JP5433821B1 - 微生物検出法及び微生物検出キット - Google Patents

微生物検出法及び微生物検出キット Download PDF

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Abstract

以下の工程により、被検試料中の微生物の生細胞を、死細胞又は損傷細胞と識別して検出する。
a)前記被検試料に白金錯体を添加する工程、
b)被検試料に含まれる微生物のDNA又はRNAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅する工程、及び
c)増幅産物を解析する工程。

Description

本発明は、食品や生体試料中に含まれる微生物、工業用水や市水等の環境中に含まれる微生物の検出法、及び微生物検出キットに関する。さらに詳しくは、食品や生体試料、拭き取り試料、工業用水や市水等の環境中に含まれる微生物の生細胞の選択的な検出が可能な検出法及び微生物検出キットに関する。
食品や生体試料、拭き取り試料、又は環境中の一般生菌数の測定には、従来、平板培養法が用いられてきた。しかし、平板培養法は結果が得られるまでに2日間から一ヶ月程度の時間を要し、細菌の同定も困難であるという問題があった。
近年では、被検試料をエチジウムモノアザイド(EMA、ethidium monoazide)等のDNAを架橋する架橋剤や、トポイソメラーゼ阻害剤及び/又はDNAジャイレース阻害剤で処理した後、試料中の微生物中の染色体DNAを選択的に核酸増幅反応により増幅することによって、試料中の生菌を検出する技術が提案され、成果を挙げている(特許文献1〜4)。
上記のような架橋剤、トポイソメラーゼ阻害剤及びDNAジャイレース阻害剤は、細胞内に侵入すると、DNAに結合もしくはインターカレートしたりしてトポイソメラーゼやDNAジャイレース(酵素)の働きを阻害したり、又はDNAを架橋し、その結果、染色体DNAが破壊(断片化・切断)される。これらの薬剤は、生菌の細胞壁よりも死菌及び損傷菌の細胞壁の方が透過しやすいため、生菌よりも損傷菌や死菌の染色体DNAが優先的に断片化される。したがって、染色体DNAの特定の領域をターゲットとしたPCRにより、生菌を損傷菌や死菌に比べて選択的に検出することができる。
尚、上記PCRの鋳型としては、従来、被検試料に含まれる微生物細胞から抽出した核酸が用いられていたが、細胞からの核酸の抽出を行わずに、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤の存在下でPCRを行うことで、迅速に生菌を検出する方法が開示されている(特許文献4)。
前記EMAは、DNAに水素結合した後、350〜700nmの波長の光照射を行うことによりDNAの分子間を架橋する。したがって、試料への光照射が必須であるが、光源による試料への加熱を防ぐため、通常、氷水中に試料を浸漬して光照射が行われており、工程が煩雑となっている。また、光源にLEDを用いる方法も提案されているが、光強度が不十分であり、また、経時的に架橋剤の架橋能の低下がみられる等の問題がある。さらに、EMA等の薬剤やそれを含む試料は、薬剤の変性等を防ぐため、前記の試料への光照射を除いて、暗室中などの遮光下におく必要がある。
また、これまでの方法では、生菌を死菌及び損傷菌と区別するために、PCRのターゲット領域としては、一定以上の長さ、例えば900塩基(bp)以上の長さを有する領域を用いるのが一般的である。しかしながら、現在一般的な定量PCRにて使用されている80〜200bp程度のターゲット領域に比べて、900bp以上の領域をPCRにより増幅するためには、各サイクルに数倍の時間を要し、また、定量性にも問題がないとはいえない。
一方、試料を架橋剤で処理した後、試料に培地を加えて加温し、再度架橋剤による処理を行うこと(特許文献3)、又は、EMAとトポイソメラーゼ阻害剤又はDNAジャイレース阻害剤とを併用すること(特許文献2)により、100bp程度のターゲット領域であっても、生菌と死菌又は損傷菌との区別が可能なことが知られている。しかしながら、これらの方法は、工程または薬剤調製が煩雑である。
ところで、シスプラチン(cisplatin、cis-ジアンミン白金(II)ジクロリド、cis-diammineplatinum (II) dichloride)、カルボプラチン(Carboplatin)等のプラチナ錯体は、抗悪性腫瘍剤として知られている(非特許文献1、2)。それらの作用機序は、腫瘍細胞のDNA合成の阻害であり、殺細胞の作用様式は濃度依存的速効性といわれている。なかでも、シスプラチン及びカルボプラチンは、核酸(アデニン(A)又はグアニン(G):これらは生物無機化学では中間的(メデイアム)なルイス塩基として定義される)への配位結合(共有結合)を介した抗癌剤として近年臨床でも利用されている薬剤である。
通常抗生物質は、細菌の対数増殖期に最も威力を発揮するといわれているが、シスプラチンは腫瘍細胞の如何なる時期においても抗腫瘍効果を発揮する(非特許文献3)。
また、Komedaら(非特許文献4、5)は、抗癌剤としての作用機序追究として、カチオン性白金錯体は、DNAにインターカレートしたり、DNAのリン酸ジエステル部位に結合することを示唆している。
しかしながら、白金錯体が微生物の生死判定に利用できることを示唆する従来技術は知られていない。
特許第4340734号 国際公開第2007/094077 国際公開第2009/022558 国際公開第2011/010740
Rosenberg, B. et al., Nature, 205:698-699, 1965 Lovejoy. K.S. et al., PNAS, 105(26):8902-8907, 2008 「ブリプラチン注10 mg、ブリプラチン注25 mg、ブリプラチン注50 mg BRIPLATIN INJECTION(シスプラチン注射液)製品情報概要」、ブリストール・マイヤーズ株式会社、2007年12月 Komeda, S. et al. J. Am. Chem. Soc., 128: 16092-16103, 2006 Komeda, S. et al. Nucleic Acids Research, 39: 325-336, 2010
本発明は、簡便な工程で、かつ、好ましい形態ではターゲット領域が比較的短くても、微生物の生細胞の検出が可能な方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、被検試料を薬剤で処理し、試料中の微生物中の染色体DNAを選択的に核酸増幅反応により増幅することによって、試料中の生細胞を検出する技術において、使用する薬剤について検討した。そして、白金錯体を用いると、試料への光照射、冷却、及び遮光環境を必要とせずに、微生物の生細胞の検出ができること、及び、ターゲット領域として比較的短鎖長の領域を設定した場合でも、高精度で微生物の生細胞を検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、被検試料中の微生物の生細胞を、死細胞又は損傷細胞と識別して検出する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)前記被検試料に白金錯体を添加する工程、
b)被検試料に含まれる微生物のDNA又はRNAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅する工程、及び
c)増幅産物を解析する工程、
を提供する。
前記方法は、前記ターゲット領域の増幅が、細胞からの核酸の抽出を行わずに行われることを好ましい態様としている。
また、前記方法は、前記ターゲット領域の増幅が、微生物細胞内で行われることを好ましい態様としている。
また、前記方法は、前記ターゲット領域の増幅が、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤、マグネシウム塩、及び有機酸塩又はリン酸塩を前記被検試料に添加して行われることを好ましい態様としている。
また、前記方法は、前記ターゲット領域の増幅が、界面活性剤の存在下で行われることを好ましい態様としている。
また前記方法は、前記被検試料が、食品、生体試料、飲料水、工業用水、環境用水、排水、土壌、又は拭き取り試料のいずれかであることを好ましい態様としている。
また、前記方法は、前記微生物が、細菌、又はウイルスであることを好ましい態様としている。
また、前記方法は、前記細菌が、グラム陰性細菌又はグラム陽性細菌であることを好ましい態様としている。
また、前記方法は、前記ターゲット領域が、50〜5000塩基のターゲット領域であることを好ましい態様としている。
また、前記方法は、前記ターゲット領域が、被検試料のDNAの5S rRNA遺伝子、16S rRNA遺伝子、23S rRNA遺伝子、及びtRNA遺伝子から選択される遺伝子に対応するターゲット領域であることを好ましい態様としている。
また、前記方法は、前記核酸増幅法が、PCR法、RT−PCR法、LAMP法、SDA法、LCR法、TMA法、TRC法、HC法、SMAP法、又はマイクロアレイ法であることを好ましい態様としている。
また、前記方法は、前記PCR法が、リアルタイムPCR法により行い、PCRと増幅産物の解析が同時に行われることを好ましい態様としている。
また、前記方法は、前記増幅産物の解析が、微生物の標準試料を用いて作成された微生物量及び増幅産物との関連を示す標準曲線を用いて行われることを好ましい態様としている。
また、本発明は、核酸増幅法により、被検試料中の微生物の生細胞を、死細胞又は損傷細胞と識別して検出するためのキットであって、下記の要素を含むキット:
1)白金錯体、又は、
配位子として白金に結合し得る有機溶媒、もしくは配位子として白金に結合し得る物質を含む溶液に溶解したときに、白金錯体を生成する白金化合物、
2)検出対象の微生物のDNA又はRNAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅するためのプライマー、
を提供する。
前記本発明のキットは、さらに配位子として白金に結合し得る有機溶媒を含むことを好ましい形態としている。
前記本発明のキットは、さらに、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤、マグネシウム塩、及び有機酸塩又はリン酸塩を含むことを好ましい形態としている。
また、前記キットは、さらに界面活性剤を含むことを好ましい形態としている。
本発明の方法及びキットは、前記白金錯体が、NH3、RNH2、ハロゲン元素、カルボキシレート基、ピリジン基、H2O、CO3 2-、OH-、NO3 -、ROH、N2H4、PO4 3-、R2O、RO-、ROPO3 2-、(RO)2PO2 -、R2S、R3P、RS-、CN-、RSH、RNC、(RS)2PO2 -、(RO)2P(O)S-、SCN-、CO、H-、及びR-からなる群から選ばれる配位子を含むものであることを好ましい形態としている(ただし、前記「R」の表記は、いずれも飽和又は不飽和有機基を表す)。
また、前記方法及びキットは、前記配位子が、NH3、RNH2、ハロゲン元素、カルボキシレート基、ピリジン基、R3P、及びRNCからなる群から選ばれることを好ましい形態としている。
また、前記方法及びキットは、前記白金錯体が、シスプラチン、カルボプラチン、cis-ジアンミン(ピリジン)クロロ白金(II)クロリド、ジクロロ(エチレンジアミン)白金(II)、cis-ビス(ベンゾニトリル)ジクロロ白金(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、二硝酸(エチレンジアミン)ヨウ化白金(II)ダイマー、オキサリプラチン、ネダプラチン、およびトランスプラチンからなる群から選ばれることを好ましい形態としている。
また、前記方法及びキットは、前記白金錯体が、白金化合物を、配位子として白金に結合し得る有機溶媒、又は配位子として白金に結合し得る物質を含む溶液に溶解することにより生成する白金錯体であることを好ましい形態としている。
また、前記方法及びキットは、前記白金化合物が、塩化白金、臭化白金、フッ化白金、ヨウ化白金、水酸化白金、硝酸白金、炭酸白金、酢酸白金、ジメトキシ白金、メトキシリン酸白金、リン酸白金、塩化白金酸、ジスルフメチル白金、ジシアノ白金、ジチオシアネート白金、二水素化白金、及びジメチル白金からなる群から選ばれることを好ましい形態としている。
また、前記方法及びキットは、前記白金化合物が塩化白金(II)、塩化白金(IV)、又は塩化白金酸であることを好ましい形態としている。
また、本発明の方法及びキットは、前記有機溶媒がジメチルスルホキシドであることを好ましい形態としている。
シスプラチン(cis-DDP)処理したクロノバクター・サカザキの生細胞けん濁液及び死細胞けん濁液を鋳型とするリアルタイムPCRによる増幅産物の電気泳動写真。 M: 100 bp DNA ladder (Takara-Bio)
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
<1>本発明の方法
本発明の方法は、被検試料中の微生物の生細胞を、死細胞又は損傷細胞と識別して検出する方法であって、以下の工程を含む方法である。
a)前記被検試料に白金錯体を添加する工程、
b)被検試料に含まれる微生物のDNA又はRNAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅する工程、及び
c)増幅産物を解析する工程。
本発明の方法においては、増幅の対象は核酸全般のいずれであってもよく、具体的には1本鎖DNA、2本鎖DNA、1本鎖RNA、及び2本鎖RNAを例示することができる。
本明細書において、「被検試料」とは、その中に存在する微生物の生細胞を検出する対象であり、核酸増幅法による染色体DNA、又はRNAの特定領域の増幅によって存在を検出することが可能なものであれば特に制限されないが、食品、生体試料、飲料水、工業用水、環境用水、排水、土壌、又は拭き取り試料等が挙げられる。
特に、食品としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調製用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の氷菓;殺菌ミルク、加工乳、乳飲料、発酵乳、バター等の乳製品;経腸栄養食品、流動食、育児用ミルク、スポーツ飲料;特定保健用食品、健康補助食品等の機能性食品等が好ましい。
また、生体試料としては、血液試料、尿試料、髄液試料、滑液試料、胸水試料、喀痰試料、糞便試料、鼻腔粘液試料、喉頭粘液試料、胃洗浄液試料、膿汁試料、皮膚粘膜試料、口腔粘液試料、呼吸器粘膜試料、消化器粘膜試料、眼結膜試料、胎盤試料、生殖細胞試料、産道試料、母乳試料、唾液試料、嘔吐物、又は水疱内容等が例示される。
さらに、環境用水としては、市水、地下水、河川水、又は雨水等が例示される。
本発明においては、被検試料は、前記のような食品、生体試料、飲料水、工業用水、環境用水、排水、土壌、又は拭き取り試料等そのものであってもよく、これらを希釈もしくは濃縮したもの、又は本発明の方法による処理以外の前処理をしたものであってもよい。前記前処理としては、加熱処理、濾過、遠心分離等が挙げられる。
また、被検試料中に存在する微生物以外の細胞、タンパク質コロイド粒子、脂肪及び糖質等の夾雑物は、これらを分解する活性を有する酵素による処理等によって除去又は低減させてもよい。前記被検試料中に存在する微生物以外の細胞としては、被検試料が乳、乳製品、乳又は乳製品を原料とする食品である場合には、ウシ白血球及び乳腺上皮細胞等が挙げられる。また、被検試料が血液試料、尿試料、髄液試料、滑液試料又は胸水試料等の生体試料の場合には、赤血球、白血球(顆粒球、好中球、好塩基球、単球、リンパ球等)、及び血小板等が挙げられる。
