JP5454848B2 - 光電変換素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光電変換素子、撮像素子、及び、光電変換素子の製造方法に関する。
従来、一対の電極間に光電変換層が設けられ、電極間に電界を印加することで電子や正孔などの電荷を生成する構成の光電変換素子や該光電変換素子を備えた撮像素子がある。光電変換素子としては、例えば、下記特許文献に示すものがある。
特開平6−232435号公報
光電変換素子を備えた撮像素子では、光電変換効率の向上とともに、暗電流の低減と高速光応答性とがいずれも必要となる。高速光応答性は、高電界を印加することで向上するが、暗電流が増加してしまう問題があった。
一方で、暗電流の低減を図るため、従来では、電極と光電変換層との間に電荷ブロッキング層を設ける構成が提案されているが、電荷ブロッキング層を設けるだけの構成では、暗電流の低減を図ることができるが、光電変換効率を十分に向上させることができず、高いS/N比を得ることができない。
特許文献1は、配向性有機化合物層と非晶質性有機化合物層とを積層した光電変換層を有する光電変換素子の構成に関するが、光電変換効率の向上及び暗電流の低減の点では十分とはいえず、更なる改善の余地があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、光電変換効率の向上と暗電流の低減、さらに高速応答性とを同時に実現することができる光電変換素子、撮像素子、及び、光電変換素子の製造方法を提供することにある。
本発明の光電変換素子の製造方法は、一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられた光電変換層とを備えた光電変換素子の製造方法であって、前記光電変換層が複数層で構成され、前記複数層の各層がドナー−アクセプタ連結構造で且つ同じ有機化合物から構成され、前記複数層のうちの2つの層の一方を、前記一方の層を構成する前記有機化合物の温度を室温より小さい第一の温度にした状態で形成し、前記2つの層の他方の層を、前記他方の層を構成する前記有機化合物の温度を前記第一の温度とは異なる温度にした状態で形成するものである。
本発明によれば、複数種類の有機化合物によって光電変換層を形成する必要がなく、一種類の有機化合物のみによって光電変換層を形成し、光電変換効率を向上するとともに同時に暗電流の低減することで高いS/N比を得ることができ、また、光応答速度も向上することができる。
本発明によれば、光電変換効率を向上するとともに同時に暗電流の低減することで高いS/N比を得ることができ、また、光応答速度も向上することができる光電変換素子、撮像素子、及び、光電変換素子の製造方法を提供することができる。
光電変換素子は、一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられた光電変換層とを備えた光電変換素子であって、前記光電変換層が複数層で構成され、前記複数層の各層がドナー−アクセプタ連結構造で且つ同じ有機化合物から構成され、前記複数層の一部の層が他の層と配向性が異なる構成である。
本発明者は、鋭意検討の結果、光電変換層を作製する場合、一種類の有機化合物からなる複数層で構成され、前記複数層が、該複数層のうちの他の層と異なる配向性の層を少なくとも1つ含む構成とすることで、光電変換素子の光電変換効率を向上させるとともに同時に暗電流の低減を図ることができ、また、光応答速度を向上させることができることを見出した。
ここで、配向性とは、光電変換層を構成する有機化合物の分子会合の配向秩序状態を意味し、配向性が異なるとは、結晶・非晶質を区分けしているものではない。
ここで、本発明でいう、ドナー−アクセプタ連結構造とは、同一分子内にドナー部とアクセプタ部を有し、かつ、その化合物が非対称的な構造となるものをいう。このとき、ドナー−アクセプタ連結構造は、一般式としてまず(ドナー)-(連結基)-(アクセプタ)で定義され、ドナー部の一般式としては、5員または6員の含窒素複素環を形成する原子団、またはアニリンを部分骨格として持つ原子団。連結基は1以上のメチン鎖、アクセプタは二重結合Cに電子吸引性基がついているものである。
異なる配向性の層を形成する方法としては、例えば、光電変換層を構成する有機化合物の成膜時に層の温度を室温より小さい温度とした状態で形成する。こうすることで、光電変換層を構成する有機材料の分子会合の配向秩序状態が変わる現象を生じせしめ、この結果、配向性を変化させることができる。ここで層を冷却する手段としては、例えば、光電変換層を構成する有機化合物の成膜時に、該有機化合物が成膜される下地基板を冷却する方法がある。
層の分子会合は、分子の運動エネルギーと分子の双極子モーメントによる配向エネルギーの相関で決まる。ドナー−アクセプタ連結構造の有機化合物を成膜して光電変換層を形成する場合に、層の温度を室温より小さい温度に冷却することで、有機化合物に含まれる分子のドナー部(アクセプタ部)と他分子のアクセプタ部(ドナー部)の相関が強くなり、この結果、光電変換層の分子会合の状態がより秩序化する配向方向に変化し、電荷分離が促進されるような状態に変化していると考えられる。こうして、光電変換効率が向上する。また、光電変換層を構成する複数層のうち分子会合がよりランダムな層を電極と接合させることで、接触性が向上し、暗電流を低減させ、光応答速度を向上させることが可能である。
例えば、2層の光電変換層を形成する場合には、それぞれの層を同じ種類で、かつ、非晶質の有機化合物で構成する。このとき、一方の層を有機化合物の温度が室温と同じ状態となるように成膜し、他方の層を有機化合物の温度が室温(例えば25℃)より小さい温度となるような状態で成膜する。なお、光電変換層は、2層に限らず、3層以上とすることができる。このとき、複数層の少なくとも1層が、該複数層のうちの他の層と異なる配向性とすればよい。
ドナー−アクセプタ連結構造の有機化合物としては、双極子モーメントが0D(デバイ)以上である有機材料が好ましく、特に、双極子モーメントが1.0D以上である有機材料が好ましい。双極子モーメントは、化合物の骨格が対称的な材料においては小さな値を示し、ドナー−アクセプタ連結構造の有機化合物において大きな値を示す。
室温より小さい温度に冷却された下地基板にドナー−アクセプタ連結構造の有機化合物を成膜して光電変換層を形成することで、複数の有機化合物を混合する必要がなく、単一の有機化合物によって、高光電変換効率の光電変換素子を得ることができる。
ドナー−アクセプタ連結構造の有機化合物としては、4Hピラン化合物、ドナー−アクセプタ直結型化合物、メロシアニン化合物を用いることが好ましい。
双極子モーメントが1.0D以上のドナー−アクセプタ連結構造の有機化合物としては、例えば下記化学式で示すものがある。
ドナー−アクセプタ連結構造の有機化合物としては、下記の一般式(1)で示される部分構造を含む化合物が好ましい。
一般式(1)
式中、XはO、S、N−R10を表す。R10は水素原子又は置換基を表す。R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は電子求引性基を表す。また、R、Rは連結して環を形成してもよい。Rは結合手、水素原子または置換基を表すが、少なくとも1つは結合手(−)である。nrは1〜4の整数を表す。nrが2以上のときはRは同じでも異なっていてもよい。2位と3位のR同士、5位と6位のR同士はそれぞれ互いに連結して環を形成してもよい。
本発明で用いられる一般式(1)で示される部分構造を含む化合物、特に4Hピラン系化合物について詳細に記載する。
Xとして好ましくは酸素原子、N−R10であり、より好ましくは酸素原子である。
10で表される置換基は下記の置換基Wとして記載のものが適用される。また、R、Rで表される置換基は下記置換基Wが適用されるが、R、Rの少なくとも一方は電子求引性基である。前記RとRに含まれるSp炭素の総和が3以上であることが好ましい。
置換基Wとしてはハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といっても良い)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が挙げられる。
Rが結合手であるときは一般式(1)におけるX含有6員環の2位及び/または6位に位置する場合が好ましく、2位または6位に位置する場合がより好ましい。Rが水素原子または置換基を表すときは、前記X含有6員環の2、3、5位に位置する場合が好ましい。R同士が連結して環を形成する場合、該環は前記のWが共同して環を形成できる環と同じものが挙げられる。nrは1〜4の整数を表すが、nrが1または2である場合が好ましい。nrが1のときは、Rは結合手であることが好ましく、nrが2のときは、二つのRは共に結合手であるか、一つが結合手であることが好ましく、より好ましくは、一つが結合手である。
以下に、一般式(1)で表される部分構造を含む化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。


また、4Hピラン化合物としては、例えば、下記化学式で示すものを用いることができる。


ドナー−アクセプタ直結型化合物としては、下記の一般式(2)で示される化合物を含む。
一般式(2)
式中、Z11は5または6員環を形成するのに必要な原子群を表す。L、L、Lはそれぞれ無置換メチン基、または置換メチン基を表す。Dは原子群を表す。nは0以上の整数を表す。
前記Dが下記の一般式(2−2)で示されるものとすることができる。
一般式(2−2)
式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。またRとR、RとR、RとR、RとR、RとRがそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
前記Dが下記の一般式(2−3)で示されるものとすることができる。
一般式(2−3)
式中、R11〜R14、R20〜R24、R30〜R34はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。またR10〜R14、R20〜R24、R30〜R34がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
前記Z11により形成される環が下記の一般式(2−4)で示されるものとすることができる。
一般式(2−4)
41〜R44はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
前記Z11により形成される環が下記の一般式(2−5)で示されるものとすることができる。
一般式(2−5)
41、R44、R45〜R48はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
前記一般式(2)におけるnが0である光電変換素子とすることができる。
前記L、L、Lがそれぞれ無置換メチン基である光電変換素子とすることができる。
上記一般式(2)の置換基Wとしてはハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といっても良い)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が挙げられる。
さらに詳しくは、Wは、下記の(1)〜(48)などを表す。
(1)ハロゲン原子
例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子
(2)アルキル基
直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、(2−a)〜(2−e)なども包含するものである。
(2−a)アルキル基
好ましくは炭素数1から30のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)
(2−b)シクロアルキル基
好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)
(2−c)ビシクロアルキル基
好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基(例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)
(2−d)トリシクロアルキル基
好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のトリシクロアルキル基(例えば、1−アダマンチル)
(2−e)さらに環構造が多い多環シクロアルキル基
なお、以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。
(3)アルケニル基
直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、(3−a)〜(3−c)を包含するものである。
(3−a)アルケニル基
好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基(例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)
(3−b)シクロアルケニル基
好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)
(3−c)ビシクロアルケニル基
置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基(例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)
(4)アルキニル基
好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)
(5)アリール基
好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル、フェロセニル)
(6)複素環基
好ましくは、5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3から50の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。
(例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル。なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でも良い)
(7)シアノ基
(8)ヒドロキシ基
(9)ニトロ基
(10)カルボキシ基
(11)アルコキシ基
好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)
(12)アリールオキシ基
好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)
(13)シリルオキシ基
好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)
(14)ヘテロ環オキシ基
好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)
(15)アシルオキシ基
好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)
(16)カルバモイルオキシ基
好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)
(17)アルコキシカルボニルオキシ基
好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基(例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)
(18)アリールオキシカルボニルオキシ基
好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)
(19)アミノ基
好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基(例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)
(20)アンモニオ基
好ましくは、アンモニオ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、複素環が置換したアンモニオ基(例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)
(21)アシルアミノ基
好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基(例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)
(22)アミノカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ(例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)
(23)アルコキシカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)
(24)アリールオキシカルボニルアミノ基
好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカ
ルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)
(25)スルファモイルアミノ基
好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)
(26)アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基
好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ(例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)
(27)メルカプト基
(28)アルキルチオ基
好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)
(29)アリールチオ基
好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ(例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)
(30)ヘテロ環チオ基
好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)
(31)スルファモイル基
好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)
(32)スルホ基
(33)アルキルもしくはアリールスルフィニル基
好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)
(34)アルキルもしくはアリールスルホニル基
好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)
(35)アシル基
好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基(例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)
(36)アリールオキシカルボニル基
好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)
