以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<携帯電話機の概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係るカメラモジュール500を搭載した携帯電話機100の概略構成を示す模式図である。なお、図1および図1以降の図では方位関係を明確化するために、XYZの相互に直交する3軸が適宜付されている。
図1で示されるように、携帯電話機100は、折り畳み式の携帯電話機として構成され、第1の筐体200と、第2の筐体300と、ヒンジ部400とを有している。
第1の筐体200および第2の筐体300は、それぞれ板状の直方体であり、各種電子部材を格納する筐体としての役割を有している。具体的には、第1の筐体200は、カメラモジュール500および表示ディスプレイ(不図示)を有し、第2の筐体300は、携帯電話機100を電気的に制御する制御部とボタン等の操作部材(不図示)とを有している。
ヒンジ部400は、第1の筐体200と第2の筐体300とを回動可能に接続している。このため、携帯電話機100は、折り畳み可能となっている。
図2は、携帯電話機100のうち第1の筐体200に着目した断面模式図である。
図1および図2で示されるように、カメラモジュール500は、XY断面のサイズが約5mm四方であり、厚さ(Z方向の奥行き)が約3mm程度である小型の撮像装置、いわゆるマイクロカメラユニット(MCU)となっている。
以下、カメラモジュール500の構成、およびその製造工程等について順次説明する。
<カメラモジュールの構成>
図3は、カメラモジュール500の断面模式図であり、矢印AR1の示す方向が+Z方向に対応する。なお、図3以降の図面においても、方位関係の明確化のために、+Z方向に対応する方向を示す矢印AR1が付されている。
図3で示されるように、カメラモジュール500は、撮影光学系としてのレンズ群20が移動可能に設けられている光学ユニットKBと、被写体像に関する撮影画像を取得する撮像部PBとを有している。
撮像部PBは、例えば、COMSセンサまたはCCDセンサ等の撮像素子181を有する撮像素子層18と、カバーガラス層17とが+Z方向にこの順序で積層された構成を有する。なお、カバーガラス層17が、赤外線(IR)をカットするフィルタ層を含むようにしても良い。
光学ユニットKBは、蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね(上層平行ばね)12、第2枠層13、第2平行ばね(下層平行ばね)14、アクチュエータ層15、レンズ位置調整層16、およびレンズ群20を備えて構成される。蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね12、第2枠層13、第2平行ばね14、アクチュエータ層15、レンズ位置調整層16、およびレンズ群20は、いずれもウエハ状態(ウエハレベルで)製作される。これらの製作工程については後述する。
光学ユニットKBでは、レンズ位置調整層16、アクチュエータ層15、第2平行ばね14、第2枠層13、第1平行ばね12、第1枠層11、および蓋層10が+Z方向にこの順序で積層され、第2平行ばね14と第1平行ばね12との間にレンズ群20が保持された構成を有している。そして、第1平行ばね12と第2平行ばね14とアクチュエータ層15とが互いに協働することで、レンズ群20をZ軸に沿った方向に移動させる。
カメラモジュール500では、蓋層10、第1および第2枠層11,13、レンズ位置調整層16、カバーガラス層17、および撮像素子層18が、レンズ群20に対する固定部となる。そして、レンズ群20は、固定部に結合された第1および第2平行ばね12,14によって支持される。
より詳細には、レンズ群20の−Z側におけるアクチュエータ層15と該レンズ群20との間には、第2平行ばね14が介挿される。また、レンズ群20の+Z側における第1枠層11と該レンズ群20との間には、第1平行ばね12が介挿される。つまり、レンズ群20は、第1平行ばね12と第2平行ばね14とによって挟まれている。
ここでは、第1および第2平行ばね12,14によってレンズ群20が挟持されるため、レンズ群20の移動に拘わらず、レンズ群20の姿勢が保持され、レンズ群20の光軸が略一定に保持される。
また、第1および第2平行ばね12,14は、移動対象物であるレンズ群20が+Z方向に移動する際に、レンズ群20の移動方向(すなわち+Z方向)とは反対方向の力を、該レンズ群20に対して付与する。なお、レンズ群20が−Z方向に移動する際には、第1および第2平行ばね12,14がレンズ群20に対して付与する力の方向は、レンズ群20の移動方向(すなわち−Z方向)と一致する。
更に、レンズ群20が+Z方向に移動していない非駆動状態(例えば駆動前の静止状態)では、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によってレンズ群20がレンズ位置調整層16の突起部162の上端面に対して押し付けられ、レンズ群20がレンズ位置調整層16によっても支持される。そして、この非駆動状態では、レンズ群20がZ軸に沿って変位可能な範囲(変位可能範囲)の最も−Z側の所定位置に配置されて静止する。
この所定位置は、例えば、撮像素子181において多数の画素回路が配列されている+Z側の面(以下「撮像面」とも称する)上に光学ユニットKBの焦点が配置されるような位置に設定される。ここで言う光学ユニットKBの焦点とは、+Z側から平行光線を光学ユニットKBに入射したときに、該光学ユニットKBから射出される光線が一点に集まる点のことを言う。なお、本実施形態では、光学ユニットKBが、本発明の「光学系」に相当する。
このように、非駆動状態では、レンズ群20は、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によってレンズ位置調整層16に対して押し付けられるため、カメラモジュール500に対して強い衝撃が付与される場合でも、レンズ群20の姿勢が保持される。
アクチュエータ層15は、+Z方向への駆動変位を発生させる変位発生部を有し、レンズ群20の−Z側に配置されている。変位発生部は、レンズ群20の−Z側に突出した第1突起部201と接触し、変位発生部で生じる駆動変位は、第1突起部201を介してレンズ群20に伝達される。つまり、アクチュエータ層15は、移動対象物であるレンズ群20を所定方向(ここでは、+Z方向)に移動させる。なお、変位発生部における+Z方向への駆動変位が小さくなっていく場面では、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によって、レンズ群20が所定方向とは反対方向(−Z方向)に移動する。
以上のように、カメラモジュール500では、移動対象物であるレンズ群20が、該レンズ群20を介して互いに対向する位置に配置された第1および第2平行ばね12,14と結合され、該第1および第2平行ばね12,14がレンズ群20に垂直な方向(+Z方向)に弾性変形しつつ、レンズ群20の姿勢を保持する。そして、レンズ群20は、アクチュエータ層15の変位発生部から駆動力を受けて、その位置をZ軸に沿って変位させる。
このように、カメラモジュール500に設けられた光学ユニットKBは、レンズ群20を該レンズ群20の光軸方向(+Z方向)に変位させることができ、カメラモジュール500をレンズ群20を変位させる駆動装置として機能させる。
<レンズ群について>
レンズ群20は、ガラス基板を基材としてウエハレベルで作製され、例えば、2枚以上のレンズを重ね合わせて成形される。本実施形態では、2枚の光学レンズを重ね合わせてレンズ群20が構成される場合について例示する。なお、本実施形態では、レンズ群20は、被写体からの光を撮像素子181に導く撮像レンズとして機能する。
図4および図5は、レンズ群20の断面模式図であり、矢印AR2の示す方向が+Z方向に対応する。図6は、レンズ群20の下面外観図であり、図7は、レンズ群20の上面外観図である。
