JP5416353B2 - 染色方法及びその装置 - Google Patents
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Description
また、捺染といわれる染色方法においては、古くは、浸染と同様に、染料または顔料と必要な薬品を含む溶液中に被染色物を一定時間浸して染めていたが、近年の技術進歩により、昨今では、例えば、インクジェットプリンタを用いて布等に捺染糊を印捺するインクジェット捺染といわれる染色方法により行われている。
しかしながら、インクジェット捺染においては、インクジェットプリンタを必要とするため、所定規模の設備が必要であり、設備費用が嵩むことになる。
また、一般に、被染色物を溶液中に浸して染める染色方法においては、繊維や染色条件によって異なるが、溶液中の染料と被染色物との親和性が低い場合には、溶液中の染料が被染色物に染み込むまでに長時間を要し、親和性が良好な場合であっても、溶液中の染料が被染色物に染み込むまでには時間を要していた。
また、被染色物を溶液中に浸して染めることから、染色後には多量の廃液が発生するため、環境保護の観点から廃液の発生しない染色方法が要望されていた。
また、溶液の使用量を低減することによりコストを低減できる染色方法が要望されていた。
しかしながら、この気相染色法では、容器内を真空状態にする減圧器が必要となるため、所定規模の設備が必要となると共に費用が嵩むことになる。
また、特許文献1には、真空中で、蒸気化された染料を空気の送風により被染色物に染色する技術が開示され、特許文献2には、染料を加熱されることにより蒸気化させ、蒸気化した染料を上昇させて被染色物を染色させる技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1又は2のように真空中において染料が加熱される場合には、染料の色素粒子がエネルギーを持って飛び出し、真空中には障害となる気流等が存在しないため、色素粒子は飛び出した方向へ直線的に移動し、色素粒子の移動による気流が形成される。
この場合、色素粒子はある程度の速度を持って移動することから、被染色物の内部まで均一に染色できない可能性がある。
また、色素粒子は直線的に移動することから、被染色物の表面全体に均一に色素粒子を付着できず、また、色素粒子の移動の方向は被染色物方向とは限らないため、被染色物の細部又は内部まで均一に染色できない可能性がある。
また、真空かつ加熱して蒸気化した染料を被染色物に染着させる染色法は、染料が加熱された際に飛び出した色素粒子同士が衝突することにより核が形成され、この核が衝突を繰り返して大きくなることにより膜が形成され、この膜を被染色物の表面に付着させることにより、染色が行われていると考えられており、この場合、気化された核の集合物が水分を含まない状態で被染色物に付着するため、染着時に色斑が生じ易い可能性がある。
例えば、特許文献3には、染料を霧化し、霧化した染料をノズルから直接被染色物に噴霧する染色装置に関する技術が開示されている。
また、特許文献4には、超音波霧化器により染料を霧化させて、被染色物の下方から霧化した染料を噴霧することにより、グラデーション染色を施しうる染色装置が開示されている。
また、このような霧化した染料の粒子を重力により落下させることにより下方に載置された被染色物を染色する技術を開示した他の特許文献も発見されなかった。
従って、請求項1記載の発明に係る染色方法にあっては、収納工程、霧化工程、着色液供給工程、染着工程、及び吸引工程により染色することができるので、減圧器等を使用した大規規模の設備を必要とせず比較的小規模の設備により被染色物を染色することができる。
また、上記着色液供給工程は、被染色物の上方へ霧化された着色液を供給するので、霧化された着色液は、上記空隙へ供給され、重力により被染色物上に自然落下する。
従って、請求項2記載の発明に係る染色方法にあっては、加圧状態下で染色する加圧工程を有するので、被染色物が繊維である場合には、繊維分子間の間隔を広げることが可能となり着色液分子の繊維内部への浸透拡散を増加させることができる。
