JP5412241B2 - 果実の加温装置 - Google Patents

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Description

この発明は、ぶどう、もも、マンゴーなどの果実を1個ないし一房ずつ加温する加温装置に関するものである。
青果物は、味や鮮度が重要であることはもちろんであるが、味や鮮度が同じでもその形や色によって商品価値が左右される。色について言えば、それぞれの果実に特有のよく熟した色をしていることが必要で、果実ごとの色むらや各果実についての部分的な色むらがあると、商品価値が低下する。この低下の度合いは、果実が高価であるほど大きい。
そのため、高級な果実を栽培している農家は、生育中の多数の果実が満遍なく形良くかつ均一な色付きで収穫されるように、一個一個の果実に袋を掛けたり日光を部分的に遮ったり反射させたりして、果実の商品価値が落ちないようにする。
果物は花が散った後に結実し、栄養を吸収してある程度の日数を経て大きくなり、熟して収穫されるが、結実から収穫までの間に、季節の変化に伴う気温変化や昼夜の気温変化にさらされる。また、年によって気温の高い年もあれば低い年もある。このような気温の変化は、果物の生育や色付きに影響を与える。
最近の研究により、ぶどうを例として、結実から14〜15日以降の3週間程度の間の低温が熟した果実の色付きにばらつきを与えることが報告されている。この知見に基づく試験により、花が終わって結実してから14〜15日以降の3週間程度の間、気温が低くなるおそれがある時期に、果実を一定の温度(果実の種類により異なる温度)以下にならないように加温して温度保持することにより、収穫時の果実の色付きを均等にできるという試験結果が得られた。しかし、この短期間の加温のために果樹ハウス全体を加温するのは、設備費用が嵩むと共に、暖める空気の量やハウスからの放熱量も大きくなって不経済である。
そこでこの発明は、気温が低下したときに経済的に、かつ比較的少ない手数で結実した果実を加温することが可能な技術手段を提供することを課題としている。
この発明の果実の加温装置は、ハウスないし果樹棚5で栽培されている果樹の収穫前の果実を加温する加温装置であって、面状発熱体4を内蔵して収穫前の果実の1個ないし1房を覆って装着される加温カバー10の多数個と、前記ハウスないし果樹棚に分散配置された複数の分電器63と、出力電圧30V以下の加温用電源71とを備え、各分電器63は1個の入力端と複数のリード線68を接続可能な出力端66とを備えている。
通常、ハウスないし果樹棚5は、金属製パイプないし金属製棚線52を備えている。そこで前記加温用電源71の出力電線の一方を前記パイプないし棚線52に接続し、他方を複数の前記分電器63の入力端に接続し、各加温カバーの面状発熱体4から引出したリード線43の一方を前記パイプないし棚線52に接続し、他方を前記分電器63の出力端66に接続する構造とすることにより、電気配線を簡略化することができる。
上記構造の加温装置には、外気温を検出する温度センサ72を設け、分電器63の入力端は、当該温度センサ72の検出温度が低いときに出力電圧が高くなるように調整する調整器74を介して、加温用電源71に接続するのが好ましい。更に、それぞれの分電器63に接続された複数の加温カバー10の少なくとも1個に当該加温カバー内の温度を検出する温度センサを内蔵し、当該温度センサの検出温度が所定値を超えたときに各分電器63に内蔵したヒューズ64などの遮断器で当該分電器に接続された加温カバー10への給電を停止する安全装置を設けるのが好ましい。
加温カバー10は、柔軟な袋状のカバーとするか、果実を外力からも保護できる箱状のカバーとする。袋状の加温カバーは、断熱性を備えたシートで形成した袋体1a、1bと、当該袋体1a、1bの内面に添着された防水性を有する可撓性の面状発熱体4とを備えている。袋体1a、1bの口には、果実をカバー内に入れた後、カバーを閉じてカバーが果実の茎によって懸吊されるように、面ファスナ19や袋口を縛る紐状体22などの閉止具を取付ける。
箱状の加温カバーは、つき合わされて球形ないし短円筒形の箱体1cを形成する発泡樹脂成形体2、2と、前記発泡樹脂成形体のそれぞれの内面に個別に添着された防水性を有する面状発熱体4とを備えている。発泡樹脂成形体2には、箱体1cを形成したときに果実の茎を把持する上端部分にスポンジなどのクッション材27を取付け、底部には水抜き用の貫通孔28を形成する溝31を設ける。
