以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の車両用前照灯システム100の構成概念図である。車両用前照灯システム100は、撮影ユニット102と前照灯ユニット210を中心に構成されている。前照灯ユニット210は、車両の車幅方向の端部に左側の前照灯ユニット210Lと右側の前照灯ユニット210Rを1灯ずつ配置している。本実施形態の前照灯ユニット210L,210Rは、例えば1つの光源から照射されるビームの一部を遮ることによりロービーム用配光パターンを形成し、遮らないときにハイビーム用配光パターンを形成する、いわゆる配光可変式前照灯である。
各前照灯ユニット210L,210Rに含まれる灯具ユニット10は、車幅方向と直交する車両前方に向く光軸を有する複数の配光パターンを形成する。各前照灯ユニット210L,210Rは、交通法規が左側通行である地域で利用する左通行ロービーム用配光パターンと、ハイビーム用配光パターンを含む。また、交通法規が右側通行である地域で利用する、いわゆる「ドーバーロービーム」と称される右通行ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターンの一部を遮光した片ハイ用配光パターン等を形成できる。各前照灯ユニット210L,210Rに含まれる灯具ユニット10が形成する複数の配光パターンのうち少なくとも1つには、当該配光パターンの照射位置を特定するための特徴要素が含まれている。本実施形態では、左通行ロービーム用配光パターンに特徴要素を含む例を示す。なお、特徴要素の詳細は後述する。
撮影ユニット102は、車両前方の画像フレームデータを取得する例えばCCDカメラで構成できる。撮影ユニット102は、例えばルームミラーの裏側ブラケットやフロントガラスの内側、ダッシュボードの上など車両前方を見渡せる車両センターライン上の位置に固定することが望ましい。撮影ユニット102の撮影範囲は、自車前方の領域で、少なくとの自車が走行する自車線と対向車線および路側を含み、ハイビーム用配光パターンの照射領域を含む範囲とすることが望ましい。また、片側複数車線の場合は、自車線と少なくとも自車線の左右の車線を含み、ハイビーム用配光パターンの照射領域を含む範囲とすることが望ましい。撮影ユニット102の画角は例えば左右に±20°とすることができる。撮影ユニット102は、撮影した画像フレームデータの配光パターンに含まれる特徴要素も併せて取得する。撮影ユニット102で撮影された画像フレームデータは、各前照灯ユニット210L,210Rの灯具ユニット10と撮影ユニット102との関連付けを実行する関連付制御部104に提供される。また、関連付制御部104は、灯具ユニット10と撮影ユニット102との関連付けの結果得られる新たな情報を各前照灯ユニット210L,210Rの照射制御部228に提供して、当該照射制御部228において配光パターンの形成制御が実行される。
図2は、前照灯ユニット210の内部構造を説明する概略断面図である。前述したように、前照灯ユニット210は車両の車幅方向の左右に1灯ずつ配置される配光可変式前照灯であり、その構造は実質的に左右同等なので代表して車両右側に配置される前照灯ユニット210Rの構造を説明する。前照灯ユニット210Rは、車両前方方向に開口部を有するランプボディ212とこのランプボディ212の開口部を覆う透明カバー214で形成される灯室216を有する。灯室216には、光を車両前方方向に照射する灯具ユニット10が収納されている。灯具ユニット10の一部には、当該灯具ユニット10の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218はランプボディ212の内壁面に立設されたボディブラケット220とネジ等の締結部材によって接続されている。したがって、灯具ユニット10は灯室216内の所定位置に固定されると共に、ピボット機構218aを中心として、例えば前傾姿勢または後傾姿勢等に姿勢変化可能となる。
また、灯具ユニット10の下面には、曲線道路走行時等に進行方向を照らす曲線道路用配光可変前照灯(Adaptive Front-lighing System:AFS)を構成するためのスイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は車両側から提供される操舵量のデータやナビゲーションシステムから提供される走行道路の形状データ、前方車と自車の相対位置の関係等に基づいて灯具ユニット10をピボット機構218aを中心に進行方向に旋回(スイブル:swivel)させる。その結果、灯具ユニット10の照射領域が車両の正面ではなく曲線道路のカーブの先に向き、運転者の前方視界を向上させる。スイブルアクチュエータ222は、例えばステッピングモータで構成することができる。スイブルアクチュエータ222を含む機構は、光軸を車幅方向に揺動させる光軸揺動機構として機能する。なお、スイブル角度が固定値の場合には、ソレノイドなども利用可能である。
スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。ユニットブラケット224には、ランプボディ212の外部に配置されたレベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。ロッド226aが矢印M方向に伸長した場合、灯具ユニット10はピボット機構218aを中心として後傾姿勢になるように揺動する。逆にロッド226aが矢印N方向に短縮した場合、灯具ユニット10はピボット機構218aを中心として前傾姿勢になるように揺動する。灯具ユニット10が後傾姿勢になると、光軸を上方に向けるレベリング調整ができる。また、灯具ユニット10が前傾姿勢になると、光軸を下方に向けるレベリング調整ができる。このような、レベリング調整をすることで車両姿勢に応じた光軸調整ができる。その結果、前照灯ユニット210による前方照射の到達距離を最適な距離に調整することができる。なお、レベリングアクチュエータ226を含む機構を光軸揺動機構ということもできる。
