以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、実施形態に係るパチンコ機の全体回路構成を示すブロック図である。図中の破線は、主に、直流電圧ラインを示している。
図示の通り、このパチンコ機は、AC24Vを受けて各種の直流電圧やシステムリセット信号SYSやRWMクリア信号CLRなどを出力する電源基板7と、遊技制御動作を中心統括的に担う主制御基板1と、主制御基板1から受けた制御コマンドCMD’に基づいてランプ演出及び音声演出を実行する演出制御基板2と、演出制御基板2から受けた信号を各部に伝送する演出インタフェイス基板3と、演出インタフェイス基板3から受けた制御コマンドCMD”に基づいて液晶ディスプレイDISPを駆動する液晶制御基板4と、主制御基板1から受けた制御コマンドCMDに基づいて払出モータMを制御して遊技球を払い出す払出制御基板5と、遊技者の操作に応答して遊技球を発射させる発射制御基板6とを中心に構成されている。
ここで、主制御基板1、演出制御基板2、液晶制御基板4、及び払出制御基板5には、ワンチップマイコンを備えるコンピュータ回路がそれぞれ搭載されている。そこで、主制御基板1、演出制御基板2、液晶制御基板4、及び払出制御基板5に搭載された回路、及びその回路によって実現される動作を機能的に総称して、本明細書では、主制御部1、演出制御部2、液晶制御部4、及び払出制御部5と言うことがある。なお、演出制御部2、液晶制御部4、及び払出制御部5の全部又は一部がサブ制御部である。
主制御部1は、払出制御部5に対して制御コマンドCMDを一方向に送信している。そして、払出制御部5は、主制御部1から受けた制御コマンドCMDに基づいて、指定数の賞球を払出している。具体的には、払出モータMを回転させることで必要な賞球動作を実現している。
一方、払出制御部5は、電源基板7からRWMクリア信号CLRを受けたことを示す確認信号ACKを主制御部1に送信している。また、払出制御部5は、遊技球の払出動作を示す賞球計数信号や、払出動作の異常に係わるステイタス信号CONを、主制御部1に送信している。なお、ステイタス信号CONには、例えば、補給切れ信号、払出不足エラー信号、下皿満杯信号が含まれる。
また、払出制御部5は、発射制御基板6に対して、交流電圧AC24Vと発射制御信号CTLを出力している。発射制御信号CTLは、発射ソレノイドを動作させる条件となるものであり、発射制御信号CTLがLレベルであると遊技球の発射動作が禁止される。
ところで、主制御部1と払出制御部5には、電源基板7から、直流5Vのバックアップ電源BUが供給されている。したがって、営業終了や停電により交流電源24Vが遮断された後も、ワンチップマイコン内部のRWMのデータは保持される。本実施形態では、少なくとも数日は、RWMの記憶内容が保持されるよう設計されている。
また、電源基板7は、交流電源24Vの遮断時に、主制御部1及び払出制御部5に、電圧降下信号ABNを出力するよう構成されている。電圧降下信号ABNは、この実施形態では、各ワンチップマイコンの割込み端子ではなく、入力ポートに供給されている。そして、主制御部1及び払出制御部5では、フラグセンス方式によって、電圧降下信号ABNのレベル降下を把握した後、必要なデータをRWMに退避している。そのため、上記したバックアップ電源BUの作用とあいまって、主制御部1と払出制御部5では、営業開始時や停電からの復旧時に、電源遮断前の動作を再開できることになる。
更にまた、電源基板7は、主制御部1及び払出制御部5に対して、初期化スイッチSW(図2)がON操作されたことを示す前記のRWMクリア信号CLR(以下クリア信号CLRと略すことがある)を出力している。したがって、各制御基板1,5では、クリア信号CLRのレベルを判定することによって、初期化スイッチSWのON/OFF状態を把握することができる。なお、初期化スイッチSWは、跳ね返り型のスイッチであり、バックアップ電源BUによって保持されているRWMの記憶内容を消去させたい場合に、係員によって電源スイッチに先立ってON操作される。
