JP5421524B2 - ヒストン脱アセチル化酵素を阻害するための化合物 - Google Patents

ヒストン脱アセチル化酵素を阻害するための化合物 Download PDF

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Description

本発明は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)に関連した疾患、特に腫瘍や細胞増殖性疾患の予防剤または治療剤として有用な新規化合物に関する。本発明の化合物は神経突起伸長を促進する薬剤としての使用も可能である。本発明の化合物は特に抗神経変性疾患やヒト脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する薬剤として使用することが可能である。
真核生物のDNAは核内で高度に組織化、パッケージングされている。こうした組織化及びパッケージングは、コアヒストンであるH2A、H2B、H3及びH4などのタンパク質がDNAに付加し、DNAとともにクロマチンと呼ばれる複雑な構造を形成することによって行われる。コアヒストンの修飾はクロマチンの立体構造の変化にとって極めて重要である。アセチル化の程度は転写活性と関係しており、アセチル化によってクロマチンは開放型の立体構造をとり、転写装置がプロモーターにアクセスすることが可能となる。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)及びヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)は、コアヒストンタンパク質のアミノ末端付近に位置するリシンのε−アミノ基を選択的にアセチル化または脱アセチル化することによって転写に影響を及ぼす酵素である。HDACは11種類(アイソフォーム)の酵素からなるファミリーであり、遺伝子の発現制御に関与していることから、癌などの多くの疾患におけるマスター調節因子として働くと考えられている。HDACの欠損は広範な癌との関連が指摘されてきた。HDAC酵素またはそのアイソフォームは多くの異なるタイプの癌と関連しているものと思われる。
固形及び血液悪性腫瘍の治療への応用が期待される新しい抗癌剤としてヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤が注目を浴びている。近年、多様な構造を有するHDAC阻害剤が数多く発見されているが、これらは培養または動物モデルにおいて腫瘍細胞の増殖を阻害し、分化やアポトーシスを誘導するものである。HDACが阻害されるとアセチル化された核内ヒストンが腫瘍及び正常組織に蓄積することから、生体内でのHDAC阻害剤の生物学的活性の代用マーカーとなる。HDAC阻害剤の遺伝子発現に対する作用は極めて選択性が高く、サイクリン依存型キナーゼ阻害剤であるp21WAF1/CIP1など特定の遺伝子の転写を活性化する一方で他の遺伝子の発現を抑制する。HDACの阻害によってヒストン以外にも、p53、GATA−1及びエストロゲン受容体アルファなどの転写因子がアセチル化される。非ヒストンタンパク質のアセチル化の機能的な意義、ならびにHDAC阻害剤が腫瘍細胞の増殖停止、細胞分化、及び/又はアポトーシスを誘導する詳細な機序は、現在、重点的な研究の対象となっている。現在臨床試験において効果が認められているHDAC阻害剤は、新たな作用機序に基づく効果が期待される、分子を標的とする抗腫瘍剤である。
メディシナルリサーチレビュー誌(Medicinal Research Reviews, Vol. 26, No. 4, pp. 397-413, 2006)に掲載のレビュー論文によると、これまでに、短鎖脂肪酸、ヒドロキサム酸、ベンズアミド、環状ペプチドの、4つのHDAC阻害剤のクラスが報告されている。ヒドロキサム酸系のハイブリッド極性化合物(HPC)はHDACの阻害剤であり、マイクロモル以下の濃度で細胞分化を誘導する(Journal of the National Cancer Institute, Vol. 92, No. 15, August 2, 2000, pp. 1210-1216)。米国特許第6,174,905号、欧州特許第0847992号、日本国特許第258863/96号ならびに日本国特許出願第10138957号の各明細書には、細胞分化を誘導し、HDACを阻害するベンズアミド誘導体が公開されている。国際公開第WO01/38322号パンフレットには、HDAC阻害剤として作用する更なる化合物が公開されている。Hum Genet誌(2006, 120, pp. 101-110)には、ベンズアミドであるM344によって、SMA患者由来の繊維芽細胞におけるSMN2タンパク質の発現が処置後64時間後に最大で7倍にアップレギュレートされる報告がなされている。酪酸ナトリウムによって、脊髄及び延髄筋萎縮症のトランスジェニックマウスモデルにおける表現型の発現が改善することが報告されている(Human Molecular Genetics, 2004, Vol. 13, No. 11, pp. 1183-1192)。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるトリコスタチンAは、MCF−7乳癌細胞においてサイクリンD1のユビキチン依存性分解を誘導することが示されている(Molecular Cancer 2006, 5:8; 当該論文は下記にて参照することができる(http://www.molecular-cancer.com/content/5/1/8))。米国特許第7,169,801号明細書には、式Z−Q−L−MまたはZ−L−Mで表されるヒストンデアセチラーゼの阻害に用いることが可能な化合物が開示されている。米国特許第6,888,027号明細書には、PXD101などのスルフォンアミド系HDAC阻害剤のファミリーが開示されている。欧州特許第EP1301184号明細書には、固形腫瘍の治療におけるバルプロ酸及びその誘導体のHDAC阻害剤としての使用が開示されている。
しかしながら、癌の予防または治療用の新たなHDAC阻害剤の開発が依然として望まれている。
本発明の目的は下記式(I)にて表される化合物群、ならびに薬学的に許容されるその塩、立体異性体、エナンチオマー、プロドラッグ及び溶媒和物を提供することにある。
本発明の化合物は、神経突起伸長の促進剤、及びHDACに関連した疾患、特に腫瘍や細胞増殖性疾患の予防剤または治療剤として有用である。本発明の化合物は特に抗神経変性疾患やヒト脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する薬剤として使用することが可能である。
本発明は、神経突起伸長の促進剤、及びHDACに関連した疾患、特に腫瘍や細胞増殖性疾患の予防剤または治療剤として有用なプロポリン類に由来する新規化合物に関するものである。本発明の化合物は細胞の分化経路を介して癌細胞の増殖を阻害する作用を有する。本発明の化合物は特に抗神経変性疾患やヒト脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する薬剤として使用することが可能である。
〔本発明の化合物〕
すなわち、本発明は下記式(I)によって表される化合物:
[式中、R1及びR2はそれぞれ独立してOH、OC(=O)アルキル、O−アルキル、S−アルキル、N−アルキル、O−アルケニル、S−アルケニル、N−アルケニル、O−アルキニル、S−アルキニル、N−アルキニル、O−C3-8シクロアルキル、S−C3-8シクロアルキル、N−C3-8シクロアルキル、O−不飽和の5〜10員単環式または2環式基、S−不飽和の5〜10員単環式または2環式基、N−不飽和の5〜10員単環式または2環式基、アルキル、アルキレニル、アルキニル、C3-8シクロアルキル、不飽和の5〜10員単環式または2環式基、または、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個の環へテロ原子を含む飽和または不飽和の5〜10員複素環基であるか;またはR1及びR2は共にジオキソランを形成し;