なお、このレベリング調整は、車両走行中の車両姿勢に応じて実行することもできる。例えば、車両が走行中に加速する場合は後傾姿勢となり、逆に減速する場合は前傾姿勢となる。したがって、前照灯ユニット210の照射方向も車両の姿勢状態に対応して上下に変動して、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで実行することで走行中でも前方照射の到達距離を最適に調整できる。これを「オートレベリング」と称することもある。
灯室216の内壁面、例えば、灯具ユニット10の下方位置には、灯具ユニット10の点消灯制御や配光パターンの形成制御を実行する照射制御部228が配置されている。図2の場合、前照灯ユニット210Rを制御するための照射制御部228Rが配置されている。この照射制御部228Rは、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226等の制御も実行する。
灯具ユニット10はエーミング調整機構を備えることができる。例えば、レベリングアクチュエータ226のロッド226aとユニットブラケット224の接続部分に、エーミング調整時の揺動中心となるエーミングピボット機構を配置する。また、ボディブラケット220とランプブラケット218の接続部分に、車両前後方向に進退する一対のエーミング調整ネジを車幅方向に間隔をあけて配置する。例えば2本のエーミング調整ネジを前方に進出させれば、灯具ユニット10はエーミングピボット機構を中心に前傾姿勢となり光軸が下方に調整される。同様に2本のエーミング調整ネジを後方に引き戻せば、灯具ユニット10はエーミングピボット機構を中心に後傾姿勢となり光軸が上方に調整される。また、車幅方向左側のエーミング調整ネジを前方に進出させれば、灯具ユニット10はエーミングピボット機構を中心に右旋回姿勢となり右方向に光軸が調整される。また、車幅方向右側のエーミング調整ネジを前方に進出させれば、灯具ユニット10はエーミングピボット機構を中心に左旋回姿勢となり左方向に光軸が調整される。このエーミング調整は、車両出荷時や車検時、前照灯ユニット210の交換時に行われる。そして、前照灯ユニット210が設計上定められた規定の姿勢に調整され、この姿勢を基準に本実施形態の配光パターンの形成制御が行われる。
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源としてのバルブ14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、投影レンズ20で構成される。バルブ14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施形態では、バルブ14をハロゲンランプで構成する例を示す。リフレクタ16はバルブ14から放射される光を反射する。そして、バルブ14からの光及びリフレクタ16で反射した光は、その一部がシェード機構18を構成する回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。
図3は、回転シェード12の概略斜視図である。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒形状の部材である。また、回転シェード12は軸方向に一部が切り欠かれた切欠部22を有し、当該切欠部22以外の外周面12b上に板状のシェードプレート24を複数保持している。回転シェード12は、その回転角度に応じて投影レンズ20の後方焦点を含む後方焦点面の位置に切欠部22または、シェードプレート24のいずれか1つを移動させることができる。そして、回転シェード12の回転角度に対応して光軸O上に位置するシェードプレート24の稜線部の形状に従う配光パターンが形成される。例えば、回転シェード12のシェードプレート24のいずれか1つを光軸O上に移動させてバルブ14から照射された光の一部を遮光することで、ロービーム用配光パターンまたは一部にロービーム用配光パターンの特徴を含む配光パターンを形成する。また、光軸O上に切欠部22を移動させてバルブ14から照射された光を非遮光とすることでハイビーム用配光パターンを形成する。
回転シェード12は、例えばモータ駆動により回転可能であり、モータの回転量を制御することで回転して所望の配光パターンを形成するためのシェードプレート24または切欠部22を光軸O上に移動させる。なお、回転シェード12の外周面12bの切欠部22を省略して、回転シェード12に、遮光機能だけを持たせてもよい。そして、ハイビーム用配光パターンを形成する場合は、例えばソレノイド等を駆動して回転シェード12を光軸Oの位置から退避させるようにしてもよい。このような構成にすることで、例えば、回転シェード12を回転させるモータがフェールしても回転シェード12は切欠部22を持たないのでロービーム用配光パターンまたはそれに類似する配光パターンで固定されることになる。つまり、回転シェード12がハイビーム用配光パターンの形成姿勢で固定されてしまうことを確実に回避してフェールセーフ機能を実現できる。
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸O上に配置され、バルブ14は投影レンズ20の後方焦点面よりも後方側に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として前照灯ユニット210前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
図4は、上述のように構成される前照灯ユニット210L,210Rの照射制御部228L,228Rと車両300側の車両制御部302の動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、前述したように、前照灯ユニット210L,210Rの構成は基本的に同じなので前照灯ユニット210R側のみの説明を行い前照灯ユニット210L側の説明は省略する。