(37)アルコキシカルボニル基
好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)
(38)カルバモイル基
好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル(例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)
(39)アリールおよびヘテロ環アゾ基
好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基(例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)
(40)イミド基
好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド
(41)ホスフィノ基
好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)
(42)ホスフィニル基
好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基(例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)
(43)ホスフィニルオキシ基
好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)
(44)ホスフィニルアミノ基
好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)
(45)ホスフォ基
(46)シリル基
好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)
(47)ヒドラジノ基
好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基(例えば、トリメチルヒドラジノ)
(48)ウレイド基
好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のウレイド基(例えばN,N−ジメチルウレイド)
また、2つのWが共同して環を形成することもできる。このような環としては芳香族、または非芳香族の炭化水素環、または複素環や、これらがさらに組み合わされて形成された多環縮合環が挙げられる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、およびフェナジン環が挙げられる。
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、−CONHSO−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SONHSO−基(スルフォニルスルファモイル基)が挙げられる。より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
本発明で用いられる一般式(2)で示される化合物について詳細に記載する。
一般式(2)中、Z11は5または6員環を形成するのに必要な原子群を表す。L、L、Lはそれぞれ無置換メチン基、または置換メチン基を表す。Dは原子群を表す。nは0以上の整数を表す。
11は5または6員環を形成するのに必要な原子群を表し、形成される環としては、通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましく、その具体例としては例えば以下のものが挙げられる。
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等。
(b)ピラゾリノン核:例えば1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン等。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン等。
(d)オキシインドール核:例えば1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール等。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えばバルビツル酸又は2−チオバルビツル酸及びその誘導体等。誘導体としては例えば1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2―ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えばローダニン及びその誘導体等。誘導体としては例えば3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等。
(h)チアナフテノン核:例えば3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイド等。
(i)2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン等。
(j)2,4−チアゾリジンジオン核:例えば2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノン等。
(l)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(m)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(n)イミダゾリン−5−オン核:例えば2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等。
(o)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオン等。
(p)ベンゾチオフェンー3−オン核:例えばベンゾチオフェンー3−オン、オキソベンゾチオフェンー3−オン、ジオキソベンゾチオフェンー3−オン等。
(q)インダノン核:例えば1−インダノン、3−フェニルー1−インダノン、3−メチルー1−インダノン、3,3−ジフェニルー1−インダノン、3,3−ジメチルー1−インダノン等。
11で形成される環として好ましくは、1,3−ジカルボニル核、ピラゾリノン核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核、2,4−チアゾリジンジオン核、2,4−イミダゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核、2−イミダゾリン−5−オン核、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェンー3−オン核、インダノン核であり、より好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェンー3−オン核、インダノン核であり、さらに好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)であり、特に好ましくは1,3−インダンジオン核である。
11により形成される環として好ましいものは下記の式で表される。
は5ないし6員環を形成するに必要な原子群を表す。Zとしては上記Z11により形成される環中から選ぶことができ、好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)であり、特に好ましくは1,3−インダンジオン核である。
により形成される環が前記一般式(2−4)で示される基または前記一般式(2−5)で示される基である場合が好ましい。
前記一般式(2−4)で示される基の場合、R41〜R44はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば置換基Wとして挙げたものが適用できる。また、R41〜R44はそれぞれ隣接するものが、結合して環を形成することができ、R42とR43が結合して環(例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環)を形成する場合が好ましい。R41〜R44としては全てが水素原子である場合が好ましい。
前記一般式(2−4)で示される基が前記一般式(2−5)で示される基である場合が好ましい。
前記一般式(2−5)で示される基の場合、R41、R44、R45〜R48はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば置換基Wとして挙げたものが適用できる。R41、R44、R45〜R48としては全てが水素原子である場合が好ましい。
、L、Lはそれぞれ独立に、無置換メチン基、または置換メチン基を表す。置換メチン基の置換基は前記置換基Wが挙げられるが、L、L、Lは全てが無置換メチン基である場合が好ましい。
nは0以上の整数を表し、好ましくは0以上3以下の整数を表し、より好ましくは0である。nを増大させた場合、吸収波長域が長波長にする事ができるか、熱による分解温度が低くなる。可視域に適切な吸収を有し、かつ蒸着成膜時の熱分解を抑制する点でn=0が好ましい。
は原子群を表す。前記Dは−NR(R)を含む基であることが好ましく、更に、前記Dが−NR(R)が結合した2価のアリーレン基を表す場合が好ましい。R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R、R、Lは環を形成してもよい。R、Rは互いに置換基同士が結合して環(好ましくは5員又は6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよく、また、R、RはそれぞれがL中の置換基と結合して環(好ましくは5員又は6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよい。R、Rで表される置換基は前記置換基Wが挙げられるが、好ましくは、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基である。
はパラ位にアミノ基が結合した2価のアリーレン基(好ましくはフェニレン基)である場合が好ましい。該アミノ基は置換されていてもよく、更に該アミノ基の置換基はアリーレン基中のアリール基(好ましくはフェニル基のベンゼン環)の置換基と結合して環を形成しうる。該アミノ基の置換基としては、前記置換基Wが挙げられるが、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基が好ましい。
、Rが脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基の場合の置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルホニル基、シリル基、芳香族ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、芳香族ヘテロ環基である。具体例は前記置換基Wで挙げたものが適用できる。
、Rとして好ましくはアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基である。R、Rとして特に好ましくはアルキル基、Lと連結して環を形成するアルキレン基、アリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、Lと連結して5ないし6員環を形成するアルキレン基、置換又は無置換のフェニル基である。
前記Dが一般式(2−8)、(2−9)または(2−10)で表される基である場合も好ましい。
一般式(2−8)
式中、R51〜R54はそれぞれ独立に、水素または置換基を表す。R52とR53、R51とR52はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
一般式(2−9)
式中、R61〜R64はそれぞれ独立に、水素または置換基を表す。R62とR63、R61とR62はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
一般式(2−10)
式中、R71〜R73はそれぞれ独立に、水素または置換基を表す。R72とR73はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
前記Dは前記一般式(2−2)または(2−3)で示される基がより好ましく用いられる。
一般式(2−2)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。またRとR、RとR、RとR、RとR、RとRがそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
〜Rにおける置換基は前記置換基Wが挙げられるが、好ましくはR〜Rが水素原子、またはRとRもしくはRまたはRが5員環を形成する場合であり、より好ましくはR〜Rのいずれもが水素原子である場合である。
、Rにおける置換基は前記置換基Wが挙げられるが、置換基の中でも、置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、置換アリール基の置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチレン基、フェナントリル基、アントリル基)が好ましい。R、Rは好ましくはフェニル基、アルキル置換フェニル基、フェニル置換フェニル基、ナフチレン基、フェナントリル基、アントリル基である。
一般式(2−3)中、R10〜R14、R20〜R24、R30〜R34はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。またR10〜R14、R20〜R24、R30〜R34がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
11〜R14、R20〜R24、R30〜R34で表される置換基は前記置換基Wが挙げられるが、好ましくはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、)である。中でも、R20、R30が前記置換基である場合が好ましく、且つ、その他のR11〜R14、R21〜R24、R31〜R34は水素原子である場合がより好ましい。
以下に、一般式(2)で示される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
メロシアニン化合物としては、例えば、下記一般式(3)で示されるものを用いることができる。
一般式(3)
一般式(3)式中、Zは5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表す。但し、Zがチアゾリン核及びチアゾール核を形成する原子群の場合を除く。Zaは5員または6員環を形成する原子群を表す。Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。L11〜L14はメチン基を表し、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。p1は0または1を表す。n1は0〜4の整数を表し、nが2以上の時、複数のL13、L14は同じでも異なってもよい。Mは電荷を中和するイオンを表し、mは電荷の中和に必要な数を表す。
は特定の5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表す。形成される5員または6員の含窒素複素環として好ましくは炭素原子数(以下C数という)3〜25のオキサゾール核(例えば、2−3−エチルオキサゾリル、2−3−スルホプロピルオキサゾリル、2−3−スルホプロピルベンズオキサゾリル、2−3−エチルベンズオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトオキサゾリル、2−3−エチル−α−ナフトオキサゾリル、2−3−メチル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−5−クロロ−3−エチル−α−ナフトオキサゾリル、2−5−クロロ−3−エチルベンズオキサゾリル、2−5−クロロ−3−スルホプロピルベンズオキサゾリル、2−5、6−ジクロロ−3−スルホプロピルベンズオキサゾリル、2−5−ブロモ−3−スルホプロピルベンズオキサゾリル、2−3−エチル−5−フェニルベンズオキサゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンズオキサゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンズオキサゾリル、2−5−(1−ピロリル)−3−スルホプロピルベンズオキサゾリル、2−5,6−ジメチル−3−スルホプロピルベンズオキサゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンズオキサゾリル、2−3−エチル−5−スルホベンズオキサゾリルなどが挙げられる)、C数3〜25のイミダゾール核(例えば、2−1,3−ジエチルイミダゾリル、2−5,6−ジクロロ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−5、6−ジクロロ−3−エチル−1−スルホプロピルベンゾイミダゾリル、2−5−クロロ−6−シアノ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−5−クロロ−1,3−ジエチル−6−トリフルオロメチルベンゾイミダゾリルなどが挙げられる)、C数10〜30のインドレニン核(例えば、3,3−ジメチル−1−ペンチルインドレニン、3,3、−ジメチル−1−スルホプロピルインドレニン、5−カルボキシ−1、3,3−トリメチルインドレニン、5−カルバモイル−1、3,3−トリメチルインドレニン、1,3,3,−トリメチル−4,5−ベンゾインドレニンなどが挙げられる)、C数9〜25のキノリン核(例えば、2−1−エチルキノリル、2−1−スルホブチルキノリル、4−1−ペンチルキノリル、4−1−スルホエチルキノリル、4−1−メチル−7−クロロキノリル、などが挙げられる)、C数3〜25のセレナゾール核(例えば、2−3−メチルベンゾセレナゾリルなどが挙げられる)、C数5〜25のピリジン核(例えば、2−ピリジルなどが挙げられる)などが挙げられ、さらに他にオキサゾリン核、セレナゾリン核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、イミダゾリン核、イミダゾ[4,5−キノキザリン]核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核、ピロリジン核を挙げることができる。
これらの含窒素複素環は置換されてもよく、置換基(以下、「置換基W」と称す)としてはハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が挙げられる。
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられ、好ましくはベンゼン環である。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
により形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、オキサゾリン核、ベンズイミダゾール核、インドレニン核、ピロリジン核であり、さらに好ましくはオキサゾール核、またはインドレニン核であり、最も好ましくはインドレニン核、ベンズオキサゾール核またはナフトオキサゾール核である。
