋼板Sの幅方向に移動可能に設置され、且つその先端部にノズル2を具えた高圧流体噴射ヘッド3を有し、流体貯留タンク4からポンプ5により昇圧された高圧流体が導管6を通じて高圧流体噴射ヘッド3に供給され、高圧流体噴射ヘッドの先端に具えたノズル2から高圧流体wを噴射する構成を有する。また、高圧流体噴射位置Aの下部には、方向性電磁鋼板Sを下方から支持する支持部材7を設け、高圧流体噴射時に方向性電磁鋼板Sの折れや曲がりを抑制することが好ましい。なお、支持部材7としては、硬質・平滑なテーブル、ベルト、ロール等が適用可能である。
ノズル2は、ノズル孔径aのノズル孔が形成されており、ノズル孔から高圧流体が噴射される。また、本発明におけるノズル孔の形状は円形が好ましいが、楕円形や、三角形、矩形などの多角形等、種々の形状とすることができる。なお、ノズル孔の形状が矩形等の円形以外である場合のノズル孔径aは、そのノズル孔面積を円に換算した際の円相当径とする。
送り出しコイル8から巻き戻される方向性電磁鋼板Sは、ノズル孔から距離b(mm)を置いた高圧流体噴射位置Aを通過するように搬送され、高圧流体噴射後の方向性電磁鋼板Sは巻き取りコイル9に巻き取られる。なお、図中の矢印は方向性電磁鋼板Sの搬送方向を示す。方向性電磁鋼板Sが高圧流体噴射位置Aまで搬送されると、方向性電磁鋼板Sの搬送を停止し、ノズル2を方向性電磁鋼板Sの圧延方向を横切る方向、例えば方向性電磁鋼板Sの圧延直交方向(図1においては、紙面垂直方向)の一端から他端へ走査しながらノズル2から方向性電磁鋼板Sに向けて高圧流体wを噴射する。かかる操作により、方向性電磁鋼板Sの表面の圧延直交方向に延びる線状の領域に歪みが導入される。なお、ノズル2の走査速度は100mm/s以上5000mm/s以下に設定することが好ましい。なぜなら、100mm/s未満であると処理時間が長くなって生産性が低下し、5000mm/sを超えると、歪導入効果が低減するおそれがある。
次いで、方向性電磁鋼板Sを再び矢印方向へ所定距離だけ搬送して停止し、ノズル2を方向性電磁鋼板Sの圧延方向を横切る方向、例えば方向性電磁鋼板Sの圧延直交方向(図1においては、紙面垂直方向)の一端から他端へ走査しながらノズル2から方向性電磁鋼板Sに向けて高圧流体wを噴射する。以上の操作を繰り返すことにより、図2に示すように、方向性電磁鋼板Sの表面に、圧延直交方向に延びる線状の歪み導入領域s1が、方向性電磁鋼板Sの圧延方向に所定の間隔d0を置いて形成される。
なお、鋼板を搬送する動きに同期して、鋼板の搬送方向にもノズルが動くようにしておけば、ノズルの走査時に、鋼板を停止せずに方向性電磁鋼板Sの表面に、圧延直交方向に延びる線状の歪み導入領域s1を形成することもできる。
方向性電磁鋼板Sの寸法、磁気特性等にも依存するが、歪み導入領域s1の方向性電磁鋼板S圧延方向の幅d1は0.5mm以下とすることが好ましい。また、歪み導入領域s1の間隔d0は2mm以上20mm以下とすることが好ましい。なお、歪み導入領域s1は、方向性電磁鋼板Sの片面のみに形成してもよく、両面に形成してもよい。
高圧流体wの種類は特に問わず、例えば取り扱いが容易な水等が好適に使用される。また、噴出粒の分散を抑制する目的で、水等の流体にポリマーを含有させることができる。方向性電磁鋼板Sへの衝突圧力を高める目的で、高圧流体よりも比重の大きい微細粒子を水等の流体に含有させることもできる。更に、方向性電磁鋼板Sのエッジ部や被膜損傷部における発錆を抑制する目的で、水等の流体に防錆剤を含有させることもできる。
高圧流体噴射により歪みが導入され、磁区細分化された方向性電磁鋼板には、必要に応じて更に絶縁被膜を形成してもよい。ただし、磁区細分化処理後に絶縁被膜を形成する場合には、絶縁被膜形成時の鋼板加熱温度を約500℃以下に抑制し、導入した歪みが緩和しないようにする必要がある。
以上では、図1に示すように、方向性電磁鋼板Sをその長手方向が水平になるように支持し、方向性電磁鋼板Sの表面に対して高圧流体が垂直方向に噴射する形態を例示して本発明について説明したが、本発明がかかる形態に限定されるものではない。例えば、方向性電磁鋼板Sをその長手方向が垂直或いは任意の角度となるように支持することもできる。また、方向性電磁鋼板Sの表面に対する高圧流体の噴射方向も任意の方向に設定することが可能であり、方向性電磁鋼板Sの表面法線方向から45°の範囲内で任意に設定することが好ましい。
(試験1)
C:0.06mass%、Si:2.9mass%、Mn:0.07mass%を含有する組成を有する方向性電磁鋼板(鋼板A)と、
C:0.06mass%、Si:3.4mass%、Mn:0.07mass%を含有する組成を有する方向性電磁鋼板(鋼板B)を、供試材として用意した。
何れの供試材も板厚:0.23mmであり、仕上げ焼鈍で形成されたフォルステライト被膜を有する。また、フォルステライト被膜の上には、リン酸マグネシウムとコロイド状シリカを主成分とする絶縁被膜処理液を塗布した後、830℃の焼付け処理を施すことにより形成された張力絶縁被膜(厚さ:約1μm)を有する。