図4および図5で示されるように、レンズ群20は、第1レンズG1を有する第1レンズ構成層LY1と、第2レンズG2を有する第2レンズ構成層LY2と、スペーサ層RBとを備える。そして、第1レンズ構成層LY1と第2レンズ構成層LY2とが、スペーサ層RBを介して結合されている。ここでは、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2の非レンズ部の外縁が略正方形の形状を有する。
なお、本実形態では、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2が、本発明の「レンズ層」に相当する。
また、図4〜図6で示されるように、第1レンズG1を有する第1レンズ構成層LY1の一方主面(ここでは、−Z側)には、レンズとして機能しない非レンズ部に第1突起部201が設けられている。更に、図4、図5および図7で示されるように、第2レンズG2を有する第2レンズ構成層LY2の一方主面(ここでは、+Z側)には、レンズとして機能しない非レンズ部に第2突起部202が設けられている。
また、図8は、スペーサ層RBの形状に着目して、スペーサ層RBを−Z側から見た図である。図8で示されるように、スペーサ層RBは、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2の非レンズ部の外縁に沿って設けられ、ZY断面の外縁および内縁の形状が矩形である環状の構成を有する。
そして、レンズ群20の光軸が、Z軸に沿った方向に設定されている。
<各機能層について>
以下では、カメラモジュール500を構成する各機能層の詳細について説明する。なお、各機能層については、−Z側の面を一主面と称し、+Z側の面を他主面と称する。
○撮像素子層18:
図3で示されるように、撮像素子層18は、光学ユニットKBを通過した被写体からの光を受光して、被写体の像に関する画像信号を生成する撮像素子181、その周辺回路、および撮像素子181を囲む外周部を備える部材である。また、撮像素子181は、多数の画素回路が配列されて構成される。
なお、撮像素子層18の一主面(−Z側の面)には、リフロー方式によるはんだ付けを行うためのはんだボールHBが設けられている。また、ここでは図示を省略しているが、撮像素子層18の一主面には、撮像素子181に対する信号の付与、および該撮像素子181からの信号の読み出しを行う配線を接続するための各種端子が設けられている。
○カバーガラス層17:
図3で示されるように、カバーガラス層17は、略平板状であり且つXY断面が略正方形の形状を有し、透明なガラス等によって構成される。このカバーガラス層17は、撮像素子層18の他主面(+Z側の面)に対して接合され、撮像素子181を保護する機能を有する。
なお、カバーガラス層17が撮像素子層18上に接合された状態で撮像素子基板178を構成する。
○レンズ位置調整層16:
レンズ位置調整層16は、樹脂材料を用いて構成されるとともに、撮像素子181とレンズ群20との間に配設され、且つ撮像素子181とレンズ群20との距離を調整する部材である。具体的には、レンズ位置調整層16は、非駆動状態におけるレンズ群20の位置(初期位置)を規定する。なお、レンズ位置調整層16は、例えば、樹脂をエッチングする手法等を用いて生成される。
図9は、レンズ位置調整層16の上面図である。図10は、レンズ位置調整層16の側面図である。
図9で示されるように、レンズ位置調整層16は、枠体161と突起部162とを備えている。
枠体161は、レンズ位置調整層16の外周部分を構成する略矩形の環状の部分であり、XY平面に略平行な板状の形状を有する。そして、枠体161は、Z軸に沿った方向に貫通する孔(貫通孔)16Hを形成し、枠体161を構成する+Y側の板状の部材および−Y側の板状の部材は、貫通孔16H側に出っ張った部分(凸部)161Tをそれぞれ有する。
また、枠体161の一主面は、隣接するカバーガラス層17に対して接合され、枠体161の他主面は、隣接するアクチュエータ層15(詳細には、アクチュエータ層15の枠体152(後述))と接合される。
突起部162は、枠体161を構成する凸部161Tの内縁近傍において+Z方向に立設されて構成されている。この突起部162は、XZ平面に略平行で且つ略長方形の盤面を有する板状の部分であり、突起部162の長手方向がX軸に略平行な方向とされ、突起部162の短手方向がZ軸に略平行な方向とされている。そして、突起部162の+Z側の端面は、レンズ群20が当接することで、該レンズ群20を初期位置に配置する機能を有する。
なお、本実施形態では、撮像素子181と移動対象物であるレンズ群20との間に設けられる突起部162が、本発明の「当接部」に相当する。
また、図9では、撮像素子181を構成する複数の画素回路が配列される領域(以下「画素配列領域」とも称する)、すなわち撮像素子181の前面(撮像面)の外縁が破線で示されている。図9で示されるように、撮像面は、(短辺の長さ):(長辺の長さ):(対角線の長さ)=3:4:5の関係が成立するように構成されている。
そして、突起部162は、被写体からレンズ群20を介して撮像素子181の画素配列領域に至る光路を、該画素配列領域の幅が最も狭い方向において挟む位置に配設されている。つまり、撮影への悪影響、および装置の大型化を招かないように、突起部162が設置される。
○アクチュエータ層15:
アクチュエータ層15は、金属またはシリコン(Si)等の基板上に、駆動力を発生させる変位素子(「アクチュエータ素子」とも称する)を設けた薄板状の部材である。図11は、アクチュエータ層15の上面図である。図12は、アクチュエータ層15の側面図である。
具体的には、図11で示されるように、アクチュエータ層15は、外周部を構成する枠体152と、枠体152の内側の中空部分に対して該枠体152から突設される2枚の板状の可動部151とを備えている。そして、可動部151の他主面側には、薄膜状のアクチュエータ素子153が設けられている。
アクチュエータ素子153としては、例えば、形状記憶合金(SMA)の薄膜が用いられる。この場合、基板上にシリカ等の絶縁層、金属のヒータ層、およびアクチュエータ素子層をスパッタリング法等を用いて形成した後に、記憶させたい形状の型に可動部151をセットし、所定温度(例えば、600℃)程度で加熱する処理(形状記憶処理)が施される。
SMAは、加熱によって所定の相変態温度を超えて所定の温度に達すると、予め記憶されている所定の縮み形状(記憶形状)に復元する特性を有する。このため、ヒータ層の通電によってSMAが加熱されると、該SMAは記憶形状となるように縮み変形を行い、可動部151の自由端FTが+Z方向に移動する(図12参照)。すなわち、可動部151の自由端FT側が、変位発生部として機能する。
なお、ヒータ層への通電は、撮像素子層18に設けられた電極から行われるが、該電極からヒータ層への導電は、例えば、アクチュエータ層15、レンズ位置調整層16、およびカバーガラス層17の側面に貼り付けられた薄型の導電部材(不図示)を介して行えば良い。
このように、本実施形態では、枠体152が可動部151の変位の基準となる部分(可動基準部)として機能し、アクチュエータ層15が駆動層として機能する。
アクチュエータ層15の枠体152は、第2平行ばね14の固定枠体141(図13参照)と接合される。該接合された状態では、各可動部151の自由端FT側が対応する第1突起部201とそれぞれ当接する。このため、各可動部151の自由端FTにおいて発生する変位が、各第1突起部201を介してレンズ群20に伝えられる。すなわち、各可動部151は、レンズ群20に対して+Z方向に力を付与することで、該レンズ群20を+Z方向に変位させる。
なお、可動部151の自由端FT側で発生する変位量は、SMAの加熱温度に応じて異なり、ヒータ層への通電量を制御することによって変位量が調整される。
また、SMAの変形に伴ってヒータ層も変形し、該ヒータ層の変形に応じてヒータ層の電気抵抗も変化する。このため、ヒータ層の電流抵抗値をモニタリングして変位量を制御しても良い。
○第2平行ばね14:
図13は、第2平行ばね14の下面外観図である。図14は、レンズ群20に接合された第2平行ばね14を示す図である。