前照灯ユニット210Rの照射制御部228Rは、車両300に搭載された車両制御部302の指示に従って電源回路230の制御を行いバルブ14の点灯制御を実行する。また、照射制御部228Rは車両制御部302からの指示に従い可変シェード制御部232、スイブル制御部234、レベリング制御部236を制御する。可変シェード制御部232は、回転シェード12の回転軸12aにギア機構を介して接続されたモータ238を回転制御して、所望のシェードプレート24または切欠部22を光軸O上に移動させる。なお、可変シェード制御部232には、モータ238や回転シェード12に備えられたエンコーダ等の検出センサから回転シェード12の回転状態を示す回転情報が提供されてフィードバック制御により正確な回転制御が実現される。
スイブル制御部234は、スイブルアクチュエータ222を制御して灯具ユニット10の光軸を車幅方向について調整する。例えば、曲路走行や右左折走行などの旋回時に灯具ユニット10の光軸をこれから進行する方向に向ける。また、レベリング制御部236は、レベリングアクチュエータ226を制御して、灯具ユニット10の光軸を車両上下方向について調整する。例えば、加減速時における車両姿勢の前傾、後傾に応じて灯具ユニット10の姿勢を調整して前方照射の到達距離を最適な距離に調整する。車両制御部302は、前照灯ユニット210Lに対しても同様な制御を実施する。
本実施形態の場合、前照灯ユニット210L,210Rによって形成される配光パターンは、運転者によるライトスイッチ304の操作内容に応じて切り替え可能である。この場合、ライトスイッチ304の操作に応じて、照射制御部228L,228Rが可変シェード制御部232を介してモータ238を制御して配光パターンを決定する。
本実施形態の前照灯ユニット210L,210Rは、ライトスイッチ304の操作によらず、車両周囲の状況を各種センサで検出して、車両周囲状況に最適な配光パターンを形成するように自動制御することもできる。例えは、自車の前方に先行車や対向車、歩行者等が存在することが検出できた場合には、車両制御部302はロービーム用配光パターンを形成してグレアを防止するべきであると判定して照射制御部228L,228Rを制御する。また、自車の前方に前走車や対向車、歩行者等が存在しないことが検出できた場合には、回転シェード12による遮光を伴わないハイビーム用配光パターンを形成して運転者の視界を向上させるべきであると判定して照射制御部228L,228Rを制御する。
このように前走車や対向車などの対象物を検出するために車両制御部302には、対象物の認識手段として例えばステレオカメラなどのカメラ306が接続されている。カメラ306で撮影された画像フレームデータは、画像処理部308で対象物認識処理など所定の画像処理が施され、その認識結果が車両制御部302へ提供される。例えば、車両制御部302は、画像処理部308から提供される認識結果データの中に予め保持している車両や歩行者を示す特徴点を含むデータが存在する場合、その車両や歩行者を考慮した最適な配光パターンを形成するように照射制御部228L,228Rに情報を提供する。なお、本実施形態では、カメラ306と画像処理部308とで撮影ユニット102を構成している。
また、車両制御部302は、車両300に通常搭載されているステアリングセンサ310、車速センサ312などからの情報も取得可能である。そして、車両制御部302は車両300の走行状態や走行姿勢に応じて形成する配光パターンを選択したり、光軸の方向を変化させて簡易的に配光パターンを変化ることができる。例えば、車両制御部302はステアリングセンサ310からの情報に基づき車両が旋回していると判定した場合、回転シェード12を回転制御して旋回方向の視界を向上させるような配光パターンを形成するシェードプレート24を選択することができる。また、回転シェード12の回転状態は変化させずに、スイブル制御部234によりスイブルアクチュエータ222を制御して灯具ユニット10の光軸を旋回方向に向けて視界を向上させてもよい。このような制御モードを旋回感応モードという場合がある。
また、夜間に高速走行しているときには、遠方から接近する対向車や前走車、道路標識やメッセージボードの認識をできるだけ早く行えるように前照灯による照明を実行することが好ましい。そこで、車両制御部302は車速センサ312からの情報に基づき高速走行していると判定したときに、回転シェード12を回転制御してロービーム用配光パターンの一部の形状を変えたハイウェイモードのロービーム用配光パターンを形成するシェードプレート24を選択してもよい。同様な制御は、レベリング制御部236によりレベリングアクチュエータ226を制御して灯具ユニット10を後傾姿勢に変化させることでも実現できる。前述したレベリングアクチュエータ226による加減速時のオートレベリング制御は、照射距離を一定に維持するような制御である。この制御を利用して、積極的にカットラインの高さを制御すれば、回転シェード12を回転させて異なるカットオフラインを選択する制御と同等の制御ができる。このような制御モードを速度感応モードという場合がある。
なお、灯具ユニット10の光軸の調整は、スイブルアクチュエータ222やレベリングアクチュエータ226を用いずに実行することもできる。例えば、エーミング制御をリアルタイムで実行するようにして灯具ユニット10を旋回させたり前傾姿勢や後傾姿勢にして、所望する方向の視界を向上させてもよい。
この他、車両制御部302は、ナビゲーションシステム314から道路の形状情報や形態情報、道路標識の設置情報などを取得することもできる。これらの情報を事前に取得することにより、レベリングアクチュエータ226、スイブルアクチュエータ222、モータ238等を制御して、走行道路に適した配光パターンをスムーズに形成することができる。このような制御モードをナビ感応モードという場合もある。