従って、請求項3記載の発明に係る染色方法にあっては、加熱条件下で染色する加熱工程を有するので、上記収納体内部の温度の上昇により着色液分子の運動エネルギーを増大させると共に、被染色物が繊維である場合には、繊維分子を熱運動させて繊維分子間の間隔を広げることが可能となり着色液分子の繊維内部への浸透拡散を増加させることができる。
従って、請求項4記載の発明に係る染色方法にあっては、多数の被染色物を載置した状態で連続的に搬送する搬送工程を有するので、被染色物を順次連続的に染色することができる。
従って、請求項5記載の発明に係る染色方法にあっては、上記霧化部は、超音波霧化装置により構成されているので、霧化された着色液の粒子の大きさを微細かつ均一にすることができる。
従って、請求項6記載の発明に係る染色装置にあっては、減圧器等の大規規模の設備を必要とせず比較的小規模の設備の構成とすることができる。
従って、請求項7記載の発明に係る染色装置にあっては、上記収納体は気密構造を有すると共に内部を気圧以上に加圧しうる加圧装置を有し、加圧状態下で染色するので、被染色物が繊維である場合には、繊維分子間の間隔を広げることが可能となり着色液分子の繊維内部への浸透拡散を増加させることができる。
従って、請求項8記載の発明に係る染色装置にあっては、上記載置面部の下方には被染色物を加熱する加熱装置を有するので、上記収納体内部の温度の上昇により着色液分子の運動エネルギーを増大させると共に、被染色物が繊維である場合には、繊維分子を熱運動させて繊維分子間の間隔を広げることが可能となり着色液分子の繊維内部への浸透拡散を増加させることができる。
従って、請求項9記載の発明に係る染色装置にあっては、上記載置面部は、多数の被染色物を載置した状態で連続的に搬送しうるように構成されているので、被染色物を順次連続的に染色することができる。
従って、請求項10記載の発明に係る染色装置にあっては、上記霧化部は、超音波霧化装置により構成されているので、霧化された着色液の粒子の大きさを微細かつ均一にすることができる。
また、従来の被染色物を溶液中に浸して染める染色方法における乾燥工程を必要とせず、染色工程全体を単純化させることができる。
また、上記着色液供給工程は、上記霧化工程により霧化した着色液を着色液供給部を介して被染色物が収納された染色部へ供給することにより、霧化された着色液は、上記空隙へ供給され、重力により被染色物上に自然落下するので、従来のように被染色物を溶液中に浸して染める必要はないことから、染料の使用量、染料を溶解させる水量、及び染色のための各種薬剤等を低減できる。
また、廃液を発生させないので、環境保護の観点から良好な染色方法を提供することができる。
また、霧化した着色液の粒子を重力により自然落下させることにより、従来の気相染色法のように被染色物の表面全体に均一に色素粒子を付着できないという事態を回避することができ、色素粒子は重力による自然落下の速度を保ちながら被染色物に対して霧化した着色液が垂直に下降するので、被染色物の細部や内部まで斑なく均一に染色しうる染色方法を提供することができる。
また、霧化部により着色液を霧化する工程により生成された霧化した着色液を被染色物に染着させるので、従来の気相染色法のように気化された核の集合物としての膜が水分を含まない状態で被染色物に付着することはなく、水分を含む霧状の着色液により染色されるので、被染色物に染着時に、霧化された着色液に含まれる水分が被染色物へ広がり、色斑が生じ難く均一に染色しうる染色方法を提供することができる。
また、浸染や捺染等の様々な染色方法や、抗菌処理等の高耐久性確保のための機能加工等に応用できる。
また、従来の被染色物を溶液中に浸して染める染色方法のように染色槽を必要とせず、上記染色部内で染色することができるので、原則として全ての染色工程を染色部内で容易に行いうる染色方法を提供することができる。
また、霧化された着色液の粒子の降下を促進させて染色するので、染色時間を短縮することができる。
特に、例えば、ポリエステル繊維の場合には、高分子により構成され分子間隔が狭いことから、着色液分子の繊維内部への浸透拡散が遅く難侵性であるという問題を有するが、高圧条件下で染色が行われることにより、分子間構造を緩めることにより分子間の間隙を広めて、着色液分子の繊維内部への浸透拡散を増加させることができる。
また、収納体内部は、加熱器により加熱されるので、染色後に被染色物に付着した着色液を乾燥させることにより被染色物に着色液を定着させることができる。