一般式(3)で表されるRは、水素原子、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)であり、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)である。
11〜L14はそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZ1上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。L13、L14は無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換メチン基である。
13、L14は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
は0または1であり、好ましくは0である。nは0〜4の整数を表し、より好ましくは0〜3を表し、さらに好ましくは0または1を表す。n1が2以上の時、複数のL13、L14は同じでも異なってもよい。
は電荷を中和するイオンを表わし、mは電荷の中和に必要な数を表す。
Zaによって形成される環としてはいかなるものでも良いが、好ましくは複素環(好ましくは5又は6員の複素環)である。ここで複素環としてはいかなるものでも良いが、好ましく一般のメロシアニン色素の酸性核である。好ましいZaは酸性核を形成するために必要な残りの原子群を表す。
ここでいう酸性核は、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、197〜200頁に記載されている。酸性核は、具体的には、米国特許第3、567、719号、第3、575、869号、第3、804、634号、第3、837、862号、第4、002、480号、第4、925、777号、特開平3ー167546号、米国特許第5,994,051号、米国特許5,747,236号などに記載されているものが挙げられる。
酸性核は、炭素、窒素、及び/又はカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる複素環(好ましくは5員又は6員の含窒素複素環)を形成するとき好ましく、さらに好ましくは炭素、窒素、及び/又はカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる5員又は6員の含窒素複素環を形成するときである。
酸性核として、具体的には、例えば次の核が挙げられる。
2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3、5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリジン−2、5−ジオン、2−チオオキサゾリン−2、4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2、4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2、4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1、3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1、1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5、7−ジオキソ−6、7−ジヒドロチアゾロ[3,2−a]ピリミジン、シクロヘキサン−1、3−ジオン、3、4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1、3−ジオキサン−4、6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2、4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1、3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1、2、3、4−テトラヒドロキノリン−2、4−ジオン、3−オキソ−2、3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1、1−ジオキサイド、3−ジシアノメチン−2、3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1、1−ジオキサイドの核。
これらの酸性核には、環が縮環していても、置換基(例えば前述のW)が置換していてもよい。
Zaとして、さらに好ましくはヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2、4−ジオン、チアゾリジン−2、4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2、4−ジチオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、特に好ましくは、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−オキサゾリン−5−オン、ローダニン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはローダニンである。
一般式(3)で表される化合物の具体例を以下に記載する。
本発明の一実施形態を説明するための光電変換素子及び撮像素子の構成を説明する。
本発明の材料組合せを下記の光電変換膜に含むことが好ましいが、この光電変換膜を含む光電変換層に用いられる前記本発明の材料組合せ以外の材料、更に前記光電変換膜を含む光電変換素子に用いる他の膜等の構成要素及び、前記光電変換素子を含む撮像素子についての好ましい構成を以下に記載する。
電極からの電荷(電子,正孔)の光電変換層への注入を抑制して、暗電流を効果的に減少させることが可能な光電変換素子を提供できる構成を以下に記載する。
光電変換素子は、一対の電極と、この一対の電極の間に配置された光電変換層を含む光電変換素子において、一対の電極の一方と光電変換層との間に、一対の電極の一方から光電変換層に電荷が注入されるのを抑制する第一の電荷ブロッキング層を設けるにあたり、第一の電荷ブロッキング層を複数層構造とすることで、第一の電荷ブロッキング層が単層構造のときよりも暗電流を抑制できる。更に、一対の電極の他方と光電変換層との間に、一対の電極の他方から光電変換層に電荷が注入されるのを抑制する第二の電荷ブロッキング層を設ける構成においても、第二の電荷ブロッキング層を複数層構造とすることで、第二の電荷ブロッキング層が単層構造のときよりも暗電流を抑制できる。更に、第一の電荷ブロッキング層及び第二の電荷ブロッキング層のそれぞれを構成する複数層のうち少なくとも2つの層が、それぞれ異なる材料からなる場合に、暗電流抑制効果をより向上させられる。更に、複数層のうち少なくとも2つの層が、それぞれ、無機材料からなる層と、有機材料からなる層である場合に、暗電流抑制効果の向上を図ることができる
図1は、電荷ブロッキング層を有する光電変換素子の構成の一例を示す断面模式図である。
図1中、参照符号200は光電変換層であり、参照符号202は2層構造の電荷ブロッキング層であり、参照符号202a,202bは、電荷ブロッキング層202を構成する層である。また、参照符号201、204は電極である。
例えば電極204を光入射側の電極としたとき、電極204は、光電変換層200に光を入射させる必要があるため、透明性の高い材料で構成することが好ましい。透明性の高い電極としては、透明導電性酸化物(TCO)が挙げられる。又、電極201は、後述する撮像素子の構成にあるように、その下方に光を透過させる必要がある場合もあるため、同様に透明性の高い材料で構成することが好ましい。電極201を光入射側の電極としたときでも、電極204と電極201は透明性の高い材料で構成しておくことが好ましい。
電荷ブロッキング層202は、電極201と電極204に電圧が印加されたときに、電極204から光電変換層200へ電荷が移動するのを抑制するための層である。電荷ブロッキング層202が単層構造であると、電荷ブロッキング層202を構成する材料自体には中間準位(不純物準位等)が存在し、この中間準位を介して電荷(電子、正孔)の移動が生じて暗電流が増大してしまう。そこで、この構成例では、暗電流の増大を防止するために、電荷ブロッキング層202を単層ではなく2層構造としている。
電荷ブロッキング層202を構成する層202aと層202bとの間に界面ができることによって、各層202a,202bに存在する中間準位に不連続性が生じ、中間準位等を介したキャリアの移動がしにくくなるため、暗電流を抑制することができると考えられる。但し、各層202a,202bが同一材料であると、各層202a,202bに存在する中間準位が全く同じとなる場合も有り得るため、暗電流抑制効果を更に高めるために、各層202a,202bを構成する材料を異なるものにすることが好ましい。
図2は、図1に示す2層構造の電荷ブロッキング層における中間準位の様子を示すエネルギーダイヤグラムであり、(a)は、層202a,202bがそれぞれ同一の材料からなる場合を示し、(b)は、各層202a,202bがそれぞれ異なる材料からなる場合を示す。
層202aと層202bの材料を同じにした場合、上述したように、界面が発生するため、単層構造に比べれば、暗電流は抑制することができる。しかし、図2(a)に示すように、各層202a,202bの中間準位(S1,S2)が同程度のエネルギー位置にある場合には、各層202a,202bの中間準位を経由した電荷の移動(図中、矢印で示される)が発生してしまう。
ここで、層202aと層202bの材料を異なるものにすると、例えば、図2(b)に示すように、層202bの中間準位(S20)が、層202aの中間準位(S10)よりも高いエネルギー位置にくるため、そのエネルギー準位の差が障壁となり、電荷の移動がその分、抑制される。このように、電荷ブロッキング層202を構成する2層をそれぞれ異なる材料で形成することにより、各層の中間準位の位置を確実に分散させることができ、これにより、中間準位を経由したキャリア移動を抑制する効果が高められることになる。
図1では、光電変換素子が電荷ブロッキング層を1つ有する例を示したが、図1において、電極201と光電変換層200との間に、電極201と電極204に電圧が印加されたときに、電極201から光電変換層200へ電荷が移動するのを抑制するための電荷ブロッキング層を設けた場合でも、この電荷ブロッキング層を2層構造にすることで、暗電流を抑制することができ、更に、2層の材料をそれぞれ異なるものとすることで、より暗電流を抑制することができる。
また、以上の説明では、電荷ブロッキング層202が2層構造の例を示したが、これは3層以上の構造であっても良い。この場合、電荷ブロッキング層を構成する層のうち少なくとも2つの層が、それぞれ異なる材料となっていれば、上述したように、電荷ブロッキング層内部に中間準位の段差を確実に形成することができる。例えば、電荷ブロッキング層を3層構造とした場合には、図3(a)に示すように、最下層と最上層を材料Aとし、その間の中間層を材料Aとは異なる材料Bとすれば良い。又は、図3(b)に示すように、最下層を材料Bとし、中間層と最上層を材料Aとすれば良い。又は、図3(c)に示すように、最下層と中間層を材料Aとし、最上層を材料Bとすれば良い。又は、図3(d)に示すように、最下層を材料A,Bとは異なる材料Cとし、中間層を材料Bとし、最上層を材料Aとすれば良い。
図4は、光電変換素子の別例(3層構造の電子ブロッキング層と3層構造の正孔ブロッキング層を有する光電変換素子)を示す断面模式図である。図5は、図4の光電変換素子に電圧を印加した際の、電子ブロッキング層及び正孔ブロッキングの中間準位を介した電荷移動の様子を説明するためのエネルギーダイヤグラムである。
図4の光電変換素子は、透明基板180上に画素電極(透明電極)190が設けられ、その透明電極190上に、3層構造の電子ブロッキング層192(192a〜192cの各層が積層された構造をもつ)と、光電変換層200と、正孔ブロッキング層203(203a〜203cの各層が積層された構造をもつ)と、が順次積層されており、さらに、その上に対向電極300が設けられた構造を有する。各層192a〜192cのうち少なくとも2つの層が、それぞれ異なる材料からなる。ここでは、各層192a〜192cの材料がそれぞれ異なるものとする。同様に、各層203a〜203cのうち少なくとも2つの層が、それぞれ異なる材料からなる。ここでは、各層203a〜203cの材料がそれぞれ異なるものとする。
このような構成により、図5に示すように、電圧印加時においては、電子ブロッキング層192における各層の中間準位(S5,S6,S7)のエネルギー準位は異なり、その段差がエネルギー障壁となって、電子の移動がしにくくなる。同様に、正孔ブロッキング層203における各層の中間準位(S8,S9,S10)のエネルギー準位は異なり、その段差がエネルギー障壁となって、正孔の移動がしにくくなる。
次に、ブロッキング層の複数積層化について、中間準位に関する内容以外の効果について説明する。
これまで説明した、積層化により各層に存在する中間準位をずらす手法は「注入された電荷の輸送を阻害する」ことにより暗電流を抑制するが、ブロッキング層の複数層化は「電極からの電荷の注入を抑制する」ことにより暗電流を低減する効果も有する。
電極からの電荷の注入を抑制するには、「電極と、それと接する層の間のエネルギー障壁を大きくする」、「ブロッキング層を均質にし、電極がブロッキング層以下の層(光電変換層)に対して近接しないようにする」ことが重要である。
前者は、エネルギー的な注入障壁の設置という解決手法であり、後者は、物理的な構造として、膜の微細な欠陥に電極材料が入り込み、光電変換層と電極が近接してリーク箇所ができてしまうことを防止する解決手法である。
ブロッキング層を複数層化した構造にすると、複数層のうちの電極に接する層を、電極とエネルギー障壁差があるように設定し、電極に接しない層を、電荷輸送性があって且つ均一な層としてリーク箇所の発生を防止するように設定することができ、各層に機能を分割して持たせることができる。
電極と接するブロッキング層として無機材料からなる無機材料層を用い、その下層(無機材料層と光電変換層との間)のブロッキング層として有機材料からなる有機材料層を用いることで、より顕著に暗電流が抑制され、かつ信号電荷の読出しも阻害させないことが可能である。
即ち、図1において、層202aを無機材料層とし、層202bを有機材料層とする、図3(b),(d)において、Aを無機材料層とし、Bを有機材料層とする、図3(c)において、Bを無機材料層とし、Aを有機材料層とする、図4において192c,203aを無機材料層とし、192a,192b,203b,203cを有機材料層とする、ことで、より顕著に暗電流が抑制され、かつ信号電荷の読出しも阻害されない。
無機材料層を構成する無機材料としては、Si、Mo、Ce、Li、Hf、Ta、Al、Ti、Zn、W、Zrのいずれかを用いることが好ましい。又は、無機材料としては、酸化物を用いることが好ましい。酸化物としては特にSiOを用いることが好ましい。
無機材料層は、電極からの電荷注入を防止するために、隣接する電極の仕事関数との間に、エネルギー障壁が生じるようなイオン化エネルギーIpを有する必要があり、より大きいIpを持つ事が望ましい。ただし、電荷ブロッキング層がこの無機材料層単体だけでは、層厚が薄いと、電極及び光電変換層間にリーク箇所が発生することで十分な注入防止効果が得られず、層厚が厚いと電荷輸送性が減少して、信号電荷を読み出す事が難しくなる。
そこで、この無機材料層に加えて、その下層に有機材料層を設けることが重要である。有機材料層は、光電変換層で発生した信号電荷を輸送するに十分な電荷輸送性を持つとともに、均一な層であり、材料から発生する暗電流の原因となるキャリアが少ない材料であることが望ましい。
これにより、ブロッキング層由来の暗電流を増加させず、かつ、光電変換効率を減少させずに、ブロッキング層を均一で厚いものとすることができ、無機材料層と併せた効果により、暗電流を抑制する事が可能になる。
次に、正孔ブロッキング層および電子ブロッキング層を構成する有機材料の候補について説明する。
(正孔ブロッキング層)
正孔ブロッキング層には、電子受容性有機材料を用いることができる。
電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(4-(ジメチルアミノスチリル))-4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。
正孔ブロッキング層の厚みは、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。この厚みが薄すぎると、暗電流抑制効果が低下してしまい、厚すぎると光電変換効率が低下してしまうためである。
正孔ブロッキング材料の候補として、具体的には、下記のHB−1〜HB−5、BCPで示される材料が例として挙げられる。Eaはその材料の電子親和力、lpはその材料のイオン化ポテンシャルを示す。
実際に正孔ブロッキング層に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換層の材料により、選択の幅が規定される。隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換層の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが良い。
(電子ブロッキング層)
電子ブロッキング層には、電子供与性有機材料を用いることができる。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−M
TDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、十分なホール輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
電子ブロッキング層の厚みは、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。この厚みが薄すぎると、暗電流抑制効果が低下してしまい、厚すぎると光電変換効率が低下してしまうためである。
また、電子ブロッキング材料の候補として、具体的には、例えば下記のEB−1〜EB−5、TPD、m−MTDATAで示される材料が挙げられる。
実際に電子ブロッキング層に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換層の材料により、選択の幅が規定される。隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換層の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものがよい。
このような構成例によれば、従来使用されてきた単層の電荷ブロッキング層ではなく、電荷ブロッキング層を複数層構造としたことにより、外部電界を加えた際に電極からの、光電変換層へのキャリア注入を抑えることができ、光電変換素子の光電流/暗電流比を大きく向上させることができる。
次に図6〜図11に基いて、複数構造の電荷ブロッキング層を有する光電変換素子の構成例を説明する。
電荷ブロッキング層には、隣接する電極からの正孔注入障壁が大きくかつ光電流キャリアである電子の輸送能が高い「正孔ブロッキング層」と、隣接する電極からの電子注入障壁が大きくかつ光電流キャリアである正孔の輸送能が高い「電子ブロッキング層」とがある。有機発光素子などでは、特開平11−339966号公報や特開2002−329582号公報のように、キャリアの発光層貫通を防ぐためにすでに有機材料を用いたブロッキング層が用いられているが、このような有機ブロッキング層を光電変換部において電極と光電変換層との間に挟むことによって、外部電圧を印加した際にS/N比を落とすこと
