JP5398722B2 - 無線通信装置及び無線通信方法 - Google Patents

無線通信装置及び無線通信方法

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Description

本発明は、複数のアンテナを使用して通信を行うMIMO(Multiple Input Multiple Output)システムに用いられる無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法に関する。
MIMOシステムは、データ通信用に多重送信アンテナと多重受信アンテナとを用いる通信システムである。複数の無線通信装置が同時にアクセス可能な多重アクセスMIMOシステムでは、ユーザ端末が接続されるアクセスポイントは任意の時点で一つ以上のユーザ端末と通信することができる。アクセスポイントが単一のユーザ端末と通信する場合、複数の送信アンテナが一つの送信実体(アクセスポイントまたはユーザ端末のいずれか)に関連付けられ、複数の受信アンテナが一つの受信実体(ユーザ端末またはアクセスポイントのいずれか)に関連付けられる。
このアクセスポイントはまたSDMA(Space Division Multiple Access)の通信によって複数のユーザ端末と同時通信できる。以下では、SDMAを用いた多重アクセスMIMOシステムをMU−MIMO(Multi User MIMO)システムと呼ぶことにする。従来のMU−MIMOシステムとして、アクセスポイントはデータ送信及び受信用に複数のアンテナを用い、各ユーザ端末は通常データ送信用に一つのアンテナを用い、データ受信用に複数のアンテナを用いるものがある。アクセスポイントは、下り回線(Downlink)と上り回線(Uplink)において任意の時点で1以上のユーザ端末と通信することができる。下り回線(すなわち、順方向回線)は、アクセスポイントからユーザ端末への通信回線であり、上り回線(すなわち、逆方向回線)は、ユーザ端末からアクセスポイントへの通信回線である。
アクセスポイントは、通常ユーザ端末と通信する固定された基地局による無線通信装置であり、基地局または他の専門用語にて呼ばれることもある。ユーザ端末は、固定または可動の無線通信装置であり、基地局、無線装置、移動局、ユーザ機器、または他の何らかの専門用語にて呼ばれることもある。以下の説明では、アクセスポイントについては基地局(BS:Base Station)を、ユーザ端末についてはユーザ機器(UE:User Equipment)を用いることにする。
上り回線のMU−MIMOシステムにおける幾つかの重要な課題は、(1)同時通信用の適切なUE群の選択、(2)干渉軽減により良好なシステム性能を達成する方法によって選択された各UE及び/または各UE間のデータ送信、にある。各UEごとにチャネル情報の限定的なフィードバック信号を用いたプリコーディング(Precoding)が、SDMAを用いるシステム性能の改善に提示されている(例えば特許文献1参照)。プリコーディングは、MIMOシステムにおいて、複数のアンテナから送信する際に、各アンテナから重み付けしたデータを送信することにより伝搬路の状況に適したビームを形成して送信を行う技術である。この際、受信点での受信信号の観測状況(伝搬路状況)を反映させるため、受信機から送信機へビーム情報を含むフィードバック信号を送信し、送信機においてフィードバック信号を用いてビームを制御する。
米国特許出願公開第2008/0037681号明細書
しかしながら、この種のプリコーディングを用いる場合、ユーザ間干渉を考慮した効率的なプリコーディングのためには、粒度の高いチャネル情報のフィードバックと複雑なスケジューリング手順が必要である。このため、上記プリコーディングを用いる方法は、システムに対し大きな制御情報のオーバーヘッドと実装の複雑さをもたらす。よって、MU−MIMO用のSDMAを、伝送性能及びシグナリングの面においてより効率的に提供する技術に対する必要性が、当該分野には存在する。
上述したように、MU−MIMOシステムにおいてSDMA通信を行う場合、適切なUE群を選択するのに複雑なスケジューリング処理を要する、あるいはユーザ間干渉を軽減する効果的なプリコーディングを行うために制御情報のオーバーヘッドが増大するなどの課題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、MU−MIMOシステムにおいて、制御情報のオーバーヘッドを増大することなく、効果的なプリコーディングによってユーザ間干渉を最小化することが可能な無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法を提供することを目的とする。
発明は、第の態様として、複数のユーザ端末と基地局との間で多重通信が可能な無線通信システムに用いられる基地局の無線通信装置であって、前記ユーザ端末から自装置への伝搬路のチャネル推定を行うチャネル推定部と、前記チャネル推定結果に基づいて多重通信を行うユーザ端末の組を選択するスケジューリング部と、前記選択したユーザ端末の組において各ユーザ端末のチャネル応答行列を直交またはほぼ直交させるための、一方のユーザ端末のチャネル応答行列に対して適用する射影行列のプリコーディング行列を決定するプリコーディング選択部と、前記決定したプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を含む制御情報を対応するユーザ端末へフィードバックする制御情報通知部と、前記選択したユーザ端末の組の各ユーザ端末から送信されたデータを複数の受信アンテナによって受信する受信部と、前記受信したデータから複数のストリームを分離して検出する信号分離部と、前記検出した複数のストリームから受信データを復号する復号部と、を備え、前記スケジューリング部は、受信信号強度の強い強力なレイヤである第1のユーザ端末と、受信信号強度が弱い微弱なレイヤである第2のユーザ端末とをユーザ端末の組として選択し、前記プリコーディング選択部は、前記第1のユーザ端末に適用する前記射影行列のプリコーディング行列を決定し、前記制御情報通知部は、前記射影行列のプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を前記第1のユーザ端末のみに通知する無線通信装置を提供する。
また、本発明は、第の態様として、複数のユーザ端末と基地局との間で多重通信が可能な無線通信システムに用いられる基地局の無線通信装置であって、前記ユーザ端末から自装置への伝搬路のチャネル推定を行うチャネル推定部と、前記チャネル推定結果に基づいて多重通信を行うユーザ端末の組を選択するスケジューリング部と、前記選択したユーザ端末の組において各ユーザ端末のチャネル応答行列を直交またはほぼ直交させるための、一方のユーザ端末のチャネル応答行列に対して適用する射影行列のプリコーディング行列を決定するプリコーディング選択部と、前記決定したプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を含む制御情報を対応するユーザ端末へフィードバックする制御情報通知部と、前記選択したユーザ端末の組の各ユーザ端末から送信されたデータを複数の受信アンテナによって受信する受信部と、前記受信したデータから複数のストリームを分離して検出する信号分離部と、前記検出した複数のストリームから受信データを復号する復号部と、を備え、前記選択したユーザ端末の組において送信電力配分を行い、各ユーザ端末に割り当てるパワーウエイトを決定するパワーウエイト決定部をさらに備え、前記プリコーディング選択部は、前記パワーウエイトが異なる一方のユーザ端末に適用する前記射影行列のプリコーディング行列を決定し、前記制御情報通知部は、前記射影行列のプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を前記一方のユーザ端末に通知する無線通信装置を提供する。
本発明は、第の態様として、複数のユーザ端末と基地局との間で多重通信が可能な無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記ユーザ端末から自装置への伝搬路のチャネル推定を行うステップと、前記チャネル推定結果に基づいて多重通信を行うユーザ端末の組を選択するステップと、前記選択したユーザ端末の組において各ユーザ端末のチャネル応答行列を直交またはほぼ直交させるための、一方のユーザ端末のチャネル応答行列に対して適用する射影行列のプリコーディング行列を決定するステップと、前記決定したプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を含む制御情報を対応するユーザ端末へフィードバックするステップと、前記選択したユーザ端末の組の各ユーザ端末から送信されたデータを複数の受信アンテナによって受信するステップと、前記受信したデータから複数のストリームを分離して検出するステップと、前記検出した複数のストリームから受信データを復号するステップと、を有し、前記ユーザ端末の組として、受信信号強度の強い強力なレイヤである第1のユーザ端末と、受信信号強度が弱い微弱なレイヤである第2のユーザ端末とを選択し、前記プリコーディング行列として、前記第1のユーザ端末に適用する射影行列のプリコーディング行列を決定し、前記制御情報として、前記射影行列のプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を前記第1のユーザ端末のみに通知する、無線通信方法を提供する。