上述したようにカメラ306で撮影した画像フレームデータに基づいて前照灯ユニット210L,210Rによる照射制御を高精度に行う場合、撮影した画像フレーム上で前方車が移動した場合、その移動量に対応して配光パターンの形状や照射方向を変化させる必要がある。つまり、撮影ユニット102のカメラ306と前照灯ユニット210L,210Rの灯具ユニット10との関連付けを正確に行う必要がある。言い換えれば、カメラ306で取得した情報に基づいて、配光パターンの選択やスイブル制御、レベリング制御等を実施する場合、灯具ユニット10で形成する配光パターンとカメラ306で取得する画像フレームデータとの関連付けが正確に行われていることが必要になる。
図5は、車両用前照灯システム100の前照灯ユニット210L,210Rを点灯して、カメラ306でその配光パターンを撮影している状態を説明する説明図である。カメラ306は、車両300の車室内のルームミラーの裏面ブラケットに配置され、車両300の車両センターラインCAR−CLと対応するように固定されている。また、車両300の前方例えば10mの位置には、車両センターラインCAR−CLと実質的に直交するように配置された鉛直壁面Sが設けられ、前照灯ユニット210L,210Rから照射される配光パターンが投影されるようになってる。カメラ306は、鉛直壁面Sを画角Wで撮影可能である。この画角は、例えば左右に±20°とすることができる。前照灯ユニット210L,210Rは、それぞれの光軸LH−CL,RH−CLが車幅方向と直交する車両前方、つまり車両センターラインCAR−CLと平行になるようにエイミング調整されている。図6は、鉛直壁面Sに投影される前照灯ユニット210Lの左通行用のロービーム用配光パターンLoLと、前照灯ユニット210Rの左通行用のロービーム用配光パターンLoRを重畳合成した状態を示す。ロービーム用配光パターンLoLとロービーム用配光パターンLoRは、実質的に同一の形状である。ロービーム用配光パターンLoRは、灯具ユニット10の光軸Oの地上高Hで定まる水平線H−Hと重なる第1水平線部分m1と、この第1水平部分m1より鉛直方向下方に位置する第2水平部分m2と、第1水平部分m1と第2水平部分m2を接続する傾斜部分m3で構成される。傾斜部分m3の角度は例えば45°である。ロービーム用配光パターンLoRも同様な水平部分と傾斜部分で構成される。ここで、傾斜部分m3と第2水平部分m2との交点は、「エルボ点」と称され、ロービーム用配光パターンの照射位置を特定する特徴要素とすることができる。このエルボ点は、シェードプレート24の稜線上の屈曲部分に対応していると共に光軸の位置と一致するように調整されている。
ところで、車両300の前照灯ユニット210L,210Rの光軸調整は、通常、所定の調整設備が整った生産工場の組立ラインや一部の整備工場等、特定の場所で実施される。この場合、車両300は、車両センターラインCAR−CLと鉛直壁面S上に形成された基準点とが一致するように拘束装置等で固定される。そして、車種毎に鉛直壁面S上の基準点の左に形成された光軸マークと光軸LH−CLに対応するエルボ点ELを一致させると共に、車種毎に定められた高さの水平線H−Hに第1水平部分m1を一致させるようにエイミング調整が実施される。同様に、鉛直壁面S上の基準点の右に形成された光軸マークと光軸LH−CRに対応するエルボ点ERを一致させると共に、水平線H−Hに第1水平部分m1を一致させるようにエイミング調整が実施される。また、調整設備の整った場所では、鉛直壁面S上の所定位置にカメラ位置決め用のカメラ用マーキングが付されている場合もある。カメラ306でこのカメラ用マーキングを撮影して、その位置を基準点とすることで車両300とカメラ306との位置合わせを実施することができる。しかしながら、カメラ306の交換や修理のたびに調整設備の整った場所に持ち込んでの再調整は面倒であると共に、カメラ306と自車の位置決めの前に鉛直壁面Sと自車との位置合わせが必要になり効率が悪かった。
そこで、本実施形態の車両用前照灯システム100では、前照灯ユニット210から照射する配光パターンをカメラ306で撮影して、その配光パターンに基づいて決定した車両正面基準領域にカメラ306におけるフレーム基準領域を対応付けて両者の関連付けを実施する。この関連付け処理は、図4に示すように、撮影ユニット102の画像処理部308に接続された関連付制御部104で実施される。関連付制御部104は、撮影ユニット102で取得した画像フレームデータに含まれ、配光パターンの照射位置を特定することができる特徴要素を用いて車両前後方向に延びる仮想中心ラインで定まる車両正面基準領域を取得する。この車両正面基準領域は、ピンポイントで表現されてもよいし、ある程度広がりを有する基準範囲で表現されていもよい。関連付制御部104は、さらに、車両正面基準領域と撮影ユニット102の画像フレームに定められたフレーム基準領域とを対応付けて前照灯ユニット210の灯具ユニット10と撮影ユニット102を関連付ける。このフレーム基準領域もピンポイントで表現されてもよいし、ある程度広がりを有する基準範囲で表現されていもよい。
図7は、配光パターンが投影された鉛直壁面Sをカメラ306で撮影したときに得られる画像フレームを示す説明図である。画像フレームFLは、車両300の概ね正面の位置を撮影範囲とするように定められているものとする。また、前照灯ユニット210L,210Rはエイミング調整が実施されて個々の光軸LH−CL,RH−CLは車両300の正面に向いているものとする。そして、前照灯ユニット210L,210Rの配光パターンの略中央がカメラ306の画像フレームFLに収まる位置に車両300を停車させる。
カメラ306の画像フレームFLは横長の長方形であり、左下隅に当該画像フレームFLのフレーム基準領域としてX−Y直交座標系の原点(0,0)が基準座標点として設定されている。したがって、この画像フレームFL上で特徴要素であるエルボ点EL,ERの水平方向の座標は、基準座標点(0,0)を基準としてそれぞれ表現すると、エルボ点ELが(XEL,0)、エルボ点ERが(XER,0)と表現できる。したがって、前照灯ユニット210Lの光軸LH−CLと前照灯ユニット210Rの光軸RH−CLとの間にある車両センターラインCAR−CLのX座標XCLは、XCL=(XEL+XER)/2で表現できる。つまり、特徴要素であるエルボ点EL,ERを用いて車両センターラインCAR−CLで定まる車両正面基準領域と見なせる(XCL,0)が定義できる。そして、車両正面基準領域(XCL,0)とカメラ306の画像フレームに定められたフレーム基準領域と見なせる基準作座標点(0,0)とを対応付けていることになる。その結果、灯具ユニット10と撮影ユニット102との関連付けがなされる。つまり、カメラ306により前方車や歩行者を撮影して取得した画像フレームFL上で抽出した情報に基づき、配光パターンを制御すれば、前方車や歩行者に対するグレアを抑制した照射制御が可能になる。