また、各々の供試材について、エプスタイン試験により鉄損W17/50(商用周波数50Hzで17Tに励磁した際の鉄損)を測定したところ、鋼板A:0.92W/kg、鋼板B:0.89W/kgであった。また、各々の膜付き供試材について、圧延直交方向に切り出した試験片を用い、JIS Z 2241(1998)に準拠した引張り試験により降伏応力を求めたところ、鋼板A:290MPa、鋼板B:350MPaであった。
上記2種類の供試材に対し、図1に示す装置を用い、ノズルを鋼板の幅方向に走査速度:100mm/sで走査させながら高圧水を噴射することにより、供試材表面に、図2に示すような複数の線状の歪み導入領域s1(d0=7mm,d1=約0.3mm)を形成した。高圧水は、直径a=0.09mmのダイヤモンド製オリフィスからなる円形状のノズル孔から噴射した。また、供試材表面の高圧水噴射領域とノズル孔との距離bを60mmに設定し、高圧水が供試材上方から鋼板表面に垂直に入射するように高圧水を噴射した。
上記条件の下、高圧水の射出圧力を種々の値に変更して歪み導入領域s1を形成した。歪み導入領域s1形成後の供試材について、エプスタイン試験により鉄損W17/50を測定し、歪み導入前の鉄損測定値からの減少量を求め、鉄損特性の改善効果について評価した。評価結果を図3に示す。
図3より明らかなように、高圧水の射出圧力が本発明の範囲、すなわち、供試材の降伏応力の0.5倍以上2倍以下である射出圧力で噴射された供試材では、大きな鉄損改善効果が認められる。また、高圧水の射出圧力が供試材の降伏応力の0.7倍以上である場合には、より顕著な鉄損改善効果が認められる。
(試験2)
(試験1)の方向性電磁鋼板(鋼板B)と同一の供試材を用意し、図1に示す装置を用い、ノズルを鋼板の幅方向に走査速度:100mm/sで走査させながら高圧水を噴射することにより、供試材表面に、図2に示すような複数の線状の歪み導入領域s1(d0=7mm,d1=約0.3mm)を形成した。高圧水は、直径a=0.12mmのダイヤモンド製オリフィスからなる円形状のノズル孔から噴射した。また、高圧水の射出圧力を400MPaとし、供試材上方から鋼板表面に垂直に入射するように高圧水を噴射した。なお、上記射出圧力は、供試材の降伏応力の1.2倍である。
上記条件の下、供試材表面の高圧水噴射領域とノズル孔との距離bを種々の値に変更して歪み導入領域s1を形成した。歪み導入領域s1形成後の供試材について、エプスタイン試験により鉄損W17/50を測定し、歪み導入前の鉄損測定値からの減少量を求め、鉄損特性の改善効果について評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 0005434644
表1より明らかであるように、前記孔径a(mm)と前記距離b(mm)との比率b/aが110以上2000以下である場合において、鉄損特性の改善が顕著に認められる。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法によると、高価な設備を用いることなく、簡便且つ効率的に磁区細分化処理を施すことが可能となり、鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板を工業的に量産する上で極めて有用である。
1 … 高圧流体噴射装置
2 … ノズル
3 … 高圧流体噴射ヘッド
4 … 流体貯留タンク
5 … ポンプ
6 … 導管
7 … 支持部材
8 … 送り出しコイル
9 … 巻き取りコイル
S … 方向性電磁鋼板
w … 高圧流体

Claims (2)

  1. 仕上げ焼鈍を経た後、張力絶縁被膜を形成した方向性電磁鋼板に高圧流体を噴射するに際し、高圧流体を噴射するノズルを前記方向性電磁鋼板の圧延方向を横切る向きへ線状に走査させ、且つ、前記方向性電磁鋼板の表面の高圧流体が噴射される領域に付与される圧力が前記方向性電磁鋼板の降伏応力の0.5倍以上2倍以下となるように、前記高圧流体を前記方向性電磁鋼板の表面に噴射し、さらに、前記高圧流体を噴射するノズルのノズル孔の孔径a(mm)と、前記方向性電磁鋼板の表面の前記高圧流体が噴射される領域と前記ノズル孔との距離b(mm)との比率b/aを110以上2000以下とすることを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記高圧流体が噴射される領域に付与される圧力を前記方向性電磁鋼板の降伏応力の0.7倍以上とすることを特徴とする、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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