前記酵素としては、前記夾雑物を分解することができ、かつ、検出対象の微生物の生細胞を損傷しないものであれば特に制限されないが、例えば、脂質分解酵素、タンパク質分解酵素、及び糖質分解酵素が挙げられる。前記酵素は、1種類の酵素を単独で用いてもよいし、2種又はそれ以上の酵素を併用してもよいが、脂質分解酵素及びタンパク質分解酵素の両方、又は脂質分解酵素、タンパク質分解酵素、及び糖質分解酵素の全てを用いることが好ましい。
脂質分解酵素としては、リパーゼ、フォスファターゼ等が、タンパク質分解酵素としてはセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、プロテイナーゼK、プロナーゼ等が、糖質分解酵素としてはアミラーゼ、セルラーゼ、N−アセチルムラミダーゼ等が挙げられる。
「微生物」は、本発明の方法により検出される対象であり、核酸増幅法により検出することが可能であって、かつ、DNA又はRNAに結合する白金錯体の微生物に対する作用が生細胞と死細胞や損傷細胞とで異なるものであれば、特に制限されないが、好ましくは細菌、糸状菌、酵母、又はウイルス等が挙げられる。細菌としては、グラム陽性菌及びグラム陰性菌のいずれもが含まれる。
グラム陽性菌としては、ブドウ球菌(スタフィロコッカス・エピダーミディス(Staphylococcus epidermidis))等のスタフィロコッカス属細菌、肺炎球菌(ストレプトコッカス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae))、ストレプトコッカス・ピオジェネス(Streptcoccus pyogenes)等のストレプトコッカス属細菌、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)等のリステリア属細菌、バチラス・セレウス(Bacillus cereus)、炭疽菌(バチラス・アンスラシス(Bacillus anthracis))等のバチラス属細菌、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラー(Mycobacterium intracellulare)等のマイコバクテリウム属細菌、ボツリヌス菌(クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum))、ウェルシュ菌(クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens))等のクロストリジウム属細菌等が挙げられる。
また、グラム陰性菌としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエシェリヒア属細菌、クロノバクター・サカザキ(Cronobacter sakazakii)(旧名、エンテロバクター・サカザキ(Enterobacter sakazakii))等のエンテロバクター属細菌、シトロバクター・コーセリ(Citrobacter koseri)等のシトロバクター属細菌、クレブシェラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)等のクレブシェラ属細菌に代表される腸内細菌群、サルモネラ属細菌、ビブリオ属細菌、シュードモナス属細菌、レジオネラ属細菌等が挙げられる。
ウイルスとしては、エンベロープを有するインフルエンザウイルス等のウイルス、及び、エンベロープを有さずヌクレオカプシドのみを有するノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどが挙げられる。
ウイルスに関しては、後記実施例2〜4、6〜8、9に示されるように、白金錯体であるシスプラチン(cis-ジアンミン白金(II)ジクロリド)、cis-ジアンミン(ピリジン)クロロ白金(II)クロリド、ジクロロ(エチレンジアミン)白金(II)、塩化白金、cis-ビス(ベンゾニトリル)ジクロロ白金(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、二硝酸(エチレンジアミン)ヨウ化白金(II)ダイマー、塩化白金酸六水和物や、塩化白金をジメチルスルホキシドに溶解して得られる錯体による処理によりグラム陰性細菌であるクロノバクター・サカザキの生細胞と死細胞の識別が可能であることが示されたことにより、グラム陰性細菌細胞壁外膜と同成分であるインフルエンザウイルス等の最外殻エンベロープについても、完全性を保ったエンベロープを有する活性型ウイルス(生きたウイルス)はシスプラチン等の白金錯体は透過せず、損傷エンベロープを有する不活性型ウイルス(死んだウイルス)は白金錯体を容易に透過することが類推できる。さらに、実施例5に示されるように、シスプラチンにより、スタフィロコッカス・アウレウスの生細胞と死細胞の識別が可能であることが示された。これらの結果から、白金錯体は、微生物全般について生細胞と死細胞の識別に使用できると考えられる。
本発明において「生細胞」(Live cell)とは、一般に好適な培養条件によって培養した際に増殖が可能であって、その微生物が有する代謝活性を示す状態(Viable-and-Culturable state)であり、細胞壁の損傷はほとんど無い微生物をいう。なお、ここでいう代謝活性とはATP活性やエステラーゼ活性を例示することができる。本発明においては、ウイルス粒子も、便宜的に「細胞」と呼ぶ。「生細胞」は、ウイルスに関しては、哺乳動物細胞に感染し、増殖できる状態をいう。
「死細胞」(Dead cell)とは、好適な培養条件によって培養した場合であっても増殖は不可能であって、代謝活性を示さない状態(Dead)の微生物である。また、細胞壁の構造は維持されているものの、細胞壁自体は高度に損傷を受けており、ヨウ化プロピジウムのような弱透過性の核染色剤等が細胞壁を透過する状態である。ウイルスに関しては、哺乳動物細胞に感染できない状態をいう。
「損傷細胞」(Injured cell又はViable-but-Non Culturable cell)とは、人為的ストレス又は環境的ストレスにより損傷を受けているために、一般に好適な培養条件によって培養した場合であっても、増殖は困難であるが、その微生物が有する代謝活性は、生細胞と比較すると低下しているものの死細胞と比較すると有意に活性を有する状態の微生物である。ウイルスに関しては、哺乳動物細胞に感染したとしても、細胞中で増殖できない状態をいう。
本明細書においては、特記しない限り、「生細胞」、「死細胞」及び「損傷細胞」は、微生物の生細胞、死細胞及び損傷細胞を意味する。
特に、食品衛生検査や臨床検査において、穏和な加熱処理や抗生物質投与により、損傷細胞の状態を呈した細菌の検出が注目されており、本発明においては、生細胞の検出のみならず、生細胞と死細胞又は損傷細胞との識別も可能な微生物の検出方法を提供するものである。
尚、生細胞、損傷細胞及び死細胞の細胞数単位は、通常、いずれも細胞数(cells)/mlで表される。
生細胞の細胞数は、好適な平板培地上で好適な条件で培養したときのコロニー形成数(cfu/ml(colony forming units / ml))で近似させることができる。また、損傷細胞の標準試料は、例えば、生細胞けん濁液を加熱処理、例えば沸騰水中で加熱処理することにより調製することができるが、その場合は、損傷細胞の細胞数は、加熱処理する前の生細胞けん濁液のcfu/mlで近似させることができる。尚、損傷細胞を調製するための沸騰水中での加熱時間は、微生物の種類により異なるが、例えば実施例に記載された細菌では、50秒程度で損傷細胞を調製することができる。
さらに、損傷細胞の標準試料は、抗生物質処理によっても調製することができるが、その場合は、損傷細胞の細胞数は、生細胞けん濁液を抗生物質で処理した後、抗生物質を除去し、可視光(波長600nm)の透過度、すなわち濁度を測定し、生細胞数濃度が予め判っている生細胞けん濁液の濁度と比較することにより、好適な平板培地上で好適な条件で培養したときのコロニー形成数(cfu/ml)で近似させることができる。
ウイルスでは、細胞数単位は、プラーク形成単位(pfu又はPFU(plaque-forming units))で表される。
尚、本発明の方法は、生細胞の検出が目的であり、生細胞と区別される微生物は、損傷細胞であっても死細胞であってもよい。
本発明において、「生細胞の検出」とは、被検試料中の生細胞の有無の判別及び生細胞の量の決定のいずれをも含む。また、生細胞の量とは、絶対的な量に限られず、対照試料に対する相対的な量であってもよい。また、「生細胞を、死細胞又は損傷細胞と識別して検出する」とは、死細胞又は損傷細胞に比べて選択的に検出することを意味する。尚、「生細胞と死細胞又は損傷細胞との識別」には、生細胞と、死細胞及び損傷細胞の両方との識別も含まれる。
以下、本発明の方法を工程毎に説明する。尚、前記したように、以下の工程の前に、任意の工程として、被検試料を、被検試料中に存在する微生物以外の細胞、タンパク質コロイド粒子、脂肪、又は糖質を分解する活性を有する酵素で処理する工程を含んでいてもよい。
(1)工程a)
被検試料に、白金錯体(以下、「本発明の薬剤」、又は単に「薬剤」とも記載する。)を添加する。すなわち、被検試料中の微生物を、前記薬剤で処理する。
後述するように、前記薬剤は、核酸(DNA又はRNA)に直接的に結合して、ターゲット領域のPCR反応を阻害すると推定される。したがって、本発明の薬剤は、核酸に結合する薬剤であり得る。本発明の薬剤とDNA又はRNAとの結合は、配位結合(共有結合)であり得る。
前記薬剤は、生細胞と、損傷細胞又は死細胞及びウシ白血球等の体細胞、白血球、血小板等に対する作用が異なるものであることが好ましく、より具体的には、生細胞の細胞壁よりも損傷細胞もしくは死細胞の細胞壁、又はウシ白血球等の体細胞、白血球、血小板等の細胞膜に対して透過性が高いものであることが好ましい。
白金錯体としては、生細胞と損傷細胞又は死細胞の細胞壁に対する透過性が異なり、かつ、細胞内の核酸に結合してターゲット領域のPCR反応を阻害し得る限り、特に制限されないが、例えば、配位子として、少なくともNH3、RNH2、ハロゲン元素(Cl、F、Br、I、At)、カルボキシレート(-CO-O-)基、ピリジン基、H2O、CO3 2-、OH-、NO3 2-、ROH、N2H4、PO4 3-、R2O、RO-、ROPO3 2-、(RO)2PO2 -、R2S、R3P、RS-、CN-、RSH、RNC、(RS)2PO2 -、(RO)2P(O)S-、SCN-、CO、H-、又はR-から選ばれる一つを含む白金錯体が挙げられる(ただし、前記「R」の表記は、いずれも飽和又は不飽和有機基を表す)。白金錯体は、上記のような配位子を一つ含んでいてもよく、同一又は異なる配位子を複数含んでいてもよい。また、上記以外の配位子を含んでいてもよい。
前記飽和有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロブチル、ペンチル基、シクロペンチル、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、シクロオクチル基等のアルキル基等が挙げられる。また、不飽和有機基としては、ベンジル基(ベンゼン環)、ナフチル基(ナフタレン環)、アリル基、シクロオクタジエニル基等が挙げられる。これらの飽和有機基及び不飽和有機基は置換基を有していてもよい。
上記配位子としては、NH3、RNH2、ハロゲン元素(Cl、F、Br、I、At)、カルボキシレート基、ピリジン基、H2O、CO3 2-、OH-、NO3 2-、ROH、N2H4、PO4 3-、R2O、RO-、ROPO3 2-、(RO)2PO2 -、R3P、及びRNCが好ましい(ただし、前記「R」の表記は、いずれも飽和又は不飽和有機基を表す)。これらの中では、NH3、RNH2、ハロゲン元素、カルボキシレート基、ピリジン基、R3P、及びRNCが特に好ましい。
ハロゲン元素としては、Cl(塩素)が好ましい。
Lippardら(生物無機化学 Lippard, S.J. and Berg, J.M.著;松本和子監修、21-23頁“生物無機化学の研究における配位化学の原理”)の表2・1には、金属(ソフト、中間、ハードのルイス酸)と配位子(ソフト、中間、ハードのルイス塩基)の関係が記載されており、個々の例外はあるものの、ソフトなルイス酸はソフトなルイス塩基と結合しやすく、ソフトなルイス酸は、ハードなルイス塩基よりソフトなルイス塩基と結合しやすい(同書21-22頁参照)、といわれている。そして、ソフトなルイス酸である白金の各ルイス塩基との結合性は、[中間のルイス塩基]>[ソフトなルイス塩基]>[ハードなルイス塩基]の順である(「ブリプラチン注10 mg、ブリプラチン注25 mg、ブリプラチン注50 mg BRIPLATIN INJECTION(シスプラチン注射液)製品情報概要」、ブリストール・マイヤーズ株式会社、2007年12月参照)。
このように、白金に限ってソフトなルイス酸であるにも関わらず、中間のルイス塩基である核酸のAやGを配位結合の相手として一番好むので、ハード又はソフトなルイス塩基と白金を予め配位結合させた白金錯体は、細胞中で核酸のAやGに配位結合して安定化されると推定される。したがって、核酸との結合性の観点からは、本発明の薬剤は、ハード又はソフトなルイス塩基と白金が配位結合した化合物が好ましく、ハードなルイス塩基と白金が配位結合した化合物がより好ましい。
中間のルイス塩基(例えばNO2 -、Ar-NH2[Arは芳香環を始めとする不飽和有機基]、N2、SO3 2-、N3 -、又はイミダゾール環など)を配位子として含む白金錯体であっても、本発明に使用できるが、微生物の生死判定の感度又は精度の点からは、ハード又はソフトなルイス塩基と白金が配位結合した白金錯体が好ましい。
一方、一般に生細胞と比較して死細胞は形態学的に損傷が激しく(損傷の程度が軽度なのが損傷細胞)、ハード又はソフトなルイス塩基を配位子として含む錯体は、一般に生細胞より死細胞(損傷細胞も含む)の方が透過性は高いと考えられる。また、錯体は、全体としてプラスチャージかマイナスチャージの方が、無極性の場合よりも、一般には生細胞内へ透過し難いといわれている。したがって、本発明の薬剤は、薬剤全体としてプラスチャージかマイナスチャージであることが好ましいと考えられる。しかしながら、シスプラチンのように、化合物全体として無極性であっても、作用時間をある程度短くすることによって、生細胞への透過は有意に抑制され得る(実施例参照)ので、無極性であってもよい。
白金錯体として具体的には、下記の化合物が挙げられる。
シスプラチン(cisplatin、cis-ジアンミン白金(II)ジクロリド、cis-diammineplatinum (II) dichloride、又はcis-dichlorodiammine platinum(II);cis-DDP)、
カルボプラチン(Carboplatin、cis-diammine(1,1-cyclobutanedicarboxylate)platinum)、
cis−ジアンミン(ピリジン)クロロ白金(II)クロリド(cis-diammine (pyridine) chloroplatium(II) chloride; cis-DPCP)、
ジクロロ(エチレンジアミン)白金(II)(dichloro(ethylenediamine)platinum(II))、
トランスプラチン(transplatin、trans-diamminedichloroplatinum(II))、
クロロ(2,2':6',2''-テルピリジン)白金(II)クロリド二水和物(chloro(2,2':6',2''-terpyridine)platinum(II) chloride dihydrate)、
ビス(アセチルアセトナト)白金(II)(bis(acetylacetonato)platinum(II))、
cis−ジクロロビス(ピリジン)白金(II)(cis-dichlorobis(pyridine)platinum(II))、
白金オクタエチルポルフィリン(platinum octaethylporphyrin)、
