近年、直径5〜100μmの微粒子気泡液(マイクロバブル液)や空気等の空気含有流体を地盤中に注入して地盤を不飽和化して、液状化を防ぐ方法が提案されている(特許文献1、特許文献2、図1参照)
この方法は地盤にマイクロバブルや空気を注入することにより、地震動によるせん断力に対して気体体積収縮機能が効果的に生じ間隙水圧の上昇を抑え経済的に液状化防止を可能にするものである。注入による液状化対策工が対象となる地盤の土質を図2に示す。
マイクロバブル混入液や空気の注入等気体含有液の注入工法において最も実用化が困難な課題は、
(1)空気を地盤に注入したり、或は気泡含有液を地盤に注入する場合、注入量や注入速度(毎分注入量)の把握が困難であり、また空気を含む注入液のポンプによる送液や電磁流量計による計測が困難か不正確であることである。即ち注入管理が難しい。
(2)地盤中における注入した空気量の把握が困難で、従って不飽和度の把握が困難であること。
(3)地盤中に注入されたマイクロバブル又は空気が微粒子化された状態で土粒子間に保持されるかどうか不明確であり、地盤中で直ちに空気の固まりとなって地表面に逸脱してしまうかもしれないこと。
(4)注入地盤の不飽和化度の計測が困難なこと。
(5)空気含有流体を注入して一旦不飽和化した地盤が経時的に空気が対象範囲外へ漏出したり、或いは地下水中に溶解して不飽和化が低減する可能性があるという問題がある。
したがってどの程度注入すれば不飽和化効果があるか判定が難しい。なぜならば気泡や気体は地盤中でどのような挙動を示すか不明確だからである。このための気泡や気体を地盤中に注入して所定の不飽和度を満たすための設計法や注入管理方法や効果の確認法は未だ確立していない。また、不飽和化した地盤の耐久性が不明である。
本出願人の研究によれば、マイクロバブル液などの空気含有流体を用いた液状化対策工の問題点は上述した様に、
(1)マイクロバブル液や空気の地盤への注入は、従来の固結性注入液と違ってゲル化を伴わないため注入した空気含有流体がどこにいくか判らない。注入速度が大きければ土粒子間に浸透しないで地表面や粗い層に逸脱してしまい、液状化が対象となる土層に浸透しない(図3参照)。
(2)空気含有流体を土粒子間に吸着させるには空気を微粒子化して地盤中に注入しなくてはならないが、そのためには吐出速度を小さくして、土粒子間浸透させなくてはならず、施工能率が低下して実用性が得られない(図3参照)。
(3)マイクロバブル液や空気の地盤への注入は、注入ポンプによる注入や流量計による注入量や注入速度の計測が困難である。このため注入管理が難しい。
(4)マイクロバブル液や空気を地盤に注入して不飽和地盤を形成する不飽和化工法では、気体を地盤に直接注入する方法は地中の空気が固まって地表面に逸出しやすいという問題があると考えられる。マイクロバブル液を地盤に注入した場合、マイクロバブルの粒径は5μm〜100μmであって、微粒気泡(マイクロバブル)が土粒子間に吸着されやすいと考えられている(図1(c)参照)。しかし、地上のマイクロバブル発生装置でマイクロバブルを形成しても地盤中に注入された時点でマイクロバブルが形成されるかどうか不明である。マイクロバブル発生装置から注入管先端部までの管路内でマイクロバブル同士が空気の固まりになってしまっている可能性がある。
(5) 不飽和化工法は、地盤の飽和度で改良効果を評価しようとしているが、地盤中にどの程度注入すればどれだけ不飽和化するのか確認が難しい。空気による不飽和化の測定法として比抵抗値や土壌水分計で測定する方法が提案されているが、空気や気泡の地盤中における挙動が不明なため気体注入量と地盤の不飽和化の関係が不明確で注入効果地盤の全体的不飽和化の確認が難しく、従って施工管理や計画的な注入設計や効果の確認が不可能である。
(6) 注入された気体は地盤中で空気中や地下水中に逸脱したり、溶解して不飽和度が低減すると考えられるので、いつ起きるか判らない地震に対して長期にわたって不飽和化を維持するのが難しい。
本出願人はマイクロバブル液や空気(気泡注入液)の注入における以上の点を解決して本発明を完成させた。
本発明で用いる不飽和化地盤改良装置は、地下水面下の地盤に注入管を通してマイクロバブル等の空気含有流体を注入し、地盤を不飽和化する地盤改良工法に用いる地盤改良装置であって、空気含有流体を注入するための加圧注入装置と送液管と注入管とを備え、前記送液管および注入管の所定位置に所定の孔径の細孔を設け、前記送液管における注入圧力と前記細孔の孔径から定まる注入速度でした注入量から地中に開放される空気量を算定して、その値に対応した地盤の不飽和化を行うようにしたことを特徴とするものである。
また、地下水面下の地盤に注入管を通してマイクロバブル液を注入し、地盤を不飽和化する地盤改良工法に用いる地盤改良装置であって、マイクロバブル液を注入するための加圧注入装置と複数の注入管とを備え、前記空気含有流体を加圧注入装置から複数の注入管路に分配すると共に、該注入管路の注入管先端部までの注入管路の複数の箇所に細孔を設け、該細孔は所定の噴出量が得られるよう所定の孔径と所定の孔数を定めて、所定量のマイクロバブル液を地盤中に注入することで一孔当りからは少量、かつ低圧で注入し、全体からは大きな吐出量で地盤の不飽和化を行うようにしたことを特徴とするものである。
本発明の不飽和化地盤改良工法は、液状化が予想される地盤の所定領域内にマイクロバブル液などの空気含有流体を地下水面下の地盤に注入管を介して注入して地盤を不飽和化することにより液状化を防止する地盤改良工法において、マイクロバブル液などの空気含有流体を注入するための加圧注入装置と送液管と注入管とを備えた地盤改良装置を用い、前記送液管および注入管の所定位置に所定の孔径の細孔を設け、地下水面下の地盤に前記送液管における注入圧力と前記細孔の孔径から定まる注入液量を注入し、地中に開放される空気量による地盤の不飽和化を行うことを特徴とするものである(図2、図3、図4、図5)。
一般の注入では低圧で注入されることが必要なため、注入管路の先端部の細孔の孔径と数は、それ自体による圧力を生じないように低圧で浸透できるように、その面積の合計が管の断面よりも大きく設定されている。この場合を非オリフィス吐出口と称する。
それに対して本発明では、注入管路先端部の細孔の孔径と数は、その面積の合計が注入管路の断面積よりも小さくして、それ自体で管内圧力が充分保たれるようにする。この場合、地盤中への吐出量は注入管内圧力と細孔の孔径と数と地盤の浸透抵抗圧によって定まる。この場合をオリフィス吐出口と称する。
管内圧を生ずる細孔の位置は注入管路の先端吐出部でなく、先端吐出部でない注入管路の分岐部とかし、注入管路の途中に設けて、細孔の上流側で充分な圧力を生ずるようにしてもよい(この場合の細孔はオリフィスと称する)。
この場合でもオリフィス通過後の空気が注入管内で固まることなく微粒子化状態で空気含有液を地盤中に注入するためには、注入管先端部の吐出口に複数の細孔(非オリフィス吐出口)を設けるのが好ましい。勿論、この非オリフィス吐出口の代わりにオリフィス吐出口を設けてもよい。
注入管路の地上部にオリフィスを設けて、その下流側に圧力計、流量計を設ければ、その計測値は地盤に注入される注入液の注入圧、流量を示すので、注入管理上好ましい。
また、オリフィスと孔径と数と送液圧力と地盤浸透抵抗圧と吐出量の関係を予め確認しておけば浸透抵抗圧が変化しても噴出量は殆んど変わらない。領域が存在しているから(図6〜図7)、圧力計や流量計を用いなくても注入量を把握でき、従って地盤に注入された空気量、従って不飽和度を把握できる。
また、液状化が予想される地盤の所定領域内にマイクロバブル液を地下水面下の地盤に注入管を介して注入して地盤を不飽和化することにより液状化を防止する地盤改良工法において、マイクロバブル液を注入するための加圧注入装置と複数の注入管とを備えた地盤改良装置を用い、前記空気含有流体を加圧注入装置から複数の注入管路に分配すると共に、該注入管路の注入管先端部までの注入管路の複数の箇所に細孔を設け、該細孔は一定の噴出量が得られる所定の孔径と所定の孔数を定めて地下水面下の地盤に所定量のマイクロバブル液を注入することを特徴とするものである。
本発明者は、
(1)地盤に注入する空気量を管理することができれば、注入対象領域における空気量から不飽和度を把握することを見出した。
(2)流量計や圧力計を用いずとも空気量を計測できる方法を見出した。
(3)マイクロバブル液などの空気含有流体の加圧装置からの送液圧力と注入管内の圧力の差圧と、注入管に設けた細孔の孔径との関係から吐出量を把握して、地盤中に注入された空気量を把握することにより不飽和度を推定することができる(図5〜図9参照)。
(4)また注入管路中においてマイクロバブル同士が集まっていても、注入管先端部において空気含有液を微細粒子化して地盤中に注入することで、地盤中で土粒子間にマイクロバブルが保持できることに着目した。即ち注入管路中に所定量の空気量を送液して、地盤中に細粒子化して注入すればよいことが判った(図1(c)、図10(d)参照)。
