JP5423822B2 - 高温高速成形性に優れたアルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
Mg:2.5〜5.0%、
Fe:0.1〜0.3%、
Si:0.06〜0.12%、および
残部:アルミニウムと不可避的不純物
から成り、上記不可避的不純物のうちMn:0.1%以下, Cr:0.05%以下に制限し、
円相当径0.2μm以上の第二相粒子が20000個/mm2以下、繊維状の未再結晶組織であることを特徴とする高温高速成形性に優れたアルミニウム合金板が提供される。
第1発明の組成の合金溶湯を準備し、
上記合金溶湯を薄板連続鋳造機にて厚さ5〜15mmのスラブに鋳造し、
上記スラブを巻き取り、
均質化処理することなく冷延率70〜96%で冷間圧延する
ことを特徴とする高温高速成形性に優れたアルミニウム合金板の製造方法が提供される。
Mg:2.5〜5.0%、
Fe:0.1〜0.3%、
Si:0.06〜0.12%、および
残部:アルミニウムと不可避的不純物
から成り、上記不可避的不純物のうちMn:0.1%以下, Cr:0.05%以下に制限し、
円相当径0.2μm以上の第二相粒子が20000個/mm2以下、平均結晶粒径20μm以下の再結晶組織であることを特徴とする高温高速成形性に優れたアルミニウム合金板が提供される。
上記組成の合金溶湯を準備し、
上記合金溶湯を薄板連続鋳造機にて厚さ5〜15mmのスラブに鋳造し、
上記スラブを巻き取り、
均質化処理することなく冷延率70〜96%で冷間圧延し、
得られた冷間圧延板に最終焼鈍を施して再結晶化させる
ことを特徴とする高温高速成形性に優れたアルミニウム合金板の製造方法が提供される。
Mgは固溶強化によって強度を高める元素であり、2.5%未満であるとこの効果を発現することができず、また高温高速変形時に微細なサブグレイン組織が形成できず伸びが低い。Mg含有量が5.0%を超えると冷間圧延が困難となる。
Feは鋳造時にAl-Fe-Si系などの金属間化合物の微細粒子として晶出し、冷間圧延後の焼鈍の際に再結晶の核生成サイトとして機能する。したがって、これら金属間化合物の粒子個数が多いほど生成する再結晶核が多くなり、その結果、多数の微細な再結晶粒が形成される。また、金属間化合物の微細粒子は、生成した再結晶粒の粒界をピン止めして結晶粒の合体による成長を抑制し、微細な再結晶粒を安定に維持する。この効果を発現するにはFe含有量を0.1%以上とする必要がある。ただし、Fe含有量が0.3%を超えると晶出する金属間化合物が粗大化する傾向が強くなり、高温成形時にこの金属間化合物を起点としてキャビティ(空洞)を形成し成形性が劣る。したがって、Fe含有量は0.1〜0.3%に限定する。好ましい範囲は0.1〜0.25%である。
Siは鋳造時にAl-Fe-Si系などの金属間化合物の微細粒子として晶出し、冷間圧延後の焼鈍の際に再結晶の核生成サイトとして機能する。したがって、これら金属間化合物の粒子個数が多いほど生成する再結晶核が多くなり、その結果、多数の微細な再結晶粒が形成される。また、金属間化合物の微細粒子は、生成した再結晶粒の粒界をピン止めして結晶粒の合体による成長を抑制し、微細な再結晶粒を安定に維持する。この効果を発現するにはSi含有量を0.06%以上とする必要がある。ただし、Si含有量が0.12%を超えると晶出する金属間化合物が粗大化する傾向が強くなり、高温成形時にこの金属間化合物を起点としてキャビティ(空洞)を形成し成形性が劣る。したがって、Si含有量は0.06〜0.12%に限定する。好ましい範囲は0.06〜0.1%である。
Mnは、従来は再結晶粒を微細化させかつ再結晶粒の成長を抑制するために添加されていた。これに対して本発明においては、Mnを不純物として含有量を0.1%以下に制限する。すなわち、Mn含有量が0.1%を超えると、鋳造時にAl−(Fe・Mn)-Si系の塊状晶出物を生じ、冷間圧延工程を経てもそれらが破断されることなく最終焼鈍後も残存するため、高温成形時にこの晶出物を起点としてキャビティ(空洞)を形成し成形性が劣る。特にキャビティ発生防止を重視する場合には、上限を更に制限して0.05%以下とすることが好ましい。
Crは、Mnと同様に、従来は再結晶粒を微細化させかつ再結晶粒の成長を抑制するために添加されていた。これに対して本発明においては、Crを不純物として含有量を0.05%以下に制限する。すなわち、Cr含有量が0.05%を超えると、鋳造時にAl−(Fe・Cr)−Si系の塊状晶出物を生じ、冷間圧延工程を経てもそれらが破断されることなく最終焼鈍後も残存するため、高温成形時にこの晶出物を起点としてキャビティ(空洞)を形成し成形性が劣る。特にキャビティ発生防止を重視する場合には、上限を更に制限して0.03%以下とすることが好ましい。
本発明においては、鋳造塊の結晶粒を微細化するためにTiを0.001〜0.1%の範囲で添加することができる。この効果を発現するにはTi添加量を0.001%以上とする必要がある。ただし、Ti添加量が0.1%を超えるとTiAl3等の粗大な金属間化合物が生成し、高温成形時にキャビティ(空洞)を形成し成形性が低下する。好ましい範囲は0.001〜0.05%である。