また、従来の被染色物を溶液中に浸して染める染色装置のような大規模な乾燥装置を必要とせず、設備に要するコストを低減することができる。
また、被染色物の上方へ霧化された着色液を供給しうるように構成されているので、霧化された着色液は、上記空隙へ供給され、重力により被染色物上に自然落下するので、従来のように被染色物を溶液中に浸して染める必要はなく、染料の使用量、染料を溶解させる水量、及び染色のための各種薬剤等を低減できる。
また、廃液を発生させないので、環境保護の観点から良好な染色装置を提供することができる。
また、霧化した着色液の粒子を重力により自然落下させることにより、従来の気相染色法のように色素粒子が被対象物以外の方向へ直線的に移動することはなく、被染色物に対して霧化した着色液が垂直に下降するので、被染色物の細部や内部まで斑なく均一に染色しうる染色装置を提供することができる。
また、霧化した着色液の粒子を重力により自然落下させることにより、従来の気相染色法のように被染色物の表面全体に均一に色素粒子を付着できないという事態を回避することができ、色素粒子は重力による自然落下の速度を保ちながら被染色物に対して霧化した着色液が垂直に下降するので、被染色物の細部や内部まで斑なく均一に染色しうる染色装置を提供することができる。
また、浸染や捺染等の様々な染色方法の関する装置や、抗菌処理等の高耐久性確保のための機能加工等に応用できる。
特に、従来の被染色物を溶液中に浸して染める染色装置のように染色槽を必要とせず、上記閉鎖空間内で染色することができるので、原則として全ての工程を閉鎖空間内で容易に行いうる染色装置を提供することができる。
また、霧化された着色液の粒子の降下を促進させて染色するので、染色時間を短縮することができる。
特に、例えば、ポリエステル繊維の場合には、高分子により構成され分子間隔が狭いことから、着色液分子の繊維内部への浸透拡散が遅く難侵性であるという問題を有するが、高圧条件下で染色が行われることにより、分子間構造を緩めることにより分子間の間隙を広めて、着色液分子の繊維内部への浸透拡散を増加させることができる。
また、収納体内部は、加熱器により加熱されるので、染色後に被染色物に付着した着色液を乾燥させることにより被染色物に着色液を定着させることができる。
図1に示すように、本発明に係る染色装置10は、被染色物Aを上方に空隙11を有する状態で収納しうる染色部12と、着色液Bを霧化しうる霧化部13と、上記染色部12へ霧化した着色液Cを供給しうる着色液供給部14とを備えている。
また、上記着色液供給部14は、上記霧化部13と染色部12との間に設けられ、被染色物Aの上方へ霧化された着色液Cを供給しうるように構成されている。
また、上記染色部12は、被染色物Aを載置しうる載置面部15と、上記載置面部15の上方に形成された閉鎖空間16を内部に備える収納体17により構成され、上記閉鎖空間16は、霧化した着色液Cが重力により被染色物A上に自然落下して染着しうる高さ寸法を有している。
また、上記着色液供給部14は、上記閉鎖空間16の上端部へ着色液Cを供給するように構成されている。
また、上記載置面部15の下方には上記収納体17内部の空気を上記載置面部15下方へ吸引しうる吸引部18を有している。
また、上記収納体17は気密構造を有すると共に内部を気圧以上に加圧しうる加圧装置19を有し、加圧状態下で染色するように構成されている。
また、上記載置面部15の下方には被染色物Aを加熱する加熱装置20を有している。
また、上記載置面部15は、多数の被染色物Aを載置した状態で連続的に搬送しうるように構成されている。
また、上記霧化部13は、超音波霧化装置により構成されている。
また、上記染色部12内で被染色物Aを染着する染着工程44を有し、上記染着工程44は、霧化した着色液Cが重力により被染色物A上に自然落下して染着しうる高さ寸法を有する上記染色部12内で行われる。
また、被染色物Aが載置された載置面部15の下方に設けられた吸引部18により、上記染色部12内部の空気を上記載置面部15の下方へ吸引する吸引工程45を有している。
また、気密構造を有する上記染色部12の内部を気圧以上に加圧しうる加圧装置19により、加圧状態下で染色する加圧工程46を有している。