(5) 空気を細粒子化するためには細孔を経なくてはならず、したがって小さな吐出量で注入しなくてはならず、施工能力が小さくなり、また、細孔からの吐出は圧力が高くなり、かつ大容量の経済的地盤改良が不可能となるが、細孔の数を増やしたり、複数の注入管から同時注入することにより、空気が逸脱しない程度の少量の注入を行いながら複数の注入管を通して同時に所定量の注入を行うことによりポンプ圧を過大にすることなく全体の噴出量を大きくすることにより、施工能率を上げることを可能にした(図3参照)。
(6)空気は地盤中で地盤を不飽和化しても、経時的に空気は周辺部に逸脱したり、地下水に溶けて不飽和度が低減することを前提として、その不飽和度の低減を防ぐとともに再注入できる方法を見出した。
本発明者は細孔から空気含有液を注入する場合の問題と、複数の細孔から空気含有液を同時注入する機能を解明することにより、上述した気体混入液の従来の課題を解決したものである。
上述したように、空気含有液はゲル化しないため、一孔当りの送液量が、少量で注入管理できなくてはならない。さもなければ、地盤に亀裂を起こしたり、対象範囲外へ逸脱してしまうからである。
従って、空気含有液をゆっくりと少量ずつ低圧で時間をかけて浸透させなくてはならない(図2、図3、図4)。このため、一孔当り、少量の送液量で複数の注入管、または吐出孔に同時に、或は連続的に送液するのが望ましい(図13〜図25)。
そのための基本的な送液システムの例を図5〜図12に示す。オリフィスによる注入原理を、図5〜図9に示す。オリフィスは通常、ポンプ圧0.01〜4MPa/cm2で、0.5〜5mmの細孔から1孔当り0.5〜10リットル/minの噴出量を得るのに適している。従って、液状化しやすい地盤に注入して破壊することなく土粒子間浸透させて、所定領域に保持させるのに適している(図2、図3、図26(d))。
図5〜図9は、オリフィスを設けた管路における送液圧力(P0)とノズル径(a)と噴出量(リットル/min)と浸透抵抗圧(P1)の関係を示す。
図5(a)は、その試験装置であり、ノズル径(a)を設けた管路を外管内に挿入してノズルの両側にパッカを設けて、外管からの管路に圧力調整弁を設け、圧力調整弁の開度を調整する構造である。
ポンプで管路内に送液して、圧力(P0)と流量を計測する。圧力調整弁の開度を調整して、ノズル径(a)から噴出した噴出液の圧力と流量を計測する。その際の圧力P1が浸透抵抗圧であり、その時の流量が噴出量である。
図5(b)は、圧力調整弁が全開した場合、すなわち、気中で送液した場合の送液圧(P0)とノズル径(a)と噴出量の関係を示す。ポンプ圧力P0が一定時ノズル径が小さい程噴出量は小さく、圧力が高く、ノズル径が大きい程噴出量は大きくなる。
図6は、オリフィスのノズル口径aと差圧ΔPと毎分噴出量の関係を示す。差圧ΔPは、ポンプの送液圧量P0とオリフィス下流の抵抗力圧力P1の差をいう。差圧が大きい程、ノズル口径が大きい程、噴出量は大きい。抵抗圧P1が大きく、送液圧力P0に近づくにつれて、噴出量は0に近づく(図7)。
図7の状態で抵抗圧力P1≒0ならばΔP=P0であるが、浸透抵抗が大きい場合はΔPが小さくなり、噴出量は小さくなる。しかし、図7、図8のようにポンプ圧(P0)にくらべて浸透抵抗圧P1が充分小さければ、抵抗圧に多少の変化があっても、噴出量はポンプ圧P0とノズル口径に対応して噴出量はほぼ一定値を得ることができる。
したがって、図9に示すように、現場地盤条件に応じて、ノズル口径やノズル数や注入管の数を複数にして、注入箇所毎に所定の噴出量の空気含有液を同時に供給することができる。
本発明では、オリフィスのほかにレギュレータ((有)光匠技研製)を用いることができる(図12、図13)。レギュレータは、上流側の圧力に対応して下流側の圧力と流量をコントロールすることができ、かつ、複数の管路に設けて、同時に圧力・流量をコントロールできるが、本発明ではレギュレータは流量・圧力可変式・オリフィスとみなして、オリフィスの一種として取り扱う。
もちろん、本発明ではオリフィスを用いなくても、コントローラにより分岐バルブを作動することにより分岐バルブのみを操作して、順次所定の注入ポイントに材料を供給することができる(図16、図18)。この場合の注入管先端部の吐出口はオリフィス吐出口である。
図16〜図18では、オリフィスを用いないで分岐バルブを作動して、V1を開いて他を閉じればV1のみから処理液が注入され、Viを開いて他を閉じればViから処理液が注入されるため、連続的にかつ選択的に処理液を注入できる。また、オリフィスを用いれば全ての注入地盤に同時注入が可能になる(図19、図20)。
また、図21、図23、図25に示す複数のユニットポンプやバルブをコントローラにより一括管理して、複数の注入箇所への同時供給や選択的に供給をすることが容易になる。この場合の注入管先端部の吐出口はオリフィス吐出口である。
図23では、複数のユニットポンプは、コントローラで一括制御されているので、複数の所定の注入箇所に、所定の吐出量で、空気含有液を同時に、または、選択的に供給できる。この場合の注入管先端部の吐出口はオリフィス吐出口である。
本発明における送液分岐管、或は送液管は、シンフレックスチューブのように直径0.5〜2.0cm程度のプラスチック製の可塑性チューブを用いることができる。また、生分解チューブを用いることによって注入後、注入管を回収することなく最終的に水と二酸化炭素に分解させることができる。
不飽和度を知るには地盤中に注入される空気の絶対値から算定しなくてはならないが、地盤中に注入されている空気量の絶対値を注入量で把握することは難しかった。何故ならば注入中に注入地盤における注入圧力は変化するため、気体が体積変化してしまうためである。また、マイクロバブル混入液も同様でマイクロバブルが注入圧力でその体積が変化してしまうからである。
本発明者は、気体含有加圧流体を流路の任意の位置に設けた細孔から噴出した場合、噴出流体の絶対量は上流側の圧力P0と下流側の圧力P1の差圧(P0−P1)と噴射口の孔径aによって決まり、注入圧P1にある程度の変化があっても、ある大きさの差圧ΔPがある限りその絶対量は殆んど変わらないことを見出した(図6、図7参照)。
従って、加圧流体の圧力と噴射口の孔径と数を所定の値に管理することにより空気の絶対量を管理することができる(図8、図9)。
また、注入管先端部に所定の孔径並びに数の噴射口(オリフィス吐出口)を設けておけば、加圧流体中の流体が空気のままでも、或はマイクロバブル発生装置で形成されたマイクロバブルが注入管先端部に至る送液管の中で、マイクロバブル液中で空気の固まりになっていても、地盤に注入されたら圧力が解放されて地盤中に微細粒子となって噴出されて土粒子間に浸透し保持されることになる(図10〜図13、図16〜図26参照)。
本発明によれば、流量計や圧力計を用いずとも空気量を計測でき、地盤に注入する空気量を管理することできれば、注入対象領域における空気量から不飽和度を把握することができる。
すなわち、マイクロバブル液などの空気含有流体の加圧装置からの送液圧力と注入管内の圧力の差圧と、注入管に設けた細孔の孔径との関係から吐出量を把握して、地盤中に注入された空気量を把握することにより、不飽和度を推定することができる。
また、注入管路中においてマイクロバブル同士が集まっていても、注入管先端部において空気含有液を微細粒子化して地盤中に注入することで、地盤中で土粒子間にマイクロバブルが保持でき、注入管路中に所定量の空気量を送液して、地盤中に細粒子化して注入すればよい。
細孔の数を増やしたり、複数の注入管から同時注入することにより、空気が逸脱しない程度の少量の注入を行いながら複数の注入管を通して同時に所定量の注入を行うことにより、ポンプ圧を過大にすることなく全体の噴出量を大きし、施工能率を上げることができる。
上述の方法で地盤の不飽和化を可能にしても地盤条件によっては経時的に空気が逸脱したり水に溶けたりして、不飽和度が低減することがあるが、その場合は再注入により再び不飽和度を上げることができる。
本発明の具体的な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1(a)は従来の空気注入工法とマイクロバブル含有液注入工法の概念を示し、図1(b)は空気注入とマイクロバブル液の併用注入を示したものである。いずれも図10、図11の注入装置で実施できる。また、図1(c)は空気塊とマイクロバブルの地下水中の挙動の特徴を示したものである。
図2(a)は地盤注入の対象となる土質の説明図であり、図2(b)、(c)は液状化し易い地盤の粒径分布を示す。
図3は注入液が土粒子間浸透をするための注入速度と注入圧の関係を示し、土粒子間浸透するための注入限界速度並びに注入限界圧力を示している。
