以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また、図面は、理解しやすくするためにそれぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる薬液輸送装置10の概略構成を示す。図2は、本発明の実施の形態1にかかる薬液輸送装置10において、薬液11aを供給する薬液容器11と、その下部に配置した複合針16とで構成される供給部の断面構造を示す。
図1に示すように、本実施の形態1の薬液輸送装置10は、容器設置部(図示せず)に設置された薬液容器11と、計量チャンバ12と、弾性チューブ13と、送液ポンプ14(送液手段)と、弾性収縮体15と、を備えている。ここで、薬液容器11は、内部に薬液11aが充填されている。薬液輸送装置10を用いて、薬液11aが充填された薬液容器11から所定の量の薬液11aを取り出す。薬液容器11内から取り出した薬液11aは、計量チャンバ12に受け入れられる。薬液容器11と計量チャンバ12とは、弾性チューブ13により接続されている。また、送液ポンプ14は、弾性チューブ13が周囲に巻き付いた回転体14aを有し、回転体14aを弾性チューブ13に隣接させて回転させる。そして、送液ポンプ14は、弾性チューブ13内の少なくとも一部の気体又は液体を計量チャンバ12に輸送している。弾性収縮体15は、計量チャンバ12の近傍に配置され、計量チャンバ12と接続されている。弾性収縮体15は、収縮性がよく、薬液11a(薬剤)に対して不活性で、人体に対して影響を及ぼさない材料で形成されている。このような材料としては、例えば、シリコンゴムなどが適している。また、本実施の形態1の薬液輸送装置10の種々の制御は、図示しない制御部にて行われる。
ここで、本実施の形態1の薬液輸送装置10においては、気体は、弾性チューブ13内に除菌フィルタ等を介して送り込まれた清浄な空気とし、液体は、薬液容器11に充填された薬液11aとして説明する。
そして、薬液輸送装置10は、送液ポンプ14の回転体14aを回転させることにより、弾性チューブ13内の気体を、計量チャンバ12を介して弾性収縮体15に輸送すると共に、弾性チューブ13を介して、薬液容器11から計量チャンバ12に薬液11aを輸送する構成としている。
この構成により、後述するように、外気による汚染を防止する構造を保ちつつ、薬液容器11から所定の量の薬液11aを自動的に取り出して、計量チャンバ12の下部に取り付けた注射針12aを介して、輸液バッグ(図示せず)などに清浄な状態で注入できる。また、計量チャンバ12への薬液11aの輸送に伴って膨らんだ弾性収縮体15の収縮力を、計量チャンバ12内の薬液11aの吐出力としても利用できるので、薬液吐出の為の余分なアクチュエータを設けることなく、外気による汚染を防止する構造も保ったままで、自動かつ効率よく薬液11aを吐出できる。
次に本実施の形態1の薬液輸送装置10の各部分の構成について具体的に説明する。図1に示す薬液輸送装置10において、薬液容器11の薬液11aの一部は、弾性チューブ13の一部に隣接して、矢印14bの方向に回転する送液ポンプ14の回転体14aの回転により生じる吸引力で、薬液容器11の下部に取り付けられた複合針16を介して弾性チューブ13内に引き込まれる。回転体14aが矢印14bの方向に回転し続けると弾性チューブ13の内部の全体に薬液11aが満たされて、その一部が計量チャンバ12に充填される。薬液11aが計量チャンバ12に充填されるにつれて、計量チャンバ12内の気体が、弾性収縮体15の内部に流れ込む。これにより、弾性収縮体15は、その体積を増加して、図1の矢印15aに示すように膨張し、収縮力を蓄積する。これと同時に、計量チャンバ12及び弾性収縮体15の内部の気体の圧力は、大気圧から徐々に増加していく。
まず、このような状態の計量チャンバ12に輸送された薬液11aを、計量チャンバ12の外部に取り出す。そのために、注射針12aの先端を輸液バッグ(図示せず)などに挿入し、計量チャンバ12と注射針12aとの間の薬液11aの取り出し経路を遮断している第1の電磁弁12bを開放する。この時、送液ポンプ14の回転体14aの回転は停止し、弾性チューブ13と計量チャンバ12に挿入された挿入管12cとを接続している第2の電磁弁12dは、開放状態から遮断状態に切り換えられる。なお、この時、弾性収縮体15と大気への接続管15bとを接続している第3の電磁弁15cは、遮断状態となっている。このように、計量チャンバ12から薬液11aを外部に取り出す前の状態は、外気による汚染を防止する構造を保ったままの状態である。なおここで、弾性チューブ13は、薬液容器11から計量チャンバ12へ薬液11aを輸送する輸送路である。
ここで、計量チャンバ12は、先端12eに薬液取出し口12fを、外周面12gに輸送された薬液11aの液量を計量する目盛り12hを有し、薬液取出し口12fの下部には薬液11aを取出す第1の電磁弁12bと、注射針12aを有している。そして、弾性収縮体15の内部に蓄積された気体の圧力が外部の大気の圧力より高いことを利用して、その差圧を用いて第1の電磁弁12b及び注射針12aを介して計量チャンバ12の薬液11aを外部の輸液バッグ(図示せず)などに取り出す構成としている。ここで、薬液11aの液量は、例えば、計量チャンバ12の目盛り12hにより精度よく計量される。
この構成により、外気による汚染を防止する構造を保ったままで、正確な量の薬液11aの投与を実現できる。
