JP5399529B2 - タウリントランスポーター遺伝子 - Google Patents
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Description
近年、抗体や生理活性タンパク質などの多くのバイオ医薬品が排出されているが、組換えタンパク質を効率よく動物細胞に生産させる技術は、バイオ医薬品の低コスト化につながり、患者への安定な供給を約束するものである。
従って、より生産効率の高いタンパク質の製造方法が望まれている。
いくつかのタウリントランスポーター(ヒト:非特許文献3、マウス:非特許文献4、ラット:非特許文献5)、並びにそのタウリントランスポーターがタウリンやβ−アラニンなどのアミノ酸の細胞への取り込みに関与することは知られている(非特許文献6)が、ハムスターのタウリントランスポーターについてはその存在を含めて未だ知られていない。
本発明の要旨は以下の通りである。
(2)タウリントランスポーターを強発現する細胞が、タウリントランスポーターをコードするDNAを導入した細胞である(1)記載の製造方法。
(3)細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である(2)記載の製造方法。
(4)所望のポリペプチドが抗体である(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)タウリントランスポーターをコードするDNAが以下の(a)〜(e)のいずれかである(2)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(b) 配列番号2、4、6又は8のアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(c) 配列番号2、4、6又は8のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(d) 配列番号1、3、5又は7の塩基配列を有するDNA
(e) 配列番号1、3、5又は7の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の方法で製造されたポリペプチドを含有する医薬品を製造する方法。
(8)以下の(a)〜(e)のいずれかであるタウリントランスポーターをコードするDNA(但し、配列番号3、5及び7の塩基配列を有するDNAを除く)。
(a) 配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(c) 配列番号2のアミノ酸配列と97%以上の相同性を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(d) 配列番号1の塩基配列を有するDNA
(e) 配列番号1の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(A) 配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチド
(B) 配列番号2のアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチド
(C) 配列番号2のアミノ酸配列と97%以上の相同性を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチド
(D) 配列番号1の塩基配列を有するDNAによりコードされるポリペプチド
(E) 配列番号1の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNAによりコードされるポリペプチド
(11)(8)記載のDNAが導入されている細胞。
(12)タウリントランスポーターを強発現し、且つ所望のポリペプチドをコードするDNAを導入した細胞。
(13)タウリントランスポーターをコードするDNAが導入されている細胞。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2006‐110467の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
本発明は、タウリントランスポーターを強発現し、且つ所望のポリペプチドをコードするDNAを導入した細胞を培養し、所望のポリペプチドを産生させることを含む、ポリペプチドの製造方法を提供する。
本発明の方法において、細胞は、所望のポリペプチドを産生できる天然の細胞であっても、所望のポリペプチドをコードするDNAを導入した形質転換細胞であってもよいが、所望のポリペプチドをコードするDNAを導入した形質転換細胞が好ましい。
タウリントランスポーターを強発現する細胞としては、例えば、タウリントランスポーター遺伝子が人為的に導入された細胞を挙げることができる。タウリントランスポーター遺伝子が人為的に導入された細胞は当業者に公知の方法により作製することが可能であり、例えば、タウリントランスポーター遺伝子をベクターに組込み、該ベクターを細胞に形質転換することにより作製することが可能である。
さらに、細胞に強発現させるタウリントランスポーター遺伝子としては、タウリントランスポーターをコードする以下の(a)〜(e)のいずれかのDNAを挙げることもできる。
(b) 配列番号2、4,6又は8のアミノ酸配列において、1又は複数(例えば、数個)のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(c) 配列番号2、4,6又は8のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(d) 配列番号1、3、5又は7の塩基配列を有するDNA
(e) 配列番号1、3、5又は7の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
タウリントランスポーターを強発現する細胞は如何なる細胞でもよいが、CHO細胞が好ましく、特にCHO dhfr−細胞が好ましい。
