JP5430573B2 - 抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット - Google Patents

抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット Download PDF

Info

Publication number
JP5430573B2
JP5430573B2 JP2010526744A JP2010526744A JP5430573B2 JP 5430573 B2 JP5430573 B2 JP 5430573B2 JP 2010526744 A JP2010526744 A JP 2010526744A JP 2010526744 A JP2010526744 A JP 2010526744A JP 5430573 B2 JP5430573 B2 JP 5430573B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibody
vasohibin
monoclonal
monoclonal antibody
amino acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2010526744A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2010024293A1 (ja
Inventor
光 園田
英樹 太田
ちひろ 山内
靖史 佐藤
丘 近藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tohoku University NUC
Shionogi and Co Ltd
Original Assignee
Tohoku University NUC
Shionogi and Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tohoku University NUC, Shionogi and Co Ltd filed Critical Tohoku University NUC
Priority to JP2010526744A priority Critical patent/JP5430573B2/ja
Publication of JPWO2010024293A1 publication Critical patent/JPWO2010024293A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5430573B2 publication Critical patent/JP5430573B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans
    • C07K16/22Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans against growth factors ; against growth regulators
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/53Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
    • G01N33/574Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor for cancer
    • G01N33/57484Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor for cancer involving compounds serving as markers for tumor, cancer, neoplasia, e.g. cellular determinants, receptors, heat shock/stress proteins, A-protein, oligosaccharides, metabolites

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Hospice & Palliative Care (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Description