ところで、薬液容器11内部の薬液11aを所定の量だけ計量チャンバ12に輸送する際、薬液容器11が密閉された構造であると、薬液11aを吸引していくに従い、薬液容器内部の圧力が低下する(陰圧状態になる)。これにより、弾性チューブ13を介して計量チャンバ12に薬液11aを輸送する為の吸引力を増大させなければ、薬液11aを吸引できなくなる。そこで、本実施の形態1の薬液輸送装置10は、薬液容器11の下部に配置した複合針16の構造を工夫して、外気による汚染を防止する構造を保ったままで、吸引力を増加させることなく、薬液容器11内部の薬液11aを吸引できるようにしている。
すなわち、図2に示すように、複合針16は、針基部16aと、吸入用針16bと、調整用針16cと、を有している。ここで、針基部16aは、薬液容器11の吸引ポート16dを下側に向けて、薬液容器11を受け入れる受入ポート16eを上部に、弾性チューブ13の一端を保持する保持ポート16fを下部に配置している。吸入用針16bは、受入ポート16eから保持ポート16fまで針基部16aを貫通して配置されている。調整用針16cは、針基部16aの側面16gから受入ポート16eまで針基部16aを貫通し、受入ポート16eの上方まで吸入用針16bと並行して配置されている。
このような複合針16は、薬液容器11の下部に配置されて、調整用針16cの先端を薬液容器11の内部の薬液面11cより上部に配置し、調整用針16cの先端を介して薬液容器11の空間11bへ外部の気体を導入する。すなわち、針基部16aの側面16gから突出した調整用針16cへの気体取り込み口16hから、外部の気体が、矢印16jの方向に吸引され、調整用針16cの内部を通って、薬液容器11の空間11bに到達する。これにより、薬液11aの吸引時に、薬液容器11内部の圧力平衡状態を維持して、薬液11aを輸送できる。すなわち、薬液容器11の薬液11aを吸引すると、薬液容器11内部の気相に相当する空間11bの体積が拡がり、薬液容器11内部の圧力が低下する。この時、調整用針16cを介して薬液容器11内部へ、薬液容器11内部の圧力変化を打ち消す形で外部の気体が流入し、薬液容器11内部の圧力が一定に維持される。
この時、調整用針16cの外部の気体を導入する経路16kの一部に細菌阻止用フィルタ17、例えばPTFE膜のメンブレインフィルタやグラスファイバにテフロン(登録商標)を含浸し疎水化処理をしたフィルタなどを配置した構成のフィルタを用いている。
この構成により、空気中に含まれる粉塵、埃、細菌、微生物などで薬液容器11内部の薬液11aが汚染されることなく、安全に薬液11aを輸送できる。
また、上述の複合針16を使用することにより、外気による汚染を防止するための構造を保ったままで、薬液容器11の内部の薬液11aを順次取り出しても、薬液取り出し初期と同じ効率で薬液11aを輸送できる。なお、保持ポート16fの弾性チューブ13と複合針16の吸入用針16bとの間にも細菌阻止用フィルタ17を配置してもよい。ここに配置することで、薬液11aの汚染をより一層防ぐことができる。
図1に示す薬液輸送装置10は、外気による汚染を防止するための構造を保つことに加えて、薬液11aを所定の量だけ精度よく輸送することができる。すなわち、薬液輸送装置10において、弾性チューブ13の計量チャンバ12に対する接続端13a近傍には、薬液容器11から計量チャンバ12へ薬液11aを輸送する輸送路を開閉する第2の電磁弁12dを配置している。そして、薬液輸送装置10は、計量チャンバ12に輸送された薬液11aを計量し記憶するカメラ18と、弾性収縮体15の気体の体積を検出する体積検出部19と、送液ポンプ14、第1の電磁弁12b、第2の電磁弁12d、カメラ18及び体積検出部19を制御する制御部20と、をさらに備えている。制御部20は、カメラ18からの映像信号又は体積検出部19からの検出信号に応じて、送液ポンプ14の回転、第1の電磁弁12b及び第2の電磁弁12dのオン又はオフの動作を制御する構成としている。
カメラ18により計量チャンバ12内に蓄積された薬液11aの液面の位置を撮像して、計量チャンバ12の外周面の目盛り12hと共に画像データとして記録する。その画像データを制御部20に配線20aを介して電気的に送った後、制御部20にて画像処理を行い、計量チャンバ12に輸送された薬液11aの液量を計量する。あるいは、例えば、バルーンなどの弾性収縮体15が水の入った容器15dにその全体が浸かっていて、薬液11aが計量チャンバ12に輸送されることにより、弾性収縮体15が膨張し、膨張した体積分の水が溢れ出して別の容器(図示せず)に取り出される。この溢れ出した水の体積を体積検出部19で検出し、この検出データにより輸送された薬液11aの液量を算出することもできる。上述のように薬液11aを計量した後、計量チャンバ12内の薬液11aを外部の輸液バッグなどに吐出する。その後、再び、薬液輸送装置10で薬液11aの輸送を行う際は、その開始前に、上述の別の容器を弾性収縮体15の鉛直上側に配置して、中の水を容器15dに戻すことで、水を繰り返し使用することもできる。
この構成により、輸送された薬液11aの液量を精度よく測定できる。これにより、薬液11aの送液管理の精度が上がるのでさらに正確な量の薬液11aの輸送を実現できる。
また、薬液輸送装置10は、入力部21と、記憶部22と、出力部23と、をさらに備える。制御部20は、入力部21、記憶部22、出力部23及び処方箋情報又は患者に投与する薬液や医療の情報を蓄積する医療情報データベース24と接続された構成としている。ここで、入力部21は、処方箋情報などから得られた、薬液容器11からの薬液11aの輸送量を少なくとも入力するためのものである。記憶部22は、弾性収縮体15の体積変化量から計量チャンバ12内に輸送された薬液11aの輸送量を計算する変換テーブルを、少なくとも記憶する。出力部23は、制御部20で制御される情報の少なくとも一部を表示し、薬液輸送装置10を操作する看護師や薬剤師などが、監視したい医療情報や確認したい医療情報などをディスプレイ画面などに表示する。そして、プリンタ機能などにより、必要に応じて必要な医療情報を紙面に印刷して出力する。