図4は土粒子浸透におけるダルシ−則を示し、図2における地盤条件下で、図3に示すような限界速度で注入するには、注入速度を小さくしなくてはならず、特に注入管先端の細孔から或はオリフィスの細孔から注入するには吐出速度が極めて小さくなるため、複数の注入管或は複数の細孔から同時注入することにより、或は多数の細孔を有する柱状浸透源を経て注入することにより、経済的にかつ空気を微細粒子径にして土粒子間浸透させることが可能となる。
図5〜図9は、図10または図11の空気含有液加圧装置を用いて、図16の注入装置で空気或はマイクロバブル液を注入した場合の噴射口ノズルの口径aと上流側の圧力P0と下流側或は地盤の抵抗圧力P1の差圧ΔPと噴出量の関係を示す。
ここに言う噴出量とはノズルからの吐出量のことであり、ノズルとは注入管噴射部に設けた細孔(図10(d))、或は図12のレギュレ−タ内の吐出口、或は図13、図14のオリフィスを含めていう。
また、ここにいう上流側の圧力P0と下流側の圧力P1とは細孔或はオリフィスの上流側の流体圧力と下流側の圧力をいう。
図6は1つの細孔又はオリフィスからの流量は、差圧ΔPが大きい程、また細孔又はオリフィスの孔径が大きい程、噴出量が大きくなること。また、下流側の圧力が大きくなって上流側の圧力に近づくと、即ちΔPがある程度の大きさ(ΔPb)以下になると噴出量は小さくなり、ついにはゼロになることを示す。
図7は上流側の圧力P0が一定の場合、噴射量はノズル口径aが大きい程大きく、下流側の圧力または地盤の抵抗圧P1が変動してもP0とP1の差圧ΔPがある程度大きければ一定の噴出量を得ることが判る。そして下流側の圧力P1がある程度以上に大きくなりP0に近づくと、噴出量がゼロに近づくことを示す。
即ち、空気混入液において空気は圧力に応じてボイルの法則或はボイルシャルルの法則により体積が変化するので注入中の抵抗圧力P1が変化すれば体積が変化するので地盤に注入された空気の絶対量の把握が困難であるが、上流側の圧力P0と下流側の圧力P1の差圧ΔPが充分あれば、注入中に注入圧が変動してもノズル口径に対応して一定の量の空気量が地盤中に送液されることが判る。
従って、予め試験注入によって、その地盤にP0とP1の関係と、ノズル口径に対応して所定の空気含有液が地盤中に送液されるΔPの範囲を確認して、そのΔPの範囲内で注入することにより地盤中に注入された空気含有液量を流量計なしでも把握することができ、従って空気含有液中の空気含有量から地盤の不飽和率を把握でき、設計や施工が極めて容易になる。
気体は圧力や温度が変化すればボイルシャルルの法則により体積が変化する。このため通常の薬液注入に用いる流量計では空気の絶対量を管理することはできない。また、空気や気泡が混入した液体では電磁流量計で測定することが困難である。
ところで細孔を有するノズルに流体を通すと上流側の圧力P0と下流側の圧力P1の差圧ΔPがある値の範囲ならば一定量の流体を通すことができる。
下流側の圧力P1が上昇して上流側の圧力P0に近づいた場合、即ちΔP0に近づくと流量は徐々に低下するが、図2の地盤条件下での地盤注入においては、注入液が土粒子間浸透するための限界注入速度は図3の直線範囲を対象として1〜6リットル/minとなる。
このため図9並びに図13〜図21において、1吐出口当たり1〜6リットル/minとして複数の吐出口より同時注入を行えば、全体として大きな吐出速度で低圧で土粒子間浸透できる。
このため気体が地表面に逸出しにくくなる。1吐出口当たりの注入がこのような注入条件で行われるように、吐出口の口径と吐出口の数を定めればよい。
図6はノズル口径aとΔPと吐出量の関係を、図7はノズル口径とP1、P0と噴出量の関係を、図8は噴出圧力(ノズル上流側の圧)と地盤の抵抗圧と吐出量の関係を、図9はノズル複数の口径のノズル数の場合のP1とP0と噴出量の関係を示す。
送液圧力P0の場合、地盤抵抗圧力P1がP0に近づくにつれ、噴出量がゼロに近づく。
あらかじめ注入に当たって試験注入を行って、これらの関係を確認しておけば、全ての注入管から注入の流量や注入圧を1つ1つ計測しなくても、図3の限界注入圧力内で注入することが可能になる。勿論、更に流量計・圧力計で測定し、或は分岐バルブの開閉やレギュレ−タ(図13、図19、図20参照)のように孔径可変型オリフィスやオリフィスの開度をコントローラで管理することにより地盤条件に応じて任意の注入を行うことができる。
この噴出ノズルの位置は図13〜図26に示すように、複数の噴出ノズルを介して複数の注入管に分岐して地盤中に所定の吐出量で注入することができるが、図17(a)〜(d)、図22、図24〜図26のように複数結束して同時に注入することもできる。
複数の管路から注入する場合の例として図13で説明すれば、レギュレ−タを使用する場合オリフィスの上流側の圧力はP0i、細孔が十分大きい場合、オリフィス下流側の管内圧と地盤の抵抗圧は同じである。オリフィス下流側の圧力はP1iとなり、ΔPi=P0 i−P1 iとなり、この場合P1 iは地盤中における抵抗圧とみなすことができる。
図13でレギュレータがない時、オリフィス上流側の送液圧はP00、オリフィス下流側の圧力はP1iとなり、△Pi=P00−P1iである。図13でレギュレータもオリフィスもない場合、細孔が小さい場合、細孔がオリフィスの役をし(オリフィス吐出口)、細孔の上流側の送液圧がP0、地盤抵抗圧がP1となり、△P=P0−P1となる。これより前述したように空気含有液量を算出し、それにより空気量を算出し不飽和率を算出することができる。
注入管の先端部の細孔の数がいくつあって、その合計面積が注入管の断面積よりも大きい場合(非オリフィス吐出口)、細孔は、単に空気の細分化としての機能を持つ。
このようにオリフィスがない場合は細孔をオリフィスの機能を持つように、その細孔径と数を設定すればよい。
図10(a)〜(c)並びに図11(a)〜(c)は、本発明の地盤改良工法の実施に際して用いられる微細気泡(以下「マイクロバブル」)注入液生成装置の一例を示し、図10において符号1は、水またはシリカ溶液(以下「注入液」)にマイクロバブルを混入するためのマイクロバブル発生装置(渦流発生装置)、符号2はマイクロバブル発生装置1に送り込まれる注入液を入れる溶液タンク、そして符号3はマイクロバブル発生装置1において生成されたマイクロバブル注入液を地盤中に注入する注入管である。
マイクロバブル発生装置1は、動力によって高速回転する羽根車1aを内臓し(図10(c)参照)、また、溶液タンク2から延びる送液管4と空気を取り込むエア供給管5がそれぞれ接続され、さらに、マイクロバブル発生装置1内で撹拌、混合および溶解された水またはシリカ溶液と微細気泡との混合液を地盤中に注入する注入管3に延びる圧送管6が接続されている。また、送液管4、エア供給管5および圧送管6にバルブ7がそれぞれ取り付けられている。
このような構成において、マイクロバブル発生装置1内の羽根車1aが動力によって高速回転することにより、溶液タンク2から装置1内に注入液が送液管4を介して吸引され、同時にエア供給管5を介して装置1内にエアが吸引される。
そして、装置1内で高速回転する羽根車1aによって注入液と微細気泡が撹拌、混合および溶解され、かつ圧送管6を介して注入管3に圧送され、そして注入管3から地盤中に注入されることにより地盤が不飽和化される。
マイクロバブル液生成装置としては、例えば、図11(a)〜(c)に図示するようなマイクロバブル液生成装置も使用される。当該マイクロバブル液生成装置は、マイクロバブル発生装置8と給水ポンプ9とコンプレッサ−10(空気は自給でもよい)を備えて構成されている。
マイクロバブル発生装置8は、直線状をなす円形通路11aとその先端に円形通路11aより大きい内径に形成された溶液放出路11bとからなるマイクロバブルノズル11を備え、円形通路11aの後端側に気体流量調整弁(バルブ)7を介してコンプレッサ−10から延びるエア供給管5が接続され、円形通路11aの先端寄りの側部に給水ポンプ9から延びる給水管12が接続されている。給水管12の先端12aは円形通路11aの内周面の接線方向に開口している。
このような構成において、コンプレッサ−10の作動によりエア供給管5を介して円形通路11aにエアが供給され、同時に給水ポンプ9から給水管12を介して円形通路11aに加圧水が給水されると、円形通路11aの先端部分から溶液放出路11bにおいて加圧水の水流により加圧水と気体の旋回流が形成される。そして、溶液放出路11bの先端からマイクロバブル水となって放出される。なお、円形通路11aに加圧水の代わりにシリカ溶液を加圧供給することによりマイクロバブルが混入されたシリカ溶液を生成することができる。