また、被染色物Aを加熱する加熱装置20により、加熱条件下で染色する加熱工程47を有している。
また、多数の被染色物Aを載置した状態で連続的に搬送する搬送工程48を有している。
また、上記霧化部13は、超音波霧化装置により構成されている。
図2に示すように、本実施例に係る染色装置10は、実験段階における実験装置であり、室内に設置できる小規模な構成となっているが、染色装置10の大きさは本実施例には限定されない。
本発明に係る染色装置10は、図2に示すように、被染色物Aを載置しうる載置面部15と、上記載置面部15の上方に形成された閉鎖空間16を内部に備える合成樹脂により形成された直方体状の収納体17とにより構成された染色部12を有している。
上記収納体17は、上記収納体17の上面部を構成する上面板27と、下面部を構成する下面板28と、下端部には引き出し部26を入出しうるように幅方向に亘って開口された前面部を構成する前面板31と、上記収納体17の背面部を構成する背面板32と、上端部に幅方向に亘って開口された供給口21a,21bが形成された左右側面部を構成する側面板29,30とにより構成され、上記収納体17内部には密閉された閉鎖空間16が形成されている。
また、上記収納体17の上記前面板31,背面板32,及び側面板29,30は、上記収納体17の側面板29,30の上端部に開口した供給口21a,21bから供給された霧化した着色液Cが被染色物A上に重力により自然落下して染着しうるような高さ寸法を有するように形成されている。
また、上記収納体17の左右側面部には、2つの着色液供給部14a,14bが取り付けられ、2つの着色液供給部14a,14bは、上記染色部12へ霧化した着色液C1,C2を供給しうるように、上記収納体17の左右の側面板29,30の供給口21a,21bに夫々取り付けられている。
上記霧化部13a,13bは、上記収納体17の左右側面の近傍に配置され、上端部に霧化された着色液Cを噴出しうる噴霧孔22a,22bが設けられた超音波噴霧装置により構成され、着色液Bを充填した着色液タンク23a,23bが装着されている。
また、上記噴霧孔22a,22bは、霧化された着色液C1,C2を上記着色液供給部14a,14bへ誘導する合成樹脂により形成された噴霧通路24a,24bに連設され、上記噴霧通路24a,24bは、上記着色液供給部14a,14bを介して収納体17の上記供給口21a,21bに夫々取り付けられている。
また、上記引き出し部26の前面略中央には引き出し部26を出入するための把持部27が形成されている。
また、図2には示していないが、図1に示すように、上記載置面部15の下方に上記収納体17内部の空気を上記載置面部15下方へ吸引しうる吸引部18を配置したり、上記収納体17を気密構造とすると共に内部を気圧以上に加圧しうる加圧装置19を配置して加圧状態下で染色するように構成したり、また、上記載置面部15の下方に被染色物Aを加熱する加熱装置20を配置するように構成することもできる。
また、図2に示すような上記載置面部15を上面部とする載置台25を多数の被染色物Aを載置した状態で連続的に搬送しうるように構成することもできる。
まず、図2及び図3に示すように、本発明に係る染色方法40は、染色部12の上方に空隙11を有する状態で被染色物Aを上記染色部12へ収納する収納工程41により被染色物Aを上記染色部12へ収納する。
この場合、図3に示すような上記収納工程41は、図2に示すように、把持部27を把持して収納体17から引き出し部26を引き出して、載置台25の上面部に形成された載置面部15上に被染色物Aを載置し、上記引き出し部26を上記収納体17に収納することにより行われる。
ここで、被染色物Aは、布、皮革、紙、又は、フィルム等の染色しうるもの全てを対象とする。なお、布には合成繊維も含まれる。
特に、本発明に係る染色方法40においては、平面状の面積を有する被染色物が有効となるが、布状の被染色物に限定される必要はなく、立体物にも適用することができる。
この場合、図3に示すような霧化工程42は、図2に示すように、霧化部13a,13bとしての超音波霧化装置が着色液Bを霧化して、粒子の大きさを微細かつ均一とする霧化された着色液Cを生成する。
ここで、着色液Bには、染料や顔料の他、染料等を溶解させる水、浸染用薬剤や、界面活性剤等の染色助剤、又は、捺染に使用される捺染糊等の染色時に使用される全ての色料、薬剤等が含まれる。
