JP5430365B2 - 発酵熱利用システム - Google Patents

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Description

この発明は、家畜排泄物や農場副産物(廃棄物)、家庭の食物残滓類等の主に植物系の有機廃棄物を発酵させ、その発酵熱を水と熱交換し、その温水を温室や栽培ハウス等に循環させて利用するようにした発酵熱利用システムに関するものである。
従来、温室栽培等に使用する温室ハウスの暖房には、重油等を燃焼させて暖房することが行われている。しかしながら、重油等を利用した暖房では、コストがかかるほか、大量のCOを排出するなど、環境に大きく影響するなどの問題がある。また、暖房温度が比較的高温となるので、温風をファン等で循環させる場合にもファンの近くと遠くとでは温度差が生じ、作物の生育に影響を与える場合があった。
そのため、重油等の燃焼に代え、各種の有機廃棄物を発酵させて、その発酵熱を利用するシステムとして種々のものが提案されている。例えば、特許文献1に開示された有機性廃棄物処理システムは、有機廃棄物の破砕混合部と有機廃棄物を加圧撹拌する撹拌装置を有する発酵堆肥化槽とからなり、発酵堆肥化槽の側壁に金属製配管を施して冷却水を流通させて加熱し、この温水を屋舎に循環させて暖房するようにしたものである。
このシステムでは、高品質の発酵堆肥を作ることができ、さらに、発酵熱を利用して作った温水により温室ハウスとして農作物を作ることができる。
特開2006−111479号公報
しかしながら、このシステムでは、堆肥化用の屋舎を設けると共に、破砕混合装置や撹拌装置を設ける必要があり、比較的大きな施設となると共に、各種装置を稼働させるために多大な電力を必要とし、近年特に望まれるエコロジーの観点からは、なお問題が残されているものであった。
本発明は、かかる課題を解決するために発明をしたものであって、設備の運営にほとんど電力を使用しないと共に、COの排出を極力抑えた、環境に優しい新規のシステムを提案するものである。
上記課題を解決するため、本発明は、有機廃棄物を自然発酵させて発酵熱を発生する発酵発熱部と、放熱部を有する発熱利用部とを設けると共に、前記発酵発熱部と発熱利用部を循環パイプで接続し、その循環路の途中に循環ポンプを設けて熱媒体を循環流通させ、前記発酵発熱部及び放熱部では熱媒体との熱交換を行い、発熱利用部を昇温するようにして発酵熱利用システムを構成するという手段を採用した。
そして、発酵発熱部は、有機廃棄物を充填した適宜なコンテナを縦横方向及び高さ方向に積み上げてなり、循環パイプは、複数のコンテナの間を走行して縦横方向及び高さ方向に一連の流通回路を形成するように敷設して内部を流通する熱媒体と熱交換するようにするという手段を採用した。
また、上記発熱利用部は、上記循環パイプと接続するラジエーターとファンとからなる放熱部を有し、ラジエーターで熱媒体と熱交換して昇温した空気をファンで拡散させるようにするという手段を採用した。
さらに、2つまたはそれ以上の発酵発熱部を設けると共に、それぞれの発酵発熱部から発熱利用部へ接続する循環パイプの流路を順次切り換え可能として、発酵熱を継続して発熱利用部に供給するように発酵熱利用システムを構成するという手段を採用した。
そして、上記熱媒体としては水を採用した。
上記構成にかかる本発明の発酵熱利用システムは、家畜排泄物や農場副産物などの有機廃棄物を適宜なコンテナで自然発酵させて発酵熱を得ると共に、その発酵熱を循環路を介して温室ハウスや畜舎等の発熱利用部に供給して暖房等に利用できるようにしたものである。そのため、ほとんど動力源を必要とせず、CO等をほとんど排出しない極めて省エネルギーの環境で動作することが可能である。
また、具体的には、発酵発熱部は有機廃棄物を充填したコンテナを積み上げたものであり、そこに一連の循環パイプを挿通するだけであるから、全体構成が簡単であり、大がかりな施設を必要としないもので、安価に構築できると共に、操作・調節・保守等が容易であり、安全性も高いものである。
また、発酵を促す各コンテナは断熱効果もあり、寒暖の影響を受けることなく、常に一定の発熱量を期待できる。さらに、自然菌や微生物による自然発酵による発熱であるから、昼夜の別や気象の影響を受けることが少なく、安定した熱源となる。
また、発酵が終了した有機廃棄物は高品質の発酵堆肥となるので、農地に還元して作物栽培に利用できるから、無駄の生じないシステムとなる。
一方、複数の発酵発熱部から発熱利用部へ接続する循環パイプの流路を順次切り換え可能とすることで、途切れることなく発熱利用部の昇温に利用できるようになる。
そして、熱媒体としては水を用いるので、環境を汚染するおそれがない。