なく光電変換効率や応答速度を向上させることができる。
正孔ブロッキング層に用いる材料としては、そのイオン化ポテンシャルが、隣接する電極の材料の仕事関数以上であり、かつ、その電子親和力が、隣接する光電変換層の材料の電子親和力以上であるものが用いられる。電子ブロッキング層に用いる材料としては、その電子親和力が、隣接する電極の材料の仕事関数以下であり、かつ、そのイオン化ポテンシャルが、隣接する光電変換層の材料のイオン化ポテンシャル以下であるものが用いられる。その具体例は、前述の構成例にて説明したとおりである。
以下、このような電荷ブロッキング層を有する光電変換部を含む光電変換素子の構造について具体的に説明する。
まず、正孔ブロッキング層を有する構成について説明する。
図6は、光電変換素子の概略構成を示す断面模式図である。
図6に示す光電変換素子は、対向する一対の電極100及び電極102と、電極100と電極102の間に形成された有機材料からなる光電変換層101と、光電変換層101と電極100との間に形成された正孔ブロッキング層103とからなる光電変換部を含んで構成される。
図示されるように、正孔ブロッキング層103は、材料層103a〜103cの各々を積層した3層構造となっている。上述したように、材料層103a〜103cのうち少なくとも2つの層が、それぞれ異なる材料からなることが好ましい。又、正孔ブロッキング層103は、複数層構造であれば良い。
図6に示す光電変換素子は、電極102上方から光が入射するものとしているため、電極102が光入射側の電極となる。又、図6に示す光電変換素子は、光電変換層101で発生した電荷(正孔及び電子)のうち、正孔を電極102に移動させ、電子を電極100に移動させるように、電極100,102に電圧が印加されるものとしている(つまり、電極100を電子取り出し用の電極としている)。
正孔ブロッキング層103の材料は、そのイオン化ポテンシャルが、隣接する電極100の材料の仕事関数以上であり、かつ、その電子親和力が、隣接する光電変換層101の材料の電子親和力以上であるものが用いられる。この正孔ブロッキング層103を電極100と光電変換層101との間に設けたことにより、電極100,102に電圧を印加したときに、光電変換層101で発生した電子を電極100に移動させることができると共に、電極100から光電変換層101へ正孔が注入されるのを抑制することができる。そして、正孔ブロッキング層103が3層構造となっていることによって、中間準位を介した電極100から光電変換層101への正孔注入抑制効果が高まる。
正孔ブロッキング層103全体の厚みは、10nm〜200nmが最もよい。光電変換層101で発生した電子を電極100に移動させる必要があるので、この厚みが大きすぎるとブロッキング性は向上するが、外部量子効率は低下してしまうためである。
又、電極100,102に外部から印加する電圧を、正孔ブロッキング層103の厚みと光電変換層101の厚みの総和(電極100と電極102との距離に相当)で割った値が1.0×105V/cmから1.0×10V/cmであることが好ましい。
また、図6に示す光電変換素子は、光電変換層101に光を入射させる必要があるため、電極102が透明な電極であることが好ましい。透明とは、波長が約420nm〜約660nmの範囲の可視光を80%以上透過することをいう。
さらに、図6に示す光電変換素子は、後述するが、電極100下方にも光を透過させる必要がある場合もあるので、電極100も透明電極であることが好ましく、正孔ブロッキング層103も透明であることが好ましい。
図7は、図6に示す光電変換素子の変形例を示す断面模式図である。図6に示す光電変換素子において、光電変換層101で発生した電荷(正孔及び電子)のうち、電子を電極102に移動させ、正孔を電極100に移動させるように、電極100,102に電圧が印加されるものとした場合(つまり、電極102を電子取り出し用の電極とした場合)には、図7に示すように、電極102と光電変換層101との間に正孔ブロッキング層103(材料層103a〜103cを積層した3層構造を有する)を設けた構成にすれば良い。この場合、正孔ブロッキング層103は透明である必要がある。このような構成により、暗電流を抑制することができる。
なお、図6において、材料層103cを無機材料からなる層、材料層103c103a,103bを有機材料からなる層としたり、図7において、材料層103aを無機材料からなる層、材料層103b,103cを有機材料からなる層としたりといった具合に、電極界面に無機材料層、無機材料層と光電変換層との間に有機材料層が配置されている構成とすることで、上述したように、より顕著に暗電流を抑制し且つ信号電荷の読出しの阻害を防ぐことができる。
次に、電子ブロッキング層を有する構成について説明する。
図8は、光電変換素子の他の例(電子ブロッキング層を有する例)の概略構成を示す断面模式図である。図8において図6と同じ構成には同一の符号を付してある。
図8に示す光電変換素子は、対向する一対の電極100及び電極102と、電極100と電極102の間に形成された光電変換層101と、光電変換層101と電極102との間に形成された電子ブロッキング層104(材料層104a〜104cを積層した3層構造を有する)とからなる光電変換部を含んで構成される。上述したように、材料層104a〜104cのうち少なくとも2つの層が、それぞれ異なる材料からなることが好ましい。又、電子ブロッキング層104は、複数層構造であれば良い。
図8に示す光電変換素子は、電極102上方から光が入射するものとしているため、電極102が光入射側の電極となる。又、図8に示す光電変換素子は、光電変換層101で発生した電荷(正孔及び電子)のうち、正孔を電極102に移動させ、電子を電極100に移動させるように、電極100,102に電圧が印加されるものとしている(つまり、電極100を電子取り出し用の電極としている)。
電子ブロッキング層104の材料は、その電子親和力が、隣接する電極102の材料の仕事関数以下であり、かつ、そのイオン化ポテンシャルが、隣接する光電変換層101の材料のイオン化ポテンシャル以下であるものが用いられる。この電子ブロッキング層104を電極102と光電変換層101との間に設けたことにより、電極100,102に電圧を印加したときに、光電変換層101で発生した正孔を電極102に移動させることができると共に、電極102から光電変換層101へ電子が注入されるのを防ぐことができる。
電子ブロッキング層104の厚みは、10nm〜200nmが最もよい。光電変換層101で発生した正孔を電極102に移動させる必要があるので、この厚みが大きすぎるとブロッキング性は向上するが、外部量子効率は低下してしまうためである。
又、電極100,102に外部から印加する電圧を、電子ブロッキング層104の厚みと光電変換層101の厚みの総和(電極100と電極102との距離に相当)で割った値が1.0×104V/cmから1.0×107V/cmであることが好ましい。
又、図8に示す光電変換素子は、光電変換層101に光を入射させる必要があるため、電極102及び電子ブロッキング層104は透明であることが好ましい。
又、図8に示す光電変換素子は、後述するが、電極100下方にも光を透過させる必要がある場合もあるので、電極100も透明電極であることが好ましい。
図9は、図8に示される構造の光電変換素子の変形例を示す断面模式図である。図8に示す光電変換素子において、光電変換層101で発生した電荷(正孔及び電子)のうち、電子を電極102に移動させ、正孔を電極100に移動させるように、電極100,102に電圧が印加されるものとした場合(つまり、電極102を電子取り出し用の電極とした場合)には、図9に示すように、電極100と光電変換層101との間に電子ブロッキング層104を設けた構成にすれば良い。このような構成により、暗電流を抑制することができる。
なお、図8において、材料層104aを無機材料からなる層、材料層104b,104cを有機材料からなる層としたり、図9において、材料層104cを無機材料からなる層、材料層104a,104bを有機材料からなる層としたりといった具合に、電極界面に無機材料層、無機材料層と光電変換層との間に有機材料層が配置されている構成とすることで、上述したように、より顕著に暗電流を抑制し且つ信号電荷の読出しの阻害を防ぐことができる。
次に、電子ブロッキング層と正孔ブロッキング層を有する構成について説明する。
図10は、光電変換素子の他の例(電子ブロッキング層と正孔ブロッキング層の双方を有する光電変換部を有する例)の概略構成を示す断面模式図である。図10において図6及び図8と同じ構成には同一符号を付してある。
図10に示す光電変換素子は、対向する一対の電極100及び電極102と、電極100と電極102の間に形成された光電変換層101と、光電変換層101と電極100との間に形成された正孔ブロッキング層103(103a〜103c)と、光電変換層101と電極102との間に形成された電子ブロッキング層104(104a〜104c)とからなる光電変換部を含んで構成される。
図10に示す光電変換素子は、電極102上方から光が入射するものとしているため、電極102が光入射側の電極となる。又、図10に示す光電変換素子は、光電変換層101で発生した電荷(正孔及び電子)のうち、正孔を電極102に移動させ、電子を電極100に移動させるように、電極100,102に電圧が印加されるものとしている(つまり、電極100を電子取り出し用の電極としている)。
また、電極100,102に外部から印加する電圧を、正孔ブロッキング層103の厚みと電子ブロッキング層104の厚みと光電変換層101の厚みの総和(電極100と電極102との距離に相当)で割った値が、1.0×105V/cmから1.0×107V/cmであることが好ましい。
このような構成によれば、電極100と電極102双方からの電荷の注入を抑制することができ、効果的に暗電流を抑制することができる。
図11は、図10に示される光電変換素子の変形例を示す断面模式図である。
図10に示す光電変換素子において、光電変換層101で発生した電荷(正孔及び電子)のうち、電子を電極102に移動させ、正孔を電極100に移動させるように、電極100,102に電圧が印加されるものとした場合(つまり、電極102を電子取り出し用の電極とした場合)には、図11に示すように、電極100と光電変換層101との間に電子ブロッキング層104を設け、電極102と光電変換層101との間に正孔ブロッキング層103を設けた構成にすれば良い。
このような構成により、電極100と電極102双方からの電荷の注入を抑制することができ、効果的に暗電流を抑制することができる。
以下、図11に示す光電変換素子を用いた撮像素子の構成例について説明する。以下の説明では、図12〜図16を参照する。各図においても、上記の構成例と同様に、正孔ブロッキング層および電子ブロッキング層の双方は複数層構造を有している。ただし、図12〜図16では、作図の都合上、各ブロッキング層は、特に複数層に区分けして描いていない。
図12は、撮像素子の1画素分の断面模式図である。図13は、図12に示す中間層の断面模式図である。この撮像素子は、図12に示す1画素が同一平面上でアレイ状に多数配置されたものであり、この1画素から得られる信号によって画像データの1つの画素データを生成することができる。
図12に示す撮像素子の1画素は、n型シリコン基板1と、n型シリコン基板1上に形成された透明な絶縁膜7と、絶縁膜7上に形成された第一電極膜11、第一電極膜11上に形成された中間層12、及び中間層12上に形成された第二電極膜13からなる光電変換部とを含んで構成され、光電変換部上には開口の設けられた遮光膜14が形成されており、この遮光膜14によって中間層12の受光領域が制限されている。また、遮光膜14及び第二電極膜13上には透明な絶縁膜15が形成されている。なお、絶縁膜7上に形成される光電変換部は、先に説明した光電変換素子の構成を採用することができる。
中間層12は、図13に示すように、第一電極膜11上に、下引き層兼電子ブロッキング層122と、光電変換層123と、正孔ブロッキング兼バッファ層124とがこの順に積層されて構成される。電子ブロッキング層122と正孔ブロッキング兼バッファ層124は、上述したように、それぞれ複数層で構成されている。
光電変換層123は、第二電極膜13上方からの入射光に応じて電子と正孔を含む電荷を発生し、且つ、正孔の移動度よりも電子の移動度が小さく、且つ、第一電極膜11近傍よりも第二電極膜13近傍の方が電子と正孔をより多く発生するような特性を持つ材料を含んで構成される。このような光電変換膜用の材料としては有機材料が代表として挙げられる。図12の構成では、光電変換層123は、緑色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する材料を用いる。光電変換層123は、全画素で共通して用いることができるため、1枚構成の膜であれば良く、画素毎に分離しておく必要はない。
光電変換層123は、前記本発明の材料の組合せにより好ましく実現できる。それ以外の光電変換層123を構成する有機材料として、有機p型半導体及び有機n型半導体を含む構成とすることができる。有機p型半導体及び有機n型半導体として、それぞれキナクリドン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体のいずれかを特に好ましく用いることができる。
有機p型半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いてよい。
有機n型半導体(化合物)は、アクセプター性有機半導体(化合物)であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いてよい。
p型有機色素、又はn型有機色素としては、いかなるものを用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
次に金属錯体化合物について説明する。金属錯体化合物は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体であり、金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、または錫イオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、または亜鉛イオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、または亜鉛イオンである。前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer-Verlag社 H.Yersin著1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社山本明夫著1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座配位子である。例えばピリジン配位子、ビピリジル配位子、キノリノール配位子、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子)などが挙げられる)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環置換チオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、またはシロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる)であり、より好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、またはシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、またはシロキシ配位子が挙げられる。
中間層12は、前記本発明の組合せの材料を有することにより、好ましく実現できる。また、p型半導体層とn型半導体層とを有し、該p型半導体とn型半導体の少なくともいずれかが有機半導体であり、かつ、それらの半導体層の間に、該p型半導体およびn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造層を有する光電変換層を含有する場合が好ましい。このような場合、中間層12にバルクへテロ接合構造を含有させることにより、光電変換層123のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換層123の光電変換効率を向上させることができる。なお、バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266(特願2004−080639)号において詳細に説明されている。
また、中間層12に含まれる光電変換層は、p型半導体の層、n型半導体の層、(好ましくは混合・分散(バルクヘテロ接合構造)層)を持ち、p型半導体及びn型半導体のうちの少なくとも1方に配向制御された有機化合物を含む場合が好ましく、さらに好ましくは、p型半導体及びn型半導体の両方に配向制御された(可能な)有機化合物を含む場合である。この有機化合物としては、π共役電子を持つものが好ましく用いられるが、このπ電子平面が、基板(電極基板)に対して垂直ではなく、平行に近い角度で配向しているほど好ましい。基板に対する角度として好ましくは0°以上80°以下であり、さらに好ましくは0°以上60°以下であり、さらに好ましくは0°以上40°以下であり、さらに好ましくは0°以上20°以下であり、特に好ましくは0°以上10°以下であり、最も好ましくは0°(すなわち基板に対して平行)である。上記のように、配向の制御された有機化合物の層は、中間層12全体に対して一部でも含めば良いが、好ましくは、中間層12全体に対する配向の制御された部分の割合が10%以上の場合であり、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは100%である。このような状態は、中間層12に含まれる有機化合物の配向を制御することにより、光電変換素層のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換膜の光電変換効率を向上させるものである。
有機化合物の配向が制御されている場合において、さらに好ましくはヘテロ接合面(例えばpn接合面)が基板に対して平行ではない場合である。ヘテロ接合面が、基板(電極基板)に対して平行ではなく、垂直に近い角度で配向しているほど好ましい。基板に対する角度として好ましくは10°以上90°以下であり、さらに好ましくは30°以上90°以下であり、さらに好ましくは50°以上90°以下であり、さらに好ましくは70°以上90°以下であり、特に好ましくは80°以上90°以下であり、最も好ましくは90°(すなわち基板に対して垂直)である。上記のような、ヘテロ接合面の制御された有機化合物の層は、中間層12全体に対して一部でも含めば良い。好ましくは、中間層12全体に対する配向の制御された部分の割合が10%以上の場合であり、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは100%である。このような場合、中間層12におけるヘテロ接合面の面積が増大し、界面で生成する電子、正孔、電子正孔ペア等のキャリア量が増大し、光電変換効率の向上が可能となる。以上の、有機化合物のヘテロ接合面とπ電子平面の両方の配向が制御された光電変換層において、特に光電変換効率の向上が可能である。これらの状態については、特開2006−086493(特願2004−079931)号において詳細に説明されている。光吸収の点では有機色素層の膜厚は大きいほど好ましいが、電荷分離に寄与しない割合を考慮すると、有機色素層の膜厚として好ましくは、30nm以上300nm以下、さらに好ましくは50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