図13で示されるように、第2平行ばね14は、固定枠体141と、弾性部142とを有する弾性部材であり、ばね機構を形成する層(弾性層)となっている。なお、本実施形態では、第2平行ばね14が、本発明の「板状の弾性部材層」を構成する。
固定枠体141は、第2平行ばね14の外周部を構成し、隣接するアクチュエータ層15の枠体152と接合される。
弾性部142は、固定枠体141との接続部PG1と、レンズ群20との接合部PG2とを有し、接続部PG1と接合部PG2とが板状部材EBで繋がれている。
すなわち、第2平行ばね14は、固定枠体141において隣接するアクチュエータ層15と接合される。また、図14で示されるように、第2平行ばね14は、弾性部142に設けられた接合部PG2においてレンズ群20と接合される。
なお、第1突起部201は、第2平行ばね14の固定枠体141と板状部材EBとの隙間を通って、アクチュエータ層15の自由端FT近傍と当接する。つまり、第2平行ばね14は、レンズ群20の第1突起部201と接触しないような形状を有する。
このため、レンズ群20が固定枠体141に対して+Z方向に移動されるにつれて、接続部PG1と接合部PG2とのZ方向の位置がずれ、板状部材EBは曲げ変形(たわみ変形)を生じて湾曲する。つまり、第2平行ばね14は、板状部材EBの弾性変形によって、レンズ群20の光軸方向(±Z方向)に弾性変形可能であり、ばね機構として機能する。
第2平行ばね14は、SUS系の金属材料またはりん青銅等を用いて作製される。例えば、SUS系の金属材料で第2平行ばね14を作製する場合は、フォトリソグラフィで平行ばねの形状を金属材料上にパターンニングし、塩化鉄系のエッチング液に浸してウエットエッチングを行うことによって、平行ばねのパターンが形成される。
○第2枠層13:
図3で示されるように、第2枠層13は、XY断面の外縁および内縁がそれぞれ略矩形状であるリング状の部材であり、Z軸に沿って貫通する中空部分を形成する。第2枠層13は、中空部分にレンズ群20が配置されることで、該レンズ群20を側方から囲む。なお、第2枠層13を構成する素材としては、樹脂やガラス等が挙げられ、第2枠層13は、金属金型を用いたいわゆるプレス法や射出成型法等によって製作される。
そして、第2枠層13の−Z側に位置する下端面(一主面)は、隣接する第2平行ばね14の固定枠体141と接合される。また、第2枠層の+Z側に位置する上端面(他主面)は、隣接する第1平行ばね12(詳細には、第1平行ばね12の固定枠体121(後述))と接合される。
○第1平行ばね12:
図13で示されるように、第1平行ばね12は、第2平行ばね14と同様の構成および機能を有する弾性部材であり、固定枠体121と弾性部122とを備えている。なお、本実施形態では、第1平行ばね12が、本発明の「板状の弾性部材層」を構成する。
固定枠体121の一主面は、隣接する第2枠層13の他主面と接合され、固定枠体121の他主面は、隣接する第1枠層11(詳細には、第1枠層11の−Z側の下端面(後述))と接合される。
図15は、レンズ群20に接合された第1平行ばね12を示す図である。図15で示されるように、弾性部122に設けられた接合部PG2は、レンズ群20の突起部202の+Z側の上端面と接合される。
このため、固定枠体121に対してレンズ群20が+Z方向に相対的に移動されると、板状部材EBにおいて弾性変形が発生し、第1平行ばね12は、ばね機構として機能する。
○第1枠層11:
図3で示されるように、第1枠層11は、第2枠層13と同様に、XY断面の外縁および内縁がそれぞれ略矩形状であるリング状の部材であり、Z軸に沿って貫通する中空部分を形成する。第1枠層11の中空部分は、レンズ群20が+Z方向に移動される際に、弾性変形する板状部材EBおよび突起部202が移動可能な空間として働く。なお、第1枠層11は、第2枠層13と同様な素材および製作方法によって形成される。
そして、第1枠層11の−Z側に位置する下端面(一主面)は、隣接する第1平行ばね12の固定枠体121と接合される。また、第1枠層の+Z側に位置する上端面(他端面)は、隣接する蓋層10(詳細には、蓋層の外周部近傍)と接合される。
○蓋層10:
図3で示されるように、蓋層10は、XY断面の外縁が略正方形であるとともに、略中央にZ軸に平行な方向に貫通する孔(貫通孔)10Hを有し、XY平面に略平行な盤面を有する板状の部材である。貫通孔10Hは、被写体からの光をレンズ群20を介して撮像素子181に導くための孔であり、この蓋層10は、平板状の樹脂材料をプレス加工する手法、あるいは樹脂材料をパターニングした後にエッチングする手法によって、貫通孔10Hが形成されて製作される。
なお、図3では、図示が省略されているが、蓋層10の貫通孔10Hからカメラモジュール500の内部にゴミ等が侵入しないように、蓋層10の上面(他主面)側には、適宜ガラス等で構成される透明な保護層が設けられる。
<カメラモジュールの製造工程>
ここで、カメラモジュール500の製造工程について詳述する。
図16は、カメラモジュール500の製造工程を示すフローチャートである。図16で示されるように、(工程A)レンズ群20の生成(ステップSP1)、(工程B)シートの準備(ステップSP2)、(工程C)組み立て治具の準備(ステップSP3)、(工程D)シートの第1の接合(ステップSP4)、(工程E)レンズ群20の取り付け(ステップSP5)、(工程F)シートの第2の接合(ステップSP6)、(工程G)撮像素子基板178の取り付け(ステップSP7)、および(工程H)ダイシング(ステップSP8)が順次に行われて、カメラモジュール500が製造される。以下、各工程について説明する。
○レンズ群20の生成(工程A):
ステップSP1では、レンズ群20が生成される。
まず、多数のレンズ群20がマトリックス状に配列されたウエハ(以下「レンズ群ウエハ」とも称する)が製作され、ダイシングによって、多数のレンズ群20が個片化されて、多数のレンズ群20が製作される。
レンズ群ウエハは、多数の第1レンズ構成層LY1が配列されたウエハ(第1レンズ構成層ウエハ)と、多数のスペーサ層RBが配列されたウエハ(スペーサ層ウエハ)と、多数の第2レンズ構成層LY2が配列されたウエハ(第2レンズ構成層ウエハ)とが積層されて、相互に接合されることで、製作される。
図17は、第1および第2レンズ構成層ウエハU20a,U20cを模式的に示した平面図である。図18は、スペーサ層ウエハU20bを模式的に示した平面図である。
図17で示されるように、第1レンズ構成層ウエハU20aは、多数の第1レンズ構成層LY1が第1の所定間隔でマトリックス状に配置されて一体的に構成される。また、第2レンズ構成層ウエハU20cは、多数の第2レンズ構成層LY2が第1の所定間隔でマトリックス状に配置されて一体的に構成される。
また、図18で示されるように、スペーサ層ウエハU20bは、多数のスペーサ層RBが第1の所定間隔でマトリックス状に配置されて一体的に構成される。つまり、スペーサ層ウエハU20bは、外縁が略正方形の多数の貫通孔が第1の所定間隔でマトリックス状に配置されて、格子状の構成を有している。
なお、第1レンズ構成層ウエハU20aと、スペーサ層ウエハU20bと、第2レンズ構成層ウエハU20cとが、この順番で積層されて、相互に接合された後に、図17および図18で示される破線に沿ってダイシングが行われることで、各レンズ群20が個片化される。
ここで、第1および第2レンズ構成層ウエハU20a,U20cの作製方法について説明する。なお、第1レンズ構成層ウエハU20aにおける各第1レンズ構成層LY1の作製方法は同様であり、また、第2レンズ構成層ウエハU20cにおける各第2レンズ構成層LY2の作製方法も同様である。このため、ここでは、各第1および第2レンズ構成層LY1,LY2の製作に着目して説明する。
第1および第2レンズ構成層LY1,LY2は、ガラス基板を基材としていずれも同様な手法にて作製される。図19は、第1レンズG1を有する第1レンズ構成層LY1の作製の様子を示す図であり、図20は、第2レンズG2を有する第2レンズ構成層LY2の作製の様子を示す図である。
図19で示されるように、ウエハ状の透明な基板20BSを準備する。この基板20BSの素材としては、いわゆるテンパックス(登録商標)等のガラスや、いわゆるPPMA等の樹脂等の透明な材質が挙げられる。