この構成により、人手による作業ミスを低減でき、間違いなくかつ精度良く所定の量の薬液11aを輸送できる。さらに、輸送された薬液の計量監査の記録を自動的に行うので、より効率的な薬液輸送を行うことができる。
薬液輸送装置10は、薬液11aを輸送する速度や外部に取り出す時の吐出力を変化させて制御することもできる。すなわち、弾性収縮体15から計量チャンバ12への気体輸送路の一部に圧力検出部25と、圧力検出部25から大気への接続管15bの途中に第3の電磁弁15cと、をさらに備えている。圧力検出部25及び第3の電磁弁15cを制御部20に接続し、圧力検出部25の検出信号により、弾性収縮体15内の圧力を検出し、第3の電磁弁15cのオン又はオフにより、弾性収縮体15内の圧力の増減を制御する構成としている。
薬液11aを輸送する前の初期の弾性収縮体15及びそれに接続される計量チャンバ12の圧力を低く、例えば大気圧より少し低めに設定すると、薬液容器11の内部の空間11bの圧力は、ほぼ大気圧に保持されるので、薬液11aの輸送を開始した時の輸送速度を速くすることができる。反対に、大気圧よりも少し高めに設定すると、薬液11aの輸送を開始した時の輸送速度を遅くすることができる。
この構成により、弾性収縮体15に接続される計量チャンバ12内部の圧力を調整できるので、薬液11aを輸送する速度や輸送量及び計量した薬液11aを外部に取り出す時の吐出力をさらに精度よく制御することができる。
ところで、図1に示す本実施の形態1の薬液輸送装置10において、弾性収縮体15の初期圧力を、弾性収縮体15が膨張を開始するぎりぎりにした場合には、初期圧力に追加された圧力で薬液11aが送り出される。すなわち、追加分の気体を吐出力として利用することができる。なお、この場合には、弾性収縮体15は、図1に示す状態よりも収縮して小さくなっている。
次に本実施の形態1の薬液輸送装置10を用いた薬液輸送方法について説明する。図3は、本発明の実施の形態1にかかる薬液輸送方法のフローチャートを示す。図4から図7は、本発明の実施の形態1にかかる薬液輸送方法のフローチャートの各ステップにおける薬液輸送装置10の動作状態を示す。
図3に示すように、本実施の形態1の薬液輸送方法は、上述の薬液輸送装置10を用いた薬液輸送方法であって、接続ステップS1と、処方箋ID入力ステップS2と、処方箋情報読み込みステップS3と、気体注入ステップS4と、薬液輸送ステップS5と、薬液量検出ステップS6と、監査情報記録ステップS7と、吐出ステップS8と、取外しステップS9と、を備えた方法である。
ここで、接続ステップS1は、輸液バッグ26を計量チャンバ12の注射針12aに接続するステップである。処方箋ID入力ステップS2は、医療情報データベース24から処方箋情報を入手するために、入力部21において処方箋IDを入力するステップである。処方箋情報読み込みステップS3は、処方箋IDに対応した処方箋情報を医療情報データベース24から読み込むステップである。気体注入ステップS4は、薬液容器11と計量チャンバ12とを接続する弾性チューブ13内の気体を、送液ポンプ14の回転体14aの動作により、計量チャンバ12に隣接して配置された弾性収縮体15に輸送するステップである。薬液輸送ステップS5は、処方箋情報に基づいて送液ポンプ14の回転体14aの動作により、薬液容器11の薬液11aを所定の量だけ計量チャンバ12に輸送すると共に、計量チャンバ12内の気体を弾性収縮体15に送り込むステップである。薬液量検出ステップS6は、計量チャンバ12内に輸送された薬液11aの量を画像として記録するカメラ18、及び、弾性収縮体15の気体の体積を検出する体積検出部19又は弾性収縮体15の気体の圧力を検出する圧力検出部25のうちの少なくともいずれかにより、計量チャンバ12内の薬液量を検出するステップである。監査情報記録ステップS7は、計量チャンバ12と輸送された薬液11aとを計量監査画像として記憶部22に記録するステップである。吐出ステップS8は、第1の電磁弁12bを開放し、第1の電磁弁12b及び注射針12aを介して計量チャンバ12内の薬液11aを輸液バッグ26に吐出するステップである。取外しステップS9は、輸液バッグ26を計量チャンバ12の注射針12aから取り外すステップである。
この方法により、外気による汚染を防止する構造を保ったままで、薬液容器11から所定の量の薬液11aを自動的に取り出して、輸液バッグ26などに清浄な状態で注入できる。また、計量チャンバ12への薬液11aの輸送に伴い膨らんだ弾性収縮体15の収縮力を、計量チャンバ12内の薬液11aの吐出力としても利用できるので、薬液吐出の為の余分なアクチュエータを設けることなく、外気による汚染を防止する構造を保ったままで、自動かつ効率よく薬液11aを吐出できる。
次に、薬液輸送方法のフローチャートの各ステップにおける、薬液輸送装置10の動作状態を具体的に説明する。
図4に示すように、薬液輸送装置10の薬液11aを送り出す側において、例えば、バイアル容器などの薬液容器11が、薬液容器11の口である吸引ポート(図示せず)に複合針16を取り付けて、倒立状態で弾性チューブ13と接続されている。一方、送り出された薬液11aを受け入れる側には、弾性チューブ13が、第2の電磁弁12d、挿入管12c及び接続基台27を介して計量チャンバ12に接続されている。また、例えば、ゴム製のバルーンなどが弾性収縮体15として、接続基台27及び接続管15bを介して計量チャンバ12に接続されている。この弾性収縮体には、適量の清浄な気体、例えば、空気が予め内部に入れられている。計量チャンバ12の下部に取り付けられた第1の電磁弁12bは閉じられており、薬液容器11から計量チャンバ12まで、薬液11aが輸送される経路は、外気による汚染を防止する構造を保ったままの状態となっている。なお、薬液容器11内部の空間11bは、複合針16の調整用針16cにより外気につながっているが、図2で説明したように、調整用針16cの経路の一部に細菌阻止用フィルタ17が配置されており、外気による薬液11aの汚染を防止するための構造が保たれている。また、計量チャンバ12の上部は、例えばゴム状の材料で形成された接続基台27により密閉されている。