タウリントランスポーター遺伝子が人為的に導入された細胞を用いて所望のポリペプチドを製造する場合、タウリントランスポーター遺伝子と所望のポリペプチドをコードする遺伝子の導入の順序は特に制限されず、タウリントランスポーター遺伝子を導入した後に所望のポリペプチドをコードする遺伝子を導入してもよいし、所望のポリペプチドをコードする遺伝子を導入した後にタウリントランスポーター遺伝子を導入してもよい。又、タウリントランスポーター遺伝子と所望のポリペプチドをコードする遺伝子を同時に導入してもよい。
培地は、市販の動物細胞培養用培地、例えば、D−MEM (Dulbecco's Modified Eagle Medium)、 D−MEM/F−12 1:1 Mixture (Dulbecco's Modified Eagle Medium : Nutrient Mixture F−12)、 RPMI1640、CHO−S−SFM II(Invitrogen社)、 CHO−SF (Sigma−Aldrich社)、 EX−CELL 301 (JRH biosciences社)、CD−CHO (Invitrogen社)、 IS CHO−V (Irvine Scientific社)、 PF−ACF−CHO (Sigma−Aldrich社)などの培地を用いることも可能である。
又、培地は無血清培地であってもよい。
後述の実施例からも明らかなように、タウリントランスポーターを強発現する細胞においては、細胞の生育阻害物質となる乳酸などの老廃物の産生が抑制されうる。その結果、細胞は高い生存率維持効果を示すこととなり、本発明の細胞は3ヶ月或いはそれ以上もの長期間の培養が可能である。
本発明の細胞を用いて所望のポリペプチドを産生するために適当な培養期間は、通常1日〜3ヶ月であり、好ましくは1日〜2ヶ月、さらに好ましくは1日〜1ヶ月である。
培養は、バッチ培養(batch culture)、流加培養(fed−batch culture)、連続培養(continuous culture)などのいずれの方法を用いてもよいが、流加培養又は連続培養が好ましく、流加培養がより好ましい。
さらに本発明の細胞を培養する際に、細胞へのタウリンの取り込みを促進するために培地中にタウリンを添加してもよい。培地に添加するタウリンの濃度は特に限定されないが、通常0g/L〜100g/L、好ましくは0g/L〜20g/L、さらに好ましくは0g/L〜10g/Lである。
ポリペプチドの投与方法は、経口、非経口投与のいずれでも可能であるが、好ましくは非経口投与であり、具体的には、注射(例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などによる全身又は局所投与)、経鼻投与、経肺投与、経皮投与などが挙げられる。
(B) 配列番号2のアミノ酸配列において、1又は複数(例えば、数個)のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチド
(C) 配列番号2のアミノ酸配列と97%以上の相同性を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチド
(D) 配列番号1の塩基配列を有するDNAによりコードされるポリペプチド
(E) 配列番号1の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNAによりコードされるポリペプチド
本発明の新規ポリペプチドは、ハムスタータウリントランスポーター及びそれと機能的に同等なポリペプチドである。
市販されているこれらのポリペプチドをコードする遺伝子を本発明のポリペプチドをコードする遺伝子と融合させ、これにより調製された融合遺伝子を発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
融合ポリペプチドの精製後、必要に応じて融合ポリペプチドのうち目的のポリペプチド以外の領域を、トロンビンまたはファクターXaなどにより切断し、除去することも可能である。
さらに、本発明は、以下の(a)〜(e)のいずれかであるタウリントランスポーターをコードするDNA(但し、配列番号3、5及び7の塩基配列を有するDNAを除く)を提供する。
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1又は複数(例えば、数個)のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(c) 配列番号2のアミノ酸配列と97%以上の相同性を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(d) 配列番号1の塩基配列を有するDNA
(e) 配列番号1の塩基配列を有するDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
本発明のDNAは、上述したような本発明のポリペプチドの in vivo や in vitroにおける生産に利用される他、ハムスタータウリントランスポーターを強発現する細胞の作製に用いることができる。本発明のDNAは、本発明のポリペプチドをコードしうるものであれば、いかなる形態でもよい。即ち、mRNAから合成されたcDNAであるか、ゲノムDNAであるか、化学合成DNAであるかなどを問わない。また、本発明のポリペプチドをコードしうる限り、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するDNAが含まれる。
具体的には、次のようにすればよい。まず、本発明のポリペプチドを発現する細胞、組織などから、mRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294−5299) 、AGPC法 (Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156−159) 等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia) 等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia) を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、例えば、JM109、DH5α、HB101 等が挙げられ、その他、枯草菌が知られている。