面状発熱体4としては、防水性を備えた2枚の絶縁シートの間に電熱線をジグザグに配置したものなど、種々の構造のものを使用できるが、布帛を乾留により炭化して得られるカーボン繊維布帛41に防水シート42を添設した構造のものを用いるのが好ましい。放水シート43は、例えば合成樹脂製のシートで、比較的破損しやすいカーボン繊維布帛41を水及び外力から保護するものである。この防水シート42は、カーボン繊維布帛41のカバー内面側となる面にのみ添着し、外面側はカバー本体1(1a、1b、1c)で防水性を付与しても良い。
面状発熱体4のカバー内面側には、果実を外力から保護すると共に面状発熱体4に接する部分のみが過度に加熱されるのを避けるために、一般に用いられている発泡樹脂製の果実保護ネット14を添設する。
面状発熱体4の両端には、並列ないし直列で当該面状発熱体4に通電するためのリード線43が接続される。リード線43は、カバー本体1の外に引き出され、その先端に金属製の接続プレート44が取付けられる。各加温カバーの面状発熱体4は、両端に鰐口クリップ67を取付けた電線68で、接続プレート44の一方を分電器63の出力端66に接続し、他方をパイプないし棚線52に接続することにより加温用電源71に接続される。
この発明により、気温が低下したときに果実を個々に加温して、果実の色付きが悪くなったり不均一になったりするのを防止する加温装置を、経済的に提供することができ、加温に必要な電力も少なくできる。そして、各加温カバーに設けた面状発熱体への電源線の一方を果樹ハウスのフレームパイプや果樹棚の棚線を利用して行うことにより、設備をより経済的に提供できる。更に、所定数の果実ごとに1個の分電器を配して温度制御及び漏電時の電気の遮断を行うようにできる。また、感電を避けるために低電圧電源を用いており、不測の際の事故も避けることができる。
この発明の加温装置に用いる加温カバーは、1個又は一房の果実ごとに取り付けられて加温カバーで被われた果実を直接加温するため、消費電力が少なくて済み経済的であり、大容積のハウス全体を加温するものでないため、設備費用も安価で済む。また、柔軟な面状発熱体を防水シートで挟んで使用しているので、面状発熱体の損傷や降雨時の漏電の問題を避けることができる。
この発明の加温装置に用いる加温カバーの第1例の側面図 図1の加温カバーの内面を示す図 加温カバーの発熱体装着部の模式的な断面図 面状発熱体を示す図 加温カバーの第2例の内面を示す図 図5の加温カバーの発熱体装着部の模式的な断面図 加温カバーの第3例の斜視図 加温カバーの第4例の斜視図 この発明の加温装置の実施例を示す模式的な平面図 各加温カバーへの配線を示す図
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。この発明の加温装置に用いる加温カバーは、果実を包込むことができる袋状又は箱状の本体を備えている。
図1〜3は、袋状の本体を備えた加温カバーの第1例を示した図である。第1例のカバー本体1aは、有孔ポリエチレンシート11と不織布12とをラミネートした2層構造のシートで形成された袋体である。この袋体1aの果実が収まる部分に対応する所定領域には、断熱と保温のための通気性のない断熱シート13が被覆され、当該領域の袋体1aの内側に、面状発熱体4が添着されている。
面状発熱体4には、織物を乾留処理によって炭化したものを用いるのがよい。織物を炭化して得られた炭化布帛41は、薄く柔軟であり、価格も比較的安価である。織物を炭化してなる炭化布帛41は、機械的強度が弱く破損しやすいので、絶縁性と湿気を嫌う電気への防水性を備えた防水シート42を両面に添着して面状発熱体4とし、袋体1aの内側に適宜な接着剤で添着する。
矩形形状の炭化布帛41の長手両端には、それぞれ通電線となるリード線43が接続され、当該2本のリード線は、袋体1aの外に引出されて、その先端に端子プレート44が取付けられている。
面状発熱体4の内側には、防水シート42が直接果実に当らないように、収穫後の果実が傷むのを防ぐために果実を1個ずつ包むのに用いられている発泡ポリウレタン製の保護ネット(フルーツネット)14を接着ないし溶着して、該保護ネットが果実の表面に当たるようにする。断熱シート13は、発泡樹脂シート、より好ましくは、アルミ箔コーティングした発泡樹脂シートである。
袋体1aは、若干縦長の矩形形状が基本形状であるが、上辺の両側を45度の斜辺16とした形状とすることで、袋の上辺が枝と干渉して袋の取付が困難になるのを避けることができる。図1、2の袋体1aは、その底辺の両側にも45度の斜辺16を設けた形状としており、果実に被せたとき、全体が楕円に近い形になる。