本発明は、抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットに関する。より詳しくは、特定のモノクローナル抗体の組合せからなる抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット、前記セットを構成するモノクローナル抗体、前記セットと被検者由来の生体試料との複合体を測定する方法、前記セットを用いる癌や眼内血管新生性疾患等の血管新生が亢進する疾患の発症の判定方法及び該方法を実施するためのキット、ならびに前記セットを用いる抗血管新生薬の薬効評価方法及び該方法を実施するためのキットに関する。
血管新生は、発生期のみならず体成期においても、血管新生の促進因子と抑制因子の双方によりコントロールされており、該促進因子と抑制因子のバランスを保つことが血管の恒常性を保つのに重要である。一方、腫瘍組織においては、血管新生促進因子が過剰発現することにより血管新生が亢進し、その結果、腫瘍組織のさらなる増大に繋がる。従って、抗癌治療としては、血管新生抑制因子を投与する方法、血管新生促進因子の阻害剤を投与する方法等が挙げられる。
例えば、非特許文献1では、血管新生促進因子であるVEGFに対するモノクローナル抗体(Avastin)の投与を化学療法と併せて行うことにより、直腸癌患者の生存率が向上することが報告されている。また、エンドスタチンやアンジオスタチン等の内因性阻害剤の投与も行われている(非特許文献2参照)。
バソヒビンは、本発明者らが見出したポリペプチドであり、腫瘍細胞や間質細胞、マクロファージなどから分泌される血管新生促進因子(VEGF、FGF−2等)の刺激により血管内皮細胞に発現し(特許文献1参照)、内皮細胞自身にオートクライン的に作用して、血管新生を抑制する作用を有する。
バソヒビンは血管新生が起きている血管内皮細胞から血液中に分泌されるという特徴を有することから、血中や尿中におけるバソヒビン量を測定することにより、生体内で生じている血管新生の度合いを知ることができる。生体内バソヒビンの検出には、例えば、電気化学検出器や質量分析計等を接続した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフィー(GC)を用いることができる。また、市販の抗バソヒビンモノクローナル抗体を用いたウェスタン法によっても測定することができる。
D. J. Kerr, et al.、Nat. Clin. Pract. Oncol.、2004、1、p39-43 J. Folkman, et al.、APMIS、2004、112、p496-507 WO02/090546号パンフレット
しかしながら、HPLCやGCを利用する方法は、分析前のサンプル処理に時間、労力、熟練等を必要とするうえ、共存物質によるクロマトグラフィーの妨害等により、検出が困難となったり、検出結果が正確でなかったりする場合がある。また、これらの方法は、比較的高価な機器やカラムを用いるため費用の面でも不利である。
一方、市販の抗バソヒビンモノクローナル抗体として、R&D systems社製の抗Vasohibin-1モノクローナル抗体(clone 411208)を用いることができるが、感度、特異性の点で未だ十分ではなく、迅速かつ簡便に、しかも正確かつ精度よく検出するために、さらなる技術の開発が必要である。
本発明の課題は、生体内バソヒビンを良好な感度及び特異性で検出することができる抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット、前記セットを構成するモノクローナル抗体、前記セットと被検者由来の生体試料との複合体を測定する方法、前記セットを用いる癌や眼内血管新生性疾患等の血管新生が亢進する疾患の発症の判定方法及び該方法を実施するための前記セットを含有する癌や眼内血管新生性疾患等の血管新生が亢進する疾患の発症の判定用キット、ならびに前記セットを用いる抗血管新生薬の薬効評価方法及び該方法を実施するための前記セットを含有する抗血管新生薬の薬効評価用キット、を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の抗原に対するモノクローナル抗体を組合せて用いることにより、生体内バソヒビンを良好な感度及び特異性で検出することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕 配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち、
(1)アミノ酸番号132〜145を認識するモノクローナル抗体(抗体A-1)とアミノ酸番号351〜365を認識するモノクローナル抗体(抗体A-2)であるセット(セットA)、
(2)アミノ酸番号217〜229を認識するモノクローナル抗体(抗体B-1)とアミノ酸番号351〜365を認識するモノクローナル抗体(抗体B-2)であるセット(セットB)、
(3)アミノ酸番号1〜76を認識するモノクローナル抗体(抗体C-1)とアミノ酸番号132〜145を認識するモノクローナル抗体(抗体C-2)であるセット(セットC)、
(4)アミノ酸番号77〜318を認識するモノクローナル抗体(抗体D-1)とアミノ酸番号1〜76を認識するモノクローナル抗体(抗体D-2)であるセット(セットD)、
(5)アミノ酸番号77〜318を認識するモノクローナル抗体(抗体E-1)とアミノ酸番号319〜365を認識するモノクローナル抗体(抗体E-2)であるセット(セットE)、及び
(6)アミノ酸番号3〜15を認識するモノクローナル抗体(抗体F-1)とアミノ酸番号351〜365を認識するモノクローナル抗体(抗体F-2)であるセット(セットF)、
からなる群より選ばれる少なくとも1つである、抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット、
〔2〕 前記〔1〕記載のモノクローナル抗体のセットを構成するモノクローナル抗体であって、アミノ酸番号132〜145を認識するモノクローナル抗体、アミノ酸番号351〜365を認識するモノクローナル抗体、アミノ酸番号1〜76を認識するモノクローナル抗体、アミノ酸番号132〜145を認識するモノクローナル抗体、アミノ酸番号77〜318を認識するモノクローナル抗体、アミノ酸番号319〜365を認識するモノクローナル抗体、及びアミノ酸番号3〜15を認識するモノクローナル抗体からなる群より選ばれる少なくとも1つであるモノクローナル抗体、
〔3〕 被検者由来の生体試料と、前記〔1〕記載のセットを構成するモノクローナル抗体とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する方法、
〔4〕 工程(I):被検者由来の生体試料と、前記〔1〕記載のセットを構成するモノクローナル抗体とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する工程、
工程(II):前記工程(I)で測定された存在量を対照者における存在量と比較する工程、ならびに
工程(III):前記工程(II)で行った比較において、被検者における存在量が対照者より多いと認められる場合に被検者が血管新生が亢進する疾患を発症している可能性が高いと判定する工程
を含む、血管新生が亢進する疾患の発症の判定方法、
〔5〕 前記〔1〕記載のモノクローナル抗体のセットを含有してなる、血管新生が亢進する疾患の発症の判定用キット、
〔6〕 工程(A):抗血管新生薬の投与後における被検者由来の生体試料と、前記〔1〕のセットを構成するモノクローナル抗体とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する工程
工程(B):前記工程(A)で測定された存在量を、投与前における存在量と比較する工程、ならびに
工程(C):前記工程(B)で行った比較において、抗血管新生薬の投与前に比べて投与後のほうが該複合体の存在量が少ないと認められる場合に抗血管新生薬が薬効を示している可能性が高いと判定する工程
を含む、抗血管新生薬の薬効評価方法、
ならびに
〔7〕 前記〔1〕記載のモノクローナル抗体のセットを含有してなる、抗血管新生薬の薬効評価用キット
に関する。
本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットは、生体内バソヒビンを良好な感度及び特異性で検出することができるという優れた効果を奏する。
図1は、Vasohibin-1の部分ペプチドで免疫して得られたモノクローナル抗体が、それぞれのペプチドをエピトープとして認識することを示す図である。 図2は、全長Vasohibin-1タンパクを免疫して得られたモノクローナル抗体が、Vasohibinタンパクのアミノ末端、中央部、カルボキシル末端のいずれをエピトープとして認識するかをマッピングした結果を示す図である。 図3は、健常者及び肺癌患者の血中のVasohibin-1タンパクをウェスタン法により検出した結果を示す図である。 図4は、Vasohibin-1タンパクを抗体VC1-4E12及び市販抗体(clone 411208)を用いてウェスタン法により検出した結果を示す図である。(A)は細胞抽出液、(B)は精製Vasohibin-1タンパクについての結果である。 図5は、抗体FcC-3E6を標識抗体とした場合の固相抗体を検討した結果を示す図である。(A)は各固相抗体を用いてVasohibin-1タンパクを測定したときの吸光度の結果、(B)は吸光度による標準曲線作成の結果、(C)は添加回収試験を行った結果である。 図6は、抗体VhW-2B4を標識抗体とした場合の固相抗体を検討した結果を示す図である。(A)は各固相抗体を用いてVasohibin-1タンパクを測定したときの吸光度の結果、(B)は吸光度による標準曲線作成の結果、(C)は添加回収試験を行った結果である。 図7は、抗体FcC-9H5を固相抗体とした場合の標識抗体を検討した結果を示す図である。(A)は各標識抗体を用いてVasohibin-1タンパクを測定したときの吸光度の結果、(B)は吸光度による標準曲線作成の結果、(C)は添加回収試験を行った結果である。 図8は、ELISA B’における標準曲線と添加回収試験の結果である。(A)は標準曲線、(B)は添加回収試験の結果を示す。 図9は、ELISA F’における標準曲線と添加回収試験の結果である。(A)は標準曲線、(B)は添加回収試験の結果を示す。 図10は、ELISA F”における標準曲線と添加回収試験の結果である。(A)は標準曲線、(B)は添加回収試験の結果を示す。 図11は、ELISA法による癌患者の手術前後の血中のVasohibin-1タンパク量の検出結果を示す図である。各検体の左が術前、右が術後の測定値である。
本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットは、特定の抗原に対するモノクローナル抗体を2種類組合せることによって構成されるが、その組合せが特定であることに大きな特徴を有する。
バソヒビン(Vasohibin)としては、バソヒビン1(Vasohibin-1)及びバソヒビン2(Vasohibin-2)が挙げられるが、本明細書において、抗バソヒビンモノクローナル抗体とは、バソヒビン1に対するモノクローナル抗体のことを意味する。なお、WO02/090546、WO2006/073052等に開示されているようにバソヒビン1とバソヒビン2は、異なる染色体上に存在する別の遺伝子であるが、それらの遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は58%の相同性を有している。バソヒビン1は配列番号1の386番目のAから1480番目のCで表される塩基配列からなるKIAA1036ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質、及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるKIAA1036ポリペプチドのことをいう。
以下に、本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットを構成する、各モノクローナル抗体の調製方法、及び該抗体を利用した免疫測定法について詳述する。
<モノクローナル抗体の調製方法>
(抗原の調製)