白金(II)アセチルアセトナト(platinum(II) acetylacetonate)、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)(tetrakis(triphenylphosphine)platinum(0))、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)(tetrakis(triphenylphosphine)platinum(II)、
ジクロロ(ジシクロペンタジエニル)白金(II)(dichloro(dicyclopentadienyl)platinum(II))、
[エチルイミノビス(ジフェニルシランジイル)]ビス(トリメチルホスホニオ)白金(IV)([ethyliminobis(diphenylsilanediyl)]bis(trimethylphosphonio)platinum(IV))、
ビス(メチルチオ)ジメチル白金(IV)(bis(methylthio)dimethylplatinum(IV))、
トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)(trimethyl(methylcyclopentadienyl)platinum(IV))、
エチレンビス(トリフェニルホスフィン)白金(0)(ethylenebis(triphenylphosphine)platinum(0))、
ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)白金(0)(bis(tri-tert-butylphosphine)platinum(0))、
ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)白金(II)(dichloro(1,5-cyclooctadiene)platinum(II))、
ジクロロ(1,2-ジアミノシクロヘキサン)白金(II)(dichloro(1,2-diaminocyclohexane)platinum(II))、
ジクロロ(1,10-フェナンスロリン)白金(II)(dichloro(1,10-phenanthroline)platinum(II))、
cis−ジクロロビス(トリエチルホスフィン)白金(II)(cis-dichlorobis(triethylphosphine)platinum(II))、
trans−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)(trans-dichlorobis(triphenylphosphine)platinum(II))、
trans−ジクロロビス(トリエチルホスフィン)白金(II)(trans-dichlorobis(triethylphosphine)platinum(II))、
cis−ジクロロビス(ジエチルスルフィド)白金(II)(cis-dichlorobis(diethyl sulfide)platinum(II))、
ジクロロ(2,2':6',2''-テルピリジン)白金(II)二水和物(dichloro(2,2':6',2''-terpyridine)platinum(II) dihydrate)、
(N,N,N'-トリメチルエチレンジアミン)白金(II)クロリド((N,N,N'-trimethylethylenediamine)platinum(II) chloride)、
ジクロロビス(ジメチルスルフィド)白金(II)(dichlorobis(dimethyl sulfide)platinum(II))、
ジクロロビス(エチレンジアミン)白金(II)(dichlorobis(ethylenediamine)platinum(II))、
オキサリプラチン(Oxaliplatin、[(1R,2R)-cyclohexane-1,2-diamine](ethanedioato-O,O')platinum(II))、
ネダプラチン(Nedaplatin、glycolato-O,O')diammineplatinum(II)、
ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、
アンモニウムヘキサクロロ白金酸(IV)(ammonium hexachloroplatinate(IV))、
アンモニウムテトラクロロ白金酸(II)(ammonium tetrachloroplatinate(II))、
ヘキサクロロ白金(IV)酸(hydrogen hexachloroplatinate(IV))、
ヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウム 六水和物、
テトラクロロ白金(II)酸カリウム、
テトラシアノ白金(II)酸カリウム 一水和物、
(2,2'-ビピリジン)ジクロロ白金(II)((2,2'-bipyridine)dichloroplatinum(II))、
(1,5-シクロオクタジエン)ジメチル白金(II)((1,5-cyclooctadiene)dimethylplatinum(II))、
cis-ビス(アセトニトリル)ジクロロ白金(II)(cis-bis(acetonitrile)dichloroplatinum(II))、
((+)-trans-ジクロロ(エチレン)α-メチルフェネチルアミン)白金(II)((+)-trans-dichloro(ethlene)(alpha-methylphenethylamine)platinum(II))、
cis-ビス(ベンゾニトリル)ジクロロ白金(II)(cis-bis(benzonitrile)dichloroplatinum(II))、
硝酸テトラアンミン白金(II)、
塩化白金酸(chloroplatinic acid)、
塩化白金酸 六水和物(chloroplatinic acid hexahydrate)、
二硝酸(エチレンジアミン)ヨウ化白金(II)ダイマー(ethylenediamine)iodoplatinum(II)dimer dinitrate)、
K2[Pt(CN)4]・H2O、
cis-ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、
テトラシアノ白金(II)酸セシウム(Cs2[Pt(CN)4])、
テトラシアノ白金(II)酸ナトリウム(Na2[Pt(CN)4])、
テトラシアノ白金(II)酸バリウム(四水和物)(Ba[Pt(CN)4]・4H2O)、
テトラシアノ白金(VI)酸ルビジウム(Rb2[Pt(CN)4])、
シアノ白金(Pt(CN)2)、
ジメチル白金、
水素化白金、
硫化白金。
好ましい錯体としては、下記の化合物が挙げられる。
シスプラチン(化1、分子量300.04)、
カルボプラチン(化2、分子量371.25)、
cis−ジアンミン(ピリジン)クロロ白金(II)クロリド(化3、分子量379.14)、
ジクロロ(エチレンジアミン)白金(II)(化4、分子量326.10)、
cis-ビス(ベンゾニトリル)ジクロロ白金(II)(化5、分子量472.23)、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)(化6、分子量1244.22)、
塩化白金酸 六水和物(分子量517.90)
二硝酸(エチレンジアミン)ヨウ化白金(II)ダイマー(ethylenediamine)iodoplatinum(II)dimer dinitrate)(化7、分子量888.17)。
H2[PtCl6]・6H2O
また、白金錯体として、白金化合物を、配位子として白金に結合し得る有機溶媒、又は配位子として白金に結合し得る物質を含む溶液に溶解することにより生成する白金錯体が挙げられる。このような白金化合物としては、例えば、白金と他の元素又は基との共有結合により巨大分子を形成する白金化合物が挙げられる。
前記元素又は基としては、ハロゲン元素(Cl、F、Br、I、At)、OH-、NO3 -、CH3COO-、PO4 3-、RO-、CO3 2-、ROPO3 2-、(RO)2PO2 -、RS-、CN-、(RS)2PO2 -、(RO)2P(O)S-、SCN-、H-、R-(ただし、前記「R」の表記は、いずれも飽和又は不飽和有機基を表す)等が挙げられる。前記白金化合物として具体的には、塩化白金、臭化白金、フッ化白金、ヨウ化白金、水酸化白金、硝酸白金、炭酸白金、酢酸白金、ジメトキシ白金、メトキシリン酸白金、リン酸白金、塩化白金酸、ジスルフメチル白金、ジシアノ白金、ジチオシアネート白金、二水素化白金、及びメチル白金等が挙げられる。これらのうち、好ましい化合物としては塩化白金、臭化白金、フッ化白金、及びヨウ化白金が挙げられ、特に好ましい化合物として塩化白金が挙げられる。塩化白金としては、塩化白金(II)(単量体の分子量265.99)、塩化白金(IV)(単量体の分子量336.89)が挙げられる。有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ベンゾニトリル(benzonitrile)等が挙げられる。塩化白金をDMSOに溶解して得られる錯体としては、ジクロロビス(ジメチルスルホキシド)白金(II)、及び、テトラキス(ジメチルスルホキシド)白金(II)が挙げられる。
また、配位子として白金に結合し得る物質を含む溶液としては、ハルマリン(harmaline)溶液、例えばハルマリン塩酸塩の水溶液等、及び、ジフェロセニル・ホスフィン(diferrocenyl-phosphine)溶液、例えばジフェロセニル・ホスフィンのDMSO溶液等、が挙げられる。前記のような白金を含む巨大分子をこれらの溶液に溶解すると、白金はハルマリンやジフェロセニル・ホスフィンにこれらを配位子として結合し直し、白金錯体として低分子化される。このようにして生成する白金錯体も、本発明に使用することができる。
白金錯体は、二量体等の多量体であってもよい。二量体としては、例えば、二硝酸(エチレンジアミン)ヨウ化白金(II)ダイマーが挙げられる。
白金錯体、及び、白金と他の元素又は基との共有結合により巨大分子を形成する白金化合物は、各種市販されており(例えば、和光純薬工業、シグマ)、それらを使用することができる。また、Weiss R.B., Christian M.C. (1993) Drugs 46:360; Gordon M., Hollander S. (1993) 24: 209; Khokhar A.R., Lopez-Berestein G., Perez-Soler P., US Patent 5 117 022, 1992; Brown D.B., Kohkhar A.R., Hacker M.P., McCommack J.J., European Patent EP 0130 482 b1, 1988; Yanai J., Japanese Patent JP 09 132 583 A2, 1997; Lippert B., Cisplatin: Chemistry and Biochemistry of Leading Anti-cancer Drugs, 1st Ed., John Wiley and sons, ltd., 1999に記載の方法にしたがって合成することもできる。
本発明の方法において、薬剤は1種類を単独で用いてもよいし、2種又はそれ以上を併用してもよい。
薬剤による処理の条件は、適宜設定することが可能であり、例えば、検出対象の微生物の生細胞及び死細胞もしくは損傷細胞のけん濁液に、種々の濃度の薬剤を加えて、種々の時間置いた後、遠心分離等によって菌体を分離し、核酸増幅法で分析することによって、生細胞と死細胞もしくは損傷細胞を区別しやすい条件を決定することができる。さらに、検出対象の微生物の生細胞、及びウシ白血球等の体細胞又は血小板等のけん濁液に、種々の濃度の薬剤を加えて、所定時間放置した後、遠心分離等によって菌体及び前記各種細胞を分離し、核酸増幅法で分析することによって、生細胞と各種細胞を区別しやすい条件を決定することができる。
このような条件として、具体的には、シスプラチンでは終濃度10〜3000μM、好ましくは25〜3000μM、4〜43℃、5分〜2時間が例示される。トランスプラチンでは終濃度10〜3000μM、4〜43℃、5分〜2時間が例示される。
カルボプラチンでは終濃度10〜3000μM、好ましくは250〜3000μM、4〜43℃、5分〜2時間が例示される。オキサリプラチン又はネダプラチンでは終濃度10〜3000μM、4〜43℃、5分〜2時間が例示される。
cis−ジアンミン(ピリジン)クロロ白金(II)クロリドでは終濃度10〜3000μM、好ましくは25〜3000μM、4〜43℃、5分〜2時間が例示される。ジクロロ(エチレンジアミン)白金(II)では終濃度10〜3000μM、4〜43℃、5分〜2時間が例示される。cis−ビス(ベンゾニトリル)ジクロロ白金(II)では終濃度10〜3000μM、好ましくは100〜3000μM、4〜43℃、5分〜2時間が例示される。テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)では終濃度10〜3000μM、好ましくは25〜3000μM、4〜43℃、5分〜2時間が例示される。二硝酸(エチレンジアミン)ヨウ化白金(II)ダイマーでは終濃度10〜3000μM、好ましくは400〜3000μM、4〜43℃、5分〜2時間が例示される。
また、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、又は塩化白金酸(もしくは塩化白金酸 六水和物)をDMSOに溶解して得られる錯体では、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、又は塩化白金酸の量として終濃度10〜3000μM、好ましくは10〜100μM、4〜43℃、5分〜2時間が例示される。
被検試料への薬剤の添加は、上記のように被検試料のけん濁液に薬剤を添加することによって行ってもよいが、薬剤の溶液に被検試料を添加することによって行ってもよい。
尚、エチジウムモノアザイド等を用いる従来の方法では、それらの架橋剤をDNA又はRNAと水素結合させた後に、DNA又はRNAの分子間を架橋させるために350nm〜700nmの波長の光照射を必要としているが、本発明の薬剤を用いる本発明の方法では、光照射を必要としない。また、そのため、光照射による試料の加熱を防ぐための冷却、例えば氷水への試料の浸漬も必要としない。
また、EMA等の薬剤では、露光による薬剤の変性を防ぐため、試料への光照射を除けば、暗室中などの遮光下におく必要があるが、本発明の薬剤を用いる場合は、遮光の必要もない。
本発明の薬剤は、生細胞の細胞壁よりも、死細胞及び損傷細胞の細胞壁の方が透過しやすい。したがって、前記に示す作用時間内であれば微生物の生細胞の細胞壁・細胞膜は実質的に透過せず、微生物の損傷細胞もしくは死細胞または死細胞になっている体細胞の細胞膜は透過すると考えられる。その結果、薬剤は、体細胞の死細胞及び微生物の死細胞並びに損傷細胞の細胞内に進入し、続いて、染色体DNA、又はRNAと結合し、その結果、薬剤が結合したDNA、又はRNAは、核酸増幅反応の鋳型とはならなくなると推定される。
生細胞よりも損傷細胞や死細胞に優先的に薬剤が透過すると、生細胞では染色体DNA又はRNAのターゲット領域が核酸増幅法により増幅されるのに対し、損傷細胞や死細胞では染色体DNA又はRNAに薬剤が結合し、核酸増幅反応が阻害されるため、生細胞を損傷細胞や死細胞に比べて選択的に検出することができる。
工程a)の薬剤による処理は、一回でもよく、又はそれ以上の回数を繰り返して行ってもよい。薬剤の濃度は、一回目の薬剤処理では、二回目以降よりも高くし、二回目以降の薬剤処理では、一回目よりも低くすることが好ましい。
また、一回目の薬剤処理では、二回目以降の薬剤処理よりも処理時間を短くすることが好ましい。