次に、基板20BSの両面それぞれに透明度の高いアクリル系またはエポキシ系の紫外線(UV)硬化樹脂が塗布される。そして、基板20BSの上面から第1レンズG1の一方の曲面の形状を有する透明のレンズ成型用型20CAが所定の圧力で押し当てられるとともに、基板20BSの下面から第1レンズG1の他方の曲面の形状および第1突起部201の形状を有する透明のレンズ成型用型20CBが所定の圧力で押し当てられる。このとき、紫外線UV1が照射されて、基板16BSの各面にポリマーレンズGP1,GP2および第1突起部201がそれぞれ形成される。このような方法により、第1レンズ構成層ウエハU20aが製作される。なお、第1突起部201の先端部は、アクチュエータ層15に当接する面となる。
また、図20で示されるように、基板20BSの両面それぞれに透明度の高いアクリル系またはエポキシ系の紫外線(UV)硬化樹脂が塗布される。そして、基板20BSの上面から第2レンズG2の一方の曲面の形状および第2突起部202の形状を有する透明のレンズ成型用型20CCが所定の圧力で押し当てられるとともに、基板20BSの下面から第2レンズG2の他方の曲面の形状を有する透明のレンズ成型用型20CDが所定の圧力で押し当てられる。このとき、紫外線UV1が照射されて、基板16BSの各面にポリマーレンズGP3,GP4および第2突起部202がそれぞれ形成される。このような方法により、第2レンズ構成層ウエハU20cが製作される。なお、第2突起部202の先端部は、第1平行ばね12に接合される面となる。
また、スペーサ層ウエハU20bは、例えば、ウエハ状のガラス基板がエッチング等によって加工されて製作される。
このようにして製作された第1および第2レンズ構成層ウエハU20a,U20cならびにスペーサ層ウエハU20bには、2カ所以上の所定の箇所に位置合わせのためのアライメントマークが形成されている。
そして、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2の間に、スペーサ層RBが挟まれるように、一体のレンズ群20へと組み上げられる。
具体的には、第1レンズ構成層ウエハU20aと、スペーサ層ウエハU20bと、第2レンズ構成層ウエハU20cとが、マスクアライナー等を用いてそれぞれのアライメントマークが確認されながら、アライメントされて接合される。このとき、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2ならびにスペーサ層RBが、レンズ群20の構成を成す。
なお、3つのウエハU20a〜U20cの接合方法としては、例えば、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2と接合させるスペーサ層RBの上下面にUV硬化層を設け、紫外線を照射することで接合する手法、あるいは、スペーサ層RBの上下面に不活性ガスのプラズマを照射し、スペーサ層RBの表面を活性化したまま張り合わせて接合する手法(表面活性化接合法)等が採用される。
また、カメラモジュール500に絞りを形成する場合は、例えば、別途黒色に色づけされた樹脂材料等で絞りレイヤーを構成する手法等が用いられる。
このようにして、多数のレンズ群20がマトリックス状に配列されたウエハ(レンズ群ウエハ)が製作され、更に、ダイシングによって、個片化された多数のレンズ群20が製作される。
○シートの準備(工程B):
ステップSP2では、カメラモジュール500を構成する各機能層に係るシートが、層ごとに形成される。図21は、準備するシートの構成例を示す平面図である。なお、ここでは、ウエハレベルの円盤状のシートが準備されるものとする。
機能層ごとのシートには、該機能層に係る部材に相当するチップがマトリックス状に所定配列で多数形成されている。
例えば、図21で示されるように、第1枠層11のシート(第1枠層シート)U11には、第1枠層11に相当するチップが所定配列で多数形成される。なお、ここでは、「所定配列」という表現を、多数のチップを所定の方向に所定の間隔で配列した状態を含む意味で用いている。
第1枠層シートU11は、第1枠層11に相当するチップの側面どうしが相互に繋がった格子状の形状を有する。この第1枠層シートU11は、樹脂材料やガラス等で構成される。
例えば、第1枠層シートU11が、樹脂材料で構成される場合には、該第1枠層シートU11は、金属金型を用いたプレス成型や射出成型等の方法によって製作される。また、第1枠層シートU11が、ガラス等で構成される場合には、該第1枠層シートU11は、例えば、金属製またはセラミック製のシャドウマスクを用いたいわゆるブラスト加工によって製作される。
また、レンズ位置調整層16のシート(レンズ位置調整層シート)U16は、レンズ位置調整層16に相当するチップが所定配列で多数形成される。該レンズ位置調整層シートU16は、レンズ位置調整層16に相当するチップの側面どうしが相互に繋がった形状を有する。このレンズ位置調整層シートU16は、樹脂材料等で構成される。
例えば、レンズ位置調整層シートU16の形状を有する金型を製作し、その金型に樹脂を流し込んで、樹脂を鋳型ごと加熱した後に、冷却することで、該レンズ位置調整層シートU16が製作される。なお、射出成型等を用いて、レンズ位置調整層シートU16が製作されても良い。
このように、ステップSP2では、第1枠層シートU11およびレンズ位置調整層16と同様に、蓋層10、第1平行ばね12、第2枠層13、第2平行ばね14、およびアクチュエータ層15の各機能層に係るチップがそれぞれ所定配列で多数形成された各シートU10,U12〜U15、ならびにカバーガラス層17と撮像素子層18とが接合されて形成される撮像素子基板178に係るチップを含むシート(撮像素子基板シート)U178がそれぞれ準備される。つまり、8枚のシートU10〜16,U178が準備される。
○組み立て治具の準備(工程C):
ステップSP3では、組み立て治具300が準備される。
図22は、組み立て治具300のうち、各カメラモジュール500の製作に使用される部分に着目した図である。組み立て治具300は、平板状の基台上に略同一の形状を有する多数の突起部301が所定配列で設けられて構成されている。
なお、組み立て治具300には、2カ所以上の所定の箇所に位置合わせのためのアライメントマークが形成されている。また、突起部301の上面は、平板状の基台の主面に対して略平行となるように構成されている。
○シートの第1の接合(工程D):
ステップSP4では、準備された8枚のシートU10〜16,U178のうちの3枚のシートU11〜U13が接合される。
図23は、ステップS4において3枚のシートU11〜U13が積層されて接合される様子、ステップS5においてレンズ群20が取り付けられる様子、ステップS6において4枚のシートU10,U14〜U16が積層されて接合される様子、およびステップSP7において撮像素子基板シートU178が接合される様子を合わせて模式的に示す図である。
ステップSP4では、図23で示されるように、第1枠層シートU11、第1平行ばねシートU12、および第2枠層シートU13について、各シートU11〜U13に含まれる各チップが互いに積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、各シートU11〜U13が接着剤等を用いて接合される。
図24〜図26は、各シートU11〜U13が積層されて接合される様子を、1つのカメラモジュール500を構成する各チップに着目して示した図である。なお、図24〜図26では、工程の便宜上、図3で示されたカメラモジュール500とは上下が反転された状態で示されている。
図24で示されるように、組み立て治具300の基台上の所定位置に対して各第1枠層11が載置されるように、組み立て治具300上に第1枠層シートU11が載置される。図24では、組み立て治具300上に第1枠層シートU11が運ばれてくる際における第1枠層シートU11の移動方向が矢印YJ1で示されている。
次に、図25で示されるように、第1枠層11の一主面上に、第1平行ばね12の外周部を構成する固定枠体121が接合されることで、第1枠層シートU11に対して第1平行ばねシートU12が接合される。