本発明は、第の態様として、複数のユーザ端末と基地局との間で多重通信が可能な無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記ユーザ端末から自装置への伝搬路のチャネル推定を行うステップと、前記チャネル推定結果に基づいて多重通信を行うユーザ端末の組を選択するステップと、前記選択したユーザ端末の組において各ユーザ端末のチャネル応答行列を直交またはほぼ直交させるための、一方のユーザ端末のチャネル応答行列に対して適用する射影行列のプリコーディング行列を決定するステップと、前記決定したプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を含む制御情報を対応するユーザ端末へフィードバックするステップと、前記選択したユーザ端末の組において送信電力配分を行い、各ユーザ端末に割り当てるパワーウエイトを決定するステップと、前記選択したユーザ端末の組の各ユーザ端末から送信されたデータを複数の受信アンテナによって受信するステップと、前記受信したデータから複数のストリームを分離して検出するステップと、前記検出した複数のストリームから受信データを復号するステップと、を有し、前記プリコーディング行列として、前記パワーウエイトが異なる一方のユーザ端末に適用する射影行列のプリコーディング行列を決定し、前記制御情報として、前記射影行列のプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を前記一方のユーザ端末に通知する、無線通信方法を提供する。
上記構成により、一方のユーザ端末に対して、チャネル応答行列に基づく射影行列のプリコーディング行列を適用することで、制御情報のオーバーヘッドを増大することなく、複数のユーザ端末の直交性を保つための効果的なプリコーディングが可能であり、ユーザ間干渉を最小化することが可能になる。
本発明によれば、MU−MIMOシステムにおいて、制御情報のオーバーヘッドを増大することなく、効果的なプリコーディングによってユーザ間干渉を最小化することが可能な無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法を提供できる。
BSとUEとを有するMU−MIMOシステムの構成を示す図 MU−MIMOシステムの構成例を示すブロック図 図2の構成例に対応するMU−MIMOシステムの概略構成を示す図 図2の構成例における各UEとBS間の上り回線チャネル応答行列を2次元で模式的に示した図であり、(A)はUEペアの上り回線チャネル応答行列のパワーのバランスがとれている場合を示す図、(B)はUEペアの上り回線チャネル応答行列のパワー差がある場合を示す図 本発明の第1の実施形態として、セルラー無線通信網を用いた無線通信システムの構成の第1例を示すブロック図 第1の実施形態における動作手順を示すフローチャート 第1の実施形態の構成例に対応するMU−MIMOシステムの概略構成を示す図 第1の実施形態の構成例における各UEとBS間の上り回線チャネル応答行列を2次元で模式的に示した図 本発明の第2の実施形態として、セルラー無線通信網を用いた無線通信システムの構成の第2例を示すブロック図 第2の実施形態における動作手順を示すフローチャート 本発明の第3の実施形態として、セルラー無線通信網を用いた無線通信システムの構成の第3例を示すブロック図 第3の実施形態における動作手順を示すフローチャート
本実施形態では、本発明に係る無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法の一例として、セルラー無線通信網の上り回線においてMU−MIMOを適用し、複数のUEとBSとの間でSDMAによる同時通信を行う無線通信システムの構成例を示す。
本実施形態は、概ね遠隔通信に係り、より詳しくは、MIMOシステムにおけるSDMA用の複数アンテナ送信のための方法及び装置、並びに製造物に関する。
まず、MIMOシステム内でSDMA用の複数アンテナ送信を遂行する技術について説明する。これらの技術は、符号分割多重アクセス(CDMA:Code Division Multiple Access)や直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)や時分割多重アクセス(TDMA:Time Division Multiple Access)等の各種無線技術と組み合わせて使用することができる。単一の基地局(BS)に対する複数のユーザ端末(UE)による上り回線送信では、各稼働中のUEごとに上り回線チャネル応答行列が得られる。各スケジューリング期間ごとに、BSはスケジューリング方針に従って同時送信を行うUEペアを選択し、伝搬路損失パラメータとUEのチャネル応答行列に基づき対応するプリコーディング行列を算出する。BSはそこでUEペアの一方へプリコーディング行列をフィードバックし、その一方のUEにプリコーディング行列をかけたデータストリームを適用する。
上り回線送信処理において選択された各UEは、下敷きとする無線技術(例えば、CDMAやOFDMやTDMA)に従ってそのデータストリームを処理し、データシンボルストリームを得る。各UEは、さらにそのデータシンボルストリームに対し空間的処理を施し、自UEにBSからプリコーディング行列が割り当てられている場合、そのプリコーディング行列を用いてプリコーディングを適用し、UEの各アンテナからそれぞれ一つの送信シンボルストリームを出力するよう、一組の送信シンボルストリームを生成する。選択されたUEペアの各UEは、生成したデータシンボルストリームをその複数のアンテナからそれらの個別MIMOチャネルを介してBSへ同時送信する。BSは、その複数のアンテナから複数の受信シンボルストリームを受信する。BSはそこで、線形或いは非線形の空間処理技術に従って受信シンボルストリームに対し受信空間処理を施し、選択されたUEペアから送信されたデータシンボルストリームを再生する。
ここに開示された本実施形態のシステムや方法は、複数のUEからセルラー無線通信システム内のBSへデータを送信する方法を提供することで上述の課題に示した必要性に対処するものである。本実施形態によれば、MU−MIMOにおけるプリコーディングをSDMAを構成するUEペアの一方に適用することで、異なるUEから送信されるデータストリーム間の干渉を最小化し、及び/又は、SDMAを用いたスケジューリングの可能性を増大させて多重化ゲインを改善することが実現できる。UEペアの一方にだけ簡単なプリコーディングを適用し、その一方のUEのみに精細なプリコーディング情報を通知することで、BSからUEへ制御情報をフィードバックする際のシグナリングのオーバーヘッドに対する影響は最小化される。したがって、制御情報量を大きく増加させることなく、全体のチャネル容量を維持しながら干渉を低減させることが可能となり、UEのペアリングの選択自由度が増すとともに、選択したUEペアにおいて十分な通信品質を確保できるようになる。
本実施形態は、以下の処理手順を含むものである。
(1) BSが対応する回線上の伝搬路損失パラメータをUEと共有するステップ
(2) BSが伝搬路損失に基づきどのUEがより微弱となりそうか識別するステップ
(3) BSが各UEに対するさらなるユーザ間干渉の軽減のためにプリコーディング行列を使用するか否か指示するステップ
(4) BSが全ての稼働中のUEごとに参照信号を用いてチャネル応答行列を推定するステップ
(5) BSがスケジューリング方針に従ってUEペアを選択し、対応するプリコーディング行列を算出し、プリコーディングされたチャネル応答行列を直交させるステップ
(6) BSが前記ステップ(3)に従い選択されたプリコーディング行列を一方のUEにフィードバックし、他の送信パラメータをペアリングされた全UEにフィードバックするステップ
(7) 各UEが対応する上り回線のシグナリング割り当てに基づきデータストリームを送信するステップ
(8) BSが各UEからのデータストリームを受信し、MU−MIMO検出処理を実行して選択されたUEペアの各UEごとに再生データストリームを得るステップ
一つの実施形態によれば、セルラー無線通信システムは、それぞれ複数の送信アンテナを有する複数のUEと、複数の受信アンテナを有する一つのBSとを含む。BSは、複数のUEについてUEのペアリング及びスケジューリングとプリコーディングとを適用し、複数の空間的データストリームを処理するためのSDMAを構成する手段を有する。この手段は、各回線の伝搬路損失とチャネル応答行列とに基づき、UEペアの選択、及びペアリングされたUEの一方に用いる対応するプリコーディング行列の選択を行う機能を含み、また、対応する各UEにプリコーディング指示と他の送信パラメータをフィードバックする機能を含む。