一方、in vivo でポリペプチドを産生させる系としては、例えば、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。これらの動物又は植物に目的とする遺伝子を導入し、動物又は植物の体内でポリペプチドを産生させ、回収する。本発明における「宿主」とは、これらの動物、植物を包含する。
さらに、植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的とするポリペプチドをコードする遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens )のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum )に感染させ、本タバコの葉より所望のポリペプチドを得ることができる(Julian K.−C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131−138)。
なお、ポリペプチドを精製前又は精製後に適当なポリペプチド修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり部分的にペプチドを除去することもできる。ポリペプチド修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グルコシダーゼなどが用いられる。
感作抗原として使用されるポリペプチドは、完全なポリペプチドであってもよいし、また、ポリペプチドの部分ペプチドであってもよい。ポリペプチドの部分ペプチドとしては、例えば、ポリペプチドのアミノ基(N)末端断片やカルボキシ(C)末端断片が挙げられる。本明細書で述べる「抗体」とはポリペプチドの全長又は断片に反応する抗体を意味する。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的には、げっ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、例えば、ミルステインらの方法(Galfre, G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73, 3−46) 等に準じて行うことができる。
前記のように得られた抗体は、均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製は通常のポリペプチドで使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies : A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988) が、これらに限定されるものではない。上記で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定又は酵素結合免疫吸着検定法(Enzyme−linked immunosorbent assay;ELISA)等により行うことができる。
アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization : A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーはHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
CHO DXB11細胞に抗IL−6レセプター抗体遺伝子を導入した抗IL−6レセプター抗体産生細胞(特開平8−99902号公報)からtotal RNA抽出をおこなったのち、ポリAに依存するcDNAを合成した。SalI、XhoI、EcoRIの三種類の制限酵素で断片化したcDNAを鋳型することで、Hamsterタウリントランスポーター(TauT)遺伝子をPCRにより得た。PCRプライマーは 既知であるRat/Mouse TauT間で遺伝子配列が保存されている5’,3’を含むものを設計して用いた。クローニングされた遺伝子は塩基配列を決定し、既知の生物種のTauT との相同性から Hamster TauTをコードしていることを確認した(図1)。Hamster TauTアミノ酸配列はMouse(96% Identity)、Rat(96% Identity)、Human(93% Identity) TauTに対して高い相同性を有しており、12の膜貫通領域をもつトランスポーターであることが予想された(図2)。
実施例1のクローニングにより取得したHamster TauT(以下TauT)遺伝子にKozak配列を加え、CMVプロモーター発現プラスミドpHyg/TauT(図3)を構築した。pHyg/TauTあるいはTauT遺伝子を除いたコントロールプラスミドpHygを、親株である抗グリピカン−3抗体産生CHO細胞(国際公開第WO 2006/006693号パンフレットを参照)にエレクトロポレーション法で導入した。発現プラスミド導入細胞をHygromycin(400μg/ml)存在下で選抜したのち、安定して増殖する細胞株すべてを拡大した(pHyg/TauT:8株, pHyg:7株)。TauT mRNAを調製ののちTaqMan法により、親株に対して優位な発現を確認できる7株をpHyg/TauT導入細胞とした。導入細胞(7株)のmRNA平均発現量はコントロール(7株)の約40倍であった。計14株の細胞は2x105cells/mLの初発密度で50mlシェーカーフラスコによるバッチ(batch)培養および流加(Fed−batch)培養をおこない、培養後期7日目における生細胞密度、乳酸産生量、抗グリピカン−3抗体産生量を比較した。バッチ培養においては細胞増殖にともない培養液中に乳酸などの生育阻害物質が蓄積し、増殖が抑制されるが、pHyg/TauT導入細胞の生細胞密度(図4)および乳酸産生量(図5)はpHyg導入細胞に対して優位であった(t検定 P<0.05)。抗グリピカン−3抗体産生量に関しては、pHyg/TauT導入細胞の7株中4株がpHyg導入細胞の最高値以上であった(図6)。さらにpHyg/TauT導入細胞の抗グリピカン−3抗体産生量の優位性(t検定 P<0.01, 図7)が流加培養により明らかになったため、上記4株中で最も増殖能が高かったpHyg/TauT導入細胞(T10)と親株の1L ジャーによる流加培養をおこなったところ、T10は培養32日目においても生存率が80%以上に維持されており(図8)、乳酸産生が抑制されていた。その結果、抗グリピカン−3抗体産生量は、培養35日目において2.9g/L(図9)を達成した。TauT導入T10細胞が細胞膜上にTauT分子を発現していることはフローサイトメトリー分析(図10)で確認した。以上の結果は、Hamster TauTを人為的に発現させることによって抗体産生細胞のポテンシャルが上がり、抗体高産生株が得られることを示唆している。