本発明に係る発酵熱利用システムの基本原理を示す模式図である。 本発明システムの概要を具体的に示すチャート図である。 本発明システムにおける発酵発熱部の構成の例を示す斜視図である。 発酵発熱部における循環パイプの配列例を示す参考図である。 発酵の温度変化を示す概略図である。 本発明システムの稼働例の概略図である。
以下、本発明に係る発酵熱利用システムの好ましい実施形態について、添付図面に従って説明する。
図1は、本発明の最も基本的な原理構成を示す模式図である。図1において、1は発酵発熱部、2は発熱利用部、3は発酵発熱部1と発熱利用部2の両方を接続する循環パイプ、4は循環ポンプである。この循環パイプ3内には循環ポンプ4を介して熱媒体を循環させ、発酵発熱部1と発熱利用部2のそれぞれで熱交換を行う。なお、循環させる熱媒体としては水を利用する。5はラジエーター(放熱器)、6はファンであり、両者で放熱部7とし、これらにより温風を発熱利用部2内に拡散させる。
即ち、発酵発熱部1では、自然発酵によって発熱を促進させ、その発熱を発酵発熱部1に張り巡らした循環パイプ3を通じて熱交換し、パイプ内に流通する水を温水に換えて循環ポンプ4を介して発熱利用部2のラジエーター5まで循環させる。ラジエーター5では熱交換により周囲の空気に熱を放出し、暖められた空気はファン6により発熱利用部2内に拡散して全体を暖める。一方、ラジエーター5の放熱で冷却された水は再び発酵発熱部1に循環し、ここで発酵熱により再び温水となる。このような循環を繰り返して発熱利用部2を昇温させるのである。従って、このシステムでは、基本的に循環ポンプ4とファン6の動力源(例えば電力)のみが必要であって、CO等をほとんど排出しない極めて省エネルギーの環境で動作する。
続いて、図2に従って本システムをさらに詳しく説明する。発酵の素材としては、植物系の有機廃棄物を用いる。具体的には、畜産業では、主に家畜のふん尿等の排泄物、農業では、農場から排出される各種の副産物、落ち葉、食物の残り滓等、種々の廃棄物が例示される。また、それ以外にも、発酵に適した新規な素材を開拓する余地もある。
これらの有機物を適宜な容器に入れ、それら自身が持つ菌や、環境に自然に存在する菌などにより自然発酵させる。このとき発酵熱が生じるので、その熱を適当な手段で回収し、ハウス暖房、地下暖房、土壌暖房に利用する。これにより農業において作物生産に寄与する。また、民生(家庭)における暖房や畜舎の暖房にも利用できる。
一方、発酵の終了した素材は良質の発酵堆肥となり、そのまま農地に還元して上記同様、作物生産に利用することができる。
なお、図におけるヒートポンプは、発酵熱が足らない場合の補助として使用するものであり、その利用には動力源を必要とするので、COの排出を伴うことになる。
次に、上記発酵発熱部1の具体的構成について説明する。図3において、11は台板となるパレットである。12、12・・・は有機廃棄物を充填したコンテナで、図では縦5×横5×高さ4の100個のコンテナを規則正しく積み上げた例を示している。各コンテナ12としては、従来公知の堆肥化袋が利用できるなど、その態様は特に問わない。13は積み上げたコンテナ12の全体を覆うシートで、例えば野積みした場合には、雨や雪の侵入を防ぐものである。また、コンテナ12からの自然放熱を防ぐ効果もある。なお、コンテナ全体を適宜な屋舎内に設置することも可能である。要は、中の有機廃棄物が自然発酵して充分な発酵熱を発生する環境を整えることが大切である。このような発酵発熱部1の構成では、自然発酵により一定期間にわたり発熱するので、下述する循環パイプを流通する熱媒体との熱交換によって熱を回収し、必要な箇所に送って利用する。
図4は、循環パイプの配列例を示すものである。コンテナ12の集合は1段当たり25個の4段であるが、個々の段において、複数のコンテナの間を走行するように循環パイプ14を縦横に張り巡らす。また、各段の循環パイプ14は高さ方向のパイプで接続し、一連の流通回路を構成する。これにより、複数のコンテナ12間に循環パイプ14を敷設することができ、各コンテナで発生した発酵熱を、パイプ14内を流通する水との間で熱交換を行い、効率よく回収できる。このように熱交換で温水となった水は循環ポンプ15を介してラジエーター16に送られ、ラジエーター16で放熱して暖房等に利用できる。この場合、循環パイプ14は熱効率や耐腐食性を考慮してステンレス管が好ましい。また、コンテナ12の外にある循環パイプ14の周囲は断熱材で被覆し、循環路の途中の熱の損失を防止する。
続いて、図5は各コンテナにおける発酵による発熱によって取得できる温度の変化の状態の概要を日数ごとにグラフ化したものである。このグラフから分かるように、各コンテナは、最初の7日間で発酵が進み、温度は急激に上昇し、取得できる温度は60度から70度まで達する。その後15日から20日ぐらいは安定した温度を維持し、30日を経過すると発酵はほぼ終了し、発熱も無くなる。従って、この20日間程度が最も利用できる期間となる。