3及びR4はそれぞれ独立してOH、OC(=O)アルキル、O−アルキル、S−アルキル、N−アルキル、O−アルケニル、S−アルケニル、N−アルケニル、O−アルキニル、S−アルキニル、N−アルキニル、O−C3-8シクロアルキル、S−C3-8シクロアルキル、N−C3-8シクロアルキル、O−不飽和の5〜10員単環式または2環式基、S−不飽和の5〜10員単環式または2環式基、N−不飽和の5〜10員単環式または2環式基、アルキル、アルキレニル、アルキニル、C3-8シクロアルキル、不飽和の5〜10員単環式または2環式基、または、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個の環へテロ原子を含む飽和または不飽和の5〜10員複素環基であり;
5は、C4-16アルキルまたはC4-16アルケニルであり(ただし該アルキルまたはアルケニルは非置換もしくは、1以上のC1-6アルキル、OH、ハロゲン、CN、NO、N3、NH2、CHO、OR9、SR9、NR9またはCOOR9によって置換される);
6は、C2-12アルキルまたはC2-12アルケニルであるか(ただし該アルキルまたはアルケニルは非置換もしくは、1以上のC1-6アルキル、OH、ハロゲン、CN、NO、N3、NH2、CHO、OR9、SR9またはNR9によって置換される);またはR5及びR6の一方は水素、ハロゲンまたはOHであり、他方は非置換もしくは1以上のC1-6アルキル、OH、NH2、ハロゲン、CN、NOまたはN3によって置換されるC4-16アルキルまたはC4-16アルキレンであり;
7及びR8はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、OH、NH2、COOH、CHO、CN、NO、非置換またはOH、NH2、COOH、ハロゲン、CN、NOまたはCHOによって置換されたC1-6アルキル、=O、O−アルキル、S−アルキル、N−アルキル、O−アルケニル、S−アルケニル、N−アルケニル、O−アルキニル、S−アルキニルまたはN−アルキニルであるか、またはR7及びR8は共に二重結合、C3-6シクロアルキルまたはN、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個のへテロ原子を含む5〜10員の複素環基を形成し;
9はフェニル、C(=O)R10、C(=O)OR10またはベンジルであり;
10はOH、NHOH、NH2、C1-6アルキル、フェニルまたはベンジルである;(ただし、R1、R2、R3及びR4がOHである場合、R5は、
ではなく、かつR6は、
またはHのいずれでもない;またはR1、R2、R3及びR4がOHであり、かつR5がHである場合、R6は、
または、
のいずれでもない)]ならびに薬学的に許容されるその塩、立体異性体、エナンチオマー、プロドラッグ及び溶媒和物に関する。
本明細書の文脈において「アルキル」なる語は、直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖を意味する。アルキルは好ましくはC1-10アルキルである。好ましくはアルキルの炭素数は1〜8からなる群から選択される。より好ましいアルキルはC1-6アルキルまたはC1-4アルキルである。アルキル基の例としては、メチル(−CH3)、エチル(−CH2CH3)、プロピル(−CH2CH2CH3)、イソプロピル(−(CH32CH)及びブチル(−C49)が挙げられる。
本明細書の文脈において「アルケニル」なる語は、直鎖及び分枝鎖の不飽和炭化水素基を意味する(不飽和結合は二重結合としてのみ存在する)。本発明においてはアルケニルは1以上の二重結合を含む。アルケニルはC2-16アルケニルであることが好ましい。より好ましくはアルケニルの炭素数は2〜12からなる群から選択される。アルケニル基の例としては、エテニル(−CH=CH2)、プロペニル(−CH=CHCH3または−CH2CH=CH2)、ブテニル(−CH2CH=CHCH3、−CH=CHCH2CH3または−CH2CH2CH=CH2)、−CH2CH=C(CH3)CH3、−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH=CH−CH3、及び−CH2−CH=C(CH3)−CH2−CH2−CH=C(CH3)−CH3が挙げられる。
本明細書の文脈において「アルキニル」なる語は、直鎖及び分枝鎖の不飽和炭化水素基を意味する(不飽和結合は三重結合としてのみ存在する)。好ましくはアルキニルの炭素数は2〜8からなる群から選択される。より好ましいアルキニルはC2-6アルキニルまたはC2-4アルキニルである。アルキニル基の例としてはプロピニル(例、−CH2C≡CH)が挙げられる。
本明細書の文脈において「シクロアルキル」なる語は、脂環式環(飽和炭素環)を意味する。好ましくはシクロアルキルの炭素数は3〜8からなる群から選択される。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
本明細書の文脈において「不飽和の5〜10員単環式または2環式基」なる語は、不飽和かつ5〜10員の単環式または2環式(縮合環など)環系を意味し、その例としてはフェニル及びナフチルが挙げられる。
本明細書の文脈において「N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個の環へテロ原子を含む飽和または不飽和の5〜10員複素環基」なる語は、ニトロ、ヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、カルボキシル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキルカルボニル、C1-6アルコキシカルボニル及びフェニルから選択される少なくとも1個の置換基によってそれぞれが置換されていてもよい窒素、酸素及び硫黄から選択される少なくとも1個の環へテロ原子を含む飽和または不飽和の5〜10員複素環系を意味する。複素環基の例としては、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロイル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チエニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニルなどが含まれる。
本明細書の文脈において「ハロゲン」なる語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。
本明細書の文脈における「薬学的に許容される塩」なる語には、有機及び無機の酸及び塩基と形成される塩が含まれる。薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸、ならびに、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、琥珀酸、蓚酸、蟻酸、フマル酸、マレイン酸、オキザロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びイセチオン酸などの有機酸が挙げられる。薬学的に許容される塩基塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、及び1級、2級、及び3級アミン塩などの有機塩基との塩が挙げられる。
本明細書の文脈において「プロドラッグ」なる語は、血中で加水分解されることなどによって体内で薬理作用を有する活性型に変換される化合物を意味する。
本明細書の文脈において「溶媒和物」なる語は、本発明の化合物と溶媒とからなる複合体であって、本発明の化合物と溶媒とが反応しているか、これらが沈殿または析出される複合体を意味する。
本明細書の文脈において「立体異性体」なる語は、結合する原子は同じであるが原子の空間的配置が異なる異性体分子を指す。
本明細書の文脈において「エナンチオマー」なる語は、左手と右手が「同じ」であるけれども反対であるように、互いに重ね合わせることのできない鏡像関係にある立体異性体を指す。
本発明の式(I)の化合物の一実施形態では、R1及びR2はそれぞれ独立してOH、OC1-6アルキル、OC(=O)C1-6アルキル、O−フェニルまたはO−ベンジルであるか、またはR1とR2とは互いにジオキサレンを形成する。より好ましくはR1及びR2はそれぞれ独立して、OH、OCH3、OCH2CH3、OCH2CH2CH3、OC(=O)CH3、O−フェニルまたはO−ベンジルである。