本発明のこれら及び他の特徴並びに利点は、添付図面及び添付特許請求の範囲と共に本発明の実施形態に係る下記の詳細な説明を参照してより良く理解されよう。
本発明の好適な実施形態を、添付図面を参照してここで詳細に説明することにする。下記の説明では、本実施形態に取り込む既知の機能及び構成に関する詳細な説明は、明快さと簡潔さに配慮し省略してある。
図1は、BSとUEとを有するMU−MIMOシステムの構成を示す図である。図1では、簡単のために一つのBSと二つのUEのみを示してある。MU−MIMOシステム100は、BS102とUE104、106とを有し、下り回線及び上り回線において、データ送信用に複数の送信アンテナと複数の受信アンテナとを用いる。選択されたUEの組(UEペア)は、下り回線送信用の複数出力と上り回線送信用の複数入力とを一括して表している。選択された各UEは、それぞれのユーザ専用データを送信し、及び/又はBSからそれぞれのユーザ専用データを受信する。以下では、上り回線上のデータ送信について詳細に説明する。
図2は、MU−MIMOシステムの構成例を示すブロック図である。この図2の構成例のMU−MIMOシステム200は、前述した特許文献1のように、各UEごとにプリコーディングを適用した例である。ここでは二つのUE(UE1_210、UE2_220)がBS230と通信する場合を示している。各UEは、4本等の複数の受信アンテナを備えるBSに向けて個々の上り回線において無線送信を行う2本等の複数のアンテナを備える。BSの受信アンテナと所与のUEの送信アンテナとにより形成される上り回線MIMOチャネルは、N行M列のチャネル応答行列Hにより特徴付けられる。ここで、iは選択された各UEペアにおけるUEのインデックスである。一般に、各UEには、そのUEのアンテナ数MとBSのアンテナ数Nとにより定まる次元を有する異なる上り回線チャネル応答行列が関連付けられる。この上り回線チャネル応答行列について説明する。
UEiに関する上り回線チャネル応答行列Hを特異値分解を用いて分解し、対応する射影行列、すなわち右特異行列を得る。上り回線チャネル応答行列Hの特異値分解は、下記の式(1)で表される。
Figure 0005398722
ここで、UはHの左固有ベクトルからなるN行N列(N×N)のユニタリ行列であり、ΛはHの特異値からなるN行M列(N×M)の対角行列であり、VはHの右固有ベクトルからなるM行M列(M×M)のユニタリ行列であり、上付きHは共役転置行列を表す。ユニタリ行列Xは特性式XHX=Iにより特徴付けられ、ここでIは単位行列である。ユニタリ行列の列は、互いに直交している。
SDMA(MU−MIMO)を用いることで、UEは上り回線上にあるデータを同時並行的にBSへ送信することができる。図2の例では、各UEはプリコーディング行列として上り回線チャネル応答行列Hの右固有値ベクトルVを用いて通信データに空間的処理を施す。実際の上り回線チャネル応答行列H^は、BSにおいて各UEが送信する参照信号に基づき推定することしかできない。このため、プリコーディング行列V^を上記式(1)に基づいて導出し、定量化することができる。ここで、^を付していないH、V等の行列は理論値を示し、^を付したH^、V^(正しくは^は以下の式に示すようにH等の文字の上に付く)等の行列はコードブックなどを用いて決定した実際に適用される行列を示す。以下も同様である。BSは、選択されたプリコーディング行列V^をペアリングされた各UEにそれぞれフィードバックし、上り回線送信に使用すべきプリコーディング行列を通知する必要がある。その結果、UEペアの各UEは、その上り回線MIMOチャネルの主固有モードにてデータを送信することができる。すなわち、各UEiは、通知されたプリコーディング行列を用いて、データシンボルS=[Si,1,…,Si,MTに空間的処理を施し、下記の式(2)で表されるM個の送信シンボルを得る。
Figure 0005398722
よって、BSにおける受信信号は下記の式(3)で表される。
Figure 0005398722
ここで、行列V、Sは下記の式(4)で表されるものである。
Figure 0005398722
また、行列H(正しくは−は以下の式に示すようにHの文字の上に付く)は、下記の式(5)で表される実効SDMAチャネルである。
Figure 0005398722
しかしながら、ユーザ間干渉については、上記の上り回線SDMAプリコーディングを用いて処理されない。なぜなら、上記例のプリコーディングではUE間の直交性を維持できないからである。ペアリングされたUE間のユーザ間干渉は、SMDAに関する性能劣化の原因となる極めて重要な問題であり、特にユーザ間干渉は強力なレイヤ(受信強度の強い端末)と微弱なレイヤ(受信強度の弱い端末)のペアリングにおけるシステム性能を著しく劣化させる。強力なレイヤは、セル中央にあるUE等の送信されたデータストリームがそのUEからより高いSINR(Signal-to-Interference plus Noise power Ratio)をもってBSにて受信されるUEを指し、微弱なレイヤはセル端にあるUE等の送信されたデータストリームがそのUEからより低いSINRをもってBSにて受信されるUEを指す。SDMA用の先行技術を用いた場合、UE間の直交性はスケジューラにのみ依存する。すなわち、直交或いは直交に近いUE群がMU−MIMOの送信ごとにスケジューラによりペアリングされる。しかしながら、この場合、直交するUEペアを選択することによりスケジューリング可能性が減少するので、少ないスケジューリング可能性が多重化ゲインの減少を招くことになる。一方で、スケジューリング可能性を大きくすると、大きなシステム性能の劣化を招くことになる。
ここで、ユーザ間干渉について説明する。図3は、図2の構成例に対応するMU−MIMOシステムの概略構成を示す図である。ここでは、MU−MIMOシステム200において、微弱なレイヤであるUE1_210と強力なレイヤであるUE2_220とがBS230に対して2×4の上り回線のMU−MIMO送信を行う場合を示している。
この場合、UE1_210とBS230との間の上り回線チャネル応答行列がH1、UE2_220とBS230との間の上り回線チャネル応答行列がH2であり、BSから各UEに対してそれぞれプリコーディング行列V、Vを指示するプリコーディング情報PMI1、PMI2をフィードバックする。ユーザ間干渉を低減し、UE間の直交性を維持するためには、粒度の高いプリコーディング情報をフィードバックする必要がある。このため、複雑なスケジューリングのためにスケジューラの負荷が増大するとともに、プリコーディング情報PMI1、PMI2のビット数を増やすことでシグナリングのオーバーヘッドが増大するという課題がある。
図4は、図2の構成例における各UEとBS間の上り回線チャネル応答行列を2次元で模式的に示した図である。本例におけるチャネル行列は実際には4次元空間であるが、ここでは簡単のため2次元で模式的に示している。実際の4次元空間を必ずしも正確に表したものではない。図4において、各チャネル行列はベクトルで表され、ベクトルの長さはパワー(すなわちSINR)を表している。一方のUEの上り回線チャネル応答行列から他方のUEの上り回線チャネル応答行列への射影ベクトルがUE間の干渉を示すことになる。図4(A)に示すように、UEペアの上り回線チャネル応答行列H、Hのパワーのバランスがとれている場合は、UE2からUE1への干渉は所望信号に対して小さい。しかしながら、図4(B)に示すように、UEペアの上り回線チャネル応答行列H、Hのパワー差がある場合、すなわち図3に示したように微弱なレイヤのUE1_210と強力なレイヤのUE2_220との組み合わせである場合は、UE2からUE1への干渉は所望信号に対して大きく、システムの通信品質が大きく劣化するという課題がある。
本実施形態は、MU−MIMOシステムにおいてユーザ間干渉をさらに低減するために、さらなるプリコーディングを適用してペアリングされたUE間の実効チャネルをできる限り直交化させることを提案するものである。本実施形態では、通信システムにおける通信チャネルの性能を向上させるシステム並びに方法を提供し、それによって例えば上り回線SDMA通信システムにおける通信チャネルの性能を改善する。本実施形態のプリコーディングを適用することにより、MU−MIMOシステムにおけるユーザ間干渉を低減し、かつ、スケジューリング処理の複雑化やプリコーディング用のフィードバック情報に関するシグナリングのオーバーヘッドの増大を抑制することが可能になる。
(第1の実施形態)