これらの有機化合物を含む中間層12は、乾式成膜法あるいは湿式成膜法により成膜される。乾式成膜法の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法,MBE法等の物理気相成長法あるいはプラズマ重合等のCVD法が挙げられる。湿式成膜法としては、キャスト法、スピンコート法、ディッピング法、LB法等が用いられる。
p型半導体(化合物)及びn型半導体(化合物)の少なくとも一つとして高分子化合物を用いる場合は、作成の容易な湿式成膜法により成膜することが好ましい。蒸着等の乾式成膜法を用いた場合、高分子を用いることは分解のおそれがあるため難しく、代わりとしてそのオリゴマーを好ましく用いることができる。一方、低分子を用いる場合は、乾式成膜法が好ましく用いられ、特に真空蒸着法が好ましく用いられる。真空蒸着法は抵抗加熱蒸着法、電子線加熱蒸着法等の化合物の加熱の方法、るつぼ、ボ−ト等の蒸着源の形状、真空度、蒸着温度、基盤温度、蒸着速度等が基本的なパラメ−タ−である。均一な蒸着を可能とするために基盤を回転させて蒸着することは好ましい。真空度は高い方が好ましく10−4Torr以下、好ましくは10−6Torr以下、特に好ましくは10−8Torr以下で真空蒸着が行われる。蒸着時のすべての工程は真空中で行われることが好ましく、基本的には化合物が直接、外気の酸素、水分と接触しないようにする。真空蒸着の上述した条件は有機膜の結晶性、アモルファス性、密度、緻密度等に影響するので厳密に制御する必要がある。水晶振動子、干渉計等の膜厚モニタ−を用いて蒸着速度をPIもしくはPID制御することは好ましく用いられる。2種以上の化合物を同時に蒸着する場合には共蒸着法、フラッシュ蒸着法等を好ましく用いることができる。
有機材料からなる光電変換層123では、上述した構成において第二電極13の上方から光が入射してくるとすると、光吸収によって発生する電子及び正孔が第二電極13近傍において多く発生し、第一電極11近傍ではそれほど多く発生しないのが一般的である。これは、この光電変換層123の吸収ピーク波長付近の光の多くが第二電極13近傍で吸収されてしまい、第二電極13近傍から離れるにしたがって、光の吸収率が低下していくことに起因している。このため、第二電極13近傍において発生した電子又は正孔がシリコン基板にまで効率良く移動されないと、光電変換効率が低下してしまい、結果的に素子の感度低下を招くことになる。また、第二電極13近傍で強く吸収された光波長による信号が減少することになるため、結果として分光感度の幅が広がってしまういわゆるブロード化を招くことにもなる。
また、有機材料からなる光電変換層123では、電子の移動度が正孔の移動度よりも非常に小さいのが一般的である。さらに、有機材料からなる光電変換層123における電子の移動度は酸素の影響を受けやすく、光電変換層123を大気中に晒すと電子の移動度が更に低下しまうことも分かっている。このため、電子をシリコン基板1まで移動させようとする場合、第二電極13近傍において発生した電子の光電変換層123内での移動距離が長いと、電子の移動中にその一部が失活するなどして電極にて捕集されず、結果として感度が低下し、分光感度がブロード化してしまう。
感度低下及び分光感度のブロード化を防ぐためには、第二電極13近傍において発生した電子又は正孔をシリコン基板1にまで効率良く移動させることが有効であり、これを実現するためには、光電変換層123内で発生した電子又は正孔の取り扱い方が課題となる。
固体撮像素子1000は、上述した特性を持つ光電変換層123を有しているため、上述したように、光入射側の電極と反対の電極である第一電極膜11にて正孔を捕集してこれを利用することで、外部量子効率を上げることができ、感度向上及び分光感度のシャープ化が可能となる。そこで、固体撮像素子1000では、光電変換層123で発生した電子が第二電極膜13に移動し、光電変換層123で発生した正孔が第一電極膜11に移動するように、第一電極膜11と第二電極膜13に電圧が印加される。
下引き兼電子ブロッキング層122の1つの機能は、第一電極膜11上の凹凸を緩和するためのものである。第一電極膜11に凹凸がある場合、あるいは第一電極膜11上にゴミが付着していた場合、その上に低分子有機材料を蒸着して光電変換層123を形成すると、この凹凸部分で光電変換層123に細かいクラック、つまり光電変換層123が薄くしか形成されない部分ができやすい。この時、さらにその上から第二電極膜13を形成すると、上記クラック部が第二電極膜13にカバレッジされて第一電極膜11と近接するため、DCショートやリーク電流の増大が生じやすい。特に、第二電極膜13としてTCOを用いる場合、その傾向が顕著である。このため、あらかじめ第一電極膜11上に下引き膜兼電子ブロッキング層122を設けることで凹凸を緩和して、これらを抑制することができる。
下引き膜兼電子ブロッキング層122としては、均質で平滑な膜であることが重要である。特に平滑な膜を得ようとする場合、好ましい材料として、ポリアニリン、ボリチオフェン、ポリピロール、ポリカルバゾール、PTPDES、PTPDEKなどの有機の高分子系材料があげられ、スピンコート法で形成することもできる。
電子ブロッキング層122は、第一電極膜11から電子が注入されることによる暗電流を低減するために設けられており、第一電極膜11からの電子が光電変換層123に注入されるのを阻止する。
正孔ブロッキング兼バッファ層125は、正孔ブロッキング層として、第二電極膜13から正孔が注入されることによる暗電流を低減するために設けられており、第二電極膜13からの正孔が光電変換層123に注入されるのを阻止する機能とともに、場合によっては、第二電極膜13成膜時に光電変換層123に与えられるダメージを軽減する機能を果たす。
第二電極膜13を光電変換層123の上層に成膜する場合、第二電極膜13の成膜に用いる装置中に存在する高エネルギー粒子、例えばスパッタ法ならば、スパッタ粒子や2次電子、Ar粒子、酸素負イオンなどが光電変換層123に衝突する事で、光電変換層123が変質し、リーク電流の増大や感度の低下など性能劣化が生じる場合がある。これを防止する一つの方法として、光電変換層123の上層にバッファ膜125を設けることが好ましい。
図12に戻り、n型シリコン基板1内には、その浅い方からp型半導体領域(以下、p領域と略す)4と、n型半導体領域(以下、n領域と略す)3と、p領域2がこの順に形成されている。p領域4の遮光膜14によって遮光されている部分の表面部には、高濃度のp領域(p+領域という)6が形成され、p+領域6の周りはn領域5によって囲まれている。
p領域4とn領域3とのpn接合面のn型シリコン基板1表面からの深さは、青色光を吸収する深さ(約0.2μm)となっている。したがって、p領域4とn領域3は、青色光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、これを蓄積するフォトダイオード(Bフォトダイオード)を形成する。Bフォトダイオードで発生した正孔は、p領域4に蓄積される。
p領域2とn型シリコン基板1とのpn接合面のn型シリコン基板1表面からの深さは、赤色光を吸収する深さ(約2μm)となっている。したがって、p領域2とn型シリコン基板1は、赤色光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、これを蓄積するフォトダイオード(Rフォトダイオード)を形成する。Rフォトダイオードで発生した正孔は、p領域2に蓄積される。
p+領域6は、絶縁膜7に開けられた開口に形成された接続部9を介して第一電極膜11と電気的に接続されており、接続部9を介して、第一電極膜11で捕集された正孔を蓄積する。接続部9は、第一電極膜11とp+領域6以外とは絶縁膜8によって電気的に絶縁される。
p領域2に蓄積された正孔は、n型シリコン基板1内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域4に蓄積された正孔は、n領域3内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域6に蓄積された電子は、n領域5内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子1000外部へと出力される。これらのMOS回路が特許請求の範囲の信号読み出し部を構成する。各MOS回路は配線10によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。なお、、p領域2、p領域4に引き出し電極を設け、所定のリセット電位をかけると、各領域が空乏化し、各pn接合部の容量は限りなく小さい値になる。これにより、接合面に生じる容量を極めて小さくすることができる。
このような構成により、例えば光電変換層123でG光を光電変換し、n型シリコン基板1中のBフォトダイオードとRフォトダイオードでB光およびR光を光電変換することができる。また上部でG光がまず吸収されるため、B-G間およびG-R間の色分離は優れている。これが、シリコン基板内に3つのPDを積層し、シリコン基板内でBGR光を全て分離する形式の固体撮像素子に比べ、大きく優れた点である。以下の説明では、固体撮像素子1000のn型シリコン基板1内に形成される無機材料からなる光電変換を行う部分(Bフォトダイオード及びRフォトダイオード)のことを無機層とも言う。
なお、n型シリコン基板1と第一電極膜11との間(例えば絶縁膜7とn型シリコン基板1との間)に、光電変換層123を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、n型シリコン基板1内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線10を接続しておけば良い。
第一電極膜11は、光電変換層123で発生して移動してきた正孔を捕集する役割を果たす。第一電極膜11は、画素毎に分離されており、これによって画像データを生成することができる。図12に示す構成では、n型シリコン基板1でも光電変換を行っているため、第一電極膜11は、可視光に対する透過率が60%以上であることが好ましく、90%であることがより好ましい。第一電極膜11下方に光電変換領域が存在しない構成の場合には、第一電極膜11は透明性の低いものであっても構わない。材料としては、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、FTO、Al、Ag、及びAuのいずれかを最も好ましく用いることができる。第一電極膜11の詳細については後述する。
第二電極膜13は、光電変換層123で発生して移動してきた電子を吐き出す機能を有する。第二電極膜13は、全画素で共通して用いることができる。このため、固体撮像素子1000では、第二電極膜13が全画素で共通の一枚構成の膜となっている。第二電極膜13は、光電変換層123に光を入射させる必要があるため、可視光に対する透過性が高い材料を用いる必要がある。第二電極膜13は、その可視光に対する透過率が60%以上であることが好ましく、90%であることがより好ましい。材料としては、ITO、IZO、ZnO、SnO、TiO、FTO、Al、Ag、及びAuのいずれかを最も好ましく用いることができる。第二電極膜13の詳細については後述する。
無機層は、結晶シリコン、アモルファスシリコン、GaAsなどの化合物半導体のpn接合またはpin接合が一般的に用いられる。この場合、シリコンの光進入深さで色分離を行っているため積層された各受光部で検知するスペクトル範囲はブロードとなる。しかしながら、図12に示すように光電変換層123を上層に用いることにより、すなわち光電変換層123を透過した光をシリコンの深さ方向で検出することにより色分離が顕著に改良される。特に図12に示すように、光電変換層123でG光を検出すると、光電変換層123を透過する光はB光とR光になるため、シリコンでの深さ方向での光の分別はBR光のみとなり色分離が改良される。光電変換層123がB光またはR光を検出する場合でも、シリコンのpn接合面の深さを適宜選択することにより顕著に色分離が改良される。
無機層の構成は、光入射側から、npn又はpnpnとなっていることが好ましい。特に、表面にp層を設け表面の電位を高くしておくことで、表面付近で発生した正孔、及び暗電流をトラップすることができ暗電流を低減できるため、pnpn接合とすることがより好ましい。
なお、図12では、光電変換部がn型シリコン基板1上方に1つ積層される構成を示したが、n型シリコン基板1上方に、光電変換部を複数積層した構成にすることも可能である。光電変換部を複数積層した構成については後の構成例で説明する。このようにした場合は、無機層で検出する光は一色で良く、好ましい色分離が達成できる。また、固体撮像素子1000の1画素にて4色の光を検出しようとする場合には、例えば、1つの光電変換部にて1色を検出して無機層にて3色を検出する構成、光電変換部を2つ積層して2色を検出し、無機層にて2色を検出する構成、光電変換部を3つ積層して3色を検出し、無機層にて1色を検出する構成等が考えられる。また、固体撮像素子1000が、1画素で1色のみを検出する構成であっても良い。この場合は、図1においてp領域2、n領域3、p領域4を無くした構成となる。
無機層についてさらに詳細に説明する。無機層の好ましい構成としては、光伝導型、p−n接合型、ショットキー接合型、PIN接合型、MSM(金属−半導体−金属)型の受光素子やフォトトランジスタ型の受光素子が挙げられる。特に、図12に示したように、単一の半導体基板内に、第1導電型の領域と、第1導電型と逆の導電型である第2導電型の領域とを交互に複数積層し、第1導電型及び第2導電型の領域の各接合面を、それぞれ異なる複数の波長帯域の光を主に光電変換するために適した深さに形成してなる無機層を用いることが好ましい。単一の半導体基板としては、単結晶シリコンが好ましく、シリコン基板の深さ方向に依存する吸収波長特性を利用して色分離を行うことができる。
無機半導体として、InGaN系、InAlN系、InAlP系、又はInGaAlP系の無機半導体を用いることもできる。nGaN系の無機半導体は、Inの含有組成を適宜変更し、青色の波長範囲内に極大吸収値を有するよう調整されたものである。すなわち、InxGa1-xN(0≦X<1)の組成となる。このような化合物半導体は、有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いて製造される。Gaと同じ13族原料のAlを用いる窒化物半導体のInAlN系についても、InGaN系と同様に短波長受光部として利用することができる。また、GaAs基板に格子整合するInAlP、InGaAlPを用いることもできる
無機半導体は、埋め込み構造となっていてもよい。埋め込み構造とは、短波長受光部部分の両端を短波長受光部とは異なる半導体で覆われる構成のものをいう。両端を覆う半導体としては、短波長受光部のバンドギャップ波長より短い又は同等のバンドギャップ波長を有する半導体であることが好ましい。
第一電極膜11と第二電極膜13の材料は、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができる。金属材料としては、Li、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Fr、Ra、Sc、Ti、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe,Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In,Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Se、Te、Po、Br、I、At、B、C、N、F、O、S、Nの中から選ばれる任意の組み合わせを挙げることができるが、特に好ましいのはAl、Pt、W、Au、Ag、Ta、Cu、Cr、Mo、Ti、Ni、Pd、Znである。
第一電極膜11は、中間層12に含まれる正孔輸送性の光電変換層または正孔輸送層から正孔を取り出してこれを捕集するため、正孔輸送性光電変換層、正孔輸送層などの隣接する層との密着性や電子親和力、イオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。第二電極膜13は、中間層12に含まれる電子輸送性の光電変換層または電子輸送層から電子を取り出してこれを吐き出すため、電子輸送性光電変換層、電子輸送層などの隣接する層との密着性や電子親和力、イオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。これらの具体例としては酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、シリコン化合物およびこれらとITOとの積層物などが挙げられ、好ましくは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からITO、IZOが好ましい。
電極の作製には材料によって種々の方法が用いられるが、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で膜形成される。ITOの場合、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
透明な電極膜(透明電極膜)成膜時の条件について触れる。透明電極膜成膜時のシリコン基板温度は500℃以下が好ましく、より好ましくは、300℃以下で、さらに好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。また、透明電極膜成膜中にガスを導入しても良く、基本的にそのガス種は制限されないが、Ar、He、酸素、窒素などを用いることができる。また、これらのガスの混合ガスを用いても良い。特に酸化物の材料の場合は、酸素欠陥が入ることが多いので、酸素を用いることが好ましい。
また、透明電極膜の表面抵抗は、第一電極膜11であるか第二電極膜13であるか等により好ましい範囲は異なる。信号読出し部がCMOS構造である場合、透明導電膜の表面抵抗は、10000Ω/□以下が好ましく、より好ましくは、1000Ω/□以下である。信号読出し部が仮にCCD構造の場合、表面抵抗は1000Ω/□以下が好ましく、より好ましくは、100Ω/□以下である。第二電極膜13に使用する場合には1000000Ω/□以下が好ましく、より好ましくは、100000Ω/□以下である。
透明電極膜の材料として特に好ましいのは、ITO、IZO、SnO2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(Alドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO2、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)のいずれかの材料である。透明電極膜の光透過率は、その透明電極膜を含む光電変換部に含まれる光電変換膜の吸収ピーク波長において、60%以上が好ましく、より好ましくは80%以上で、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