本発明の式(I)の化合物の一実施形態では、R3及びR4はそれぞれ独立して、OH、OC1-6アルキル、OC(=O)C1-6アルキル、O−フェニルまたはO−ベンジルである。より好ましくはR3及びR4はそれぞれ独立して、OH、OCH3、OCH2CH3、OCH2CH2CH3、OC(=O)CH3、O−フェニルまたはO−ベンジルである。
本発明の式(I)の化合物の一実施形態では、好ましくはR5は下式のいずれかである。
または、
本発明の式(I)の化合物の一実施形態では、好ましくはR6は下式のいずれかである。
または
本発明によれば、本発明の式(I)で表される好ましい化合物は、
及び
からなる群から選択される。
本発明は更に、式(I)の化合物にもとづく下式(II)で表される立体異性体に関する。
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は式(I)と同様に定義される。)
本発明のより好ましい実施形態では、式(I)の化合物は下式(III)、(IV)、(V)または(VI)で表されるものである。
(IV)
(V)
(VI)
本発明によれば、式(I)の化合物はHDACを阻害する作用を有することからヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)に関連する疾患の予防剤または治療剤として使用することが可能である。更に本発明の化合物は、ラットC6グリオーマ、ヒト神経膠芽腫、ヒト乳癌細胞、ヒト白血病細胞及びヒトメラノーマ細胞などの複数の癌細胞系列の増殖を著しく阻害する。癌細胞の増殖を阻害する機序は、細胞の分化経路、特に誘導分化ならびにp21やサイクリンB1などにみられるような細胞周期調節遺伝子の発現の調節を介したものと考えられる。更に本発明の式(I)の化合物は、神経幹細胞のニューロン分化を媒介することから抗神経変性疾患に対する薬剤として使用することが可能である。
本発明の化合物を治療目的で使用する場合、投与される用量は、用いられる化合物、投与形態、望ましい治療法、及び対象となる疾患に応じて無論異なる。式(I)の化合物の日用量は、1mg/kg〜40mg/kgの範囲でよい。本発明は、HDACを阻害する方法、患者の腫瘍または細胞増殖性疾患、神経変性疾患及びヒト脊髄性筋萎縮症を治療する方法、ならびに神経突起伸長を促進する方法を提供するものであって、本発明の化合物の治療上の有効量を患者に投与することからなる方法を提供するものである。
〔本発明の式(I)の化合物の一般的合成法〕
本発明の化合物はいずれの従来法によって調製してもよい。これらの化合物の好適な合成法は実施例において述べる。一般的に式(I)の化合物は、以下に述べる合成スキームのいずれかにしたがって調製することができる。
(スキーム1)
(スキーム2)
(スキーム3)
(スキーム4)
(スキーム5)
(スキーム6)
(スキーム7)
(スキーム8)
(スキーム9)
式(I)の化合物のR1、R2、R3及びR4のメチル化は、以下の手順で行うことができる。すなわち、反応物であるK2CO3とアセトンをMe2SO4(DMS)と混合し、溶液を加熱攪拌する。得られた溶液を一定時間、制御雰囲気下(例、N2下)で還流し、有機溶媒を除去した後、残渣を特定の有機溶液に溶解してこれを水で洗い、減圧下で有機層を蒸発させてから生成物をシリカゲルカラム(EtOAc:n−ヘキサン=1:4)で精製する。
5またはR6への二重結合の付加は、以下の手順で行うことができる。すなわち、反応物のTHF溶液を氷浴中、H2SO4に加えた後、溶液を一定時間攪拌してから水で希釈する。得られた混合物を適当な有機溶液(例、CH2Cl2)で抽出し、有機層を合わせて減圧下で蒸発させ、得られた残渣をシリカゲルカラム(0〜3%MeOH/CH2Cl2)で精製する。
化合物6a〜e及び7a〜eの調製法をスキーム1及びスキーム2として示した。プロポリンGは、当該技術分野では周知のプロポリン誘導体であり、適当な反応条件下で、メチル化、アセチル化、位置選択的なメチル化、及びベンジル化を行うことによって化合物2〜5をそれぞれ生成する。次いで化合物1〜5を酸の存在下で水和することで標的化合物であるジヒドロフラボン6a〜eをそれぞれ得る。化合物1〜5をヨードベンゼンジアセタートで酸化した後、酸の存在下で水和することで対応する各フラボン7a〜eを得る。
化合物10a〜e及び12a〜eはスキーム3に示したように調製した。化合物1〜5を水素化ホウ素ナトリウムで還元し、脱水反応を行うことによって対応する化合物9a〜eを得た。化合物9a〜eを酸存在下で水和することにより標的化合物である10a〜eをそれぞれ得た。化合物9a〜eをMCPBAでエポキシ化することによってエポキシド11a〜eが得られ、次いでメチルアミン、エチルアミン、及びべンジルアミンなどの対応するアミンを用いた求核反応によって標的化合物である12a〜eをそれぞれ得た。
化合物14〜17はスキーム4に示したようにして合成した。化合物10bを光延反応させることにより所望のアジド13が得られ、次いでナトリウム反応を行ってこのアジドを3級アミン14に変換した。化合物10bの三臭化リンによる臭素化、フェノールチオール(PhSH)によるチオール化、及び塩化チオニルによる塩素化によって臭化物15、チオールエーテル17、及び塩化物16をそれぞれ得た。
化合物18a〜d及び19a〜dはスキーム5に示したようにして合成した。化合物10bを、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル及びイソブチリルなどの対応した塩化アシルでアシル化することにより化合物18a〜dをそれぞれ得た。化合物10bを、ヨウ化メチル、エチル、ベンジル、及びイソプロピルなどの対応したヨウ化アルキルでアルキル化することにより化合物19a〜dをそれぞれ得た。
化合物22はスキーム6に示したようにして合成した。化合物6bの3級アルコールを水素化ナトリウム条件下でブロモ酢酸エチルと反応させることによって化合物20を得た。化合物20を塩基存在下で加水分解することにより化合物21が得られ、次いでヒドロキシアミンと反応させることによってヒドロキサム酸22を得た。
ヒドロキサム酸28a〜eはスキーム7に示したようにして調製した。化合物1を酸性条件下でオルト蟻酸トリメチルと反応させることによりアセトニド23を得、次いでメチル、イソプロピル及びベンジルなどのヨウ化アルキルによるアルキル化か、塩化ベンゾイル及び無水酢酸によるアセチル化によって化合物24a〜eをそれぞれ得た。化合物24a〜eの2種類の末端オレフィンを酸存在下で水和反応させることにより化合物25a〜eを得、次いでブロモ酢酸エチルと反応させることによって化合物26a〜eを得た。化合物26a〜eを塩基存在下で加水分解することにより化合物27a〜eを得、次いでヒドロキシアミンと反応させることでヒドロキサム酸28a〜eをそれぞれ得た。
〔本発明の医薬組成物〕
式(I)の化合物ならびに薬学的に許容されるその塩、立体異性体、エナンチオマー、プロドラッグ及び溶媒和物はそれ自体でも使用可能であるが、一般的には式(I)の化合物/塩/溶媒和物(有効成分)を薬学的に許容される補助剤、希釈剤または担体と組み合わせた医薬組成物として投与される。投与形態に応じ、医薬組成物は、10〜30wt%(重量パーセント)、より好ましくは30〜50wt%、更に好ましくは50〜70wt%、更により好ましくは70〜100wt%の有効成分を含有する(重量%はすべて全組成物に対して)。更に本発明の医薬組成物は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)に関連した疾患の他の予防剤または治療剤を含有していてもよい。
本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、散剤や顆粒剤による経口投与溶液や懸濁液による非経口投与、皮下投与、坐剤による直腸内投与、経皮投与によって全身的に投与することが可能である。
本発明の化合物ならびに医薬組成物はHDAC阻害剤であり、細胞内に長期にわたって保持され、ヒストンH4のアセチル化を継続的に誘導する。本発明の化合物ならびに医薬組成物は細胞及び神経幹細胞の分化を誘導するHDAC阻害剤である。更に本発明の化合物は、HDAC活性を大きく阻害する。本発明の化合物は細胞のS期及びG2/M期を用量依存的に大幅に短縮し、癌細胞の形態を変化させる。したがって本発明の化合物によって腫瘍や細胞増殖性疾患を治療することが可能である。更に本発明の化合物によって神経突起伸長を促進し、神経変性疾患やヒト脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療することが可能である。
