JP5401112B2 - 光電変換素子の製造方法 - Google Patents

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本発明は、光電変換素子の製造方法に関する。
現在、透明電極と対電極とからなる一対の電極間に光電変換層を設けた構成の光電変換素子が知られている。光電変換素子は、透明電極側から入射した光に応じて光電変換層で電荷を生成し、生成された電荷を電極から出力として読み出す素子である。このような光電変換素子は、例えば下記特許文献1及び非特許文献2に見られるように、太陽電池等に応用されている。
下記特許文献1では、アニール処理を行なうことで光電変換効率を向上させることが報告されている。特に、バルクヘテロ型の光電変換素子において、アニール処理によりキャリアの移動度が増加することに伴ってキャリア捕集効率が増加し、光電変換効率が増加することが報告されている。
特開2008−210889号公報
Nature, Vol.425, p.158, 2003
ところで、光電変換素子としては、電極間に光電変換層と、電荷ブロッキング層とを備えた構成が知られている。電荷ブロッキング層は、電極間にバイアス電圧を印可したときに電極から光電変換層にキャリアの注入が起こることにより暗電流が増大することを防止するため、電極からのキャリアの注入を抑える役割を果たしている。このような電荷ブロッキング層を備えた光電変換素子において、アニール処理を行なうと、暗電流が増加してしまう現象が生じてしまう。従来、このような現象については報告されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、電荷ブロッキング層を有する光電変換素子のアニール処理を行なっても暗電流の増加を抑えることができる光電変換素子の製造方法を提供することにある。
本発明の光電変換素子の製造方法は、一対の電極と、前記一対の電極間に設けられた光電変換層と、前記一対の電極と前記光電変換層との間の少なくとも一方に設けられた電荷ブロッキング層とを備えた光電変換素子の製造方法であって、前記一対の電極、前記光電変換層、及び前記電荷ブロッキング層を形成した後、前記光電変換素子をアニール処理するステップを備え、前記アニール処理するステップでは、前記光電変換素子を、昇温速度を5℃/min以下として80℃〜120℃の範囲まで昇温し、前記光電変換層は、p型有機半導体とフラーレン又はフラーレン誘導体の混合層であり、前記電荷ブロッキング層は、下記一般式で表される化合物を含む材料により構成されるものである
Figure 0005401112
一般式中、R 〜R 10 はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Lは1価又は2価以上の連結基を表し、mは0または1を表し、nは1〜4の整数を表す。
本発明によれば、電荷ブロッキング層を有する光電変換素子のアニール処理を行なっても暗電流の増加を抑えることができる光電変換素子の製造方法を提供できる。
光電変換素子の構成の一例を示す断面図である。 光電変換素子の構成の他の例を示す断面図である。
図1は、光電変換素子の構成の一例を示す断面図である。
光電変換素子は、下部電極11と、該下部電極11と対向するように上方に設けられた上部電極14とを備えている。下部電極11と上部電極14との間には、光電変換層12と、電荷ブロッキング層15とが設けられている。
この光電変換素子は、下部電極11、電荷ブロッキング層15、光電変換層12、上部電極14が、下部電極11側からこの順に積層されている。
下部電極11と上部電極14とのうち少なくとも一方はITOなどの透明性導電膜である。
電荷ブロッキング層15は、暗電流を抑制する機能を有している。電荷ブロッキング層15は、例えば第1ブロッキング層と第2ブロッキング層とを含む複数層の構成とすることができる。このように、電荷ブロッキング層を複数層にすることにより、第1ブロッキング層と第2ブロッキング層との間に界面が形成され、各層に存在する中間準位に不連続性が生じることで、中間準位を介してキャリアが移動しにくくなり、暗電流を抑制することができる。
光電変換層12は、p型有機半導体とn型有機半導体の混合薄膜で形成されている。
p型有機半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いてよい。
n型有機半導体(化合物)は、アクセプター性有機半導体(化合物)であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いてよい。
p型有機色素、又はn型有機色素としては、いかなるものを用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、ペリノン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジケトピロロピロール色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