まず、最初に、図4に示すように、計量チャンバ12の注射針12aに、計量チャンバ12に輸送された薬液11aを最終的に注入する輸液バッグ26を接続する(ステップS1)。そして、例えば、パソコンのキーボードなどの入力部21により、処方箋IDを入力して、医療情報データベース24などから処方箋IDに対応した処方箋情報を入手する(ステップS2)。入手した処方箋情報は、医療情報データベース24から制御部20に読み込まれる(ステップS3)。このようにして、処方箋情報から患者情報、薬液情報が読み込まれた後に、薬液輸送装置10の送液ポンプ14が動作を始める。
図5に示すように、薬液情報に基づいて送液ポンプ14の回転体14aが矢印14bの方向に動き始め、回転体14aが隣接する弾性チューブ13を押圧して内部の気体を計量チャンバ12内に輸送する。そうすると、計量チャンバ12は、隣接して配置された弾性収縮体15と接続管15bにより繋がっているので、弾性チューブ13内の気体の一部が弾性収縮体15に輸送される(ステップS4)。その結果、弾性収縮体15は、最初に取り付けられた状態よりも膨張する。さらに、回転体14aが回転し続けると、弾性チューブ13内の気体が全て計量チャンバ12及び弾性収縮体15に輸送されて、薬液容器11の薬液11aが、吸入用針16bから弾性チューブ13内に吸入され始める。
送液ポンプ14の回転体14aが継続して動作することにより、薬液容器11の薬液11aを処方箋情報に基づいた所定の量だけ計量チャンバ12に輸送する(ステップS5)。この時の計量チャンバ12内の薬液量は、カメラ18、体積検出部19及び圧力検出部25のうちの少なくともいずれかにより検出されている(ステップS6)。ここで、カメラ18は、図6に示すように、計量チャンバ12内に輸送された薬液11aの量を画像として記録する。この記録された画像を制御部20で解析することにより、輸送された薬液の量を計量する。
一方、弾性収縮体15の近傍に配置された体積検出部19は、弾性収縮体15の内部の気体の体積変化を検出することにより、予め記憶部22に記憶した換算テーブルを用いて、輸送された薬液11aの量を算出する。また、圧力検出部25は、弾性収縮体15の近傍に配置されて、その内部の気体の圧力変化を検出することにより、予め記憶部22に記憶した換算テーブルを用いて輸送された薬液11aの量を算出する。
以上のように、輸送された薬液11aの量を計量又は算出することにより、薬液11aの量が、処方箋情報に基づいた所定の量に到達すると、送液ポンプ14の回転体14aの動作が停止し、薬液11aの輸送が停止する。この時に、記憶部22は、計量チャンバ12と輸送された薬液11aとを、計量監査画像として記録する(ステップS7)。
次に、弾性収縮体15が、図4に示す初期の状態より膨張、すなわち収縮力が増加することによって、弾性収縮体15の内部の気体の圧力が大気圧より高くなることを利用し、図7に示すように、計量チャンバ12内に輸送された薬液11aを第1の電磁弁12b及び注射針12aを介して、輸液バッグ26に吐出する。なおこの時、第2の電磁弁12d及び第3の電磁弁15cは閉じた状態にあり、第1の電磁弁12bは開放した状態にある(ステップS8)。この時に、薬液11aは、輸液バッグ26内の生理食塩水等と混合される。そして最後に、輸液バッグ26を計量チャンバ12の注射針12aから取り外す(ステップS9)。
この方法により、外気による汚染を防止するための構造を保ったままで、薬液容器11などを薬液輸送装置10にセットしたした後は人手に頼ることなく、薬液容器11から所定の量の薬液11aを自動的に取り出して、輸液バッグ26などに清浄な状態で注入できる。また、計量チャンバ12への薬液11aの輸送に伴い膨らんだ弾性収縮体15の収縮力を、計量チャンバ12内の薬液11aの吐出力としても利用できるので、薬液吐出の為の余分なアクチュエータを設けることなく、外気による汚染を防止する構造も保ったままで、自動かつ効率よく薬液11aを吐出できる。
なお、1個の薬液容器11から複数の輸液バッグ26に薬液11aを分けて注入する場合には、図3に示す薬液輸送方法のフローチャートを繰り返し行えばよい。ただし、1個の薬液容器11から複数の輸液バッグ26に薬液11aを連続して分注する時には、弾性チューブ13の内部には、気体ではなく薬液11aが満たされている状態となる。したがって、薬液輸送方法のフローチャートから気体注入ステップS4が不要なステップとなり省かれる。
図8は、1個の薬液容器11から複数の輸液バッグ26に薬液11aを繰り返し分注する時の、薬液輸送方法のフローチャートを示す。接続ステップS1から輸液バッグ26を取外す取外しステップS9までを繰り返し行うことにより、薬液11aが分注される。