〔実施例〕
以下、実施例で本発明の化合物の好ましい合成法及び使用法を説明する。
実施例1:3'4'5,7−テトラメチル−プロポリンG(2)の調製
プロポリンG(化合物1,5g,10.16mmol)、K2CO3(16.27g,117.89mmol)及びアセトン(280mL)の混合物にMe2SO4(15.76mL,126mmol)を加え、この溶液を窒素雰囲気下で24時間、加熱還流した。有機溶媒を除去し、残渣をCH2Cl2(80mL)に溶解し、H2O(40mLx3)で洗った。CH2Cl2層をNa2SO4で乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(EtOAc:n−ヘキサン=1:6)で精製して化合物2(4.00g,72%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.26 (1H, d, J=8.6 Hz), 6.86 (1H, d, J=8.6 Hz), 6.27 (1H, s), 5.50 (1H, dd, J=2.5, 13.5 Hz), 5.14-5.11 (1H, m), 5.11-5.10 (1H, m), 5.02-4.99 (1H, m), 3.87 (3H, s), 3.83 (3H, s), 3.79 (6H, s), 3.50 (1H, dd, J=6.6, 15.2 Hz), 3.43 (1H, dd, J=5.8, 15.2 Hz), 3.00 (1H, dd, J=13.5, 16.7 Hz) , 2.68 (1H, dd, J=2.6, 16.7 Hz), 2.00-1.92 (2H, m), 1.75 (3H, s), 1.70 (3H, s), 1.65 (3H, s), 1.60 (3H, s), 1.52 (3H, s); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ 189.4 (s), 164.0 (s), 163.3 (s), 159.6 (s), 153.0 (s), 147.2 (s), 135.6 (s), 134.2 (s), 131.5 (s), 131.3 (s), 129.8 (s), 124.1 (d), 122.8 (d), 122.7 (d), 122.1 (d), 118.2 (s), 110.3 (d), 108.7 (s), 95.6 (d), 75.9 (d), 61.8 (q), 60.7 (q), 55.7 (q), 55.7 (q), 45.1 (t), 39.6 (t), 26.6 (t), 25.7 (q), 25.6 (q), 24.9 (t), 22.0 (t), 17.7 (q), 17.6 (q), 16.3 (q); HREIMS C34H44O6 (M)として計算値:548.3142, 実測値:548.3140.
実施例2:6−(2−ヒドロキシ−2−メチルブチル)−2'−(7−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクト−2−エニル)−3’,4’,5,7−テトラメトキシフラバノン(6b)の調製
氷浴中、化合物2(7g,12.77mmol)のTHF溶液(170ml)に、49%H2SO4(140mL)を加えた。全量を加えた後、反応溶液を室温で8時間攪拌し、H2Oで希釈した。この反応溶液をCH2Cl2(100mLx3)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(n−ヘキサン:EtOAc=1:1〜1:3)で精製して純粋な油状物6bを得た(2.30g,34%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.27 (1H, d, J=8.6 Hz), 6.87 (1H, d, J=8.6 Hz), 6.28 (1H, d, J=2.6 Hz), 5.49 (1H, dd, J=2.4, 13.6 Hz), 5.05 (1H, t, J=6.0 Hz), 3.87 (3H, s), 3.84 (3H, s), 3.79 (6H, s), 3.52 (1H, dd, J=5.5, 15.2 Hz), 3.43 (1H, dd, J=7.6, 15.2 Hz), 2.97 (1H, dd, J=8.0, 16.7 Hz), 2.70-2.59 (3H, m), 1.93 92H, t, J=6.4 Hz), 1.65 (3H, s), 1.64-1.60 (2H, m), 1.41-1.32 (4H, m), 1.25 (6H, s), 1.15 (3H, s), 1.14 (3H, s); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) 189.4 (s), 164.0 (s), 163.3 (s), 159.6 (s), 153.0 (s), 147.2 (s), 135.6 (s), 134.2 (s), 131.5 (s), 131.3 (s), 129.8 (s), 124.1 (d), 122.8 (d), 122.7 (d), 122.1 (d), 118.2 (s), 110.3 (d), 108.7 (s), 95.6 (d), 75.9 (d), 61.8 (q), 60.7 (q), 55.7 (q), 55.7 (q), 45.1 (t), 39.6 (t), 26.6 (t), 25.7 (q), 25.6 (q), 24.9 (t), 22.0 (t), 17.7 (q), 17.6 (q), 16.3 (q); HREIMS C34H48O8 (M)として計算値:584.3338, 実測値:584.3344.
実施例3:6−ゲラニル−3’,4’,5,7−テトラメトキシフラバノン(30)の調製
化合物29(プロポリンC,128mg,0.31mmol)、K2CO3(431mg,3.1mmol)及びアセトン(15mL)の混合物にMe2SO4(0.25mL,2.48mmol)を加え、この溶液を窒素雰囲気下で24時間、加熱還流した。有機溶媒を除去した後、残渣をCH2Cl2(50mL)に溶解し、H2O(50mLx3)で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(EtOAc:n−ヘキサン=1:4)で精製して化合物33(107mg,72%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3), 6.99-6.97 (2H, m), 6.88 (1H, d, J=8.8 Hz), 6.31 (1H, s), 5.33 (1H, dd, J=2.8, 13.3 Hz), 5.11 (1H, td, J=1, 6.9 Hz), 5.04(1H, td, J=1.3, 5.5 Hz), 3.90 (3H, s, OMe), 3.88 (3H, s, OMe), 3.81 (3H, s, OMe), 3.80 (3H, s, OMe), 3.34 (1H, dd, J=7.2, 14.1 Hz), 3.26 (1H, dd, J=7.2, 14.1Hz), 3.02 (1H, dd, J=13.3, 16.7 Hz), 2.74 (1H, dd, J=2.8, 16.7 Hz), 2.04-2.00 (2H, m), 1.96-1.92 (2H, m), 1.74 (3H, s), 1.62 (3H, s), 1.55 (3H, s); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) ,189.1 (s), 164.1 (s), 163.0 (s), 159.4 (s), 149.5 (s), 149.4 (s), 131.3, 131.2 (s), 124.4 (d), 122.9 (d), 118.9 (d), 109.5 (d), 108.9 (s), 95.7 (d), 79.2 (q), 61.9 (q), 56.1 (q), 56.0 (q), 55.9 (q), 45.6 (t), 39.8 (t), 26.7 (t), 25.7 (s), 22.0 (t), 17.7 (q), 16.1 (q); HREIMS C29H36O6 (M)として計算値:480.2510, 実測値:480.2511.