電荷ブロッキング層15としては無機材料を用いることもできる。一般的に、無機材料は有機材料よりも誘電率が大きいため、電荷ブロッキング層15に用いた場合に、光電変換層12に電圧が多くかかるようになり、光電変換効率を高くすることができる。電荷ブロッキング層15となりうる材料としては、NiO、CaO、MoO、IrO、MnO、Nb、CoO、Cr、Cu、CuO、Bi、CuGaO、CuCrO、CuInO、AgInO、SrCu等がある。
上述したように電荷ブロッキング層15を複数層で構成する場合には、これら複数層のうち光電変換層12と隣接する層が該光電変換層12に含まれるp型有機半導体と同じ材料からなる層であることが好ましい。こうすれば、電荷ブロッキング層にも同じp型有機半導体を用いることで、光電変換層12と隣接する層の界面に中間準位が形成されるのを抑制し、暗電流を更に抑制することができる。
n型有機半導体としては、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレン540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。
フラーレン誘導体として好ましくは、下記一般式(1)で表される場合である。
一般式(1)
Figure 0005401112
一般式(1)においてR11は置換基を表す。置換基としては、前述のWを用いることができる。置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、又は複素環基であり、好ましいもの及びそれらの好ましい具体例はWで示したものが挙げられる。アルキル基としてさらに好ましくは、炭素数1〜12までのアルキル基であり、アリール基、及び複素環基として好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、またはチアゾール環であり、特に好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、またはピリジン環である。これらはさらに置換基を有していてもよく、その置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。なお、nが2以上のとき複数のR11は同一であっても異なっていても良い。また、複数のR11は可能な限り結合して環を形成してもよい。
nは1から60までの整数を表すが、好ましくは1から10までの整数である。
以下に、好ましく用いられるフラーレン誘導体の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0005401112
Figure 0005401112
フラーレン及びフラーレン誘導体は、日本化学会編 季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の化合物を用いることもできる。本発明に用いられるフラーレン及びフラーレン誘導体は例えば、日本化学会編季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の方法又は記載の方法に準じて製造することができる。
図2は、光電変換素子の他の構成例を示す断面図である。図2に示すように、電荷ブロッキング層15は、光電変換層12と上部電極14との間に設けられていてもよい。つまり、電荷ブロッキング層15は、下部電極11及び上部電極14を一対の電極としたとき、一対の電極と光電変換層12と間の少なくとも一方に設けられていればよい。図2の光電変換素子の下部電極11、光電変換層12、上部電極14、電荷ブロッキング層15の構成やその材料は、図1の光電変換素子のものとそれぞれ同じにすることができる。
次に、図1及び図2の光電変換素子の製造方法について説明する。
光電変換素子の製造方法は、電荷ブロッキング層を所定の膜厚で形成するステップと、
光電変換素子をアニール処理するステップと、
アニール処理を行なう際に、光電変換素子の昇温速度を、暗電流が増加しない所定の速度以下とするステップとを有する。
アニール処理を行なう際に、光電変換素子の昇温速度は、5℃/min以下とすることが好ましい。昇温速度の下限値は、昇温速度を十分に低減することで暗電流を抑制する観点から特に限定されないが、アニール処理にかかる時間が長くなることを避ける観点から、1℃/minが好ましい。
本発明者の解析によれば、電荷ブロッキング層を有する光電変換素子をアニール処理する際には、電荷ブロッキング層を構成する材料に界面や内部に欠陥やひずみが生じてしまう現象が生じ、暗電流の増加が発生する。これは、欠陥やひずみによって、該電荷ブロッキング層を挟んでいる光電変換層と電極とが接触又は近接することで暗電流が増加しているものと推察される。このような現象は、電荷ブロッキング層によく用いられるアモルファス性の材料の場合に特に顕著に発生する。そこで、アニール処理を行なう際に、光電変換素子の昇温速度を、暗電流が増加しない所定の速度以下となるように調整することで、電荷ブロッキング層を構成する材料に界面や内部に欠陥やひずみが生じることを防止することができる。この製造方法を用いれば、暗電流の増加を抑えるとともに、光電変換素子の高温でのアニール処理が可能である。