なお、図8に示すフローチャートに従って、同じ分量の薬液11aを生理食塩水などの同じ液体の入った輸液バッグ26に繰り返し分注する場合に、処方箋ID入力ステップS2および処方箋情報読み込みステップS3が、毎回実行される。この理由は、同じ液体の入った輸液バッグ26に同じ薬液11aを分注する時でも、患者毎に薬液11aの投与量が異なる為、これらのステップS2、S3による処方箋IDの入力情報の読み込みは、毎回必要となる。また、病院などでは、どの患者の施用をするために薬液11aの混合作業を行ったかのエビデンスを残すことが、必要となる。さらに、監査情報記録ステップS7により、計量チャンバ12と輸送された薬液11aとを計量監査画像として記憶部22に記憶する。これらの一連のフローチャートに関する内容については、薬剤師が監査することなる。
図9及び図10は、本発明の実施の形態1にかかる薬液輸送方法の他のフローチャートを示す。図9のフローチャートに示す本実施の形態1の他の薬液輸送方法は、図3に示すフローチャートを基本に、外部配管接続ステップS11と、初期気体注入ステップS12と、をさらに備え、気体注入ステップS4の前に、初期気体注入ステップS12を行う方法としている。ここで、外部配管接続ステップS11は、弾性収縮体15から計量チャンバ12への気体輸送路の一部に配置された大気への接続管15bに、外部の気体供給部(図示せず)からの配管を接続するステップである。初期気体注入ステップS12は、接続管15bの途中に配置された第3の電磁弁15cを開放することにより、気体供給部から弾性収縮体15内部へ気体を注入し、弾性収縮体15の内部の気体の圧力を増加させるステップである。なお、初期気体注入ステップS12において、第3の電磁弁15cから気体を注入する場合には、第3の電磁弁15cのすぐ下流で弾性収縮体15の上流に細菌阻止用フィルタ(図示せず)を挿入して、気体を清浄化している。
これらのステップは、弾性収縮体15の内部に気体を注入し、弾性収縮体15の収縮力を高める、すなわち内部の気体の圧力を高めるために行う。これにより、計量チャンバ12に輸送された薬液11aを、吐出ステップS8で効率よく吐出できるようにしている。
すなわち、この方法により、予め弾性収縮体15に気体を注入することにより、弾性収縮体15の収縮力が増大して蓄積される。これにより、計量した薬液11aは、効率よく計量チャンバ12から吐出される。
なお、吐出ステップS8の後の取外しステップS9において、輸液バッグ26を計量チャンバ12の注射針12aから取り外す。さらに、別の患者の施用などのための別の輸液バッグ26に、同様に薬液11aを輸送する時には、図9の接続ステップS1に戻る。そして、接続ステップS1で、輸液バッグ26を計量チャンバ12の注射針12aに接続し、処方箋ID入力ステップS2から取外しステップS9までを繰返す。また、薬液11aの輸送を終了するときには、取外しステップS9により輸液バッグ26を取り外した後に終了する。
同様に、図10のフローチャートに示す本実施の形態1の他の薬液輸送方法は、図3に示すフローチャートを基本に、外部配管接続ステップS11と、初期気体注入ステップS12と、をさらに備え、吐出ステップS8の後に、初期気体注入ステップS12を行う方法としている。吐出ステップS8が終わり、取外しステップS9を行う前に、予め弾性収縮体15の内部に気体を注入し、弾性収縮体15の収縮力を高める、すなわち内部の気体の圧力を高めるために行う。これにより、1つの薬液容器11から複数の輸液バッグ26に連続して所定の量の薬液11aを輸送し、効率よく混合することができる。
この方法により、外気による汚染を防止するため構造を保ったままで、繰り返し所定の量の薬液11aを薬液容器11から計量チャンバ12を介して外部に取り出すことができる。また、予め弾性収縮体15に気体を注入することにより、弾性収縮体15の収縮力が増大して蓄積されるので、計量した薬液11aは、効率よく計量チャンバ12から吐出される。
以上のように、本実施の形態1の薬液輸送装置は、内部に充填された薬液が吸引されて取り出される薬液容器と、上記薬液容器内の上記薬液を受け入れる計量チャンバと、上記薬液容器と上記計量チャンバとを接続する弾性チューブと、上記弾性チューブが周囲に巻き付いた回転体を有し、上記回転体を上記弾性チューブに隣接させて回転させ、上記弾性チューブ内の少なくとも一部の気体又は液体を上記計量チャンバに輸送する送液ポンプと、上記計量チャンバの近傍に配置され、上記計量チャンバと接続された弾性収縮体と、を備え、上記送液ポンプの上記回転体を回転させることにより、上記弾性チューブ内及び上記計量チャンバ内の気体を上記計量チャンバを介して上記弾性収縮体に輸送すると共に、上記弾性チューブを介して、上記薬液容器から上記計量チャンバに上記薬液を輸送する構成からなる。
この構成により、外気による汚染を防止する構造を保ちつつ、薬液容器から所定の量の薬液を自動的に取り出して、輸液バッグなどに清浄な状態で注入できる。また、計量チャンバへの薬液の輸送に伴い膨らんだ弾性収縮体の収縮力を、計量チャンバ内の薬液の吐出力としても利用できるので、薬液吐出の為の余分なアクチュエータを設けることなく、外気に対する汚染を防止する構造も保ったままで、自動かつ効率よく薬液を吐出することができる。
また、計量チャンバは、底部に薬液取出し口を、外周面に輸送された薬液の液量を計量する目盛りを有し、薬液取出し口の下部には薬液を取出す第1の電磁弁と注射針を配置し、弾性収縮体の内部又はシリンジのバレル内部に蓄積された気体の圧力が外部の大気の圧力より高いことを利用して、第1の電磁弁及び注射針を介して計量チャンバの薬液を外部に取り出す構成としてもよい。
この構成により、外気による汚染を防止する構造を保ちつつ、正確な量の薬液の投与を実現できる。
また、薬液容器の吸引ポートを下側に向けて、薬液容器を受け入れる受入ポートを上部に、弾性チューブの一端を保持する保持ポートを下部に有する針基部と、受入ポートから保持ポートまで針基部を貫通して配置された吸入用針と、針基部の側面から受入ポートまで針基部を貫通し受入ポートの上方まで吸入用針と並行して配置された調整用針と、を有する複合針を、薬剤容器の下部にさらに備え、調整用針の先端を薬液容器の内部の薬液面より上部に配置し、調整用針の先端を介して薬液容器の内部に外部の気体を導入することにより、薬液の吸引時に薬液容器の内部の圧力平衡状態を維持して、薬液を輸送する構成としてもよい。