図5は、本発明の第1の実施形態として、セルラー無線通信網を用いた無線通信システムの構成の第1例を示すブロック図である。第1の実施形態は、各UEにおいて2本の送信アンテナを有し、BSにおいて4本の受信アンテナを有する場合の構成例であり、選択された二つのUEによるUEペアと一つのBSとの間でMU−MIMOによる上り回線の通信を行う無線通信システムを示したものである。なお、アンテナの数は2本や4本に限るものではなく、複数のアンテナを適宜設定可能である。
第1の実施形態のMU−MIMOシステム500は、第1ユーザ端末であるUE1_510、第2ユーザ端末であるUE2_520、基地局であるBS530を有しており、UE1_510とUE2_520のそれぞれから、SDMAを用いたMU−MIMO通信によって、空間多重したデータストリームをそれぞれ2本の送信アンテナにより同時にBS530に対して送信する。UE1_510は送信アンテナ517a(Ant1)と517b(Ant2)を有し、UE2_520は送信アンテナ527a(Ant1)と527b(Ant2)を有する。BS530は受信アンテナ531a(Ant1)、531b(Ant2)、531c(Ant3)、531d(Ant4)を有する。ここで、UE1_510からBS530への上り回線をチャネル1、UE2_520からBS530への上り回線をチャネル2とする。
本実施形態の構成において、BSの受信アンテナとUE1及びUE2における送信アンテナが形成する上り回線MIMOチャネルは、4行2列(4×2)のチャネル応答行列H,Hにより特徴付けられる。
上り回線チャネル応答行列H^とH^は、対応するUEから送信される参照信号に基づきBSにて推定される。上り回線チャネル応答行列H^とH^の特異値分解は、下記の式(6)で表される。
Figure 0005398722
ここで、U^はH^の左固有ベクトルからなる4行4列(4×4)のユニタリ行列であり、Λ^はH^の特異値からなる4行2列(4×2)の対角行列であり、V^はH^の右固有ベクトルからなる2行2列(2×2)のユニタリ行列である。また、U^はH^の左固有ベクトルからなる4行4列(4×4)のユニタリ行列であり、Λ^はH^の特異値からなる4行2列(4×2)の対角行列であり、V^はH^の右固有ベクトルからなる2行2列(2×2)のユニタリ行列である。
本発明の一実施形態によれば、ユニタリ行列によるプリコーディングを一方のUEに適用し、もう一方のUEのチャネル応答行列に対しプリコーディングしたチャネル応答行列を直交化(あるいはできる限り直交化)させる。すなわち、ユニタリ行列のプリコーディング行列Pを一方のUE用に選択してデータシンボルを空間的に処理する。これにより、実効SDMAチャネルHは下記の式(7)で表される。
Figure 0005398722
UE1とUE2との間の直交性Φは、下記の式(8)で表されるプリコーディング行列同士の内積の対角和(トレース)を求める公式により評価することができる。
Figure 0005398722
そこで、UE1とUE2との間のユーザ間干渉を最小化するために、最適のプリコーディング行列Pを下記の式(9)のようにΦが所定値以下となるような最小値を求めて算出する。
Figure 0005398722
上記のチャネル最適化方法では、最適プリコーディング行列Pを定量化して送信機へ返信する必要があり、重要なフィードバック帯域の使用に帰結する。フィードバックのオーバーヘッドを低減すべく、本実施形態ではプリコーディング行列Pの選択においてコードブックに基づく方法を用いる。
コードブックに基づく方法では、予め設定した行列群を持つ一つの所定のコードブックC={C,C,…,C}から、ペアリングされたUEのうちの一方についてプリコーディング行列を選択し、UE1とUE2の間のユーザ間干渉を最小化する。ここでCはL個のユニタリ行列を含む。なお、コードブックCで選択されるユニタリ行列の個数Lは任意であり、例えば信号処理におけるDFTの個数を用いればよい。次に、選択されたプリコーディング行列Cを用いると、実効SDMAチャネルは下記の式(10)に示すものとなる。
Figure 0005398722
ここで、UE1とUE2の間のユーザ間干渉を最小化するために、最良のプリコーディング行列P=Cを下記の式(11)のようにΦが最小となるものから選択する。
Figure 0005398722
なお、異なるスケジューリング及びペアリング方針を用い、コードブックに異なる内容を持たせることができる。一例として、SDMA用にランダムにペアリングするスケジューリングを用い、すなわち第1の稼働中のUEをラウンドロビン(Round Robin)またはPF(Proportional Fairness)によってスケジューリングし、第2のUEをランダムに選択することも可能である。この場合、L個のDFTに基づくユニタリ行列はコードブックC内に下記の式(12)のように収容し得る。
Figure 0005398722
ここで、行列Θは下記の式(13)で表される。
Figure 0005398722
また、行列Φは下記の式(14)で表される。
Figure 0005398722
コードブックC{C=Φ}の大きさは、ペアリングされたUE間の直交要件を表す閾値パラメータλに依存する。すなわち、任意のV^,V^に関する大きさLのコードブックCから下記の式(15)を満たす少なくとも一つの要素を見出すことができる。
Figure 0005398722
別の実施形態によれば、直交ペアリングのスケジューリングをSDMAに用い、すなわち直交するUEペアを先ず見出し、続いてPFスケジューリングに基づきUEペア群から一対を選択する。選択したUEペアは、下記の式(16)を満たすことがわかる。
Figure 0005398722
ここで、λはペアリング用の直交要件を表す閾値パラメータである。この場合、DFTに基づくユニタリ行列のコードブックΦのサブセットをコードブックCに用い得る。コードブックΦに基づくコードブックの大きさとサブセットの選択は、λとλの両方に依存する。ここでλはペアリングされたUE間の直交性に関する最終要件を表す。すなわち、任意のV^とV^に関するサブセットコードブックCから下記の式(17)を満たす少なくとも一つの要素を見出すことができる。
Figure 0005398722
特定のコードブックは、統計的なシミュレーションを用いて、例えばλ=0.05、λ=1.8のように見出すことができ、大きさ16のDFTに基づくコードブックC{C=Φ}を候補のコードブックとすることができる。
上記の本実施形態で提案するプリコーディング方法を用いることで、BSは、上り回線送信に使用すべきプリコーディング行列を通知するために、選択されたプリコーディング行列またはコードブックのインデックスをペアリングされたUEの一方にフィードバックするだけで済む。例えば、UE2はプリコーディング行列Pを用いてデータシンボルを空間的に処理し、下記の式(18)で表される2個の送信シンボルを得る。
Figure 0005398722
よって、BSにおける受信信号は下記の式(19)で表される。
Figure 0005398722
ここで、行列Sは下記の式(20)で表されるものである。
Figure 0005398722
また、行列Hは、下記の式(21)で表される実効SDMAチャネルである。
Figure 0005398722
図5に示すように、UE1_510には2本の送信アンテナ517a、517bが備わっており、UE2_520には2本の送信アンテナ527a、527bが備わっており、BS530には4本の受信アンテナ531a〜531dが備わっている。上り回線SDMA送信を用い、MU−MIMOによってUE1とUE2はBSと同時通信する。
UE1_510は、チャネルエンコーディング部511、シンボルマッピング部512、空間多重部513を備える。同様に、UE2_520は、チャネルエンコーディング部521、シンボルマッピング部522、空間多重部523、プリコーディング部524を備える。これらのUE1_510及びUE2_520において、図示しないRF部、送信アンテナ517a及び517b、527a及び527bなどによって送信部の機能を実現する。
UE1_510では、入力ビット系列1に対してチャネルエンコーディング部511にて誤り訂正符号化処理を施して符号化し、続いてシンボルマッピング部512にてQPSKや16QAMなどの所定の変調方式によって変調して被変調シンボルを得る。そして、被変調シンボルに対し空間多重部513にて空間多重処理を施して二つの空間ストリームS,Sを生成し、各ストリームのデータを送信アンテナ517a、517bからそれぞれ送信する。UE2_520では、入力ビット系列2に対してチャネルエンコーディング部521にて誤り訂正符号化処理を施して符号化し、続いてシンボルマッピング部522にてQPSKや16QAMなどの所定の変調方式によって変調して被変調シンボルを得る。そして、被変調シンボルに対し空間多重部523にて空間多重処理を施して二つの空間ストリームS,Sを生成する。さらに、プリコーディング部524にて空間ストリームS,Sに上記のプリコーディング行列Pを適用してプリコーディングを行い、各ストリームのデータを送信アンテナ527a、527bからそれぞれ送信する。