実施例4:6−(2,6−ジヒドロキシ−2,6−ジメチル−オクチル)−3’,4’,5,7−テトラメトキシフラバノン(31)の調製
氷浴中、化合物30(80mg,0.17mmol)のTHF溶液(6ml)に、49%H2SO4(4mL)を加えた。全量を加えた後、反応溶液を室温で8時間攪拌し、H2Oで希釈した。この反応溶液をCH2Cl2(50mLx3)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(0〜3%MeOH/CH2Cl2)で精製して純粋な油状物31を得た(44mg,50%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.99-6.97 (2H, m), 6.88 (1H, d, J=8.8 Hz), 6.31 (1H, s), 5.33 (1H, dd, J=2.8, 13.3 Hz), 3.90 (3H, s, OMe), 3.88 (3H, s, OMe), 3.84 (3H, s, OMe), 3.82 (3H, s, OMe), 3.02 (1H, dd, J=13.3, 16 Hz), 2.75 (1H, dd, J=2.8, 16Hz), 2.62-2.58 (2H, m), 1.63-1.59 (7H, m), 1.49-1.48 (2H, m), 1.23 (3H, s), 1.22 (3H, s), 1.21 (3H, s); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) 189.1 (s), 164.1 (s), 163.0 (s), 159.4 (s), 149.5 (s), 149.4 (s), 131.2 (s), 119.0 (d), 118.9 (d), 111.3 (d), 109.5 (d), 108.9 (s), 95.8 (d), 72.9 (s), 71.1 (s), 62.1 (q), 56.0 (q), 55.9 (q), 45.5 (t), 44.5 (t), 42.3 (t), 42.1 (t), 41.5 (t), 29.4 (q), 29.3 (q), 26.9 (q), 26.8 (q), 18.8 (t), 17.5 (t); HREIMS (M-18)として計算値:498.2602, 実測値:498.2610.
実施例5:プロポリンA(33)の調製
氷浴中、プロポリンD(化合物32,100mg,0.24mmol)のTHF溶液(6ml)に、49%H2SO4(4mL)を加えた。全量を加えた後、反応溶液を室温で8時間攪拌し、H2Oで希釈した。この反応溶液をCH2Cl2(50mLx3)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(0〜3%MeOH/CH2Cl2)で精製して純粋な油状物33を得た(42mg,40%)。
1H-NMR (400 MHz, MeOD) 6.87 (1H, d, J=8.4 Hz), 6.71 (1H, d, J=8.4 Hz), 5.88 (2H, dd, J=1.9, 3.3 Hz), 5.47 (1H, dd, J=2.6, 13 Hz), 5.12 (1H, dd, J=5.7, 6.7 Hz), 3.47 (2H, d, J=6.6 Hz), 3.10 (1H, dd, J=13.4, 17 Hz) , 2.60 (1H, dd, J=2.7, 17.1 Hz), 1.94 (1H, dd, J=6.6, 13.4 Hz), 1.64 (1H, d, J=0.5 Hz), 1.43-1.41 (2H, m), 1.37-1.34 (2H, m), 1.13 (3H, s), 1.12 (3H, s); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) ,198.2 (s), 168.5 (s), 168.4 (s), 165.5 (s), 165.4 (s), 165.2 (s), 146.5 (s), 144.5 (s), 135.8 (s), 129.7 (s), 128.2 (s), 124.7 (d), 118.7 (d), 113.6 (d), 103.2 (s), 97.1 (d), 96.2 (d),77.8 (d), 71.5 (s), 44.3 (t), 43.7 (t), 41.2 (t), 29.2 (q), 29.1 (q), 25.4 (t), 23.7 (t), 16.2 (t).
実施例6:3',4',5,7−テトラアセチルプロポリンD(34)
プロポリンD(化合物32,124mg,0.29mmol)のピリジン溶液(4mL)に無水酢酸(2mL)を加え、この反応溶液を室温で6時間攪拌した。反応溶液にEtOAc(25mL)を加え、0.1N HCl(10mLx3)で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(CH2Cl2)で精製して純粋な油状物34(139mg,80%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) 7.49 (1H, d, J=8.6 Hz), 7.18 (1H, d, J=8.6 Hz), 6.72 (1H, d, J=2.2 Hz), 6.53 (1H, d, J=2.2 Hz), 5.60 (1H, dd, J=2.5, 13.8 Hz), 5.01 (1H, td, J=5.3, 4.6 Hz), 4.94 (1H, td, J=1.0, 5.8 Hz), 3.35 (1H, dd, J=7.1, 15.7 Hz), 3.26 (1H, dd, J=5.3, 15.5 Hz) , 2.98 (1H, dd, J=13.8, 16.8 Hz), 2.36 (3H, s), 2.27 (6H, s), 2.26 (s, 3H), 2.02-1.91 (5H, m), 1.64 (3H, s), 1.62 (3H, s), 1.55 (3H, s); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) ,188.8 (s), 169.2 (s), 168.1 (s), 168.0 (s), 167.9 (s), 163.2 (s), 155.9 (s), 151.3 (s), 142.8 (s), 140.9 (s), 137.0 (s), 135.2 (s), 133.5 (s), 131.6 (s), 124.5 (d), 123.9 (d), 121.6 (d), 120.7 (d), 111.6 (s), 110.7 (d), 109.0 (d), 76.1 (d), 44.8 (t), 39.4 (t), 26.5 (t), 25.6 (t), 25.5 (q), 21.1 (q), 21.0 (q), 20.7 (q), 20.3 (q),17.7 (q), 16.3 (q).
実施例7:3',4',5,7−テトラメチルプロポリンD(35)
化合物32(128mg,0.31mmol)、K2CO3(431mg,3.1mmol)及びアセトン(15mL)の混合物にMe2SO4(0.25mL,2.48mmol)を加え、この溶液を窒素雰囲気下で24時間、加熱還流した。有機溶媒を除去した後、残渣をCH2Cl2(50mL)に溶解し、H2O(50mLx3)で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(EtOAc:n−ヘキサン=1:4)で精製して化合物35(107mg,72%)を得た。
H-NMR (400 MHz, CDCl3) 7.26 (1H, d, J=8.6 Hz), 6.85 (1H, d, J=8.6 Hz), 6.10 (1H, d, J=2.3 Hz), 6.07 (1H, d, J=2.3 Hz), 5.34 (1H, dd, J=2.6, 13.5 Hz), 5.04 (1H, td, J=5.3, 4.6 Hz), 4.99 (1H, td, J=1.0, 5.8 Hz), 3.88 (3H, s), 3.86 (3H, s) , 3.80 (3H, s), 3.74 (3H, s), 3.46 (1H, dd, J=6.6, 15.2 Hz), 3.44 (1H, dd, J=5.8, 15.2 Hz), 3.02 (1H, dd, J=13.5, 16.5 Hz), 2.69 (1H, dd, J=2.6, 16.5 Hz), 2.00-1.97 (2H, m), 1.94-1.92 (2H, m), 1.65 (3H, s), 1.60 (3H, s), 1.52 (3H, s).