この構成により、薬液容器の内部の薬液を順次取り出しても、調整用針の先端を介した薬液容器の内部への外気導入により、薬液容器の内部の圧力が一定に維持されるので、取り出し初期と同じ高い効率で薬液を輸送できる。
また、調整用針の外部の気体を導入する経路の一部に細菌阻止用フィルタを配置した構成としてもよい。
この構成により、調整用針の先端を介した薬液容器の内部への外気導入時に、外部の気体中に含まれる粉塵、埃、細菌、微生物などで薬液容器の内部の薬液が汚染されることを防止できる。すなわち、外気による汚染を防止する構造を保ったままで、薬液を効率良く輸送できる。
また、弾性チューブの計量チャンバに対する接続端近傍には、薬液容器から計量チャンバへ薬液を輸送する輸送路を開閉する第2の電磁弁を配置し、計量チャンバに輸送された薬液を計量し記憶するカメラ及び/又は弾性収縮体又はシリンジ内の気体の体積を検出する体積検出部と、送液ポンプ、第1の電磁弁、第2の電磁弁、カメラ及び/又は体積検出部を制御する制御部と、をさらに備え、制御部は、カメラからの映像信号及び/又は体積検出部からの検出信号に応じて、送液ポンプの回転、第1の電磁弁及び第2の電磁弁のオン又はオフの動作を制御する構成としてもよい。
この構成により、人手による作業ミスを低減でき、薬液の送液量管理の精度が上がるので、さらに正確な量の薬液の輸送を実現できる。
また、薬液容器からの薬液の輸送量を少なくとも入力する入力部と、弾性収縮体の体積変化量から計量チャンバ内に輸送された薬液の輸送量を計算する変換テーブルを少なくとも記憶する記憶部と、制御部で制御される情報の少なくとも一部を表示する出力部と、をさらに備え、制御部は、入力部、記憶部、出力部及び処方箋情報又は患者に投与する薬液情報を蓄積する医療情報データベースと接続された構成としてもよい。
この構成により、人手による作業ミスを低減でき、間違いなくかつ精度良く所定の量の薬液を輸送できる。さらに、輸送された薬液の計量監査の記録を自動的に行うので、より効率的な薬液輸送を行うことができる。
また、弾性収縮体又はシリンジから計量チャンバへの気体輸送路の一部に圧力検出部と、圧力検出部から大気への接続管の途中に第3の電磁弁と、をさらに備え、圧力検出部及び第3の電磁弁を制御部に接続し、圧力検出部の検出信号により、弾性収縮体又はシリンジ内の圧力を検出し、第3の電磁弁のオン又はオフにより、弾性収縮体又はシリンジ内の圧力の増減を制御する構成としてもよい。
この構成により、弾性収縮体又はシリンジに接続される計量チャンバ内部の圧力を調整できるので、薬液を輸送する速度や輸送量及び計量した薬液を外部に取り出す時の吐出力をさらに精度よく制御することができる。
また、本発明の薬液輸送方法は、上記記載の薬液輸送装置を用いた薬液輸送方法であって、輸液バッグを計量チャンバの注射針に接続する接続ステップと、医療情報データベースから処方箋情報を入手するために、入力部において処方箋IDを入力する処方箋ID入力ステップと、処方箋IDに対応した処方箋情報を医療情報データベースから読み込む処方箋情報読み込みステップと、薬液容器と計量チャンバとを接続する弾性チューブ内の気体を、送液ポンプの回転体の動作により、計量チャンバに隣接して配置された弾性収縮体に輸送する気体注入ステップと、処方箋情報に基づいて送液ポンプの回転体の動作により、薬液容器の薬液を所定の量だけ計量チャンバに輸送するとともに、計量チャンバ内の気体を弾性収縮体に送り込む薬液輸送ステップと、計量チャンバ内に輸送された薬液の量を画像として記録するカメラ、及び、弾性収縮体の内部の気体の体積を検出する体積検出部又は弾性収縮体の気体の圧力を検出する圧力検出部のうちの少なくともいずれかにより計量チャンバ内の薬液量を検出する薬液量検出ステップと、計量チャンバと輸送された薬液とを計量監査画像として記憶部に記録する監査情報記録ステップと、第1の電磁弁を開放し、第1の電磁弁及び注射針を介して計量チャンバ内の薬液を輸液バッグに吐出する吐出ステップと、輸液バッグを計量チャンバの注射針から取り外す取外しステップと、を備えた方法からなる。
この方法により、外気による汚染を防止する構造を保ったままで、薬液容器から所定の量の薬液を自動的に取り出して、輸液バッグなどに清浄な状態で注入できる。また、計量チャンバへの薬液の輸送に伴い膨らんだ弾性収縮体の収縮力を、計量チャンバ内の薬液の吐出力としても利用できるので、薬液吐出の為の余分なアクチュエータを設けることなく、外気による汚染を防止する構造も保ったままで、自動かつ効率よく薬液を吐出できる。
また、本発明の薬液輸送方法は、上記記載の薬液輸送装置を用いた薬液輸送方法であって、輸液バッグを計量チャンバの注射針に接続する接続ステップと、医療情報データベースから処方箋情報を入手するために、入力部において処方箋IDを入力する処方箋ID入力ステップと、処方箋IDに対応した処方箋情報を前記医療情報データベースから読み込む処方箋情報読み込みステップと、薬液容器と計量チャンバとを接続する弾性チューブ内の気体を、送液ポンプの回転体の動作により、計量チャンバに隣接して配置されたシリンジに輸送する気体注入ステップと、処方箋情報に基づいて送液ポンプの回転体の動作により、薬液容器の薬液を所定の量だけ計量チャンバに輸送するとともに、計量チャンバ内の気体をシリンジに送り込む薬液輸送ステップと、計量チャンバ内に輸送された薬液の量を画像として記録するカメラ、及び、シリンジの内部の気体の体積を検出する体積検出部又は弾性収縮体の気体の圧力を検出する圧力検出部のうちの少なくともいずれかにより計量チャンバ内の薬液量を検出する薬液量検出ステップと、計量チャンバと輸送された薬液とを計量監査画像として記憶部に記録する監査情報記録ステップと、第1の電磁弁を開放し、第1の電磁弁及び注射針を介して計量チャンバ内の薬液を前記輸液バッグに吐出する吐出ステップと、輸液バッグを計量チャンバの注射針から取り外す取外しステップと、を備えた方法からなる。
