JP5429086B2 - 農業用ハウス - Google Patents

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Description

本発明は、複数のフィルムが、各フィルム間に空気層を形成可能にまたは空気層を設けて配置された複層構造の被覆材を備える農業用ハウスに関する。
農業分野においては、従来、冬季の栽培にハウスが用いられており、該ハウスとしては、一般的に、屋根、壁等をフィルム状の被覆材で構成したものが用いられている。
ハウスでの冬季の栽培には、一般的に、ハウス内に暖房を入れて、ハウス内を加温させて植物を生育させる方法が採られている。しかしこのような石化燃料を使用する方法は、地球温暖化、石化燃料の高騰化等の観点から好ましくない。そこで、近年、官民上げて、省エネルギーや環境を考慮した農業用ハウスの開発が行われている。
保温性に優れ、冬季の暖房費の低減に優れた効果を発揮する農業用ハウスとして、被覆材を複層構造としたハウス(以下、複層ハウスということがある。)がある。該被覆材においては、フィルム間の空気層により熱の貫流が妨げられる。
実際、この複層ハウスの考えは古くからあり(特許文献1〜2)、寒冷地において普及してきた。しかし、朝方になって外気が冷えると、最外層のフィルムの内側の湿度の高い空気が冷やされて最外層のフィルムの内面に水滴が氷結し、曇りガラスのようになり、午前中、太陽光によって水滴が蒸発するまでは、太陽光線が温室の内部に充分に照射せず、ハウス内の温度と照度が上がらないという問題があった。また、降雪地帯においては、屋根に雪が積もると次第に堆積し、ハウス内を暖めても、その断熱性が良いためがために、雪までにその熱が伝達せず、雪の重みにより農業用ハウスが倒壊する問題があった。
特許文献3〜4では、上記被覆材のフィルム間に温風を供給する温風供給手段を設けることにより、上記現象を回避する工夫がなされている。しかしこれらの工夫は、設備面からの工夫であり、フィルム材料からの解決方法はいまだかつて提案されていない。
一方、近年、ハウスを夏季の栽培にも利用するようになっているが、夏季のハウス栽培においては、ハウス内の温度が高くなりすぎると高温障害により植物の生育が阻害される問題がある。
夏季のハウス内の温度上昇を防止するために、熱線遮断機能を付与したフィルムを被覆材として用いることが提案されるようになっている。このような用途に用いられる熱線遮断フィルムとしては、太陽光線の可視光線域の波長を透過し、近赤外領域(780nm〜2500nm)の波長を遮蔽するものが好ましいとされている。樹脂フィルムにこのような熱線遮断機能を付与する方法として、フィルム表面にスパッタリング等により金属または金属酸化物からなる薄膜を形成する方法、フィルム中に赤外線吸収機能を有する成分(赤外線吸収フィラー、赤外線吸収色素等)を配合する方法(たとえば特許文献5〜8)等がある。
特開昭52−81242号公報 実開昭56−55360号公報 特開平1−300831号公報 特開平6−141688号公報 特開平11−246570号公報 特開2001−49190号公報 特開2002−369629号公報 特開2004―43764号公報
上述した従来の複層ハウスにおいては、被覆材を複層構造していることから、被覆材を透過する光の量が、被覆材として単層フィルムを用いたハウスよりも少なくなる。ハウス内に供給される光量の低下は、植物の生育が遅れる原因となるため、複層構造の被覆材を構成するフィルムとしては、通常、光合成に必要な光を充分に確保するために、可視光線透過率が高い(通常93%以上)フィルムが用いられる。
しかし、このような透明なフィルムを用いた場合でも、実際、特に日射量が少ない冬季においては、複層ハウスでの収穫量が、被覆材として単層フィルムを用いたハウスでの収穫量よりも低い場合があった。
さらに、従来の複層ハウスは、冬季の保温性を高めることに主流が置かれており、夏季に高温障害が生じやすく、周年栽培は難しかった。
なお、特許文献7〜8では、熱線遮断効果を充分に得るためには、熱線遮断フィルムの日射透過率は80%以下、特に70%以下が好ましいとされている。また、通常、日射透過率と可視光線透過率とは相関しており、たとえば日射透過率が80%以下のフィルムの可視透過率は通常85%以下である。このような熱線遮断フィルムは、日射量の不足する冬季においては植物の光合成が不充分となり、生育が遅れるおそれがあることから、冬季の栽培には不適と考えられていた。特許文献7〜8に、該熱線遮断フィルムを、複層構造の被覆材として用いることは記載されていない。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、年間を通じて、特に冬季において植物の栽培を良好に実施できる農業用ハウスを提供する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、複層構造の被覆材の少なくとも1層に、特定の熱・光学特性を有する樹脂フィルムを用いることで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下の態様を有する。
[1]複数のフィルムが、各フィルム間に空気層を形成可能にまたは空気層を設けて配置された複層構造の被覆材を備える農業用ハウスであって、
前記被覆材を構成する複数のフィルムのうちの少なくとも1つが、JIS R3106に準拠して求められる可視光線透過率が80%以上、日射吸収率が8〜25%のフィルム(1)であることを特徴とする農業用ハウス。
[2]前記被覆材の最外層のフィルムが前記フィルム(1)である、[1]に記載の農業用ハウス。
[3]前記被覆材の最内層のフィルムが、JIS R3106に準拠して求められる可視光線透過率が90%以上、日射吸収率が5%以下のフィルム(2)である[1]または[2]に記載の農業用ハウス。
[4]前記フィルム(1)の可視光線透過率が85%以上であり、日射吸収率が8〜15%である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の農業用ハウス。
[5]前記被覆材の少なくとも最外層のフィルムがフッ素樹脂フィルムである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の農業用ハウス。
本発明によれば、年間を通じて、特に冬季において植物の栽培を良好に実施できる農業用ハウスを提供できる。
フィルムAの波長300〜2100nmにおける透過率および反射率を示す光学チャートである。 フィルムBの波長300〜2100nmにおける透過率および反射率を示す光学チャートである。 フィルムCの波長300〜2100nmにおける透過率および反射率を示す光学チャートである。 フィルムDの波長300〜2100nmにおける透過率および反射率を示す光学チャートである。 フィルムKの波長300〜2100nmにおける透過率および反射率を示す光学チャートである。
本発明の農業用ハウスは、複数のフィルムが、各フィルム間に空気層を形成可能にまたは空気層を設けて配置された複層構造の被覆材(以下、複層被覆材ということがある。)を備える複層ハウスである。
本発明に用いられる複層被覆材は、該複層被覆材を構成する複数のフィルムのうち、少なくとも1層に、JIS R3106に準拠して求められる可視光線透過率が80%以上、日射吸収率が8〜25%のフィルム(1)を用いる以外は、公知の複層被覆材と同様の構成であってよく、たとえば以下のA、B等が挙げられる。
A:複数(好ましくは2〜3枚)のフィルムを重ね、その外縁部をシールして袋状としたもので、フィルム間にエアーを送り込み、風船のように膨らませて使用されるもの。
B:複数(好ましくは2枚)のフィルムを、枠材等に取り付けることにより離間配置したもの。
本発明に用いられる複層被覆材は、A、Bのどちらであってもよい。
Aタイプの複層被覆材を用いたハウスは複層エアーハウス、或いは空気膜構造ハウスとも称され、Bタイプの複層被覆材を用いたハウスは複層ペアハウスとも称される。本発明の農業用ハウスは、複層エアーハウスでも複層ペアハウスでもよい。積雪時や台風などの強風時には、フィルムからなる空間に大きな圧力がかかるが、袋状となったAタイプの複層被覆材の場合には、エアーを送風することにより、この内圧を上げて、フィルムの凹み(変形)を少なくさせることが出来る。そのため、複層被覆材の内圧をコントロールしやすい複層エアーハウスの方が好ましい。
[フィルム(1)]
フィルム(1)を構成する樹脂としては、たとえばフッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)等)、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられ、いずれか1種単独であっても2種以上をブレンドしたものであってもよい。
フィルム(1)としては、耐候性、透明性、滑雪性等に優れることから、フッ素樹脂フィルムが好ましい。フッ素樹脂フィルムは、当該フィルムを構成する樹脂として少なくともフッ素樹脂を含む樹脂フィルムである。
フッ素樹脂としては、樹脂の分子構造式中にフッ素原子を含有する熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、公知の各種の含フッ素樹脂が使用可能である。具体的には、エチレン−テトラフルオロエチレン(以下、ETFEという。)系共重合体、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、FEPという。)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)−テトラフルオロエチレン系共重合体(以下、PFAという。)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン系共重合体(以下、THVという。)、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、ポリフッ化ビニル、これらの樹脂のいずれか2種以上のブレンド等が挙げられる。これらの中でも、耐候性の点から、ETFE、FEP、PFAおよびTHVからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、更に、コスト、機械的強度等の点から、ETFEが好ましい。
前記フッ素樹脂にフッ素ゴムを配合してもよい。フッ素ゴムを配合すると、フッ素樹脂の柔軟性が向上する。
フッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレン−プロピレン系弾性共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−プロピレン系弾性共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン系弾性共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン系弾性共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系弾性共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素ゴムの配合量は、フッ素樹脂の100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
フッ素樹脂フィルムを構成する樹脂は、フッ素樹脂のみであってもよく、フッ素樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂であってもよい。ただしフッ素樹脂を含有することによる効果を充分に得るためには、フッ素樹脂フィルムを構成する全樹脂の合計に対するフッ素樹脂の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
該他の熱可塑性樹脂としては、たとえばポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂等)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
フィルム(1)は、所定の熱・光学特性を満足するものであれば、単層フィルムでも多層フィルムでもよい。
フィルム(1)の厚さ(多層フィルムの場合は全層の合計の厚さ)は、6〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。該厚さがこの範囲にあると、耐久性及び光線透過性に優れる。一方、該厚さが薄すぎると農業ハウスの支柱等との擦れにより破れを生じやすくなる。また、該厚さが厚すぎると、透過する太陽光の量が減少する。
フィルム(1)は、JIS R3106(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)に準拠して求められる可視光線透過率が80%以上、日射吸収率が8〜25%である。
これらの熱・光学特性を満足するフィルム(1)を用いることにより、冬季において栽培植物への日射量を多くすることができ、夏季の栽培にも適した複層ハウスの構築が可能となる。
すなわち、本発明者らは、種々の検討の結果、冬季における光合成域の光量の確保を効率良く行うためには、フィルム自体が持つ可視光線透過率を高めることに加えて、フィルム表面に付着する小さな結露水やフィルムの氷結による可視光線透過率の低下を防止することが重要であるとの知見を得た。
小さな結露水等は、フィルムを曇らせ、可視光線透過率を5%〜10%減少させる。小さな結露(水つぶ)が大きな結露となり、それが流滴剤等の作用で水膜の形となると、可視光線透過率が回復するが、従来の複層ハウスの場合、水膜になり、フィルムの曇りが解消されるまでに1時間程度かかることがある。そのため、太陽光による光合成が活発とされる日の出から午前中の照度を充分に確保できないという問題があった。
特に複層ハウスの場合、被覆材が単層フィルムである場合に比べて、結露水等の影響が残りやすい。これはフィルム間の空気層による断熱効果によると考えられる。従来の複層ハウスは、冬季において、複層被覆材の最外層(複層ハウスを構成した際に外気と接する層。以下、1層目ということがある。)のフィルムが非常に冷えやすく、ハウス内を暖房しても、断熱効果により、最内層(複層ハウスを構成した際に最も屋内側となる層)よりも外側の層は暖まらない。例えば北海道などでは外気が−10℃にもなるため、最外層のフィルムは氷結しやすい。
複層被覆材の空気層に暖かい空気を流すことにより氷結を融解させることはできるが、空気層への空気の取り入れ口は少ない(ハウス内におおよそ1箇所ないし2箇所)く、また、暖かい空気により融解する範囲は取り入れ口から5〜10mの範囲までであるため、複層被覆材全体の氷結等を迅速に解消するのは難しい。
また、複層被覆材の空気層内は通常、水蒸気量が少ないため、結露水が生じた場合、水膜を形成しにくく、この点からも、フィルムの曇りが解消されるのに時間がかかってしまう。
複層被覆材を構成するフィルムとしてある程度高い日射吸収率を有するものを用いると、該フィルムが太陽光から発せられる赤外線を吸収し、フィルム自体の温度が上昇しやすくなるため、可視光線透過率の回復に要する時間を短縮させる、或いは結露や氷結を生じにくくして可視光線透過率の低下を抑制することができる。
さらに、ある程度高い日射吸収率を有するフィルムは、滑雪も早いと考えられる。なぜなら、該フィルムと雪の間の水膜が早く形成されれば、その水膜によって滑雪が促進されるからである。そのため、積雪によって太陽光のハウス内への供給が阻害される時間も短くなる。また、滑雪を目的として、ハウス内の暖房や、複層被覆材の空気層への暖かい空気の供給を過剰に行う必要もなくなり、それらに要する費用も低減できる。
上記のように、本発明者らは、複層被覆材を構成するフィルムには日射吸収率も重要であることを見出した。このような知見はこれまで知られていない。
フィルム(1)の可視光線透過率は、栽培試験からの考察では、83%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、88%以上がさらに好ましい。
可視光線透過率は、日射吸収率が所定の値となる範囲内であれば、より高い方が、光合成に必要な光をより多く確保でき、好ましい結果が得られると思われる。そのため、可視光線透過率の上限は特に限定されないが、当該熱・光学特性を有するフィルムを得やすい点から、91%以下が好ましい。ただし本発明はこれに限定されず、所定の日射吸収率を確保できるのであれば、91%を超えるものも好ましい。
日射吸収率は、8〜20%が好ましく、8〜15%がより好ましく、10〜15%がより好ましい。
フィルム(1)としては、本発明の効果に優れることから、可視光線透過率が83%以上であり、日射吸収率が8〜20%であるものが特に好ましい。
なお、日射吸収率に関し、JIS R3106では、日射透過率および日射反射率を測定し、それらの値から日射吸収率を算出するようになっている。つまり、日射透過率(%)+日射反射率(%)+日射反射率(%)=100%であることから、日射吸収率(%)は、100−(日射透過率(%)+日射反射率(%))により求められる。
フィルム(1)の日射透過率は、充分な可視光線透過率を確保しやすい点から、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。上限は、日射吸収率とのバランスを考慮すると、88%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。
日射反射率は、可視光線透過率および日射吸収率が所定の値となる範囲内であれば特に限定されないが、充分な可視光線透過率を確保しやすい点から、3〜7%が好ましく、3〜6%がより好ましい。
フィルム(1)の紫外線領域の光の透過率については、作物の種類により好ましい紫外線強度は異なるため、栽培対象となる作物の種類に応じて適宜設定すればよい。たとえば赤いバラなどは、360nm以下の紫外線を遮断した方が、花びらのブラッキングが起こりにくく好ましい。逆に茄子などは、完全に紫外線を遮断すると、黒紫色の発色が妨げられてしまう。
紫外線領域の光の透過率は、紫外線の吸収または反射により紫外線遮断機能を発揮する既存の紫外線遮蔽剤(酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタンなど)を添加する方法にて調整することができる。ただし、紫外線遮蔽剤は、その粒子径にもよるが、可視光線領域や赤外線領域の光も吸収または反射するものが多い。よって、紫外線遮蔽剤を添加する場合、その添加量は、可視光線透過率、日射透過率および日射吸収率がそれぞれ所定の値となる範囲内とする。
なお、本発明においては、日射透過率や日射吸収率を所定の範囲内とするために、後述する赤外線吸収剤、金属(酸化物)薄膜等の赤外線遮断手段が好ましく用いられるが、該赤外線遮断手段は、一般的に、紫外線領域の光についても吸収または反射する。そのため、本発明に用いられるフィルム(1)は、通常、紫外線領域の光も少なからず遮断することとなる。
フィルム(1)の上記熱・光学特性は、公知の方法により制御できる。
たとえば可視光線透過率は、使用する樹脂の種類、フィルムの厚さ、フィルムへの添加剤の配合等により調節できる。
日射吸収率は、赤外線を選択的に吸収する赤外線遮断特性を付与することにより制御される。フィルムにこのような赤外線遮断特性を付与する方法として、たとえば、フィルム中に、赤外線吸収色素、赤外線吸収フィラー等の赤外線吸収剤を含有させる方法が挙げられ、特に、耐候性、耐熱性等に優れる点から、赤外線吸収フィラーを含有させる方法が好ましい。
該方法においては、使用する赤外線吸収剤の種類、配合量等を調整することにより、日射吸収率を調節できる。
赤外線吸収色素としては、たとえば ビス(1,2−ジアリール−1,2−エチレンジチオラト)ニッケル系錯体化合物、アントラキノン系、ナフトキノン系、フタロシアニン系、シアニン系、インドフェノールアニリンの金属錯体系等が挙げられる。
赤外線吸収フィラーとしては、たとえば六ホウ化物、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛等を有効成分とする固体粒子が挙げられる。
ここで「有効成分」とは、赤外線の吸収等により赤外線遮断効果を奏する成分を意味する。たとえば後述するシリカ表面処理複合粒子(シリカで表面処理された六ホウ化物粒子)におけるシリカは、赤外線遮断効果を奏さないため有効成分ではない。
本発明においては特に、六ホウ化物を有効成分とするものが好ましい。このような赤外線吸収フィラーは、近赤外線を吸収する効果が高く、日射吸収率を所望の値とするために必要な配合量が少なくてすむため、可視光線透過率を高くすることができる。六ホウ化物粒子が近赤外線遮断特性を有する理由は明確ではないが、六ホウ化物は自由電子を多く含み、その粒子の内部及び表面の自由電子によるバンド間の間接遷移の吸収エネルギーが可視光〜近赤外線領域付近にあるため、近赤外線を吸収すると考えられる。
六ホウ化物とは、金属の六ホウ化物であり、その具体例としては、LaB、CeB、PrB、NdB、SmB、EuB、GdB、TbB、DyB、HoB、ErB、TmB、YbB、LuB等のランタノイド六ホウ化物;SrB、CaB等のアルカリ土類金属六ホウ化物;等が挙げられる。これらの中でも、入手のし易さから、LaB、CeB、NdB、GdBからなる群から選ばれる少なくとも1種の六ホウ化物が好ましく、LaB又はCeBがより好ましい。特に、LaBは、太陽光から発生する近赤外線中で最も強いとされる1000〜1100nm付近に最大吸収波長を有し、かつ、580nm付近に最大透過波長を有するので、近赤外線を遮断し、可視光線を透過するので極めて好ましい。
六ホウ化物粒子の平均粒径は0.1〜0.4μmが好ましく、0.1〜0.3μmがより好ましく、0.1〜0.2μmがさらに好ましい。平均粒径が上記範囲の上限値以下であると、該六ホウ化物粒子を有効成分とする赤外線吸収フィラーを含有するフィルムの透明性が維持される。下限値未満であると、耐水あるいは耐酸性を向上させるために必要なシリカ被覆量が多くなり、その被覆の均一性が損なわれる場合がある。
本明細書において、平均粒径は、レーザー回折散乱法により粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径、すなわち50%径(累積中位径)の値を意味する。
前記六ホウ化物粒子は、そのまま赤外線吸収フィラーとしてフィルム中に配合してもよいが、シリカで表面処理し、複合粒子として配合することが好ましい。
シリカで表面処理された六ホウ化物粒子(以下、シリカ表面処理複合粒子ということがある。)を用いることで、フィルム(1)中の六ホウ化物濃度が長期にわたって維持され、フィルム(1)の近赤外線遮断特性が維持される。具体的には、六ホウ化物粒子の表面が不定形シリカで被覆されているため、水への溶解性が低下し、フィルム(1)から溶出しにくい。また、フィルム(1)がフッ素樹脂フィルムである場合、フッ素樹脂は化学的に安定であるが、10〜15年間屋外暴露すると、フッ素樹脂が部分劣化し、フッ素樹脂フィルム中に遊離のHFを生ずる場合がある。このHFは六ホウ化物と反応してその濃度を低下させる。しかしシリカで表面処理すると、シリカがHFの受酸剤として作用し、HFと六ホウ化物との反応を顕著に抑制するため、フッ素樹脂フィルム中の六ホウ化物濃度が維持される。
なお、シリカは、六ホウ化物粒子の光学特性に影響を与えないため、シリカ表面処理複合粒子は、六ホウ化物粒子と同様、400〜700nmの可視光線を透過し、700〜1800nmの近赤外線を遮断する特性を有する。
シリカとしては、非晶性の不定形シリカが挙げられ、具体例としては、3号ケイ酸ナトリウム(SiO含有量:28.5%)、テトラエチルシリケート、テトラメチルシリケート、テトラプロピルシリケート、テトラブチルシリケート等のテトラアルキルシリケート等のケイ酸化合物またはそれらの部分縮合物等を加水分解して得られるシリカが好ましい。これらのケイ酸化合物またはその部分縮合物は、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
シリカによる表面処理は、公知の方法、たとえば特開2004―43764号公報に記載の方法により実施できる。
表面処理後、得られた6ホウ化物粒子を焼成することが好ましい。焼成は、表面処理時に添加又は生成した水が完全に除去されるように行うことが好ましい。水を完全に除去することで、樹脂分散時のフィルム外観が改善される。また、6ホウ化物粒子表面を被覆するシリカの表面処理膜が、焼成により緻密となるので好ましい。焼成条件としては、100〜600℃で10分以上が好ましく、400〜550℃で1時間以上がより好ましい。焼成雰囲気は、空気中でも窒素等の還元雰囲気中でもよい。
前記六ホウ化物粒子を不定形シリカで表面処理すると、不定形シリカをバインダーとして複数の六ホウ化物粒子が集合し、1〜100μm程度の粒子に成長する。そのため、表面処理後または焼成後、必要に応じて、粒子の平均粒径が所望の値となるよう、粉砕等の処理を行ってもよい。
以下に、不定形シリカの原料として3号ケイ酸ナトリウムまたはテトラアルキルシリケートを使用した場合のシリカ表面処理複合粒子の製造手順の一例を述べる。ただし本発明はこれらに限定されない。
(1)3号ケイ酸ナトリウムの場合:
塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸を水で稀釈して鉱酸溶液を調製し、別途、3号ケイ酸ナトリウム水溶液を準備する。ついで、50℃以上に保温した六ホウ化物粒子の水分散液に、前記鉱酸溶液と3号ケイ酸ナトリウム水溶液をよく撹拌しながら素早く滴下することにより、シリカ表面処理複合粒子のスラリーを生成させる。この時、六ホウ化物量に対し、所定のSiO量になるように、ケイ酸ナトリウム添加量を調整する。六ホウ化物粒子は、水に徐々に溶解するので、反応を1時間以内に終了させる。
生成したスラリーを水洗し、ろ過し、100〜150℃程度で乾燥後、生成した粒子を必要に応じて粉砕して所定の平均粒子径のシリカ表面処理複合粒子を得る。
このとき、フッ素樹脂フィルムの赤外線遮断性の耐候性や耐湿性をより向上させるために、粉砕を行う前に、生成した粒子を250〜600℃で30分以上焼成してもよい。
(2)テトラアルキルシリケートの場合:
六ホウ化物粒子をイソプロパノール等のアルコール溶液に分散させ、ついで、所定の量のテトラアルキルシリケート、塩酸又はアンモニアを添加し、更に最後に水を加え、60℃〜70℃でテトラアルキルシリケートを加水分解させる。この時、加水分解が終了するまで、撹拌を続けて生成した不定形シリカを六ホウ化物粒子に固着させる。
ついで、3号ケイ酸ナトリウムの場合と同様にして、生成した粒子を水洗、乾燥、焼成、粉砕する。
テトラアルキルシリケートとしては、テトラメチルシリケートやテトラエチルシリケート等を用いることが好ましい。これらは、加水分解後にSiOだけが生成するので、焼成工程又はフッ素樹脂との混練時にも耐熱性に優れ、例えば、300℃以上で焼成しても得られるシリカ表面処理複合粒子が変色しない。
シリカ表面処理複合粒子中、六ホウ化物量と不定形シリカのSiO換算量との質量比は、100:30〜100が好ましく、100:30〜70がより好ましい。
不定形シリカの比率が低すぎると、六ホウ化物粒子を完全に表面処理することができず、表面処理の効果が充分に得られない。六ホウ化物粒子の平均粒径がより細かければ、比表面積が増大するため、その表面処理のためにより多くの不定形シリカが必要となる。上記範囲内において、不定形シリカの比率が高いほど近赤外線遮断特性の低下が生じにくくなる。一方、不定形シリカの比率が高すぎると、所定の近赤外線遮断特性を発現させるために必要な配合量が増加するため、樹脂フィルムのヘイズ(曇度)が増し、透明性が損なわれるおそれがある。
本発明においては、前記シリカ表面処理複合粒子の表面が、疎水化処理剤により疎水化処理されていることが好ましい。これにより、シリカ表面処理複合粒子とフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂とを溶融混練してフィルム(1)を成形する際に、シリカ表面処理複合粒子同士が凝集しにくい。
前記疎水化処理剤としては、ケイ素原子に結合した加水分解性基または水酸基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
有機ケイ素化合物における加水分解性基は、加水分解して水酸基を生じ得る基であり、具体例としては、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、イソシアネート基、塩素原子等が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基が特に好ましい。1つのケイ素原子に結合する加水分解性基または水酸基の数は、1〜4個であり、2または3個が好ましい。
前記疎水化処理剤としては、特に、非晶質である不定形シリカ表面に強固に結合し、かつ疎水性を良好に付与できる点で、シランカップリング剤またはオルガノシリコーン化合物が好ましい。
シランカップリング剤としては、前記加水分解性基を有し、且つ反応性官能基を有しないものが好ましく、特に、疎水性を有する有機基を有するものが好ましい。ここで、反応性官能基は、シリカ表面処理複合粒子表面との反応に関与せずに、樹脂との相溶性の改善のみに関与する官能基を意味し、エポキシ基、アミノ基等が挙げられる。
疎水性を有する有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアリール基等が好ましい。該アリール基またはフルオロアリール基は、水素原子またはフッ素原子がアルキル基、フルオロアルキル基等の置換基で置換されてもよい。該疎水性を有する有機基としては、特に、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数2〜20のフルオロアルキル基、アルキル基またはフルオロアルキル基で置換されてもよいアリール基等が好ましい。該アリール基としては、フェニル基が好ましい。
オルガノシリコーン化合物としては、有機基と、ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基とを有するオルガノシリコーンが好ましい。該有機基としては、炭素数1〜4アルキル基またはフェニル基が好ましい。このようなオルガノシリコーンとしては、たとえば、シリコーンオイルと呼ばれるものが挙げられる。
前記疎水化処理剤の好ましい具体例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルシリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイル;等が挙げられる。
これらのなかでも、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンが好ましい。これらは、シリカ表面処理複合粒子との反応性が高く、かつ、少量でシリカ表面処理複合粒子を疎水化できる。
前記疎水化処理剤の使用量は、シリカ表面処理複合粒子の比表面積およびシリカ表面処理複合粒子と疎水化処理剤との反応性等により適宜選定され、特に限定されないが、シリカ表面処理複合粒子の100質量部に対して、2〜50質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。この範囲にあると、シリカ表面処理複合粒子同士が凝集しにくく、フィルム(1)の外観が良好となる。また、樹脂とのコンパウンド時に、六ホウ化物粒子表面のシリカ層が脱落するのを防止できる。
疎水化処理剤による処理方法としては、特に限定されないが、疎水化処理剤を溶解させた水、アルコ−ル、アセトン、n−ヘキサン、トルエン等の溶液にシリカ表面処理複合粒子を分散させ、その後乾燥する方法が好ましい。
フィルム(1)に配合されるシリカ表面処理複合粒子の平均粒径は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。シリカ表面処理複合粒子の平均粒径があまりに小さいと、樹脂フィルム中で凝集しやすい。また、該平均粒径は、30μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。シリカ表面処理複合粒子の平均粒径があまりに大きいとフィルム(1)に孔や破断が発生しやすい。
なお、シリカ表面処理複合粒子の平均粒径は、疎水化処理剤で処理されていない状態での平均粒径を意味する。
フィルム(1)に配合される赤外線吸収剤は1種でも2種以上でもよい。たとえば前記シリカ表面処理複合粒子と、他の赤外線吸収フィラーとを併用してもよい。
また、フィルム(1)が多層フィルムである場合、少なくとも1層に赤外線吸収剤を含有させればよく、赤外線吸収剤を含有しない層があってもよい。該多層フィルムは、複数のフィルムを積層したものであってもよく、樹脂フィルムの表面に、赤外線吸収剤をバインダーと共にコーティングすることにより膜(赤外線吸収層)を形成したものであってもよい。
赤外線吸収層の形成に用いるバインダーとしては、たとえば、フィルム(1)を構成する樹脂として挙げたものと同様のものが挙げられる。赤外線吸収層の厚さは0.5〜10μm程度が好ましい。
フィルム(1)への赤外線吸収剤の配合量は、得られるフィルムの熱・光学特性が所望の値となるよう、使用する赤外線吸収剤の近赤外線遮断能に応じて設定される。
たとえば赤外線吸収剤が、六ホウ化物粒子を有効成分とする赤外線吸収フィラーものである場合、つまり赤外線吸収フィラーとして六ホウ化物粒子または前記シリカ表面処理複合粒子を配合する場合、その配合量は、フィルム(1)の単位面積あたりの六ホウ化物の含有量(g/m)が0.01〜0.1g/mとなる量であることが好ましい。該含有量は0.02〜0.08g/mがより好ましい。該含有量が上記範囲の下限値以上であれば、8%以上の日射吸収性能が発現し、上限値以下であれば、充分な可視光線透過率が確保される。
なお、該含有量は、当該フィルム(1)中に含まれる六ホウ化物の質量および該フィルム(1)の単位面積あたりの質量から求められる平均の値である。
赤外線吸収フィラーとして、六ホウ化物量と不定形シリカのSiO換算量との質量比が100:30〜100であるシリカ表面処理複合粒子を用いて上記のような六ホウ化物の濃度とする場合、該シリカ表面処理複合粒子の配合量は、フィルム(1)の単位面積当たりの含有量(g/m)として、0.012〜0.2g/m程度となる。該含有量は、0.03〜0.1g/mがより好ましい。
赤外線吸収剤を用いる以外に、フィルムに、赤外線を選択的に吸収する赤外線遮断特性を付与する方法として、たとえば、フィルム表面に金属または金属酸化物からなる薄膜(以下、金属(酸化物)薄膜ということがある。)を設ける方法が挙げられる。金属(酸化物)薄膜は、赤外線の吸収作用だけでなく、赤外線の反射作用も有している。
該方法においては、使用する金属または金属酸化物の種類、金属(酸化物)薄膜の膜厚等を調整することにより、日射透過率および日射吸収率を調節できる。
金属(酸化物)薄膜を構成する金属としては、銀、金、白金等が挙げられる。また、金属酸化物としては、ITO(酸化インジウム−酸化錫化合物)、ZnO(酸化亜鉛)、ATO(酸化アンチモン−酸化錫化合物)、FTO(フッ素ドープ酸化錫)、SnO(酸化錫))等が挙げられる。中でもITOは、酸やアルカリに侵されることが少ないため、農業用フィルムとして最適である。特に樹脂フィルムがフッ素樹脂フィルムである場合、ITOは、フッ素樹脂を分解させる光触媒作用がなく、フッ素樹脂フィルムとの密着性が高いこと等からも好ましい。
金属(酸化物)薄膜の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法);プラズマCVD法、熱CVD法、触媒CVD法等の化学蒸着法(CVD法);等が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。これらの中でも、特にスパッタリング法は、生産性に優れ、工業的に幅広く使われているとともに、緻密でフィルムとの密着性が高い薄膜が均一な膜厚で得られるため好ましい。
スパッタリング法による金属(酸化物)薄膜の形成手順の一例を挙げると、たとえばITOの場合、インジウム−錫化合物をターゲット材とし、スパッタリングチャンバーに不活性ガスと酸素ガスとを導入し、スパッタリングを行うことにより、フィルム上に酸化錫ドープ酸化インジウム膜を成膜できる。
金属(酸化物)薄膜は、単一の層からなるものであってもよく、材質が異なる複数の層からなるものであってもよい。
金属(酸化物)薄膜の膜厚(複数の層よりなる場合は合計の膜厚)は、フィルムの柔軟性を保持し、かつ、該金属(酸化物)薄膜のフィルムからの脱離を防ぐためには、600nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
上述した金属(酸化物)薄膜を用いる方法は、得られるフィルムが高価なものになると同時に、この薄膜が風や積雪によるフィルムの変形には追従できないため脱落しやすい問題を生ずる。そのため、赤外線吸収剤をフィルム中に錬り込むか、或いは赤外線吸収剤を樹脂バインダーに分散させたコート液を、乾燥後の塗布厚みで1μm〜20μm程度塗工した膜を形成するなど、フィルムの変形に耐えやすい構成のものの方が好ましい。
ただし本発明はこれに限定されるものではなく、金属(酸化物)薄膜のみを利用してもよく、金属(酸化物)薄膜および赤外線吸収剤を併用してもよい。
フィルム(1)に、本発明の効果を損なわない範囲で、赤外線吸収剤以外の添加剤を含有させてもよい。
たとえば、可視光線透過率を制御するために、酸化鉄粒子、酸化コバルト粒子等の無機顔料を含有させてもよい。
また、酸化セリウム粒子及び/又は酸化亜鉛粒子を含有させてもよい。酸化セリウム粒子及び/又は酸化亜鉛粒子を併用すると、赤外線遮断特性がより長期に維持される。この場合、酸化セリウム粒子及び/又は酸化亜鉛粒子は、シリカ表面処理複合粒子と同様、疎水化処理剤で疎水化処理してから樹脂に混錬することが好ましい。
上記の他、耐摺動性(ハウスの金属骨材に対する耐磨耗性)を向上させるために、扁平状のマイカ、タルクなどのフィラーを含有させてもよい。
また、ハウスの骨材の影による発育のばらつきを少なくする、あるいは強烈な直進光による葉やけを防止するために、フィルム表面に凹凸をつけてナシジ化(粗面化)し、フィルムを透過した光線の内の拡散光の割合を30%〜80%に制御することも可能である。
本発明において、複層被覆材を構成するフィルムの数は、特に限定されないが、通常、2〜4枚であり、2または3枚が好ましい。
複層被覆材を構成する複数のフィルムのうち、どのフィルムにフィルム(1)を用いるかは特に限定されないが、氷の融解等の効果が発揮されやすい点で、最外層(1層目)のフィルムがフィルム(1)であることが好ましい。ただし本発明はこれに限定されず、2層目のフィルムにフィルム(1)を用いてもよい。この場合、2層目のフィルムの温度上昇により1層目と2層目との間の空気層の温度が上昇するため、間接的に1層目のフィルムの温度が上昇し、氷の融解等の効果が得られる。
複層被覆材は、該複層被覆材を構成するフィルムとして、フィルム(1)に該当しない他のフィルムを有することができる。該他のフィルムとしては、通常、可視光線透過率を確保する観点から、JIS R3106に準拠して求められる可視光線透過率が90%以上、日射吸収率が5%以下のフィルム(2)が好ましい。フィルム(1)とフィルム(2)とを組み合わせることで、複層被覆材全体としての可視光線透過率を80%以上とすることができる。
ただし、例えば、コチョウランのように、高い可視光線を必要としないような観葉植物を育てる場合などには、フィルム(2)は、可視光線透過率が50%以下のフィルムが好ましい。
よって、フィルム(1)とともに複層被覆材を構成する他のフィルムは、栽培する作物や求められる環境により適宜用意されるべきである。
フィルム(2)としては、これまで、複層被覆材を構成するフィルム、あるいは冬季のハウス栽培に適した農業用フィルムとして公知のものを使用できる。このようなフィルムとしては、たとえば前記フィルム(1)を構成する樹脂として挙げた樹脂からなるフィルム等が挙げられ、特に、耐候性、透明性等に優れる点から、PETフィルムまたはフッ素樹脂フィルムが好ましく、フッ素樹脂フィルムがより好ましい。なかでも、ETFEフィルムが好ましい。
フィルム(2)は、所定の熱・光学特性を満足するものであれば、単層フィルムでも多層フィルムでもよい。
フィルム(2)の厚さ(多層フィルムの場合は全層の合計の厚さ)は、6〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。該厚さがこの範囲にあると、耐久性及び光線透過性に優れる。一方、該厚さが薄すぎると農業ハウスの支柱等との擦れにより破れを生じやすくなる。また、該厚さが厚すぎると、透過する太陽光の量が減少する。
本発明においては、特に、複層被覆材を構成する複数のフィルムのうち、1層のみをフィルム(1)とし、残りをフィルム(2)とすることが好ましい。なかでも、1層目をフィルム(1)とし、2層目以降、特に最内層をフィルム(2)とすることが好ましい。
ただし最外層のフィルムは、風荷重や雪加重によるフィルムの変形を受けや易い。そのため、フィルム(1)が、スパッタリング等により金属(酸化物)薄膜を形成したものである場合は、剥離や割れなどの危険がある2層目、3層目等に用いるなど、1層目以外に用いることが好ましい。
本発明に好ましく用いられる複層被覆材として、以下のI〜Vのいずれかの構成の複層被覆材が挙げられる。各構成は、1層目/2層目(/3層目)の順に示している。
I:[フィルム(1)/フィルム(2)]
II:[フィルム(2)/フィルム(1)]
III:[フィルム(1)/フィルム(2)/フィルム(2)]
IV:[フィルム(2)/フィルム(1)/フィルム(2)]
V:[フィルム(1)/フィルム(1)]
これらの中でも、IまたはIIが好ましく、Iが特に好ましい。
本発明に用いられる複層被覆材を構成するフィルム(フィルム(1)、(2)等)には、農業用フィルムに通常行われるような表面処理が施されてもよい。特に、フィルムの片面または両面、特にハウスの屋内側の表面には、流滴剤が塗工されていることが好ましい。
流滴剤は、植物、動物、土壌等から発生する水蒸気がフィルムの表面で冷やされて、結露し、大きな水滴を作るのを防止するためのコーティング材である。流滴剤でコートした後の水接触角は5度〜20度程度であり、結露した水蒸気は、玉のような水滴にはならず、水膜を作って広がるため、太陽光の透過率を妨げることはない。
本発明の農業用フィルムは、冬場に太陽光線が当たる晴れの時間帯、或いは曇りの時間帯において、フィルムの表面温度が上昇して結露しにくい、或いは結露が短時間で終了するため、ハウス内へ透過する光合成に必要な光量を多くできるという効果を奏するものであるが、フィルムの表面温度が低下する夜間の結露は解消しにくい。よって流滴剤を塗工することで、日中だけでなく夜間の結露の防止効果も向上する。
流滴剤としては、シリカやアルミナなどの親水性の微粒子(平均粒径0.01μm程度)ものを、シランカップリング剤、またはポリビニルアルコール(PVA)等のバインダーに分散させたものが一般的に用いられており、その塗工量は、通常、固形分皮膜が0.2〜0.5g/m程度となる量である。
流滴剤を塗工する場合、フィルムの塗工面は、予め、コロナ放電処理等の表面処理を施しておくことが好ましい。コロナ放電処理等の前処理により、空気中から酸素や窒素を有する表面官能基を導入することで、その後にコートする流滴剤との密着力が向上する。ただしフィルム表面に前述した赤外線反射膜(金属または金属酸化物の薄膜)がある場合は、流滴剤との密着力に優れるため、特に前処理は必要としない。
上述した本発明の農業用ハウスによれば、植物の栽培を、年間を通じて、特に冬季に良好に実施できる。
たとえば冬季においては、栽培植物への日射量を、従来の複層ハウスよりも高めることができる。そのため、植物の生育が良好で、従来よりも短期間で栽培でき、収穫量を増やすことができる。日射量が向上するのは、日の出とともにフィルムの表面温度が上昇しやすく、日照時間が不足する冬季において、日照量をさらに低下させる要因となる結露や氷結、積雪等が解消されやすいためと考えられる。つまり、冬季は太陽光の近赤外領域を吸収することによりフィルム温度が上昇し、夜露や積雪がフィルム外側に残っている時間、結露時間、凍結時間など、太陽光のハウス内への供給が阻害される時間を短くさせることができる。
また、夏季においては、ハウス内の温度や作物の葉温の上昇を抑制できる。葉温の上昇が抑制され、光合成に適した温度となることで、光合成が活発になり、収穫量が向上する。また、透明なフィルムで構成した複層被覆材を用いた従来の複層ハウスでは夏場に栽培することが難しかったチンゲンサイ、ホウレンソウ、イチゴ等の作物を栽培できる。
そのため、本発明の農業用ハウスによれば、冬季、夏季のいずれにおいても作物の収穫量を増やすことができ、周年栽培を良好に実施できる。
本発明の農業用ハウスを構成する複層被覆材がフッ素樹脂フィルムからなる場合、上記効果がさらに向上する。さらに、該複層被覆材は、耐候性、透明性、耐汚染性等の特性にも優れ、その特性が屋外で15年以上にわたり維持される。
以下に、上記実施形態の具体例を実施例として説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の各例において用いた測定方法は下記のとおりである。
[平均粒径]
粒径レーザー回折、散乱式粒度分布測定器(セイシン企業製、LMS24)で、平均粒径を測定した。
[可視光線透過率、日射透過率、日射反射率、日射吸収率]
島津製作所UV−VIS−IR分光測定機UV3100を用い、JIS R3106「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に準拠して、可視光線透過率、日射透過率および日射反射率の測定ならびに日射吸収率の算出を行った。日射透過率と日射吸収率と日射反射率との合計が100%であることから、日射吸収率は、(100−日射透過率(%)−日射吸収率(%))により算出される。
[320nm透過率、290nm透過率]
島津製作所UV−VIS−IR分光測定機を用いて、320nm、290nmの透過率を測定した。
<製造例1〜14:2層被覆材の作製>
表1に示すフィルムA〜Lを用意し、表2に示す組み合わせで1層目(最外層、太陽側)、2層目(最内層、植物側)のフィルムを選択した。それらを重ね合わせ、周縁部をヒートシールすることにより袋状の2層被覆材1〜14を作製した。
得られた2層被覆材1〜14を用いて、後述する試験例1、2を行った。
使用したフィルムA〜Lはそれぞれ以下の手順で作製または入手したものである。
これらのうち、作製したフィルム(フィルムA〜J、L)については、ハウスの屋内側となる面にコロナ放電処理を行い、その上に流滴剤(日産化学工業株式会社製メタノールシリカゾル100部に対して、信越シリコーン株式会社製シランカップリング剤KBM−303を1.5部混合した液を希釈したもの)を、固形分皮膜が0.3g/mになるように塗布し、乾燥した後、2層被覆材の製造に供した。この流滴剤は、元のフィルムの光学・熱特性に影響を与えない。
市販のフィルム(フィルムK)の片面には既に流滴剤が付いているため、そのまま2層被覆材の製造に供した。このとき、流滴剤が付いている面がハウスの屋内側となるように配置した。
[フィルムA]
ETFE(旭硝子製、フルオンETFE88AX)の2500gを2軸押出機にて320℃でペレット化した。このペレットを用いて、Tダイ方式により、320℃で60μm厚のフィルムA(ETFE100%)を成形した。
フィルムAについて、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率、320nm透過率、290nm透過率を測定し、日射透過率および日射反射率から日射吸収率を算出した。結果を表1に示す。また、フィルムAの波長300〜2100nmにおける透過率および反射率の光学チャート(チャート1)を図1に示す。
[フィルムB]
ETFE(旭硝子製、フルオンETFE88AX)の2500gと、青顔料(アルミコバルト酸化物)の7.5gとをVミキサにて乾式混合した。この混合物を2軸押出機にて320℃でペレット化した。このペレットを用いて、Tダイ方式により、320℃で60μm厚のフィルムBを成形した。このフィルムBは青顔料を0.3質量%含む。
フィルムBについて、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率、320nm透過率、290nm透過率を測定し、日射透過率および日射反射率から日射吸収率を算出した。結果を表1に示す。また、フィルムBの波長300〜2100nmにおける透過率および反射率の光学チャート(チャート2)を図2に示す。
[フィルムC]
60μm厚のETFEフィルム(フィルムA)をスパッタ装置内に設置し、インジウム−錫化合物をターゲット材とし、スパッタリングチャンバーに不活性ガスと酸素ガスとを導入し、成膜圧力0.2Paにてスパッタリングを行うことにより、ETFEフィルム上に膜厚80nmのITO膜を成膜してフィルムC(ETFEフィルム/ITO膜の積層体)を得た。ITO膜の膜厚は、X線光電子分光分析(ESCA)装置により、ITO面からフィルム面への深さ方向の元素分析を行うことにより測定した。
フィルムCについて、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率、320nm透過率、290nm透過率を測定し、日射透過率および日射反射率から日射吸収率を算出した。結果を表1に示す。また、フィルムCの波長300〜2100nmにおける透過率および反射率の光学チャート(チャート3)を図3に示す。
[フィルムD]
平均粒径180nmのLaB微粒子の10gをイソプロパノールの50gを、分散機を用いて30分間混合し、LaB微粒子の16.7%イソプロパノール分散液を作成した。
つぎに、テトラエチルシリケートの22g(SiOとして6.6g)、イソプロパノールの40g、アンモニア水の0.5g、前記LaB微粒子のイソプロパノール分散液の60g、さらに水の60gを順次加えて混合し、60℃でテトラエチルシリケートの加水分解を行うことにより、LaB微粒子の表面処理を行った。その後、液中の粒子をろ取し、イソプロパノールで洗浄し、120℃で乾燥した後、粉砕機にて粉砕することにより、不定形シリカで表面処理されたLaB複合粒子を得た。該LaB複合粒子の組成(質量比)は、LaB:不定形シリカ(SiO換算)=100:67であり、平均粒径は1.0μmであった。以下、該LaB複合粒子をシリカ67表面処理LaB複合粒子1という。
なお、以下の各例で「シリカnn表面処理LaB複合粒子」とは、LaBの100質量部に対して、SiO換算でnn質量部の不定形シリカで表面処理された複合粒子をいう。
シリカ67表面処理LaB複合粒子1の15gを、フェニルメチルシリコーンの2質量%トルエン溶液100gに分散させ、次に、トルエンを140℃で蒸発除去した。これにより、フェニルメチルシリコーンにより疎水化処理されたシリカ67表面処理LaB複合粒子1の17gを得た。以下、これを疎水化処理シリカ67表面処理LaB複合粒子1ともいう。
疎水化処理シリカ67表面処理LaB複合粒子1の組成(質量比)はLaB:不定形シリカ(SiO換算):フェニルメチルシリコーン=100:67:23であり、平均粒径は2.0μmであった。
ETFE(旭硝子製、フルオンETFE88AX)の2500kgと、疎水化処理シリカ67表面処理LaB複合粒子の1.6gとをVミキサにて乾式混合した。この混合物を2軸押出機にて320℃でペレット化した。このペレットを用いて、Tダイ方式により、320℃で60μm厚のフィルムDを成形した。このフィルムD中のLaB濃度は0.034質量%、単位面積あたりのLaB含有量は0.036g/mであった。
フィルムDについて、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率、320nm透過率、290nm透過率を測定し、日射透過率および日射反射率から日射吸収率を算出した。結果を表1に示す。また、フィルムDの波長300〜2100nmにおける透過率および反射率の光学チャート(チャート4)を図4に示す。
[フィルムE]
エチルシリケートの仕込み量とフェニルメチルシリコーンの量を変更した以外は、疎水化処理シリカ30表面処理LaB複合粒子1の作製と同様な操作手順にて、疎水化処理シリカ30表面処理LaB複合粒子2を得た。その組成はLaB:不定形シリカ(SiO換算):フェニルメチルシリコーン=100:30:10であり、平均粒径は1.2μm(疎水化処理前の平均粒径は1.0μm)であった。
次に、疎水化処理シリカ67表面処理LaB複合粒子1の代わりに疎水化処理シリカ30表面処理LaB複合粒子2を用いた以外はフィルムDと同様な方法にて、60μm厚のフィルムEを成形した。このフィルムE中のLaB濃度は0.044質量%、単位面積あたりのLaB含有量は0.046g/mであった。
フィルムEについて、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率、320nm透過率、290nm透過率を測定し、日射透過率および日射反射率から日射吸収率を算出した。結果を表1に示す。
[フィルムF、G、H]
LaB微粒子として平均粒径150nmのものを使用した以外は、疎水化処理シリカ30表面処理LaB複合粒子2の作製と同様な操作手順にて、疎水化処理シリカ30表面処理LaB複合粒子3を得た。その組成はLaB:不定形シリカ(SiO換算):フェニルメチルシリコーン=100:30:10であり、平均粒子径は1.4μm(疎水化処理前の平均粒径は1.2μm)であった。
次に、疎水化処理シリカ30表面処理LaB複合粒子2の代わりに疎水化処理シリカ30表面処理LaB複合粒子3を、フィルム中のLaB濃度がそれぞれ表1に示す濃度となるように用いた以外はフィルムEと同様な方法にて、60μm厚のフィルムF、G、Hを成形した。フィルムF、G、H中のLaB濃度はそれぞれ0.022質量%、0.017質量%、0.008質量%であり、単位面積あたりのLaB含有量はそれぞれ0.023g/m、0.018g/m、0.0084g/mであった。
フィルムF、G、Hについて、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率、320nm透過率、290nm透過率を測定し、日射透過率および日射反射率から日射吸収率を算出した。結果を表1に示す。
[フィルムI、J]
疎水化処理シリカ67表面処理LaB複合粒子1の配合量を、フィルム中のLaB濃度がそれぞれ表1に示す濃度となるように変更した以外はフィルムDと同様な方法にて、60μm厚のフィルムI、Jを成形した。フィルムI、J中のLaB濃度はそれぞれ0.062質量%、0.103質量%であり、単位面積あたりのLaB含有量はそれぞれ0.065g/m、0.108g/mであった。
フィルムI、Jについて、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率、320nm透過率、290nm透過率を測定し、日射透過率および日射反射率から日射吸収率を算出した。結果を表1に示す。
[フィルムK]
夏涼しいハウスを提供するために製造された市販のポリオレフィン(PO)系農業フィルムであるフィルムK(アキレス社のハイベールクール、厚さ100μm)を用意した。
フィルムKについて、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率、320nm透過率、290nm透過率を測定し、日射透過率および日射反射率から日射吸収率を算出した。結果を表1に示す。また、フィルムKの波長300〜2100nmにおける透過率および反射率の光学チャート(チャート5)を図5に示す。
[フィルムL]
疎水化処理シリカ67表面処理LaB複合粒子1の配合量を、フィルム中のLaB濃度が表1に示す濃度となるように変更した以外はフィルムDと同様な方法にて、60μm厚のフィルムLを成形した。フィルムL中のLaB濃度は0.171質量%であり、単位面積あたりのLaB含有量は0.180g/mであった。
フィルムLについて、可視光線透過率、日射透過率、日射反射率、320nm透過率、290nm透過率を測定し、日射透過率および日射反射率から日射吸収率を算出した。結果を表1に示す。
<試験例1:冬季栽培試験(照度観測)>
福島県にある、間口7m、高さ3m、長さ50mのハウスに、該当する複層被覆材を6mの幅で展張し、ハウスに固定した後、該複層被覆材の層間に50Paの空気を入れ、膨らませ、その下の照度を測定した。尚、実施時期は、2009年の2月17日であり、この日の天気は晴れであった。
このハウスでは、オオバの栽培を行った。
朝7時30分から10時00分まで各複層フィルムを観察し、複層フィルムの曇りが見られるかどうかを観察した。また、これと同時に、8時00分、9時00分、10時00分における複層フィルム下の照度を測定した。
8時00分、9時00分、10時00分の3点の照度の平均値(照度平均)を算出し、標準的な複層フィルム構成の2層被覆材1(1層目と2層目の双方に、一般的な農業用フィルムであるフィルムA(ETFE100%のフィルム)を使用)を用いた比較例1の照度平均よりも20%以上増加しているものを○と判定し、それ以外のものを×と判定した。
このとき、併せて、複層被覆材の表面の観察も行い、曇りが消失し、完全に透明になる時刻を確認した。
それらの結果を表2に示す。
尚、植物の光合成は日の出〜10時くらいまでの午前中に終了すると考えられており、この時間帯での照度の大小が、収穫量を決定する。
<試験例2:夏季栽培試験(キュウリの葉温の測定)>
高知県にある、間口7m、高さ3m、長さ100mのハウスに、該当する複層被覆材を6mの幅で展張し、ハウスに固定した後、該複層被覆材の層間に50Paの空気を入れ、膨らませ、その下でキュウリの栽培を行い葉の温度を測定した。尚、夏の栽培を想定し、ハウスのサイドは開放した。
葉の温度は、2009年9月9日、午前9時00分〜10時00分の平均の温度であり、実際に葉にプラスチック温度計を取り付けて測定を行った。
葉温については40℃を超えると完全に光合成が行われなくなり、更に45℃を超えると熱死すること、また、30℃〜34℃の範囲においては、0.5℃の差は有意差であり、低いほうが、光合成が活発となることが報告されている。よって、標準的な複層フィルム構成である2層被覆材1を用いた比較例1での平均葉温:33.8℃よりも0.5℃以上低い場合を「遮熱効果あり」と評価した。
また、2009年9月9日、午前9時00分〜10時00分において、20分毎に照度測定を行い、その平均値を求めた。その結果を「照度」として表2に示す。該照度が、比較例1の照度の80%以上を確保しているものを○と評価し、80%に満たないものを×とした。
よって、比較例1と比較し、葉温で0.5℃以上低下し、かつ照度を80%以上確保しているものを「○」と評価した。
それらの結果を表2に示す。
尚、ここでの評価結果から、日射吸収率と葉温との相関性の高さが確認できた。
Figure 0005429086
Figure 0005429086
上記結果に示すとおり、フィルム(1)に該当するフィルムC〜G、I、Jを少なくとも1つの層に用いた2層被覆材3〜7、9〜10で構成した実施例1〜9のハウスでは、冬季栽培時の照度平均が、比較例1のハウスよりも高くなっていた。また、夏季栽培時の照度が充分に確保され、しかもキュウリの葉温が、比較例1の33.8℃よりも0.5℃以上低く、遮熱効果があることが確認できた。これらの効果は、特に、フィルム(1)を1層目に用いた場合に良好であった。
冬季の照度平均が高くなる理由としては、フィルムC〜G、I、Jの日中の温度が高くなりやすいため、太陽光の植物への到達を妨げるフィルムの凍結、夜露、植物からの蒸散量が少ない時のフィルムの曇りなどが少なくなったためと考えられる。実際、日射吸収率が8%未満のフィルムA、B、H、Kを用いた比較例1〜4のハウスでは、8時30分の時点でも2層被覆材の曇りが消えず、特にフィルムAは10時でも曇りが消えていなかった。この結果から、日射吸収率と照度との相関性の高さが確認された。
これらの結果から、実施例1〜9のハウスが、冬季栽培に有用で、夏季栽培にも適しており、周年栽培を良好に実施できることが確認できた。
一方、フィルムC〜G、I、Jを用いなかった比較例2〜5のハウスでは、比較例1との対比において、冬季栽培における照度の確保が不充分であった。また、フィルムAとフィルムHまたはKとを組み合わせた比較例3、4は、夏季栽培における遮熱効果も得られなかった。

Claims (5)

  1. 複数のフィルムが、各フィルム間に空気層を形成可能にまたは空気層を設けて配置された複層構造の被覆材を備える農業用ハウスであって、
    前記被覆材を構成する複数のフィルムのうちの少なくとも1つが、JIS R3106に準拠して求められる可視光線透過率が80%以上、日射吸収率が8〜25%のフィルム(1)であることを特徴とする農業用ハウス。
  2. 前記被覆材の最外層のフィルムが前記フィルム(1)である、請求項1に記載の農業用ハウス。
  3. 前記被覆材の最内層のフィルムが、JIS R3106に準拠して求められる可視光線透過率が90%以上、日射吸収率が5%以下のフィルム(2)である、請求項1または2に記載の農業用ハウス。
  4. 前記フィルム(1)の可視光線透過率が83%以上であり、日射吸収率が8〜20%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の農業用ハウス。
  5. 前記被覆材の少なくとも最外層のフィルムがフッ素樹脂フィルムである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の農業用ハウス。
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