この場合、図3に示すような着色液供給工程43は、図2に示すように、霧化部13a,13bとしての超音波霧化装置により霧化された着色液Cを超音波霧化装置の噴霧孔22a,22bから噴霧させて、噴霧通路24a,24bを斜め上方へ上昇させ、着色供給部14a,14bを介して、上記収納体17の供給口21a,21bから上記染色部12の閉鎖空間16の上端部へ供給する。
本実施例の場合、図2に示すように、2つの霧化部13a,13bにより霧化された着色液Cを、2つの着色液供給部14a,14bを介して上記収納体17の左右側面の上端部に開口された供給口21a,21bから夫々供給することができる。
また、従来の被染色物を溶液中に浸して染める染色方法のような大規模な乾燥工程を必要とせず、染色工程全体を単純化させ、設備に要するコストを低減することができる。
また、上記着色液供給工程43は、上記霧化工程42により霧化した着色液を着色液供給部14を介して被染色物Aが収納された染色部12へ供給することにより、霧化された着色液Cが閉鎖空間16の上端部に供給され重力により被染色物A上に自然落下するので、従来のように被染色物を溶液中に浸して染める必要はなく、染料等の使用量、染料を溶解させる水量、及び染色のための各種薬剤等を低減できる染色方法40及び染色装置10を提供することができる。
また、廃液を発生させないので、環境保護の観点から良好な染色方法40及び染色装置10を提供することができる。
また、霧化した着色液Cの粒子を重力により自然落下させることにより、従来の気相染色法のように被染色物の表面全体に均一に色素粒子を付着できないという事態を回避することができ、色素粒子は重力による自然落下の速度を保ちながら被染色物Aに対して霧化した着色液Cが垂直に下降するので、被染色物Aの細部や内部まで斑なく均一に染色しうる染色方法40及び染色装置10を提供することができる。
また、霧化部13により着色液を霧化する工程により生成された霧化した着色液Cを被染色物Aに染着させるので、従来の気相染色法のように気化された核の集合物としての膜が水分を含まない状態で被染色物Aに付着することはなく、水分を含む霧状の着色液Cにより染色されるので、被染色物Aへの染着時に、霧化された着色液Cに含まれる水分が被染色物Aへ広がり、色斑が生じ難く均一に染色しうる染色方法40及び染色装置10を提供することができる。
また、従来の被染色物を溶液中に浸して染める染色方法のように染色槽を必要とせず、上記閉鎖空間16内で染色することができるので、原則として全ての工程を閉鎖空間16内で容易に行いうる染色方法40及び染色装置10を提供することができる。
また、一方の供給口21aと他方の供給口21bから異なる色彩の染料を含む着色液C1,C2が供給されるように構成した場合には、被染色物Aに多色彩を施す場合に、順次異なる色彩に染色することができるので、染色工程を効率化することができる。
また、染色工程には、糸の段階で染色する先染めと、布にした段階で染色する後染めが存在するが、本発明に係る染色方法40は、先染め、及び後染めの両段階の工程に適用することができる。
染色方法の中の浸染においては、従来、染料または顔料と必要な薬品を含む溶液中に被染色物を一定時間浸して染めるか、これらの溶液中に被染色物を一定時間通過させてから熱や薬品などで処理していた。
本発明に係る染色方法40を用いる場合に、浸染における直接染法においては、図1に示すように、染料や薬剤等の含まれた着色液Bを霧化装置13としての超音波霧化装置で霧状に霧化して、霧化された着色液Cを着色液供給部14を介して閉鎖空間16の上端部に供給し、霧化した着色料Cを被染色物Aに重力により自然落下させることで染着させて染色する。
また、浸染における他の染法には、染色の方式、又は、その根本となる化学反応によって、媒染染法、還元染法、酸化染法、又は、顕色染法等が存在するが、本発明に係る染色方法40においては、これらの様々な浸染に適用することができる。