先の薬剤処理と、それ以降の薬剤の間で、未反応の薬剤を除去する工程を追加してもよい。薬剤を除去する方法としては、被検試料を遠心分離して、微生物を含む沈殿と薬剤を含む上清とを分離し、上清を除去する方法が挙げられる。この場合、薬剤を除去した後、適宜、洗浄剤で微生物を洗浄する工程を追加することも可能である。更には、本薬剤中の白金元素は核酸のアデニン(A)やグアニン(G)を好んで配位結合するので、本薬剤作用後、ターゲット遺伝子を含まない核酸やオリゴヌクレオチドを新たに添加することにより、未反応の本薬剤は除去(不活性化)が可能である。
また、薬剤処理した試料は、下記工程b)の前に、未反応の薬剤を除去しておくことが好ましい。
(2)工程b)
次に、薬剤処理後の被検試料に含まれる微生物のDNA又はRNAのターゲット領域を、核酸増幅法により増幅する。
核酸増幅の鋳型となるDNA又はRNAは、微生物の細胞から抽出したものを用いてもよいし、細胞からの核酸の抽出を行わずに薬剤処理した試料をそのまま用いてもよいが、細胞からの核酸の抽出を行わないことが好ましい。
細胞からの核酸の抽出を行わずに核酸増幅を行う場合は、被検試料を含む核酸増幅反応液に、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤を添加して、核酸増幅反応を行うことが好ましい(特許第4825313号、WO2011/010740参照)。また、被検試料を含む核酸増幅反応液に、さらにマグネシウム塩、及び有機酸塩又はリン酸塩を添加することがより好ましい。また、被検試料を含む核酸増幅反応液に、さらに界面活性剤を添加することが特に好ましい。
さらに、増幅反応液には、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤に追加して、界面活性剤、マグネシウム塩、又は有機酸塩又はリン酸塩を添加することも可能である。これらは、いずれか一種、又は任意の二種以上の組合わせで使用することができる。これらの全てを添加することが特に好ましい。前記核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤、界面活性剤、マグネシウム塩、及び有機酸塩又はリン酸塩の添加の順序は問わず、また、同時に添加してもよい。必要に応じ、核酸伸長酵素も通常のPCR法で使用している濃度の2倍〜10倍の濃度で添加してもよい。
核酸増幅阻害物質とは、核酸増幅反応又は核酸伸張反応を阻害する物質であって、例えば、核酸(DNA又はRNA)の鋳型に吸着する正電荷阻害物質、又は核酸合成酵素(DNAポリメラーゼなど)に吸着する負電荷阻害物質等が挙げられる。前記正電荷阻害物質としては、カルシウムイオン、ポリアミン、ヘム(heme)等が挙げられる。また、負電荷阻害物質としては、フェノール、フェノール系化合物、ヘパリン、グラム陰性細菌細胞壁外膜等が挙げられる。食品や臨床検体中には、このような核酸増幅反応を阻害する物質が多く含まれているといわれている。
上記のような核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤としては、アルブミン、デキストラン、T4ジーン32プロテイン、アセトアミド、ベタイン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、グリセロール、ポリエチレングリコール、大豆トリプシンインヒビター、α2−マクログロブリン、テトラメチルアンモニウムクロライド、リゾチームから、ホスホリラーゼ、及び乳酸脱水素酵素選択される1種又は複数種を例示することができる。
前記ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール400又はポリエチレングリコール4000が例示される。ベタインとしては、トリメチルグリシンやその誘導体等が挙げられる。また、ホスホリラーゼ及び乳酸脱水素酵素としては、ウサギ筋肉由来のグリコーゲンホスホリラーゼ及び乳酸脱水素酵素が挙げられる。なお、グリコーゲンホスホリラーゼとしては、グリコーゲンホスホリラーゼbが好ましい。
特に、アルブミン、デキストラン、T4ジーン32プロテイン、又はリゾチームを使用することが好ましい。
血液、糞便、及び肉を検査材料として想定し、それら検査材料中に含まれる核酸増幅阻害物質の阻害作用を低減させる試みとして上記のような物質をPCR反応液に加えて、前記阻害作用の低減が評価されている(Abu Al-Soud, W. et al, Journal of Clinical Microbiology, 38:4463-4470, 2000)。
BSA(ウシ血清アルブミン)に代表されるアルブミンは、ヘム(heme)のような核酸増幅阻害物質に結合することにより、核酸増幅阻害を低減させている可能性が示唆されている(前記Abu Al-Soudら)。また、T4ジーン32プロテインは1本鎖DNA結合性タンパク質であり、核酸増幅過程で鋳型となっている1本鎖DNAに予め結合して鋳型が核酸分解酵素による分解から免れ、核酸増幅反応が阻害されず促進されるか、又は、BSAと同様の核酸増幅阻害物質に結合することにより、核酸増幅が阻害されず進行する、という二つの可能性が考えられている(前記Abu Al-Soudら)。
さらに、BSA、T4ジーン32プロテイン、及びタンパク質分解酵素阻害剤(proteinase inhibitor)はタンパク質分解酵素(proteinase)に結合することによりタンパク質分解活性を低減させ、核酸合成酵素の働きを最大限に引き出す可能性が示唆されている。事実、牛乳や血液にはタンパク質分解酵素が残存していることもあり、その際、BSA又はタンパク質分解酵素阻害剤(大豆トリプシンインヒビターやα2-マクログリブリン)の添加により核酸合成酵素が分解を受けず、核酸増幅反応が良好に進行したケースも紹介されている(前記Abu Al-Soudら)。
また、デキストランは一般にグルコースを原料として乳酸菌が合成する多糖類である。ムチンという同様の多糖類−ペプチド複合体が腸管粘膜に接着することも報告されており(Ruas-Madiedo, P., Applied and Environmental Microbiology, 74:1936-1940, 2008)、デキストランが負電荷阻害物質(核酸合成酵素に吸着)、又は正電荷阻害物質(核酸に吸着)に予め吸着することにより、それら阻害物質に結合する可能性は十分あるものと推察される。
また、リゾチームは、牛乳中に多数含まれていると考えられる核酸増幅阻害物質と吸着しているものと推察される(前記Abu Al-Soudら)。
以上のことから、アルブミン、T4ジーン32プロテイン、デキストラン、及びリゾチームに代表される上記物質は、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤であるといえる。
アルブミンとしては、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミン、乳アルブミン、ヒト血清アルブミン等が挙げられる。これらの中ではウシ血清アルブミン(BSA)が好ましい。アルブミンは精製品でもよく、本発明の効果を損わない限りグロブリン等の他の成分を含んでいてもよい。また、分画物であってもよい。被検試料(核酸増幅反応液)中のアルブミンの濃度は、例えば、通常0.0001〜1質量%、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.2〜0.6質量%である。
デキストランとしては、デキストラン40やデキストラン500等が挙げられる。これらの中ではデキストラン40が好ましい。被検試料(核酸増幅反応液)中のデキストランの濃度は、例えば、通常1〜8%、好ましくは1〜6%、より好ましくは1〜4%である。
T4ジーン32プロテイン(例えば、ロシュ社製:gp32とも呼ばれる)の被検試料(核酸増幅反応液)中の濃度は、通常0.01〜1%、好ましくは0.01〜0.1%、より好ましくは0.01〜0.02%である。
リゾチームとしては、卵白由来のリゾチームが挙げられる。被検試料(核酸増幅反応液中のリゾチームの濃度は、例えば、通常1〜20μg/ml、好ましくは6〜15μg/ml、より好ましくは9〜13μg/mlである。
界面活性剤としては、Triton(ユニオンカーバイド社の登録商標)、Nonidet(シェル社)、Tween(ICI社の登録商標)、Brij(ICI社の登録商標)等の非イオン系界面活性剤、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)等の陰イオン系界面活性剤、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。TritonとしてはTriton X-100(ポリエチレングリコール tert−オクチルフェニルエーテル)等が,NonidetとしてはNonidet P-40(オクチルフェニル−ポリエチレングリコール)等が、TweenとしてはTween 20(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウラート)、Tween 40(ポリエチレングリコールソルビタンモノパルミタート)、Tween 60(ポリエチレングリコールソルビタンモノステアラート)、Tween 80(ポリエチレングリコールソルビタンモノオレアート)等が、BrijとしてはBrij56(ポリオキシエチレン(10) セチルエーテル)、Brij58(ポリオキシエチレン(20) セチルエーテル)等が挙げられる。
被検試料(核酸増幅反応液中の界面活性剤の種類及び濃度は、微生物の細胞内へのPCR試薬の透過を促進し、核酸増幅反応を実質的に阻害しない限り特に制限されない。具体的には、SDSの場合は、例えば、通常0.0005〜0.01%、好ましくは0.001〜0.01%、より好ましくは0.001〜0.005%、より好ましくは0.001〜0.002%である。
他の界面活性剤の場合、例えば、Nonidet P-40の場合は、通常、0.001〜1.5%、好ましくは0.002〜1.2%、より好ましくは0.9〜1.1%、Tween 20の場合は、通常、0.001〜1.5%、好ましくは0.002〜1.2%、より好ましくは0.9〜1.1%、Brij56及びBrij58の場合は、通常0.1〜1.5%、好ましくは0.4〜1.2%、より好ましくは0.7〜1.1%である。
核酸増幅反応に用いる酵素溶液に界面活性剤が含まれている場合は、同酵素溶液由来の界面活性剤のみでもよいし、さらに同種又は異なる界面活性剤を追加してもよい。
マグネシウム塩としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。被検試料(核酸増幅反応液)中のマグネシウム塩の濃度は、例えば、通常1〜10mM、好ましくは2〜6mM、より好ましくは2〜5mMである。
有機酸塩としては、クエン酸、酒石酸、プロピオン酸、酪酸等の塩が挙げられる。塩の種類としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。また、リン酸塩として、ピロリン酸等が挙げられる。これらは、1種でもよく、2種又は3種以上の混合物であってもよい。被検試料(核酸増幅反応液)中の有機酸塩又はリン酸塩の濃度は、例えば、通常合計量で0.1〜20mM、好ましくは1〜10mM、より好ましくは1〜5mMである(特許第4127847号、WO2007/094077参照)。
被検試料から核酸を抽出する場合は、抽出方法は、抽出されたDNAが核酸増幅における鋳型として機能し得る限り特に制限されず、一般的に用いられている微生物のDNAの抽出法にしたがって行うことができる。
DNAの抽出法は、例えば、Maniatis T., Fritsch E.F., Sambrook, J.: Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd edn. Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に記載されている。
被検試料からの核酸の抽出を行わない場合は、上記核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤、及び必要に応じて他の各成分の存在下で、細胞内に存在していたDNA又はRNAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅する。核酸増幅の鋳型には、微生物細胞けん濁液、又はタンパク質分解酵素、脂質分解酵素、又は糖分解酵素等で処理した微生物細胞のけん濁液を用い、鋳型調製のための核酸の抽出は行わないことが好ましい。
被検試料から核酸の抽出を行う場合は、抽出したDNA又はRNAを鋳型として、通常の方法によりターゲット領域を核酸増幅法により増幅する。
核酸増幅法は、高温、例えば90〜95℃、好ましくは93〜95℃、より好ましくは94〜95℃における核酸の熱変性のステップを含むことが好ましい。
核酸増幅法としては、PCR法(White,T.J. et al., Trends Genet., 5, 185(1989))、LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification:新規遺伝子増幅法(LAMP法)の原理と応用 、納富継宣、長谷哲、BIO INDUSTRY, Vol.18, No.2, 15-23, 2001)、SDA法(Strand Displacement Amplification:Edward L. Chan, et al.,Arch. Pathol. Lab. Med., 124:1649-1652, 2000)、LCR法(Ligase Chain Reaction:Barany, F., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.88, p.189-193, 1991)、TMA法(Transcription-Mediated-Amplification:Sarrazin C. et al., J. Clin. Microbiol., vol.39: p.2850-2855 (2001))、TRC法(Transcription-Reverse Transcription-Concerted method:Nakaguchi Y. et al., J. Clin. Microbiol., vol.42: p.4248-4292 (2004))、HC法(Hybrid Capture:Nazarenko I., Kobayashi L. et al., J. Virol. Methods, vol.154: p.76-81, 2008)、SMAP法(Smart Amplification Process、Smart Amp法;Mitani Y., et al., Nature Methods, vol.4, No.3, p.257-262 (2007))、マイクロアレイ法(Richard P. Spence, et al., J. Clin. Microbiol., Vol.46, No.5, p.1620-1627, 2008)等がそれぞれ例示される。なお、本発明においては、PCR法を利用することが特に好ましいが、これに制限されない。
本発明において「ターゲット領域」とは、染色体DNA、又はRNAのうち、本発明に用いるプライマーを用いた核酸増幅法により増幅され得る領域であり、検出対象の微生物を検出することができるものであれば特に制限されず、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、被検試料に検出対象の微生物と異なる種類の細胞が含まれる場合には、ターゲット領域は、検出対象の微生物に特異的な配列を有することが好ましい。また、目的によっては、複数種の微生物に共通する配列を有するものであってもよい。さらに、ターゲット領域は単一であっても、複数であってもよい。
検出対象の微生物に特異的なターゲット領域に対応するプライマーセットと、広汎な微生物の核酸に対応するプライマーセットを用いると、検出対象の微生物の生細胞量と、多数種の微生物の生細胞量を、同時に測定することができる。ターゲット領域の長さとしては、通常50〜5000塩基、又は50〜3000塩基が挙げられる。