電荷ブロッキング層15には、電子供与性有機材料を用いることができる。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、十分なホール輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
電荷ブロッキング層15は、アモルファス性の有機材料で構成された層を含むことが好ましい。アモルファス性の有機材料としては、下記一般式(2)で表される化合物を少なくとも一つを含むことが好ましい。
一般式(2)
Figure 0005401112
次に、上記一般式(2)で表される化合物について詳細に説明する。
式(2)中、R〜R10はそれぞれ独立に水素原子また置換基を表し、Lは1価の基、また2価以上の連結基を表し、mは0または1を表し、nは1〜4の整数を表す。
本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、どのような置換基でも良い。
このような置換基をWとすると、Wで示される置換基としては、いかなるものでも良く、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言っても良い)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基、が例として挙げられる。
更に詳しくは、Wは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数2から30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でも良い。)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アンモニオ基(好ましくはアンモニオ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ基、例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホスフォ基、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチルヒドラジノ)、またはウレイド基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N−ジメチルウレイド)、を表す。
また、2つのWが共同して環(芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環、が挙げられる。)を形成することもできる。
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、−CONHSO−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、または−SONHSO−基(スルフォニルスルファモイル基)、が挙げられる。
より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、またはアリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
上記一般式(1)において、R〜R10は水素原子、又は置換基を表すが、置換基としては、前述のWを用いることができる。置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、又は複素環基であり、好ましくはWで示したものが挙げられる。さらに好ましくは、アリール基、又は複素環基である。アリール基、複素環基として好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、またはチアゾール環であり、特に好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、またはピリジン環である。これらの環はさらに置換基を有していてもよく、その置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。なお、R〜R10は同一であっても異なっていても良い。
また、R〜R10は可能な限り結合して環を形成してもよい。形成する環として好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、フェナジン環、ベンズイミダゾロン環、ベンズオキサゾロン環、またはベンズチアゾロン環であり、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、またはピリダジン環である。形成した環はさらに置換基を有していてもよく、その置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。RとR10とが環を形成する場合が好ましい。
Lは1価の基又は2価以上の連結基を表す。nが1のとき1価の基を表し、1価の基は水素原子又は置換基を表す。置換基としては前記Wが挙げられるが、好ましくは、アリール基、又は複素環基であり、アリール基、又は複素環基の例としては、前記R〜R10で挙げた例が好ましい。この場合の化合物例としては、特開平11−292848号公報の段落番号0032に記載の化合物(5)及び(6)が挙げられる。