また、中間層12を複数積層する場合、第一電極膜11と第二電極膜13は、光入射側に最も近い位置にある光電変換膜から最も遠い位置にある光電変換膜まで、それぞれの光電変換層が検出する光以外の波長の光を透過させる必要があり、可視光に対し、好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の光を透過する材料を用いる事が好ましい。
第二電極膜13はプラズマフリーで作製することが好ましい。プラズマフリーで第二電極膜13を作成することで、プラズマが基板に与える影響を少なくすることができ、光電変換特性を良好にすることができる。ここで、プラズマフリーとは、第二電極膜13の成膜中にプラズマが発生しないか、またはプラズマ発生源から基体までの距離が2cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上であり、基体に到達するプラズマが減ずるような状態を意味する。
第二電極膜13の成膜中にプラズマが発生しない装置としては、例えば、電子線蒸着装置(EB蒸着装置)やパルスレーザー蒸着装置がある。EB蒸着装置またはパルスレーザー蒸着装置については、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。以下では、EB蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をEB蒸着法と言い、パルスレーザー蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をパルスレーザー蒸着法と言う。
プラズマ発生源から基体への距離が2cm以上であって基体へのプラズマの到達が減ずるような状態を実現できる装置(以下、プラズマフリーである成膜装置という)については、例えば、対向ターゲット式スパッタ装置やアークプラズマ蒸着法などが考えられ、それらについては沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。
TCOなどの透明導電膜を第二電極膜13とした場合、DCショート、あるいはリーク電流増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換層123に導入される微細なクラックがTCOなどの緻密な膜によってカバレッジされ、反対側の第一電極膜11との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較して劣る電極の場合、リーク電流の増大は生じにくい。第二電極膜13の膜厚を、光電変換層123の膜厚(すなわち、クラックの深さ)に対して制御する事により、リーク電流の増大を大きく抑制できる。第二電極膜13の厚みは、光電変換層123厚みの1/5以下、好ましくは1/10以下であるようにする事が望ましい。
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、固体撮像素子1000では、シート抵抗は、好ましくは100〜10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、透明導電性薄膜は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換層123での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、非常に好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、透過率の増加を考慮すると、透明導電性薄膜の膜厚は、5〜100nmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜20nmである事が望ましい。
透明電極膜の材料は、プラズマフリーである成膜装置、EB蒸着装置、及びパルスレーザー蒸着装置により成膜できるものが好ましい。例えば、金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、金属ホウ化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が好適に挙げられ、具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウムタングステン(IWO)等の導電性金属酸化物、窒化チタン等の金属窒化物、金、白金、銀、クロム、ニッケル、アルミニウム等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ル等の有機導電性材料、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。また、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)等に詳細に記載されているものを用いてもよい。
この構成例では、図12に示す構成の無機層を、n型シリコン基板内で2つのフォトダイオードを積層するのではなく、入射光の入射方向に対して垂直な方向に2つのフォトダイオードを配列して、n型シリコン基板内で2色の光を検出するようにしたものである。
図14は、撮像素子の1画素分の断面模式図である。
図14に示す固体撮像素子2000の1画素は、n型シリコン基板17と、n型シリコン基板17上方に形成された第一電極膜30、第一電極膜30上に形成された中間層31、及び中間層31上に形成された第二電極膜32からなる光電変換部とを含んで構成され、光電変換部上には開口の設けられた遮光膜34が形成されており、この遮光膜34によって中間層31の受光領域が制限されている。また、遮光膜34上には透明な絶縁膜33が形成されている。
第一電極膜30、中間層31、及び第二電極膜32は、第一電極膜11、中間層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。
遮光膜34の開口下方のn型シリコン基板17表面には、n領域19とp領域18からなるフォトダイオードと、n領域21とp領域20からなるフォトダイオードとが、n型シリコン基板17表面に並んで形成されている。n型シリコン基板17表面上の任意の方向が、入射光の入射方向に対して垂直な方向となる。
n領域19とp領域18からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してB光を透過するカラーフィルタ28が形成され、その上に第一電極膜30が形成されている。n領域21とp領域20からなるフォトダイオードの上方には、透明な絶縁膜24を介してR光を透過するカラーフィルタ29が形成され、その上に第一電極膜30が形成されている。カラーフィルタ28,29の周囲は、透明な絶縁膜25で覆われている。
n領域19とp領域18からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ28を透過したB光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、発生した正孔をp領域18に蓄積する。n領域21とp領域20からなるフォトダイオードは、カラーフィルタ29を透過したR光を吸収してそれに応じた正孔を発生し、発生した正孔をp領域20に蓄積する。
p型シリコン基板17表面の遮光膜34によって遮光されている部分には、p+領域23が形成され、p+領域23の周りはn領域22によって囲まれている。
p+領域23は、絶縁膜24,25に開けられた開口に形成された接続部27を介して第一電極膜30と電気的に接続されており、接続部27を介して、第一電極膜30で捕集された正孔を蓄積する。接続部27は、第一電極膜30とp+領域23以外とは絶縁膜26によって電気的に絶縁される。
p領域18に蓄積された正孔は、n型シリコン基板17内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p領域20に蓄積された正孔は、n型シリコン基板17内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域23に蓄積された正孔は、n領域22内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子2000外部へと出力される。これらのMOS回路が特許請求の範囲の信号読み出し部を構成する。各MOS回路は配線35によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。
なお、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成しても良い。つまり、p領域18、p領域20、及びp+領域23に蓄積された正孔をn型シリコン基板17内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその正孔に応じた信号を出力させるような信号読出し部であっても良い。
このように、信号読み出し部は、CCDおよびCMOS構造が挙げられるが、消費電力、高速読出し、画素加算、部分読出し等の点から、CMOSの方が好ましい。
なお、図14では、カラーフィルタ28,29によってR光とB光の色分離を行っているが、カラーフィルタ28,29を設けず、p領域20とn領域21のpn接合面の深さと、p領域18とn領域19のpn接合面の深さを各々調整して、それぞれのフォトダイオードでR光とB光を吸収するようにしても良い。この場合、n型シリコン基板17と第一電極膜30との間(例えば絶縁膜24とn型シリコン基板17との間)に、中間層31を透過した光を吸収して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、n型シリコン基板17内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線35を接続しておけば良い。
また、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、n型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としても良い。更に、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを複数とし、n型シリコン基板17上方に光電変換部を複数積層した構成としても良い。また、カラー画像を作る必要がないのであれば、n型シリコン基板17内に設けるフォトダイオードを1つとし、光電変換部を1つだけ積層した構成としても良い。
図15は、撮像素子の他の構成例を説明するための1画素分の断面模式図である。この構成例では、図12に示す構成の無機層を設けず、シリコン基板上方に複数(ここでは3つ)の光電変換層を積層した構成である。
図15に示す固体撮像素子3000は、シリコン基板41上方に、第一電極膜56、第一電極膜56上に積層された中間層57、及び中間層57上に積層された第二電極膜58を含むR光電変換部と、第一電極膜60、第一電極膜60上に積層された中間層61、及び中間層61上に積層された第二電極膜62を含むB光電変換部と、第一電極膜64、第一電極膜64上に積層された中間層65、及び中間層65上に積層された第二電極膜66を含むG光電変換部とが、それぞれに含まれる第一電極膜をシリコン基板41側に向けた状態で、この順に積層された構成となっている。
シリコン基板41上には透明な絶縁膜48が形成され、その上にR光電変換部が形成され、その上に透明な絶縁膜59が形成され、その上にB光電変換部が形成され、その上に透明な絶縁膜63が形成され、その上にG光電変換部が形成され、その上に開口の設けられた遮光膜68が形成され、その上に透明な絶縁膜67が形成されている。
G光電変換部に含まれる第一電極膜64、中間層65、及び第二電極膜66は、図12に示す第一電極膜11、中間層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。
B光電変換部に含まれる第一電極膜60、中間層61、及び第二電極膜62は、図12に示す第一電極膜11、中間層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。ただし、中間層61に含まれる光電変換層は、青色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する材料を用いる。
R光電変換部に含まれる第一電極膜56、中間層57、及び第二電極膜58は、図12に示す第一電極膜11、中間層12、及び第二電極膜13と同じ構成である。ただし、中間層57に含まれる光電変換層は、赤色光を吸収してこれに応じた電子及び正孔を発生する材料を用いる。
中間層61、57に含まれる、それぞれの電子、正孔ブロッキング層は、それぞれの光電変換膜のHOMO、LUMOエネルギー準位と、それと接する各ブロッキング層のHOMO、LUMO準位の関係において、信号電荷の輸送に際しエネルギー障壁が生じないよう、適当な材料、構成を選択することが好ましい。
シリコン基板41表面の遮光膜68によって遮光されている部分には、p+領域43,45,47が形成され、それぞれの周りはn領域42,44,46によって囲まれている。
p+領域43は、絶縁膜48に開けられた開口に形成された接続部54を介して第一電極膜56と電気的に接続されており、接続部54を介して、第一電極膜56で捕集された正孔を蓄積する。接続部54は、第一電極膜56とp+領域43以外とは絶縁膜51によって電気的に絶縁される。
p+領域45は、絶縁膜48、R光電変換部、及び絶縁膜59に開けられた開口に形成された接続部53を介して第一電極膜60と電気的に接続されており、接続部53を介して、第一電極膜60で捕集された正孔を蓄積する。接続部53は、第一電極膜60とp+領域45以外とは絶縁膜50によって電気的に絶縁される。
p+領域47は、絶縁膜48、R光電変換部、絶縁膜59、B光電変換部、及び絶縁膜63に開けられた開口に形成された接続部52を介して第一電極膜64と電気的に接続されており、接続部52を介して、第一電極膜64で捕集された正孔を蓄積する。接続部52は、第一電極膜64とp+領域47以外とは絶縁膜49によって電気的に絶縁される。
p+領域43に蓄積された正孔は、n領域42内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域45に蓄積された正孔は、n領域44内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換され、p+領域47に蓄積された正孔は、n領域46内に形成されたpチャネルMOSトランジスタからなるMOS回路(不図示)によってその電荷量に応じた信号に変換されて、固体撮像素子300外部へと出力される。これらのMOS回路が特許請求の範囲の信号読み出し部を構成する。各MOS回路は配線55によって図示しない信号読み出しパッドに接続される。なお、信号読出し部は、MOS回路ではなくCCDとアンプによって構成しても良い。つまり、p+領域43,45,47に蓄積された正孔をシリコン基板41内に形成したCCDに読み出し、これをCCDでアンプまで転送して、アンプからその正孔に応じた信号を出力させるような信号読出し部であっても良い。
なお、シリコン基板41と第一電極膜56との間(例えば絶縁膜48とシリコン基板41との間)に、中間層57,61,65を透過してきた光を受光して、該光に応じた電荷を発生しこれを蓄積する無機材料からなる無機光電変換部を形成することも可能である。この場合、シリコン基板41内に、この無機光電変換部の電荷蓄積領域に蓄積された電荷に応じた信号を読み出すためのMOS回路を設け、このMOS回路にも配線55を接続しておけば良い。
このように、光電変換層をシリコン基板上に複数積層する構成は、図15のような構成によって実現できる。
以上の説明において、B光を吸収する光電変換層とは、少なくとも400〜500nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であるものを意味する。G光を吸収する光電変換層とは、少なくとも500〜600nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。R光を吸収する光電変換層とは、少なくとも600〜700nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピ−ク波長の吸収率が50%以上であることを意味する。
図12及び図15に示す構成の場合は、上層からBGR、BRG、GBR、GRB、RBG、RGBという順序で色を検出するパターンが考えられる。好ましくは最上層がGである。また、図14に示す構成の場合は、上層がR層の場合は下層が同一平面状にBG層、上層がB層の場合は下層が同一平面状にGR層、上層がG層の場合は下層が同一平面状にBR層といった組み合わせが可能である。好ましくは上層がG層で下層が同一平面状にBR層である構成である。
図16は、他の撮像素子の構成例を説明する断面模式図である。図16では、光を検出して電荷を蓄積する部分である画素部における2画素分の断面と、その画素部にある電極に接続される配線や、その配線に接続されるボンディングPAD等が形成される部分である周辺回路部との断面を併せて示した。
画素部のn型シリコン基板413には、表面部にp領域421が形成され、p領域421の表面部にはn領域422が形成され、n領域422の表面部にはp領域423が形成され、p領域423の表面部にはn領域424が形成されている。
p領域421は、n型シリコン基板413とのpn接合により光電変換された赤色(R)成分の正孔を蓄積する。R成分の正孔が蓄積されたことによるp領域421の電位変化が、n型シリコン基板413に形成されたMOSトランジスタ426から、そこに接続されたメタル配線419を介して信号読み出しPAD427に読み出される。
p領域423は、n領域422とのpn接合により光電変換された青色(B)成分の正孔を蓄積する。B成分の正孔が蓄積されたことによるp領域423の電位変化が、n領域422に形成されたMOSトランジスタ426’から、そこに接続されたメタル配線419を介して信号読み出しPAD427に読み出される。
n領域424内には、n型シリコン基板413上方に積層された光電変換層123で発生した緑色(G)成分の正孔を蓄積するp領域からなる正孔蓄積領域425が形成されている。G成分の正孔が蓄積されたことによる正孔蓄積領域425の電位変化が、n領域424内に形成されたMOSトランジスタ426’’から、そこに接続されたメタル配線419を介して信号読み出しPAD427に読み出される。通常、信号読み出しPAD427は、各色成分が読み出されるトランジスタ毎に別々に設けられる。
ここでp領域、n領域、トランジスタ、メタル配線等は模式的に示したが、それぞれの構造等はこれに限らず、適宜最適なものが選ばれる。B光、R光はシリコン基板の深さにより分別しているのでpn接合等のシリコン基板表面からの深さ、各不純物のドープ濃度の選択などは重要である。信号読み出し部となるCMOS回路には、通常のCMOSイメージセンサに用いられている技術を適用することができる。低ノイズ読出カラムアンプやCDS回路を初めとして、画素部のトランジスタ数を減らす回路構成を適用することができる。
n型シリコン基板413上には、酸化シリコン、窒化シリコン等を主成分とする透明な絶縁膜412が形成され、絶縁膜412上には酸化シリコン、窒化シリコン等を主成分とする透明な絶縁膜411が形成されている。絶縁膜412の膜厚は薄いほど好ましく5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