Vasohibin-1タンパク質の部分ペプチド5種類について、アミノ末端又はカルボキシル末端にシステイン残基を付加したペプチドを、公知の方法に従って合成する。なお、これらのペプチド配列は、それぞれVasohibin-1ポリペプチドのGly3-Ala15、Leu132-Lys145、Ala217-Lys229、Gly286-Arg299、Glu351-Val365に相当し、それぞれVN1、VN3、VR1、VC1及びVCとする。得られた各ペプチドについて、マレイミド化したKLH〔Keyhole Limpet Hemocyanin、Imject(登録商標)Maleimide Activated mcKLH、ピアス社製〕を用いて、ペプチドのSH基を介してハプテン抗原を調製する。
またさらに、Vasohibin-1-KLH融合タンパク、あるいは家兎IgGのFc領域とVasohibin-1との融合タンパク(Fc融合Vasohibin-1タンパク)も、抗原として用いる。これらの融合タンパクは公知の方法に従って調製することができるが、例えば、Vasohibin-1-KLH融合タンパクは、精製Vasohibin-1タンパクに10倍モル量のSPDP試薬でSH基を導入し、20mM dithiothreitolで還元後、上記マレイミド化KLHと融合させて抗原とすることができる。一方、Fc融合Vasohibin-1タンパクは、Vasohibin-1のアミノ末端又はカルボキシル末端にFcを付加したポリヌクレオチド配列を導入したプラスミドベクターを、例えば、Freestyle 293-F Cells(Invitrogen)に導入して一過的に発現させた後、プロテインAカラムを用いて精製することにより調製することができる。なお、Vasohibin-1タンパクの発現及び精製は、特に限定はなく公知の方法に従って行うことができる。
(モノクローナル抗体の調製)
本発明における抗バソヒビンモノクローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体ともいう)は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って調製することができる。
例えば、上記により得られる抗原を用いて哺乳動物を免疫する。哺乳動物としては、特に制限はないが、一般には、マウス、ラット、ウシ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット等を用いることができる。なかでも、マウス及びラットが好ましく、マウスがより好ましく、かかるマウスとしては、A/J系、BALB/C系、DBA/2系、C57BL/6系マウスが例示される。また、該哺乳動物の齢は、用いる動物種により異なり特に限定されないが、マウス又はラットの場合、通常約4〜12週齢、好ましくは約5〜10週齢である。なお、これらの哺乳動物は、本発明のモノクローナル抗体の製造のために、細胞融合される形質細胞との適合性を考慮して選択することができる。
抗原は、免疫応答を増強させるためにアジュバントと混合して免疫原として使用される。アジュバントとしては、特に限定はなく公知のものを使用することができる。また、該アジュバントと抗原との混合は、用いるアジュバントについて当該分野で公知の方法に従うことができる。
哺乳動物の免疫は、当該分野で公知の方法に従って行われる。例えば、免疫原を哺乳動物の皮下、皮内、静脈又は腹腔内に注射投与することによって行われる。また、免疫原の投与は、最初の免疫後に何回か繰り返して行われ、その投与間隔は適宜調整され得る。なお、免疫応答は、免疫される哺乳動物の種類及び系統によって異なるので、免疫スケジュール及び免疫原の投与量は、使用される動物に合わせて適切に設定され得る。
かくして、免疫された哺乳動物体内において所望の抗体産生細胞を調製することができる。かかる抗体産生細胞としては、免疫原の最終投与の3〜5日後に摘出した脾細胞が好ましい。なお、免疫された哺乳動物の脾臓を肥大させるために、ブースト(免疫原の追加注射)を行ってもよい。ブーストで投与される免疫原の量は、最初に投与される免疫原の量の約4〜5倍とするのが望ましいが、これを目安として適宜増減することができる。
次に、得られた抗体産生細胞は、骨髄腫由来の細胞(ミエローマ細胞)と細胞融合させて、ハイブリドーマを調製する。
ハイブリドーマの増殖能力は細胞融合に用いられるミエローマ細胞の種類に依存するので、ミエローマ細胞としては増殖能力の優れた細胞が好ましい。また、ミエローマ細胞は、融合させる抗体産生細胞の由来する哺乳動物と適合性があることが好ましい。かかる例としては、マウスミエローマP3U1、X63-Ag8.653等の骨髄腫細胞が例示される。
細胞融合の方法は、当該分野で公知の方法を用いることができ、例えばポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法、センダイウイルスを用いる方法、電気融合装置を用いる方法等が例示される。
得られたハイブリドーマは、公知の方法に従って選択培地で培養することにより分離することができる。なお、選択されたハイブリドーマが所望の抗体を産生しているかどうかを確認するために、培養上清を採取して抗体価アッセイを公知の方法、例えば、DELFIA法に基づいて行うことができる。
かくして、所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが得られる。該ハイブリドーマは、通常の培地で継代培養することができ、また液体窒素中で半永久的に保存することができる。
所望のモノクローナル抗体は、インビボ及びインビトロにおける培養法により大量調製することができる。インビトロ培養法は、ハイブリドーマを適当な血清培地若しくは無血清培地中で培養することにより実施でき、所望のモノクローナル抗体は培地中に産生される。この培養法によれば、比較的高純度の所望抗体を培養上清として得ることができる。また、インビボ培養法は、ハイブリドーマと適合性のある哺乳類動物、例えばマウスなどの腹腔内に、ハイブリドーマを注射接種して増殖することにより実施でき、所望抗体はマウス腹水として大量に回収することができる。
得られた培養上清及びマウスなどの腹水は、そのまま粗製抗体液として用いることができる。また、これらは常法に従って、例えば、DEAE陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法などを適宜組合せることにより精製して、精製抗体とすることができる。
かくしてモノクローナル抗体を得ることができるが、本発明に用いるモノクローナル抗体を表1に示す。なお、FcNはアミノ末端、FcCはカルボキシル末端に、Fcを融合させたVasohibin-1タンパク、VhWは全長Vasohibin-1-KLH融合タンパクを示し、本明細書において、各モノクローナル抗体は、抗原タンパクとクローン番号により表示することができ、例えば、抗体VN1-2H11と表すことができる。これらのモノクローナル抗体のうち、VR1を抗原として得られたモノクローナル抗体、即ち、抗体VR1-12E7はH. Sonoda et al., Multiple processing forms and their biological activities of a novel angiogenesis inhibitor vasohibin.Biochem Biophys Res Commun. 342 (2006), 640-646において開示されているものと同様であり、本発明の別態様では、該モノクローナル抗体を除く、表1に示すモノクローナル抗体を、本発のモノクローナル抗体のセットを構成するモノクローナル抗体として提供する。
Figure 0005430573
なお、本発明においては、上記モノクローナル抗体は前記方法により特定の抗原を認識するものを調製して用いてもよいが、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとして、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に下記受託番号のもとで寄託された細胞を好適に使用することもできる。
FERM P−21585(産生されるモノクローナル抗体がVN3-11E11、表示VN3-11E11、受託日2008年6月5日)
FERMP−11169(産生されるモノクローナル抗体がVC-12F6、表示VC-12F6、受託日2008年6月5日)
FERMP−11168(産生されるモノクローナル抗体がVR1-12E7、表示VR1-12E7、受託日2008年6月5日)
FERM P−21589(産生されるモノクローナル抗体がFcC-3E6、表示FcC-3E6、受託日2008年6月5日)
FERM P−21590(産生されるモノクローナル抗体がFcC-9H5、表示FcC-9H5、受託日2008年6月5日)
FERM P−21588(産生されるモノクローナル抗体がFcN-6A5、表示FcN-6A5、受託日2008年6月5日)
FERM P−21591(産生されるモノクローナル抗体がVhW-2B4、表示VhW-2B4、受託日2008年6月5日)
FERMP−11167(産生されるモノクローナル抗体がVN1-2H11、表示VN1-2H11、受託日2008年6月5日)
<本発明のモノクローナル抗体のセットを利用した免疫測定法>
表1に示すモノクローナル抗体のうち、VC1-4E12を標識抗体、VR1-12E7を固相抗体としてサンドイッチ−酵素イムノメトリックアッセイ法(ELISA)を行ったところ、バッファー中の精製Vasohibin-1タンパクを測定することは可能であることが報告されている(H. Sonoda et al., Multiple processing forms and their biological activities of a novel angiogenesis inhibitor vasohibin.Biochem Biophys Res Commun. 342 (2006), 640-646.)。しかしながら、上記抗体を用いて、血中のVasohibin-1タンパクの測定を試みたところ測定不能であった。そこで、表1に示す抗体について、血中Vasohibin-1タンパクの測定が可能となるサンドイッチELISAの抗体、即ち、固相抗体及び標識抗体の組合せを同定する。
(組合せの同定)
固相抗体及び標識抗体の調製、即ち、上記で得られたモノクローナル抗体の固相化及び標識化は、特に限定はなく、公知の方法に従って行うことができる。なお、表1に示す全てのモノクローナル抗体のうち、抗体FcC-6E5、抗体FcC-9H5については抗体のサブクラスがIgG2bであることから、高感度化に必要なFab’化修飾が困難となることが予想されるので、標識抗体としての検討対象から予め除外する。
得られた固相抗体及び標識抗体の組み合わせについて、公知のELISA法に従ってVasohibin-1タンパクの定量性、及び特異的結合性を調べる。定量性、及び特異的結合性の評価は次の方法に従って行い、本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットを同定する。
定量性については、後述の実施例1に記載のサンドイッチEILSA法において、少なくとも2pmol/mLまで、好ましくは0〜5pmol/mLの濃度範囲で、Vasohibin-1濃度依存的にシグナル強度の上昇が認められ、直線性の良い標準曲線が得られる組合せを良好な組合せと判断する。なお、直線性は、標準曲線の傾きと切片によって判断することができ、傾きが好ましくは0.5〜1.5、より好ましくは0.7〜1.5であり、かつ、Y軸の切片が好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下である場合に、直線性が良好な組合せと判断される。
特異的結合性については、既知量のVasohibin-1を添加した血液検体、あるいは添加していない血液検体におけるVasohibin-1を後述の実施例1に記載のサンドイッチEILSA法により測定する際に、得られるシグナル強度より添加回収率を算出することによって評価することができる。Vasohibin-1が存在する検体の添加回収率が好ましくは75〜125%、より好ましくは80〜125%、さらに好ましくは85〜115%である組み合わせを、良好な組み合わせと判断する。