本発明の方法では、ターゲット領域が従来法よりも短い、例えば400塩基程度の長さであっても、生細胞と死細胞及び損傷細胞との識別が可能である。
核酸の増幅に用いるプライマーは、各種核酸増幅法の原理に基づいて、適宜設定することが可能であって、上記ターゲット領域を特異的に増幅することができるものであれば特に制限されない。
好ましいターゲット領域の例は、5S rRNA遺伝子、16S rRNA遺伝子、23S rRNA遺伝子、tRNA遺伝子、及び病原遺伝子等の各種特異遺伝子である。これらの遺伝子の一つ又はその一部をターゲットとしてもよく、2又はそれ以上の遺伝子にまたがる領域をターゲットとしてもよい。例えば、配列番号1及び2に示すプライマーセットを用いることにより、クロノバクター・サカザキ特異的な16S rRNA遺伝子の一部を増幅することができる。また、市販されている16S rRNA遺伝子増幅用プライマーを用いてもよい。
また、検出対象の微生物が病原性細菌である場合には、ターゲット領域としては病原遺伝子が挙げられる。病原遺伝子としては、リステリア属細菌のリステリオリシンO(hlyA)遺伝子、サルモネラ属細菌のenterotoxin(エンテロトキシン)遺伝子やinvasion(invA)遺伝子、病原性大腸菌O−157、O−26、O−111等のベロ毒素遺伝子、エンテロバクター属又はクロノバクター属細菌のouter-membrane-proteinA(ompA)遺伝子(クロノバクター・サカザキ菌)及びmacromolecular synthesis(MMS)オペロン(クロノバクター・サカザキ菌)、レジオネラ属細菌のmacrophage-invasion protein(mip)遺伝子、腸炎ビブリオ細菌の耐熱性溶血毒遺伝子、耐熱性溶血毒類似毒素遺伝子、赤痢菌及び腸管侵入性大腸菌のipa遺伝子(invasion plasmid antigen gene)や、invE遺伝子(invasion gene)、黄色ブドウ球菌エンテロトキシン遺伝子、バチルス・セレウス菌のセレウリド(嘔吐毒素)遺伝子やエンテロトキシン遺伝子、ボツリヌス菌の各種毒素遺伝子等が挙げられる。
また、エンベロープを有するインフルエンザウイルスの場合、ヘマグルチニン(Hタンパク質)遺伝子やノイラミニダーゼ(Nタンパク質)遺伝子、ノロウイルスに代表されるカリシウイルス科ウイルスのRNAポリメラーゼ遺伝子、各種カプシドタンパクをコードしている遺伝子領域等が挙げられる。食中毒ウイルスとしてノロウイルスの他、ロタウイルス、アデノウイルスもあり、対象遺伝子はノロウイルス同様、RNAポリメラーゼ遺伝子、カプシドタンパクをコードしている遺伝子領域が標的領域となる。
複数種の微生物に共通するプライマーを用いると、被検試料中の複数種の微生物の生細胞を検出することができる。また、特定の細菌に特異的なプライマーを用いると、被検試料中の特定の菌種の生細胞を検出することができる。
核酸増幅反応の条件は、各核酸増幅法(PCR法、LAMP法、SDA法、LCR法、TMA法、TRC法、HC法、SMAP法、及びマイクロアレイ法等)の原理に則った特異的な増幅が起る限り特に制限されず、適宜設定することができる。
(3)工程c)
核酸増幅法により増幅した増幅産物を解析する。増幅産物の解析は、工程b)で採用する核酸増幅法に応じて、工程b)に続いて行われるか、又は、工程b)と同時に行われる。例えば、リアルタイムPCRの場合は、工程c)は工程b)と同時に行われ得る。
解析法は、核酸増幅産物の検出又は定量が可能なものであれば特に制限されず、電気泳動法等が例示される。尚、核酸増幅法にPCR法を用いた場合は、リアルタイムPCR法(Nogva et al., Appl. Environ. Microbiol., vol.66, 2000, pp.4266-4271、 Nogva et al., Appl. Environ. Microbiol., vol.66, 2000, pp.4029-4036)を利用することが可能である。
電気泳動法によれば、核酸増幅産物の量、及びその大きさを評価することができる。また、リアルタイムPCR法によれば、迅速にPCR増幅産物の定量を行うことができる。
リアルタイムPCR法を採用する場合、一般に増幅サイクル数1〜10までは蛍光強度の変化はノイズレベルでありゼロに等しいので、それらを増幅産物ゼロのサンプルブランクと見なし、それらの標準偏差SDを算出し、そのSD値に10を乗じた値をスレッショールド値とし、そのスレッショールド値を最初に上回るPCRサイクル数をサイクルスレッショールド値(Ct値)という。従って、PCR反応溶液に初期のDNA鋳型量が多い程、Ct値は小さな値となり、鋳型DNA量が少ない程、Ct値は大きな値となる。また、鋳型DNA量が同じでも、その鋳型内のPCRのターゲット領域に切断が生じている割合が多くなる程、同領域のPCR反応のCt値は大きな値となる。
また、増幅産物の有無は、増幅産物の融解温度(TM)パターンを解析することによっても行うことができる。
上記の各方法は、本発明の方法における諸条件の最適化に際しても使用することができる。
本発明の方法によって生細胞を検出する場合、核酸増幅産物の解析は、同定されている微生物の標準試料を用いて作成された微生物量及び増幅産物との関連を示す標準曲線を用いると、生細胞の有無又は定量の精度を高めることができる。標準曲線は予め作成しておいたものを用いることができるが、被検試料と同時に標準試料について本発明の各工程を行って作成した標準曲線を用いることが好ましい。また、予め微生物量とDNA量又はRNA量との相関を調べておけば、その微生物から単離されたDNA又はRNAを標準試料として用いることもできる。
<2>本発明のキット
本発明のキットは、核酸増幅法により、被検試料中の微生物の生細胞を、死細胞又は損傷細胞と識別して検出するためのキットであって、白金錯体を含む。
本発明のキットは、さらに、検出対象の微生物のDNA又はRNAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅するためのプライマーを含んでいてもよい。
本発明のキットは、好ましい態様では、さらに核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤、マグネシウム塩、及び有機酸塩又はリン酸塩のいずれか、又はこれらの2種以上を含んでいてもよい。より好ましい態様では、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤、マグネシウム塩、及び有機酸塩又はリン酸塩のすべてを含んでいてもよい。更に、核酸伸長酵素を、通常のPCRもしくは通常のリアルタイムPCR時に使用する濃度の2倍〜10倍濃度を含んだ方が、より好ましい。また、本発明のキットは、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。
本発明のキットは、前記本発明の方法を実施するために用いることができる。
また、本発明のキットには、被検試料中に存在する微生物以外の細胞、タンパク質コロイド粒子、脂肪、又は糖質を分解する活性を有する酵素を追加することが可能である。
酵素、白金錯体、及び必要に応じて、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤、並びにマグネシウム塩、有機酸塩又はリン酸塩、及び界面活性剤は、これらの成分を全て含む単一の組成物であってもよいし、各成分を任意の組合わせで含む複数の溶液又は組成物であってもよい。
前記核酸増幅反応は、PCR法、LAMP法、SDA法、LCR法、TMA法、TRC法、HC法、SMAP法、又はマイクロアレイ法であることが好ましい。なお、上記キットにおいて、架橋剤や培地は、本発明の方法で説明したものと同様である。
本発明のキットに含まれる白金錯体として好ましいものは、前記本発明の方法について記載した化合物と同様である。
また、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤としては、アルブミン、デキストラン、及びT4ジーン32プロテイン、アセトアミド、ベタイン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、グリセロール、ポリエチレングリコール、大豆トリプシンインヒビター、α2−マクログロブリン、テトラメチルアンモニウムクロライド、リゾチーム、ホスホリラーゼ、及び乳酸脱水素酵素から選択されるいずれか一種又は複数種を例示することができる。
また、マグネシウム塩としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
また、有機酸塩としては、クエン酸、酒石酸、プロピオン酸、酪酸等の塩が挙げられる。塩の種類としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。また、リン酸塩として、ピロリン酸等が挙げられる。これらは、1種でもよく、2種又は3種以上の混合物であってもよい。
また、酵素としては、被検試料中に存在する微生物以外の細胞、タンパク質コロイド粒子、脂肪及び糖質等の夾雑物を分解することができ、かつ、検出対象の微生物の生細胞を損傷しないものであれば特に制限されないが、例えば、脂質分解酵素、タンパク質分解酵素、及び糖質分解酵素が挙げられる。前記酵素は、1種類の酵素を単独で用いてもよいし、2種又はそれ以上の酵素を併用してもよいが、脂質分解酵素及びタンパク質分解酵素の両方、又は脂質分解酵素、タンパク質分解酵素、及び糖質分解酵素の全てを用いることが好ましい。
脂質分解酵素としては、リパーゼ、フォスファターゼ等が、タンパク質分解酵素としてはセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、プロテイナーゼK、プロナーゼ等が、糖質分解酵素としてはアミラーゼ、セルラーゼ、N−アセチルムラミダーゼ等が挙げられる。
本発明のキットは、さらに、希釈液、白金錯体による反応用の反応液、核酸増幅用の酵素及び反応液、本発明の方法を記載した説明書等を含めることもできる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例において、特記しない限り、各操作は非遮光下で行った。
〔実施例1〕シスプラチン及びカルボプラチンによるPCR増幅抑制効果の検討
大腸菌群(Coliform bacteria)として代表的なクロノバクター・サカザキ(Cronobacter sakazakii)(旧名、エンテロバクター・サカザキ(Enterobacter sakazakii))を対象として、シスプラチン及びカルボプラチンによるPCR増幅に対する抑制効果を検討した。
1.試験材料及び培養方法
1−1)使用菌株及び培養方法
クロノバクター・サカザキ(Cronobacter sakazakii)ATCC29544を、ブレイン・ハート・インフュージョン・ブロス(Brain Heart Infusion Broth)(BHIブロス:Eiken Chemical Co., Ltd., Tokyo, Japan)を用いて、37℃、16時間培養した。同菌株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所 12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, United States of America)から入手することができる。
前記培養液1mlから、DNA抽出キット(QuickGene SP kit DNA tissue SP-DT; Fujifilm Corp., Tokyo, Japan)を用いて精製DNAを得た。その後、マイクロチューブ中で滅菌水により50 ng/100μlに調整した。染色体DNAは、1細胞当たり5×10-15 g (5 fg)とすると、前記DNA溶液100μl中のDNAは、クロノバクター・サカザキ107個細胞に相当し、細菌細胞濃度は108個細胞/ml相当と見なせる。尚、精製DNA溶液の260 nm及び280 nmの吸光度(OD260、OD280)(DNA溶液50μg/mlにおいてOD260=1.0、セル長1 cm)を測定し、DNA濃度をOD260から算出し、精製DNAの純度をOD260/OD280により評価した。
1−2)シスプラチン及びカルボプラチン溶液の調製、及びこれらの錯体による被検試料の処理
シスプラチン(Sigma)6.06 mg (20.2μmol)を正確に秤量し、404μlのジメチルスルホキシド(DMSO、D8418-50ML, Sigma)に溶解して50 mM溶液を調製した。この溶液を生理食塩水で希釈して5μM、50μM、200μM、500μM、1000μM、2mM、5mMのシスプラチン溶液を準備した。
また、カルボプラチン(Sigma、分子量371.25) 3.60mg (9.7μmol) を正確に秤量し、970μlの滅菌水(カルボプラチンはDMSOには不溶)に溶解し、10 mM水溶液を調製した。この溶液を滅菌水で希釈し、5μM、50μM、200μM、500μM、1000μM、2mM、5mMの各カルボプラチン水溶液を調製した。
各シスプラチン生理食塩水溶液又は各カルボプラチン滅菌水溶液100μlを、上記精製DNA水溶液100μlに加え、室温(25℃)にて30分間保持した。尚、本実施例においては、その間、各試料を遮光下に置いたが、通常の実験室環境下に置いてもよい(以下の各実施例においても同様)。また、非処理サンプルとして、各白金錯体生理食塩水溶液の代わりに100μlの生理食塩水又は滅菌水を用いて同様の処理を行い、陽性コントロールとした。
その後、各試料に、3M 酢酸ナトリウム水溶液20μl、及び500μlの冷エタノールを加えて10分氷水中に浸漬した後、冷却遠心分離(4℃、15,000×G、10分)を行い、上清を除去した。沈殿物(ペレット)を70%エタノール500μlにより洗浄し、真空乾燥した。乾燥したペレットを25μlの滅菌水に溶解した後、DNA濃度をOD260により測定し、全ての試験溶液を、一番低濃度のDNA溶液の濃度に統一させた。その一定濃度のDNA溶液5μlをPCR増幅用試料とした。
1−3)PCR増幅
まず、下記の表1に示すリアルタイムPCR用マスターミックスを調製した。PCR増幅には、Primer 16S forward: C. sakazakii 16S rRNA遺伝子検出用フォワードプライマー(5'-TAACAGGGAGCAGCTTGCTGCTCTG-3':配列番号1)、Primer 16S reverse: C. sakazakii 16S rRNA遺伝子検出用リバースプライマー(5'-CGGGTAACGTCAATTGCTGCGGT-3':配列番号2)をPCRプライマーとして使用した。増幅されるrRNA遺伝子の断片長は426 bpであった。16S TaqMan probeとしては、配列番号3(5'-CCGCATAACGTCTACGGACCAAA-3')の配列を有するオリゴヌクレオチドを用いた。尚、各プライマー及び16S TaqMan probeの塩基配列情報は、Kang, Eun Sil et al., J. Microbiol. Biotechnol. 17:516-519, 2007から入手した。リアルタイムPCR増幅は2回実施した。
リアルタイムPCR装置(StepOnePlus Real-Time PCR System; Applied Biosystems、他の実施例でも同様)を用いて、下記のPCRサーマルサイクル条件により、リアルタイムPCRを実施した。
1) 95℃, 20秒(1サイクル)
2) 95℃, 5秒; 55℃, 10秒; 72℃, 30秒(45サイクル)
尚、陰性コントロールとして、滅菌水5μlを鋳型として使用した。
2.結果
リアルタイムPCRの結果を表2に示す。表中、白金錯体濃度は、DNAの白金錯体処理時の終濃度である。
3.考察
表2の結果より、0.45% NaCl水溶液下では、シスプラチンは25μMにてPCR増幅反応を完全に抑制した。一方、カルボプラチンは滅菌水中250μMにてPCR増幅反応を完全に抑制した。