具体的には、第1枠層11の一主面に対して、固定枠体121が矢印YJ2で示される方向に押し付けられて、固定枠体121の他主面と第1枠層11の一主面とが接合される。なお、このとき、第1平行ばね12の接合部PG2が、組み立て治具300の突起部301の上面に当接することで、第1平行ばね12の略平板状の形態が保持される。
更に、図26で示されるように、第1平行ばね12の外周部を構成する固定枠体121の一主面上に、第2枠層13の他主面が接合されることで、第1平行ばねシートU12に対して、第2枠層シートU13が接合される。
具体的には、第1平行ばね12の固定枠体121の一主面に対して、第2枠層13が矢印YJ3で示される方向に押し付けられて、固定枠体121の一主面と第2枠層13の他主面とが接合される。
○レンズ群の取り付け(工程E):
図27は、レンズ群20が取り付けられる様子を示す図である。
ステップSP5では、図27で示されるように、ステップSP4で製作されたユニットの各第2枠層13の中空部分に、ステップSP1で生成されたレンズ群20が、所定のマウンターによって取り付けられる。つまり、格子状の形状を有する第2枠層シートU13の各空隙に、レンズ群20がそれぞれ挿入される。
具体的には、レンズ群20の2本の第2突起部202の端面が、第1平行ばね12の接合部PG2に対してそれぞれ接合される。このとき、レンズ群20が矢印YJ4で示される方向に接合部PG2に対して押し付けられつつ、第2突起部202の端面が、接合部PG2の一主面側に対して接合される。
なお、この接合手法としては、レンズ群20の第2突起部202の端面に紫外線の照射によって硬化する接着剤(紫外線硬化接着剤)を予め塗布しておき、レンズ群20の第2突起部202の端面が第1平行ばね12の接合部PG2に対して当接させた状態で、紫外線の照射によって接合する手法等が挙げられる。
○シートの第2の接合(工程F):
ステップSP6では、図23で示されるように、ステップSP2で準備された8枚のシートU10〜16,U178のうちの4枚のシートU10,U14〜U16が接合される。
具体的には、ステップSP6では、ステップSP5までに生成されたユニットの一主面側に対して、第2平行ばねシートU14、およびアクチュエータ層シートU15に含まれる各チップが、第2枠層シートU13に含まれる各チップに対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、各シートU14,U15が順次に接着剤等を用いて接合される。
また、第1枠層シートU11の他主面側に対して、蓋層シートU10に含まれる各チップが、第1枠層シートU11に含まれる各チップに対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、この状態で、第1枠層シートU11の他主面側に対して、蓋層シートU10が接着剤等を用いて接合される。
更に、アクチュエータ層シートU15の一主面側に対して、レンズ位置調整層シートU16に含まれる各チップが、アクチュエータ層シートU15に含まれる各チップに対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、この状態で、アクチュエータ層シートU15の他主面側に対して、レンズ位置調整層シートU16が接着剤等を用いて接合される。
図28〜図31は、各シートU10,U14〜U16が積層されて接合される様子を、1つのカメラモジュール500を構成する各チップに着目して示した図である。なお、図28および図29では、図24〜図26と同様に、工程の便宜上、図3で示されたカメラモジュール500とは上下が反転された状態で示されている。これに対して、図30および図31では、図3で示されたカメラモジュール500と上下が同一の状態で示されている。
図28で示されるように、第2枠層13およびレンズ群20の一主面側に第2平行ばね14が接合されるように、第2枠層シートU13の一主面上に第2平行ばねシートU14が接合される。
具体的には、第2枠層13の一主面に対して、第2平行ばね14の固定枠体141が矢印YJ5で示される方向に押し付けられつつ、該固定枠体141の他主面が接着剤等によって第2枠層13の一主面に対して接合される。このとき、レンズ群20の第1レンズ構成層LY1の非レンズ部に対して、第2平行ばね14の接合部PG2が接着剤等によって接合される。
次に、図29で示されるように、第2平行ばね14の一主面にアクチュエータ層15が接合されるように、第2平行ばねシートU14の一主面上にアクチュエータ層シートU15が接合される。
具体的には、第2平行ばね14の固定枠体141の一主面に対して、アクチュエータ層15の枠体152が矢印YJ6で示される方向に押し付けられつつ、該枠体152の他主面と固定枠体141の一主面とが接着剤等によって接合される。
更に、このとき、アクチュエータ層15の各可動部151の自由端FT側が対応する第1突起部201とそれぞれ当接し、各可動部151の自由端FTが、−Z側に対応する方向に押し上げられた状態となる。
次に、図30で示されるように、第2平行ばねシートU14上にアクチュエータ層シートU15が接合されて形成されたユニットが、組み立て治具300から取り外されて、該ユニットに対して蓋層シートU10が接合される。なお、該ユニットが組み立て治具300から取り外される際には、レンズ群20が、第1および第2平行ばね12,14によって保持されているため、該レンズ群20が宙に浮いた様な状態となる。
また、このとき、アクチュエータ層シートU15まで接合されたユニットの上下が反転されて、第1枠層11の他主面に対して、蓋層10の外周部が矢印YJ7で示される方向に押し付けられつつ、第1枠層11の他主面と蓋層10の外周部の一主面とが接着剤等によって接合される。
更に、図31で示されるように、アクチュエータ層15の枠体152の一主面にレンズ位置調整層16の枠体161が接合されるように、アクチュエータ層シートU15の一主面に対してレンズ位置調整層シートU16が接合される。
具体的には、蓋層シートU10まで接合されて形成されたユニットが、レンズ位置調整層シートU16の他主面上に載置され、該ユニットが、矢印YJ8で示される方向に押し下げられつつ、レンズ位置調整層シートU16の他主面と、アクチュエータ層シートU15の一主面とが接着剤等によって接合される。
このとき、レンズ位置調整層16の突起部162の上端面が、レンズ群20の第1レンズ構成層LY1の非レンズ部の一部分に接触し、該レンズ群20が蓋層10側へと押し上げられる。また、アクチュエータ層15の可動部151が第1突起部201によって押し下げられる力が低減されて、第1突起部201によって押し下げられていたアクチュエータ層15の可動部151の自由端FTが+Z方向に上昇する。そして、可動部151が弾性力をほとんど生じさせない、すなわち可動部151の形状が略平板状となる。
但し、第1突起部201と自由端FTとが当接した状態が保持されるように、第1突起部201および突起部162のZ軸に沿った延設距離が設定される。このような設定により、可動部151を変形させて自由端FTを+Z方向に変位させる際に、自由端FTが第1突起部201に対して当接せず、空振りしてしまう非効率な動作が防止される。
更に、このとき、第1および第2平行ばね12,14ともに、接続部PG1に対する接合部PG2の+Z方向の位置のずれ、すなわち板状部材EBの曲げ変形(たわみ変形)が大きくなる。つまり、各接合部PG2が蓋層10側へと変位するように、各板状部材EBが弾性的に変形し、応力(弾性力)がチャージされた状態となる。
したがって、この各板状部材EBにおいて発生した弾性力によって、レンズ位置調整層16の突起部162の上端面に対して、レンズ群20が押し付けられる。このレンズ群20の突起部162に対する押し付け力は、ユーザーによるカメラモジュール500の保持姿勢に拘わらず、レンズ群20のチルト量等の姿勢および位置のずれの発生を抑制する。
○撮像素子基板の取り付け(工程G):