各UEから送信された空間ストリームは、対応するMIMOチャネルを通過し、BSにおいて受信アンテナ531a〜531dにより同時受信される。BS530は、チャネル推定・プリコーディング選択部539、MIMO検出部532、デマルチプレキシング部533、534、デマッピング部535、536、デコーディング部537、538を備える。
このBS530において、受信アンテナ531a〜531d、図示しないRF部などによって受信部の機能を実現する。また、MIMO検出部532が信号分離部の機能を実現する。また、デマルチプレキシング部533、534、デマッピング部535、536、デコーディング部537、538等によって復号部の機能を実現する。また、チャネル推定・プリコーディング選択部539は、チャネル推定部、スケジューリング部、プリコーディング選択部、制御情報通知部の機能を有している。
BS530では、受信アンテナ531a〜531dにて受信した信号のうちの参照信号を用いて、チャネル推定・プリコーディング選択部539にて伝搬路推定を行って全ての稼働中のUEのチャネル応答行列を推定する。そして、伝搬路推定結果をチャネル行列としてMIMO検出部532に出力する。また、チャネル推定・プリコーディング選択部539においてスケジューリング方針と前述のプリコーディング方法に基づいてプリコーディング行列Pの選択を行い、選択したプリコーディング行列Pを指示するプリコーディング情報PMIを出力し、スケジューリングされたUEペアの一方のUE2_520にフィードバックする。
そして、MIMO検出部532において、受信アンテナにて受信した信号のうちのデータ信号r,r,r,rに対し、チャネル行列を用いてMIMO分離処理を施し、異なる複数のUEからのデータストリームを検出して分離し、分離後のストリームS^,S^,S^,S^を得る。その後、空間多重部513、523の逆の処理を行うデマルチプレキシング部533、534にて、分離検出したストリームをそれぞれ一つのシンボル系列に並び替え、シンボルマッピング部512、522の逆の処理を行うデマッピング部535、536にてシンボル単位の復調処理を施す。続いて、チャネルエンコーディング部511の逆の処理を行うデコーディング部537、538にて誤り訂正復号処理を施し、UE1とUE2から送信された出力ビット系列1、2をそれぞれ再現して出力する。
図6は、第1の実施形態における動作手順を示すフローチャートであり、SDMA用の上り回線においてMU−MIMO送信を実行する方法を例示したものである。まず、ステップ602において、BSとUEは対応する回線に関する伝搬路損失情報を共有する。続いて、ステップ604において、BSは参照信号(SRS:sounding RS)のパラメータを用いて調整される伝搬路損失に基づき、どのUEが微弱なレイヤとなりそうかを識別する。そして、ステップ606において、BSはUEペアを形成した場合に強力なレイヤとなる一方のUEに対して射影行列によるプリコーディング行列を適用することを決定し、プリコーディングの実行をUEに通知する。
ステップ608において、BSは稼働中の全UEについてSRSを用いてチャネル応答行列を推定する。次にステップ610において、BSはスケジューリング方針に従いUEペアを選択し、ペアリングされたUEのチャネル応答行列を直交化或いはできる限り直交化すべく対応するプリコーディング行列Pを算出するか或いはコードブックから選択する。そして、ステップ612において、BSは強力なレイヤとなる一方のUEに対してプリコーディング行列Pを指示するプリコーディング情報をフィードバックする。その後、ステップ614において、各UEはプリコーディング行列と送信レートの情報を含む対応する上り回線割り当てのシグナリングに基づき、データストリームを生成して送信する。最後にステップ616において、BSは各UEから送信されたデータストリームを受信してMU−MIMO検出を行い、選択されたUEペアの各UEからの再生データストリームを得る。
ここで、本実施形態によるユーザ間干渉の軽減効果について説明する。図7は、図5に示した第1の実施形態の構成例に対応するMU−MIMOシステムの概略構成を示す図である。ここでは、MU−MIMOシステム500において、微弱なレイヤであるUE1_510と強力なレイヤであるUE2_520とがBS530に対して2×4の上り回線のMU−MIMO送信を行う場合を示している。
この場合、UE1_510とBS530との間の上り回線チャネル応答行列がH、UE2_520とBS530との間の上り回線チャネル応答行列がHであり、BSからは一方のUE2_520に対してプリコーディング行列Pを指示するプリコーディング情報PMIをフィードバックする。本実施形態では、強力なレイヤである一方のUEに対してのみプリコーディング行列Pを適用することで、UE間の直交性を維持し、ユーザ間干渉を低減することが可能である。この際、一方のUEだけにプリコーディング行列Pを指示する情報をフィードバックすればよいため、シグナリングのオーバーヘッドの増大を抑制できる。
図8は、図5に示した第1の実施形態の構成例における各UEとBS間の上り回線チャネル応答行列を2次元で模式的に示した図である。本例におけるチャネル行列は実際には4次元空間であるが、ここでは簡単のため2次元で模式的に示している。実際の4次元空間を必ずしも正確に表したものではない。図8において、各チャネル行列はベクトルで表され、ベクトルの長さはパワー(すなわちSINR)を表している。一方のUEの上り回線チャネル応答行列から他方のUEの上り回線チャネル応答行列への射影ベクトルがUE間の干渉を示すことになる。この場合、UEペアの上り回線チャネル応答行列H、Hのパワーのバランスがとれていない状態、すなわち図7に示したように微弱なレイヤのUE1_510と強力なレイヤのUE2_520との組み合わせであっても、一方のUEの上り回線チャネル応答行列Hにプリコーディング行列Pをかけることでチャネル応答行列H、HPを直交化あるいはできる限り直交化することができる。よって、UE2からUE1への干渉を軽減でき、システムの通信品質の劣化を抑制できる。またこの場合、スケジューリング処理を複雑化することなく、UEペア選択の可能性を高く保持でき、多重化ゲインを改善できる。
例えば、UE間の上り回線チャネル応答行列の直交性を保つために、プリコーディング行列をより細かく設定可能とし、粒度の高いプリコーディング情報をフィードバックするようにした場合、それぞれのUEにフィードバックするシグナリングの情報量が増大してしまう。これに対し、本実施形態では、一方のUEのみに簡単なユニタリ行列の射影行列によるプリコーディング行列Pを適用することで、できるだけ直交性を保つようにするため、一方のUEにプリコーディング情報をフィードバックするだけで済む。したがって、より少ないシグナリングの情報量でUEペアを直交させるプリコーディングを実現でき、また、UEペアの選択を容易にすることが可能になる。
本実施形態は、特に、セル端の微弱なレイヤのUEとセル中央の強力なレイヤのUEとをペアリングした場合など、ペアリングされたUE間のパワー差が大きい場合に、より顕著な効果が得られる。この場合、一方の強力なレイヤのUEだけに射影行列のプリコーディング行列Pを適用し、このUEにのみプリコーディング情報を通知してプリコーディングを行えばよい。ここで、各UEは複数の送信アンテナにより空間多重された複数のデータストリームを送信しているため、ユニタリ特性を持つ射影行列によって直交性を保つための効果的なプリコーディングが可能である。
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態として、セルラー無線通信網を用いた無線通信システムの構成の第2例を示すブロック図である。第2の実施形態は、前述した第1の実施形態の一部を変更したものである。第2の実施形態では、UE間の干渉と各一つのUEにおける空間ストリーム間の干渉の両方を最小化するために、本実施形態のプリコーディングと先行技術を用いたプリコーディングの組み合わせを適用する。すなわち、前述した図2の構成例のプリコーディング行列Vを用いるとともに、第1の実施形態で示した追加のユニタリ行列のプリコーディング行列Pを一方のUEに対して選択し、さらなるデータシンボルの空間的処理を実行する。
本実施形態のプリコーディング方法を用いることで、BSは、プリコーディング行列Vについては選択されたプリコーディング行列またはコードブックのインデックスを対応するUEにフィードバックし、プリコーディング行列Pについては選択されたプリコーディング行列またはコードブックのインデックスをペアリングされたUEの一方にフィードバックするだけで済む。例えば、UE2はプリコーディング行列Pを用いてデータシンボルを空間的に処理し、下記の式(22)で表される2個の送信シンボルを得る。
Figure 0005398722
よって、BSにおける受信信号は下記の式(23)で表される。
Figure 0005398722
ここで、行列Sは下記の式(24)で表されるものである。
Figure 0005398722
また、行列Hは、下記の式(25)で表される実効SDMAチャネルである。
