JP5413608B2 - ホイールアライメントの調整方法 - Google Patents
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Description
本発明は、ホイールアライメントの調整方法に関し、特に、自動車等の車両の製造時等に実施されてステアリングホイールを位置決めして固定する工程を含む車輪のトーの調整方法に関する。
自動車等の車両の製造時等には、車輪(ホイール)の状態を検査し、必要に応じてトー等のホイールアライメントの調整が行われている。例えば、トーイン角測定装置によってトーイン角を測定し、その測定結果に基づいてタイロッドを調整して、左右の車輪のトーが等しくなるようにしたものがある(特許文献1,2等参照)。
また近年は、トー等のホイールアライメントを前輪及び後輪で同時に測定するアライメントテスター装置が提案されている(特許文献3参照)。このようなアライメントテスター装置を用いる場合、例えば、次のような手順で前輪及び後輪のトー調整が行われている。
まずは車両のステアリングホイール(ステアリングハンドル)をステアリングシャフトに仮固定した状態で、車両をアライメントテスター装置に搬入する。アライメントテスター装置では、車両の前輪及び後輪のトーがそれぞれ測定され、測定結果は所定の画面に表示される。
作業者は、画面に表示された前輪及び後輪のトーの値から所定の計算を行う。そして、その計算結果に基づいて前輪の向きを後輪の向きに合わせて調整する。具体的には、ステアリングホイールを操作して前輪の向きを調整し、前輪の向きを後輪の向きに合わせた状態で、ステアリングホイールをステアリングシャフトに対して水平位置となるように調整して本固定する。
例えば、図3(a)に示すように、車両100がアライメントテスター装置500に搬入される際、前輪103が右側に傾いており後輪104が左側に傾いている場合には、図3(b)に示すように、ステアリングシャフト102に仮固定されているステアリングホイール101を左回りに所定量回転させて前輪103の向きを後輪104の向きに合わせる。すなわち、ステアリングホイール101を操作して前輪103が後輪104と同程度に左側に傾くようにする。この状態で、図3(c)に示すように、ステアリングホイール101が水平位置となるように位置決めし直してステアリングシャフトに本固定する。その後、ステアリングホイール101を所定の治具等によって回転しないように保持した状態で、後輪104のトーが規格範囲となるようにトー調整を行うと共に、前輪103のトーが規格範囲となるようにトー調整を行う。
前輪103のトー調整が終了した後は、ステアリングホイール101の左右の切れ角を確認するターニング測定を行う。ターニング測定の結果、ステアリングホイール101の左右の切れ角が均等であればトー調整を終了し、ステアリングホイール101の左右方向の切れ角が均等ではない場合には、ステアリングホイール101の向きや前輪103のトーの再調整が必要となる。
上述のような手順でトー調整を行う場合、ステアリングシャフトに本固定するステアリングホイールの位置(向き)は、後輪のトーに基づいて決定される。このため、後輪のトーが規定範囲から外れていると、ステアリングホイールの位置も適正位置から外れた位置になり易い。すなわちターニング測定時に、ステアリングホイールの左右の切れ角が均等にならず、ステアリングホイールの位置等の再調整を必要とする状況になり易い。したがって、上述のような手順でトーの調整を行うと、作業効率の低下を招く虞があり、また作業効率の低下に伴って製造コストの増加を招く虞もある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両製造時等にステアリングホイールを適正な位置でステアリングシャフトに本固定することができ、前輪及び後輪のトー調整を効率的に実施することができるホイールアライメントの調整方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、車両の前輪及び後輪のトーの調整を含むホイールアライメントの調整方法であって、ステアリングホイールをステアリングシャフトに仮固定した状態で前記前輪及び前記後輪のトーを測定し、当該後輪のトーが規格範囲外であった場合には、前記後輪のトーが規格範囲内の所定値であると仮定し、この所定値及び前記前輪のトーに基づいて前記ステアリングホイールを回転させて、前記前輪の向きを仮定した前記後輪の向きに合うように調整し、この状態で前記ステアリングホイールを水平位置に位置決めして前記ステアリングシャフトに本固定した後、前記前輪及び前記後輪のトーが規格範囲内となるようにトーの調整を行うことを特徴とするホイールアライメントの調整方法にある。