エア供給管5から過大の空気量を送れば過飽和状態のマイクロバブル液となって地盤中でマイクロバブルに加えて空気も注入される。即ち本発明においてマイクロバブル液或いは気体含有液とはマイクロバブル含有液或いはマイクロバブルと空気を同時に混合された液を意味する。
いずれもマイクロバブルが土粒子間に吸着されるが地盤が拘束されていれば空気も地盤中に保持されやすい。また加圧水の圧力を高くすれば空気の溶存量を多くすることができる。ノズル部分で渦流を発生させることにより溶けた空気がマイクロバブルとなって地盤中に注入される。しかしマイクロバブル含有液中の空気含有量のすべてが地中にマイクロバブルとなって放出するとは限らない。注入されるマイクロバブル含有液の圧力と空気含有量や地盤中の地下水の圧力や温度等によって地中におけるマイクロバブル生成率は異なるのでそれらの条件を考慮して算出する。また製造されたマイクロバブル中の空気溶存量は後述のようにして計測することができる。
本発明の注入装置の例を図12〜図15に示す。
図12は最も簡単な注入装置であって、コンプレッサ−による一定の圧力装置は安定していないので難しいが、レギュレ−タを介して注入管に空気含有液を圧送する注入管先端部には0.4mm〜4mm程度の細孔を任意の数設けることにより細孔部を境として上流側の注入管内圧力P0と地盤抵抗圧P1との差圧ΔP(=P0−P1)(もしレギュレ−タがなければ差圧ΔP=P00−P1)と細孔径aとその数nとの関係から定まる吐出量(単位時間当たり)が得られる(図9参照)。P1が変動しても吐出量はほぼ一定している(図7参照)ので、安定した吐出量が得られ、注入時間をかけた全吐出量から地盤中に注入された空気量がわかり、従って不飽和度が算定できる。
勿論、抵抗圧力P1が大きくてP0に近ければ吐出量はゼロに近づくので、P0を大きくしなくてはならない(図9参照)。
この場合は空気含有加圧装置はマイクロバブル液或は更にシリカ溶液と反応剤を加えた固結性のシリカバブルを送液することもできる。
レギュレ−タ(減圧弁、有限会社光匠技研製)は、コンプレッサ−から送り出される圧縮空気は圧力的にあまり安定しているとはいえないので、この不安定な空気圧力を適切な圧力に調整し安定させる役目をする。
レギュレ−タの種類と構造レギュレ−タは、直動式(直接作動式)とパイロット式(間接作動式)に分けられる。
〔直動式レギュレ−タ〕
ハンドルで圧縮された調圧スプリングの力とダイヤフラムの上側に作用する2次側圧力との差によって弁が作動し、1次側から2次側への圧縮空気の流れを制御する。
〔パイロット式レギュレ−タ〕
直動式のレギュレ−タをパイロット弁として組込み、2次側の空気圧力でさらに大きいレギュレ−タを操作する構造のものをいう。
図20は複数の注入管路に同時に注入する注入装置の例であって、空気含有液は複数の注入管路に分岐してそれぞれレギュレ−タによって所定の圧力P0nにコントロールされ、オリフィスの孔径とP0nとP1nの差圧ΔPnに対応して所定の注入量が圧送される。そして圧送された空気含有液はその中で例え空気が塊状になっていても、注入管先端部の細孔によって微細化して地盤中にマイクロバブルとなって注入され土粒子間に充填されることになる。
図14はコントローラによって分岐バルブVを同時に或は選択的に開閉する。また、オリフィスの下流圧力、流量計からの情報に応じてコンプレッサ−または加圧マイクロバブル発生装置の圧力や流量をコントロールすることができる。図14のオリフィスは一定の孔径を有するオリフィスを示すが、これを孔径可能式オリフィス或は圧力可能式オリフィスであるレギュレ−タや流量圧力制御弁(図15参照)を用いることができる。
図15は制御部Xからの指示により注入液加圧部からの注入液を注入ポンプを介して流量圧力制御弁に送液する。制御部は、流量・圧力制御装置Uiの流量・圧力制御弁ViのリバーシブルモータMを作動させて、シャフト4の正逆回転により上下動させて流量・圧力制御弁Viの制御弁内流路の断面を所定の流量になるように制御する。
例えば、シャフト4を正回転させて前進させると(図15において下方に移動)、流量・圧力制御弁Viの制御弁内流路の断面は小さくなり流量は少量となり、一方シャフト5を逆回転させて後退させると(図15において上方に移動)、流量・圧力制御弁Viの制御弁内流路の断面は大きくなり流量は多量となる。
図16は結束注入細管からなる注入管の吐出口を軸方向にずらして位置せしめ、注入細管の先端部の細孔の孔径または数によって所定の注入量を得ることができる。この場合の細管先端部の細孔はオリフィスの役をするようにその孔径と数を設定する。結束注入細管の細管の数を多くすることにより、1ステ−ジからの吐出量を少なくして全体としては大まかな吐出量を得て経済的施工ができる。また、分岐バルブの下流にオリフィスを設けてもよい。この場合は、注入細管の先端部の細孔は単に空気含有流体を細分して細粒化するのみの機能を負わすのみでもよいので、その孔径も数も任意でよい。
従って注入管先端部の細孔は異なるもので、前者はオリフィス細孔ともいうべきである。
また、このようにして複数の深度方向の土層に対する吐出口或は水平方向の吐出口からの空気量の吐出は地盤の透水係数、間隙率、1ステ−ジの注入の受け持ち体積、毎分吐出量、合計注入量に対応して設定できるから、広範囲の注入対象地盤においてゲル化を伴わない空気含有液を所定の土層と受け持ち体積に同時にかつ少量ずつ注入できるので逸脱することなく不飽和化せしめることができる。
また、図18〜図25のように注入管と注入装置を組合せることもできる。
また、所定の層に固結液または細粒子を注入して地盤を拘束してマイクロバブルの浸透層を安定することができる。
以下に、本発明はマイクロバブル液の施工法並びに施工管理法の例を示す。
図17(a)〜(d)は、本発明の実施に際して地盤中に挿入される注入管の一例を示し、特に図17(a),(b)に図示する注入管は、複数の注入細管13を各注入細管13の先端吐出口13aを管軸方向に一定長ずらし、かつひと束に結束することにより構成されている。
注入細管の先端部をしぼって気体含有液が噴射するようにすれば注入管内の気体が過飽和状態になり地盤中に解放されてマイクロバブルが生成して地盤中に浸透して土粒子間にマイクロバブルが吸着しやすい。
このように構成されていることにより、各注入細管13の先端吐出口13aから深さの異なる複数のステ−ジ(地層)にマイクロバブル混入水とシリカ溶液を同時に、または一または複数のステ−ジを任意に選択して注入することができる。また、浅いステ−ジに細粒子含有注入材や懸濁性注入材またはシリカ溶液注入材を注入し、深いステ−ジにマイクロバブル液を注入することもできる。なお、この細粒子含有注入材またはシリカ溶液は、マイクロバブルを含んでいてもよい。また、細粒子含有注入材や懸濁性注入材を一次注入してマイクロバブル液を二次注入してもよい。なお複数の注入管を用いてマイクロバブル液の注入と空気注入を併用して、いずれかを先行して注入することもできる(図1(b)参照)。
この場合、空気注入を先行させる場合、空気が地盤中の地下水を周囲に押し広げて、地下水がもとに戻る前にマイクロバブル液が置き換わってマイクロバブルが土粒子に吸着する。このためマイクロバブル液が広範囲に拡がってマイクロバブルの浸透範囲が広くなるという効果がある。図11の装置を用いて前述のようにマイクロバブル液と空気注入を同等に注入することもできる。また上記図17の注入管を用いてマイクロバブル液の注入後、別の注入管から空気を注入してマイクロバブル液を周辺に押し広げたり、或いはこれらの工程を繰り返して広範囲に浸透させることができる。
図18〜図20は1つの注入ポンプから空気混入流体を加圧送液して、それを分岐バルブを介して複数の注入管に同時に或は選択的に注入する例を示す。
図18の細孔はオリフィスの役をするように構成されている。
図19はレギュレ−タによって注入管内の液圧P0が定まり、地盤抵抗圧P1との差ΔP=P0−P1と細孔の孔径と孔数によって空気の地盤への注入量が定まる。この場合、細孔はオリフィスとの役をするように構成される。
図20はオリフィス又は孔径可変型オリフィス(図15参照)を用いた例である。
この場合、ΔP=P00−P1とオリフィスの孔径開度の面積Aによって空気の注入量が定まる。この場合細孔は単に注入管内の空気の微粒子化の機能があればよい。
図21、図22、図25では、各注入細管の先端吐出口から深さの異なる複数のステ−ジ(地層)にマイクロバブルを混入した水またはシリカ溶液を同時に、または1または複数のステ−ジを任意に選択して注入することができる。また、浅いステ−ジに細粒子含有注入材や懸濁性注入材またはシリカ溶液注入材を注入し、深いステ−ジにマイクロバブル液を注入することもできる。
なお、この細粒子含有注入材またはシリカシリカ溶液はマイクロバブルを含んでいてもよい。また、細粒子含有注入材や懸濁性注入材を一次注入して、マイクロバブル液を二次注入してもよい。なお複数の注入管の1つからマイクロバブル液の注入に先立って或は後から空気を注入することもできる。この方法によればマイクロバブルの経時的逸脱を長期にわたって防ぐことができる。