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態について、電源基板7と主制御基板1及び払出制御基板5との接続関係を確認的に図示したものである。図示の通り、主制御基板1及び払出制御部5は、電源基板7から、バックアップ電源BUを含む直流電源電圧だけでなく、RWMをクリア処理するためのクリア信号CLRと、交流電源の電圧降下を示す電圧降下信号ABNと、システムリセット信号SYSとを受けている。なお、クリア信号CLRは、主制御部1の入力ポートIN1と、払出制御部5の入力ポートIN3に同期して供給される。
払出制御部5は、入力ポートIN4を経由して、主制御部1の出力ポートOUT1から制御コマンドCMDを受ける一方、自らの出力ポートOUT2から主制御部1の入力ポートIN2に対して、ステイタス信号CONと確認信号ACKとを送信している。また、払出モータMに対する駆動パルスは、出力ポートOUT3から出力される。なお、払出制御部5は、発射制御基板6に対して、先に説明した発射制御信号CTLを出力している。
図4は、第1実施形態について、電源投入時における主制御部1の動作内容を説明するフローチャートである。このメイン処理は、ステップST13〜ST15の無限ループ処理で終わるが、遊技動作を制御する本来の処理は、無限ループ処理(ST13〜ST15)中に、所定時間毎(4mS)に起動される不図示のタイマ割込み処理で実行される。なお、第1実施形態では、ウォッチドッグタイマ回路を設けておらず、CPU(Z80CPUの相当品)が強制的にリセットされることはない。但し、払出制御部5については、ウォッチドッグタイマ回路を設けても、設けなくても良い。
以下、図4を参照しつつ、主制御部1のメイン処理について説明する。メイン処理が開始されるのは、停電状態からの復旧時のように初期化スイッチSW(図2)が操作されることなく電源がON状態になる場合と、初期化スイッチSWがON操作されて電源がON状態になる場合とがある。
何れの場合でも、Z80CPUは、最初に自らを割込み禁止状態に設定すると共に(ST1)、割込みモード2に設定する(ST2)。また、CPU内部のスタックポインタSPの値を、スタック領域の最終アドレスに初期設定する(ST3)。次に、ワンチップマイコンの各部を含めて内部レジスタの値を初期設定した後(ST4)、RWMクリア信号CLRの値を判定する(ST5)。先に説明した通り、RWMクリア信号CLRとは、ワンチップマイコンの内蔵RWMの全領域を初期設定するか否かを決定する信号であって、係員が操作する初期化スイッチSWのON/OFF状態に対応した値を有している。
ここでは、RWMクリア信号CLRがON状態であったと仮定すると、ステップST5の判定に続いて、内蔵RWMの全領域がゼロクリアされる(ST9)。したがって、電源遮断時にセットされたバックアップフラグBFLの値は、他のチェックサム値などと共にゼロとなる。
次に、RWM領域がゼロクリアされたことを報知するためのRWMクリアコマンドが出力された後(ST10)、払出制御部5から確認信号ACKが送信されるのを待つ(ST11)。図6のステップST52に関して後述するように、確認信号ACKは、払出制御部5における最初のタイマ割込み処理における、最終タイミングで送信される。したがって、主制御部1では、確認信号ACKによって、払出制御部1の初期動作が完全に完了したことを確認することができる。
確認信号ACKが受信できれば、次に、タイマ割込み動作を起動する割込み信号を出力するCTC(Z80 counter timer circuit )を初期設定し(ST12)、CPUを割込み禁止状態にセットした状態で(ST13)、各種のカウンタついて更新処理を実行し(ST14)、その後、CPUを割込み許可状態に戻して(ST15)ステップST13に戻る。
ところで、ステップST5の判定処理に戻って説明を続けると、停電状態からの復旧時には、初期化スイッチSW(RWMクリア信号CLR)はOFF状態である。そして、このような場合には、ステップST5の判定に続いて、バックアップフラグBFLの内容が判定される(ST6)。なお、バックアップフラグBFLは、電源遮断時に5AHにセットされ、電源復帰後の最初のタイマ割込み処理の処理でゼロにリセットされるよう構成されている。