上記、定量性、特異的結合性の全てにおいて、良好な組合せと判断された組合せについて、本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット、すなわち、血中バソヒビンの測定が可能である抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットと同定する。従って、本発明はまた、血中バソヒビンの測定のための、前記抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットの使用を提供する。なお、本明細書において「血中バソヒビン」とは、血液、血清及び血漿からなる群より選択される少なくとも1種の生体試料に存在するバソヒビンのことを意味する。
(免疫測定法)
上記により同定された抗体のセットを用いて、免疫測定を行う。免疫測定法としては、酵素免疫測定法(EIA)、酵素イムノメトリックアッセイ法(ELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射線免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、イムノブロット法、ウェスタンブロット法等が挙げられ、簡便に感度よく抗体を検出し得ることから、ELISA法が好ましい。
ELISA法には、一般的な競合法、サンドイッチ法などが挙げられるが、サンドイッチ法における固相抗体及び標識抗体として、本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットを使用することができることから、サンドイッチ法が好ましい。
次に、サンドイッチELISA法の一態様を示す。まず、本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットのうち固相抗体と、Vasohibin-1タンパクを含有する被検試料とを接触させて複合体を形成させる。その後、そこに、本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットのうち標識抗体を添加して、さらなる複合体を形成させて標識を検出することにより、Vasohibin-1タンパク量を測定することができる。従って、本発明は、被検者由来の生体試料と、本発明のセットを構成するモノクローナル抗体とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する方法を提供する。
(血管新生が亢進する疾患の発症の判定)
また、本発明は、血管新生が亢進する疾患の発症の判定方法を提供する。本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットは、生体内バソヒビンを良好な感度及び特異性で検出することが可能である。バソヒビンは腫瘍細胞や間質細胞、マクロファージなどから分泌される血管新生促進因子(VEGF、FGF−2等)により血管内皮細胞に発現することから、血管新生が亢進している場合には、生体内には多量のバソヒビンが存在していると考えられる。従って、前記タンパク質の発現を指標とすることにより、このように血管新生が亢進する疾患の発症の判定を行うことも可能であり、前記方法は、血管新生が亢進する疾患の発症因子の測定方法、又は決定方法としても使用可能である。
血管新生が亢進する疾患としては、癌、眼内血管新生性疾患、慢性関節リウマチ等が例示されるが、発症による血管新生亢進の観点から、癌、眼内血管新生性疾患が好ましい。なお、眼内血管新生性疾患としては、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症等が例示される。
上記判定方法は、具体的には、
工程(I):被検者由来の生体試料と、本発明のセットを構成するモノクローナル抗体とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する工程、
工程(II):前記工程(I)で測定された存在量を対照者における存在量と比較する工程、ならびに
工程(III):前記工程(II)で行った比較において、被検者における存在量が対照者より多いと認められる場合に被検者が血管新生が亢進する疾患を発症している可能性が高いと判定する工程
を含む。なお、上記「判定方法」とは、疾患の症状を呈している被検者の治療戦略を立てるための検査のみならず、被検者が疾患にかかりやすいか否かを判断するために行う予防のための検査、又は既に罹患しているか否かの検査も含まれる。従って、「血管新生が亢進する疾患を発症している可能性が高い」とは、血管新生が亢進する疾患の発症程度が重篤である、血管新生が亢進する疾患を発症しやすい、又は、血管新生が亢進する疾患の発症を決定することを意味する。
上記判定方法の工程(I)における複合体の存在量の測定は、本発明のモノクローナル抗体のセットを用いる方法であれば、当業者においては周知の方法を用いることができるが、サンドイッチELISA法が好ましい。
工程(II)において、上記により得られた存在量について、対照者における該存在量に基づいて統計学的な解析を行って比較を行う。解析方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。また、その後の工程(III)における判定は、例えば、被検者における存在量が対照者の存在量と比べて多い場合に、血管新生が亢進する疾患を発症している可能性が高いと判断される。なお、本発明において、対照者とは、血管新生が亢進する疾患を発症していないと診断される患者のことを言う。
また、上記判定方法において、血管新生が亢進する疾患として、癌の発症が決定された被検者については、癌の治療、例えば、外科的治療、放射線療法による治療、化学療法による治療等により癌組織が縮小又は除去されている場合には、治療前に比べて血管新生が減少しているため、生体内のバソヒビン量が減少していると考えられる。治療前と治療後の生体内バソヒビン量を比較することにより、癌の治癒状態を判定することもできる。なお、この場合の対照者とは、癌の発症が決定された被検者の治療前の被検者のことを意味し、工程(II)における比較によりバソヒビン存在量が治療前と比べて多い場合に、癌を発症している可能性が高い、即ち、癌が未だ発症していると判断される。
(血管新生が亢進する疾患の発症判定用キット)
本発明の別の態様では、血管新生が亢進する疾患の発症判定を行うためのキットが提供される。
本発明のキットには、本発明のモノクローナル抗体のセットを含有するものが挙げられ、サンプル中のバソヒビンを検出する際に本発明のモノクローナル抗体のセットを用いる検出方法であれば、前記キットを用いることができる。本発明のモノクローナル抗体のセットは生体内バソヒビンを良好な感度及び特異性で検出することが可能であることから、該キットの使用は血管新生が亢進する疾患の発症判定に大きな貢献をもたらすことができる。
(抗血管新生薬の薬効評価)
また、本発明の別の態様では、抗血管新生薬の薬効評価方法が提供される。
固形癌の組織において、癌細胞から分泌され、腫瘍血管新生において中心的な役割を演じている血管新生誘導因子はVEGFである。近年、そのVEGFの受容体拮抗薬が抗癌剤として盛んに開発されている。一方、K. Watanabe et al., Vasohibin as an endothelium-derived negative feedback regulator of angiogenesis, J. Clin. Invest. 114 (2004), 898-907に示されたように、ヒトの正常な血管内皮細胞ではVEGFの刺激によりVasohibin-1の発現が誘導される。また、最近、血管内皮細胞のホメオスタシスに血管内皮細胞自身が産生するVEGFが必要であることが報告されている(S. Lee et al., Autocrine VEGF signaling is required for vascular homeostasis. Cell 130 (2007), 691-703)。従って、血管内皮細胞において、自身が産生するVEGFに反応してVasohibin-1の発現が誘導されている可能が高い。また、J. M. L. Ebos et al., Multiple circulating proangiogenic factors induced by sunitinib malte are tumor-independent and correlate with antitumor efficacy. Pro. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 104 (2007), 17069-17074においては、正常マウスにVEGF受容体拮抗薬を投与すると、血中のVEGFや可溶型VEGF受容体の濃度が変動することが明らかにされている。これらの知見から、VEGF受容体拮抗薬を投与された患者では、全身の血管内皮細胞におけるVEGFシグナルが遮断されるためにVasohibin-1の産生量が減少し、血中Vasohibin-1量が変化する可能性があると考えられる。各患者におけるVEGF受容体拮抗薬に対する血管内皮細胞の反応性は個人によって異なることが予想されるが、その反応性はまさにそれらの薬剤の持つ抗血管新生効果に反映される。従って、これらの薬剤の投与の前後での血中Vasohibin-1の変動量を測定することにより、各患者における薬剤への反応性を予測したり、実際に投与した後の薬効を評価したりすることが可能になると考えられる。
上記薬効評価方法は、具体的には、
工程(A):抗血管新生薬の投与後における被検者由来の生体試料と、本発明のセットを構成するモノクローナル抗体とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する工程
工程(B):前記工程(A)で測定された存在量を、投与前における存在量と比較する工程、ならびに
工程(C):前記工程(B)で行った比較において、抗血管新生薬の投与前に比べて投与後のほうが該複合体の存在量が少ないと認められる場合に抗血管新生薬が薬効を示している可能性が高いと判定する工程
を含む。
上記薬効評価方法の工程(A)における複合体の存在量の測定は、本発明のモノクローナル抗体のセットを用いる方法であれば、当業者においては周知の方法を用いることができるが、サンドイッチELISA法が好ましい。
工程(B)において、上記により得られた存在量について、抗血管新生薬の投与前における該存在量に基づいて統計学的な解析を行って比較を行う。解析方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。また、その後の工程(C)における判定は、例えば、抗血管新生薬の投与後の試料における存在量が投与前の試料における存在量と比べて少ない場合に、該抗血管新生薬が血管新生を抑える効果を示している可能性が高いと判断される。
(抗血管新生薬の薬効評価用キット)
本発明の別の態様では、抗血管新生薬の薬効評価を行うためのキットが提供される。
本発明のキットには、本発明のモノクローナル抗体のセットを含有するものが挙げられ、サンプル中のバソヒビンを検出する際に本発明のモノクローナル抗体のセットを用いる検出方法であれば、前記キットを用いることができる。本発明のモノクローナル抗体のセットは生体内バソヒビンを良好な感度及び特異性で検出することが可能であることから、該キットの使用は抗血管新生薬の薬効評価に大きな貢献をもたらすことができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
調製例1〔モノクローナル抗体の調製〕
(抗原の調製)
Vasohibin-1タンパクの部分ペプチド、即ち、Vasohibin-1ポリペプチドのGly3-Ala15、Leu132-Lys145、Ala217-Lys229、Gly286-Arg299、Glu351-Val365Cのアミノ末端あるいはカルボキシル末端にシステイン残基を付加した5種類のペプチドをシグマアルドリッチ社にて合成し、それぞれをVN1、VN3、VR1、VC1、VCとした。得られた各ペプチドについて、マレイミド化したKLH〔Keyhole Limpet Hemocyanin、Imject(登録商標)Maleimide Activated mcKLH、ピアス社製〕を用いて、ペプチドのSH基を介してハプテン抗原を調製した。