図23、図24は複数のユニットポンプを使って、マイクロバブル液を同時に或は選択的に注入する側である。注入管先端部はオリフィス機能を持つ細孔を設ける。
図12、図13、図25、図26の装置において、注入管装置は、図26に示すように管軸方向に複数の細孔と当該複数の細孔を一定範囲を覆うように取り付けられた柱状空間導水部材からなる柱状浸透源からなる注入装置を示す。
この注入管装置は削孔中のシ−ルグラウト中に設けられてもよい。空気含有液は、それ自体ゲル化しないため、固結液の注入と異なり所定の領域に浸透した状態になるのが難しく、どこ迄も逸脱し易いという問題がある。
本発明では、複数の柱状浸透源の吐出口から低吐出量で同時に吐出される複数の空気含有液は流液層が互いの浸透圧によって反発し合って混合されにくく、このため、注入液は層状に水平方向に地盤中に浸透することに着目した。このため注入液は実質的に地表面に逸出することなく水平方向に浸透するという現象が生ずるため、縦方向にも水平方向にも一気に浸透することが可能となる。
したがって本発明装置を用いれば土粒孔間浸透が可能な低圧注入ができ、また、隣接する注入液の浸透圧が反発し合って拘束し合い層状浸透させるため、低圧で逸脱することなく、しかも、大きな吐出量で、長時間浸透しつづけることが可能となる。
このように、本発明では複数のステ−ジを同時に浸透すれば、流れは互いの浸透圧によって拘束し合い、このため、上下方向への浸透が妨げられて水平方向に浸透することを見出した。注入液は各ステ−ジの土層の状況に応じた、注入速度、注入量を選択して注入する。
吐出口が互いに軸方向に間隔を置いて位置するように細管を複数本結束することで、地盤状況が各層ごとに異なる地盤に対しても、これら各層毎に最適な注入を同時に達成し得る。しかも、地盤中の縦方向、横方向への立体的な同時注入も可能である(図26参照)。
図27、図28は本発明に用いる注入管装置の例を示したものである。
従来、固結性グラウトを注入細管2aを結束してなる結束注入細管2Aから注入する場合は結束注入細管2Aを削孔中のシ−ルグラウト4中に設置すれば結束注入細管2Aの注入細管2aどうしに空間があっても固結性グラウトと削孔中のシ−ルグラウト4が反応して、その空間を固結して閉束してしまうために問題はなかった。
しかし、空気含有流体は前述したように非固化性であるため結束注入細管2Aを用いた場合、結束注入細管2Aをシ−ルグラウト4内に設置しても注入細管2aどうしの間隙が十分填されないで空間を残すためマイクロバブル液などの空気含有液が注入細管2aの隙間から地上に流出して所定領域に注入されにくい。このために以下の手法を用いるものとする。
(1) 削孔内のみならず結束注入細管内の注入細管2aどうしの空隙をシ−ルグラウトで充填する方法。このためにシ−ルグラウト注入管21を結束注入細管内内に設けてその空隙を密封する(図27(a)のシ−ルグラウト用注入管21)。シ−ルグラウト用注入管21はシ−ルグラウト注入と共に抜き取っても構わない。
(2) 結束注入細管にセパレ−タ−30を設けて削孔地盤中のシ−ルグラウト4中に設置する方法(図27(b)、(c)参照)。
(3) 結束注入細管をシ−ルグラウト4中に設け、少なくとも空気含有液吐出口よりも上部に位置する結束注入細管の間隙やその周辺に固結性グラウトを注入する方法(図27(a)参照)。
(4) 結束注入細管の少なくとも空気含有液の吐出口よりも上部に袋体を設け、袋体の内部に固結材を注入して結束注入細管の間隙を遮断する方法(図示せず)。
(5) 上記(4)において袋体を複数設け、袋体間に設けた注入口からグラウトを注入する方法(図示せず)。
(6) 結束注入管を袋体9で包み、注入吐出口を袋体9の外に開口する方法(図28(a)〜(c))。
本発明において注入対象地盤に隔壁を設け、その内部に、気体混入液の注入を行うことは目標とする不飽和地盤を形成するのに適している。
空気含有液は液状化が生じやすい堆積層において平面的に堆積された土層の境界面に沿って平面的に広範囲に逸出しやすい。このために所定範囲に隔壁を設けて混入液の逸出を防ぎ、その上でこの隔壁内で不飽和化をはかることは効果的である。また、この隔壁は地震動によるせん断応力を低減させる効果もある。
また、地盤中に注入管を通して空気含有液を注入した場合、空気含有液が所定範囲に迄浸透したか不明である。即ち空気含有液の到達範囲と注入領域内の不飽和度がどれだけになったか。そしてどれだけの量を注入すれば注入を完了するのか不明である。空気注入による不飽和化工法において比抵抗法等のセンサーにより不飽和化を確認することは提案されているが、この場合、地盤改良予定領域全体の不飽和化を実質的には把握することは困難である。
しかし、改良領域を隔壁で囲みその内部の液状化層の間隙量を把握し、目標とする不飽和化の空気量を算出し、その空気量をマイクロバブルで供給できる量のマイクロバブル液を所定量注入することにより管理が容易になる。この場合、改良領域を隔壁で拘束することにより正確に液状化層の間隙量を把握することができるので管理が確実になる。
さらに、隔壁内部の所定の位置に地盤改良計測センサーを設け飽和化率を経時的に測定し、その測定値と前述の目標マイクロバブル注入液による不飽和度の計算値を対応することによりその差からマイクロバブル液の注入率或いはマイクロバブルの含有率や地盤中におけるマイクロバブルの生成率、或いはロス率を把握して所定の不飽和化を得るための注入管理や設計が可能になる。
図29〜図35は、貯蔵タンクなどの既存の構造物直下の地盤に、液状化対策として行う本発明の地盤改良工法を示したものである。最初に、既存構造物Aの周囲の地盤中に懸濁グラウトやホワイトカーボンのように極微少の細粒子の混入液や溶液型シリカグラウト或いは溶液型シリカグラウトにこれらの極微少粒子を混入したグラウトを注入することにより隔壁18を形成する。或いはこれらを一次注入してマイクロバブルが逃げやすい空隙を充填してもよい。
続いて、隔壁18によって区画された地盤中にマイクロバブル液を注入するか、或いは細粒子混入液またはシリカ溶液(シリカグラウト)、あるいはこれらの溶液中に気泡液、空気またはマイクロバブルを混入した溶液を注入することにより既存構造物直下の地盤を不飽和化して液状化を防止することができる。
なお、マイクロバブル液は、地盤中に細粒子混入液またはシリカ溶液を注入した後から注入してもよい。また、図33(b)に図示するように地盤の表層部にシリカグラウトまたは気泡、空気またはマイクロバブルを混入したシリカグラウトを注入し、その下層部分にマイクロバブル液を注入してもよい。さらに、マイクロバブルを混入した水またはシリカ溶液(5μm〜100μmの気泡を含む空気溶存溶液)を地盤中に注入してもよい。
隔壁18は、既存構造物Aの周囲に構造物直下の地盤を取り囲むように、例えば矩形の枠状に形成し、また、隔壁18は不透水層または非液状化層19まで連続して形成する。
さらに、既存構造物Aの周囲を取り巻く隔壁18内の地盤面積がかなり広い場合には、必要に応じて図30(b)に図示するように隔壁18の内側に格子状の仕切り壁20を形成して隔壁18内の地盤を複数に仕切る(図31〜図34参照)。
なお、隔壁18は鋼製矢板、コンクリ−ト矢板、場所打ちコンクリ−ト壁、場所打ちRC杭、高圧噴射固結体または固結柱(ソイルセメント柱体)の連続壁、さらには懸濁液或いはシリカ溶液などの固結材を注入することにより形成することもできる。
このように施工することで、細粒子混入液、シリカ溶液、あるいはマイクロバブル等の注入材が周辺に逸脱しにくくなり、また地下水の影響を受けにくくなり、さらには地下水の移流や地震動による地盤の変状も起こりにくくなるため液状化が発生しにくくなる。
また、マイクロバブル溶液を注入して地盤を不飽和化することにより液状化を防止することができる。したがって、少々の地盤の変状を許容して地盤改良を行っても大きな液状化に至らないため、地表の建造物の重要性に応じた許容変位以内の注入設計を行い(性能設計)、きわめて経済的に地盤改良を行うことができる。
さらに、仕切り壁20によって仕切られた各地盤内にマイクロバブルを混入した水またはこれら細粒子液或はシリカ溶液を加えた注入材を注入することにより、隔壁18と仕切り壁20の剛性により地震力によるせん断力を低減し、内部に作用するせん断力を小さくして液状化を防止することができる。
また、マイクロバブルの液状化強度が小さいために、地震時に少々の変位が生じても格子状の仕切り壁20によって全体的な地盤の変位は抑制されることにより液状化は防止できるため、経済的な性能設計による地盤改良が可能であり、また、隔壁18と仕切り壁20によってマイクロバブルの注入液の逸送を防止することができることにより、マイクロバブルによる液状化防止効果を長期にわたって持続させることができる。