例えば、繊維に対する染着力の弱い染料による染色は媒染染法において行うことができるが、図1に示すように、先ず、媒染剤の水溶液からなる着色液Bを作製し、これを超音波霧化装置13で霧化し、霧化した水溶液からなる着色液Cを重力による自然落下により被染色物Aに均一に付着させた後に、必要があれば加熱装置20により加熱乾燥し、或は、被染色物Aを加熱装置20により加熱しながら超音波霧化装置13により霧化した染料からなる着色液Cを染着させることにより染色することができる。この場合の染色方式は、染色前に媒染するので先媒染といわれる。
一方、超音波霧化装置13を用いて染色した後に媒染剤を付着させ染料を布に染着させる後媒染にも、本発明に係る染色方法40を適用することができる。
また、2種類の染料成分を別々又は同時に被染色物Aに付着させることにより被染色物A上で染料成分を合成して染色する顕色染法においては、図2に示すように、超音波霧化装置13a,13bで霧化された2種類の染料成分を別々又は同時に2つの着色液供給部14a,14bを介して閉鎖空間16の上端部に供給することができるので、一方の霧化部13aにより霧化された一方の染料成分からなる着色液C1と、他方の霧化部13aにより霧化された他方の染料成分からなる着色液C2とを、2つの着色液供給部14a,14bを介して上記収納体17の左右側面の上端部に開口された供給口21a,21bから夫々供給することにより、2種類の染料成分を別々又は同時に被染色物Aに付着させて被染色物A上で染料成分C1とC2とを合成して染色することができる。
捺染における直接捺染法においては、本発明に係る染色方法40では、図1に示すように、先ず、被染色物Aの表面に一定の薬剤を含む捺染糊の水溶液からなる着色液Bを超音波霧化装置13により霧化して着色液Cを生成し、霧化された捺染糊の水溶液からなる着色液Cを着色液供給部14を介して閉鎖空間16の上端部に供給し、被染色物A上に配置した模様型板の上から霧化した捺染糊の水溶液からなる着色料Cを被染色物Aに重力により自然落下させ印捺糊を被染色物Aに付着させる。
次に、染料の水溶液からなる着色液Bを超音波霧化装置13により霧化して、霧化された染料の水溶液からなる着色液Cを着色液供給部14を介して閉鎖空間16の上端部に供給し、霧化した染料の水溶液からなる着色液Cを被染色物Aの表面に付着させ、捺染糊が付着した部分に染料を染着固定することにより被染色物Aを染色する。
また、模様のある紙を被染色物Aとしての布等に圧着加熱することによって行われる転写捺染法といわれる染色方法があるが、この転写捺染法に使用される原板の作製にも本発明に係る染色方法40を適用することができる。
以下、従来困難であった染色について具体的に説明する。
被染色物Aが皮革である場合には、従来のような被染色物を溶液中に浸して染める染色方法においては、厚さ方向に均一に染め込むことが皮革の繊維組織の組成から非常に困難であった。
しかしながら、本発明に係る染色方法40において染色する場合には、霧化した着色料Cが重力により自然落下することから、被染色物Aとしての皮革に対して霧化した着色液Cが上方から下降し、被染色物Aの繊維組織等の組成に関わらず、被染色物の細部や内部まで斑なく均一に染色して、皮革の厚さ方向においても均一に染色することができる。
さらに、図1に示すような、上記載置面部15の下方に設けられた吸引部18により、上記収納体17内部の空気を上記載置面部15下方へ吸引することにより霧化した着色液Cの降下を促進させて染色することができるので、被染色物Aの繊維組織等の組成に関わらず、皮革の厚さ方向に斑なく均一に染色することができる。
この場合、和紙の油分を除去することによって、和紙の繊維組織の組成が弱くなり、油分除去後の繊維組織の組成が弱くなった和紙を従来のように溶液中に浸して染めると、染色時に和紙を変形させる可能性が生じる。
しかしながら、本発明に係る染色方法40において染色する場合には、和紙を溶液中に浸して染色する染色法ではないため、和紙を変形させることなく染色することができる。
この場合、図1に示すように、収納体17の内部を気圧以上に加圧しうる加圧装置19により加圧状態にして、分子間構造を緩めることにより分子間の間隙を広めて、着色液分子の繊維内部への浸透拡散を増加させ、染料と被染色物との親和性が低い場合においても、斑なく均一に染色することができる。