なお、シスプラチンの立体異性体であるトランスプラチン、並びに、カルボプラチンに構造が類似している白金錯体であるネダプラチン及びオキサリプラチンも、シスプラチン及びカルボプラチンと同様の作用を示すと考えられる。
〔実施例2〕シスプラチンによるクロノバクター・サカザキの生細胞・死細胞(Lactose brothけん濁液)の識別
クロノバクター・サカザキを対象として、シスプラチンを用いて細菌の生細胞と死細胞との識別を明瞭とするための条件の検討を行った。
1.試験材料及び培養方法
1−1)クロノバクター・サカザキATCC29544をBHIブロスにより37℃、16時間培養した。
前記培養液1 mlを冷却遠心分離(4℃、3,000×G、10分間)し、上清除去後、ペレットに1 mlの生理食塩水を添加し、更にその一部を生理食塩水にて10倍希釈して、生細胞けん濁液(1.2×108 CFU/ml)を調製した。
また、上記生細胞けん濁液1 mlを、1.5 mlのマイクロチューブ(Eppendorf, Hamburg, Germany)に分取し、沸騰水に2分間浸漬処理した後、急冷した。各けん濁液中の細胞は、標準寒天培地(Eiken, Tokyo, Japan)によりコロニーを形成しないことを確認し、損傷細胞/死細胞けん濁液(1.2×108 cells/ml。以下、損傷細胞と死細胞を包括して死細胞けん濁液と表記する。)を得た。
上記クロノバクター・サカザキの生細胞けん濁液、又は死細胞けん濁液をパールコア乳糖ブイヨン培地Lactose broth (Eiken)にて10倍希釈し(1.2×107 cells/ml)、それぞれ90μlを、下記試験に供した。
1−2)シスプラチン溶液の調製及び試料の処理
前述の実施例1と同様にして調製したシスプラチンの50 mM溶液を、生理食塩水にて希釈し、7.5 mM、15 mM、20 mM、及び30 mMのシスプラチン生理食塩水溶液を調製した。
各シスプラチン生理食塩水溶液10μlを、上記生細胞けん濁液又は死細胞けん濁液90μlに添加し、恒温水槽(PERSONAL-11、TAITEC, Tokyo, Japan)にて37℃で30分間保持した。尚、この操作は室温でもよい(以下の各実施例でも同様)。その後、冷却遠心(4℃、10,000×G、5分)し、上清を除去し、そのペレットを150μlの滅菌水にけん濁させ、よく攪拌した後、同様の冷却遠心分離を行い、上清を除去した。得られたペレット(細胞けん濁液5μl相当)をPCR増幅用試料とした。
1−3)PCR増幅
細胞からの核酸の抽出を行わずにPCRを効率よく行うために必要な核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤の混合物の濃縮液(この濃縮液を、濃縮ダイレクトバッファーコンポーネント、cDBCと記載する。)を調製した。
具体的には、ウシ血清アルブミン(BSA; Sigma A7906)、クエン酸三ナトリウム2水和物(TSC: Tri-Sodium Citrate Dihydrate; 関東化学、東京)、塩化マグネシウム6水和物(31404-15 ナカライテスク、京都)、卵白リゾチーム(126-02671 Lysozyme from egg white; 和光純薬、大阪)、Brij58(P5884-100G; Sigma)の各ストック溶液を、表3に示す濃度となるように混合し、cDBCを調製した。
例えば、PCR増幅 200検体用として16.6% Brij58、4.8% BSA、333 mM TSC、1 M MgCl2、2.5 mg/ml lysozymeの各ストック溶液を、それぞれ250μl、200μl、15μl、15μl、20μlの容量にて混和すれば、表3に示す500μlのcDBC(10×DBC)を調製することができる。尚、後述するTaqManFast Universal PCR Master Mix (2×)を用いて、メーカーマニュアルに従ってマスターミックス(qPCR)を調製すると、終濃度として2 mM相当のMgCl2が含まれていると推察されるため、合計のMgCl2は5 mM相当と推測された。
尚、Brij 56、 MgCl2、及びTSCは滅菌水にて溶解後、オートクレーブ(121℃、20分)し、水冷後室温に戻し、ストック溶液として使用した。BSA、Lysozymeは滅菌水にてストック溶液を調製し、0.22μmフィルターにて濾過滅菌し、ストック溶液とした。
次に、表4に示される、細胞からの核酸の抽出を行わずにリアルタイムPCR(細胞からの核酸の抽出せずに行うリアルタイムPCRを、以降「ダイレクト・リアルタイムPCR」と記載する。)行うためのマスターミックス(ダイレクト・リアルタイムPCR用マスターミックス)を調製した。PCR増幅は、実施例1と同じプライマーを用いて、前記PCR増幅用試料を鋳型として行った。リアルタイムPCR増幅は2回実施した。
リアルタイムPCR装置を用いて、下記のPCRサーマルサイクル条件により、リアルタイムPCRを実施した。
3) 95℃, 2分(1サイクル)
4) 95℃, 5秒; 55℃, 10秒; 72℃, 20秒(45サイクル)
陽性コントロールとして前記C. sakazakiiの生細胞けん濁液(1.2×108 CFU/ml)5μlを鋳型として使用した。又、陰性コントロールとして滅菌水5μlを鋳型として使用した。
2.結果
リアルタイムPCRの結果を表5に示す。又、PCR最終増幅産物(cis-DDP濃度2000μM)の電気泳動の結果を、図1に示す。
3.考察
シスプラチン濃度2000μM以上(3000μMを含む)では、生細胞のCt値が未処理のそれと比較して殆ど上がっておらず、かつ、死細胞のPCR増幅は完全に抑制された。この結果から、PCR増幅の前に被検試料をシスプラチンで処理することにより、生細胞を死細胞と区別することができることが明らかとなった。本方法は、光照射を必要としない。また、ターゲット領域が短くても(426 bp)、生細胞と死細胞の区別が可能であった。
〔実施例3〕シスプラチン及びによるクロノバクター・サカザキの生細胞・死細胞(生理食塩水けん濁液)の識別
前述の実施例2では、死細胞染色体にシスプラチンを効率よく結合させるために、Clイオンを含まず、かつ生細胞にとって好適環境であるLactose brothを用いて検討した(但し、Lactose brothで希釈した細胞けん濁液は、生理食塩水にけん濁されているため、生理食塩水に比べて1/10濃度のClイオンを含んでいる)。仮にシスプラチンが生細胞の細胞壁/細胞膜を一旦透過したとしても、その後、ATP依存性efflux ポンプを活性化させ各種トランスポーターより本薬剤を生細胞外へ排出することを意図したものであった。
そこで、本実施例3では、Lactose brothを生理食塩水に置き換えて検討を行った。
1.試験材料及び培養方法
1−1)前述の実施例2と同様にして、生理食塩水を用いてクロノバクター・サカザキATCC29544の生細胞けん濁液(6.4×107 CFU/ml)及び損傷細胞/死細胞けん濁液(6.4×107 cells/ml。以下、「死細胞けん濁液」と表記する。)を調製した。
上記クロノバクター・サカザキの生細胞けん濁液、又は死細胞けん濁液を生理食塩水にて10倍希釈し(6.4×106 cells/ml)、それぞれ90μlを、下記試験に供した。
1−2)シスプラチン溶液の調製及び試料の処理
シスプラチン10.82 mg (36.1μmol)を正確に秤量し、722μlのDMSOに溶解し、50 mM溶液を調製した。その50 mM溶液を生理食塩水にて希釈し、1 mM、2 mM、及び4 mMのシスプラチン生理食塩水溶液を調製した。
各シスプラチン生理食塩水溶液90μlを、上記生細胞けん濁液又は死細胞けん濁液90μlに添加し、恒温水槽にて37℃で30分間保持した。その後、冷却遠心分離(4℃、10,000×G、5分)し、上清を除去し、そのペレットを150μlの滅菌水にけん濁させ、よく攪拌した後、同様の冷却遠心分離を行い、上清を除去した。得られたペレット(細胞けん濁液5μl相当)をPCR増幅用試料とした。
1−3)PCR増幅
前述の実施例2と同様にして、上記の各PCR増幅用試料のリアルタイムPCR増幅を2回実施した。
陽性コントロールとして前記C. sakazakiiの生細胞けん濁液(6.4×107 CFU/ml)5μlを鋳型として使用した。又、陰性コントロールとして滅菌水5μlを鋳型として使用した。
2.結果
リアルタイムPCRの結果を表6に示す。
3.考察
シスプラチン濃度1000μMで、生細胞を死細胞と区別できた。この結果から、Clイオン濃度が高くても、本発明の方法は実施可能であることが示された。
〔実施例4〕シスプラチンによるクロノバクター・サカザキ生細胞・死細胞(滅菌水けん濁液)の識別
本実施例4では、滅菌水で調製したクロノバクター・サカザキ生細胞及び死細胞のけん濁液を用いて、各々の識別を行った。
1.試験材料及び培養方法
1−1)前述の実施例2と同様にして、生理食塩水を用いてクロノバクター・サカザキATCC29544の生細胞けん濁液(1.2×108 cfu/ml)及び死細胞けん濁液(1.2×108 cells/ml)を調製した。
上記クロノバクター・サカザキの生細胞けん濁液、又は死細胞けん濁液を滅菌水で10倍希釈し(1.2×107 cells/ml)、それぞれ90μlを、下記試験に供した。
1−2)シスプラチン溶液の調製及び試料の処理
シスプラチン9.10 mg (30.3μmol)を正確に秤量し、606μlのDMSOに溶解し、50 mM溶液を調製した。その50 mM溶液を生理食塩水にて希釈し、0.25、0.5、1、及び2.5 mMのシスプラチン生理食塩水溶液を調製した。
各シスプラチン生理食塩水溶液10μlを、上記生細胞けん濁液又は死細胞けん濁液90μlに添加し、恒温水槽にて37℃で30分間保持した。その後、冷却遠心分離(4℃、10,000×G、5分)し、上清を除去し、そのペレットを150μlの滅菌水にけん濁させ、よく攪拌した後、同様の冷却遠心分離を行い、上清を除去した。得られたペレット(細胞けん濁液5μl相当)をPCR増幅用試料とした。
1−3)PCR増幅
前述の実施例2と同様にして、上記の各PCR増幅用試料のリアルタイムPCR増幅を2回実施した。
陽性コントロールとして前記C. sakazakiiの生細胞けん濁液(1.2×108 cfu/ml)5μlを鋳型として使用した。又、陰性コントロールとして滅菌水5μlを鋳型として使用した。
2.結果
リアルタイムPCRの結果を表7に示す。
3.考察
シスプラチン濃度25μMで、生細胞を死細胞と区別できた。実施例2〜4の結果から、Clイオンは含んでいても含んでいなくても本発明の方法は実施可能であるが、シスプラチン処理におけるClイオン濃度がより低い方が、低濃度のシスプラチンで生細胞を死細胞の区別が可能であることが示された。
〔実施例5〕シスプラチンによるスタフィロコッカス・アウレウス生細胞・死細胞の識別
本実施例5では、最外殻に外膜を有さず、ペプチドグリカンを有するグラム陽性細菌として、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus;黄色ブドウ球菌)について、シスプラチンによる生細胞及び死細胞の識別を行った。
1.試験材料及び培養方法
1−1)スタフィロコッカス・アウレウスATCC 6538P株を用いて、滅菌水にて1 ml生細胞けん濁液(9.4×107 cfu/ml)及び死細胞けん濁液(9.4×107 cells/ml)を調製した。
上記スタフィロコッカス・アウレウスの生細胞けん濁液(9.4×107 cfu/ml)、又は死細胞けん濁液(9.4×107 cells/ml)それぞれ50μlを下記試験に供した。
1−2)シスプラチン溶液の調製及び試料の処理
シスプラチン5.80 mg (19.3μmol)を正確に秤量し、386μlのDMSOに溶解し、50 mM溶液を調製した。その50 mM溶液を生理食塩水にて希釈し0.5、1、2、3、及び5 mMのシスプラチン生理食塩水溶液を調製した。
各シスプラチン生理食塩水溶液50μlを、上記生細胞けん濁液又は死細胞けん濁液50μlに添加し、恒温水槽にて37℃で10分間保持した。その後、冷却遠心分離(4℃、10,000×G、5分)し、上清を除去し、そのペレットを150μlの滅菌水にけん濁させ、よく攪拌した後、同様の冷却遠心分離を行い、上清を除去した。得られたペレット(細胞けん濁液5μl相当)をPCR増幅用試料とした。
1−3)PCR増幅
下記表8に示される組成にて、ダイレクト・リアルタイムPCR用マスターミックスを調製した。
具体的には、SYBRPremix Ex TaqTM PCR Master Mix (2×)(Takara-Bio Co., Ltd, Otsu, Japan)をqPCRバッファーとして用い、PCR増幅用forward primer及びreverse primerとしてBacteria Screening PCR Kit (Takara-Bio)添付Primer Mix BS (5μM each)を使用した。尚、本プライマーミックスはスタフィロコッカス属及びバチラス属を共に検出可能とするプライマーであり、増幅遺伝子長は約380 bpである。リアルタイムPCRは2回実施した。
リアルタイムPCR装置を用いて、下記のPCRサーマルサイクル条件により、リアルタイムPCRを実施した。
5) 95℃, 1分(1サイクル)
6) 95℃, 10秒; 59℃, 30秒; 72℃, 30秒(40サイクル)
陽性コントロールとして前記S. aureusの生細胞けん濁液(9.4×106 cfu/ml)5μlを鋳型として使用した。又、陰性コントロールは滅菌水5μlを鋳型として使用した。
2. 結果
リアルタイムPCRの結果を表9に示す。
3.考察
グラム陽性細菌であるスタフィロコッカス・アウレウスについても、シスプラチン処理により生細胞と死細胞の識別が可能であることが示された。
〔実施例6〕cis−ジアンミン(ピリジン)クロロ白金(II)クロリドによるクロノバクター・サカザキの生細胞・死細胞の識別
本実施例6では、シスプラチン以外の白金錯体として、cis−ジアンミン(ピリジン)クロロ白金(II)クロリド(cis-diammine (pyridine) chloroplatium (II) chloride; cis-DPCP)を用いて、クロノバクター・サカザキの生細胞及び死細胞の識別を行った。
1.試験材料及び培養方法
1−1)前述の実施例3と同様にして、生理食塩水を用いてクロノバクター・サカザキATCC29544の生細胞けん濁液(1.0×106 cfu/ml)及び死細胞けん濁液(1.0×106 cells/ml)を調製し、それぞれ90μlを、下記試験に供した。
1−2)cis−ジアンミン(ピリジン)クロロ白金(II)クロリド (cis-DPCP)溶液の調製及び試料の処理
cis-DPCP(Sigma)1.66 mg (4.4μmol)を正確に秤量し、438μlのDMSOに溶解し、10 mM溶液を調製した。その10 mM溶液を生理食塩水にて希釈し、0.1 mM、0.25 mM、1 mM、2.5 mM、5 mM、及び10 mMのcis-DPCP生理食塩水溶液を調製した。
各cis-DPCP生理食塩水溶液10μlを、上記生細胞けん濁液90μl又は死細胞けん濁液90μlに添加し、恒温水槽にて37℃で30分間保持した。尚、その間、本実施例6においてもシスプラチンと同様に各試料を遮光下に置いたが、通常の実験室環境下に置いてもよい。
その後、冷却遠心分離(4℃、10,000×G、5分)し、上清を除去し、そのペレットを150μlの滅菌水にけん濁させ、よく攪拌した後、同様の冷却遠心分離を行い、上清を除去した。得られたペレット(細胞けん濁液5μl相当)をPCR増幅用試料とした。
1−3)PCR増幅
前述の実施例2と同様に、TaqManFast Universal PCR Master Mix (2×)(Applied Biosystems Pty Ltd.)をリアルタイムPCRバッファーとして用い、同バッファーにcDBC (10×DBC)を所定量添加して調製したダイレクト・リアルタイムPCR用マスターミックスを用いて、リアルタイムPCR増幅(40 cycles)を2回実施した。