Lで表される連結基として好ましくは、C、N、O、S、Si、Geで形成される連結基であり、さらに好ましくは芳香環、芳香族へテロ環からなる連結基であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環からなる連結基である。
Lで表される連結基は置換基を有していてもよく、置換基としては置換基Wで表される置換基が適用できる。
Lで表される連結基の具体例としては例えば以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。下記の連結基中、フリーの結合手のいずれかの2つ以上に前記一般式(1)から誘導される含窒素へテロ環が結合していればよく、該含窒素へテロ環が結合しない結合手には、水素原子や置換基Wなどの置換基が結合していれば良い。
Figure 0005401112
Figure 0005401112
Figure 0005401112
mは0または1を表し、nは1〜4の整数を表す。mが1のときはN原子を含めて5員環を形成する。nは好ましくは2または3である。
上記一般式(2)で表される化合物として好ましくは、下記一般式(3)で表される場合である。
一般式(3)
Figure 0005401112
上記一般式(3)中、R〜R、L、nは前記と同義であり、具体例及び好ましい例も同じである。R11〜R14はR〜Rと同義であり、具体例及び好ましい例も同じである。
上記一般式(2)で表される化合物として好ましくは、下記一般式(4)で表される場合である。
一般式(4)
Figure 0005401112
式(4)中、R〜R、L、nは前記と同義であり、具体例及び好ましい例も同じである。
次に、光電変換素子の製造方法において、光電変換素子のアニール処理による暗電流の変化を測定する。
先ず、実施例1〜4及び比較例1〜4のそれぞれについて、アニール処理前後の暗電流の変化を測定した。実施例1〜4及び比較例1〜4はそれぞれ、下部電極/電荷ブロッキング層/光電変換層/上部電極をこの順で積層した構成の光電変換素子である(図1参照)。
下部電極は、ITOである。電荷ブロッキング層は、下記化合物1で示される有機化合物を真空蒸着法で20nmの膜厚で形成する。光電変換層は、下記化合物2とフラーレンの混合膜(化合物2:フラーレンC60=1:3(質量比))を、真空中で共蒸着により400nmの膜厚で形成する。上部電極は、ITOを高周波マグネトロンスパッタにより、5nmの膜厚で形成する。作製した素子を、大気に曝すことなく、水分、酸素をそれぞれ1ppm以下に保ったグローブボックスに搬送し、ホットプレート上でアニール処理を行なう。
Figure 0005401112
Figure 0005401112
実施例1〜4及び比較例1〜4のアニール条件はそれぞれ、以下の通りである。
(実施例1)初期温度50℃とし、2℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
(実施例2)初期温度50℃とし、5℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
(実施例3)初期温度50℃とし、5℃/minの昇温速度で最終温度80℃まで昇温
(実施例4)初期温度50℃とし、5℃/minの昇温速度で最終温度120℃まで昇温
(比較例1)初期温度50℃とし、10℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
(比較例2)初期温度50℃とし、6℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
(比較例3)初期温度50℃とし、6℃/minの昇温速度で最終温度80℃まで昇温
(比較例4)初期温度50℃とし、6℃/minの昇温速度で最終温度120℃まで昇温
実施例1〜4及び比較例1〜4のいずれについても昇温した後、1時間待機し、その後、ホットプレートから素子を離し、自然冷却した。
次に、実施例5,6及び比較例5,6のそれぞれについて、アニール処理前後の暗電流の変化を測定した。実施例5,6及び比較例5,6はそれぞれ、下部電極/光電変換層/電荷ブロッキング層/上部電極をこの順で積層した構成の光電変換素子である(図2参照)。
下部電極は、ITOである。光電変換層は、前記化合物2とフラーレンの混合膜(化合物2:フラーレンC60=1:3(質量比))を、真空中で共蒸着により400nmの膜厚で形成する。電荷ブロッキング層は、前記化合物1で示される有機化合物を真空蒸着法で20nmの膜厚で形成する。上部電極は、ITOを高周波マグネトロンスパッタにより、5nmの膜厚で形成する。作製した素子を、大気に曝すことなく、水分、酸素をそれぞれ1ppm以下に保ったグローブボックスに搬送し、ホットプレート上でアニール処理を行なう。
実施例5,6及び比較例5,6のアニール条件はそれぞれ、以下の通りである。