親株及びpHyg/TauT導入株を、初発2x105cells/mLで1Lジャー流加培養し、適時、培養槽から450x105 細胞を含む培養液を採取した。遠心により、培養上清を分取したのち、細胞ペレットにプロテアーゼ阻害剤(Complete Mini、 Roche Diagnostics社、Protease inhibitor cocktail tablets)を含む1mLの冷却滅菌水を加え、氷上にて、超音波細胞破砕機(MISONIX ASTRASON MODEL XL2020を用いて5秒パルス操作後、5秒休止を1セットとし、計12セット、処理を繰り返し、細胞を完全に破砕した。処理後の溶液は全量を遠心式ろ過ユニットにアプライすることで、分子量5000以下のろ液を調製して、細胞内アミノ酸測定用の試料とした。各試料は、さらに、ニンヒドリン試液−L8500セット(和光純薬工業)および、日立製全自動アミノ酸分析装置(L−8500)の改良型を用いて、570nmの吸光度を検出、比較し、試料中の各種アミノ酸濃度を求めた。培養液中の各種アミノ酸およびアンモニア等の濃度は直接測定した値であるので、μMオーダーの濃度比較をおこない、一方、細胞内濃度は、細胞ペレットに冷却滅菌水1mLを加えたのち、超音波細胞破砕をおこなっていることから、各種アミノ酸およびアンモニア等の測定値を細胞あたりの値に換算し、その換算値の比較をおこなった。 図11のアンモニア濃度比は、1Lジャー流加培養開始時の450x105個当たりの親株のアンモニア検出値を1と規定し、培養開始時、6日目、12日目、18日目の検出値と比較し、比を求めた。また、図12、図13のタウリンとグルタミン酸も、上記アミノ酸分析により測定した。
その結果、pHyg/TauT導入株は、培養後期において、細胞内アンモニアが低濃度に維持されており、抗体高産生に寄与していると考えられた(図11)。
以上の結果は、培養開始時の培地中にタウリンを含んでいなくともTauT強発現株が高い抗体産生能を有することを示唆しており、タウリン以外のアミノ酸等の取り込みについても促進している可能性も考えられる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
配列番号1は、ハムスタータウリントランスポーターをコードする遺伝子の塩基配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、ハムスタータウリントランスポーターのアミノ酸配列を示す。
<配列番号3>
配列番号3は、ラットタウリントランスポーターをコードする遺伝子の塩基配列を示す。
<配列番号4>
配列番号4は、ラットタウリントランスポーターのアミノ酸配列を示す。
<配列番号5>
配列番号5は、マウスタウリントランスポーターをコードする遺伝子の塩基配列を示す。
<配列番号6>
配列番号6は、マウスタウリントランスポーターのアミノ酸配列を示す。
<配列番号7>
配列番号7は、ヒトタウリントランスポーターをコードする遺伝子の塩基配列を示す。
<配列番号8>
配列番号8は、ヒトタウリントランスポーターのアミノ酸配列を示す。
Claims (6)
- タウリントランスポーターをコードするDNAと所望のポリペプチドをコードするDNAが導入され、当該タウリントランスポーターと当該所望のポリペプチドを発現している動物細胞を培養し、培養液中に当該所望のポリペプチドを産生させることを含む、当該所望のポリペプチドの製造方法。
- 所望のポリペプチドが抗体である請求項1に記載の製造方法。
- タウリントランスポーターをコードするDNAが以下の(a)〜(e)のいずれかである請求項1又は2に記載の製造方法。
(a) 配列番号2、4、6又は8のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA
(b) 配列番号2、4、6又は8のアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加又は/及び挿入されたアミノ酸配列を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(c) 配列番号2、4、6又は8のアミノ酸配列と97%以上の同一性を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(d) 配列番号1、3、5又は7の塩基配列を有するDNA
(e) 配列番号1、3、5又は7の塩基配列と96%以上の同一性を有し、かつタウリントランスポーター活性を有するポリペプチドをコードするDNA - タウリン濃度が0g/L〜100 g/Lである培地で培養することを含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- タウリントランスポーターをコードするDNAを導入していない細胞による培養よりも、細胞あたりのグルタミン消費量が高い請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 以下の工程を含む、所望のポリペプチドを含有する医薬品を製造する方法;
(i)請求項1〜5のいずれかに記載の方法で所望のポリペプチドを製造する工程、
(ii)当該ポリペプチドを医薬的に許容される担体又は添加剤と混合する工程。
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