ステップSP7において、レンズ位置調整層16が接合されて形成されたユニットのレンズ位置調整層16の枠体161に対して、撮像素子基板178の外周部が接合されるように、レンズ位置調整層シートU16の一主面に対して、撮像素子基板シートU178の他主面が接合される。
○ダイシング(工程H):
ステップSP8では、多数のレンズ群20がそれぞれ挿入され、8つのシートU10〜U16,U178を積層して形成された積層部材が、ダイシングテープ等で保護された後、ダイシング装置によってチップごとに切り離される。このとき、多数のカメラモジュール500が完成される。
<カメラモジュールにおけるレンズ駆動>
カメラモジュール500では、上述したように、非駆動状態において、第1および第2平行ばね12,14の弾性力により、レンズ群20がレンズ位置調整層16に対して押し付けられて、該レンズ群20が初期位置に配置される。このとき、カメラモジュール500は、該カメラモジュール500を基準として、無限遠に位置する被写体に対して合焦する。
そして、アクチュエータ層15の可動部151が変形することで、自由端FTが第1突起部201を+Z方向に押す。そして、第1および第2平行ばね12,14の弾性力に抗して、可動部151がレンズ群20を+Z方向に押し上げる。このとき、レンズ群20と撮像素子181との距離が変更され、該カメラモジュール500を基準として、種々の距離に位置する被写体に対して合焦させることが可能なオートフォーカス(AF)制御が実現される。
上述したように、アクチュエータ層15のアクチュエータ素子153に、形状記憶合金(SMA)の薄膜が用いられる場合には、アクチュエータ層15に設けられたヒータ層の通電による加熱によって、アクチュエータ素子153が縮み変形を行う。そして、可動部151の自由端FTが+Z方向に変位する。なお、可動部151の自由端FT側で発生する変位量は、SMAの加熱温度に応じて異なり、該変位量は、ヒータ層への通電量の制御によって調整される。
ここでは、SMAの変形に伴う該ヒータ層の変形に応じてヒータ層の電気抵抗も変化するため、該ヒータ層の電流抵抗値をモニタリングして、自由端FTの変位量、すなわちレンズ群20の変位量を制御することが可能である。
また、カメラモジュール500では、第1枠層11のZ軸に沿った厚みが、レンズ群20が移動する空間、すなわちレンズ群20のZ軸に沿った移動可能な範囲(ストローク)を確保する。そして、第2突起部202のZ軸に沿った延設距離は、レンズ位置調整層16がアクチュエータ層15に対して接合される際にレンズ群20が+Z方向に押し上げられる距離と、レンズ群20が+Z方向に移動可能な距離(移動可能距離)とを加算した距離以上とされている。
以上のように、本発明の実施形態に係るカメラモジュール500では、レンズ群20の移動を規制する第1および第2平行ばね12,14を有し、レンズ群20の移動によってAF制御(合焦制御)が実現される。そして、非駆動状態では、第1および第2平行ばね12,14により、レンズ群20がレンズ位置調整層16に対して押し付けられており、アクチュエータ層15の可動部151が変形すると、第1および第2平行ばね12,14の弾性力に抗して、レンズ群20が移動する構成となっている。
このため、第1および第2平行ばね12,14の弾性力に抗して移動対象物に相当するレンズ群20を移動させるための空間を確保する目的で、カメラモジュール500のZ軸に沿った方向(光軸方向)の厚みをあまり大きくする必要がない。また、特に、非駆動状態においてカメラモジュール500の姿勢が種々変更されても、レンズ群20の傾き等が抑制されるため、レンズ群20の姿勢が安定化される。したがって、装置の大型化が抑制されつつ、レンズが変位可能となり、且つレンズの姿勢の安定化が実現される。
また、カメラモジュール500が複数の層が積層されて構成されるため、小型で且つ薄型のカメラモジュール500が実現される。したがって、装置の大型化が抑制されつつ、レンズの変位とレンズの姿勢の安定化とが図られる。
また、撮像素子181とレンズ群20との間に、レンズ群20が当接する突起部162を有するレンズ位置調整層16が別途設けられる。このため、レンズ群20を初期位置に設定するために、レンズ群20を当接させる部分(当接部)を容易に製作することができる。
また、非駆動状態において、レンズ群20がレンズ位置調整層16に対して当接することで、カメラモジュール500を基準として無限遠に位置する被写体に対して合焦するように、該レンズ群20が所定位置に配置される。
このため、無限遠に存在する被写体に対して合焦する状態でレンズの姿勢を安定化させることができる。したがって、例えば、レンズ群20を合焦制御の初期状態として一般的に採用される所定位置に容易且つ精度良配置することができる。また、各層を接合させていくだけで、その後の特別な調整動作を行うことなく、カメラモジュール500を基準として無限遠に位置する被写体に対して合焦するように、レンズ群20を所定位置に配置することができる。
また、被写体からレンズ群20を介して撮像素子181の画素配列領域に至る光路を、該画素配列領域の幅が最も狭い方向において挟む位置に、突起部162が配設されている。このため、撮影への悪影響、および装置の大型化を招くことなく、当接部に相当する突起部162を設置することができる。
<変形例>
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
◎例えば、上記実施形態では、非駆動状態においてレンズ群20が当接して該レンズ群20を初期位置に配置するレンズ位置調整層16を設けたが、これには限られない。例えば、レンズ位置調整層16を設けることなく、該レンズ群20を初期位置に配置するための構造をレンズ群20自身に設けても良い。以下、具体例を挙げて説明する。
図32は、本発明の変形例に係るカメラモジュール500Aの断面模式図である。
図32で示されるように、変形例に係るカメラモジュール500Aは、上記実施形態に係るカメラモジュール500からレンズ位置調整層16が取り除かれ、レンズ群20が構成の異なるレンズ群20Aに変更されたものとなっている。なお、レンズ群20がレンズ群20Aに変更されたことに伴って、光学ユニットKBが光学ユニットKBAに変更されている。また、変形例に係る携帯電話機100Aは、カメラモジュール500Aを備えた第1の筐体200Aを有する。その他の部分については、上記実施形態に係る携帯電話機100と本変形例に係る携帯電話機100Aとは同様な構成を有するため、同じ符号付して説明を省略し、異なる部分について、以下説明する。
図33は、レンズ群20Aの下面外観図である。
図32および図33で示されるように、レンズ群20Aは、上記実施形態に係るレンズ群20の第1レンズ構成層LY1の非レンズ部の一主面に、2本の第1突起部201とは別に4本の第3突起部203が追加された構成を有する。つまり、第3突起部203は、第1レンズG1と一体的に構成されている。
第3突起部203は、例えば、樹脂等によって構成され、第3突起部203のZ軸に沿った延設距離は、第1突起部201のZ軸に沿った延設距離よりも長くなっている。そして、第3突起部203については、例えば、第1レンズ構成層LY1が製作される際に、基板16BSの一主面側に第1突起部201とともに、該第1突起部201と同様な手法で形成するようにすれば良い。
図34は、レンズ群20Aに接合された第2平行ばね14を示す図である。図34で示されるように、第3突起部203は、第2平行ばね14の板状部材EBと接触しないように設けられる。
また、図32で示されるように、非駆動状態において、第3突起部203の先端部は、カバーガラス層17の他主面に対して当接する。
詳細には、カバーガラス層17が、アクチュエータ層15に対して接合される際に、カバーガラス層17の他主面が第3突起部203の先端部に当接し、該第3突起部203が+Z側に押し上げられる。このとき、レンズ群20Aが+Z側に押し上げられることで、第1および第2平行ばね12,14の板状部材EBが、蓋層10側へ変形する。