この方法により、外気による汚染を防止する構造を保ったままで、薬液容器から所定の量の薬液を自動的に取り出して、輸液バッグなどに清浄な状態で注入できる。また、計量チャンバへの薬液の輸送に伴い増大するシリンジのプランジャの鍔部の付勢力を、計量チャンバ内の薬液の吐出力としても利用できるので、薬液吐出の為の余分なアクチュエータを設けることなく、外気による汚染を防止する構造も保ったままで、自動かつ効率よく薬液を吐出できる。
また、弾性収縮体又はシリンジから計量チャンバへの気体輸送路の一部に配置された大気への接続管に外部の気体供給部からの配管を接続する外部配管接続ステップと、接続管の途中に配置された第3の電磁弁を開放することにより気体供給部から弾性収縮体又はシリンジに気体を注入し、内部の気体の圧力を増加させる初期気体注入ステップと、をさらに備え、気体注入ステップの前に、初期気体注入ステップを行う方法としてもよい。
この方法により、予め弾性収縮体又はシリンジに気体を注入することにより、弾性収縮体の収縮力又はシリンジのプランジャの鍔部に付勢された弾性体の付勢力が増大して蓄積される。これにより、計量した薬液は、効率よく計量チャンバから吐出される。
また、弾性収縮体又はシリンジから計量チャンバへの気体輸送路の一部に配置された大気への接続管に外部の気体供給部からの配管を接続する外部配管接続ステップと、接続管の途中に配置された第3の電磁弁を開放することにより気体供給部から弾性収縮体又はシリンジに気体を注入し、内部の気体の圧力を増加させる初期気体注入ステップと、をさらに備え、吐出ステップの後に、初期気体注入ステップを行う方法としてもよい。
この方法により、外気による汚染を防止する構造を保ったままで、繰り返し所定の量の薬液を薬液容器から計量チャンバを介して外部に取り出すことができる。また、予め弾性収縮体又はシリンジに気体を注入することにより、弾性収縮体の収縮力又はシリンジのプランジャの鍔部に付勢された弾性体の付勢力が増大して蓄積されるので、計量した薬液を効率よく計量チャンバから吐出することができる。
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2にかかる薬液輸送装置30の概略構成を示す。図11に示す薬液容器11の下部に配置された複合針16の詳細な構造は、実施の形態1の図2に示しているものと同様であるので説明を省略する。
図11に示すように、本実施の形態2の薬液輸送装置30は、薬液容器11と、計量チャンバ12と、弾性チューブ13と、送液ポンプ14と、シリンジ31と、を備えている。ここで、薬液容器11は、内部に薬液11aが充填されており、この充填された薬液11aから所定の量の薬液11aを取り出す。薬液容器11から取り出した薬液11aは、計量チャンバ12に受け入れられる。薬液容器11と計量チャンバ12とは、弾性チューブ13により接続されている。また、送液ポンプ14は、弾性チューブ13が周囲に巻き付いた回転体14aを有し、回転体14aを弾性チューブ13に隣接させて回転させている。そして、送液ポンプ14は、弾性チューブ13内の少なくとも一部の気体又は液体を計量チャンバ12に輸送している。シリンジ31は、計量チャンバ12の近傍に配置され、計量チャンバ12と接続された、プランジャ32の鍔部33が弾性体34により付勢されている。ここで、弾性体34には、図11に示すようにバネなどが用いられ、シリンジ31及び付勢の為の弾性体34は、シリンジモジュール35の固定部35aに、それぞれが固定されている。
ここで、本実施の形態2の薬液輸送装置30においては、気体は、弾性チューブ13内に除菌フィルタ等を介して送り込まれた空気とし、液体は、薬液容器11に充填された薬液11aとしている。
そして、薬液輸送装置30は、送液ポンプ14の回転体14aを回転させることにより、弾性チューブ13内の気体を、計量チャンバ12を介してシリンジ31に輸送すると共に、弾性チューブ13を介して、薬液容器11から計量チャンバ12に薬液11aを輸送する構成としている。
この構成により、外気による汚染を防止するための構造を保ったままで、薬液容器11から所定の量の薬液11aを自動的に取り出して、計量チャンバ12の下部に取り付けた注射針12aを介して輸液バッグ(図示せず)などに清浄な状態で注入できる。また、計量チャンバ12への薬液11aの輸送に伴い膨らんだ弾性体34の収縮力を、計量チャンバ12内の薬液11aの吐出力としても利用できる。これにより、薬液11aを吐出する為の余分なアクチュエータを設けることなく、外気による汚染を防止する構造も保ったままで、自動かつ効率よく薬液11aを吐出できる。
次に本実施の形態2の薬液輸送装置30の各部分の構成について具体的に説明する。本実施の形態2の薬液輸送装置30は、実施の形態1の弾性収縮体15が、シリンジモジュール35に置き換えられている以外は、同じ部分から構成されている。したがって、同じ部分の説明は省略し、異なっている部分であるシリンジモジュール35及びその周辺の機能や動作について説明する。