また、Vasohibin-1-KLH融合タンパク、あるいは家兎IgGのFc領域とVasohibin-1との融合タンパク(Fc融合Vasohibin-1タンパク)も抗原として調製した。即ち、Vasohibin-1-KLH融合タンパクは、精製Vasohibin-1タンパクに10倍モル量のSPDP試薬でSH基を導入し、20mM dithiothreitolで還元後、上記マレイミド化KLHと融合させて抗原とした。一方、Fc融合Vasohibin-1タンパクは、Vasohibin-1のアミノ末端又はカルボキシル末端にFcを付加したポリヌクレオチド配列を導入したプラスミドベクターを、Freestyle 293-F Cells(Invitrogen)に導入して一過的に発現させた後、プロテインAカラム(MAPS IIキット、Bio-Rad Laboratories Inc.)を用いて精製することにより調製した。なお、Vasohibin-1タンパクは、K. Watanabe et al., Vasohibin as an endothelium-derived negative feedback regulator of angiogenesis, J. Clin. Invest. 114 (2004), 898-907の記載に従って、バキュロウイルス発現系にて発現と精製を行った。
(モノクローナル抗体の調製)
Vasohibin-1のハプテン抗原、Vasohibin-1-KLH融合タンパク、あるいはFc融合Vasohibin-1タンパクを、初回免疫には完全アジュバントと、2回目以降は不完全アジュバントと等量混和することにより、免疫原としての乳剤を調製した。
モノクローナル抗体は、K. Watanabe et al., Vasohibin as an endothelium-derived negative feedback regulator of angiogenesis, J. Clin. Invest. 114 (2004), 898-907に記載した方法で作製した。即ち、5週齢の雌A/J系マウスに、投与1回につき、一匹当り50μgのハプテン抗原あるいは10μgのタンパク抗原(Vasohibin-1-KLH融合タンパク、Fc融合Vasohibin-1タンパク)を皮下と腹腔内に等量に分けて投与した。その後、4回目あるいは5回目の免疫後に、最終のブースター(細胞融合の4日前)を行ったマウスより脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。脾細胞とミエローマ細胞(P3U1)との細胞融合は、K. Watanabe et al., Vasohibin as an endothelium-derived negative feedback regulator of angiogenesis, J. Clin. Invest. 114 (2004), 898-907に記載した方法で行った。
抗血清とハイブリドーマ上清の抗体価の評価は下記に記述するDELFIA法にて行った。即ち、ヤギ抗マウスIgG抗体を固相した96穴マイクロプレートに、抗血清あるいはハイブリドーマ上清を添加し、さらにビオチン化Vasohibin-1タンパクとユーロピウム標識ストレプトアビジンを混合攪拌後、室温で2時間あるいは4℃で終夜反応させた。反応後、洗浄液(0.01% Tween20と0.1% ProClin 150を含む生理食塩水)にて3回洗浄を行い、100mL DELFIA増強試薬を加え、5分間振とう混和した。615nmにおける時間分解蛍光をARVO MX (Perkin Elmer)にて測定し、抗血清やハイブリドーマを未添加の場合に得られるシグナルの3倍を超えるシグナル強度を示す場合を陽性と判断した。
各モノクローナル抗体は、抗体産生ハイブリドーマの無血清培地あるいはハイブリドーマをマウスに投与して得られた腹水より、プロテインAカラム(MAPS IIキット、Bio-Rad Laboratories Inc.)を用いて精製した。以上のようにして、上述の表1に示す全てのモノクローナル抗体を調製した。
試験例1〔Vasohibin-1の部分ペプチドによる免疫で得られたモノクローナル抗体のエピトープの確認〕
上記のDELFIA法に従い、Vasohibin-1の部分ペプチドの免疫系によって得られたモノクローナル抗体が確かにその部分ペプチドをエピトープとして認識し反応するかどうか調べた。
初めにハプテン抗原を免疫原として得られた各モノクローナル抗体VN1-2H11、VN3-11E11、VR1-12E7、VC1-4E12、及びVC-12F6について、種々の濃度に希釈した抗体溶液を調製した。この抗体溶液を用いて上記DELFIA法を行い、一定のシグナル(10万カウント)を示す抗体量を算出した。次にこの一定のシグナルを示す抗体存在下で、種々の濃度の免疫に用いたペプチドを添加し、ペプチド濃度依存的に競合反応が起きるかどうか調べた。競合反応が生じた場合、その抗体はそのペプチドとの反応性を有することになる。対照として、Vasohibin-1とは無関係の配列のペプチドを使用した。結果を図1に示す。
図1より、何れの抗体においても、対照のペプチドに対しては競合反応が起きなかったのに対し、免疫に用いたペプチドに関しては、濃度依存的な競合反応が認められ、各抗体は免疫に用いたペプチド配列をエピトープとして認識することが示された。
試験例2〔全長Vasohibin-1の免疫で得られたモノクローナル抗体のエピトープマッピング〕
表1に示されたように、全長Vasohibin-1タンパク(FcN、FcC、VhW)を免疫して得られたモノクローナル抗体(FcN-5A3、FcN-6A5、FcC-3E6、FcC-6E5、FcC-9H5、VhW-1F7、VhW-2B4)がVasohibin-1タンパクのどの部分を認識するかについて、エピトープマッピングを行って調べた。
すなわち、プレートに抗マウスIgGを固相した上にそれぞれの抗Vasohibinモノクローナル抗体を結合させ、さらにビオチン化全長Vasohibin-1タンパクを結合させ、ユーロピウム標識したストレプトアビジンによってビオチン化全長Vasohibin-1を検出する。この系に無標識の全長Vasohibin-1、アミノ末端の76アミノ酸残基を欠失させたポリペプチド(Vh(77-365))、あるいはさらにカルボキシル末端の47アミノ酸残基を欠失させたポリペプチド(Vh(77-318))を加えてゆき、加えたタンパクが各モノクローナル抗体により認識されることによりビオチン化全長Vasohibin-1が置換されるかどうかを検出する。全長Vasohibin-1のみによって置換される場合、抗体はVasohibin-1のアミノ末端76アミノ酸残基を認識し、全長Vasohibin-1及びVh(77-365)によって置換される場合、抗体はVasohibin-1のカルボキシル末端47アミノ酸残基を認識し、全長Vasohibin-1、Vh(77-365)、Vh(77-318)いずれによっても置換される場合は、抗体は77番目から318番目のアミノ酸に相当する中間部分を認識することになる。その結果、図2に示すように、FcN-5A3、FcN-6A5、FcC-3E6はアミノ末端76アミノ酸残基を、FcC-6E5、FcC-9H5は77番目から318番目のアミノ酸に相当する中間部分を、VhW-1F7、VhW-2B4はカルボキシル末端47アミノ酸残基をそれぞれ認識することが明らかとなった。
試験例3〔ウェスタン法による血中Vasohibin-1タンパクの検出〕
得られたモノクローナル抗体を用いて血中Vasohibin-1タンパクを検出することが可能であるか、また、その場合血中Vasohibin-1が癌の血管新生を示すマーカーとなりうるかを調べる目的で、以下の試験を行った。
健常者及び肺癌患者からEDTA採血管を用いて血液を採取し、EDTA血漿を調製した。このEDTA血漿30μLから、Albumin and IgG Removal kit(GEヘルスケア・バイオサイエンス社製)の抗アルブミン/グロブリン・ゲルを用いてアルブミンとグロブリンを除去した液500μLに、アセトン2mLを加えて攪拌後、-20℃にて2時間以上静置した。その後、遠心して得られた沈殿を乾燥後、60μLのトリス緩衝生理食塩水に溶解した。この液15μLを、K. Watanabe et al., Vasohibin as an endothelium-derived negative feedback regulator of angiogenesis, J. Clin. Invest. 114 (2004), 898-907に記載した方法で10%SDS-PAGEゲルに泳動後、HRP標識した抗Vasohibin-1モノクローナル抗体VC1-4E12によってウェスタンブロットを行った。ECL advance(GEヘルスケア・バイオサイエンス社製)を用いて検出を行った結果を図3に示す。
図3より、矢印で示すVasohibin-1に相当するバンドが肺癌患者検体から得られた。従って、調製したモノクローナル抗体を用いて血中Vasohibin-1タンパクを測定することが可能であり、また、癌患者の血管新生マーカーとしてVasohibin-1を利用できる可能性があることが示された。
試験例4〔抗Vasohibin-1モノクローナル抗体の感度及び特異性評価〕
上記で調製した抗Vasohibin-1モノクローナル抗体と、R&D systems社より市販されている抗Vasohibin-1モノクローナル抗体(clone 411208)について、ウェスタン法にて性能の比較評価を行った。なお、上記で調製した抗Vasohibin-1モノクローナル抗体としては、抗体VC1-4E12を用いた。
Vasohibin-1発現ベクターを一過的にトランスフェクトしてVasohibin-1タンパクを発現させたCOS細胞の細胞抽出液、あるいはバキュロウイルス発現系にて産生、精製したVasohibin-1タンパクを、10%SDS-PAGEゲルにて泳動し、泳動ゲル中のタンパクをニトロセルロースメンブレン(Invitrogen)に転写した。その後、5%スキムミルクでブロッキングし、それぞれの抗Vasohibin-1抗体(1μg/mL)と4℃で一晩、続いてHRP標識した抗マウスIgG抗体(KPL)と室温で2時間ブロットし、Vasohibin-1の検出を行った。その結果を図4に示す。
露光時間10秒間の検出において、抗体VC1-4E12を用いた場合では、COS細胞抽出液1μg中のVasohibin-1タンパクを検出することが可能であった。一方、R&D systems社製の市販抗体(clone 411208)を用いた場合では、1〜20μgのいずれの容量のCOS細胞抽出液においてもVasohibin-1を確認できなかった。精製Vasohibin-1タンパクの検出においても、抗体VC1-4E12を用いた場合では、露光時間10秒間の検出において1ngのVasohibin-1が確認できたのに対し、市販抗体(clone 411208)を用いた場合では露光時間6分間であっても10ngのVasohibin-1を確認できず、25ngのバンドがようやく確認できた。また、市販抗体(clone 411208)を用いた場合では非特異的なバンドが目的のVasohibin-1よりも濃く検出された。これらの結果より、上記で調製した抗Vasohibin-1モノクローナル抗体VC1-4E12は市販のモノクローナル抗体と比較して感度、特異性の両方の点で優れていることが示唆された。
実施例1〔抗Vasohibin-1モノクローナル抗体の組合せ〕
血中Vasohibin-1タンパクの測定が可能となるサンドイッチELISAの抗体の組合せを探索するため、表1に示す抗体に関して固相あるいは標識抗体として調製可能なすべての組合せについて、血中Vasohibin-1タンパク測定用のサンドイッチELISAを行った。なお、抗体FcC-6E5、抗体FcC-9H5については、標識抗体の調製が困難であるため標識抗体としての検討対象から予め除外する。
まず、表1に示す全てのモノクローナル抗体を固相した96穴マイクロプレートを調製した。即ち、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて10μg/mLに調製した各抗体溶液を、96穴マイクロプレートに100μL/ウェルずつ添加し、終夜反応させた。その後、反応液を除き、洗浄液(0.01% Tween20と0.1% ProClin 150を含む生理食塩水)で3回洗浄後、2%ブロックエース(大日本住友製薬社製)を200μL/ウェルずつ添加し、4℃で終夜放置することによりブロッキングを行った。一方、標識抗体としては、表1に示す抗体のうち抗体FcC-6E5、抗体FcC-9H5を除く全ての抗体について、20倍モル量のSulfo-NHS-LC-Biotin(ピアス社製)を反応させ、PD-10カラム(GEヘルスケア社製)でゲルろ過することにより調製した。