実施例8:3',4',7−O−トリメチルプロポリンG(4)
プロポリンG(2.30g,2.75mmol)、K2CO3(1.94g,13.99mmol)及びアセトン(80mL)の混合物にMe2SO4(2.17mL,17.35mmol)を加え、この溶液を0.5時間攪拌した後、窒素雰囲気下で6時間加熱還流した。有機溶媒を除去した後、残渣をCH2Cl2(40mL)に溶解し、H2O(40mLx3)で洗った。CH2Cl2層をNa2SO4で乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(EtOAc:n−ヘキサン=1:8)で精製して化合物4(954mg,65%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 12.06 (1H, s), 7.26 (1H, d, J=8.4 Hz), 6.86 (1H, d, J=8.4 Hz), 6.03 (1H, s), 5.50 (1H, dd, J=2.4, 13.4 Hz), 5.17-5.14 (1H, m), 5.04-5.00 (2H, m), 3.87 (3H, s), 3.79 (3H, s), 3.79 (6H, s), 3.46-3.45 (2H, m), 3.25-3.23 (2H, m), 3.05 (1H, dd, J=13.5, 16.7 Hz) , 2.70 (1H, dd, J=2.6, 16.7 Hz), 2.02-1.94 (7H, m), 1.75 (3H, s), 1.67 (3H, s), 1.66 (3H, s), 1.61 (3H, s), 1.58 (3H, s)
実施例9:6−(2−ヒドロキシ−2−メチルブチル)−2'−(7−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクト−2−エニル)−5−ヒドロキシ−3',4',7−トリメトキシフラバノン(6d)
(NBM−HD−3)
氷浴中、化合物4(530mg,0,99mmol)のTHF溶液(15ml)に、49%H2SO4(10mL)を加えた。全量を加えた後、反応溶液を室温で8時間攪拌し、H2Oで希釈した。この反応溶液をCH2Cl2(30mLx3)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(n−ヘキサン:EtOAc=1:1)で精製して純粋な油状物6dを得た(191mg,34%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 12.06 (1H, brs), 7.27 (1H, d, J=8.6 Hz), 6.86 (1H, d, J=8.6 Hz), 6.05 (1H, s), 5.50 (1H, dd, J=2.6, 13.6 Hz), 5.03 (1H, t, J=6.2 Hz), 3.87 (3H, s), 3.80 (6H, s), 3.48 (1H, dd, J=5.5, 15.2 Hz), 3.42 (1H, dd, J=6.1, 15.2 Hz), 3.06 (1H, dd, J=13.6, 17.1 Hz), 2.70(1H, dd, J=2.7, 17.1 Hz), 2.65-2.61 (2H, m), 1.95-1.92(2H, m), 1.65 (3H, s), 1.41-1.35 (5H, m), 1.26 (6H, s), 1.15 (3H, s), 1.14 (3H, s).
実施例10:他の化合物
以下の2化合物を上述の方法にしたがって調製した。
(NBM−HD−2)
実施例11:本発明の化合物(NBM−HD−1)による癌細胞増殖の阻害
癌細胞系列であるラットC6グリオーマ細胞を、ペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン、0.5mM L−グルタミン、及び10%ウシ胎児血清(FBS;Gibco)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Gibco)中で37℃、5%CO2、相対湿度95%の条件で培養した。各実験で細胞は6穴プレートに3×105細胞/ウェルの細胞密度で播種した。24時間後に、細胞を異なる濃度のNBM−HD−1(明細書中の式(III)の化合物)で処理した。48時間後に細胞を観察、計数した。図1の結果に示されるように、NBM−HD−1はラットC6グリオーマ細胞の増殖を停止させた。C6グリオーマ細胞を2.5μg/mL(図1(A)−b)、5μg/mL(図1(A)−c)、及び10μg/mL(図1(A)−d)のNBM−HD−1の存在下で48時間培養することにより、細胞密度はコントロール(図1(A)−a)と比較して顕著に低下した。細胞計数の結果によっても同様の傾向が示された(図1(B))。上記の結果はNBM−HD−1が用量依存的にC6グリオーマ細胞の増殖を阻害する作用を有することを示すものである。
1×106個のラットC6グリオーマ細胞を異なる濃度のNBM−HD−1(0μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL及び10μg/mL)で72時間処理した。処理細胞をトリプシン処理して集めた。この細胞を200μL PBSに再懸濁し、冷たい100%エタノール800μLを加えることで固定した。得られた細胞を−20℃で一晩固定した。遠心により細胞ペレットを集め、1mLの低張緩衝液(0.5%TritonX−100のPBS溶液、1μg/mL RNaseA)に再懸濁し、37℃で30分培養した。次いで細胞ペレットに1mLのPI溶液(50μg/mL)を加えた。この混合物を4℃で30分静置した。細胞のDNA量をFACScanサイトメトリー(Becton Dickinson)により調べた(図2)。図2の結果は、NBM−HD−1が細胞周期をG0/G1期で停止するように用量依存的に調節することによりC6グリオーマの細胞増殖を顕著に阻害することを示している。
実施例12:本発明の化合物(NBM−HD−1)による癌細胞の細胞増殖の阻害及び分化誘導
ラットC6グリオーマ細胞についてmRNAの発現に関連する細胞周期をRT−PCRにより調べた。製造者の指示にしたがってRNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用し、処理C6細胞から全RNAを単離した。ReverTra−PlusTM(TOYOBO)を用いて500ngの全RNAからcDNAを作成した。GAPDHを内部コントロールとして用い、細胞周期の複数の遺伝子を調べるためのプライマーを用いたPCRによってRT産物(1μl)を増幅した。この結果を図3に示した。図3の結果に示されるとおり、NBM−HD−1は幾つかの細胞周期調節因子の発現を調節する作用を示した。この結果は、NBM−HD−1が用量依存的にサイクリンD1及びサイクリンB1の発現を低減させることを示すものである。これに対し、p21の発現量は増加した。
C6グリオーマ細胞を10μg/mLのNBM−HD−1と24時間培養した後、固定し、公知の免疫蛍光染色法によって調べた。グリア細胞の染色はグリア特異的なGFAP抗体(SIGMA)を一次抗体として用い、蛍光標識したウサギ免疫グロブリン(SIGMA)を一次抗体に結合する二次抗体として用いて行った。GFAP抗体陽性の細胞は特定の光源によって励起されることで蛍光を発する。更に細胞核をDAPIで染色した。染色の結果を図4(A)に示した。図4(A)に示されるように、NBM−HD−1はC6グリオーマ癌細胞でGFAPの発現を誘導する。10μg/mLのNBM−HD−1で処理した細胞の写真ではコントロール群と比較してより多くのGFAPタンパク質が検出された。図4(A)の中央の列はDAPI染色した細胞の写真である。
GFAPのmRNAの発現をRT−PCRによって調べた。図4(B)の結果は、GFAPの発現量が用量依存的に増加したことを示している。これらの結果によれば、GFAPの発現量が増加したことからNBM−HD−1がC6グリオーマ癌細胞の細胞分化を誘導することが示される。