なお、特徴要素であるエルボ点EL,ERは、シェードプレート24上に形成されているものであり、その特徴要素の形成が配光パターンの特性に影響しない。また、灯具ユニットと撮影ユニットの関連づけを行うための特徴要素を形成するために新たな部品を追加する必要がない。その結果、コスト上昇を招くことなく灯具ユニットと撮影ユニット102との関連付けができる。
通常、ライトスイッチ304をON操作すると前照灯ユニット210Lと前照灯ユニット210Rが同時に点灯され、図7に示すようにロービーム用配光パターンLoLとロービーム用配光パターンLoRとが鉛直壁面S上で重畳される。その結果、画像フレームデータ上で特徴要素であるエルボ点EL,ERの抽出が迅速にできない場合や正確にできない場合ある。そこで、本実施形態では、特徴要素を含む画像フレームデータを取得する場合、複数の灯具ユニット10のうちいずれか1つを標準照射状態、例えば、エイミング調整がなされて正面方向に向けられた正視状態で点灯させ、対応する配光パターンを画像フレームFLにフレームインさせる。一方、他方の灯具ユニット10は、例えば前傾姿勢となるようにレベリング調整して、対応する配光パターンが画像フレームからフレームアウトするようにする。この結果、左右の灯具ユニット10が同時点灯していても、画像フレーム上では、灯具ユニット10が単独照射されているのと同等の状態となり、特徴要素であるエルボ点の検出が正確かつ容易にできる。他方の灯具ユニット10につても同様にして単独状態で特徴要素であるエルボ点の検出を行うことができる。
ところで、カメラ306で取得した画像フレームデータに基づいて灯具ユニット10の形成する配光パターンの選択やスイブル角度を決定する場合、前方車が自車正面に対して何度の角度方向に存在するかを正確に把握する必要がある。この場合、カメラ306が取得した画像フレームデータ上で1画素が何度に相当するかを算出すればよい。言い換えれば、画像フレーム上で車両前方の先行車等の注目物体が単位画素分移動するときに、その移動に対応させて灯具ユニット10の光軸を移動させるために必要な光軸の単位揺動角度を算出すればよい。
図8(a)、図8(b)は、カメラ306の1画素当たりの角度を算出する方法を説明する説明図である。図8(a)に示すように、図7と同様の手順により前照灯ユニット210Lによるロービーム用配光パターンLoLを鉛直壁面Sに投影する。そして、カメラ306で画像フレームデータを取得して特徴要素であるエルボ点ELを抽出して、その座標を(XEL1,0)とする。続いて、図8(b)に示すように、前照灯ユニット210Lのスイブル制御部234を制御して、灯具ユニット10を例えば左方向に旋回させて、ロービーム用配光パターンLoLを左にSL1°だけスイブルさせる。そして、図8(a)と同様に、エルボ点ELを抽出して、その座標を(XEL2,0)とする。この場合、カメラ306の1画素当たりの角度ΔLは、ΔL=SL1/(XEL1−XEL2)として算出できる。
同様に、前照灯ユニット210Rによるロービーム用配光パターンLoRについてもスイブル前のエルボ点ERの座標(XER1,0)と、スイブル後のエルボ点ERの座標(XER2,0)を求める。そして、カメラ306の1画素当たりの角度ΔRは、ΔR=SR1/(XER1−XER2)として算出できる。そして、ΔL=ΔRの場合、カメラ306の1画素当たりの角度Δ、つまり単位揺動角度Δは、Δ=ΔL=ΔRとなる。一方、ΔL≠ΔRの場合は、車両300の車両センターラインCAR−CLが鉛直壁面Sに対して直交していないことを示す。この場合、Δ=(ΔL+ΔR)/2として平均値をとることにより簡易的にカメラ306の1画素当たりの単位揺動角度Δを算出することができる。
上述のように、カメラ306の1画素当たりの単位揺動角度Δを算出することにより、図9に示すような配光パターンの制御が高精度で可能になる。図9は、曲路走行中に対向車が存在する場合の配光パターンの制御を概略的に説明する説明図である。前述したように、本実施形態の車両用前照灯システム100は、カメラ306と灯具ユニット10との関連付けが行われていると共に、カメラ306の1画素当たりの単位揺動角度Δが算出済みである。したがって、カメラ306で取得した画像フレームデータ上の対向車の挙動、つまり単位時間当たりに対向車が移動した画素数に応じて配光パターンを対向車に対してどれだけ移動させたらよいかが算出できる。その結果を用いて、配光パターンの選択やスイブル制御が可能になる。以下、図4のブロック図を参照しながら配光パターンの制御の一例を説明する。
例えば、図9(a)に示すように、自車(車両300)が前照灯ユニット210L、210Rでハイビーム用配光パターンHiL,HiRを形成して走行中に対向車318が現れた場合を考える。カメラ306は車両300前方を撮影エリアとする画像フレームデータを連続的または一定間隔で取得している。このとき、カメラ306の画像フレームデータには、対向車318の位置データと共に車両300の形成している配光パターンが画像フレーム内の何処に照射されているかのデータも含まれる。そして、対向車318の位置情報と共に配光情報も車両制御部302に提供される。例えば、車両制御部302において、図9(b)に示すように対向車318が車両300のハイビーム用配光パターンHiL,HiRの照射エリアに接近または侵入したことが検出された場合、車両制御部302は配光パターンの切り替え制御を実行する。この場合、車両制御部302は、画像フレームデータ上での対向車318の位置と形成している配光パターンの関連性に応じて配光パターンを決定する。