Figure 0005398722
図9に示すように、第2の実施形態のMU−MIMOシステム900は、第1ユーザ端末であるUE1_910、第2ユーザ端末であるUE2_920、基地局であるBS930を有している。UE1_910には2本の送信アンテナ917a、917bが備わっており、UE2_920には2本の送信アンテナ927a、927bが備わっており、BS930には4本の受信アンテナ931a〜931dが備わっている。上り回線SDMA送信を用い、MU−MIMOによってUE1とUE2は空間多重したデータストリームをそれぞれ2本の送信アンテナによりBSに送信し、BSと同時通信する。
UE1_910は、チャネルエンコーディング部911、シンボルマッピング部912、空間多重部913に加えて、プリコーディング行列Vを適用するプリコーディング部914を備える。UE2_920は、チャネルエンコーディング部921、シンボルマッピング部922、空間多重部923に加えて、プリコーディング行列Vを適用する第1のプリコーディング部924aとプリコーディング行列Pを適用する第2のプリコーディング部924bとを有するプリコーディング処理部924を備える。
UE1_910では、入力ビット系列1に対してチャネルエンコーディング部911にて符号化し、続いてシンボルマッピング部912にて変調して被変調シンボルを得る。そして、被変調シンボルに対し空間多重部913にて空間多重処理を施して二つの空間ストリームS,Sを生成する。その後、空間ストリームS,Sに対してプリコーディング部914にてプリコーディング行列Vを適用してプリコーディングを行い、各ストリームのデータを送信アンテナ917a、917bからそれぞれ送信する。UE2_920では、入力ビット系列2に対してチャネルエンコーディング部921にて符号化し、続いてシンボルマッピング部922にて変調して被変調シンボルを得る。そして、被変調シンボルに対し空間多重部923にて空間多重処理を施して二つの空間ストリームS,Sを生成する。さらに、空間ストリームS,Sに対してプリコーディング処理部924の第1のプリコーディング部924aにてプリコーディング行列Vを適用するとともに、第2のプリコーディング部924bにて上記のプリコーディング行列Pを適用してプリコーディングを行い、各ストリームのデータを送信アンテナ927a、927bからそれぞれ送信する。
各UEから送信された空間ストリームは、対応するMIMOチャネルを通過し、BSにおいて受信アンテナ931a〜931dにより同時受信される。BS930は、チャネル推定・プリコーディング選択部939、MIMO検出部932、デマルチプレキシング部933、934、デマッピング部935、936、デコーディング部937、938を備える。
BS930では、受信アンテナ931a〜931dにて受信した信号のうちの参照信号を用いて、チャネル推定・プリコーディング選択部939にて伝搬路推定を行って全ての稼働中のUEのチャネル応答行列を推定する。そして、伝搬路推定結果をチャネル行列としてMIMO検出部932に出力する。また、チャネル推定・プリコーディング選択部939においてスケジューリング方針と前述のプリコーディング方法に基づいてプリコーディング行列V、Pの選択を行う。そして、選択したプリコーディング行列Vを示す情報をスケジューリングされたUEペアの両方にフィードバックし、選択したプリコーディング行列Pを示す情報をスケジューリングされたUEペアの一方にフィードバックする。すなわち、プリコーディング行列Vを指示するプリコーディング情報PMI1をUE1_910にフィードバックし、プリコーディング行列V、Pを指示するプリコーディング情報PMI2をUE2_920にフィードバックする。
そして、MIMO検出部932において、受信アンテナにて受信した信号のうちのデータ信号r,r,r,rに対し、チャネル行列を用いてMIMO分離処理を施し、異なる複数のUEからのデータストリームを検出して分離し、分離後のストリームS^,S^,S^,S^を得る。その後、デマルチプレキシング部933、934にて分離検出したストリームをそれぞれ一つのシンボル系列に並び替え、デマッピング部935、936にてシンボル単位の復調処理を施す。続いて、デコーディング部937、938にて誤り訂正復号処理を施し、UE1とUE2から送信された出力ビット系列1、2をそれぞれ再現して出力する。
図10は、第2の実施形態における動作手順を示すフローチャートであり、SDMA用の上り回線においてMU−MIMO送信を実行する方法を例示したものである。まず、ステップ1002において、BSとUEは対応する回線に関する伝搬路損失情報を共有する。続いて、ステップ1004において、BSはSRSのパラメータを用いて調整される伝搬路損失に基づき、どのUEが微弱なレイヤとなりそうかを識別する。そして、ステップ1006において、BSはUEペアを形成した場合に強力なレイヤとなる一方のUEに対して射影行列による追加のプリコーディング行列Pを適用することを決定し、プリコーディングの実行をUEに通知する。
ステップ1008において、BSは稼働中の全UEについてSRSを用いてチャネル応答行列を推定する。次にステップ1010において、BSはスケジューリング方針に従いUEペアを選択し、ペアリングされたUEのチャネル応答行列を直交化或いはできる限り直交化すべく対応するプリコーディング行列P、Vを算出するか或いはコードブックから選択する。そして、ステップ1012において、BSはUEペアの双方に対してプリコーディング行列Vを、一方のUEに対してプリコーディング行列Pをそれぞれ指示するプリコーディング情報をフィードバックする。その後、ステップ1014において、各UEはプリコーディング行列と送信レートの情報を含む対応する上り回線割り当てのシグナリングに基づき、データストリームを生成して送信する。最後にステップ1016において、BSは各UEから送信されたデータストリームを受信してMU−MIMO検出を行い、選択されたUEペアの各UEからの再生データストリームを得る。
このように、UEペアの双方に対してプリコーディングを行う場合においても、直交性を確保するために一方のUEに対して射影行列を適用するプリコーディングを組み合わせることによって、スケジューリングのオーバーヘッドを増大させること無く、UE間の干渉を軽減できる。またこの場合、スケジューリング処理を複雑化することなく、UEペア選択の可能性を高く保持でき、多重化ゲインを改善できる。
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態として、セルラー無線通信網を用いた無線通信システムの構成の第3例を示すブロック図である。第3の実施形態は、前述した第1及び第2の実施形態の一部を変更したものであり、ここでは第1及び第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。第3の実施形態では、UE間の干渉を最小化し、また各UEに電力制御のパワーウエイトを最適に割り当てるために、本実施形態のプリコーディングと電力制御との組み合わせを適用する。この場合、ペアリングする各ユーザの目標SINRを異ならせる電力制御方式に適用することで、提案方式のプリコーディングによるゲインを増大させることができる。すなわち、各UEにパワーウエイトFを割り当てるとともに、前述した図2の構成例のプリコーディング行列Vを用い、さらに第1の実施形態で示した追加のユニタリ行列のプリコーディング行列Pを一方のUEに対して選択し、さらなるデータシンボルの空間的処理を実行する。
本実施形態のプリコーディング方法を用いることで、BSは、割り当てられたパワーウエイトFと、プリコーディング行列Vについて選択されたプリコーディング行列またはコードブックのインデックスとを、対応する各UEにフィードバックし、プリコーディング行列Pについては選択されたプリコーディング行列またはコードブックのインデックスをペアリングされたUEの一方にフィードバックするだけで済む。そして、UE1とUE2は、対応するプリコーディング行列VとパワーウエイトFとを用いてそれぞれのデータシンボルを空間的に処理する。ここで、UE2は、空間的処理において追加のプリコーディング行列Pの組込みを行う。すなわち、UE1、UE2は、それぞれ下記の式(26)で表される2個の送信シンボルを得る。
Figure 0005398722
ここで、FとFはその対角要素が各ストリームごとのパワーウエイトを示す対角行列である。
よって、BSにおける受信信号は下記の式(27)で表される。
Figure 0005398722
ここで、行列Sは下記の式(28)で表されるものである。
Figure 0005398722
また、行列Hは、下記の式(29)で表される実効SDMAチャネルである。
Figure 0005398722