実施例13:本発明の化合物(NBM−HD−1)で処理した癌細胞における過剰アセチル化ヒストンの蓄積量の増加
細胞ライセート中の過剰アセチル化ヒストンH4の蓄積量を、ウエスタンブロット及びアセチル化ヒストンH4に対する抗体(Upstate)を用いて調べた。C6グリオーマ細胞は10cmの培養皿毎に1×106個の細胞密度で播種した。24時間後に細胞を10μg/mLのNBM−HD−1または4mMの酪酸ナトリウムで数時間処理した。全細胞ライセートを変性用SDSサンプルバッファーを用い、15%SDSポリアクリルアミドゲル上で分離することによって調製した。図5に示したように、酪酸ナトリウム及びNBM−HD−1のいずれにおいても過剰アセチル化ヒストンH4の蓄積量の増加が見られた。アセチル化ヒストンは非処理のC6グリオーマ細胞ではほとんど検出されなかった。4mMの酪酸ナトリウムで2時間処理した細胞ではアセチル化ヒストンH4の量は増加した。この後、培地から酪酸ナトリウムを除去した。6時間後、アセチル化ヒストンH4の量は減少した。NBM−HD−1で2時間処理した細胞ではアセチル化ヒストンH4の蓄積量は増加した。NBM−HD−1の除去後、アセチル化ヒストンH4の量は時間とともに増加した。化合物の除去から6時間後にヒストンのアセチル化レベルは最も高くなった。これらの結果は、NBM−HD−1が、酪酸ナトリウムと同様、HDAC阻害剤であることを示すものである。NBM−HD−1は酪酸ナトリウムよりも疎水性が高いことから、NBM−HD−1は酪酸ナトリウムよりも長時間にわたって細胞内に留まり、ヒストンH4のアセチル化を継続的に誘導すると考えられる。
実施例14:本発明の化合物(NBM−HD−1)によるHDAC活性の阻害
C6グリオーマ細胞を異なる用量のNBM−HD−1及び酪酸ナトリウム(SB)で処理した。24時間後に細胞を収集し、製造者の指示にしたがってNucBusterタンパク質抽出キット(Novagen)を用いて核タンパク質を抽出した。HDAC活性アッセイキット(Calbiochem)を用いてこれらの抽出物のHDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)阻害活性について調べた。先ず、アセチル化されたリジン側鎖を有するHDACの蛍光定量的基質を、抽出した核タンパク質とインキュベートした。この基質は脱アセチル化によって感受性が高くなることから、第2の工程でリジン検出剤で処理することによってフルオロフォアを生成する。このフルオロフォアは蛍光プレートリーダーによって容易に分析することができる。図6に示すように、NBM−HD−1はC6グリオーマ細胞のHDAC活性を阻害した。HDACの阻害は癌細胞の分化の誘導との関連が示唆されている。この実験ではHDAC阻害活性を示すことで知られる化合物である酪酸ナトリウムをポジティブコントロールとして用いた。蛍光単位の低い値は、実験群でのHDAC阻害活性が高いことを示している。実験結果からNBM−HD−1はHDAC活性を顕著に阻害することが示された。
実施例15:本発明の化合物(NBM−HD−1)による癌細胞のHDAC活性の阻害及び形態の変化
ヒト神経膠芽腫細胞DBTRG−05MGを、ペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン、0.5mM L−グルタミン、10%ウシ胎児血清(FBS;Gibco)、100mh/L ピルビン酸ナトリウム(Gibco)及び1%NEAA(Gibco)を添加したRPMI培地(Gibco)中で37℃、5%CO2、相対湿度95%の条件で培養した。各実験で細胞は6穴プレートに3×105細胞/ウェルの細胞密度で播種した。24時間後に、細胞を異なる濃度のNBM−HD−1及び4mMの酪酸ナトリウムで処理した。72時間後に細胞を観察、計数した。図7に示されるようにNBM−HD−1は05MG細胞の増殖を著しく阻害し、細胞の形態を変化させた。05MG細胞(図7(A))を2.5μg/mL(図7(A)−b)、5μg/mL(図7(A)−c)、及び10μg/mL(図7(A)−d)のNBM−HD−1の存在下で72時間培養することにより、細胞密度はコントロール(図7(A)−a)と比較して大幅に低下した。実験群の05MG細胞はコントロール群の細胞よりも長い形態に変化した。細胞計数の結果(図7(B))は、NBM−HD−1は酪酸ナトリウムと同様、05MG細胞の増殖を阻害したことを示している。これらの結果は、NBM−HD−1が用量依存的に05MG細胞の増殖を阻害し、05MG癌細胞の形態の変化を引き起こすことを示すものである。
乳癌細胞MCF−7を、ペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン、0.5mM L−グルタミン、及び10%ウシ胎児血清(FBS;Gibco)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Gibco)中で37℃、5%CO2、相対湿度95%の条件で培養した。細胞は6穴プレートに3×105細胞/ウェルの細胞密度で播種した。24時間後に、細胞を異なる濃度の化合物NBM−HD−1及びポジティブコントロールとして4mMの酪酸ナトリウムで処理した。48時間後に細胞を観察し、96時間後に計数した。図8に示されるようにNBM−HD−1はMCF−7癌細胞の増殖を著しく阻害し、細胞の形態を変化させた。図8(A)に示されるように、細胞を2.5μg/mL(図8(A)−b)、5μg/mL(図8(A)−c)、及び10μg/mL(図8(A)−d)のNBM−HD−1の存在下で48時間培養することにより、MCF−7細胞の細胞密度はコントロール(図8(A)−a)と比較して大幅に低下した。実験群のMCF−7細胞の形態はコントロール群の細胞と比較して変化した。図8(B)は、4mMの酪酸ナトリウムによってMCF−7細胞の増殖が阻害されたことを示す。細胞計数の結果(図8(B))は、NBM−HD−1は酪酸ナトリウムと同様、細胞の増殖を阻害したことを示している。これらの結果は、NBM−HD−1が用量依存的にMCF−7細胞の増殖を阻害し、その形態変化を引き起こすことを示すものである。
100mmの培養皿中でMCF−7癌細胞を異なる濃度(0,2.5,5及び10μg/mL)のNBM−HD−1または4mMの酪酸ナトリウムで72時間処理した。実施例8で述べた工程にしたがってサンプルを調製した。次いで細胞のDNAをFACScanサイトメトリー(Becton Dickinson)により調べた。図9に示されるように、NBM−HD−1は細胞周期がG0/G1期で停止するように用量依存的に調節することによりMCF−7細胞の細胞増殖を顕著に阻害することを示している。G0/G1期の細胞の比率は74.46から92.55へと用量依存的に高くなっている。更に、NBM−HD−1によって細胞周期のS期及びG2/M期が用量依存的にいずれも大幅に短縮することが示された。
p21のmRNA発現に関連する細胞周期をRT−PCRにより調べた。処理MCF−7細胞から全RNAを単離してRT反応に用いた。cDNA(1μl)をテンプレートとしてPCRによりp21遺伝子を増幅した。GAPDHを内部コントロールとして用いた。図10に示されるように、NBM−HD−1はMCF−7癌細胞におけるp21のmRNAの発現量を増加させた。この実験では、MCF−7細胞を異なる用量のNBM−HD−1で24時間処理した。実験結果はNBM−HD−1が用量依存的にp21の発現を誘導することを示すものである。
細胞ライセート中の過剰アセチル化されたヒストンH4の蓄積量を、ウエスタンブロット及びアセチル化ヒストンH4に結合する抗体(Upstate)を用いて調べた。MCF−7細胞は10cmの培養皿毎に1×106個の細胞密度で播種した。24時間後に細胞を10μg/mLのNBM−HD−1または4mMの酪酸ナトリウムで数時間処理した。過剰アセチル化されたヒストンH4に対する特異的抗体を用いてヒストンのアセチル化度を調べることによってNBM−HD−1によるHDACの阻害を調べた。酪酸ナトリウムをポジティブコントロールとして用いた。図11に示されるように、MCF−7細胞における結果はC6グリオーマ細胞と同様であった。