したがって、電源投入時や、停電状態からの復旧時である場合には、バックアップフラグBFLの内容が5AHの筈である。但し、何らかの理由で電源遮断までに所定の処理が完了しなかったような場合には、バックアップフラグBFL=00Hである。したがって、BFL≠5AH(通常はBFL=00H)となる場合には、ステップST6からステップST9の処理に移行させて遊技機の動作を初期状態に戻す。
一方、バックアップフラグBFL=5AHであれば、チェックサム値を算出するためのチェックサム演算を実行する(ST7)。ここで、チェックサム演算とは、内蔵RWMのワーク領域を対象とする8ビット加算演算である。そして、チェックサム値が算出されたら、この演算結果を、RWMのSUM番地の記憶値と比較をする(ST8)。
SUM番地には、電源遮断時に、同じチェックサム演算によるチェックサム値が記憶されている。そして、記憶された演算結果は、内蔵RWMの他のデータと共に、バックアップ電源によって維持されている。したがって、本来は、ステップST8の判定によって両者が一致する筈である。
しかし、電源遮断時にチェックサム演算が実行できなかった場合や、実行できても、その後、メイン処理のチェックサム演算(ST7)の実行時までの間に、ワーク領域のデータが破損している場合もあり、このような場合にはステップST8の判定結果は不一致となる。判定結果の不一致によりデータ破損が検出された場合には、ステップST9の処理に移行させてRWMクリア処理を実行し、遊技機の動作を初期状態に戻す。一方、ステップST8の判定において、チェックサム演算(ST7)によるチェックサム値と、SUM番地の記憶値とが一致する場合には、ステップST11の処理に移行する。
続いて、図5及び図6を参照して、第1実施形態における払出制御部5の動作内容を説明する。払出制御部5の動作は、概説すると、電源投入後に開始されて無限ループ処理で終わるメイン処理(図5(a))と、主制御部1からのストローブ信号STBによって起動される受信割込み処理(図5(b))と、一定時間(2mS)毎に開始されるタイマ割込み処理(図6)とで構成されている。
図5(b)に示すように、受信割込み処理では、入力ポートIN4(図2)から制御コマンドCMDを取得して、これをRWMのコマンドバッファ領域に格納した後(ST101)、CPUを割込み許可状態(EI)に設定して処理を終える(ST103)。
次に、メイン処理(図5(a))の動作内容を説明するが、この処理は、図4に関して説明した主制御部1のメイン処理と殆ど同じである。すなわち、払出制御部5のステップST22の処理は、図4のステップST2〜ST4に対応し、ステップST23〜ST2の処理は、図4のステップST5〜ST8に対応する。また、ステップST21とST28は、図4のステップST1とST9と同じ処理である。ステップST23で判定されるクリア信号は、電源基板7から送信されるRWMクリア信号CLRである。
なお、払出制御部5では、バックアップフラグBFLと区別するため、バックアップフラグBAKと表現している。そして、払出制御部5では、ステップST25のサム演算の結果が一致すれば、直ちに、バックアップフラグBAKをゼロにリセットしている(ST27)。
何れにして、ステップST27の処理か、ステップST28の処理が終われば、判定フラグFLGの値を5AHに設定する(ST29)。第1実施形態では、判定フラグFLGは、電源投入状態か否かを判定する用途で使用され、電源投入時に一回だけ、主制御部1に確認信号ACKを返送する動作を可能にしている(図6参照)。
次に、タイマ割込み信号を出力するCTC(Z80 counter timer circuit )を初期設定し(ST30)、CPUを割込み許可状態に設定して(ST31)、無限ループ処理を繰り返す。
この無限ループ処理の実行中、一定時間毎(2mS)に、図6に示すタイマ割込み処理が実行される。ここでは、コマンド解析処理(ST44)において、受信割込み処理で取得された制御コマンドCMDが解析され、解析結果に基づいて賞球動作が実行される。