このため、非駆動状態においては、板状部材EBの変形の反作用として、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によってレンズ群20Aが押し下げられ、第3突起部203が、カバーガラス層17の他主面に対して押し付けられることで、レンズ群20Aが所定位置に配置される。なお、本変形例では、カバーガラス層17の他主面が、レンズ群20Aが当接して該レンズ群20Aを初期位置に配置させる部分、すなわち本発明の「当接部」に相当する。
このような構成を採用しても、上記実施形態と同様に、第1および第2平行ばね12,14の弾性力に抗して移動対象物に相当するレンズ群20Aを移動させるための空間を確保する目的で、カメラモジュール500AのZ軸に沿った方向(光軸方向)の厚みをあまり大きくする必要がない。また、特に、非駆動状態においてカメラモジュール500Aの姿勢が種々変更されても、レンズ群20Aの傾き等が抑制されるため、レンズ群20の姿勢が安定化される。したがって、装置の大型化を抑制しつつ、レンズが変位可能であり且つレンズの姿勢の安定化を図ることができる。
また、レンズ群20Aの第3突起部203が、当接部に相当するカバーガラス層17の他主面に対して当接するような構成を有する。このため、カメラモジュール500Aを構成する層の数の増加に伴う装置の大型化が抑制される。また、カメラモジュール500Aの製造コストの低減を図ることも可能となる。
また、カバーガラス層17の他主面に対して当接する第3突起部203と、第1レンズG1とが一体的に構成される。このため、第3突起部203を比較的容易且つ精度良製作することができる。なお、第2平行ばね14に係る応力設計に合わせて、第2平行ばね14に接触しないように、第3突起部203を適宜形成することも容易に可能である。
但し、例えば、撮像素子基板178が配列された撮像素子基板シートU178が取り付けられる前のユニットの状態で、客先に出荷し、撮像素子基板シートU178の取り付け以降の工程が客先で行われる場合には、レンズ群20Aが、カバーガラス層17によって保持されていない不安定な状態で、運搬されることになる。
このように、撮像素子基板シートU178の取り付け以降の工程が客先で行われる場合には、上記実施形態のように、多数のレンズ位置調整層16が配列されたレンズ位置調整層シートU16が接合されたユニットの状態で、客先に出荷した方が、レンズ群20が、レンズ位置調整層16によって保持されて安定な状態で、運搬されるため、好ましい。具体的には、例えば、第1および第2平行ばね12,14の応力集中による塑性変形等の不具合の発生が抑制されるため、好ましい。
また、樹脂の種類により、成型によって製作可能な形状に係るアスペクト比の限界がある。このようなアスペクト比の限界を考慮すると、本変形例のように、Z軸に沿った延設距離が長い、すなわちアスペクト比の大きな第3突起部203を有するレンズ群20Aを製作するよりも、上記実施形態のように、いわゆる樹脂等を用いたブラスト加工やエッチング等によって製作可能なレンズ位置調整層16を採用する方が、製造上好ましい。
◎また、上記実施形態では、非駆動状態において、レンズ群20がレンズ位置調整層16に対して当接することで、カメラモジュール500を基準として無限遠に位置する被写体に対して合焦するように、レンズ群20が所定位置に設置されたが、これに限られない。例えば、レンズ群20がレンズ位置調整層16に対して当接する所定位置が、レンズ群20の焦点が撮像素子181の撮像面上に来るようなレンズ群20の位置よりも、撮像素子181に近い位置であっても良い。
図35は、上記実施形態に係るレンズ群20の焦点と撮像素子181との位置関係を模式的に示す図であり、図36は、本変形例に係るレンズ群20の焦点と撮像素子181との位置関係を模式的に示す図である。
上記実施形態では、図35で示されるように、レンズ群20がレンズ位置調整層16に対して当接することで、所定位置に配置されている場合には、レンズ群20の焦点FPが、撮像素子181の撮像面上に配置される。これに対して、本変形例では、図36で示されるように、レンズ群20がレンズ位置調整層16に対して当接することで、所定位置に配置されている場合には、レンズ群20の焦点FPが、撮像素子181の撮像面よりもレンズ群20とは反対側の位置に配置される。
このような構成を採用することで、製作時の各種の誤差により、無限遠に存在する被写体に対して合焦する状態に設定できなくなる不具合の発生を防止することができる。また、各層を接合させていくだけで、その後の特別な調整動作を行うことなく、カメラモジュール500を基準として無限遠に位置する被写体に対して合焦する位置よりも、撮像素子181側の所定位置に、レンズ群20を配置することができる。
なお、レンズ群20の初期位置は、カメラモジュール500から非常に近い位置に存在する被写体に対して合焦するような該レンズ群20の位置であっても良い。
◎また、上記実施形態では、レンズ群20は、第1および第2レンズG1,G2を備えて構成されたが、これに限られず、例えば、1つのレンズを有する光学系であっても良い。すなわち、移動対象物である光学系は、1以上の光学レンズを含めば良い。
◎また、上記実施形態では、レンズ群20の移動によって、合焦制御が行われたが、これに限られず、例えば、レンズ群20の移動によって、いわゆるズーム動作が実現されても良い。
◎また、上記実施形態では、アクチュエータ素子153として、SMAが用いられたが、これに限られず、例えば、いわゆるバイメタル(Bi-metallic strip)が用いられても良い。アクチュエータ素子にバイメタルを採用した場合には、SMAの代わりに、基板とは熱膨張率が異なる素材の膜を形成すれば良い。つまり、可動部が、基板と、該基板上に形成され且つ該基板とは熱膨張率が異なる薄膜とを有して構成されても良い。
具体例としては、Si製の可動部の基板の一主面側に、アルミニウムやニッケル等の金属素材の層(金属層)が形成されるような構成が挙げられる。このような構成では、ヒータ層への通電により、基板と金属層とが加熱されると、熱膨張率の差によって、可動部が変形し、該可動部の自由端が+Z方向に変位する。
そして、アクチュエータ素子にバイメタルを用いた場合にも、上記実施形態と同様な効果が得られる。なお、意図せずして、環境温度の変化に比例して可動部の自由端が変位しようとする。しかしながら、例えば、非駆動状態において第1および第2平行ばねによってレンズ群20がレンズ位置調整層16に対して−Z方向に押し付けられる力を、想定される使用環境温度の上限で可動部151がレンズ群20に及ぼす力よりも大きくしておけば、レンズ群20の姿勢が崩れない。
また、アクチュエータ素子として、例えば、無機圧電体(PZT)または有機圧電体(PVDF)等の圧電体素子の薄膜(圧電体薄膜)を用いても良い。つまり、可動部が、基板と、該基板上に形成される圧電体素子の薄膜とを有して構成されても良い。なお、アクチュエータ素子として圧電体薄膜を用いる場合は、Si基板上に電極、圧電体薄膜、および電極がこの順序でスパッタリング法等を用いて形成され、高電界をかけたポーリングが行われる。
◎また、上記実施形態では、移動対象物であるレンズ群20が、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2を含んで構成されたが、これに限られない。例えば、移動対象物が、1以上のレンズ層を含む1以上の層によって構成されても良い。
◎また、上記実施形態では、レンズ群20の移動を規制する部材として、板状の第1および第2平行ばね12,14が採用されたが、これに限られない。例えば、つる巻き状のばね等を含む各種弾性部材が採用されても良い。
◎また、上記実施形態では、カメラモジュール500は、ウエハレベルで複数の機能層を積層することで得られる、いわゆるウエハレベルカメラの構成を示したが、本発明の技術的思想は、各機能層が層状のものでない撮像装置を含む撮像装置一般に対して適用可能である。
すなわち、図3に示したカメラモジュール500は、レンズ群20をZ方向に駆動する手段として、アクチュエータ層15を使用し、当該アクチュエータ層15は、金属またはSi等の基板上に、駆動力を発生させる薄膜状のアクチュエータ素子153を設けた薄板状の部材として説明したが、これに限定されるものではなく、積層圧電素子を用いてレンズ群を駆動させても良い。また、レンズ群は、レンズ群20のように、ガラス基板を基材としてウエハレベルで作製されたものに限定されず、射出成形等で作製した樹脂レンズを用いても良い。