実施例16:本発明の化合物(NBM−HD−1)による神経突起伸長の促進
B−27を添加したNeurobasal培地(Gibco)にペニシリンG、ストレプトマイシン、0.5mM L−グルタミンを加えることによってNCS(神経幹細胞)及び皮質ニューロン用の培地を調製した。麻酔下の妊娠17日目のWistar系ラットの腹腔内の胎嚢から胎児を摘出した。胎児から脳組織を取り出し、0.1%トリプシン溶液で25℃で3分間処理した。PBS溶液で3回洗浄した後、細胞をピペッティングして解離させた。得られた溶液を70μmナイロン製セルストレイナー(Falcon)に通過させて脳細胞を含んだ濾液を得た。この濾液を1000rpmで10分間遠心して上清を吸引除去した。得られたペレットを上記で調製した培地に再懸濁した。得られた懸濁液はNCSを含んでいた。
懸濁液から得た細胞を30μg/mlのポリ−D−リジン(Sigma)でコーティングした6穴プレートに75細胞/mm2の密度で播種した。この細胞を37℃、5%CO2、相対湿度95%の条件で培養した。培地には0.63μg/mLのNBM−HD−1を加え、1μlのDMSOを含む培地をコントロールとして用いた。培養後の分化した細胞は皮質ニューロンと呼ばれる。
6日間の培養後、細胞を生きたまま顕微鏡で観察した。6つの視野におけるニューロンの神経突起の長さを測定して平均をとった。図12に示されるようにNBM−HD−1は神経突起伸長を促進した。図12では、実験群(図12(A)−b)の神経突起の長さはコントロール群(図12(A)−a)と比較して長くなっている。神経突起の長さを測定した結果、実験群の神経突起の平均の長さは比較群よりも長いことが示された(図12(B))。
実施例17:本発明の化合物(NBM−HD−2)による癌細胞増殖の阻害
MCF−7癌細胞を6穴プレートに3×105細胞/ウェルの細胞密度で播種した。24時間後に、細胞を異なる濃度の化合物NBM−HD−2及びポジティブコントロールとして4mMの酪酸ナトリウムで処理した。細胞を72時間後に観察、計数した。図13に示されるように、NBM−HD−2はMCF−7癌細胞の増殖を著しく阻害し、細胞の形態を変化させた。図13(A)に示されるように、細胞を2.5μg/mL(図13(A)−c)、5μg/mL(図13(A)−d)、7.5μg/mL(図13(A)−e)、及び10μg/mL(図13(A)−f)のNBM−HD−2の存在下で72時間培養することにより、MCF−7細胞の細胞密度はコントロール(図13(A)−a)と比較して大幅に低下した。実験群のMCF−7細胞の形態はコントロール群の細胞と比較して変化した。図13(A)は、4mMの酪酸ナトリウムによってMCF−7細胞の増殖が阻害されたことを示す。細胞計数の結果(図13(B))は、NBM−HD−2は酪酸ナトリウムと同様、細胞の増殖を阻害したことを示している。これらの結果は、NBM−HD−2が用量依存的にMCF−7癌細胞の増殖を阻害し、その形態変化を引き起こすことを示すものである。
実施例18:本発明の化合物(NBM−HD−3)による癌細胞増殖の阻害
MCF−7癌細胞を6穴プレートに3×105細胞/ウェルの細胞密度で播種した。24時間後に、細胞を異なる濃度の化合物NBM−HD−3及びポジティブコントロールとして4mMの酪酸ナトリウムで処理した。細胞を72時間後に観察、計数した。図14に示されるように、NBM−HD−3はMCF−7癌細胞の増殖を著しく阻害し、細胞の形態を変化させた。図14(A)に示されるように、細胞を2.5μg/mL(図14(A)−c)、5μg/mL(図14(A)−d)、7.5μg/mL(図14(A)−e)、及び10μg/mL(図14(A)−f)のNBM−HD−3の存在下で72時間培養することにより、MCF−7細胞の細胞密度はコントロール(図14(A)−a)と比較して大幅に低下した。実験群のMCF−7細胞の形態はコントロール群の細胞と比較して変化した。図14(A)は、4mMの酪酸ナトリウムによってMCF−7細胞の増殖が阻害されたことを示す。細胞計数の結果(図14(B))は、NBM−HD−3は酪酸ナトリウムと同様、細胞の増殖を阻害したことを示している。これらの結果は、NBM−HD−3が用量依存的にMCF−7癌細胞の増殖を阻害し、その形態変化を引き起こすことを示すものである。
異なる濃度のNBM−HD−1で処理したラットグリオーマC6細胞の顕微鏡写真を示す。 FACScanサイトメトリーによって分析したラットグリオーマC6細胞のDNA含量を示す。 異なる用量のNBM−HD−1で処理したラットグリオーマC6細胞の細胞周期における各遺伝子の電気泳動像を示す。 NBM−HD−1で処理したラットグリオーマC6細胞の免疫蛍光染色写真及びRT−PCRデータを示す。 NBM−HD−1及び酪酸ナトリウムで処理したラットグリオーマC6細胞のウェスタンブロット像を示す。 NBM−HD−1及び酪酸ナトリウムで処理したラットグリオーマC6細胞におけるHDACの相対的な活性阻害を示す。 異なる用量のNBM−HD−1で処理したヒト神経膠芽腫細胞DBTRG−05MGの顕微鏡写真を示す。 異なる用量のNBM−HD−1で処理したヒト乳癌細胞MCF−7の顕微鏡写真を示す。 NBM−HD−1による用量依存的な調節によって細胞周期がG0/G1期で停止することによってMCF−7細胞の増殖が著しく阻害された結果を示す。 NBM−HD−1が用量依存的にp21WAF1/CIP1遺伝子の発現を増大させた結果を示す。 NBM−HD−1で処理したMCF−7細胞のウェスタンブロット像を示す。 NBM−HD−1で処理した皮質ニューロンの神経突起伸長の顕微鏡写真を示す。 異なる濃度のNBM−HD−2で処理したヒト乳癌MCF−7細胞の顕微鏡写真を示す。 異なる濃度のNBM−HD−3で処理したヒト乳癌MCF−7細胞の顕微鏡写真を示す。

Claims (7)

  1. 及び
    からなる群から選択される化合物。
  2. 求項1に記載の化合物の立体異性体。
  3. 有効成分としての請求項1又は2に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、エナンチオマー及び溶媒和物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
  4. 患者のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害するための薬剤の製造における、請求項1又は2に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、エナンチオマー及び溶媒和物の使用。
  5. 患者の腫瘍または細胞増殖性疾患を治療するための薬剤の製造における、請求項1又は2に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、エナンチオマー及び溶媒和物の使用。
  6. 患者の神経突起伸長を促進するための薬剤の製造における、請求項1又は2に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、エナンチオマー及び溶媒和物の使用。
  7. 患者の神経変性疾患及びヒト脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療するための薬剤の製造における、請求項1又は2に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、エナンチオマー及び溶媒和物の使用。
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