賞球動作は、具体的には、払出モータMに出力される駆動データを用意するモータ処理(ST49)と、用意された駆動データを出力するデータ出力処理(ST50)とで実現される。そして、データ出力処理(ST50)によって回転駆動された払出モータMが、実際に賞球を払出したか否かは、データ入力処理(ST42)と賞球処理(ST47)とで確認される。
また、このデータ出力処理(ST50)では、エラー報知などの発光ダイオードの点灯処理だけでなく、主制御部1への確認信号ACKの送信処理(ST51〜ST53)も実行される。すなわち、データ出力処理(ST50)の最後に、判定フラグFLGの値がチェックされ(ST51)、その値が5AHである場合には、主制御部1に対して、出力ポートOUT2から確認信号ACKを出力した後(ST52)、判定フラグFLGをゼロにリセットする(ST53)。判定フラグFLGがゼロにリセットされたことにより(ST53)、これ以降のタイマ割込みでは、確認信号ACKが出力されることはない。
このように、第1実施形態では、電源投入時の一回だけ、ステップST53の処理によって、確認信号ACKが出力される。そして、確認信号ACKを受信した主制御部1では、待機状態のステップST11から、ステップST12に動作が移行されることになり、遊技機の遊技制御が本格的に開始される。
データ出力処理(ST50)はタイマ割込み処理の最後に配置されているので、主制御部1が確認信号ACKを受信したタイミングでは、払出制御部5における動作が確実に立ち上がっている。そのため、払出制御部5は、主制御部1が送信する制御コマンドCMDを読み落すことがない。
しかも、確認信号ACKは、電源投入時の一回しか出力されないので、例えば、不正遊技者がRWMクリア信号CLRを悪用して、意図的に大当り状態を発生させようとしても、その目論見が成功することがない。すなわち、電源を遮断することなく、主制御部1のCPUを強制的にリセットすると共に、RWMクリア信号CLRを意図的にLレベルに下げても、主制御部1は、確認信号ACKを待ち続けるだけであって制御動作を開始することがない(ST11)。
なお、ステップST11の待機処理は、確認信号ACKを受けない限り解除されないので、ウォッチドッグタイマによるCPUリセット動作の場合にも、同様の待機状態が発生する。そこで、本実施形態では、ウォッチドッグタイマ回路を設けていないが、経験上、不正遊技行為とは無関係にCPUが暴走状態となることは極めて稀であるので、何の弊害も生じない。
むしろ、不正遊技者が電磁ノイズなどを利用してCPUを暴走状態にし、ウォッチドッグタイマ回路によるCPUの強制リセット動作を悪用して、RWMをゼロクリアさせる違法行為を排除できる利点がある。
以上第1実施形態について説明したが、ステップST29の処理に代えて、メモリに用意される出力8ビットデータのうち、確認信号に対応する特定ビットをON状態に設定したのでも良い(図5の破線部参照)。但し、この場合には、データ出力処理(ST50)において、前記特定ビットが主制御部1に毎回送信された後に、これがOFF状態に設定される(図6の破線部参照)。したがって、このような構成でも、電源投入後に一回だけON状態の確認信号が主制御部1に送信されることになる。
<第2実施形態>
以上、あえてウォッチドッグタイマ回路を設けない第1実施形態について説明したが、必ずしも、この構成に限定されるものではない。図3及び図7〜図9は、第2実施形態を説明する図面である。
図3に示す通り、第2実施形態では、主制御部1が、電源基板7から受けたクリア信号CLRは、そのまま払出制御部5に転送され、払出制御部5の入力ポートIN3に供給されている。なお、払出制御部5が電源基板7から受けるクリア信号CLRと区別するため、主制御部1から転送されるクリア信号CLRを、特に、転送クリア信号CLRと言うことがある。また、払出制御部5が電源基板7から受けるクリア信号CLRを、特に、直接クリア信号CLRということもある。但し、第2実施形態において、直接クリア信号CLRは必須ではなく、これを省略することもできる。