斜辺16部分を含む袋口17には、その辺の内側に沿って帯状の面ファスナ19を取り付け、果実を袋内に入れた後、上辺部分の両面を押し付けることによって、容易に果実に取り付けることができる。果実の軸51は、貼付いた2枚の面ファスナ19の間から引出される。袋体1aの一方のシートの上辺部分には、小穴21が開けられ、この小穴に通したビニール被覆針金22により、果実の軸と共に袋口を縛ることができる。
比較的高い温度で加温する必要がある果実には、図5、6の第2例に示したように、袋体1b全体を断熱シート13で形成し、袋体1b内に複数の炭化布帛41を備えた面状発熱体4を設けてやればよい。複数の炭化布帛41は、両面各一枚の防水シート42で一括して挟まれており、2本のリード線43に並列接続されている。保護ネット14は、複数の炭化布帛全体を覆うように、添設されている。その他の構造は、第1例と同様である。
図7は、加温カバーの第3例を示した図で、箱状の加温カバーの例を示したものである。
箱状の加温カバーは、中空球形ないし中空短円筒形を縦方向に2つ割りにした本体1cを備えている。図の本体1cは、発泡スチロール製で、外観形状は牛乳保温パックのような形状で、同一形状の2個の短樋形の発泡スチロール成形体2、2を合わせて短円筒形の箱体1cとするものである。2個の成形体(以下、「半割れ体」という。)2、2は、合わせた状態でその一方の側辺部外面に粘着テープ25を貼着して、その粘着テープ25の屈曲により開閉自在とし、果実を中に入れて閉じた後、周囲に輪ゴム26を掛けて、果実を囲んで閉じた状態を保持させる。
各半割れ体2には、合わせたときに中央の頂部となる部分に果実の軸51を柔らかく挟むスポンジなどのクッション体27を装着し、合わせたときに底部中央に水抜き用の貫通孔28が形成されるように、合せ辺29の底部中央に溝31を設けておく。
半割れ体2の内面には、その大きさに応じて、1ないし複数(図の例では2)のヒータ収納部32が半円筒形の凹所にして形成されている。炭化布帛を備えた面状発熱体4は、この凹所32に納められた状態で、当該凹所の底面に接着されている。面状発熱体4の内側には、円筒形の保護ネット(フルーツネット)14が貼り付けられている。半割れ体2の開き側の一箇所には、指掛け用切欠33が設けられている。また、各半割れ体2の底部両隅に、2枚の炭化布帛41を並列接続する2本のリード線43を引出すためのリード線用切欠34が設けられている。このリード線用切欠34は、半割れ体2を2つ合わせたときにリード線挿通用の貫通孔が形成されるように設けてある。
面状発熱体4は、半割れ体2の底面に配置することもできる。この場合は、図8に示すように、半割れ体2の底面に緩い屋根勾配をつけ、この上に両面に防水シート42を添着した面状発熱体4を添着する。リード線43は、面状発熱体4の両側に設けたリード線用切欠34から引出される。水滴は、底板上面の屋根勾配により、両側に流れ、リード線用切欠34を通って排出される。なお、図8は、半割れ体2の底面にのみ面状発熱体4を設けたものであるが、周面と底面とに面状発熱体4を設けた構造とすることも勿論可能である。
以上の例から理解されるように、この発明の加温装置に用いる加温カバー10は、カバー本体1(1a、1b、1c)の内面に加温用の発熱体4が添設されている。発熱体4は、柔軟性があり、あまり高温にならない材質のものとする。発熱体は、カバー本体内に、広範囲に有る方が良く、カーボン繊維の布帛(例えば、新日本テックス株式会社製の商品名カーボ・シールド)の両端に電極端子を設け、両面を防水対応のラミネート処理を行ったものが好ましい。
この発明の、発熱体を内蔵した加温カバーで果実を個別に直接加温する方法は、加温エネルギーが少なく、露地栽培にも対応できる。発熱体の電源は、30V以下の低電圧電源、例えば24Vとすることで、感電による危害の発生を防止する。この場合、電源の一方を接地して、当該接地側の電線として果樹栽培に使用する棚線や支柱を利用することにより、配線作業の作業性を大幅に改善できる。
図9は、この発明の加温装置の実施例を示した図である。
加温カバー10の発熱体4に通電するための電気配線は、ハウスの金属製のパイプや果樹を支える金属製の棚線52を利用して配線する。加熱用の電源としては、30V以下の交流ないし直流を用いる。2本の電源線の一方61は、果樹棚5の金属製のパイプや棚線52に連結し、他方62は、果樹棚の要所要所に設けた分電器63に並列配線する。各分電器63には、図10に示すように、電源側にヒューズ64を設け、給電側は面積の大きな端子プレート66を取り付けて、複数のリード線68を接続する。なおこの分電器63は、リード線68を接続する部分を除いて樹脂塗料を塗布するなどして防水及び防錆性を付与している。