なお、隔壁18や仕切り壁20の代わりに複数の柱状固結体(ソイルセメントや固結材の混合土で形成された杭)を一定間隔おきに形成して固結体壁とし、或いは、この柱状固結体の周囲に細粒子を注入した後、微細気泡を混入したマイクロバブル液またはシリカバブル液を注入することにより、既存構造物直下および周辺の地盤を不飽和して液状化を防止することができる。この場合も少々の地盤の変状を許容しても大きな液状化に至らない範囲で性能設計による地盤改良を経済的に行うことができる。
また、図32において、隔壁18内の地盤中液状化層さらに隔壁内に図31〜図33に示すように地盤改良計測センサー21を設置してマイクロバブルの注入状況をリアルタイムで確認しながら注入を行うことにより、地盤改良を無駄なくきわめて効率的かつ確実に行うことができる。
地盤改良計測センサー21は土中水分計や電気比抵抗測定器などで、地盤の電気抵抗変化または誘電率から気泡の到達範囲や飽和度の変化や間隙率の減少の程度とその分布状況を知り、それによって注入の管理を行なうことができる。
また、図33(a)、(b)に図示するように注入領域内の削孔中に設置した地盤改良計測センサー21、注入管22、当該注入管22にそれぞれ接続された分岐バルブ23、圧力計24、流量計25およびマイクロバブル発生装置26をコントローラ27によって集中管理することにより、地盤改良計測センサー21からの情報に基づき注入量、注入管22の選定、注入の完了、注入の繰返し等の管理を行なうことができる。
間隙率と間隙充填率と目標不飽和度と注入液中に含まれるマイクロバブルの空気量から目標とする不飽和度を得るに必要なマイクロバブル水の注入量を算出することができる。このようにして注入管理と不飽和化の管理を行うことができる。
図29〜図33において前述したように隔壁内の液状化層の地盤を目標不飽和地盤にするのに必要とする空気量が得られるように注入されたマイクロバブル注入液の注入量から地盤に注入された空気量が算出される。一方所定の注入管から注入されたマイクロバブル液の注入量からマイクロバブル中の空気量を算出したその注入による不飽和化度が算出される。
図14の注入システムの実施例を示す。図中のオリフィスを用いた場合、並びにオリフィス吐出口を用いた場合の細孔の孔径と孔数を所定の空気混入液が注入できるように設定した。
オリフィス吐出口を持つ注入細管の管径は10mm、細孔の孔径を1mmとし、4段とした(n=4)、先端にゴムスリ−ブや袋(逆止弁)をかぶせた。1孔当りの吐出量は送液圧力0.3MPaで1リットル/min、吐出口4箇所で4リットル/minだった。また、分岐バルブの下に孔径1mmのオリフィスを設け、非オリフィス吐出口の細孔の口径は5mm6段とした。この場合、1本の注入管からの吐出量は1リットル/min、4本の細管から同時に吐出した場合、4リットル/minだった。
空気含有液の中の空気量は判るから、本発明は上記方法により地盤中に注入された空気含有液の注入量から空気量(或はマイクロバブル量)を把握することができる。従って、以下の計算で地盤の不飽和度を推定または不飽和地盤を設計できる。
1.注入改良体の設計
1.1 〔基本式〕
改良範囲の飽和度Srは以下の式に示すことができる。
ここで、
改良範囲V、
間隙率n、
充填率α、
マイクロバブル生成率β、
ロス率d、
注入量Q
である。
1.2 〔マイクロバブルの溶存率と生成率〕
空気の溶解度は1気圧(0.1MPa)あたり、水1cm3に対して20℃で0.019cm3(19%)である。
ヘンリ−の法則より圧力と溶存率は比例関係となる。20℃、P気圧で注入した場合の、水1cm3に対するマイクロバブルの溶存率δは以下の式に示すことができる。
また、注入液が地盤に注入されると大気圧となるとみなすと、溶存量は0.019cm3まで低下し、その差がマイクロバブルとなって地中に生成される。
マイクロバブル生成率βは以下の式に示すことができる。
2気圧(0.2MPa)で注入した場合、マイクロバブルの溶存率δは38%,生成率は19%となる。
ただし、上記差がそのままマイクロバブルの生成にあずかるとは限らない。その場合はマイクロバブル生成率をその分加算すればよい。或いはその分をロス率としてもよい。
1.3 〔ロス率の検討〕
改良範囲Vが1000m3(10m×10m×10m)、間隙率nが0.4の地盤とする。
飽和度90%とするために必要となる注入量を計算する。
ロス率がない(d=0)場合には2104m3注入すればよい。
上式においてロス率を10%(d=0.1)と仮定すると4208m3の注入が必要となる。
これよりロス率に応じた注入量の検討が可能となる。その他,各パラメ−タを変更することによって実地盤に応じた設計が可能となる。
図37(b)において改良体を半径r(=0.5m)の球状とする。飽和度Srを90%としたときに、改良球に含まれる気泡量qは以下に示される。
注入速度をvとすると、水に含まれる気泡の生成速度はv’=βv=0.019vとなる。
注入速度vを8L/minで20.91の気泡が入るために必要となる時間tは以下に示される。
以下の空気含有液の地盤中への注入から不飽和度を算出できるが、実施の地盤へ注入した注入液中の空気量をそのまま実測して不飽和度を確認することができる。
2.マイクロバブル液の空気含有量測定法
地盤中に注入される前のマイクロバブル液の空気含有量を測定する。
マイクロバブルの溶存率δを計測する方法である。
1)注入液中に混入する気体の圧力により算出
1気圧(0.1MPa)あたり、水1cm3に対して20℃で空気は0.019cm3(19%)溶解する。ヘンリ−の法則より、注入圧と溶解度は比例関係にある。圧力目盛がx(atm)の場合における溶解度γ(%)はγ=19×xで計算でき、この値からδを算出する。
2)溶存酸素計からの算出
溶存酸素計として、横河電機株式会社製の(DO402G、DO70G、DO30G)を使用する。
空気内に酸素はおよそ20%含まれている。計測値を5倍することで空気量を算出できる。
地盤の飽和度がSrのとき、地盤間隙に含まれる空気量β=(1−Sr)(%)で示すことができる。マイクロバブルの溶存率δは溶解度と空気量βの和で示すことができ、
δ=β+19=(1−Sr+19)=2.9−Sr
となる。
酸素量D0は溶存率δの20%となるため、以下に示される。
従って、
D0は40%(=400ppm)を示したとき、飽和度は90%に到達したと判断できる。
3)ピクノメ−タでの計測
測定口から取り出した水をピクノメ−タに入れる。気体が外に逃げないように密閉する。水は下に、気泡が上に分離する。分離時間と気泡の径、水面の位置よりスト−クスの式を用いて気泡の量及び飽和度を計算する。
地盤中に設置した計測器から以下のように地盤中における不飽和度の進行状況、不飽和領域の確認、注入の完了時を知ることができる。
また、地盤の不飽和度の計測は経時的に空気が地盤面に逸脱したり、或は地下水に溶解して不飽和度が低下した場合の再注入をするための手段とすることができる。
本発明によれば上述のように地盤中の不飽和度を直接計測しないで不飽和度を設定できるが、注入した地盤中の不飽和度を以下の方法で計測して、その比率により適切な数値を把握してもよい。
3.地盤中における空気含有量の計測
地盤中に含まれるマイクロバブル生成率βを求める方法である。
1)電気抵抗による計測(図37)
計測された誘電率より飽和度を算出してマイクロバブル生成率を求める。飽和度の計算式を式1、誘電率の計算式を式2に示す。Kairを1、Kwaterを81、KsoiLを4として間隙率nと体積含水比θをパラメ−タとした場合のSrとKとの関係を図37(a)に示す。計測値Kから飽和度Srを読み取る。
式1及び式2を以下に示す。
〔式1〕
Sr=θ/n×100
〔式2〕
K=(n−θ)Kair0.5+θKwater0.5+(1−n)KsoiL0.5
Sr:飽和度
θ:体積含水率
n:間隙率
K:誘電率
Kair:空気の誘電率
Kwater:水の誘電率
KsoiL:土の誘電率
2)土中水分計による計測
土中水分計では体積含水率θが得られる。体積含有率から飽和度を計算する。
これらの結果よりロス率を換算して、ト−タルの注入量を計算することができる。
4.注入設計例
改良範囲Vが1000m3(10m×10m×10m)、間隙率nが0.4の地盤を改良する。
目標飽和度は90%とし,実際の地盤におけるロス率dを10%として、飽和度80%となるように注入する。
空気の溶解度は1気圧(0.1MPa)あたり、水1cm3に対して20℃で0.019cm3(19%)である。2気圧(0.2MPa)で注入するため、ヘンリ−の法則より、水1cm3に対して20℃で0.038cm3のマイクロバブルが溶存されている(溶存率δ=38%)。注入液が土中に含まれると大気圧(0.1MPa)になるため、溶存量は0.019cm3となる。0.038cm3−0.019cm3=0.019cm3が溶出され、土中に気泡として存在する(気泡含有率β=19%)。