〔円相当径0.2μm以上の第二相粒子が20000個/mm2以下〕
本発明における第二相粒子とは、金属間化合物のことを意味し、具体的には、鋳造時に晶出したAl−Fe−Si系、Al−(Fe・Mn)−Si系、Al−(Fe・Cr)−Si系、Mg2Si、Al6Mn等のことである。
本発明は、円相当径0.2μm以上の第二相粒子の個数を制限することにより、高温高速成形時のキャビティ発生を抑制し、高温高速変形時に高い延性を発現することにより、高温高速成形性が高まる。この効果を得るためには、円相当径0.2μm以上の第二相粒子の存在密度を20000個/mm2以下に制限する必要がある。円相当径0.2μm以上の第ニ相粒子の個数はでき得る限り減らすことが望ましい。
冷間圧延後に最終焼鈍を施さず繊維状の未再結晶組織とした合金板は、高温成形の際の加熱中に微細な再結晶粒が生成する。更に、高温成形中に微細なサブグレイン(亜結晶粒)組織が生成する。それによって、伸びが向上する。
冷間圧延後の最終焼鈍により再結晶組織とした冷間圧延板は、平均結晶粒径を20μm以下とする。高温成形前の結晶粒径が微細であれば、高温変形時に粗粒を起因とした肌荒れが発生せず良好な外観が得られるとともに、高温変形時の伸びが増大する。平均結晶粒径が20μmを超えると粗粒を起因とした肌荒れが発生するとともに高温変形時の伸びが低下する。更に好ましい平均結晶粒径は13μm以下である。なお、ここで「再結晶組織」とは完全再結晶組織ばかりでなく、部分再結晶組織(20μm以下の再結晶粒+繊維状の未再結晶粒)も含む。
〔薄板連続鋳造機にて厚さ5〜15mmのスラブに鋳造し〕
本発明の高温高速成形性に優れたアルミニウム合金板の製造に用いる薄スラブは薄板連続鋳造機により鋳造する。薄板連続鋳造機には、双ベルト式と双ロール式の2方式がある。
双ベルト式連続鋳造機では、上下に対面し水冷されている一対の回転ベルト間に溶湯を注湯してベルト面からの冷却で溶湯を凝固させてスラブとし、ベルトの反注湯側より該スラブを連続して引き出してコイル状に巻き取る方式が採用される。
双ロール式連続鋳造機では、上下に対面し水冷されている一対の回転ロール間に溶湯を注湯してロール面からの冷却で溶湯を凝固させてスラブとし、ロールの反注湯側より該スラブを連続して引き出してコイル状に巻き取る方式が採用される。
冷間圧延による塑性加工により発生した転位の晶出物周囲への堆積によって、最終焼鈍を施さない場合には最終板において繊維状の未再結晶組織を形成し、高温成形の際の加熱による結晶粒微細化を促進し、あるいは最終焼鈍を施す場合には最終板において微細な再結晶組織を形成する。冷延率が70%未満であると、転位の蓄積が不十分になって高温成形の際の加熱中または焼鈍後に微細な再結晶組織が得られない。冷延率が96%を超えると、冷間圧延中に耳割れが発生し、冷間圧延の実行が困難になる。
〔連続焼鈍炉:保持温度400〜500℃で保持時間5分以内の焼鈍処理を施す〕
連続焼鈍炉による最終焼鈍の焼鈍温度は400〜500℃の範囲とする。400℃未満であると、再結晶が不十分になり、微細な再結晶組織を得ることができない。しかし、500℃を超えると、再結晶粒径が20μmを超えてしまい、微細な再結晶組織が得られない。
バッチ炉による最終焼鈍の焼鈍温度は300〜400℃の範囲とする。300℃未満であると、再結晶が不十分になり、微細な再結晶組織を得ることができない。しかし、400℃を超えると、再結晶粒径が20μmを超えてしまい、微細な再結晶組織が得られない。
Claims (5)
- 質量%で、下記組成:
Mg:2.5〜5.0%、
Fe:0.1〜0.25%、
Si:0.06〜0.12%、および
残部:アルミニウムと不可避的不純物
から成り、上記不可避的不純物のうちMn:0.05%以下, Cr:0.05%以下に制限し、
円相当径0.2μm以上の第二相粒子が20000個/mm2以下、平均結晶粒径20μm以下の再結晶組織であり、
400〜550℃の温度域において歪速度2×10 −2 〜8×10 −1 /secで成型加工したときの伸びが250%以上である
ことを特徴とする高温高速成形性に優れたアルミニウム合金板。 - 請求項1において、質量%で、
Ti:0.001〜0.1%、
を更に含有することを特徴とするアルミニウム合金板。 - 請求項1または請求項2に記載のアルミニウム合金板を製造する方法であって、
請求項1または2記載の組成の合金溶湯を準備し、
上記合金溶湯を薄板連続鋳造機にて厚さ5〜15mmのスラブに鋳造し、
上記スラブを巻き取り、
均質化処理することなく冷延率70〜96%で冷間圧延し、
得られた冷間圧延板に最終焼鈍を施して再結晶化させる
ことを特徴とする高温高速成形性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。 - 請求項3において、前記最終焼鈍を連続焼鈍炉により保持温度400〜500℃、保持時間5分以内で行うことを特徴とするアルミニウム合金板の製造方法。
- 請求項3において、前記最終焼鈍をバッチ炉により保持温度300〜400℃、保持時間1〜10時間で行うことを特徴とするアルミニウム合金板の製造方法。
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