(実施例5)初期温度50℃とし、2℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
(実施例6)初期温度50℃とし、5℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
(比較例5)初期温度50℃とし、10℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
(比較例6)初期温度50℃とし、6℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
実施例5,6及び比較例5,6のいずれについても昇温した後、1時間待機し、その後、ホットプレートから素子を離し、自然冷却した。
次に、実施例7,8及び比較例7,8のそれぞれについて、アニール処理前後の暗電流の変化を測定した。実施例7,8及び比較例7,8はそれぞれ、下部電極/電荷ブロッキング層/光電変換層/上部電極をこの順で積層した構成の光電変換素子である(図1参照)。
下部電極は、ITOである。電荷ブロッキング層は、下記化合物3で示される有機化合物を真空蒸着法で50nmの膜厚で形成する。光電変換層は、前記化合物2とフラーレンの混合膜(化合物2:フラーレンC60=1:3(質量比))を、真空中で共蒸着により400nmの膜厚で形成する。上部電極は、ITOを高周波マグネトロンスパッタにより、5nmの膜厚で形成する。作製した素子を、大気に曝すことなく、水分、酸素をそれぞれ1ppm以下に保ったグローブボックスに搬送し、ホットプレート上でアニール処理を行なう。
Figure 0005401112
実施例5,6及び比較例5,6のアニール条件はそれぞれ、以下の通りである。
(実施例7)初期温度50℃とし、2℃/minの昇温速度で最終温度80℃まで昇温
(実施例8)初期温度50℃とし、5℃/minの昇温速度で最終温度80℃まで昇温
(比較例7)初期温度50℃とし、10℃/minの昇温速度で最終温度80℃まで昇温
(比較例8)初期温度50℃とし、6℃/minの昇温速度で最終温度80℃まで昇温
実施例7,8及び比較例7,8のいずれについても昇温した後、1時間待機し、その後、ホットプレートから素子を離し、自然冷却した。
次に、実施例9,10及び比較例9,10のそれぞれについて、アニール処理前後の暗電流の変化を測定した。実施例9,10及び比較例9,10はそれぞれ、下部電極/電荷ブロッキング層/光電変換層/上部電極をこの順で積層した構成の光電変換素子である(図1参照)。
下部電極は、ITOである。電荷ブロッキング層は、前記化合物1で示される有機化合物を真空蒸着法で20nmの膜厚で形成する。光電変換層は、下記化合物4とフラーレンの混合膜(化合物4:フラーレンC60=1:3(質量比))を、真空中で共蒸着により400nmの膜厚で形成する。上部電極は、ITOを高周波マグネトロンスパッタにより、5nmの膜厚で形成する。作製した素子を、大気に曝すことなく、水分、酸素をそれぞれ1ppm以下に保ったグローブボックスに搬送し、ホットプレート上でアニール処理を行なう。
Figure 0005401112
実施例9,10及び比較例9,10のアニール条件はそれぞれ、以下の通りである。
(実施例9)初期温度50℃とし、2℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
(実施例10)初期温度50℃とし、5℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
(比較例9)初期温度50℃とし、10℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
(比較例10)初期温度50℃とし、6℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温
実施例9,10及び比較例9,10のいずれについても昇温した後、1時間待機し、その後、ホットプレートから素子を離し、自然冷却した。
上記の実施例及び比較例で示したアニールした素子はいずれも、大気に曝すことなく、グローブボックス中でUV硬化樹脂を用いて、吸湿剤を貼ったガラスの封止管で封止した。
表1に、作製した素子に、実施例1〜4,7〜10及び比較例1〜4,7〜10は、上部電極に正のバイアスを3.0E+5 V/cm印加した状態であり、実施例5,6及び比較例5,6は、下部電極に正のバイアスを3.0E+5 V/cm印加した状態での暗電流値を示す。
Figure 0005401112
測定の結果、比較例はいずれも、アニール処理後の暗電流が、アニール処理前の暗電流に比べて大きく増加していることがわかった。一方で、実施例は、アニール処理を行なう際に光電変換素子の昇温速度を5℃/min以下とすることで、アニール処理後の暗電流がアニール処理前の暗電流に比べてほとんど変わらず、増加が抑制されていることがわかった。(アニール処理を行なう際に、光電変換素子の昇温速度は、1℃/min〜5℃/minの範囲とすることがより好ましい。)
また、電荷ブロッキング層の膜厚を20nm以上とすることが好ましい。これは、電荷ブロッキング層の膜厚が20nm未満であると、電極と光電変換部との間でショートが生じ易いためである。