つまり、車両制御部302は、照射制御部228L,228Rを介して、図9(c)に示すように前照灯ユニット210L,210Rの両方をロービーム用配光パターンLoL,LoRに切り換えることができる。また、図9(d)に示すように、対向車318の存在する位置を避けるように、前照灯ユニット210Rをロービーム用配光パターンLoRとして前照灯ユニット210Lを左片ハイ用配光パターンHiCLとすることもできる。同様に、図9(e)に示すように、前照灯ユニット210Lをロービーム用配光パターンLoLとして前照灯ユニット210Rを右片ハイ用配光パターンHiCRとすることもできる。このように左片ハイ用配光パターンHiCLまたは、右片ハイ用配光パターンHiCRを利用することにより、図9(c)に示すロービーム用配光パターンLoL,LoRに変更する場合に比べて配光パターンの照射範囲の拡大が可能になる。その結果、対向車318に対するクレアを抑制しつつ、自車(車両300)の運転者の前方認識性の向上に寄与できる。
また、図9(f)に示すように、対向車318の存在する位置を避けるように、前照灯ユニット210Lで左片ハイ用配光パターンHiCLを形成し、前照灯ユニット210Rで右片ハイ用配光パターンHiCRを形成してもよい。さらに、図9(g)に示すように、左片ハイ用配光パターンHiCLおよび右片ハイ用配光パターンHiCRを対向車318の移動に追従するようにスイブルさせてもよい。この場合、車両制御部302は関連付制御部104で算出した単位揺動角度Δと画像フレームデータ上での対向車318の移動画素数とを乗算することによりスイブル角度を算出できる。その結果、対向車318に対するグレアを抑制しつつ、図9(d)、図9(e)よりさらに配光パターンの照射範囲の拡大が可能となり、自車の運転者の前方視認性を向上させることができる。
図10(a)〜図10(d)を用いて、図9(g)に示したスイブル制御を詳細に説明する。なお、図10(a)〜図10(d)では、制御状態を分かりやすくするために、車両左側の前照灯ユニット210Lの配光パターンの制御のみを示す。また、前照灯ユニット210Lは、ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン、左片ハイ用配光パターンを形成できるものとする。図10(a)は、ロービーム用配光パターンLoを形成している状態である。
図10(a)に示すように、自車(車両300)の前方には、前走車320,322および対向車318が存在する。このような状況の場合、車両300は通常ロービーム用配光パターンLoを照射する制御を行うことになる。この場合、前走車320,322、対向車318にグレアを与えることはないが、車両300の運転者の前方視認性はハイビーム用配光パターンの形成時よりは低くなる。図10(b)は、車両300に搭載されたカメラ306で車両前方を撮影した場合の自車(車両300)と前走車320,322、対向車318の位置関係を説明する説明図である。また、図10(c)は、画像処理部308における処理イメージ画面であり、図10(b)の状態をカメラ306で撮影して得た画像フレームデータを説明する説明図である。この場合、車両正面である車両センターラインVのX座標をXCLとする。画像処理部308においては、対向車318の検出は、例えはヘッドライトの左右の光点を検出することで実行できる。また、前走車320,322の検出は、例えば左右のテールランプの光点を検出することで実行できる。図10(a)〜図10(d)の説明では、左方向のスイブルによって前走車320を配光パターンの照射エリアから外す制御を行う。したがって、画像処理部308は、まず前走車320の左端部のX座標を取得する。つまり、画像処理部308は、画像フレームデータ上で前走車320を抽出すると共に、前走車320の左側テールランプのX座標XLを取得する。そして、車両センターラインVのX座標XCLと左側テールランプのX座標XLとの差(XCL−XL)に1画素当たりの角度Δを乗ずることで車両センターラインVに対する前走車320の角度θLが算出できる(θL=(XCL−XL)×Δ)。
図10(d)は、左片ハイ用配光パターンの形状を説明する俯瞰図および対応する左片ハイ用配光パターンを鉛直スクリーンに投影した鉛直投影図を並記した図である。左片ハイ用配光パターンは、ロービーム用配光パターンの左側をハイビーム状態にした配光パターンである。左片ハイ用配光パターンは、縦カットラインCの位置が車両センターラインVに対して左にXδL°だけ変位している配光パターンである。
図10(b)、図10(c)で求めたθLに対し、左片ハイ用配光パターンの片寄り角度XδLがXδL>θLの関係にある場合、前走車320は左片ハイ用配光パターンの右側に存在することになる。この場合、スイブル機能を用いる必要はなく、照射制御部228Lは可変シェード制御部232で左片ハイ用配光パターンを選択するのみで前走車320、322等にグレアを与えないようできる。一方、XδL≦θLの場合は、前走車320が左片ハイ用配光パターンの中に存在する可能性が高く、グレアを与えてしまう可能性が高い。そのため、車両制御部302は照射制御部228Lを介して可変シェード制御部232で左片ハイ用配光パターンを選択すると共に、スイブル制御部234を制御して左片ハイ用配光パターンの照射エリアから前走車320が外れるようにする。スイブル角度は、θL−XδLで算出できる。その結果、図10(e)に示すように、前走車320にグレアを与えないようにしつつ、車両300の運転者の前方視認性の向上に寄与できる。同様の制御を前照灯ユニット210Rで形成する右片ハイ用配光パターンについても行えば、対向車318にグレアを与えないようにしつつ、車両300の運転者の前方視認性の向上に寄与できる。
上述したような前方車の位置抽出とスイブル角度の算出を繰り返し行うことで、刻々と変化する前方車の位置に対応して、配光パターンの切り替えやスイブル角度の制御が可能な高性能の車両用前照灯システム100が得られる。