かかる第1の態様では、後輪の向き(トー)に拘わらず、ステアリングホイールを適正な向きでステアリングシャフトに本固定できる。またその後に、前輪及び後輪のトーの調整を行うことで、前輪及び後輪のトーを効率的に適正範囲とすることができる。
本発明の第2の態様は、前記後輪のトーが上限値よりも大きい場合には前記所定値を前記上限値とし、前記後輪のトーが下限値よりも小さい場合には前記所定値を前記下限値とすることを特徴とする第1の態様のホイールアライメントの調整方法にある。
かかる第2の態様では、実際の後輪の向きと仮定した後輪の向きとの差が最小限に抑えられる。したがって、前輪及び後輪のトーをより正確に調整することができる。
本発明の第3の態様は、前記前輪及び前記後輪のトーの調整後に、前記ステアリングホイールの左右の切れ角を測定するターニング測定をさらに行うことを特徴とする第1又は2の態様のホイールアライメントの調整方法にある。
かかる第3の態様では、ターニング測定によってステアリングホイールの左右の切れ角が略均等であることを確認することができる。
本発明によれば、後輪のトーが規格範囲を外れている場合でも、前輪の向きを車両の前後方向に概ね一致させることができ、それに伴ってステアリングホイールを適正な向きでステアリングシャフトに本固定できる。また、その後に前輪及び後輪のトーの調整を行うことで、前輪及び後輪のトーを比較的容易に適正範囲とすることができる。したがって、車両の組立等の作業効率が大幅に向上し、作業時間の短縮を図ることができる。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るホイールアライメントの調整方法の手順を模式的に示す図であり、図2は、本発明の一実施形態に係るアライメントテスター装置の表示部を示す図である。
本発明に係るホイールアライメントの調整方法では、図1に示すように、自動車(車両)10のステアリングホイール(「ハンドル」ともいう)11をステアリングシャフト12に対して適正な向きに位置決めして本固定した後に、前輪13及び後輪14のトー調整を行うようにした。これにより、前輪13及び後輪14のトーの調整を比較的容易に行うことができる。
具体的にはまず、図1(a)に示すように、自動車10をアライメントテスター装置50に搬入し、アライメントテスター装置50によって前輪13及び後輪14のトーをそれぞれ測定する。このとき自動車10のステアリングホイール11は、ステアリングシャフト12に仮固定されている。後述するようにステアリングホイール11は、前輪13及び後輪14のトーの測定結果に基づいて適正な向きに位置決めされてステアリングシャフト12に本固定される。
なお、アライメントテスター装置50は既存の装置を用いればよいため、アライメントテスター装置50についての詳細な説明は省略する。
アライメントテスター装置50による測定結果である前輪13及び後輪14のトーは、例えば、図2に示すように、アライメントテスター装置50の表示部51に表示される。図2に示す例では、自動車10の進行方向に対して、左前輪13aが内側(IN側)に1.0mm、右前輪13bが外側(OUT側)に1.5mm、右後輪14aが内側(IN側)に2.0mm、左後輪14bが外側(OUT側)に2.5mmだけ傾いていることになる。
次に、この測定結果に基づいてステアリングホイール11を所定量だけ回転させて前輪13の向きを調整する。具体的には、下記式(1)から算出されるハンドルセット向き調整値(以下、単に「調整値」という)に基づいてステアリングホイール(ハンドル)11を回転させて前輪13の向きを調整する。その後、この状態でステアリングホイール11を中立位置(水平位置)に位置決めしてステアリングシャフト12に本固定する。
調整値=(左前輪トー)−(右前輪トー)+(右後輪トー)−(左後輪トー) (1)
(トーの値は、IN側を+、OUT側を−とする)