なお、この第2実施形態では、払出制御部5から主制御部1に、確認信号ACKが送信されないが、確認信号ACKを送信することが禁止されるものではない。また、第2実施形態では、主制御部1にウォッチドッグタイマ回路が設けられ、CPUの暴走時には、CPUが強制的にリセットされて遊技制御を再開できるよう構成されている。但し、第2実施形態においても、第1実施形態と同様、ウォッチドッグタイマ回路を設けない構成を採っても良い。
図7は、第2実施形態における、主制御部1のメイン処理を説明するフローチャートである。図7と図4を対比すれば明らかな通り、確認信号ACKの待機処理(ST11)が設けられていないことを除き、第2実施形態は、第1実施形態と同じである。但し、先に説明した通り、ステップST11の処理を設けても良いのは勿論である。
図8は、第2実施形態における、払出制御部5のメイン処理を説明するフローチャートである。図8と図5(a)を対比すれば明らかな通り、第2実施形態では、RWMクリア処理(ST28)が実行された場合には、判定フラグFLGが5AHに設定され(ST29)、RWMクリア処理(ST28)が実行されなかった場合には、判定フラグFLGが00Hに設定される(ST27)。また、RWMクリア処理(ST28)が実行されなかった場合には、タイマ変数TIMEが1000に初期設定される。
この実施形態では、判定フラグFLGは、電源投入時の動作内容を記憶するために使用される。また、タイマ変数TIMEは、初期化スイッチSWの押圧操作によって、人為的に発生し、人為的に消滅するクリア信号CLRが確実に消滅するまでの時間を確保するために使用される。すなわち、払出制御部5では、タイマ割込みが2mS毎に起動されるので、タイマ変数TIMEを1000に初期設定することで、クリア信号CLRが確実に消滅するまでの時間として2秒が確保されている。
なお、図8の破線で示す通り、払出制御部5にウォッチドッグタイマ回路を設ける場合には、ステップST23の処理の直ぐ後で、判定フラグFLGに5AHが設定される。したがって、これに対応して、RWMクリア処理(ST28)では、判定フラグFLGを除いて、RWM領域がゼロクリアされる。
図9は、第2実施形態における、タイマ減算処理(ST43)とデータ出力処理(ST50)の一部を図示したものであり、本実施形態の特徴的な動作を示している。先ず、電源投入後、初期化スイッチSWがON操作された場合について、タイマ割込み処理について説明する。
このような動作状態では、RWMクリア処理(ST28)の結果、タイマ変数TIMEがゼロとなっているので、図9(a)に示すステップST71の処理は、スキップされる(ST70)。一方、図9(b)に示すデータ出力処理(ST50)の最終処理では、タイマ変数TIMEがゼロであることから、図8のステップST27か、ステップST29の処理で設定された判定フラグFLGの値がチェックされる(ST60〜ST61)。
ここでは、電源投入時に、係員が初期化スイッチSWをON操作した場合を仮定しているので、RWMクリア処理(ST28)が実行された後、判定フラグFLG=5AHとなっている筈である。そこで、判定フラグFLGをゼロにリセットすると共に、タイマ変数TIMEを初期設定して処理を終える(ST62)。ステップST27の場合と同様、ここでは、タイマ割込み周期が2mSであることから、タイマ変数TIMEは1000に初期設定されている。
その後は、1000に初期設定されたタイマ変数TIMEが、タイマ減算処理においてデクリメントされ(ST71)、これがゼロになるまでの間(=2秒間)は、ステップST61以下の処理が禁止される。一方、2秒間が経過すると、ステップST60→ステップST61の処理を経て、入力ポートIN3から転送クリア信号CLRと直接クリア信号とが取得される(ST63)。
このタイミングでは電源投入から、少なくとも2秒間が経過しているので、係員は、必ず初期化スイッチSWから手を離している筈であり、その結果、直接クリア信号や転送クリア信号CLRも確実にOFF状態になっている筈である。したがって、ステップST64の判定の後は、何もしないでデータ出力処理を終える。
以上、電源投入時に係員が初期化スイッチSWをON操作したと仮定して動作内容を説明した。一方、初期化スイッチSWがON操作されなかった場合には、メイン処理において、判定フラグFLGがゼロにリセットされ(ST27)、タイマ変数TIMEが1000に初期設定されている(ST27)。