上述したように、本実施形態の車両用前照灯システム100においては、特別な専用設備がある工場でなくても、鉛直壁面Sさえあればカメラ306と灯具ユニット10との関連付けを容易に実施できる。本実施形態の場合、鉛直壁面Sに対して車両300の車両センターラインCAR−CLが直角になるように車両300が対面することが望ましい。ただし、実際に車両300を鉛直壁面Sに対峙させるとき、車両300に対し拘束固定装置を使用しない場合や簡易的な拘束固定装置しか使用できない場合があり、図11に示すように、車両300が鉛直壁面Sに対して角度α=10°程度の誤差を有してしまうことがある。そこで、このような誤差が実用上どの程度影響するか検証する。例えば、鉛直壁面Sと車両300との距離L=10mで前照灯ユニット210L,210Rの光軸間距離D=1.4m、鉛直壁面Sと車両センターラインCAR−CLとの対峙角度誤差α=10°の場合を考える。この場合、車両300に対して鉛直壁面Sが斜めになることにより生じる鉛直壁面Sと車両300との間の差分距離ΔLは、ΔL=tan10°×0.7=0.12mとなる。したがって、車両300と鉛直壁面Sの対峙が直角(90°)の場合の車両センターラインCAR−CLを基準とする画角θは、θ=tan−1(0.7/10)=4.004となる。一方、車両300と鉛直壁面Sの対峙角度誤差が10°の場合の車両センターラインCAR−CLを基準とする画角θ1は、θ1=tan−1(0.7/(10.12)=3.957となる。この場合、車両センターラインCAR−CLの誤差Δθは、約0.05°である。この誤差は、配光パターンの制御において実用上問題ない範囲であることを本発明者らは確認している。また、図11の例では、鉛直壁面Sと車両300との距離L=10mとしたが、本実施形態の関連付け作業は、距離Lに依存しない。したがって、鉛直壁面Sがあれば、本実施形態の関連付けを容易に実施することができる。
上述した本実施形態において、図8において、カメラ306の1画素当たりの角度を算出する場合にエルボ点EL,ERをスイブルさせて実施する例を説明した。図12は、スイブル機能を用いることなく、1画素当たりの角度を算出する例を説明する。例えば、図12(a)に示すように、左片ハイ用配光パターンHiCLが形成できる場合、左片ハイ用配光パターンHiCLには、エルボ点ELの他に光軸と一致するエルボ点ELから所定の離間角度の位置に形成された縦カットラインLCL−Lがある。同様に、図12(b)に示すように、右片ハイ用配光パターンHiCRが形成できる場合、右片ハイ用配光パターンHiCRには、エルボ点ERの他に光軸と一致するエルボ点ERから所定の離間角度の位置に形成された縦カットラインLCL−Rがある。言い換えれば、灯具ユニット10の光軸を基準として光軸に対して所定の離間角度で離間した位置に形成された特徴要素が形成されている。したがって、カメラ306の取得した画像フレームデータにおける縦カットラインLCL−L,LCL−Rの位置に基づいてエルボ点EL,ERからの離間距離XL,XRが取得できる。そして、離間距離XL,XRを設計段階で決定されている離間角度XδL°,XδR°で除算することによりカメラ306の1画素当たりの角度を算出することができる。この角度は、画像フレーム上で特徴要素を単位画素分移動するさせるために必要な単位離間角度ということができる。
上述した図10の例では、自車(車両300)の前方に存在する前走車320が自車に対して何度の位置に存在するかを示すθLを算出する場合、カメラ306の1画素当たりの単位揺動角度Δとする場合、θL=(XCL−XL)×Δで表すことができた。言い換えれば、図13に示すように、鉛直壁面Sに照射された配光パターンをスイブル機能を用いてSL1°だけ回転させたときのエルボ点ELの移動量をカメラ306の画素数PNとして求めて、カメラ306の1画素当たりの単位揺動角度Δを算出した。そして、実際の走行状態で求めた前走車320の車両センターラインCAR−CLからからの距離Nに単位揺動角度Δを乗じれば、θLが求められる。つまり、Δ=SL1/PNおよびθL=Δ×Nより、θL=SL1×N/PN・・・(式1)となる。これは、例えばNがPNの2倍になれば、θLもSL1の2倍になることを示す。
一方、PNおよびSL1が既知の場合、画像処理の検出結果である距離NからθLを求めることができる。つまり、θL=tan−1{N×tan(SL1)/PN}・・・(式2)となる。式2から分かるように、この場合、NがPNの2倍になってもθLはSL1の2倍にならない。
前述したように、配光可変を用いる車両用前照灯システム100においては、ハイビームの照射範囲に対して前走車320の位置が何処であるかを扱うことになる。この場合、θLは、概ね±20°程度である。図14の計算値表は、カメラ306の画角40°(左右±20°)、カメラの画素数640×480(VGA)、SL1=10°、PN=160の場合に、Nの値を変化させながら上述の式1で計算した値θ1と式2で計算した値θ2を示している。上述のように、θLの実用範囲は±20°程度であり、この場合の誤差は約0.5°となる。したがって、0.5°の誤差が許容できない場合には上述の式2を用いてθL算出し高精度の制御ができる。また、0.5°の誤差が許容できる場合には、上述の式1を用いてθL算出して負荷の少ない処理で配光パターンの制御を実施することができる。