果実を加温するときは、結実した果実に1個ないし一房ずつ加温カバー10を被せてカバーを閉じ、図10に示すように、両端に鰐口クリップ67を取り付けたリード線68を用いて、各加温カバー10から引出されている端子プレート44の一方を近くの棚線52やフレームパイプに接続し、他方を分電器の端子プレート66に接続する。
各分電器63は、所定数の加温カバーにリード線68を結線して加温できるように、果樹棚5の要所要所に配置する。面状発熱体の発熱温度の調整は、電源線の電圧調整とオンオフ制御とにより行っている。図の例では、商用電源69から24Vの直流に変換する電源装置71と、外気温を検出するサーミスタ72の検出温度により制御信号を出力する制御器73と、当該制御信号により電圧を24V以下の範囲で調整する複数の調整器74を設けている。各調整器74には、出力電流をオンオフする開閉スイッチを更に設け、各調整器に接続された多数の加温カバー10の1つ10aにサーミスタを内蔵して、当該加温カバー内が異常な高温となったときに、この開閉スイッチを開成して加温カバー10への電気の供給を遮断するようにしている。調整器74を複数設けているのは、汎用の電圧制御器や開閉スイッチを利用できるようにするためである。
この発明の加温装置は、30V以下の、低電圧電源を使用することで、感電防止と安全を確保し、電源線の片方をハウスの金属性のパイプや果樹棚の金属製の棚線52を利用することで、配線作業の簡素化と配線資材の節約を図っている。非接地側の電源線62は、所定数の加温カバー毎にまとめて給電する分電器63によるステーション方式とすることで、各加温カバーまでの配線距離を短くしている。各分電器63には、安全のための過電流遮断器(ヒューズ)64を設けている。
この発明の加温装置では、外気温の変化をサーミスター等で測定し、栽培果実に最適な温度になるように、電圧変換により、最適な温度を保つ。また、高温被害が出ないように、加温カバー内の温度を測定し、最適温度より一定以上の高温になると、電源のオンオフを行う。この両者を併用することで、より安定した温度管理ができる。
1 カバー本体
1a、1b 袋体
1c 箱体
2 発泡樹脂成形体
4 面状発熱体
5 ハウスないし果樹棚
10 加温カバー
41 カーボン繊維布帛
42 防水シート
43 リード線
52 パイプないし棚線
63 分電器
64 ヒューズ
66 分電器の出力端
68 リード線
71 加温用電源
72 温度センサ
74 調整器

Claims (4)

  1. ハウスないし果樹棚(5)で栽培されている果樹の収穫前の果実を加温する加温装置であって、面状発熱体(4)を内蔵して収穫前の果実の1個ないし1房を覆って装着される果実加温カバー(10)の多数個と、出力電圧30V以下の加温用電源(71)と、金属製パイプを備えたハウスないし金属製棚線を備えた果樹棚(5)と、当該ハウスないし果樹棚に分散配置された複数の分電器(63)とを備え、各分電器は1個の入力端とこの入力端に接続された複数のリード線(68)を接続可能な出力端(66)とを備え、前記加温用電源の出力電線の一方が前記パイプないし棚線に接続され他方が複数の前記分電器の入力端に接続され、前記面状発熱体から引出したリード線(43)の一方が前記パイプないし棚線に接続され他方が前記分電器の出力端に接続されている、果実の加温装置。
  2. 前記分電器の入力端が調整器(74)を介して前記加温用電源(71)に接続され、当該調整器の出力は、外気温を検出する温度センサ(72)の検出信号に基づいて検出温度が低いときに出力電圧が高くなるように調整され、前記加温カバーに内蔵された温度センサの検出信号に基づいて検出温度が所定値を超えたときに遮断される、請求項1記載の果実の加温装置。
  3. 前記果実加温カバー(10)が、断熱性を備えたシートで形成した袋体(1a,1b)と、当該袋体の内面に添着された防水性を有する可撓性の面状発熱体(4)と、当該面状発熱体の両端に並列ないし直列接続されて前記袋体の外に引き出された2本のリード線(43)と、前記面状発熱体の内面側に添設された果実保護ネット(14)とを備えている、請求項1記載の果実の加温装置。
  4. 前記果実加温カバー(10)が、つき合わされて球形ないし短円筒形の箱体(1c)を形成する発泡樹脂成形体(2,2)と、前記発泡樹脂成形体のそれぞれの内面に個別に添着された防水性を有する面状発熱体(4)と、当該面状発熱体の両端に並列ないし直列接続されて箱外に引き出された2本のリード線(43)と、前記面状発熱体の内側に添設された果実保護ネット(14)とを備えている、請求項記載の果実の加温装置。
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