図11に示すように、第3の実施形態のMU−MIMOシステム1100は、第1ユーザ端末であるUE1_1110、第2ユーザ端末であるUE2_1120、基地局であるBS1130を有している。UE1_1110には2本の送信アンテナ1117a、1117bが備わっており、UE2_1120には2本の送信アンテナ1127a、1127bが備わっており、BS1130には4本の受信アンテナ1131a〜1131dが備わっている。上り回線SDMA送信を用い、MU−MIMOによってUE1とUE2は空間多重したデータストリームをそれぞれ2本の送信アンテナによりBSに送信し、BSと同時通信する。
UE1_1110は、チャネルエンコーディング部1111、シンボルマッピング部1112、空間多重部1113に加えて、UE間の送信電力配分に基づき自端末のパワーを割り当てるパワー割当部1114aとプリコーディング行列V1を適用するプリコーディング部1114bとを有するプリコーディング処理部1114を備える。UE2_1120は、チャネルエンコーディング部1121、シンボルマッピング部1122、空間多重部1123に加えて、UE間の送信電力配分に基づき自端末のパワーを割り当てるパワー割当部1124aとプリコーディング行列V2を適用する第1のプリコーディング部1124bとプリコーディング行列Pを適用する第2のプリコーディング部1124cとを有するプリコーディング処理部1124を備える。
UE1_1110では、入力ビット系列1に対してチャネルエンコーディング部1111にて符号化し、続いてシンボルマッピング部1112にて変調して被変調シンボルを得る。そして、被変調シンボルに対し空間多重部1113にて空間多重処理を施して二つの空間ストリームS,Sを生成する。その後、空間ストリームS,Sに対してプリコーディング処理部1114のパワー割当部1114aにてパワーウエイトFを乗算してパワー割当てを行った後、プリコーディング部1114bにてプリコーディング行列Vを適用してプリコーディングを行い、各ストリームのデータを送信アンテナ1117a、1117bからそれぞれ送信する。UE2_1120では、入力ビット系列2に対してチャネルエンコーディング部1121にて符号化し、続いてシンボルマッピング部1122にて変調して被変調シンボルを得る。そして、被変調シンボルに対し空間多重部1123にて空間多重処理を施して二つの空間ストリームS,Sを生成する。さらに、空間ストリームS,Sに対してプリコーディング処理部924のパワー割当部1124aにてパワーウエイトFを乗算してパワー割当てを行った後、第1のプリコーディング部1124bにてプリコーディング行列Vを適用するとともに、第2のプリコーディング部1124cにて上記のプリコーディング行列Pを適用してプリコーディングを行い、各ストリームのデータを送信アンテナ1127a、1127bからそれぞれ送信する。
各UEから送信された空間ストリームは、対応するMIMOチャネルを通過し、BSにおいて受信アンテナ1131a〜1131dにより同時受信される。
BS1130は、チャネル推定・プリコーディング選択部1139、MIMO検出部1132、デマルチプレキシング部1133、1134、デマッピング部1135、1136、デコーディング部1137、1138を備える。第3の実施形態では、チャネル推定・プリコーディング選択部1139は、チャネル推定部、スケジューリング部、プリコーディング選択部、制御情報通知部とともに、パワーウエイト決定部の機能を有している。
BS1130では、受信アンテナ1131a〜1131dにて受信した信号のうちの参照信号を用いて、チャネル推定・プリコーディング選択部1139にて伝搬路推定を行って全ての稼働中のUEのチャネル応答行列とチャネル品質を推定する。そして、伝搬路推定結果をチャネル行列としてMIMO検出部1132に出力する。また、チャネル推定・プリコーディング選択部1139は推定されたチャネル応答行列とチャネル品質に基づいてUE間の送信電力配分を実行して各UEのパワー割当てを決定し、UEごとのパワーウエイトFを算出する。さらに、チャネル推定・プリコーディング選択部1139においてスケジューリング方針と前述のプリコーディング方法に基づいてプリコーディング行列V、Pの選択を行う。そして、パワーウエイトFと選択したプリコーディング行列Vを示す情報をスケジューリングされたUEペアの両方にフィードバックし、選択したプリコーディング行列Pを示す情報をスケジューリングされたUEペアの一方にフィードバックする。すなわち、パワー割当てを指示するパワーウエイトFとプリコーディング行列Vを指示するプリコーディング情報PMI1をUE1_1110にフィードバックし、パワー割当てを指示するパワーウエイトFとプリコーディング行列V、Pを指示するプリコーディング情報PMI2をUE2_1120にフィードバックする。
そして、MIMO検出部1132において、受信アンテナにて受信した信号のうちのデータ信号r,r,r,rに対し、チャネル行列を用いてMIMO分離処理を施し、異なる複数のUEからのデータストリームを検出して分離し、分離後のストリームS^,S^,S^,S^を得る。その後、デマルチプレキシング部1133、1134にて分離検出したストリームをそれぞれ一つのシンボル系列に並び替え、デマッピング部1135、1136にてシンボル単位の復調処理を施す。続いて、デコーディング部1137、1138にて誤り訂正復号処理を施し、UE1とUE2から送信された出力ビット系列1、2をそれぞれ再現して出力する。
図12は、第3の実施形態における動作手順を示すフローチャートであり、SDMA用の上り回線においてMU−MIMO送信を実行する方法を例示したものである。まず、ステップ1202において、BSとUEは対応する回線に関する伝搬路損失情報を共有する。続いて、ステップ1204において、BSはSRSのパラメータを用いて調整される伝搬路損失に基づき、どのUEが微弱なレイヤとなりそうかを識別する。そして、ステップ1206において、BSはUEペアを形成した場合に強力なレイヤとなる一方のUEに対して射影行列による追加のプリコーディング行列Pを適用することを決定し、プリコーディングの実行をUEに通知する。
ステップ1208において、BSは稼働中の全UEについてSRSを用いてチャネル応答行列とチャネル品質を推定する。そしてステップ1210において、BSはチャネル応答行列及びチャネル品質に基づいてUE間の送信電力配分を行い、各UEのパワーウエイトFを算出する。次にステップ1212において、BSはスケジューリング方針に従いUEペアを選択し、ペアリングされたUEのチャネル応答行列を直交化或いはできる限り直交化すべく対応するプリコーディング行列P、Vを算出するか或いはコードブックから選択する。そして、ステップ1214において、BSは各UEに対してパワーウエイトFをフィードバックするとともに、UEペアの双方に対してプリコーディング行列Vを、一方のUEに対してプリコーディング行列Pをそれぞれ指示するプリコーディング情報をフィードバックする。その後、ステップ1216において、各UEはパワーウエイト及びプリコーディング行列と送信レートの情報を含む対応する上り回線割り当てのシグナリングに基づき、データストリームを生成して送信する。最後にステップ1218において、BSは各UEから送信されたデータストリームを受信してMU−MIMO検出を行い、選択されたUEペアの各UEからの再生データストリームを得る。
このように、複数のUEにおいて送信電力配分を行う場合において、直交性を確保するために一方のUEに対して射影行列を適用するプリコーディングを組み合わせることによって、スケジューリングのオーバーヘッドを増大させること無く、UE間の干渉を軽減できる。特に、ペアリングされたUE間の目標SINRに差があり、電力制御によるパワーの差が大きい場合に、より本実施形態のプリコーディングによる効果が増大し、MU−MIMOにおいて大きなゲインを得ることができる。
なお、上述した実施形態のプリコーディング処理において、プリコーディング行列Vは必ずしも必要ではなく、ペアリングされたUE間を直交化或いはできる限り直交化させるプリコーディング行列Pのみを適用しても良い。
上述したように、本実施形態によれば、ペアリングされたUEの一方にだけ簡単な射影行列のプリコーディング行列を適用することで、制御情報をフィードバックするためのシグナリングのオーバーヘッドに対する影響を最小化できる。なぜなら、ペアリングされたUEの一方に精密な粒度のコードブックを提供するためのシグナリングのオーバーヘッドしか必要ないからである。また、ペアリングされたUEの一方に射影行列のプリコーディング行列を適用することによって、UEペアのチャネル応答行列の直交性を維持でき、UE間のユーザ間干渉を低減することができるので、MU−MIMOの性能にロバスト性を持たせることができる。また、SDMAにおけるUEペアのスケジューリングの可能性を増大させることで、スケジューリング処理の複雑化を抑制し、多重化ゲインを改善することができる。
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
MU−MIMOシステムを構成するUEの数(SDMA用に選択したUEの組の端末数)、各UEの送信アンテナ数、BSの受信アンテナ数などは、上記実施形態の構成に限らず、2以上の数を適宜設定して本発明を同様に適用することが可能である。