陽性コントロールとしてC. sakazakiiの生細胞けん濁液(1.2×108 CFU/ml)5μlを鋳型として使用した。又、陰性コントロールとして滅菌水5μlを鋳型として使用した。
2.結果
リアルタイムPCRの結果を表10に示す。
3.考察
表10に示されるように、cis-DPCP濃度依存的に死細胞由来のCt値は遅れ、500μMでは死細胞由来のリアルタイムPCRを40サイクル実施しても増幅産物は生じなかった。一方、生細胞のCt値はcis-DPCP 250μMまでは殆ど影響されず、500μMにて僅かにCt値の遅れが観測される程度であった。このように、cis-DPCP 500μMの1回処理で、C. sakazakii生細胞と死細胞の明瞭な識別が可能であった。
〔実施例7〕Dichloro(ethylenediamine)platinum (II)によるクロノバクター・サカザキの生細胞・死細胞の識別
本実施例7では、白金錯体としてDichloro(ethylenediamine)platinum (II)を用いて、クロノバクター・サカザキの生細胞・死細胞の識別を行った。
1.試験材料及び培養方法
1−1)前述の実施例2と同様にして、生理食塩水を用いてクロノバクター・サカザキATCC29544の生細胞けん濁液(1.5×109 cfu/ml)及び損傷細胞/死細胞けん濁液(1.5×109 cells/ml。以下、包括して「死細胞けん濁液」と表記する。)を調製した。
上記クロノバクター・サカザキの生細胞けん濁液、又は死細胞けん濁液を滅菌水にて100倍希釈し(1.5×107 cells/ml)、それぞれ90μlを、下記試験に供した。
1−2)Dichloro(ethylenediamine)platinum (II)溶液の調製及び試料の処理
Dichloro(ethylenediamine)platinum (II) 4.94 mg (15.15μmol)を正確に秤量し、303μlのDMSO(Sigma)に溶解し、50 mM溶液を調製した。その50 mM溶液を生理食塩水にて希釈し、250μM及び1mM溶液を調製した。
各Dichloro(ethylenediamine)platinum (II)溶液10μlを、上記生細胞けん濁液又は死細胞けん濁液90μlに添加し、恒温水槽にて37℃、30分間保持した。その後、滅菌水 1 mlを加え、冷却遠心分離(4℃、3,000×G、5分)し、上清を除去し、そのペレットに細胞破砕用ガラスビーズ(10個)を入れ、30秒ボルテックスミキサーにより激しく攪拌し、細菌細胞を破砕した。その後、10 mM Tris-HCl (pH 8.0)を500μl加え、緩やかに攪拌後、冷却遠心分離(3,000×G、5分、4℃)し、上清(500μl相当)を新しい2.0 mlマイクロチューブに移した。
これらの試料をproteinase K処理群、及びproteinase K/SDS処理群に分け、proteinase K処理群には10μlのproteinase K (1,250U/ml; Sigma)を加えた。また、proteinase K/SDS処理群には5μlの10% SDS、及び10μlのproteinase K (1,250U/ml; Sigma)を加えた。これらの試料をブロックインキュベーターにて50℃、14時間保持した。
その後、各試料に1 M Tris-HCl/フェノール(飽和フェノール)0.5 mlを加え、15分穏やかに振とうした。更にクロロホルム 0.5 mlを加え、5 分穏やかに振とうした。その後、冷却遠心分離(4℃、15,000×G、10分)し、上清約600μlを新しい2 mlマイクロチューブに移し、60μlの3M 酢酸ナトリウム水溶液を添加した後、1500μlの冷エタノールを加え、緩やかに攪拌し、5分氷上に置いた。冷却遠心分離(15,000×G、10分、4℃)にて上清を除去し、1000μlの70%冷エタノールでマイクロチューブ内を洗浄後、同様に冷却遠心分離した。上清を除去後、エタノールを真空乾燥(5分)にて除去し、沈澱物に20μlのTEバッファーを加え、37℃にて1時間静置した。その後、試料を穏やかに攪拌後、その5μlをPCR増幅用試料とした。
また、前記細胞破砕用ガラスビーズ投入直前ペレットの1/4量に対して、前記のようなDNA抽出工程を行わず、細菌から直接に定量PCRを行った。
1−3)PCR増幅
前記の実施例と同様にして、上記の各PCR増幅用試料のリアルタイムPCR増幅を2回実施した。
2. 結果
リアルタイムPCRの結果を表11に示す。
3.考察
表11によれば、細菌をDichloro(ethylenediamine)platinum (II)で処理することによって、細胞から抽出したDNAをPCRの鋳型とした場合、及び、細胞からのDNA抽出を行わずに細胞を直接PCR反応に用いた場合のいずれにおいても、明瞭な生死判定が可能であった。
また、本薬剤作用後、細胞から抽出したDNAをPCRの鋳型とした場合、proteinase Kの処理の有無にかかわらず生細胞と死細胞の識別が可能であったことから、白金錯体と核酸との結合は直接的且つ不可逆的な結合であり、ヒストン様プロテインのような核酸バインデイングプロテインを介した遺伝子増幅抑制ではない、と推定される。
〔実施例8〕塩化白金による微生物の生細胞と死細胞の識別
本実施例8では、白金錯体に代えて、共有結合による巨大分子として定義されている塩化白金を用いて、クロノバクター・サカザキの生細胞と死細胞の識別に関する検討を行った。
1.試験材料及び培養方法
1−1)クロノバクター・サカザキATCC29544をBHIブロスを用いて、37℃、16時間培養した。
前記培養液1 mlを冷却遠心分離(4℃、3,000×G、10分間)し、上清除去後、ペレットに1 mlの滅菌水を添加し、更に滅菌水にて100倍希釈して、生細胞けん濁液(9.4×106 CFU/ml)を調製した。
また、上記生細胞けん濁液1 mlを、1.5 mlのマイクロチューブ(Eppendorf, Hamburg, Germany)に分取し、沸騰水に3分間浸漬処理し、その後、急冷した。沸騰水に浸漬処理した各けん濁液は、標準寒天培地(Eiken, Tokyo, Japan)によりコロニーを形成しないことを確認し、損傷細胞/死細胞けん濁液(9.4×106 cells/ml。以下、損傷細胞と死細胞を包括して死細胞けん濁液と表記する。)を調製した。
上記クロノバクター・サカザキの生細胞けん濁液、又は死細胞けん濁液のそれぞれ90μlを、下記試験に供した。
1−2)塩化白金(II)及び塩化白金(IV)溶液の調製及び試料の処理
塩化白金(II)6.98 mg (26.24 μmol)を1050μlの DMSO (Sigma)に溶解した。また、塩化白金(IV)5.78 mg (17.16 μmol)を686μlのDMSO(Sigma)に溶解した。このようにして、それぞれ25 mM溶液を調製した。これらの塩化白金(II)溶液及び塩化白金(IV)溶液を生理食塩水にて希釈し、各々100μM、1μM、及び10mMの溶液を調製した。
各塩化白金(II)又は塩化白金(IV)溶液10μlを、クロノバクター・サカザキ生細胞けん濁液又は死細胞けん濁液90μlに添加し、恒温水槽にて37℃、30分間保持した。その後、冷却遠心分離(4℃、3,000×G、5分)し、上清を除去し、そのペレットを150μlの滅菌水にけん濁させ、よく攪拌した後、同様の冷却遠心分離を行い、上清を除去した。得られたペレット(5μl相当)をPCR増幅用試料とした。
1−3)PCR増幅
前記の実施例と同様に、上記の各PCR増幅用試料のリアルタイムPCR増幅を実施した。
2.結果
リアルタイムPCRの結果を表12に示す。
3.考察
表12に示されるように、10μMの塩化白金(II)又は塩化白金(IV)で細菌を処理することにより、死細胞ではPCR増幅が完全に抑制されたのに対し、生細胞ではCt値が生細胞未処理群のCt値と比較して1.8〜3.1程度の遅れで留まり、明瞭な生死判定が可能であった。
〔実施例9〕
cis-bis(benzonitrile)dichloroplatinum(II)、tetrakis(triphenylphosphine)platinum(II)、chloroplatinic acid hexahydrate、及び(ethylenediamine)iodoplatinum(II)dimer dinitrateによる大腸菌(Escherichia. coli)の生細胞・死細胞の識別
本実施例では、benzonitrileに関し窒素原子を介し配位結合を行うことができる配位子、及びphenylphosphine配位子を有する白金錯体、更に六配位錯体である塩化白金酸六水和物、また更に、白金錯体の二量体(1錯体に2個の白金元素を有するダイマー)を用いて、E. coliの生細胞及び死細胞の識別を新たに検討し、そのような配位子であっても明瞭な識別ができるかどうか試験することにした。
1.試験材料及び培養方法
1−1)E. coli JCM1649株を用いて、滅菌水にて生細胞けん濁液(2.1 × 107 CFU/ml)及び死細胞けん濁液(2.1 × 107 cells/ml;沸騰水2分浸漬)を調製し、それぞれ90 μlを下記試験に供した。JCM1649株は、独立行政法人 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室(〒305-0074 茨城県つくば市高野台3−1−1)から入手することができる。
1−2)白金錯体溶液の調製及び試料の処理
cis-bis(benzonitrile)dichloroplatinum(II))(Sigma)9.35 mg(19.80 μmol)を正確に秤量し、396 μlのジメチルスルフォキシド(DMSO、Sigma)に溶解して50 mM溶液を調製した。この溶液を生理食塩水で希釈して100 μM、250 μM、1000μM溶液を準備した。
同様に、tetrakis(triphenylphosphine)platinum(II) (Sigma)8.97 mg(7.21 μmol)を正確に秤量し144.2 μlのDMSOに溶解して50 mM溶液を調製した。この溶液を生理食塩水で希釈して100 μM、250 μM、1000μM溶液を準備した。
また、chloroplatinic acid hexahydrate(Sigma)10.51 mg(20.29 μmol)を正確に秤量し、405.8 μlのDMSOに溶解して50 mM溶液を調製した。この溶液を生理食塩水で希釈して20 μM、250 μM、1000μM溶液を準備した。
更に、(ethylenediamine)iodoplatinum(II)dimer dinitrate(Sigma)5.60 mg(6.31 μmol)を正確に秤量し、631 μlのDMSOに溶解して10 mM溶液を調製した。この溶液を生理食塩水で希釈して100 μM、500 μM、1000μM、2 mM、4 mM溶液を準備した。
前記の各薬剤溶液10 μlを、上記生細胞けん濁液90 μl又は死細胞けん濁液90 μlに添加し、恒温水槽にて37℃で30分間保持した。その後、冷却遠心分離(4℃、15,000 × G、5分)し、上清を除去し、そのペレットを1 mlの滅菌水にけん濁させ、よく攪拌した後、同様の冷却遠心分離を行い、上清を除去した。得られたペレット(細胞けん濁液5 μlに相当)をPCR増幅用試料とした。
1−3)PCR増幅
下記表13に示される組成にて、ダイレクト・リアルタイムPCR用マスターミックスを調製した。具体的には、Taq DNA Polymerase with Standard Taq Buffer(New England Biolabs Japan Inc.; M0273S)をリアルタイムPCRバッファーとして用い、これにTaqポリメラーゼを通常使用の4倍量加え、同バッファーにcDBC(10 × DBC)を所定量添加してダイレクト・リアルタイムPCR用マスターミックスを調製した。
先に調製したPCR増幅用試料にダイレクト・リアルタイムPCR用マスターミックスを添加して、リアルタイムPCR増幅(40 cycles)を2回実施した。尚、以下、New England Biolabs製品はNEBと記載する。
PCR増幅には、Primer ENT-16S forward: 腸内細菌科菌群(Enterobacteriaceae)特異的16S rRNA遺伝子検出用フォワードプライマー(5'- GTTGTAAAGCACTTTCAGTGGTGAGGAAGG -3':配列番号4)、Primer ENT-16S reverse: 腸内細菌科菌群(Enterobacteriaceae)特異的16S rRNA遺伝子検出用リバースプライマー(5'- GCCTCAAGGGCACAACCTCCAAG -3':配列番号5)をPCR増幅用プライマーとして使用した(両プライマーはニッポンジーンに製造委託した)。増幅されるrRNA遺伝子の断片長は424 bpであった。腸内細菌科菌群(Enterobacteriaceae)ENT-16S TaqMan probeとしては、5'- /56-FAM/AACTGCATC/ZEN/TGATACTGGCAGGCT/3lABkFQ/ -3'(配列番号6)の配列を有するオリゴヌクレオチドを用いた。このプローブは、オリゴヌクレオチドの5’末端に蛍光物質56-FAM、中央部にZEN、3’末端に31ABkFQという消光色素(クエンチャー)を配置した仕様で、Integrated DNA Technologies社にて委託製造した。
尚、配列番号4及び5のプライマーに関する塩基配列情報は、Nakano, S. et al., J. Food Prot. 66:1798-1804, 2003から入手し、配列番号6のENA-16S TaqMan probeの塩基配列は、各腸内細菌科菌群の16S rRNA遺伝子情報はthe GenBank database(http://www.ebi.ac.uk/genbank/)より腸内細菌科菌群内で相補的領域を選択した。
リアルタイムPCR装置を用いて、下記のPCRサーマルサイクル条件により、リアルタイムPCRを2回実施した。
1) 95℃, 20秒(1サイクル)
2) 95℃, 5秒; 60℃, 1分(40サイクル)
2.結果
リアルタイムPCRの結果を表14に示す。
3.考察
表14によれば、4種類の白金錯体をE. coliの生細胞及び死細胞に作用させたとき、cis-bis(benzonitrile)dichloro platinum(II)、tetrakis(triphenylphosphine) platinum(II)に関しては100 μMの濃度にて死細胞由来のPCR増幅が完全に抑制された。
chloroplatinic acid hexahydrateに関しては、25 μMにて死細胞由来のPCR増幅が完全に抑制された 。(ethylenediamine)iodoplatinum(II)dimer dinitrateに関しては、400 μMにて死細胞由来のPCR増幅が完全に抑制された。しかし、生細胞に関しては4種類の白金錯体に共通する現象として、前記死菌由来のPCR増幅を完全に抑制した薬剤濃度であっても、生菌への透過性には殆ど影響しなかった。
〔実施例10〕tetrakis(triphenylphosphine)platinum(II)を用いた牛乳中のE. coliの生細胞・死細胞の識別
食品や臨床検体には、白金錯体の配位子になり得る成分が混在している。例えば、殺菌した牛乳では、ウシ体細胞やウシ乳腺上皮細胞には、死細胞ながら染色体、rRNAなどの核酸が死細胞内に保持されている可能性が高い。また、殺菌過程において、ウシ体細胞やウシ乳腺上皮細胞の死細胞から、染色体、rRNAなどの核酸の一部が殺菌した牛乳中に流出している可能性も高く、これら核酸は生細胞と死細胞を識別する白金錯体の配位子になり得る。
また、シスプラチンなどの白金錯体はタンパク質(システイン残基など硫黄を含むアミノ酸、もしくは、各アミノ酸も配位子として候補になり得る)を配位子とすることも既に示唆されているので、乳中の各種カゼイン、ホエイタンパク質にも白金錯体は一部配位する可能性もある(以上、ブリプラチン注10 mg、ブリプラチン注25 mg、ブリプラチン注50 mg BRIPLATIN INJECTION(シスプラチン注射液)製品情報概要」、ブリストール・マイヤーズ株式会社、2007年12月参照)。