なお、落ち葉などの自然発酵では、25度くらいから発酵が進むが、あまり高温になると却って発酵の進行が妨げられることが知られている。本発明システムでは、コンテナ間を循環する循環パイプ14を流通する水との間で常に熱交換が行われるので、発酵の環境温度が一定温度以上に上昇することは無く、常に発酵に適した温度を維持できるようになるという利点がある。
また、コンテナ自体に断熱効果があるので、季節による周囲環境の変化の影響をあまり受けない。また、自然菌(微生物)による発酵,発熱なので、昼夜の別や気象等の影響も少ないと考えられる。
図6は、本発明システムを実際に稼働させる態様の一例を示すものである。上述したように、有機廃棄物を使用した発酵発熱部では、約30日から40日を経過すると発酵が終了し、熱利用ができなくなる。そのため、発酵発熱部は一定期間ごとに置き換える必要がある。その置き換えを簡単にするための手段が図6に示したものである。図6において、21、21は発酵発熱部で、同じ態様のものを(A)、(B)の2つ用意する。22、22は循環パイプで、実線で示す循環回路と点線で示す循環回路を切換弁23、23・・で切り換えて使用するようにし、循環ポンプ24により、温水を循環させる。なお、25、25はラジエーター、26、26はファンであり、温室ハウス27内に設置したものである。
このシステム態様では、例えば、最初、(A)で示す発酵発熱部21で発熱し、点線で示す回路を利用して温室ハウス27を暖房する。(A)で示す発酵発熱部21が発熱を終了すると切換弁により管路を切り換えて(B)で示す発酵発熱部21を利用できるようにする。この間に(A)で示す発酵発熱部21のコンテナを取り替え、次回の発酵,発熱に備える。これを交互に繰り返すことで、温室ハウス27は途切れることなく継続して暖房できる。
なお、本例では、2つの発酵発熱部を使用した例を提示しているが、これに限定されるものではなく、2以上の複数の発酵発熱部を用意し、順次切り換えるようにしてもよい。また、例では独立した循環回路を2つ用意したが、ハウス内の巡回回路を一つにし、その入口で発酵発熱部を切り換えるような管路構成を採用することも可能である。
上述したように、本発明に係る発酵熱利用システムは、有機廃棄物を自然発酵した際に生じる熱で熱媒体(水)と熱交換し、これを温室ハウスなどに循環させて暖房等の熱利用を図るものである。そのため、原理が単純なものであり、保守管理が容易であるから、婦女子等にも簡単に操作・調節ができ、危険性も全くない。また、発酵発熱部は有機廃棄物を充填したコンテナを積み上げたものであり、そこに一連の循環パイプを挿通するだけであるから、大がかりな施設を必要とせず、設置や運用のコストも低廉なものである。
さらに、発酵温度は60度から70度であり、給湯や保温などにも適する身近で効率のよい熱源である。
また、発酵が終了した有機廃棄物は高品質の発酵堆肥となるので、農地に還元して作物栽培に利用できるから、無駄の生じないシステムとなる。
1 発酵発熱部
2 発熱利用部
3 循環パイプ
4 循環ポンプ
5 ラジエーター
6 ファン
7 放熱部

Claims (4)

  1. 有機廃棄物を自然発酵させて発酵熱を発生する発酵発熱部と、放熱部を有する発熱利用部とを設けると共に、前記発酵発熱部と発熱利用部を循環パイプで接続し、その循環路の途中に循環ポンプを設けて熱媒体を循環流通させ、前記発酵発熱部及び放熱部では熱媒体との熱交換を行い、発熱利用部を昇温するようにした発酵熱利用システムであって、前記発酵発熱部は、有機廃棄物を充填した適宜なコンテナを縦横方向及び高さ方向に積み上げてなり、循環パイプは、複数のコンテナの間を走行して縦横方向及び高さ方向に一連の流通回路を形成するように敷設して内部を流通する熱媒体と熱交換するようにしたことを特徴とする発酵熱利用システム。
  2. 発熱利用部は、上記循環パイプと接続するラジエーターとファンとからなる放熱部を有し、ラジエーターで熱媒体と熱交換して昇温した空気をファンで拡散させるようにした請求項記載の発酵熱利用システム。
  3. 2つまたはそれ以上の発酵発熱部を設けると共に、それぞれの発酵発熱部から発熱利用部へ接続する循環パイプの流路を順次切り換え可能として、発酵熱を継続して発熱利用部に供給するようにした請求項1または2記載の発酵熱利用システム。
  4. 熱媒体は水である請求項1から請求項の何れか1項記載の発酵熱利用システム
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