したがって、1000回のタイマ割込みを経た後に、ステップST60→ST61→ST63の処理を実行し、クリア信号CLRの値が判定される(ST63)。先の場合と同様、電源投入から少なくとも2秒間が経過しているタイミングでは、係員は、必ず初期化スイッチSWから手を離している筈であり、その結果、クリア信号CLRも確実にOFF状態になっている筈である。したがって、ステップST64の判定で、クリア信号CLRがOFF状態であることが確認されれば、何もしないでデータ出力処理を終える。
以上説明した通り、第2実施形態では、遊技機が遊技動作を実行している定常状態において、クリア信号CLRの値をチェックしている。そのため、不正遊技者がRWMクリア信号CLRを悪用して、意図的に大当り状態を発生させようとしても、その目論見が成功することがない。すなわち、電源を遮断することなく、主制御部1のCPUを強制的にリセットすると共に、RWMクリア信号CLRを意図的にLレベルに下げると、その事実は、払出制御部5のステップST64の判定において直ちに露見する。
そして、この場合には、払出制御部5は、ON状態の転送クリア信号CLRに基づいて、異常処理を実行する(ST65)。異常処理の内容は、特に限定されないが、例えば、ブザー音を鳴らすと共に、発射制御基板5に供給する発射制御信号CTLをLレベルに変更して遊技球の発射動作を禁止する。また、賞球動作その他の処理は、無限ループ状に停
止される。したがって、仮に大当り状態を発生させることができても、全く賞球を得ることはできない。
なお、誤判定を排除する趣旨から、クリア信号CTLが、所定回数(MAX)連続してON状態である場合に限って、異常処理を実行すべきである(ST600)。
<第3実施形態>
ところで、以上の説明では、不正遊技を払出制御部5で検出する構成を採った。しかし、この構成に限定される必要はなく、主制御部1で不正遊技を検出する構成を採っても良い。図10は、この第3実施形態における主制御部1のメイン処理を示すフローチャートである。この処理は、図8に示す払出制御部5のメイン処理と実質的に同一であり、破線部が特徴的な部分である。
また、主制御部1のタイマ割込み処理についても、図9に示す払出制御部5のタイマ割込み処理と実質的に同じである。なお、第3実施形態では、主制御部1から払出制御部5へのクリア信号CLRの転送が不要であることは言うまでもない。
<第4実施形態>
ところで、上記した各実施形態では、係員が、初期化スイッチSWのON操作を解除するまでの時間として2秒間を確保した。しかし、万一、2秒経過しても初期化スイッチSWをON操作し続けると、異常処理(ST65)が実行されてしまうことになる。また、電源スイッチを投入した後に、初期化スイッチSWがON操作される可能性もあり、このような場合にも異常処理(ST65)が実行されてしまう。
そこで、このような問題を解消するためには、初期化スイッチSWに関連して、図11(a)に示すクリア回路を設けるのが好ましい。このクリア回路は、クリア信号CLRを反転させるNOTゲートG1と、反転クリア信号PSHとシステムリセット信号SYSとを受けるANDゲートG2と、システムリセット信号SYSを遅延させて反転させる遅延回路10と、遅延回路10とANDゲートG2の出力を受けるNANDゲートG4と、NANゲートG4の出力OTが立ち下がると起動するワンショットマルチバイブレータ11とで構成されている。
なお、システムリセット信号SYSは、各制御基板のCPUを電源リセットするための信号であり、電源電圧の立ち上りタイミング(図11には電源ONと表記)から所定時間だけ、Lレベルを維持している。
図示の通り、初期化スイッチSWの一方はアースに接続され、他方はプルアップされてNOTゲートG1に供給されている。遅延回路10は、抵抗R1とコンデンサC1による積分回路と、NOTゲートG3との直列回路で構成されている。また、ワンショットマルチバイブレータ11は、2つのNANDゲートG5,G6と、抵抗R2及びコンデンサC2による微分回路とで構成されている。そのため、時定数R2×C2で規定される所定時間τだけ、ワンショットマルチバイブレータ11の出力信号CLR’は、Lレベルとなる。