次に、各抗体が固相化されたプレートにVasohibin標準液(Vasohibin-1終濃度0〜3.2pmol/mL)50μLを添加後、1μg/mLの上記で調製した標識抗体と0.4μg/mL HRP(Horseradish Peroxidase)標識ストレプトアビジンを含む溶液50μLを添加し、攪拌後4℃で終夜反応させた。その後、反応液を除き、上記洗浄液で3回洗浄後、TMB溶液(Colorburst Blue、ALerCHEK社製)を100μL添加し、室温で15分間反応させた。そこに、0.5N 硫酸を50μL添加して反応を停止し、各ウェルの450nmにおける吸光度を測定した。
結果の一例として、図5に、抗体FcC-3E6を標識抗体とした場合の結果を、図6に、抗体VhW-2B4を標識抗体とした場合の結果を、図7に、抗体FcC-9H5を固相抗体とした場合の結果を示す。
図5において、各固相抗体を用いて0〜3.2pmol/mLの濃度範囲において段階希釈したVasohibin-1タンパクを測定したときの吸光度の結果(A)、吸光度による標準曲線作成の結果(B)、及び、前記結果(A)において3.2pmol/mLのVasohibin-1タンパクで吸光度2.0以上を示した組合せについて、添加回収試験を行った結果(C)を示す。結果(C)より、抗体FcC-3E6を標識抗体として用いた場合に、ある程度の精度で標準曲線を作成することができた固相抗体VN3-11E11、VC1-4E12、FcN-5A3、FcC-6E5、FcC-9H5について、血漿に250fmol/mLのVasohibin-1タンパクを添加した場合の回収率を求めたところ、最も高い回収率を示した固相抗体FcN-5A3でも19.8%であり、極めて正確さに欠く結果であった。これらの結果より、抗体FcC-3E6を標識抗体とした場合には、固相抗体が何れの抗体であっても良好な結果が得られず、適当な組合せを見出すことは出来なかった。
図6において、各固相抗体を用いて0〜2.0pmol/mLの濃度範囲において段階希釈したVasohibin-1タンパクを測定したときの吸光度の結果(A)、吸光度による標準曲線作成の結果(B)、ならびに、前記結果(A)において2.0pmol/mLのVasohibin-1タンパクで吸光度が1.5以上であり良好な結果を示した組合せのうち、3つの固相抗体VC1-4E12、FcC-6E5、FcC-9H5について、添加回収試験を行った結果(C)を示す。結果(C)より、抗体VC1-4E12は添加量の半分以下の回収率(37.8%)しか得られなかったのに対して、抗体FcC-6E5、FcC-9H5では回収率が82.1%、81.0%であり、十分な回収率が得られた。これらの結果より、抗体VhW-2B4を標識抗体とした場合には、固相抗体を抗体FcC-6E5及びFcC-9H5とした場合に優れた感度及び特異性が発揮されることが判明した。なお、抗体FcC-6E5及び抗体FcC-9H5は共通のエピトープを認識するものと考えられ、これら両抗体の性能についてはほとんど相違が見出されなかったため、両抗体の代表として、抗体VhW-2B4を標識抗体とした場合の固相抗体は抗体FcC-9H5を用いることとした。
一方、図7は、抗体VhW-2B4を標識抗体とした場合の好ましい固相抗体と判断された抗体FcC-9H5を固相抗体とした場合の、標識抗体を検討した結果を示す。図7において、各標識抗体を用いて0〜3.2pmol/mLの濃度範囲において段階希釈したVasohibin-1タンパクを測定したときの吸光度の結果の一例(A)、吸光度による標準曲線作成の結果(B)、ならびに、前記結果(A)においてVasohibin-1が0pmol/mLの時の非特異的結合による吸光度が高かった抗体VC-12F6及び抗体FcN-5A3を除外し、残りの抗体VN3-11E11、VR1-12E7、FcN-6A5、FcC-3E6、VhW-2B4について、添加回収試験を行った結果(C)を示す。なお、VN1-2H11、VC1-4E12、FcC-6E5、VhW-1F7との組合せについては、Vasohibin-1の測定が困難であり好ましい組合せではないと判断した。結果(C)より、抗体VhW-2B4は、図6において好適な組合せと判断された組合せであり、回収率は91.7%と良好であった。また、抗体VR1-12E7、FcN-6A5は、回収率が112.9%、79.2%であり良好な結果を示した。一方、抗体VN3-11E11及びFcC-3E6は、回収率が184.1%、9.0%と高すぎる又は低すぎる結果を示したことから、組合せとしては不適であった。なお、抗体VR1-12E7を標識抗体とした場合には、37℃に保温した血漿中のVasohibin-1タンパクの測定値が不正確になることが判明した。これらの結果より、抗体FcC-9H5を固相抗体とした場合には、標識抗体としては先に検討した抗体VhW-2B4のほかに抗体FcN-6A5とした組合せも血中Vasohibin-1タンパクが測定可能であることが判明したが、その他の組合せでは測定不能であり、標識抗体か固相抗体のいずれかに優良な抗体を用いても血中Vasohibin-1測定用サンドイッチELISAが必ずしも成立するというものではないことが示唆された。
このようにして、表1に示す抗体の組合せについて行った全検討結果を表2に示す。なお、定量性があり、かつ、添加回収試験で好成績を示す抗体の組合せについては「○」を、その他の組合せについては「×」を、検討を行わなかった組合せについては「―」を付した。
Figure 0005430573
表2より、定量性があり、かつ、添加回収試験で好成績を示す抗体の組合せは、著しく限られたものになり8個、即ち、抗体VN3-11E11と抗体VC-12F6のセット(セットA)、抗体VR1-12E7と抗体VC-12F6のセット(セットB)、抗体FcC-3E6と抗体VN3-11E11のセット(セットC)、抗体FcC-9H5と抗体FcN-6A5のセット(セットD)、抗体FcC-6E5と抗体VhW-2B4のセット、抗体FcC-9H5と抗体VhW-2B4のセット(以上、セットE)、及び抗体VN1-2H11と抗体VC-12F6のセット(セットF)しか存在しないことが判明した。なお、抗体FcC-6E5及び抗体FcC-9H5は共通のエピトープを認識するものと考えられ、これら両抗体の性能についてはほとんど相違が見出されなかったため、これらの抗体を固相抗体とし、標識抗体にVhW-2B4を用いた組合せも同様の性能になると考えらたため、以降の試験については、固相抗体がFcC-6E5、標識抗体がVhW-2B41の組合せ以外の組合せについて行った。
実施例2〔抗Vasohibin-1モノクローナル抗体の組合せを用いたELISA法の構築〕
実施例1で選択した抗体の組合せについて、さらに感度を上げるため、抗体に直接標識を行うことにより調製した標識抗体を用いてELISA法を行った。
(標識抗体の調製)
ペプシン処理によるFab’化が不可能なサブクラスIgG2bの抗体に関しては、Peroxidase Labeling Kit-SH(同仁化学研究所製)を用いて、IgGを還元して生じるSH基を介してHRP標識を行った。また、サブクラスIgG1あるいはIgG2aの抗体に関しては、Fab’を調製後、ヒンジ法を用いて酵素標識を行った。即ち、抗体1mgに対しペプシン50μgを反応させ消化を行いF(ab’)2を調製後、HPLCのTSKgel G2000SWXLカラム(東ソー社製)を用いたゲルろ過による精製を行った。次に、10mMの2-メルカプトエチルアミンによる還元及び上記カラムによりFab’を調製した。一方、HRPあるいはアルカリフォスファターゼ(ALP)は、Sulfo-HMCSによりマレイミド化を行い、PD-10カラム(GEヘルスケア社製)にて精製を行った。等モルのFab’とマレイミド化した酵素を混和し、4℃で終夜反応させた後、上記HPLCのTSKgel G2000SWXLカラムで精製を行い、標識抗体を調製した。得られた標識抗体を表3に示す。
Figure 0005430573
(セットB'、F’、又はF”を用いたELISAの標準曲線及び添加回収試験)
表3に示す組み合わせのうち、セットB'、F’、F”の3種類のELISAについて、0〜2000fmol/mLの濃度範囲において段階希釈したVasohibin-1タンパクを測定したときの標準曲線と、血漿に3濃度のVasohibin-1(100、200、400fmol/ml)を添加した場合の添加回収試験の結果を図8〜10に示した。なお、セットF”については、化学発光検出を用いたELISA法にて行った。即ち、予めアッセイ緩衝液(1mM塩化マグネシウム、0.1mM塩化カルシウム、0.5%BSA、0.01%Tween 20、10μg/mL マウスγ-グロブリンを含む50mM トリス塩酸緩衝生理食塩水 pH7.4)を添加したVC-12F6抗体固相プレートに、Vasohibin標準液(0-1000fmol/mL)25μL及び0.25μg/mL ALP標識VN1-2H11抗体50μLを添加後、攪拌後4℃で終夜反応させた。その後、反応液を除き、上記洗浄液で4回洗浄後、化学発光基質溶液(Lumigen APS-5)を100μL添加し、攪拌後、各ウェルの化学発光量を測定した。
図8〜10より、いずれのセットを用いたELISAにおいても、抗体に直接標識を行うことにより更に感度は上昇し、かつ、添加回収試験においても、回収率が80%以上と良好であった。
(ELISA法による血中Vasohibin-1タンパク量の測定)
表3に示す組合せを用いて、肺癌患者より採取したEDTA血漿におけるVasohibin-1タンパク量をELISA法により測定したところ、高値を示すいくつかの検体が確認された。これら血中Vasohibin-1測定値の高かった癌患者において、治療のための手術によって肺癌組織を除去された後に、血中Vasohibin-1測定値がどのように変化するかを調べた。即ち、手術1週間前に採取した100例からのEDTA血漿検体のうち、表3に示す組合せを用いたELISA法により血漿中にVasohibin-1が検出された検体32例について、手術1週間後の血中Vasohibin-1を測定し、手術の前後における変化について調べた。
その結果、表3のセットを用いたELISAにより、術後1週間目には血中Vasohibin-1タンパク量が有意に減少して測定されることが判明した。結果の一例として、セットF”を用いたELISAの結果を図11に示す。
図11より、手術前後の測定値における減少割合は平均0.69倍であった。この結果より、癌組織を除去することにより血中のVasohibin-1タンパク量が減少したことから、癌患者の血中に検出されるVasohibin-1タンパクの一部は癌組織の血管内皮細胞から分泌されているものであると推察され、本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットによって腫瘍血管新生をモニターできる可能性が示された。
実施例3〔Vasohibin-1測定による抗血管新生薬の薬効評価〕
AvastinのようなVEGF中和抗体や、SorafenibのようなVEGF受容体阻害剤といった抗VEGF薬等の抗血管新生薬を投与された患者における薬剤の効き具合は、投与の前後における血中Vasohibin-1レベルの変化によって判定することができる。すなわち、抗VEGF薬等の抗血管新生薬を投与する前に、表3に示したいずれかのモノクローナル抗体の組み合わせを用いたELISAによって血中Vasohibin-1レベルが予め測定できた癌患者について、薬剤投与後も同様に血中Vasohibin-1レベルを測定し、その測定値の変化が大きい患者ほど抗VEGF薬等の抗血管新生薬が薬効を顕していると考えられる。その度合いは投薬前の測定値に対する投薬後の測定値の割合で示すことができる。
本発明の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットは、生体内バソヒビンを良好な感度及び特異性で検出することができることから、腫瘍血管新生のモニター等に好適に用いられる。
配列表の配列番号1は、KIAA1036ポリヌクレオチド及びそこにコードされているポリペプチドである。
である。
配列表の配列番号2は、KIAA1036ポリペプチドである。