このような構成を採用したカメラモジュール500Aの断面模式図を図37に示す。なお、図37においては、図3に示したカメラモジュール500と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図37で示されるように、カメラモジュール500Aは、撮影光学系としてのレンズ群20Aが移動可能に設けられている光学ユニットKB1と、被写体像に関する撮影画像を取得する撮像部PBとを有している。
撮像部PBは、例えば、COMSセンサまたはCCDセンサ等の撮像素子181を有する撮像素子層18Aと、カバーガラス17Aとが+Z方向にこの順序で積層された構成を有する。なお、カバーガラス17Aが、赤外線(IR)をカットするフィルタ層を含むようにしても良い。
光学ユニットKB1は、蓋10A、第1枠11A、第1平行ばね(上層平行ばね)12A、第2枠13A、第2平行ばね(下層平行ばね)14A、第3枠150およびレンズ群20Aを備えて構成される。第1平行ばね12Aおよび第2平行ばね(下層平行ばね)14Aは、図13に示した、第1平行ばね層12および第2平行ばね層14と同じ平面形状を有するので、図示は省略する。
なお、蓋10A、第1枠11A、第2枠13A、第2平行ばね14Aおよび第3枠150の材質や形状は、それぞれ蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね層12、第2枠層13、第2平行ばね層14と同じとすれば良く、いずれもウエハ状態(ウエハレベルで)製作して、個片に分割する方法で形成しても良く、個々に独立して形成しても良い。
また、第3枠150の材質は、第1枠11Aや第2枠13Aと同じで良く、XY断面の外縁および内縁がそれぞれ略矩形状であるリング状の部材であり、Z軸に沿って貫通する中空部分を形成する形状である。
光学ユニットKB1では、第3枠150、第2平行ばね14A、第2枠13A、第1平行ばね12A、第1枠11A、および蓋10Aが+Z方向にこの順序で積層され、第2平行ばね14Aと第1平行ばね12Aとの間にレンズ群20Aが保持された構成を有している。そして、第1平行ばね12Aおよび第2平行ばね14Aと、積層圧電素子で構成されるアクチュエータ19とが互いに協働することで、レンズ群20AをZ軸に沿った方向に移動させる。
アクチュエータ19は、カバーガラス17A上のレンズの光束に干渉しない部分に、その変位発生部がレンズ群20Aの−Z側に突出した第1突起部201Aと接触するように配置され、変位発生部で生じる駆動変位は、第1突起部201Aを介してレンズ群20Aに伝達される。つまり、アクチュエータ19は、移動対象物であるレンズ群20Aを所定方向(ここでは、+Z方向)に移動させる。なお、変位発生部における+Z方向への駆動変位が小さくなっていく場面では、第1および第2平行ばね12Aおよび14Aの弾性力によって、レンズ群20Aが所定方向とは反対方向(−Z方向)に移動する。
なお、レンズ群20Aが+Z方向に移動していない非駆動状態(例えば駆動前の静止状態)では、レンズ群20AがZ軸に沿って変位可能な範囲(変位可能範囲)の最も−Z側の所定位置に配置されて静止する。
この所定位置は、例えば、撮像素子181において多数の画素回路が配列されている+Z側の撮像面上に光学ユニットKB1の焦点が配置されるような位置に設定される。
レンズ群20Aは、第1レンズ203および第2レンズ204で構成され、第1レンズ203が撮像部PB側に配置され、第2レンズ204が撮像部PBとは反対側となるように配置される。第1レンズ203および第2レンズ204は、射出成形等で構成された樹脂レンズであり、従来的な方法で製造することができ、両者は接着剤等を用いて接合されている。
第1レンズ203の一方主面(ここでは、−Z側)には、レンズとして機能しない非レンズ部に、−Z方向に突出する第1突起部201Aが非レンズ部と一体的に設けられている。第1突起部201Aは、第2平行ばね14Aの固定枠体141(図13)と板状部材EBとの隙間を通って、アクチュエータ19の変位発生部と当接する。つまり、第2平行ばね14Aは、レンズ群20Aの第1突起部201Aと接触しないような形状を有する。なお、第1レンズ203の非レンズ部に対して、第2平行ばね14Aの接合部PG2(図13)が接着剤等によって接合される。
また、第2レンズ204の一方主面(ここでは、+Z側)には、レンズとして機能しない非レンズ部に、+Z方向に突出する第2突起部202Aが非レンズ部と一体的に設けられている。第2突起部202Aは、カメラモジュール500の第2突起部202(図3)と同様に、その先端部が、第1平行ばね12Aに接着剤等によって接合されている。
次に、カメラモジュール500Aの製造工程について説明する。
まず、カバーガラス17Aと撮像素子層18Aとが接合されて形成される撮像素子基板178Aを準備する。この工程については、それぞれ個片のカバーガラス17Aおよび撮像素子層18Aを準備して、両者を接合する方法を採っても良いし、図23を用いて説明したように、ウエハレベルで撮像素子基板178Aを作製し、それを個片に切断する方法を採っても良い。
次に、撮像素子基板178のカバーガラス17A上に位置合わせをしながらアクチュエータ19を設置する。設置方法としては、接着剤による接合が一般的である。カバーガラス17A上には配線パターンが形成されており、ここに電圧を印加することによってアクチュエータ19を駆動する。
アクチュエータ19は、電圧を印加することによって伸縮する材料であるPZTなどの圧電素子と、この圧電素子の上下面に金属膜で形成される電極を配置したものを複数層積層することによって形成され、その形状は円柱状あるいは直方体状をなし、その端面が変位発生部となっている。
次に、アクチュエータ19を囲むようにカバーガラス17A上に第3枠150を配置し、その上端面に接着剤等を用いて第2平行ばね14Aを接合する。
その後、マウンター等の装置を用いてレンズ群20Aをモジュール内に設置する。レンズ群20Aは第2平行ばね14Aに接合されるが、レンズ群20Aの第1突起部201Aはアクチュエータ19の変位発生部と当接するだけで、接合はされない。
このように、カメラモジュール500Aにおいて、アクチュエータ19とレンズ群20Aは当接している状態にあり、アクチュエータ19はレンズ群20の駆動を、第1平行ばね12Aおよび第2平行ばね14Aはレンズ群20Aの光軸方向への平行性の確保と外部から衝撃を受けた場合のショック吸収の役割をそれぞれ担う構造となっている。
次に、第2平行ばね14A上に接着剤等を用いて第2枠13Aを接合し、その上端面に接着剤等を用いて第1平行ばね12Aを接合する。このとき、レンズ群20Aの第2突起部202Aは、その先端部が、第1平行ばね12Aに接着剤等によって接合される。
更に、第1平行ばね12A上に接着剤等を用いて第1枠11Aを接合し、その上端面に接着剤等を用いて蓋10Aを接合することでカメラモジュール500Aが完成する。
カメラモジュール500Aのオートフォーカス動作においてレンズ群20Aを駆動する際には、アクチュエータ19が第1突起部201Aを介してレンズ群20Aを+Z方向に移動させる。レンズ群20Aのオートフォーカス駆動は、カバーガラス17A上に形成された配線パターンを介してアクチュエータ19に電圧を印加することで行い、アクチュエータ19の変位量は電圧の値によって制御される。基本的には、アクチュエータ19に印加した電圧値と変位量は1対1に対応しているため、合焦位置への駆動はその位置に対応した電圧を印加すれば良いが、更に高精度なオートフォーカス駆動を行う場合には、レンズ群20AのZ方向での位置を検出する位置検出センサを設け、その検出値をアクチュエータ19へ印加する電圧値を制御する電圧制御装置等にフィードバックする構成としても良い。
◎なお、上記実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する一部分は、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。