ところで、上述した各実施形態では、ロービーム用配光パターンを形成したときのエルボ点を抽出して車両センターラインCAR−CLを取得した。ただし、エルボ点はカットオフラインの角度変化部分を認識して抽出するので、配光パターンを投影する鉛直壁面Sの表面状態や投影距離によって抽出精度のばらつきが出る場合がある。そこで、図15(a)に示すように、ロービーム用配光パターンLoを形成するシェードプレート24のカットオフライン上に特徴要素を提供する特徴要素形成部322,324を形成する。図15(a)の場合、特徴要素形成部322は、光軸Oから角度θLだけ離れた位置に凹状の三角形状で形成され、特徴要素形成部324は、光軸Oから角度θRだけ離れた位置に凸状の三角形状で形成された例を示す。特徴要素形成部322,324は、配光パターンのカットオフラインに対応するシェードプレート24の稜線部に形成されている。このような特徴要素形成部322,324を有するシェードプレート24により形成される配光パターンを図15(b)に示す。図15(a)に示す特徴要素形成部322,324を有するシェードプレート24を鉛直壁面Sに投影すると、上下左右反転された配光パターン上に特徴要素形成部322,324に対応する特徴要素が出現する。この場合、θL=θRと設定すれば、エルボ点Eが存在する光軸Oの位置を容易に検出することができる。なお、特徴要素形成部322,324はいずれか一方を形成するのみでもよいし、凹凸を逆にしてもよい。また、特徴要素形成部を複数設ける場合、凹形状のみを形成しても凸形状のみを形成しても同様の効果を得ることができる。また、図15(c)、図15(d)に示すように、片ハイ用配光パターンHiCの場合、縦カットラインLCLは設計上光軸Oの位置から所定の角度の位置に形成されている。したがって、縦カットラインLCLの位置から光軸Oの位置が確定可能である。そして、この光軸Oの位置を基準にして特徴要素形成部324を形成して配光パターン上に三角凸形状の特徴要素を形成するようにしても図15(b)と同様に効果を得ることができる。また、縦カットラインLCLの位置を基準に特徴要素形成部324を形成してもよく、同様の効果を得ることができる。なお、上述した特徴要素形成部322,324により配光パターンのカットオフライン上に特徴要素を形成したものを実際の走行中に自車の運転者が見た場合、路面に照射される配光パターンの外側の位置に現れる。したがって、実走行中に特徴要素形成部322,324による特徴要素が運転者に認識され難くできて、運転者に違和感を殆ど与えないようにできる。同様に、対向車の運転者や歩行者にも特徴要素形成部322,324により特徴要素を形成しても違和感を殆ど与えないようにできる。
図16(a)は、特徴要素の他の形成手段を説明する説明図である。図16(a)の場合、シェードプレート24の可視光の遮光領域に開口部326を形成し、当該開口部326を可視光カットフィルタ328で覆い非可視光透過部を形成している。つまり、灯具ユニット10のバルブ14が照射する光のうち可視光部分はシェードプレート24および可視光カットフィルタ328によりカットして、人間に見える通常の配光パターンを形成する。一方、バルブ14が照射する光のうち非可視光である赤外線等は、可視光カットフィルタ328で覆われた開口部326を通過し、車両前方領域に照射される。この赤外線は、カメラ306で検出可能となる。その結果、カメラ306で取得する画像フレームデータ上には、図16(b)に示すように、通常は暗領域となる部分に赤外線による光点が現れ、これを特徴要素330とすることができる。そして、この特徴要素330を用いて図15(b)で説明した場合と同様に、エルボ点Eが存在する光軸Oの位置を容易に検出することができる。なお、図16(a)の場合、特徴要素330は、シェードプレート24のカットオフラインの水平部分より角度θUだけ内側にシフトした位置に形成されている。したがって、配光パターンを形成した場合、特徴要素330は、図16(b)に示すように配光パターンのカットオフラインの暗部側で角度θU上方に形成される。なお、前述したように、この特徴要素330は赤外線で形成されるので、自車の運転者や搭乗者、前走車の搭乗者、歩行者等には認識されることなく、違和感を与えることはない。
図16(c)、図(d)は、片ハイ用配光パターンHiCにおいて、開口部326、可視光カットフィルタ328を用いて特徴要素330を形成する例を示す。この場合も図16(b)と同様にエルボ点Eが存在する光軸Oの位置を容易に検出することができる。
また、図16(a)は、開口部326が丸形状である場合を示したが、特徴要素を認識し易い形状ではあればよく、例えば、四角形、菱形、星形、十字型等適宜選択可能であり、同様な効果を得ることができる。
上述した各実施形態では、ハイビームおよびロービームを含む複数の配光パターンを1光源で形成できる配光可変型のいわゆる2灯式前照灯を例にとり説明したが、ハイビームとロービームが別々の光源で形成するいわゆる4灯式前照灯でも本実施形態の技術を適用できる。4灯式前照灯の場合は、ハイビーム用の灯具とロービーム用の灯具が別構造で構成されるが、同一の基台に固定されている。したがって、撮影ユニットとロービーム用の灯具との間で関連付けを行えば、自動的にハイビーム用の灯具と撮影ユニットとの関連付けも完了することになり、上述した配光パターンの制御を実現できる。また、4灯式前照灯において、ハイビーム用の灯具で形成するハイビーム用配光パターンを複数の分割領域に分けて各分割領域を個別に点消灯制御するシステムがある。このシステムによれば、ハイビーム用配光パターンを形成する領域のうちグレアを抑制したい部分のみを遮光状態にできるので、グレアを抑制しつつ、照射領域を拡大して前方視認性向上に寄与できる。このようなシステムにおいても上述と同様に撮影ユニットとロービーム用の灯具との間で関連付けを行えば、自動的にハイビーム用の灯具と撮影ユニットとの関連付けも完了することになり、上述した配光パターンの制御を実現できる。
また、本実施形態では、車両センターラインCAR−CLを算出するために前照灯ユニット210L,210Rにより形成される2つの特徴要素を用いる例を説明した。応用例としては、前照灯ユニット210と鉛直壁面Sとの距離および一方の前照灯ユニット210で形成する特徴要素の位置に基づいて車両センターラインCAR−CLを算出することも可能であり本実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上述した各実施形態では、ロービーム用配光パターンや片ハイ用配光パターンに特徴要素を形成する例を説明したが、赤外線等を用いれば、例えばハイビーム用配光パターンの明領域に特徴要素を形成することも可能であり、本実施形態と同様な撮影ユニットと灯具ユニットとの関連付けを行うことができて、同様の効果を得ることができる。
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。