絶縁膜411,412内には、第一電極膜414と正孔蓄積領域としてのp領域425とを電気的に接続する例えばタングステンを主成分としたプラグ415が形成されており、プラグ415は絶縁膜411と絶縁膜412との間でパッド416によって中継接続されている。パッド416はアルミニウムを主成分としたものが好ましく用いられる。絶縁膜412内には、前述したメタル配線419やトランジスタ426,426’,426’’のゲート電極等も形成されている。メタル配線も含めてバリヤー層が設けられていることが好ましい。プラグ415は、1画素毎に設けられている。
絶縁膜411内には、n領域424とp領域425のpn接合による電荷の発生に起因するノイズを防ぐために、遮光膜417が設けられている。遮光膜417は通常、タングステンやアルミニウム等を主成分としたものが用いられる。絶縁膜411内には、ボンディングPAD420(外部から電源を供給するためのPAD)と、信号読み出しPAD427が形成され、ボンディングPAD420と後述する第一電極膜414とを電気的に接続するためのメタル配線(図示せず)も形成されている。
絶縁膜411内の各画素のプラグ415上には透明な第一電極膜414が形成されている。第一電極膜414は、画素毎に分割されており、この大きさによって受光面積が決定される。第一電極膜414には、ボンディングPAD420からの配線を通じてバイアスがかけられる。後述する第二電極膜405に対して第一電極膜414に負のバイアスをかけることで、正孔蓄積領域425に正孔を蓄積できる構造が好ましい。
第一電極膜414上には図12と同様の構造の中間層12が形成され、この上に、第二電極膜405が形成されている。
第二電極膜405上には中間層12を保護する機能を持つ窒化シリコン等を主成分とする保護膜404が形成されている。保護膜404には、画素部の第一電極膜414と重ならない位置に開口が形成され、絶縁膜411及び保護膜404には、ボンディングPAD420上の一部に開口が形成されている。そして、この2つの開口によって露出する第二電極膜405とボンディングPAD420とを電気的に接続して、第二電極膜405に電位を与えるためのアルミニウム等からなる配線418が、開口内部及び保護膜404上に形成されている。配線418の材料としては、Al−Si、Al−Cu合金等のアルミニウムを含有する合金を用いることもできる。
配線418上には、配線418を保護するための窒化シリコン等を主成分とする保護膜403が形成され、保護膜403上には赤外カット誘電体多層膜402が形成され、赤外カット誘電体多層膜402上には反射防止膜401が形成されている。
第一電極膜414は、図12に示す第一電極膜11と同じ機能を果たす。第二電極膜405は、図12に示す第二電極膜13と同じ機能を果たす。
以上のような構成により、1画素でBGR3色の光を検出してカラー撮像を行うことが可能となる。図16の構成では、2つの画素においてR,Bを共通の値として用い、Gの値だけを別々に用いるが、画像を生成する際はGの感度が重要となるため、このような構成であっても、良好なカラー画像を生成することが可能である。
以上説明した固体撮像素子は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ファクシミリ、スキャナー、複写機をはじめとする撮像素子に適用できる。バイオや化学センサーなどの光センサーとしても利用可能である。
また、以上の構成例で説明した絶縁膜として挙げられる材料は、SiOx、SiNx、BSG、PSG、BPSG、Al、MgO、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物等であるが、最も好ましい材料はSiOx、SiNx、BSG、PSG、BPSGである。
なお、上記構成例において、光電変換層以外からの信号の読み出しは、正孔と電子のどちらを用いても構わない。つまり、上述してきたように、半導体基板とその上に積層される光電変換部との間に設けられる無機光電変換部や、半導体基板内に形成されるフォトダイオードにて正孔を蓄積し、この正孔に応じた信号を信号読み出し部によって読み出す構成としても良いし、無機光電変換部や半導体基板内に形成されるフォトダイオードにて電子を蓄積し、この電子に応じた信号を信号読み出し部によって読み出す構成としても良い。
また、上記構成例では、シリコン基板上方に設ける光電変換部として、図13に示した構成のものを用いているが、図1、図6〜図9等に示した構成のものを用いることも可能である。図13のような構成によれば、電子と正孔をブロッキングできるため、暗電流抑制効果が高い。又、光入射側とは反対側の電極を電子取り出し用の電極とした場合には、図12において、接続部9を第2電極13に接続し、図14において、接続部27を第2電極13に接続し、図15において、接続部54を第2電極58に接続し、接続部53を第2電極62に接続し、接続部52を第2電極66に接続した構成にすれば良い。
上記の構成例で説明した撮像素子は、図12〜図16に示す1画素を同一平面上でアレイ状に多数配置した構成であるが、この1画素によってRGBの色信号を得ることができることから、この1画素は、RGBの光を電気信号に変換する光電変換素子と考えることができる。このため、撮像素子は、図12〜図16に示すような光電変換素子が、同一平面上でアレイ状に多数配置した構成と言うことができる。
図17は、撮像素子の他の構成例を説明するための部分表面模式図である。図18は、図17に示す撮像素子のX−X線の断面模式図である。なお、、図17では、マイクロレンズ14の図示を省略してある。
n型シリコン基板1上にはpウェル層2が形成されている。以下では、n型シリコン基板1とpウェル層2とを併せて半導体基板という。半導体基板上方の同一面上の行方向とこれに直交する列方向には、主としてR光を透過するカラーフィルタ13rと、主としてG光を透過するカラーフィルタ13gと、主としてB光を透過するカラーフィルタ13bとの3種類のカラーフィルタがそれぞれ多数配列されている。
カラーフィルタ13rは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、R光を透過する。カラーフィルタ13gは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、G光を透過する。カラーフィルタ13bは、公知の材料を用いることができるが、このような材料は、B光を透過する。
カラーフィルタ13r,13g,13bの配列は、公知の単板式固体撮像素子に用いられているカラーフィルタ配列(ベイヤー配列や縦ストライプ、横ストライプ等)を採用することができる。
n領域4r上方には透明電極11rが形成され、n領域4g上方には透明電極11gが形成され、n領域4b上方には透明電極11bが形成されている。透明電極11r,11g,11bは、それぞれカラーフィルタ13r,13g,13bの各々に対応して分割されている。透明電極11r,11g,11bは、それぞれ、図1の下部電極11と同じ機能を有する。
透明電極11r,11g,11bの各々の上には、カラーフィルタ13r,13g,13bの各々で共通の一枚構成である光電変換膜12が形成されている。
光電変換膜12上には、カラーフィルタ13r,13g,13bの各々で共通の一枚構成である上部電極13が形成されている。
透明電極11rと、それに対向する上部電極13と、これらに挟まれる光電変換膜12の一部とにより、カラーフィルタ13rに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子を、半導体基板上に形成されたものであるため、R光電変換素子という。
透明電極11gと、それに対向する上部電極13と、これらに挟まれる光電変換膜12の一部とにより、カラーフィルタ13gに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子をG光電変換素子という。
透明電極11bと、それに対向する上部電極13と、これらに挟まれる光電変換膜12の一部とにより、カラーフィルタ13bに対応する光電変換素子が形成される。以下では、この光電変換素子をB光電変換素子という。
pウェル層2内のn領域には、R基板上光電変換素子の光電変換膜12で発生した電荷を蓄積するための高濃度のn型不純物領域(以下、n+領域という)4rが形成されている。なお、n+領域4rに光が入るのを防ぐために、n+領域4r上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
pウェル層2内のn領域には、G基板上光電変換素子の光電変換膜12で発生した電荷を蓄積するためのn+領域4gが形成されている。なお、n+領域4gに光が入るのを防ぐために、n+領域4g上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
pウェル層2内のn領域には、B基板上光電変換素子の光電変換膜12で発生した電荷を蓄積するためのn+領域4bが形成されている。なお、n+領域4bに光が入るのを防ぐために、n+領域4b上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
n+領域4r上にはアルミニウム等の金属からなるコンタクト部6rが形成され、コンタクト部6r上に透明電極11rが形成されており、n+領域4rと透明電極11rはコンタクト部6rによって電気的に接続されている。コンタクト部6rは、可視光及び赤外光に対して透明な絶縁層5内に埋設されている。
n+領域4g上にはアルミニウム等の金属からなるコンタクト部6gが形成され、コンタクト部6g上に透明電極11gが形成されており、n+領域4gと透明電極11gはコンタクト部6gによって電気的に接続されている。コンタクト部6gは絶縁層5内に埋設されている。
n+領域4b上にはアルミニウム等の金属からなるコンタクト部6bが形成され、コンタクト部6b上に透明電極11bが形成されており、n+領域4bと透明電極11bはコンタクト部6bによって電気的に接続されている。コンタクト部6bは絶縁層5内に埋設されている。
pウェル層2内のn+領域4r,4g,4bが形成されている以外の領域には、R光電変換素子で発生してn+領域4rに蓄積された電荷に応じた信号をそれぞれ読み出すための信号読み出し部5rと、G光電変換素子で発生してn+領域4gに蓄積された電荷に応じた信号をそれぞれ読み出すための信号読み出し部5gと、B光電変換素子で発生してn+領域4bに蓄積された電荷に応じた信号をそれぞれ読み出すための信号読み出し部5bとが形成されている。信号読み出し部5r,5g,5bは、それぞれ、CCDやMOS回路を用いた公知の構成を採用することができる。なお、信号読み出し部5r,5g,5bに光が入るのを防ぐために、信号読み出し部5r,5g,5b上には遮光膜を設けておくことが好ましい。
図19は、図18に示す信号読み出し部5rの具体的な構成例を示す図である。図19において図17、18と同様の構成には同一符号を付してある。なお、、信号読み出し部5r,5g,5bの各々の構成は同一であるため、信号読み出し部5g,5bの説明は省略する。
信号読み出し部5rは、ドレインがn+領域4rに接続され、ソースが電源Vnに接続されたリセットトランジスタ43と、ゲートがリセットトランジスタ43のドレインに接続され、ソースが電源Vccに接続された出力トランジスタ42と、ソースが出力トランジスタ42のドレインに接続され、ドレインが信号出力線45に接続された行選択トランジスタ41と、ドレインがn領域3rに接続され、ソースが電源Vnに接続されたリセットトランジスタ46と、ゲートがリセットトランジスタ46のドレインに接続され、ソースが電源Vccに接続された出力トランジスタ47と、ソースが出力トランジスタ47のドレインに接続され、ドレインが信号出力線49に接続された行選択トランジスタ48とを備える。
透明電極11rと上部電極13間にバイアス電圧を印加することで、光電変換膜12に入射した光に応じて電荷が発生し、この電荷が透明電極11rを介してn+領域4rへと移動する。n+領域4rに蓄積された電荷は、出力トランジスタ42でその電荷量に応じた信号に変換される。そして、行選択トランジスタ41をONにすることで信号出力線45に信号が出力される。信号出力後は、リセットトランジスタ43によってn+領域4r内の電荷がリセットされる。
このように、信号読み出し部5rは、3トランジスタからなる公知のMOS回路で構成することができる。
図18に戻り、光電変換膜12上には、基板上光電変換素子を保護するための2層構造の保護層15,16が形成され、保護層16上にカラーフィルタ13r,13g,13bが形成されている。
この撮像素子100は、光電変換膜12を形成した後に、カラーフィルタ13r,13g,13b等を形成することで製造するが、カラーフィルタ13r,13g,13bは、フォトリソグラフィ工程やベーク工程を含むため、光電変換膜12として有機材料を用いる場合、光電変換膜12が露出した状態で、このフォトリソグラフィ工程やベーク工程が行われると、光電変換膜12の特性が劣化してしまう。撮像素子100では、このような製造工程に起因する光電変換膜12の特性劣化を防止するために、保護層15,16が設けられている。
保護層15は、ALCVD法によって形成した無機材料からなる無機層であることが好ましい。ALCVD法は原子層CVD法であり緻密な無機層を形成することが可能で、光電変換層9の有効な保護層となり得る。ALCVD法はALE法もしくはALD法としても知られている。ALCVD法により形成した無機層は、好ましくはAl、SiO,TiO,ZrO,MgO,HfO,Taからなり、より好ましくはAl、SiOからなり、最も好ましくはAlからなる。
保護層16は、光電変換膜12の保護性能をより向上させるために保護層15上に形成されたものであり、有機ポリマーからなる有機層であることが好ましい。有機ポリマーとしてはパリレンが好ましく、パリレンCがより好ましい。なお、保護層16は省略しても良く、又、保護層15と保護層16の配置を逆にしても良い。光電変換膜12の保護効果が特に高いのは、図18に示した構成である。
透明電極11rと上部電極13に所定のバイアス電圧を印加すると、R基板上光電変換素子を構成する光電変換膜12で発生した電荷が透明電極11rとコンタクト部6rを介してn+領域4rに移動し、ここに蓄積される。そして、n+領域4rに蓄積された電荷に応じた信号が、信号読み出し部5rによって読み出され、撮像素子100外部に出力される。
同様に、透明電極11gと上部電極13に所定のバイアス電圧を印加すると、G基板上光電変換素子を構成する光電変換膜12で発生した電荷が透明電極11gとコンタクト部6gを介してn+領域4gに移動し、ここに蓄積される。そして、n+領域4gに蓄積された電荷に応じた信号が、信号読み出し部5gによって読み出され、撮像素子100外部に出力される。
同様に、透明電極11bと上部電極13に所定のバイアス電圧を印加すると、B基板上光電変換素子を構成する光電変換膜12で発生した電荷が透明電極11bとコンタクト部6bを介してn+領域4bに移動し、ここに蓄積される。そして、n+領域4bに蓄積された電荷に応じた信号が、信号読み出し部5bによって読み出され、撮像素子100外部に出力される。
このように、撮像素子100は、R光電変換素子で発生した電荷に応じたR成分の信号と、G光電変換素子で発生した電荷に応じたG成分の信号と、B光電変換素子で発生した電荷に応じたB成分の信号を外部に出力することができる。これにより、カラーの画像を得る事ができる。この形式により、光電変換部が薄くなるため、解像度が向上し、偽色を低減できる。また、下部回路によらず、開口率を大きくできるため、高感度が可能であり、マイクロレンズを省略可能なため、部品数の省略にも効果がある。
この例では、有機光電変換膜は緑光高領域に最大吸収波長があり、可視光全体に吸収域を有する必要があるが、本発明の前記規定の材料で好ましく実現することができる。
以上、本発明の光電変換素子を撮像素子として用いることの構成例を記載したが、本発明の光電変換素子は高い光電変換効率を示すため,太陽電池として用いても高い性能を示す。太陽電池として用いる場合に好ましい素子構成は、本発明記載内容の構成を用いる他、非特許文献(Adv.Mater.,17,66(2005))等の構成に本発明記載の光電変換材料の組み合わせを適用することができる。
以下に、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は勿論この実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用する有機化合物を下記に示す。なお、双極子モーメントの値は、富士通株式会社製の分子モデリングソフト、「CAChe(登録商標)」を用いて測定した。
(実施例1、比較例1)
洗浄したITO(ガラス)基板を蒸着装置に入れ、真空度1.0E−4Pa以下に減圧する。電荷ブロッキング層として有機化合物Aを成膜した後、基板温度を制御した有機化合物1を蒸着し、次に真空中に保ちながら、有機薄膜上にパターンニングしたマスク(受光面積2mm×2mmとなるマスク)を設置し、Alを100nm蒸着して光電変換素子を作製した。この基板を大気暴露することなく、UV硬化樹脂を用いてガラス封止を行った。
実施例及び比較例の構成を下記に示す。実施例及び比較例の光電変換素子は、図1に示す構成と基本的に同じであり、電極間に単層のブロッキング層と光電変換層とが設けられた構成である。なお、括弧内の数字は、厚さ(単位:nm)を示し、また、有機化合物1については成膜時の冷却温度を示す。RTとは常温(室温)を意味する。
(実施例1):ITO/有機化合物A(100)/有機化合物1[RT成膜](10)/有機化合物1[−25℃成膜](40)/Al(100)
(実施例2):ITO/有機化合物A(100)/有機化合物1[−25℃成膜](40)/有機化合物1[RT成膜](10)/Al(100)
(実施例3):ITO/有機化合物A(100)/有機化合物1[RT成膜](10)/有機化合物1[−25℃成膜](30)/有機化合物1[RT成膜](10) /Al(100)
(比較例1):ITO/有機化合物A(100)/有機化合物1[−25℃成膜](50)/Al(100)
(比較例2):ITO/有機化合物A(100)/有機化合物1[RT成膜](50)/Al(100)
上記実施例及び比較例について、膜内電界強度が1.0E+6(V/cm)における暗電流値を測定した。それぞれの暗電流値を下記に示す。
(実施例1)2.0E−10(A/cm
(実施例2)4.0E−10(A/cm
(実施例3)1.0E−10(A/cm
(比較例1)1.0E−7(A/cm
(比較例2)1.0E−10(A/cm
上記実施例及び比較例について、膜内電界強度が1.0E+6(V/cm)における最大感度波長での外部量子効率(相対値)を測定した。それぞれの外部量子効率を下記に示す。
(実施例1)9.5
(実施例2)9.5
(実施例3)8
(比較例1)10
(比較例2)1
上記実施例及び比較例について、膜内電界強度が3.0E+5(V/cm)における応答速度として、0%から98%信号強度への立ち上がり時間(相対値)を測定した。それぞれの応答速度の相対値を下記に示す。
(実施例1)1
(実施例2)3
(実施例3)1
(比較例1)100
(比較例2)1
実施例1〜3は、高い外部量子効率を得ることができるとともに、暗電流値を低減させることができた。また、実施例1〜3は、光応答速度を相対的に向上させることができた。一方、比較例1は、外部量子効率を向上できたが、暗電流値が高くなってしまい、また、光応答速度が遅くなった。比較例2は、暗電流値を低減できたが、外部量子効率が低くなった。
また、光電変換層の形成時に、層を構成する有機化合物を冷却する方法としては、液体窒素での冷却成膜(基板温度:−170℃)を用いても高外部量子効率を得ることができ、また、液体ヘリウムでの冷却成膜(基板温度:推定−250℃)を用いても良好の結果を得ることができる。