Claims (9)

  1. 配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち、
    (1)アミノ酸番号132〜145を認識するモノクローナル抗体(抗体A-1)とアミノ酸番号351〜365を認識するモノクローナル抗体(抗体A-2)であるセット(セットA)、
    (2)アミノ酸番号217〜229を認識するモノクローナル抗体(抗体B-1)とアミノ酸番号351〜365を認識するモノクローナル抗体(抗体B-2)であるセット(セットB)、
    (3)アミノ酸番号1〜76を認識するモノクローナル抗体(抗体C-1)とアミノ酸番号132〜145を認識するモノクローナル抗体(抗体C-2)であるセット(セットC)、
    (4)アミノ酸番号77〜318を認識するモノクローナル抗体(抗体D-1)とアミノ酸番号1〜76を認識するモノクローナル抗体(抗体D-2)であるセット(セットD)、
    (5)アミノ酸番号77〜318を認識するモノクローナル抗体(抗体E-1)とアミノ酸番号319〜365を認識するモノクローナル抗体(抗体E-2)であるセット(セットE)、及び
    (6)アミノ酸番号3〜15を認識するモノクローナル抗体(抗体F-1)とアミノ酸番号351〜365を認識するモノクローナル抗体(抗体F-2)であるセット(セットF)、
    からなる群より選ばれる少なくとも1つである、抗バソヒビンモノクローナル抗体のセットであって、
    セットAにおける抗体A-1が受託番号FERM P−21585で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体、抗体A-2が受託番号FERM BP−11169で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であり、
    セットBにおける抗体B-1が受託番号FERM BP−11168で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体、抗体B-2が受託番号FERM BP−11169で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であり、
    セットCにおける抗体C-1が受託番号FERM P−21589で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体、抗体C-2が受託番号FERM P−21585で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であり、
    セットDにおける抗体D-1が受託番号FERM P−21590で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体、抗体D-2が受託番号FERM P−21588で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であり、
    セットEにおける抗体E-1が受託番号FERM P−21590で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体、抗体E-2が受託番号FERM P−21591で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であり、
    セットFにおける抗体F-1が受託番号FERM BP−11167で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体、抗体F-2が受託番号FERM BP−11169で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である
    抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット
  2. セットAにおける抗体A-1が固相抗体、抗体A-2が標識抗体であるセット(セットA’)、
    セットBにおける抗体B-1が固相抗体、抗体B-2が標識抗体であるセット(セットB’)、
    セットCにおける抗体C-1が固相抗体、抗体C-2が標識抗体であるセット(セットC’)、
    セットDにおける抗体D-1が固相抗体、抗体D-2が標識抗体であるセット(セットD’)、
    セットEにおける抗体E-1が固相抗体、抗体E-2が標識抗体であるセット(セットE’)、
    セットFにおける抗体F-1が固相抗体、抗体F-2が標識抗体であるセット(セットF’)、及び
    セットFにおける抗体F-2が固相抗体、抗体F-1が標識抗体であるセット(セットF”)
    からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1記載の抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット。
  3. サンドイッチELISA法に用いられるための、請求項1又は2記載のモノクローナル抗体のセット。
  4. 血中バソヒビンの測定のための、請求項1〜いずれか記載のモノクローナル抗体のセットの使用。
  5. 被検者由来の生体試料と、請求項1〜いずれか記載のセットを構成するモノクローナル抗体とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する方法。
  6. 工程(I):被検者由来の生体試料と、請求項1〜いずれか記載のセットを構成するモノクローナル抗体とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する工程、
    工程(II):前記工程(I)で測定された存在量を対照者における存在量と比較する工程、ならびに
    工程(III):前記工程(II)で行った比較において、被検者における存在量が対照者より多いと認められる場合に被検者が血管新生が亢進する疾患を発症している可能性が高いと判定する工程
    を含む、血管新生が亢進する疾患の発症の判定方法。
  7. 請求項1〜いずれか記載のモノクローナル抗体のセットを含有してなる、血管新生が亢進する疾患の発症の判定用キット。
  8. 工程(A):抗血管新生薬の投与後における被検者由来の生体試料と、請求項1〜いずれか記載のセットを構成するモノクローナル抗体とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する工程
    工程(B):前記工程(A)で測定された存在量を、投与前における存在量と比較する工程、ならびに
    工程(C):前記工程(B)で行った比較において、抗血管新生薬の投与前に比べて投与後のほうが該複合体の存在量が少ないと認められる場合に抗血管新生薬が薬効を示している可能性が高いと判定する工程
    を含む、抗血管新生薬の薬効評価方法。
  9. 請求項1〜いずれか記載のモノクローナル抗体のセットを含有してなる、抗血管新生薬の薬効評価用キット。
JP2010526744A 2008-08-27 2009-08-26 抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット Expired - Fee Related JP5430573B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010526744A JP5430573B2 (ja) 2008-08-27 2009-08-26 抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008218581 2008-08-27
JP2008218581 2008-08-27
JP2010526744A JP5430573B2 (ja) 2008-08-27 2009-08-26 抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット
PCT/JP2009/064862 WO2010024293A1 (ja) 2008-08-27 2009-08-26 抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2010024293A1 JPWO2010024293A1 (ja) 2012-01-26
JP5430573B2 true JP5430573B2 (ja) 2014-03-05