(トーの値は、IN側を+、OUT側を−とする)
ところで、従来技術に係るホイールアライメントの調整方法では、後輪14のトーが規格範囲内であるか否かに拘わらず、前輪13の向きを後輪14の向きに合わせていた。このため、後輪14のトーが規格範囲から外れていると前輪13のトーも規格範囲から大きく外れてしまう虞があった。またこのように前輪13の向きを後輪14の向きに合わせた状態でステアリングホイール11の位置決めを行っていたため、ステアリングホイール11を適正な向きでステアリングシャフト12に固定できない虞があった。すなわち、トーの調整後に、ステアリングホイール11の左右の切れ角が均等にならない虞があった。
これに対し本発明では、後輪14のトーが規格範囲から外れている場合には、後輪14のトーが規格範囲内の所定値であると仮定し、この仮定した後輪14の向き(トー)に合わせて前輪13の向きを調整するようにした。すなわち図1(b)に示すように、実際の後輪14の向き(図中実線)ではなく、トーが上記所定値であると仮定した後輪14の向き(図中点線)に合わせて前輪13の向きを調整するようにした。これにより、後輪14の向きに拘わらず、前輪13の向きが自動車10の進行方向(前後方向)と概ね一致し、前輪13のトーが規格範囲から大きく外れることがない。
本実施形態では、左右の各後輪14のトーの規格範囲をOUT側に1.0mm〜IN側に1.0mm(−1.0mm〜1.0mm)としている。そして後輪14のトーがこの規格範囲から外れている場合には、後輪14のトーがこの規格範囲内の所定値であると仮定する。本実施形態では、後輪14のトーが規格範囲から外れている場合には、各後輪14のトーがIN側に1.0mmであると仮定している。図2に示す例では、右後輪14aのトーはIN側に2.0mmであり、規格範囲を外れているため「+1.0mm」と仮定される。また左後輪14bのトーも、OUT側に2.5mmであり規格範囲を外れているため、右後輪14aの場合と同様に、「+1.0mm」と仮定される。これらの値に基づいて計算された結果、調整値は「2.5mm」となる。なお後輪14のトーが規格範囲内である場合には、その値に基づいて調整値が算出される。
このようにアライメントテスター装置50によって算出された調整値は、例えば「ハンドル中立セット指示」として表示部51に表示される(図2参照)。本実施形態では、調整値が数値で表されると共に調整値が図形の大きさで表されるようにしている。すなわち表示部51は、調整値を数値で表示する数値表示部52と、調整値を図形の大きさ(バー53aの長さ)で表示する図形表示部53とを備えている。図形表示部53のバー53aは、上述したように前輪13が右側に傾いている場合には、中央部から右側に延びる(図2参照)。前輪13が左側に傾いている場合には、図形表示部53のバー53aは中央部から左側に延びることになる。
表示部51に表示された数値及び図形の大きさ(バー53aの長さ)は、ステアリングホイール11を回転させることによる前輪13の向きの変化に応じてリアルタイムで変化するようになっている。したがって、作業者は、この数値及び図形の変化によって、前輪13の向きが適正な方向となったか否か、つまり前輪13の向きが自動車の進行方向に概ね一致したか否かを視認により容易に判断することができる。これにより、前輪13の向きを容易且つ正確に調整することができる。
なお本実施形態では、後輪14のトーが規格範囲から外れている場合には、各後輪14のトーがIN側に1.0mmであると仮定したが、勿論、この値は規格範囲内であれば特に限定されるものではない。例えば、後輪14のトーが規格範囲の上限値よりも大きい場合には、上記所定値を上限値とし、後輪14のトーが下限値よりも小さい場合には上記所定値を下限値としてもよい。これにより、実際の後輪14の向きと仮定した後輪14の向きとの差が最小限に抑えられる。したがって、前輪13及び後輪14のトーをより正確に調整することができる。