次に、電荷ブロッキング層がアニール処理後の暗電流に影響を与えていることを確認するために以下のような測定を行なった。
本測定で用いる光電変換素子は、下部電極/光電変換層/上部電極をこの順で積層した構成である。下部電極はITOである。光電変換層は、化合物2とフラーレンの混合膜(化合物2:フラーレン=1:3(質量比))を、真空中で共蒸着により400nmの膜厚で形成する。上部電極は、ITOを高周波マグネトロンスパッタにより、5nmの膜厚で形成する。作製した素子を、大気に曝すことなく、水分、酸素をそれぞれ1ppm以下に保ったグローブボックスに搬送し、ホットプレート上でアニール処理を行なう。
光電変換素子を下記のアニール条件でそれぞれアニール処理を行い、暗電流を測定した。
(アニール条件1)初期温度50℃とし、2℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温して1時間待機し、その後、ホットプレートから素子を離し、自然冷却した。
(アニール条件2)初期温度50℃とし、10℃/minの昇温速度で最終温度100℃まで昇温して1時間待機し、その後、ホットプレートから素子を離し、自然冷却した。
上部電極に正のバイアスを3.0E+5V/cm印加して暗電流を測定した。アニール処理を行なう前の光電変換素子の暗電流値は3.1E−7 [A/cm]であった、アニール条件1でアニール処理を行った光電片変換素子の暗電流値は、3.1E−7 [A/cm]であった。アニール条件2でアニール処理を行った光電片変換素子の暗電流値は、3.1E−7 [A/cm]であった。
この測定結果より、電荷ブロッキング層を備えていない光電変換素子では、アニール処理の前後で暗電流が変化していないことがわかった。言い換えると、上部電極、下部電極、光電変換層、電荷ブロッキング層を備えた構成の光電変換素子では、電荷ブロッキング層がアニール処理後の暗電流の増加に影響を及ぼしていると考えられる。
本発明は、以下の事項を開示するものである。
(1)一対の電極と、前記一対の電極間に設けられた光電変換層と、前記一対の電極と前記光電変換層との間の少なくとも一方に設けられた電荷ブロッキング層とを備えた光電変換素子の製造方法であって、
前記電荷ブロッキング層を所定の膜厚で形成するステップと、
前記光電変換素子をアニール処理するステップと、
前記アニール処理を行なう際に、前記光電変換素子の昇温速度を、暗電流が増加しない所定の速度以下とするステップとを有する光電変換素子の製造方法。
(2)上記(1)に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記所定の速度を5℃/min以下とする光電変換素子の製造方法。
(3)上記(1)又は(2)に記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記電荷ブロッキング層の前記膜厚を20nm以上とする光電変換素子の製造方法。
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の光電変換素子の製造方法であって、
前記電荷ブロッキング層が、少なくともアモルファス性の有機材料で構成された層を含む光電変換素子の製造方法。
11 下部電極
12 光電変換層
14 上部電極
15 電荷ブロッキング層

Claims (3)

  1. 一対の電極と、前記一対の電極間に設けられた光電変換層と、前記一対の電極と前記光電変換層との間の少なくとも一方に設けられた電荷ブロッキング層とを備えた光電変換素子の製造方法であって、
    前記一対の電極、前記光電変換層、及び前記電荷ブロッキング層を形成した後、前記光電変換素子をアニール処理するステップを備え
    前記アニール処理するステップでは、前記光電変換素子を、昇温速度を5℃/min以下として80℃〜120℃の範囲まで昇温し、
    前記光電変換層は、p型有機半導体とフラーレン又はフラーレン誘導体の混合層であり、
    前記電荷ブロッキング層は、下記一般式で表される化合物を含む材料により構成される光電変換素子の製造方法。
    Figure 0005401112

    一般式中、R 〜R 10 はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Lは1価又は2価以上の連結基を表し、mは0または1を表し、nは1〜4の整数を表す。
  2. 請求項1に記載の光電変換素子の製造方法であって、
    前記一般式中、R 〜R 10 はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、Lは2価の連結基を表し、mは0または1を表し、nは2を表す。また、R 〜R 10 は結合して環を形成してもよい。
  3. 請求項1又は2に記載の光電変換素子の製造方法であって、 前記電荷ブロッキング層膜厚を20nm以上とする光電変換素子の製造方法。
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