次に、下記有機化合物2(双極子モーメント:15.7)を用いて上記実施例と同様の測定を行なった。なお、測定方法及びその条件は、全て上記実施例と同じものとする。
本測定で用いる実施例及び比較例それぞれの光電変換素子の構成を下記に示す。
(実施例4):ITO/有機化合物A(100)/有機化合物2[RT成膜](10)/有機化合物2[−25℃成膜](90)/Al(100)
(実施例5):ITO/有機化合物A (100)/有機化合物2[−25℃成膜](90)/有機化合物2[RT成膜](10)/Al(100)
(実施例6):ITO/有機化合物A(100)/有機化合物2[RT成膜](10)/有機化合物2[−25℃成膜](80)/有機化合物2[RT成膜](10)/Al(100)
(比較例3):ITO/有機化合物A(100)/有機化合物2[−25℃成膜](100)/Al(100)
(比較例4):ITO/有機化合物A(100)/有機化合物1[RT成膜](100)/Al(100)
上記実施例及び比較例について、膜内電界強度が1.0E+6(V/cm)における暗電流値を測定した。それぞれの暗電流値を下記に示す。
(実施例4) 2.0E−10(A/cm
(実施例5) 2.0E−10 (A/cm
(実施例6) 1.0E−10(A/cm
(比較例3) 1.0E−9(A/cm
(比較例4) 1.0E−10(A/cm
上記実施例及び比較例について、膜内電界強度が1.0E+6(V/cm)における最大感度波長での外部量子効率(相対値)を測定した。それぞれの光電変換効率を下記に示す。
(実施例4)2.5
(実施例5)2.5
(実施例6)2
(比較例3)3
(比較例4)1
上記実施例及び比較例について、膜内電界強度が3.0E+5(V/cm)における応答速度として、0%から98%信号強度への立ち上がり時間(相対値)を測定した。それぞれの応答速度の相対値を下記に示す。
(実施例4)1
(実施例5)1
(実施例6)0.9
(比較例3)100
(比較例4)1
実施例4〜6は、高い外部量子効率を得ることができるとともに、暗電流値を低減させることができた。また、実施例4〜6は、光応答速度を相対的に向上させることができた。一方、比較例3は、外部量子効率を向上できたが、暗電流値が高くなってしまい、また、光応答速度が遅くなった。比較例4は、暗電流値を低減できたが、外部量子効率が低くなった。
次に、同じ有機化合物からなる光電変換層において、配向性が異なる場合の分光吸収スペクトルと蛍光スペクトルについて説明する。ここでは、上記実施例1の有機化合物1を用いて説明する。
図20は、分光吸収スペクトルを示すグラフである。このグラフにおいて、横軸に光の波長(nm)を示し、縦軸に吸光度(Absorbance)を示しており、トップピークで規格化を行っている。
図20で示すように、−25℃に冷却して成膜した有機化合物では、室温で成膜した有機化合物に比べて、スペクトルの波形が長波長側にシフトする。つまり、光電変換層の形成時に、基板温度をx℃、y℃(x℃>y℃とする。)に制御して成膜すると、分光吸収スペクトルにおいてy℃の波形がx℃の波形よりも長波化したスペクトルを有することを意味する。具体的には、吸光度が最大値をとるピークから長波側の傾斜領域が顕著に長波側にシフトしている。
図21は、蛍光スペクトルを示すグラフである。このグラフにおいて、横軸に光の波長(nm)を示し、縦軸に蛍光強度(PL Intensity)を示しており、トップピークで規格化を行っている。
図21で示すように、−25℃に冷却して成膜した有機化合物では、室温で成膜した有機化合物に比べて、スペクトルの波形が短波長側にシフトする。つまり、光電変換層の形成時に、基板温度をx℃、y℃(x℃>y℃とする。)に制御して成膜すると、蛍光スペクトルにおいてy℃の波形がx℃の波形よりも短波化したスペクトルを有することを意味する。蛍光が最大値をとるピークから短波側の傾斜領域が顕著に短波側にシフトしている。
ドナー−アクセプタ連結構造の有機化合物は、分光吸収スペクトルのピーク値λMAXが350nm〜700nmであることが好ましい。
次に、別の観点から有機化合物1の配向秩序状態の相違を検証する。
図22は、顕微反射赤外吸収測定によって測定された、室温(約25℃)で成膜した有機化合物と−25℃冷却で成膜した有機化合物それぞれの波数(cm−1)に対する吸光度(Absorbance)を示すグラフである。(ただし、縦軸においては、成膜温度違いによるスペクトルシフトを見えやすくするため、ベースラインをずらしている。)図23は、図22のグラフのうち波数2000cm−1〜2400cm−1のスペクトルをより詳細に示すグラフであり、CN伸縮運動領域の振動バンドである。また、図24は、図22のグラフのうち波数1100cm−1〜1600cm−1のスペクトルをより詳細に示すグラフであり、CH変角振動領域の振動バンドである。
このとき、各有機化合物1は、ともに非晶質の状態であるが、互いに配向性が異なる状態になっていると考えられる。特に、波数2200cm−1の領域、及び、波数1200cm−1〜1500cm−1の領域において、スペクトルの変化が顕著であった。
図23に示すように、波数2200cm−1〜2210cm−1の領域において−25℃で成膜した有機化合物1のスペクトルのピークは、室温で成膜した有機化合物1のスペクトルのピークに比べて、波数約5cm−1程度、波数の小さい方向にピーク位置がシフトする。また、−25℃で成膜した有機化合物1は、そのスペクトルのピークに対して波数の小さい側の傾斜領域が、室温で成膜した有機化合物1のピークに対して波数の小さい側の傾斜領域に比べて緩やかになっている。
図24に示すように、−25℃で成膜した有機化合物1の波形は、室温で成膜した有機化合物1の波形に比べて、波形の極大値及び極小値の間隔が小さくなっている、つまり、波形が全体的に緩やかになっている。また、波数1190cm−1付近の傾斜領域は、−25℃で成膜した方が緩やかな波形を示しており、また波数1270cm−1付近のバンドピークは−25℃で成膜した波形にしか観測されていない。
図25は、走査型電子顕微鏡測定したときの有機化合物の表面を示す図であり、図25(a)は、室温で成膜した有機化合物1を示し、図25(b)は、−25℃で成膜した有機化合物1を示している。また、図26は、それぞれの有機化合物1をX線回折測定(XRD)したときのX線回折パターンを示している。
走査型電子顕微鏡測定(SEM)では、室温で成膜した有機化合物1及び冷却して成膜した有機化合物1はともに非晶質であることがわかる。また、X線回折測定(XRD)でX線回折パターンが変化していないことからも、結晶、非晶質の変化がみられないことがわかった。
図27は、蛍光スペクトルを示すグラフである。このグラフにおいて、横軸に光の波長(nm)を示し、縦軸に蛍光強度(PL Intensity)を示している。なお、図27では、ともにここでは、上記有機化合物1を用いている。
図27で示すように、同じ膜厚(50nm)において蛍光スペクトル強度を測定した場合、冷却した有機化合物の膜の方が蛍光スペクトル強度が大きくなる。つまり、光電変換層の形成時に、基板温度をx℃、y℃(x℃>y℃とする。)に制御して成膜すると、分y℃のときの波形がx℃のときの波形よりも蛍光スペクトル強度が大きくなる。
また、図28は、分光吸収スペクトルを示すグラフである。このグラフにおいて、横軸に光の波長(nm)を示し、縦軸に吸光度(Absorbance)を示している。この測定では、冷却して成膜する有機化合物及び室温で成膜する有機化合物のいずれも上記有機化合物1を用いている。 図28に示すように、上記の分光吸収測定によれば、有機化合物を含有する層は、該有機化合物を含有する層を形成するときの基板温度をx℃、y℃(x℃>y℃)に制御してそれぞれ形成して分光吸収測定をした際に、同じ膜厚での吸光度においてy℃のときの波形がx℃のときの波形よりも大きくなる。これにより、量子変換効率向上という効果だけではなく、冷却することで吸光度が大きくなることによって光吸収能が高くなり、形成時の総膜厚を減らすことができる。さらに、消費電力を減らすことができるという効果も得ることができる。
本発明は、下記構成を含む。
(1)一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられた光電変換層とを備えた光電変換素子であって、
前記光電変換層が複数層で構成され、前記複数層の各層がドナー−アクセプタ連結構造で且つ非晶質の同じ有機化合物から構成され、前記複数層の一部の層が他の層と配向性が異なる光電変換素子。
(2)上記(1)に記載の光電変換素子であって、
前記異なる配向性の層が、前記他の層に対して、分子会合の配向秩序状態が異なる光電変換素子。
(3)上記(1)又は(2)に記載の光電変換素子であって、
前記有機化合物が非晶質である光電変換素子。
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機化合物の双極子モーメントが1.0D以上である光電変換素子。
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機化合物の分光吸収スペクトルのピーク値λMAXが350nm〜700nmである光電変換素子。
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
更に、前記電極と前記光電変換層との間に設けられた電荷ブロッキング層を含む有機光電変換素子。
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機化合物を含有する層は、該有機化合物を含有する層を形成するときの基板温度をx℃、y℃(x℃>y℃)に制御してそれぞれ形成して分光吸収測定をした際に、同じ膜厚での吸光度においてy℃のときの波形がx℃のときの波形よりも大きい光電変換素子。
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記一対の電極のうち、光が入射される側の電極が透明電極である光電変換素子。
(9)上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記一対の電極を介して前記光電変換層に印加される電界が1.0E+4V/cm〜1.0E+7V/cmである光電変換素子。
(10)上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機化合物を含有する層が、該有機化合物を含有する層を形成するときの基板温度をx℃、y℃(x℃>y℃)に制御して形成した層に対し分光吸収測定をした際に、分光吸収スペクトルにおいてy℃の波形がx℃の波形よりも長波化したスペクトルを有する光電変換素子。
(11)上記(1)から(10)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機化合物を含有する層が、該有機化合物を含有する層を形成するときの基板温度をx℃、y℃(x℃>y℃)に制御して形成した層に対し蛍光測定をした際に、蛍光スペクトルにおいてy℃の波形がx℃の波形よりも短波化したスペクトルを有する光電変換素子。
(12)上記(1)から(11)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機化合物を含有する層が、該有機化合物を含有する層を形成するときの基板温度をx℃、y℃(x℃>y℃)に制御して形成した層に対し蛍光測定をした際に、同じ膜厚での蛍光スペクトル強度においてy℃の波形がx℃の波形よりも大きい光電変換素子。
(13)上記(1)から(12)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機化合物が、下記の一般式(1)で示される部分構造を含む化合物である光電変換素子。
一般式(1)

(式中、XはO、S、N−R10を表す。R10は水素原子又は置換基を表す。R、Rはそれぞれに独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は電子求引基を表す。また、R、Rは連結して環を形成してもよい。Rは結合手、水素原子又は置換基を表すが、少なくとも1つは結合手(−)である。nrは1〜4の整数を表す。nrが2以上のときはRは同じでも異なってもよい。2位と3位のR同士、5位と6位のR同士はそれぞれ互いに連結して環を形成してもよい。)
(14)上記(1)から(12)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機化合物が、下記の一般式(2)で示される化合物である光電変換素子。
一般式(2)

(式中、Z11は5または6員環を形成するのに必要な原子群を表す。L、L、Lはそれぞれ無置換メチン基、または置換メチン基を表す。Dは原子群を表す。nは0以上の整数を表す。)
(15)上記(1)から(12)のいずれか1つに記載の光電変換素子であって、
前記有機化合物が、下記の一般式(3)で示される化合物である光電変換素子。
一般式(3)
(式中、Zは5または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表す。Zaはまたは6員環を形成するのに必要な原子群を表す。Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。L11〜L14はメチン基を表し、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。pは0または1であり、好ましくは0である。n1は0〜4の整数を表し、より好ましくは0〜3を表し、さらに好ましくは0または1を表す。nが2以上のとき、複数のL13、L14は同じでも異なっても良い。Mは電荷を中和するイオンを表し、mは電荷の中和に必要な数を表す。ただしZがチアゾリン核及びチアゾール核を形成する原子群の場合を除く。)
(16)上記(1)から(15)のいずれか1つに記載の光電変換素子を備えた撮像素子。
(17)一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられた光電変換層とを備えた光電変換素子の製造方法であって、
前記光電変換層が複数層で構成され、前記複数層の各層がドナー−アクセプタ連結構造で且つ非晶質の同じ有機化合物から構成され、
前記複数層のうち少なくとも1つの層を、該層を構成する前記有機化合物の温度を室温より小さくした状態で形成する光電変換素子の製造方法。
電荷ブロッキング層を有する光電変換素子の構成の一例を示す断面模式図 図1に示す2層構造の電荷ブロッキング層における中間準位の様子を示すエネルギーダイヤグラム 図1に示す電荷ブロッキング層が3層構造であるときの各層の材料の組み合わせを説明する図 3層構造の電子ブロッキング層と3層構造の正孔ブロッキング層を有する光電変換素子の断面模式図 図4の光電変換素子に電圧を印加した際の、電荷ブロッキング層の中間準位を介したキャリア移動の様子を説明するためのエネルギーダイヤグラム 光電変換素子の概略構成を示す断面模式図 図6に示される構造の光電変換素子の変形例を示す断面模式図 本実施形態の光電変換素子の他の例の概略構成を示す断面模式図 図8に示される光電変換素子の変形例を示す断面模式図 本実施形態の光電変換素子の他の例の概略構成を示す断面模式図 図10に示される光電変換素子の変形例を示す断面模式図 撮像素子の他の構成例を説明するための、1画素分の断面模式図 図12に示す中間層の断面模式図 撮像素子の他の構成例を説明するための、1画素分の断面模式図 撮像素子の他の構成例を説明するための、固体撮像素子の1画素分の断面模式図 撮像素子の他の構成例を説明するための、固体撮像素子の断面模式図 撮像素子の他の構成例を説明するための、部分表面模式図 図17に示す撮像素子のX−X線の断面模式図 図18に示す信号読み出し部の具体的な構成例を示す図 分光吸収スペクトルを示すグラフ 蛍光吸収スペクトルを示すグラフ 有機化合物を室温で成膜した場合と−25℃で成膜した場合のそれぞれの波数に対する吸光度を示すグラフ 図22の一部の領域を詳細に示すグラフ 図22の一部の領域を詳細に示すグラフ 走査型電子顕微鏡測定したときの有機化合物の表面を示す図である。 X線回折測定(XRD)したときのX線回折パターンを示している。 蛍光スペクトルを示すグラフである。 分光吸収スペクトルを示すグラフである。
符号の説明
11 下部電極
12 光電変換膜
13 上部電極
180 透明基板
190 画素電極
192(192a〜192c) 3層構造の電子ブロッキング層
200 光電変換層
203(203a〜203c) 3層構造の正孔ブロッキング層
204 電極
300 対向電極

Claims (5)

  1. 一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられた光電変換層とを備えた光電変換素子の製造方法であって、
    前記光電変換層が複数層で構成され、前記複数層の各層がドナー−アクセプタ連結構造で且つ同じ有機化合物から構成され、
    前記複数層のうちの2つの層の一方を、前記一方の層を構成する前記有機化合物の温度を室温より小さい第一の温度にした状態で形成し、前記2つの層の他方の層を、前記他方の層を構成する前記有機化合物の温度を前記第一の温度とは異なる温度にした状態で形成する光電変換素子の製造方法。
  2. 請求項1に記載の光電変換素子の製造方法であって、
    前記有機化合物の双極子モーメントが1.0D以上である光電変換素子の製造方法。
  3. 請求項1に記載の光電変換素子の製造方法であって、
    前記有機化合物が、下記の一般式(1)で示される部分構造を含む化合物である光電変換素子の製造方法。
    一般式(1)

    (式中、XはO、S、N−R10を表す。R10は水素原子又は置換基を表す。R、Rはそれぞれに独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一方は電子求引基を表す。また、R、Rは連結して環を形成してもよい。Rは結合手、水素原子又は置換基を表すが、少なくとも1つは結合手(−)である。nrは1〜4の整数を表す。nrが2以上のときはRは同じでも異なってもよい。2位と3位のR同士、5位と6位のR同士はそれぞれ互いに連結して環を形成してもよい。)
  4. 請求項1に記載の光電変換素子の製造方法であって、
    前記有機化合物が、下記の一般式(2)で示される化合物である光電変換素子の製造方法。
    一般式(2)

    (式中、Z11は5または6員環を形成するのに必要な原子群を表す。L、L、Lはそれぞれ無置換メチン基、または置換メチン基を表す。Dは原子群を表す。nは0以上の整数を表す。)
  5. 請求項1に記載の光電変換素子の製造方法であって、
    前記有機化合物が、下記の一般式(3)で示される化合物である光電変換素子の製造方法。
    一般式(3)

    (式中、Zは5または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表す。Zaはまたは6員環を形成するのに必要な原子群を表す。Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。L11〜L14はメチン基を表し、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。 は0または1を表し、n1は0〜4の整数を表す。n1が2以上のとき、複数のL13、L14は同じでも異なっても良い。Mは電荷を中和するイオンを表し、mは電荷の中和に必要な数を表す。ただしZがチアゾリン核及びチアゾール核を形成する原子群の場合を除く。)
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