Family

ID=41721460

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010526744A Expired - Fee Related JP5430573B2 (ja) 2008-08-27 2009-08-26 抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5430573B2 (ja)
WO (1) WO2010024293A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6300373B2 (ja) * 2012-12-03 2018-03-28 国立大学法人東北大学 抗バソヒビン2抗体
CN106188227B (zh) * 2016-07-07 2019-09-24 华东理工大学 降血压肽和降血压蛋白质及其应用

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002090546A1 (en) * 2001-05-07 2002-11-14 Shionogi & Co., Ltd. Polypeptide serving as angiogenic marker and dna thereof
WO2007037245A1 (ja) * 2005-09-29 2007-04-05 Shionogi & Co., Ltd. 血管新生抑制作用を有するポリペプチド
WO2008066032A1 (fr) * 2006-11-30 2008-06-05 Tohoku University Facteur inhibiteur de la lymphangiogenèse

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002090546A1 (en) * 2001-05-07 2002-11-14 Shionogi & Co., Ltd. Polypeptide serving as angiogenic marker and dna thereof
WO2007037245A1 (ja) * 2005-09-29 2007-04-05 Shionogi & Co., Ltd. 血管新生抑制作用を有するポリペプチド
WO2008066032A1 (fr) * 2006-11-30 2008-06-05 Tohoku University Facteur inhibiteur de la lymphangiogenèse

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6009058930; SONODA H. et al.: 'Multiple processing forms and their biological activities of a novel angiogenesis inhibitor vasohibi' Biochemical and Biophysical Research Communications Vol.342, 2006, p.640-646 *

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2010024293A1 (ja) 2012-01-26
WO2010024293A1 (ja) 2010-03-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5952309B2 (ja) Exosome検出用モノクローナル抗体
WO2003031971A1 (fr) Reactif pour detecter un facteur de risque de la maladie d'alzheimer, necessaire de detection a cet effet, et procede de detection du facteur de risque de la maladie d'alzheimer au moyen de ce necessaire
WO2011034128A1 (ja) コラーゲンネオエピトープ抗体
WO2008032712A1 (en) Monoclonal antibody and use thereof
WO2020253187A1 (zh) 瘦素免疫原、杂交瘤细胞、单克隆抗体、多克隆抗体及应用
KR101777254B1 (ko) En2 단백질을 특이적으로 인식하는 특정 항원으로부터 얻어진 단클론 항체 또는 이를 함유하는 전립선암 진단용 조성물
US7662380B2 (en) ZAQ ligand-1 antibodies and uses thereof
JP5430573B2 (ja) 抗バソヒビンモノクローナル抗体のセット
KR101338517B1 (ko) 인간 간-카르복실에스터라제 1을 특이적으로 인식하는 단일클론 항체, 상기 항체를 생산하는 하이브리도마 세포주 및 이의 용도
JPWO2009044561A1 (ja) 抗proNT/NMNモノクローナル抗体
AU634961B2 (en) Detection, quantitation and classification of ras proteins in body fluids and tissues
US6200764B1 (en) Detection, quantitation and classification of ras proteins in body fluids and tissues
US20140038890A1 (en) Adiponectin receptor c-terminal fragments (ctf)-immunoglobulin
WO2011068176A1 (ja) 胆管細胞癌の検出方法および予防・治療剤のスクリーニング方法
US20140294850A1 (en) Early childhood membranous nephropathy due to cationic bovine serum albumin
CN115975025B (zh) C反应蛋白(crp)检测试剂盒
US10538580B2 (en) Anti-equol antibody composition and use therefor
JP6729917B2 (ja) EphA2 N末端フラグメント抗体
JP4393210B2 (ja) 抗体およびその用途
JP2004198313A (ja) 甲状腺腫瘍の診断用キット
WO2024194495A1 (en) C3f assay
JP2016526684A (ja) アウグリン免疫学的検定
WO2018103062A1 (zh) Cnpy2异构体2及作为肠癌分子标识物的应用
JP2005143504A (ja) 抗体およびその用途

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120508

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131025

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131105

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131126

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131203

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5430573

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees