JP5428343B2 - 貯蔵タンクのアンカー - Google Patents
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Description
ここで、特許文献1には、上記アンカーが開示されている。
上記貯蔵タンクは、略円柱状を呈する内槽と該内槽を包囲する外槽との二重構造となっており、LNG等の内容物は大気圧に比べ高い圧力で内槽内に貯蔵される。そして、内槽の内圧や地震時の応答等により内槽の下側外周縁部が外槽の底部から浮き上がることを防止するために、上記アンカーは内槽を外槽に係留し内槽の外周面である側面を下方に牽引している。なお、上記アンカーは、内槽の側面の下方への移動及び径方向への移動は規制しない。
上記アンカーに用いられる係留部材は、例えば略鉛直方向で延在する帯板状に形成されており、内槽の側面に略平行かつ周方向に関して所定の間隔で複数設けられている。係留部材の上端は内槽の側面の下部に接続され、係留部材の下端は外槽の底部に複数設けられたアンカーボックスにそれぞれ接続されている。
セカンダリーバリアは、例えば内槽から内容物が漏洩した場合に、上記内容物が外槽の外部に漏洩することを防止するために設けられる。
セカンダリーバリアは内槽の底面及び側面を包囲しており、内槽の側面に接続される係留部材はセカンダリーバリアを貫通して外槽のアンカーボックスに接続される。なお、セカンダリーバリアの液密性を確保するために、上記貫通箇所における係留部材とセカンダリーバリアとは溶接されている。
もっとも、係留部材の上下端間の距離を十分に確保できる場合には、係留部材上端に作用する周方向の力は係留部材下端では概ね延在方向の軸力として作用するため、引張応力の増加は僅かであり、上記接続箇所における破損の可能性は低いものであった。
このような問題を回避するために、内槽の側面における係留部材上端との接続箇所を上方に移動させ、係留部材の長さを延長することが考えられる。しかし、上記接続箇所を上方に移動させた場合、内槽の底面から上記接続箇所までの側板の板厚を増加させる必要があり、コストの大幅な増加に繋がるという問題があった。
本発明のアンカーは、内槽と外槽とを備える貯蔵タンクの内槽を係留部材を用いて外槽に略鉛直方向で係留するアンカーであって、係留部材の上側は、内槽の側面に接続され、係留部材の下側は、内槽の側面に沿う方向に並ぶ複数の脚部に分岐しているという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、係留部材の上側に作用する内槽の周方向での力だけでなく、内槽の係留に伴う牽引力によっても各脚部に曲げモーメントを発生させることができる。上記牽引力によって生じる曲げモーメントには、上記周方向での力によって生じる曲げモーメントに対して逆の向きを有するものが存在するため、曲げモーメントを相殺することでその大きさを低減させることができる。
さらに、本発明では、内槽における側板の板厚を増加させる等の対策を採ることなく、曲げモーメントの大きさを低減させることができる。
このような構成を採用する本発明では、係留部材の上側に作用する内槽の周方向での力が左右いずれの方向から働いたとしても、曲げモーメントの大きさを低減させることができる。
このような構成を採用する本発明では、係留部材の上側に作用する内槽の周方向での力が左右いずれの方向から働いたとしても、曲げモーメントの大きさを略等しい割合で低減させることができる。
このような構成を採用する本発明では、単一の部材である従来の係留部材から応力の増加を緩和させることができる係留部材を形成することができるため、コストの増加を抑えることができる。また、単一の部材の下側を分割して複数の脚部を形成した場合、それらの脚部を1つのアンカーボックスに接続することができるため、アンカーボックスの数が増加せず、この面でもコストの増加を抑えることができる。
このような構成を採用する本発明では、各脚部間の接合部における破断等の発生を低減させることができる。
このような構成を採用する本発明では、係留部材上端に内槽の径方向で力が加えられた場合には、係留部材上端は内槽の径方向で変位して上記力の負荷を緩和させることができる。
このような構成を採用する本発明では、脚部のセカンダリーバリアにおける貫通箇所に生じる曲げモーメントの大きさを低減させることができる。
本発明によれば、コストを大幅に増加させることなく、係留部材と内槽の周方向で係留部材の移動を規制する部材との接続箇所における応力を低減させることができる。また、本発明によれば、上記接続箇所における係留部材又は上記部材の破損を防止することができる。
〔第1実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るアンカーを、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態における貯蔵タンク1の全体構成を示す断面図、図2は、第1の実施形態に係るアンカー5の構成を示す概略図であり、(a)はアンカー5の概略図、(b)は接合部15の拡大図である。なお、上記図面中では、説明のために各構成要素の縮尺を適宜変更して記載している。
貯蔵タンク1は、例えば液化天然ガス(LNG)等の低温の液体を貯蔵するための貯蔵タンクである。
図1に示すように、貯蔵タンク1は、LNG等の低温の液体を貯蔵する内槽2と、内槽2を包囲して設置される外槽3と、内槽2と外槽3との間に設置され内槽2から内容物たる液体が漏洩した場合に上記液体を収容するためのセカンダリーバリア4と、内槽2を外槽3へ略鉛直方向で係留するアンカー5とを有している。
外槽3は、例えばプレストレストコンクリート(PC)等により形成されている。外槽3の底部3bの上方には、第2保冷ブロック8が設置されている。
セカンダリーバリア4は、第1保冷ブロック6及び保冷材7を介して内槽2の側面2s及び底面2bを包囲している。セカンダリーバリア4の底板4bは、第2保冷ブロック8を介して外槽3における底部3bの上方に設けられている。
ストッパー20は、内槽2における側面2sの下部に設けられている。
アンカーボックス30は、外槽3の底部3bに複数埋設されており、ストラッププレート10の下方にそれぞれ設置されている。
図2に示すように、ストラッププレート10は、ストッパー20を介して内槽2の側面2sに係止される上部プレート11と、上部プレート11の下端から下方に延びる第1下部プレート(脚部)12及び第2下部プレート(脚部)13と、上部プレート11の上端部に接続されるストッパープレート14とを有している。
また、第1下部プレート12及び第2下部プレート13は、それぞれセカンダリーバリア4の底板4bを貫通しており、第1下部プレート12及び第2下部プレート13は上記貫通箇所において底板4bに溶接されて固定されている。
なお、接合部15には、図2(b)に示すように、略円形を呈する応力集中緩和部16が形成されている。
カバープレート23は、上方に対向する水平面である上端面23aを有している。
まず、鉛直力FY及び水平力FXを、図2及び図3を参照して説明する。
図3は、第1の実施形態に係るアンカー5に働く鉛直力FY及び水平力FXの作用に関する概略図である。
そして、図3に示すように、ストッパープレート14の設置箇所には、上記牽引力の反力として略鉛直方向上向きの鉛直力FYが働く。
ここで、内槽2が地震等によって周方向に変位すると、ストッパー20は側面2sに接続されているため、カバープレート23は内槽2の変位と共に周方向に移動する。そして、下端面14aと上端面23aとの間には上記圧縮力により摩擦抵抗が生じるため、ストッパープレート14には、図3に示すように、カバープレート23の周方向への変位に伴い水平力FXが働く。本実施形態では、水平力FXは紙面右向きに作用するものとする。
なお、鉛直力FY及び水平力FXは、貯蔵タンク1の設計段階において予め大きさの比率が設定されており、鉛直力FYは水平力FXの数十倍の大きさを有するとされている。
図4は、第1の実施形態におけるストラッププレート10と底板4bとの接続箇所における垂直応力を示す概略図であり、(a)は鉛直力FYによって生じる垂直応力を示す概略図、(b)は曲げモーメントMXRによって生じる垂直応力を示す概略図、(c)は曲げモーメントMYL及びMYRによって生じる垂直応力を示す概略図である。
応力は、垂直応力と剪断応力とに分けられるため、始めに垂直応力について説明する。
鉛直力FYは、略鉛直上向きの力であり、底板4bに対して略垂直な方向で作用している。したがって、第1下部プレート12と底板4bとの接続箇所S1及び第2下部プレート13と底板4bとの接続箇所S2では、図4(a)に示すように、均一な引張応力が発生している。なお、図4において、上向きの矢印は引張応力を示し、下向きの矢印は圧縮応力を示す。
図3に示すように、水平力FXの作用軸は、接続箇所S1及びS2のそれぞれの幅方向での中点PL及び中点PRを通過していない。そのため、水平力FXにより、接続箇所S1及びS2には曲げモーメントが発生する。また、水平力FXの作用軸は、中点PLと中点PRとの間を通過していない。そのため、接続箇所S1及びS2には、全体として紙面右回りの曲げモーメントMXRが生じる。
したがって、図4(b)に示すように、曲げモーメントMXRにより接続箇所S1には引張応力が生じ、接続箇所S2には圧縮応力が生じる。引張応力については、接続箇所S1における最左点Aが最も大きく、最右点Bが最も小さくなる。圧縮応力については、接続箇所S2における最左点Cが最も小さく、最右点Dが最も大きくなる。
図3に示すように、鉛直力FYの作用軸は、中点PL及び中点PRを通過していない。そのため、鉛直力FYにより、接続箇所S1及びS2には曲げモーメントが発生する。また、鉛直力FYの作用軸は、中点PLと中点PRとの中間点を通過している。そのため、接続箇所S1及びS2にはそれぞれ逆方向の曲げモーメントが生じ、接続箇所S1には紙面左回りの曲げモーメントMYL、接続箇所S2には紙面右回りの曲げモーメントMYRが生じる。
なお、水平力FXの作用軸から底板4bまでの距離L1は、鉛直力FYの作用軸から中点PL又は中点PRまでの距離L2よりも大幅に大きいため、曲げモーメントMXRは、曲げモーメントMYL又はMYRに比べ大きなものとなる。
また、同じく図4(c)に示すように、曲げモーメントMYRにより接続箇所S2には垂直応力が生じる。最左点Cにおいて最大の引張応力が発生し、最右点Dにおいて最大の圧縮応力が発生する。なお、中点PRには、曲げモーメントMYRによる垂直応力は発生しない。
図5は、従来のアンカー5Aのストラッププレート10Aと底板4bとの接続箇所SAにおける垂直応力を示す概略図であり、(a)はストラッププレート10Aに働く鉛直力FY及び水平力FXの作用に関する概略図、(b)は鉛直力FYによって生じる垂直応力を示す概略図、(c)は曲げモーメントMによって生じる垂直応力を示す概略図である。
図5(a)に示すように、ストラッププレート10Aの上端部には鉛直力FY及び水平力FXが働いている。また、鉛直力FYの作用軸は接続箇所SAの幅方向での中点Pを通過しているため、鉛直力FYにより接続箇所SAには曲げモーメントは発生しない。なお、水平力FXの作用軸から底板4bまでの距離は、第1の実施形態と同じくL1である。
鉛直力FYは略鉛直上向きの力であることから、接続箇所SAに対して、図5(b)に示すように均一な引張応力が発生する。
図5(a)に示すように、水平力FXの作用軸は、接続箇所SAの幅方向での中点Pを通過していない。そのため、水平力FXにより、接続箇所SAには曲げモーメントMが発生する。
したがって、図5(c)に示すように、曲げモーメントMにより接続箇所SAには垂直応力が生じる。なお、中点Pの紙面左側には引張応力が生じ、中点Pの紙面右側には圧縮応力が生じる。引張応力については、接続箇所SAにおける最左点Aが最も大きく、圧縮応力については、最右点Dが最も大きくなる。なお、中点Pでは、曲げモーメントMによる垂直応力は生じない。
図6は、第1の実施形態における接続箇所S1及びS2に生じる垂直応力と、従来の接続箇所SAに生じる垂直応力とを比較するための概略図であり、(a)は図4(a)ないし図4(c)の全ての垂直応力を足し合わせた場合の概略図、(b)は図5(a)及び図5(b)の全ての垂直応力を足し合わせた場合の概略図である。
一方、図6(a)に示すように、本実施形態における接続箇所S1でも最左点Aにおいて最も大きな垂直応力(引張応力)が生じているのであるが、この値は従来の最左点Aにおける垂直応力よりもH分だけ減少したものとなっている。
本実施形態では、紙面右回りの曲げモーメントMXRに加え、紙面左回りの曲げモーメントMYLが接続箇所S1に発生する。これらの曲げモーメントは互いに一部相殺するため、本実施形態における最左点Aでの垂直応力を、従来の接続箇所SAにおける最左点Aに比較して減少させることができる。
図7は、第1の実施形態における接続箇所S1及びS2に生じる応力と、従来の接続箇所SAに生じる応力とのシミュレーションの結果を示す概略図である。
本実施形態のストラッププレート10において、接合部15の角度αは1°に設定し、第1下部プレート12及び第2下部プレート13の長さ(脚部長さ)は、115mm(対象1)及び600mm(対象2)に設定した。
なお、上記シミュレーションでは、垂直応力及び剪断応力を統合した応力値であるミーゼス応力を用いて比較を行った。
また、最左点Aでの応力値は、従来例が最も高く、対象2が最も低い結果となった。従来例での最大応力に比べると、対象1での最大応力は5.0%減少し、対象2での最大応力は6.8%減少した。
上記結果より、鉛直力FYの作用軸と接続箇所S1の中点PLとの距離L2が大きくなることで、最左点Aにおける応力をより低減できることが判明した。
本実施形態によれば、コストを大幅に増加させることなく、ストラッププレート10とセカンダリーバリア4との接続箇所S1及びS2に発生する応力を低減させることができる。また、本発明によれば、上記接続箇所S1及びS2におけるストラッププレート10及びセカンダリーバリア4の破損を防止することができる。
本発明の第2の実施形態に係るアンカーを、図面を参照して説明する。
図8は、第2の実施形態に係るアンカー5Bの構成を示す概略図である。上記図面において、第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、上記図面中では、説明のために各構成要素の縮尺を適宜変更して記載している。
次に、本実施形態に係るアンカー5Bの構成を、図8を参照して説明する。なお、図8では、アンカーボックス30の記載は省略されている。
図8に示すように、第2の実施形態におけるストラッププレート10Bは、第1プレート(脚部)12Bと、第2プレート(脚部)13Bと、ストッパープレート14とを有している。
また、第1プレート12B及び第2プレート13Bは、それぞれセカンダリーバリア4の底板4bを貫通しており、上記プレートは上記貫通箇所において底板4bに溶接されて固定されている。なお、アンカーボックス30は、第1プレート12B及び第2プレート13Bの下端にそれぞれ設けられている。
ストッパープレート14は、第1プレート12B及び第2プレート13Bの上端部に接続されている。
第1の実施形態と同じく、内槽2が周方向で変位した場合、ストッパープレート14の設置箇所には鉛直力FY及び水平力FXが発生する。また、第1プレート12Bと底板4bとの接続箇所S3及び第2プレート13Bと底板4bとの接続箇所S4には、第1の実施形態と同様の作用により曲げモーメントが発生するため、接続箇所S3における最左点Aでは、応力の低減させることができる。
なお、接続箇所S3及びS4は第1の実施形態における接続箇所S1及びS2の2倍の面積を有しているため、距離L2の値が第1の実施形態における距離と等しい場合であっても、第1の実施形態と比較して垂直応力及び剪断応力共に略2分の1の値となっている。
本実施形態によれば、コストを大幅に増加させることなく、ストラッププレート10とセカンダリーバリア4との接続箇所S3又はS4に発生する応力を第1の実施形態よりもさらに低減させることができる。また、本発明によれば、上記接続箇所S3又はS4におけるストラッププレート10及びセカンダリーバリア4の破損を防止することができる。
また、上記実施形態では、応力集中緩和部16の形状は略円形を呈していたが、本発明は上記形状に限定されるものではなく、他の形状でもよい。例えば、略半円形を呈する形状であってもよい。
Claims (6)
- 内槽と外槽とを備える貯蔵タンクの前記内槽を係留部材を用いて前記外槽に略鉛直方向で係留するアンカーであって、
前記係留部材は、単一の部材からなり、
前記係留部材の上側は、前記内槽の側面に接続され、
前記係留部材の下側は、前記内槽の側面に沿う方向に並ぶ複数の脚部に分岐しており、
前記脚部は、前記単一部材の下側を分割した形状を有することを特徴とするアンカー。 - 各前記脚部の幅方向の中心軸は、前記内槽における係留の作用軸を挟んで配置されることを特徴とする請求項1に記載のアンカー。
- 各前記中心軸は、前記作用軸を挟んで対称に配置されることを特徴とする請求項2に記載のアンカー。
- 各前記脚部間の接合部における応力集中を緩和する応力集中緩和部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のアンカー。
- 前記係留部材は、前記内槽の側面に略平行する板状の部材であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のアンカー。
- 前記脚部は、前記内槽と前記外槽との間に設けられるセカンダリーバリアを貫通していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のアンカー。
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