改良体へ注入するマイクロバブルの総量を以下に示す。
80m3のマイクロバブルが存在するために必要な改良体への注入量の総量を以下に示す。
注入間隔を1mとすると、改良球が1000個形成できる。改良球1個あたりの注入量を以下に示す。
改良球1個あたりの注入時間は60分を目標とする。注入速度を以下に示す。
そこで、マイクロバブル発生装置(エアタ−ボミキサ−)はKTM32ND15Z(NIKUNI社商品)を用い、流量801/min、圧力0.2MPa,モータ動力195kWで注入することによって地盤改良した。
〔施工例〕
注入前に図37(b)に示す6箇所にセンサー(TDR土中水分計(藤原製作所TDR−341F))を設置して品質管理を行った。飽和度Srは体積含水率θと間隙率nより以下の式で算出できる。
表示された体積含水率θから飽和度Srを算出する。例えば、θが0.36を示せば目標飽和度は90%となる。
体積含水率から飽和度を算出し、経過時間と飽和度の関係をプロットした。
その結果を図37(c)に示す。70分経過した段階で計測位置から最も遠い位置でも飽和度が90%以下を示し、ロス率10%を考慮して80%で設計することによって所定の品質が得られたことを確認した。他の改良体においても70分で注入すればよい。
従って空気含有液を注入後、定期的にその不飽和度を測定してその値が低下したことを確認すれば再注入して所定の不飽和度を維持することを経続すればいつ地震がきても液状化を防止することができる。
この場合、注入管を設置したままにしておいて経時的に注入してもよいし、或は再度削孔して注入管を設置して注入してもよい。
勿論、不飽和度を計測の上再注入してもよいが、本発明によれば注入液そのものの空気量から不飽和度を推定できるので一度経時的な不飽和度の変化を確認しておけば後は所定期間の間隔をあけて所定の空気含有液を注入しておけばよい。
例えば1年後には不飽和度が20%〜10%に低減することを把握しておけば、1年後に再注入すればよく、空気含有液を注入することは簡単かつ安価に済み、その実用価値は計り知れない。
また、地下水低下法による不飽和化も知られているが、この工法では地盤の圧密沈下により構造物の損傷の危険があるのと、常時地下水を汲み上げることの費用のことを考えれば、本発明の有効性が理解できる。
また地盤中に吸水パイプ(又はチェック孔、排水パイプ)を設けて採取した地下水の空気含有量から注入液の到達距離や地盤の飽和度を推定できる。またその注入孔からの注入液の到達範囲に設けたセンサーから地盤の不飽和化度が算出されて(図33参照)、以上の注入液から算出される不飽和化度とセンサーによる計測値から算出される不飽和化度を比較してその差率を算出することができる。
この差率を地盤中におけるマイクロバブルの損失率とみなすか、或いは、その差率を製造された空気含有注入液中に含まれる空気量と地盤中で放出される空気量の差をマイクロバブル生成率とみなして、その量を加算して注入するか、或いはマイクロバブル混入率を上げて(マイクロバブル製造中に加圧してマイクロバブルの含有率を大きくする等)注入設計を行うことができる。なぜならば、地盤に注入される前の空気含有液中の空気の全量が地盤中に放出されるとは限らないからである。以上を一本当たりのマイクロバブル液の注入に対して、或いは注入領域全体の注入のいずれか或いは両方に関して比較検討して注入管理を行うことができる。以下にその手順を示す。
また、図33に図示するように注入領域内の削孔中に設置した地盤改良計測センサー21、注入管22、吸水管28、当該注入管22にそれぞれ接続された吸水バルブ29、圧力計24、流量計25およびマイクロバブル発生装置26、さらに注入管22に接続された吸水ポンプ30をコントローラ27によって集中管理することにより、地盤改良計測センサー21からの情報に基づき注入量、注入管22の選定、注入の完了、注入の繰返し等、さらに地下水位と地下水圧のバランスの管理を行なうことができる。
マイクロバブルの注入では、注入管22および吸水管28は薬液の注入と違って注入液が固結しないことにより注入後に閉塞する心配はない。再注入の必要があるとき、その注入管のまま何回も注入できる。したがって、注入管22および吸水管28の上部を通常は閉束しておき、地震時に間隙水圧が上昇した場合に限って地下水が逆止弁を通して排出するようにしておけばよい。
このようにしておけば、通常時は脱水圧密で地盤沈下を起こすことはなく、地震時に作動するため、たとえ永年月後にマイクロバブルの機能が低下しても、地震時に間隙水を脱水させて間隙水圧の上昇を防いで液状化を防ぐという効果を生ずる。
また、図34、図35の発明は施工法であり、施工管理法であり、インフラの液状化防止法であり特にライン状の注入システムと注入方法である。
図34、図35は、複数の注入地点に注入材を同時または、一または複数の注入地点を任意に選択して注入材を注入する地盤改良工法を示し、このうち図34(a)は、ひとつづきの土地が複数に区画され、各区画内に戸建て住宅が建つ領域などにおいて複数の注入地点に注入材を同時または、一または複数の注入地点を任意に選択して注入材を注入する地盤改良工法を示す平面図である。
また、図34(b)は、主としてガス管や上下水道などの敷設管(ライフライン)に沿って、一定間隔おきに設定した注入地点に注入管を介して注入材を注入する地盤改良工法を示す平面図、そして、図34(c)、図35(a)、(b)はこれらの概略縦断面図である。
図34(a)において、符号X1、X2、X5、X6と、X2、X3、X4、X5と、X4、Xn、Xi、X5と、X5、X6、X7、Xiは、ひとつづきの土地が複数に区画され、かつ各区画内の戸建て住宅A1、A2、Ai、Anを囲むように設定された注入地点を示す。
また、図34(b)において、符号X1、X2はガス管、上下水道管などの敷設管(ライフライン)33に沿って一定間隔おきに設定された注入地点を示す。そして、図35(a)においてL1は粗砂層、L2は細砂層であり、いずれも液状化が予想される地層である。
図示するように、設定された各注入地点に注入管22を挿入し、各注入地点の注入管22に注入材製造プラント34、注入ポンプ並びに圧力・流量検出器35を送液管36を介してそれぞれ接続する。そして、これらを電気信号回路37を介しコントローラ27によって一括制御することにより、複数の注入地点または、一または複数の注入地点を任意に選択して注入材を連続的に注入することができる。
さらに説明すると、各注入管22に通じる送液管36に流路変換電磁バルブ38が設置され、各流路変換電磁バルブ38はコントローラ27によって一括制御されている。そして、ある注入地点において電気信号回路37を介してコントローラ27から指示があると、流路変換電磁バルブ38が作動して注入地点Xiの流路変換電磁バルブ38が地盤中の注入管22の方に開き、注入地点Xi+1方向へは閉じ、注入地点X1からXi-1までの流路変換電磁バルブ38は注入地点Xiの方向へのみ開く。
そうすると、注入地点Xiの注入管22に所定の注入量が注入され、あるいは注入圧力が所定圧よりも上昇すると、同様に流路変換電磁バルブ38が作動して他の注入地点に注入液が送液され、これにより複数の注入地点に注入地点を変えながら注入することにより地盤改良を連続的に行うことができる。たとえば、ある注入地点の流路変換電磁バルブ38を開け、他の流路変換電磁バルブ38を閉めれば、所定の注入管22からのみ注入液が地盤中に注入される。
勿論、流路変換電磁バルブ38は手動式で作動する構成でもよいが、管理センタ−から電気信号回路37を通して指示されることにより作動する構成であれば、限られた作業スペ−スにおいてでも、ライフラインを供用しながらで液状化対策工を実施することができる。
また、所定の位置に複数の地盤変位センサー39が配置され、各地盤変位センサー39はコントローラ27によって一括管理されている。そして、地盤変位センサー39によって地上構造物や地下埋設物の損壊が生じないようにコントローラ27を通して監視し、ある注入地点において地盤変位に異常が見られたときは、その注入地点における注入を中止して他の注入地点に注入を切り換えて構造物周辺から簡便に液状化防止注入を行うことができる。
各流路変換電磁バルブ38は三方コックとし、さらに水洗い管を装着しておき、これもまた、コントローラ27によって管理し、所定の三方コックからの注入が完了したら直ちに水洗いするようにすれば、管路は常に所定の注入地点に注入することができる。
以上の構成により、図35(a)に図示する地盤改良工法によれば、特にひとつづきの土地が複数に区画され、各区画内に戸建て住宅が建つ領域における液状化対策をきわめて効率的かつ確実に行うことができる。また、戸建て住宅地全体の液状化対策を一括して行うことができ、住宅地全体の地盤改良を容易にかつ経済的に行うことができる。