上記各実施形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はソフトウェアで実現することも可能である。
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
本出願は、2008年9月22日出願の日本特許出願(特願2008−242703)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明は、MU−MIMOシステムにおいて、制御情報のオーバーヘッドを増大することなく、効果的なプリコーディングによってユーザ間干渉を最小化することが可能となる効果を有し、複数のアンテナを使用して通信を行うMIMOシステムを用いたセルラー通信システム等の無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法等として有用である。
100、500 MU−MIMOシステム
102 BS(基地局)
104、106 UE(ユーザ端末)
510、910、1110 UE1
520、920、1120 UE2
511、521、911、921、1111、1121 チャネルエンコーディング部
512、522、912、922、1112、1122 シンボルマッピング部
513、523、913、923、1113、1123 空間多重部
517a、517b、527a、527b、917a、917b、927a、927b、1117a、1117b、1127a、1127b 送信アンテナ
524、914、924、1114、1124 プリコーディング部
530 BS
531a、531b、531c、531d、931a、931b、931c、931d、1131a、1131b、1131c、1131d 受信アンテナ
532、932、1132 MIMO検出部
533、534、933、934、1133、1134 デマルチプレキシング部
535、536、935、936、1135、1136 デマッピング部
537、538、937、938、1137、1138 デコーディング部
539、939、1139 チャネル推定・プリコーディング選択部

Claims (4)

  1. 複数のユーザ端末と基地局との間で多重通信が可能な無線通信システムに用いられる基地局の無線通信装置であって、
    前記ユーザ端末から自装置への伝搬路のチャネル推定を行うチャネル推定部と、
    前記チャネル推定結果に基づいて多重通信を行うユーザ端末の組を選択するスケジューリング部と、
    前記選択したユーザ端末の組において各ユーザ端末のチャネル応答行列を直交またはほぼ直交させるための、一方のユーザ端末のチャネル応答行列に対して適用する射影行列のプリコーディング行列を決定するプリコーディング選択部と、
    前記決定したプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を含む制御情報を対応するユーザ端末へフィードバックする制御情報通知部と、
    前記選択したユーザ端末の組の各ユーザ端末から送信されたデータを複数の受信アンテナによって受信する受信部と、
    前記受信したデータから複数のストリームを分離して検出する信号分離部と、
    前記検出した複数のストリームから受信データを復号する復号部と、
    を備え、
    前記スケジューリング部は、受信信号強度の強い強力なレイヤである第1のユーザ端末と、受信信号強度が弱い微弱なレイヤである第2のユーザ端末とをユーザ端末の組として選択し、
    前記プリコーディング選択部は、前記第1のユーザ端末に適用する前記射影行列のプリコーディング行列を決定し、
    前記制御情報通知部は、前記射影行列のプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を前記第1のユーザ端末のみに通知する無線通信装置。
  2. 複数のユーザ端末と基地局との間で多重通信が可能な無線通信システムに用いられる基地局の無線通信装置であって、
    前記ユーザ端末から自装置への伝搬路のチャネル推定を行うチャネル推定部と、
    前記チャネル推定結果に基づいて多重通信を行うユーザ端末の組を選択するスケジューリング部と、
    前記選択したユーザ端末の組において各ユーザ端末のチャネル応答行列を直交またはほぼ直交させるための、一方のユーザ端末のチャネル応答行列に対して適用する射影行列のプリコーディング行列を決定するプリコーディング選択部と、
    前記決定したプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を含む制御情報を対応するユーザ端末へフィードバックする制御情報通知部と、
    前記選択したユーザ端末の組の各ユーザ端末から送信されたデータを複数の受信アンテナによって受信する受信部と、
    前記受信したデータから複数のストリームを分離して検出する信号分離部と、
    前記検出した複数のストリームから受信データを復号する復号部と、
    を備え、
    前記選択したユーザ端末の組において送信電力配分を行い、各ユーザ端末に割り当てるパワーウエイトを決定するパワーウエイト決定部をさらに備え、
    前記プリコーディング選択部は、前記パワーウエイトが異なる一方のユーザ端末に適用する前記射影行列のプリコーディング行列を決定し、
    前記制御情報通知部は、前記射影行列のプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を前記一方のユーザ端末に通知する無線通信装置。
  3. 複数のユーザ端末と基地局との間で多重通信が可能な無線通信システムにおける無線通信方法であって、
    前記ユーザ端末から自装置への伝搬路のチャネル推定を行うステップと、
    前記チャネル推定結果に基づいて多重通信を行うユーザ端末の組を選択するステップと、
    前記選択したユーザ端末の組において各ユーザ端末のチャネル応答行列を直交またはほぼ直交させるための、一方のユーザ端末のチャネル応答行列に対して適用する射影行列のプリコーディング行列を決定するステップと、
    前記決定したプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を含む制御情報を対応するユーザ端末へフィードバックするステップと、
    前記選択したユーザ端末の組の各ユーザ端末から送信されたデータを複数の受信アンテナによって受信するステップと、
    前記受信したデータから複数のストリームを分離して検出するステップと、
    前記検出した複数のストリームから受信データを復号するステップと、
    を有し、
    前記ユーザ端末の組として、受信信号強度の強い強力なレイヤである第1のユーザ端末と、受信信号強度が弱い微弱なレイヤである第2のユーザ端末とを選択し、
    前記プリコーディング行列として、前記第1のユーザ端末に適用する射影行列のプリコーディング行列を決定し、
    前記制御情報として、前記射影行列のプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を前記第1のユーザ端末のみに通知する、無線通信方法。
  4. 複数のユーザ端末と基地局との間で多重通信が可能な無線通信システムにおける無線通信方法であって、
    前記ユーザ端末から自装置への伝搬路のチャネル推定を行うステップと、
    前記チャネル推定結果に基づいて多重通信を行うユーザ端末の組を選択するステップと、
    前記選択したユーザ端末の組において各ユーザ端末のチャネル応答行列を直交またはほぼ直交させるための、一方のユーザ端末のチャネル応答行列に対して適用する射影行列のプリコーディング行列を決定するステップと、
    前記決定したプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を含む制御情報を対応するユーザ端末へフィードバックするステップと、
    前記選択したユーザ端末の組において送信電力配分を行い、各ユーザ端末に割り当てるパワーウエイトを決定するステップと、
    前記選択したユーザ端末の組の各ユーザ端末から送信されたデータを複数の受信アンテナによって受信するステップと、
    前記受信したデータから複数のストリームを分離して検出するステップと、
    前記検出した複数のストリームから受信データを復号するステップと、
    を有し、
    前記プリコーディング行列として、前記パワーウエイトが異なる一方のユーザ端末に適用する射影行列のプリコーディング行列を決定し、
    前記制御情報として、前記射影行列のプリコーディング行列を示すプリコーディング情報を前記一方のユーザ端末に通知する、無線通信方法。
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