そこで、殺菌した牛乳に含まれる生細胞と死細胞が、白金錯体を用いて識別可能かどうかを試験した。
1.試験材料及び培養方法
1−1)生理食塩水を用いてE. coli JCM1649株の生細胞けん濁液(2.0 × 109 CFU/ml)を調製し、更に生理食塩水にて10倍、103倍、104倍希釈し生細胞けん濁液をを調製した。10倍希釈液の一部をマイクロチューブに分取し、沸騰水に3分浸漬し、その後急冷して、死細胞けん濁液(2.0 × 108 cells/ml)を調製した。
1−2)tetrakis(triphenylphosphine)platinum(II)溶液の調製及び試料の処理
tetrakis(triphenylphosphine)platinum(II)(Sigma)7.92 mg(6.37 μmol)を正確に秤量し、212 μlのDMSOに溶解して30 mM溶液を調製した。この溶液をDMSOで希釈して、さらに15 mM、20 mM、25 mM溶液を準備した。
市販の牛乳(殺菌済み:以下、「殺菌ミルク」と記載する。)12 mlを採取し、前記103 倍、104 倍希釈・生細胞けん濁液20 μl接種し、それぞれ4.0 × 104 CFU/12 ml殺菌ミルク、4.0 × 103 CFU/12 ml殺菌ミルクとなる生細胞接種殺菌ミルクを調製した。また、同様に、殺菌ミルク12 mlに前記10倍希釈死細胞けん濁液20 μlを接種し、4.0 × 106 CFU/12 ml殺菌ミルクとなる死細胞接種殺菌ミルクを調製した。
尚、試験に用いた市販の牛乳(殺菌ミルク)は、E. coli生細胞が検出限界以下(<1 CFU/2.22 ml)であることを培養法により確認した。
また、この殺菌ミルクに既知濃度のE. coli死細胞を接種し、薬剤処理をせずに後述のミルクから細菌を回収する工程のみを行い、その後、前述の実施例9と同様のダイレクト・リアルタイムPCRを行うことにより、検出されるE. coli死細胞が最大でも103 cells/mlであることを予備検討にて確認したものを試験材料として使用した。
従って、E. coli死細胞を、4.0 × 106 CFU/12 ml殺菌ミルクとなる濃度にて接種した死細胞接種殺菌ミルクは、元来含まれているE. coli死細胞は無視できるレベルである。
尚、殺菌ミルクにおいて、比較的高濃度にて混在することが想定されるE. coliを始めとする大腸菌群(サルモネラを含めると腸内細菌科菌群)死細胞は、4.0 × 106 CFU/12 ml殺菌ミルクのレベルであるので、本方法において、その死細胞由来のPCR増幅は完全に抑制される必要がある。
前記各生細胞接種殺菌ミルク、および死細胞接種殺菌ミルクを、それぞれ冷却遠心分離(4℃、3,000 × G、5分)し、デカンテーションにより上清を除去して生細胞乳ペレット(a)、死細胞乳ペレット(a)を回収した。
回収した各乳ペレット(a)を10 mlのPBSで懸濁し、サビナーゼ(Savinase:Protease from Bacillus sp.; Sigma; ≧ 16 U/g)30 μlを添加した後、37℃のインキュベーター内にて、インテリミキサー(intelli-mixer PM-2M; ELMI Ltd.)を使用して、同ミキサーに付属のマニュアルに記載された攪拌様式「F6仕様」にて10分間攪拌した。
その後、冷却遠心分離(4℃、3,000 × G、5分)し、デカンテーションにより上清を除去して各ペレット(b)を回収し、回収した各ペレット(b)に990 μlの滅菌水を添加してけん濁した。この各ペレット(b)けん濁液に、tetrakis(triphenylphosphine)platinum(II)の各濃度溶液(15 mM、20 mM、25 mM、30 mM溶液)をそれぞれ10 μl添加し、37℃のインキュベーター内にて、インテリミキサー(ELMI)を使用して、同ミキサーに付属のマニュアルに記載された攪拌様式「F7仕様」にて25分間攪拌した。その後10 mlのPBSを加え、さらによく攪拌した後、冷却遠心分離(4℃、3,000 × G、5分)し、デカンテーションにより上清を除去して各ペレット(c)を回収した。
各回収したペレット(c)に100 μlの滅菌水を添加してけん濁し、この各ペレット(c)懸濁液をABI製100 μl容 PCRチューブに移し、冷却遠心分離(4℃、3,000 × G、5分)し、ピペットにより上清を吸引して除去し、各ペレット(d)を回収した。回収した各ペレット(d)に150 μlの滅菌水を添加し、ピペッテイングによりけん濁させた後、冷却遠心分離(4℃、3,000 × G、5分)し、ピペットにより上清を吸引して除去し、各ペレット(e)を回収した。得られた各ペレット(e)(細胞けん濁液5 μlに相当)をPCR増幅用試料とした。
1−3)PCR増幅
前述の実施例9の表13と同様のダイレクト・リアルタイムPCR用マスターミックスを用いて、先に調製したPCR増幅用試料にこのダイレクト・リアルタイムPCR用マスターミックスを添加し、リアルタイムPCR増幅(40 cycles)を2回実施した。
2.結果
リアルタイムPCRの結果を表15に示す。
3.考察
表15によれば、死細胞接種殺菌ミルクにおいて、薬剤処理を施さない場合(白金錯体未添加)のCt値が 23.7であったのに対し、薬剤処理を施した場合は、全ての薬剤濃度(150〜300 μM)において、PCR増幅は見られなかった。
一方、生細胞接種殺菌ミルク(3.3×102 CFU/ml)において、250 μM以上の薬剤処理ではPCR増幅は陰性(PCR増幅反応が抑制)となったが、150 μM、及び200 μMの薬剤濃度においては、Ct 値が34.7及び35.4となり、ターゲット遺伝子の増幅が認められた。また、生細胞接種殺菌ミルク(3.3×103 CFU/ml)の場合は、150〜300 μMのいずれの濃度においても、PCR増幅が認められた。
本実施例10で用いたPCR増幅用のプライマーは、腸内細菌科菌群(Enterobacteriaceae)を網羅的に検出可能とする16S rRNA遺伝子をターゲットとするプライマーであるため、E. coliの生細胞・死細胞の識別に留まらず、殺菌ミルク中のEnterobacteriaceaeの生細胞・死細胞判定試験に利用可能である。
したがって、本実施例10において、白金錯体を用いることにより、殺菌ミルク中の生細胞・死細胞の明瞭な識別が可能であることが明らかにされたので、牛乳等と類似組成を有する血液などの臨床検体においても、本発明により生細胞・死細胞の識別が可能であることが容易に類推された。
以上の各実施例で示されるように、本発明により、食品、環境サンプル、及び臨床検体中のターゲット細胞の生細胞と、死細胞(損傷細胞も含む)との明瞭な識別が可能である。
本発明の方法によれば、簡便な工程で、微生物の生細胞を、死細胞又は損傷細胞と識別して検出することができる。本発明により、核酸増幅法による簡易かつ迅速な食品及び生体試料、拭き取り試料、工業用水、環境用水、排水等の環境中の微生物の生細胞・損傷細胞・死細胞の簡便な判別が可能となる。
また、本発明に用いる白金錯体のうち、例えばシスプラチンは臨床医薬として使用されおり、EMA等の薬剤に比べて危険性が低いと考えられる。さらに、好ましい白金錯体は、EMA等の薬剤に比べて安価であり、産業上有利である。

Claims (30)

  1. 被検試料中の微生物の生細胞を、死細胞又は損傷細胞と識別して検出する方法であって、以下の工程を含む方法:
    a)前記被検試料に白金錯体を添加する工程、
    b)被検試料に含まれる微生物のDNA又はRNAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅する工程、及び
    c)増幅産物を解析する工程。
  2. 前記白金錯体が、NH3、RNH2、ハロゲン元素、カルボキシレート基、ピリジン基、H2O、CO3 2-、OH-、NO3 -、ROH、N2H4、PO4 3-、R2O、RO-、ROPO3 2-、(RO)2PO2 -、R2S、R3P、RS-、CN-、RSH、RNC、(RS)2PO2 -、(RO)2P(O)S-、SCN-、CO、H-、及びR-(ただし、「R」はいずれも飽和又は不飽和有機基を表す)からなる群から選ばれる配位子を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記配位子が、NH3、RNH2、ハロゲン元素、カルボキシレート基、ピリジン基、R3P、及びRNCからなる群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
  4. 前記白金錯体が、シスプラチン、カルボプラチン、cis-ジアンミン(ピリジン)クロロ白金(II)クロリド、ジクロロ(エチレンジアミン)白金(II)、cis-ビス(ベンゾニトリル)ジクロロ白金(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、二硝酸(エチレンジアミン)ヨウ化白金(II)ダイマー、オキサリプラチン、ネダプラチン、およびトランスプラチンからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
  5. 前記白金錯体が、白金化合物を、配位子として白金に結合し得る有機溶媒、又は配位子として白金に結合し得る物質を含む溶液に溶解することにより生成する白金錯体である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記白金化合物が、塩化白金、臭化白金、フッ化白金、ヨウ化白金、水酸化白金、硝酸白金、炭酸白金、酢酸白金、ジメトキシ白金、メトキシリン酸白金、リン酸白金、塩化白金酸、ジスルフメチル白金、ジシアノ白金、ジチオシアネート白金、二水素化白金、及びジメチル白金からなる群から選ばれる、請求項5に記載の方法。
  7. 前記白金化合物が、塩化白金又は塩化白金酸であって、塩化白金が塩化白金(II)又は塩化白金(IV)である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記有機溶媒がジメチルスルホキシドである、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記ターゲット領域の増幅が、細胞からの核酸の抽出を行わずに行われることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記ターゲット領域の増幅が、微生物細胞内で行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 前記ターゲット領域の増幅が、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤、マグネシウム塩、及び有機酸塩又はリン酸塩を前記被検試料に添加して行われることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
  12. 前記ターゲット領域の増幅が、界面活性剤の存在下で行われることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記ターゲット領域が、50〜5000塩基のターゲット領域である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記ターゲット領域が、被検試料のDNAの5S rRNA遺伝子、16S rRNA遺伝子、23S rRNA遺伝子、及びtRNA遺伝子から選択される遺伝子に対応するターゲット領域である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記被検試料が、食品、生体試料、飲料水、工業用水、環境用水、排水、土壌、又は拭き取り試料のいずれかである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記微生物が、細菌、又はウイルスである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記細菌が、グラム陰性細菌又はグラム陽性細菌である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記核酸増幅法が、PCR法、RT−PCR法、LAMP法、SDA法、LCR法、TMA法、TRC法、HC法、SMAP法、又はマイクロアレイ法である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記PCR法が、リアルタイムPCR法により行われ、PCRと増幅産物の解析が同時に行われることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
  20. 前記増幅産物の解析が、微生物の標準試料を用いて作成された微生物量及び増幅産物との関連を示す標準曲線を用いて行われることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 核酸増幅法により、被検試料中の微生物の生細胞を、死細胞又は損傷細胞と識別して検出するためのキットであって、下記の要素を含むキット:
    1)白金錯体、又は、
    配位子として白金に結合し得る有機溶媒、もしくは配位子として白金に結合し得る物質を含む溶液に溶解したときに、白金錯体を生成する白金化合物、
    2)検出対象の微生物のDNA又はRNAのターゲット領域を核酸増幅法により増幅するためのプライマー。
  22. 前記白金錯体が、NH3、RNH2、ハロゲン元素、カルボキシレート基、ピリジン基、H2O、CO3 2-、OH-、NO3 -、ROH、N2H4、PO4 3-、R2O、RO-、ROPO3 2-、(RO)2PO2 -、R2S、R3P、RS-、CN-、RSH、RNC、(RS)2PO2 -、(RO)2P(O)S-、SCN-、CO、H-、又はR-(ただし、「R」はいずれも飽和又は不飽和有機基を表す)から選ばれる配位子を含む、請求項21に記載のキット。
  23. 前記配位子が、NH3、RNH2、ハロゲン元素、カルボキシレート基、ピリジン基、R3P、及びRNCからなる群から選ばれる、請求項22に記載のキット。
  24. 前記白金錯体が、シスプラチン、カルボプラチン、cis-ジアンミン(ピリジン)クロロ白金(II)クロリド、ジクロロ(エチレンジアミン)白金(II)、cis-ビス(ベンゾニトリル)ジクロロ白金(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、二硝酸(エチレンジアミン)ヨウ化白金(II)ダイマー、オキサリプラチン、ネダプラチン、およびトランスプラチンからなる群から選ばれる、請求項21に記載のキット。
  25. 前記白金化合物が、塩化白金、臭化白金、フッ化白金、ヨウ化白金、水酸化白金、硝酸白金、炭酸白金、酢酸白金、ジメトキシ白金、メトキシリン酸白金、リン酸白金、塩化白金酸、ジスルフメチル白金、ジシアノ白金、ジチオシアネート白金、二水素化白金、及びジメチル白金からなる群から選ばれる、請求項21に記載のキット。
  26. 前記白金化合物が、塩化白金又は塩化白金酸であって、塩化白金が塩化白金(II)又は塩化白金(IV)である、請求項25に記載のキット。
  27. さらに、配位子として白金に結合し得る有機溶媒を含む、請求項21、25又は26に記載のキット。
  28. 前記有機溶媒がジメチルスルホキシドである、請求項27に記載のキット。
  29. さらに、核酸増幅阻害物質の働きを抑制する薬剤、マグネシウム塩、及び有機酸塩又はリン酸塩を含む、請求項21〜28のいずれか一項に記載のキット。
  30. さらに界面活性剤を含む、請求項21〜29のいずれか一項に記載のキット。
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