また、住宅地の生活環境に支障をきたすことなく地盤改良を行うことができる。なお、ここでは、住宅地の液状化対策について説明したが、連続した道路や空港の滑走路などであってもよく、液状化を防止する対象をいくつかに区分して注入ラインを形成し、その線上に固結体を連続して形成してもよい。なお、注入ラインとは、注入管22どうしを連続させる送液管36のラインをいう。
一方、図35(b)に図示する地盤改良工法によれば、共同溝、地下鉄、ガス管、上下水道管などの敷設管(ライフライン)33、電信電話線などのケ−ブル類、あるいは道路、鉄道等の敷設構造物の液状化対策をきわめて効率的にかつ確実に行うことができる。
図35(a)、(b)は、ガス管、上下水道管などの敷設管33に沿って一定間隔おきに設定された注入地点に注入材を注入して固結柱体(ソイルセメントや懸濁型グラウト或いはシリカ溶液系注入材による柱体)40を形成し、固結柱体40に敷設管33を直接支持させることにより、液状化による敷設管33の不同沈下などの被害を回避するようにしたものである。図中、符号41はシ−ルグラウト、L1は粗砂層、L2は細砂層であり、いずれも液状化が予想される地層である。また、符号38は流路変換電磁バルブである。
図において、注入地点Xi-1、Xi、Xi+1、……へ注入地点を順に移動しながら注入を連続的に行う場合、注入並びに管理プラント34から電気信号回路37を通して三方向に流路を変換できる流路変換電磁バルブ38に指示して、Xi-1までの三方コックの注入管22aへの流路を遮断してXiまでの流路を解放する。
なお、地震時の液状化で破壊しやすい敷設管33どうしの各継手部(連結部)に固結柱体40を形成して、各継手部を固結柱体40によって支持させるのが望ましい。また、注入管22に注入材を供給する送液管36は敷設管33を挟んでジグザグに配置してもよく、また敷設管33の両側に配置してもよい。
このように液状化対策工がなされた敷設管33は、たとえ周辺地盤に液状化が発生したとしても、各敷設管33の継手部が固結柱体40によって支持され、また敷設管33自身が一定の弾性を有することにより、ある程度のたわみは生じるものの破壊に至ることはない。
図21、図22に図示する地盤改良工法および地盤改良装置は、それぞれ独立した駆動源42によって作動し、かつ集中管理装置43によって制御される複数のユニットポンプ44と、これら複数のユニットポンプ44に送液管36を介して接続された複数の注入管22、さらに各ユニットポンプ44と注入管22間に配置された送液管36にそれぞれ接続されたマイクロバブル発生装置45を備えている。
そして、各ユニットポンプ44の作動によりマイクロバブル発生装置45において生成されたマイクロバブル溶液(例えば、微細気泡混入水または微細気泡とシリカ溶液との混合液)は、送液管38を介して各注入地点の注入管22に圧送され、注入管22を介して各注入地点の地盤中に注入される。
また、集中管理装置43によって各ユニットポンプ44が制御されることにより各注入地点における気泡混入液の注入の開始、停止、再開等が任意に制御できるように構成されている。
図23、図24、図25は、軟弱地盤の複数の注入地点に対してマイクロバブル溶液を同時にまたは選択的に注入することができ、また、地盤状況が異なる層ごとに最適量のマイクロバブルを注入することができ、さらにマイクロバブルの注入に先だって上層部に固結材注入を行うことにより、マイクロバブルの逸出を防止することができる。
なお、図35(b)の固結柱体の代わりに敷設管(ライフライン)に沿って連続する基礎体を形成し、基礎体にライフラインを支持させてもよい。なお、この場合の固結柱体は、ライフラインの継手部に形成し、継手部を支えるようにするのが望ましい。固結柱体の位置は敷設管の上部或いは側面に注入して液状化による管路の浮き上りを防止することができる。
また、各注入地点における注入管は地面に垂直に設置してもよく、また戸建て住宅の基礎下に斜めに設置してもよく、さらには垂直設置と斜め設置を併用してもよい。また、送液管による各注入地点までの送液経路は複数系統あってもよい。さらに、各注入地点における注入は注入並びに管理プラントによって一括制御される。
勿論、平面的に広範囲の地盤改良であっても、図35に図示するようにライン状の配置を組み合わせて行うことにより、地盤改良を連続的に行うことができる。すなわち、図17に図示する注入管をパイプラインや上下水道管などの敷設管20の敷設された地盤上に、これらの施設物に沿って一定間隔おきに配置する。
また、流路変換電磁バルブ、地盤変位センサーを配置することにより、戸建住宅が密集する住宅地、ガス管や上下水道管などが敷設された地盤に対して、注入による地盤変位によって建物や敷設物を壊したりすることなくきわめて簡便かつ安全に液状化防止注入を行うことができる。
さらに、ガス管や上下水道管などの敷設管に沿って注入管を一定間隔おきに配置し、各注入管を敷設管に沿って線状に配置した送液管13によって接続し、かつ注入並びに管理プラント21を配置することにより、注入プラントの作業地点を動かすことなく、最小の施工作業範囲を用いることにより長い区間の注入を行うことができるのでライフラインを稼働させながら地盤改良を行うことができる。
また、マイクロバブル溶液を注入して地盤を不飽和化することにより液状化を防止することができる。したがって、少々の地盤の変状を許容して地盤改良を行っても大きな液状化に至らないため、きわめて経済的に地盤改良を行うことができる。
さらに、仕切り壁20によって仕切られた各地盤内にマイクロバブルを混入した水またはこれら細粒子液或はシリカ溶液を加えた注入材を注入することにより、隔壁18と仕切り壁20の剛性により地震力によるせん断力を低減し、内部に作用するせん断力を小さくして液状化を防止することができる。
また、マイクロバブルの液状化強度が小さいために、地震時に少々の変位が生じても格子状の仕切り壁20によって全体的な地盤の変位は抑制されることにより液状化は防止できるため、経済的な地盤改良が可能であり、また、隔壁18と仕切り壁20によってマイクロバブルの注入液の逸送を防止することができることにより、マイクロバブルによる液状化防止効果を長期にわたって持続させることができる。
なお、隔壁18や仕切り壁20の代わりに複数の柱状固結体(ソイルセメントや固結材の混合土で形成された杭)を一定間隔おきに形成して固結体壁とし、或いは、この柱状固結体の周囲に細粒子を注入した後、微細気泡を混入したマイクロバブル液またはシリカバブル液を注入することにより、既存構造物直下および周辺の地盤を不飽和して液状化を防止することができる。この場合も少々の地盤の変状を許容しても大きな液状化に至らない範囲で地盤改良を経済的に行うことができる。
また、本発明工法における注入細管を生分解性樹脂で作った注入管を用いれば、施工後、半年から1年以内に炭酸ガスと水に分解されてしまい、本発明が実施される生活環境内において施工後そのままにしても環境保全性に優れた液状化対策工となる。
なお、生分解樹脂としては、その化学構造は、(1)主鎖が脂肪族で、これにエーテル結合またはエステル結合を有するもの、(2)主鎖(または側鎖)に水酸基、カルボキシル基を有するもの、あるいは、(3)プラスチックスの光分解および微生物分解を誘因、促進する添加剤を含有することにより生物分解性が良好なプラスチックスであり、具体的には澱粉系、酢酸セルロース系、ポリ乳酸系、脂肪族ポリエステル系、ポリビニルアルコール系等の生物分解性プラスチックスが挙げられる。これらの主原料には、性能の向上あるいは可撓性の付与等の目的で他の高分子化合物、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックス、可塑剤、安定剤、着色剤等を必要に応じて添加することもできる。
また、上記(2)の水酸基あるいはカルボキシル基を有する化合物としては、脂肪族化合物が好ましい。これらの生物分解性プラスチックスとしては具体的には、上記(1)の例として、「ビオノーレ」(ポリオールとジカルボン酸の脂肪族ポリエステル)(昭和高分子株式会社と昭和電工株式会社)、「セルグリーン」(酢酸セルロース系、ポリカプロラクトン系)(ダイセル化学工業株式会社)、「ラクティ(乳酸系)」(株式会社島津製作所)、(2)の例として、「ポバール」(ポリビニルアルコール)(株式会社クラレ)、(3)の例として、「ワンダースターケン」(トウモロコシ澱粉とポリエチレン)(ワンダー株式会社)等々が挙げられる。
上記生物分解性プラスチックスには、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、ポリグリコシド等の高融点生物分解性プラスチックスをブレンドすることにより、加工性を向上させ、織物、不織布とすることにより袋体としても使用できる。これらの主原料は、土中ではバクテリアにより、例えば90〜300日程度の日数で分解される。