図11(a)に示すクリア回路の出力信号CLR’(ワンショットマルチバイブレータ11の出力信号)は、係員による初期化スイッチSWのON操作時間の長短に拘わらず、そのパルス幅τが一定である。また、電源スイッチが投入された後に、初期化スイッチSWが操作されても、そのタイミングがT1以降である限り、クリア回路の出力信号CLR’に変化は生じない。したがって、このクリア回路の出力信号CLR’を、RWMクリア信号として主制御部1と払出制御部5に供給すれば、上記したトラブルの可能性が確実に解消される。
なお、NANDゲートG4の入力端子には、電源電圧も供給されており、電源投入直後の電圧不安定時におけるクリア回路の誤動作が防止されている。また、遅延回路10の出力DLYと、クリア信号CLRとを受けるORゲートG7を設け、ORゲートG7の出力に基づいて発光ダイオードLPを点灯させれば、係員が初期化スイッチSWから手を離してよいタイミングが明示される。すなわち、発光ダイオードLPは、ワンショットマルチバイブレータ11が確実に動作を開始すると点灯され、その後、係員が初期化スイッチSWから手を離すと消灯するので、係員の誤操作の可能性が大幅に軽減される。
ところで、図11(a)の回路構成を採った場合でも、電源投入までに初期化スイッチSWから手を離した場合には、クリア信号が生成されず、RWMクリア処理を実行させることができない。そこで、かかる問題を解消させるためには、図11(b)に示す回路構成を採るのが好ましい。
この初期化スイッチ回路は、初期化スイッチSWと、トランスTRと、整流回路と、NOTゲートG8とで構成されている。この回路では、電源スイッチPWの上流側において、AC24Vが、初期化スイッチSWとトランスTRの一次コイルとで短絡されている。そして、トランスTRの二次コイルの交流電圧は、ダイオードDと平滑コンデナサC4とで整流されている。
したがって、この初期化スイッチ回路においては、係員は、電源スイッチPWの投入に先立って、一瞬だけ跳ね返り型の初期化スイッチSWをON操作すれば足りる。すなわち、初期化スイッチSWのON操作によって平滑コンデンサC4が充電され、その後、電源スイッチPWが投入された後、平滑コンデンサC4の充電電荷が自然放電するまでの所定時間(例えば1秒に設定)だけ、クリア信号CLRがLレベルを維持する。
なお、電源投入後も初期化スイッチSWが押され続けると、クリア信号CLRがHレベルに復帰しない。しかし、初期化スイッチ回路から出力されるクリア信号CLRを、例えば、図11(a)に示すクリア回路に供給すれば、所定パルス幅のクリア信号CLR’を生成することができる。
最後に、本発明が好適に適用される弾球遊技機について確認的に説明する。図12は、本実施例のパチンコ機21を示す斜視図であり、図13は、同パチンコ機21の側面図である。なお、パチンコ機21は、カード式球貸し機22に電気的に接続された状態で、パチンコホールの島構造体の長さ方向に複数個が配設されている。
図示のパチンコ機21は、島構造体に着脱可能に装着される矩形枠状の木製外枠23と、外枠23に固着されたヒンジHを介して開閉可能に枢着される前枠24とで構成されている。この前枠24には、遊技盤25が裏側から着脱自在に装着され、その前側には、ガラス扉26と前面板27とが夫々開閉自在に枢着されている。
前面板27には発射用の遊技球を貯留する上皿28が装着され、前枠24の下部には、上皿28から溢れ出し又は抜き取った遊技球を貯留する下皿29と、発射ハンドル30とが設けられている。発射ハンドル30は発射モータと連動しており、発射ハンドルの回動角度に応じて動作する打撃槌31(図15参照)によって遊技球が発射される。
上皿28の右部には、カード式球貸し機22に対する球貸し操作用の操作パネル32が設けられ、この操作パネル32には、カード残額を3桁の数字で表示するカード残額表示部32aと、所定金額分の遊技球の球貸しを指示する球貸しスイッチ32bと、ゲーム終了時にカードの返却を指令する返却スイッチ32cとが設けられている。ガラス扉26の上部には、大当り状態を示す大当りLEDランプP1が配置されている。また、この大当りLEDランプP1に近接して、補給切れ状態や下皿の満杯状態を示す異常報知LEDランプP2,P3が設けられている。