また従来は、アライメントテスター装置に前輪及び後輪のトーの測定結果が表示されると、作業者が、この測定結果から暗算等によって算出した調整値に基づいて前輪の向きを調整していた。このため作業者の計算ミス等により前輪13の向きを誤って調整してしまう虞があった。しかしながら、上述のようにアライメントテスター装置50によって計算された調整値が表示部51に表示されることで、作業者は自動車10の進行方向(前後方向)に合わせて前輪13の向きを適切に調整することができ、作業効率が大幅に向上する。特に、表示部51が、調整値を数値で表示する数値表示部52と共に、調整値を図形の大きさで表示する図形表示部53とを備えていることで、作業者は、前輪13の向きをより容易且つ正確に調整することができる。
次に、このように前輪13の向きを適切に調整した状態で、図1(c)に示すようにステアリングホイール11を水平位置(中立位置)に位置決めしてステアリングシャフト12に本固定する。すなわち、ステアリングシャフト12に仮固定されているステアリングホイール11を一旦取り外して水平位置に直した後、ステアリングシャフト12に再び固定(本固定)する。これにより、ステアリングホイール11が適切な向きでステアリングシャフト12に固定される。
その後前輪13及び後輪14のトーの調整を行い、前輪13及び後輪14のトーが規格範囲となるようにする。本実施形態では、まず図1(d)に示すように、後輪14のトーを調整して後輪14のトーが規格範囲内となるようにする。さらにステアリングホイール11を所定の治具(図示なし)等によって回転しないように固定した状態で、図1(e)に示すように、前輪13のトーの調整を行い、前輪13のトーが規格範囲内となるようにする。
このように前輪13及び後輪14のトーの調整が終了した後は、ステアリングホイール11の左右の切れ角を測定するターニング測定を実施する。この測定により、ステアリングホイール11の左右方向の切れ角が均等であればトー(ホイールアライメント)の調整は終了する。左右の切れ角が均等ではない場合には、上述したステアリングホイール11の向きの調整や、前輪13のトーの調整が再度行われることになる。
ただし、上述したようにステアリングホイール11をステアリングシャフト12に本固定した後に前輪13及び後輪14のトーの調整を行うようにすれば、ステアリングホイール11の左右の切れ角はほぼ確実に均等となる。つまりステアリングホイール11の向きの調整や、前輪13のトーの調整は実質的に行われることはない。したがって、ターニング測定は必ずしも実施しなくてもよい。
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態では、ホイールアライメントの調整方法として、トーの調整についてのみ説明したが、勿論、トーの調整と共に、キャンバ角やキャスタ角等の調整を行うようにしてもよい。
10 自動車(車両)
11 ステアリングホイール(ハンドル)
12 ステアリングシャフト
13 前輪
14 後輪
50 アライメントテスター装置
51 表示部
52 数値表示部
11 ステアリングホイール(ハンドル)
12 ステアリングシャフト
13 前輪
14 後輪
50 アライメントテスター装置
51 表示部
52 数値表示部
Claims (3)
- 車両の前輪及び後輪のトーの調整を含むホイールアライメントの調整方法であって、
ステアリングホイールをステアリングシャフトに仮固定した状態で前記前輪及び前記後輪のトーを測定し、
当該後輪のトーが規格範囲外であった場合には、前記後輪のトーが規格範囲内の所定値であると仮定し、この所定値及び前記前輪のトーに基づいて前記ステアリングホイールを回転させて、前記前輪の向きを仮定した前記後輪の向きに合うように調整し、
この状態で前記ステアリングホイールを水平位置に位置決めして前記ステアリングシャフトに本固定した後、
前記前輪及び前記後輪のトーが規格範囲内となるようにトーの調整を行うことを特徴とするホイールアライメントの調整方法。 - 前記後輪のトーが上限値よりも大きい場合には前記所定値を前記上限値とし、前記後輪のトーが下限値よりも小さい場合には前記所定値を前記下限値とすることを特徴とする請求項1に記載のホイールアライメントの調整方法。
- 前記前輪及び前記後輪のトーの調整後に、前記ステアリングホイールの左右の切れ角を測定するターニング測定をさらに行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のホイールアライメントの調整方法。
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