さらに、この場合、載置面部15の下方に設けられた被染色物Aを加熱する加熱装置20により加熱状態にして、上記収納体内部の温度を上昇させて着色液分子の運動エネルギーを増大させると共に、繊維分子を熱運動させて繊維分子間の間隔を広げることが可能となり着色液分子の繊維内部への浸透拡散を増加させることができ、着色液分子の繊維内部への浸透拡散を増加させ、斑なく均一に染色しうると共に染色時間を短縮することができる。
このように、本発明に係る染色方法40及び染色装置10は、従来困難であった染色に対しても非常に効果的である。
11 空隙
12 染色部
13 霧化部
13a 霧化部
13b 霧化部
14 着色液供給部
15 載置面部
16 閉鎖空間
17 収納体
18 吸引部
19 漏水流入路部
20 加熱装置
21a 供給口
21b 供給口
22a 噴霧孔
22b 噴霧孔
23a 着色液タンク
23b 着色液タンク
24a 噴霧通路
24b 噴霧通路
25 載置台
26 引き出し部
27 上面板
28 下面板
29 側面板
30 側面板
31 前面板
32 背面板
33a 上斜面板
33b 上斜面板
34a 下斜面板
34b 下斜面板
35a 側面板
35b 側面板
40 染色方法
41 収納工程
42 霧化工程
43 着色液供給工程
44 染着工程
45 吸引工程
46 加圧工程
47 加熱工程
48 搬送工程
A 被染色部
B 着色液
C 霧化した着色液
C1 霧化した着色液
C2 霧化した着色液
Claims (10)
- 染色部の上方に空隙を有する状態で被染色物を上記染色部へ収納する収納工程と、霧化部により着色液を霧化する霧化工程と、上記霧化工程により霧化した着色液を着色液供給部を介して被染色物が収納された染色部へ供給すると共に上記被染色物の上方へ霧化された着色液を供給する着色液供給工程と、上記染色部内で被染色物を染着すると共に、霧化した着色液が重力により被染色物上に自然落下して被染色物を染着しうる高さ寸法を有する上記染色部内で被染色物を染着する染着工程と、被染色物が載置された載置面部の下方に設けられた吸引部により、上記染色部内部の空気を上記載置面部下方へ吸引する吸引工程とを有することを特徴とする染色方法。
- 気密構造を有する上記染色部の内部を気圧以上に加圧しうる加圧装置により、加圧状態下で染色する加圧工程を有することを特徴とする請求項1記載の染色方法。
- 被染色物を加熱する加熱装置により、加熱条件下で染色する加熱工程を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の染色方法。
- 多数の被染色物を載置した状態で連続的に搬送する搬送工程を有することを特徴とする請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の染色方法。
- 上記霧化部は、超音波霧化装置により構成されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれか1項に記載の染色方法。
- 被染色物を上方に空隙を有する状態で収納しうる染色部と、着色液を霧化しうる霧化部と、上記染色部へ霧化した着色液を供給しうる着色液供給部とを備え、
上記着色液供給部は、上記霧化部と染色部との間に設けられ、被染色物の上方へ霧化された着色液を供給しうるように構成され、上記染色部は、被染色物を載置しうる載置面部と、上記載置面部の上方に形成された閉鎖空間を内部に備える収納体により構成され、上記閉鎖空間は、霧化した着色液が重力により被染色物上に自然落下して染着しうる高さ寸法を有し、上記着色液供給部は、上記閉鎖空間の上端部へ着色液を供給し、上記載置面部の下方には上記収納体内部の空気を上記載置面部下方へ吸引しうる吸引部を有することを特徴とする染色装置。 - 上記収納体は気密構造を有すると共に内部を気圧以上に加圧しうる加圧装置を有し、加圧状態下で染色することを特徴とする請求項6記載の染色装置。
- 上記載置面部の下方には被染色物を加熱する加熱装置を有することを特徴とする請求項6又は7記載の染色装置。
- 上記載置面部は、多数の被染色物を載置した状態で連続的に搬送しうるように構成されていることを特徴とする請求項6、7又は8のいずれか1項に記載の染色装置。
- 上記霧化部は、超音波霧化装置により構成されていることを特徴とする請求項6、7、8又は9のいずれか1項に記載の染色装置。
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