図14に示すように、遊技盤25には、金属製の外レールと内レールとからなるガイドレール33が環状に設けられ、その内側の遊技領域25aの略中央には、表示装置8(具体的には液晶カラーディスプレイ)が配置されている。また、遊技領域25aの適所には、図柄始動口35、大入賞口36、複数個の普通入賞口37(大入賞口36の左右に4つ)、2つの通過口であるゲート部38が配設されている。これらの入賞口35〜38は、それぞれ内部に検出スイッチを有しており、遊技球の通過を検出できるようになっている。
表示装置8は、大当り状態に係わる特定図柄を変動表示すると共に背景画像や各種のキャラクタなどをアニメーション的に表示する装置である。この表示装置8は、中央部に特別図柄表示部Da〜Dcと右上部に普通図柄表示部39を有している。普通図柄表示部39は普通図柄を表示するものであり、ゲート部38を通過した遊技球が検出されると、表示される普通図柄が所定時間だけ変動し、遊技球のゲート部38の通過時点において抽出された抽選用乱数値により決定される停止図柄を表示して停止するようになっている。
図柄始動口35は、左右1対の開閉爪35aを備えた電動式チューリップで開閉されるよう例えば構成され、普通図柄表示部39の変動後の停止図柄が当り図柄を表示した場合には、開閉爪35aが所定時間だけ開放されるようになっている。そして、図柄始動口35に遊技球が入賞すると、特別図柄表示部Da〜Dcの表示図柄が所定時間だけ変動し、図柄始動口35への遊技球の入賞タイミングに応じた抽選結果に基づいて決定される停止図柄で停止する。
大入賞口36は、例えば前方に開放可能な開閉板36aで開閉制御されるが、特別図柄表示部Da〜Dcの図柄変動後の停止図柄が「777」などの大当り図柄のとき、「大当り」と称する特別遊技が開始され、開閉板36aが開放されるようになっている。大入賞口36の内部には入賞球を検出する入賞領域36bが存在する。
大入賞口36の開閉板36aが開放された後、所定時間が経過し、又は所定数(例えば10個)の遊技球が入賞すると開閉板36aが閉じる。このとき、最大で例えば15回まで特別遊技が継続され、遊技者に有利な状態に制御される。さらに、変動後の停止図柄が特別図柄のうちの特別状態発生図柄であった場合には、特別状態を発生させる。
図15に示すように、前枠24の裏側には、遊技盤25を裏側から押さえる裏機構板40が着脱自在に装着されている。この裏機構板40には開口部40aが形成され、その上側に賞球タンク41と、これから延びるタンクレール42とが設けられている。裏機構板40の側部には、タンクレール42に接続された払出装置43が設けられ、裏機構板40の下側には払出装置43に接続された通路ユニット44が設けられている。払出装置43から払出された遊技球は、通路ユニット44を経由して上皿排出口28a(図12)から上皿28に払出されることになる。
裏機構板40の開口部40aには、遊技盤25の裏側に装着された裏カバー45と、入賞口35〜37に入賞した遊技球を排出する入賞球排出樋(不図示)とが嵌合されている。この裏カバー45に装着されたケースCA1の内部に主制御基板1が配設される(図15参照)。
裏機構板40に装着されたケースの内部には、電源基板7と払出制御基板5が設けられている。この電源基板7には、電源スイッチ53(図11ではPWと表記)とRWMクリアスイッチ54(図2ではSWと表記)とが配置されている。これら両スイッチ53,54に対応する部位は切欠かれ、両スイッチを指で同時に操作可能になっている。発射ハンドル30の後側に装着されたケースCA5の内部には、発射制御基板6が設けられている。
以上、本発明の実施例について具体的に説明したが、記載内容は特に本発明を限定するものではない。例えば、実施例では、弾球遊技機について説明したが、パチンコ機、アレンジボール機、雀球遊技機のみならず、メダルを用いる回胴遊技機や、遊技球を用いる回胴遊技機にも適用できるのは勿論である。