図11に示す薬液輸送装置30において、実施の形態1の薬液輸送装置10と同様に、弾性チューブ13内の気体は、送液ポンプ14の回転体14aの回転により生じる吸引力で、計量チャンバ12内に吸引された後に、その気体の一部がシリンジ31の内部に入っていく。さらに回転体14aが、矢印14bの方向に回転すると、薬液容器11の薬液11aの一部は、回転体14aの回転により生じる吸引力で、薬液容器11の下部に取り付けられた複合針16を介して弾性チューブ13内に引き込まれる。回転体14aが矢印14bの方向に回転し続けると弾性チューブ13の内部の全体に薬液11aが満たされて、その一部が計量チャンバ12に充填されていく。薬液11aが計量チャンバ12に充填されるにつれて、計量チャンバ12内の気体が、シリンジ31の内部に流れ込む。これにより、シリンジ31は、バレル31a内に気体を蓄積し、矢印31bに示すようにプランジャ32を押し、鍔部33を付勢する弾性体34の付勢力を増加させる。これと同時に、計量チャンバ12及びシリンジ31のバレル31a内部の気体の圧力は、大気圧から徐々に増加していく。
このような状態の計量チャンバ12に輸送された薬液11aを、計量チャンバ12の外部に取り出す時には、注射針12aの先端を輸液バッグ(図示せず)などに挿入し、計量チャンバ12と注射針12aとの間の薬液11aの取り出し経路を遮断している第1の電磁弁12bを開放する。この薬液11aの吐出の動作については、実施の形態1と同様である。
ここで、計量チャンバ12は、先端12eに薬液取出し口12fを、外周面12gに輸送された薬液11aの液量を計量する目盛り12hを有し、薬液取出し口12fの下部には薬液11aを取出す第1の電磁弁12bと、注射針12aを配置している。そして、シリンジ31のバレル31a内部に蓄積された気体の圧力が、外部の大気の圧力より高いことを利用して、第1の電磁弁12b及び注射針12aを介して計量チャンバ12の薬液11aを、外部の輸液バッグ(図示せず)などに取り出す構成としている。ここで、薬液11aの液量は、例えば、計量チャンバ12の目盛り12hにより精度よく計量される。
この構成により、外気による汚染を防止するための構造を保ったままで、正確な量の薬液11aの投与を実現できる。
図11に示す薬液輸送装置30は、外気による汚染を防止するための構造を保つことに加えて、薬液11aを所定の量だけ精度よく輸送することができる。すなわち、薬液輸送装置10において、弾性チューブ13の計量チャンバ12に対する接続端13a近傍には、薬液容器11から計量チャンバ12へ薬液11aを輸送する輸送路を開閉する第2の電磁弁12dを配置している。そして、薬液輸送装置10は、計量チャンバ12に輸送された薬液11aを計量し記憶するカメラ18と、シリンジ31内の気体の体積を検出する体積検出部19と、送液ポンプ14、第1の電磁弁12b、第2の電磁弁12d、カメラ18及び体積検出部19を制御する制御部20と、をさらに備えている。制御部20は、カメラ18からの映像信号又は体積検出部19からの検出信号に応じて、送液ポンプ14の回転、第1の電磁弁12b及び第2の電磁弁12dのオン又はオフの動作を制御する構成としている。ここで、体積検出部19は、例えば、シリンジ31の外周部の目盛り31cとガスケット31dとを画像データとして同時に記録できるカメラなどが用いられる。
この構成により、輸送された薬液11aの液量を精度よく測定でき、薬液11aの送液管理の精度が上がるので、さらに正確な量の薬液11aの輸送を実現できる。
さらに、薬液輸送装置30は、薬液11aを輸送する速度や外部に取り出す時の吐出圧を変化させて制御することもできる。すなわち、シリンジ31から計量チャンバ12への気体輸送路の一部に圧力検出部25と、圧力検出部25から大気への接続管15bの途中に第3の電磁弁15cと、をさらに備えている。圧力検出部25及び第3の電磁弁15cを制御部20に接続し、圧力検出部25の検出信号により、シリンジ31のバレル31a及び計量チャンバ12内の圧力を検出し、第3の電磁弁15cのオン又はオフにより、シリンジ31のバレル31a及び計量チャンバ内の圧力の増減を制御する構成としている。
薬液11aを輸送する前の初期のシリンジ31のバレル31a及びそれに接続される計量チャンバ12内部の圧力を、例えば大気圧より少し低めに設定すると、薬液容器11の内部の空間11bの圧力は、ほぼ大気圧に保持されるので、薬液11aの輸送を開始した時の輸送速度を速くすることができる。反対に、大気圧よりも少し高めに設定すると、薬液11aの輸送を開始した時の輸送速度を遅くすることができる。
この構成により、シリンジ31に接続される計量チャンバ12内部の圧力を調整できるので、薬液11aを輸送する速度や輸送量及び計量した薬液11aを外部に取り出す時の吐出力をさらに精度よく制御することができる。
次に本実施の形態2の薬液輸送装置30を用いた薬液輸送方法について説明する。図12は、本発明の実施の形態2にかかる薬液輸送方法のフローチャートを示す。図13から図15は、本発明の実施の形態2にかかる薬液輸送方法のフローチャートの各ステップにおける薬液輸送装置30の動作状態を示す。なお、図12は、実施の形態1の薬液輸送方法のフローチャートを示す図3と同じである。
図12に示すように、本実施の形態2の薬液輸送方法は、上述の薬液輸送装置30を用いた薬液輸送方法であって、接続ステップS1と、処方箋ID入力ステップS2と、処方箋情報読み込みステップS3と、気体注入ステップS4と、薬液輸送ステップS5と、薬液量検出ステップS6と、監査情報記録ステップS7と、吐出ステップS8と、取外しステップS9と、を備えた方法である。本実施の形態2の薬液輸送方法は、気体注入ステップS4及び薬液量検出ステップS6以外は、実施の形態1の薬液輸送方法と同じステップであるので、同じステップは説明を省略する。
異なるステップである気体注入ステップS4は、薬液容器11と計量チャンバ12とを接続する弾性チューブ13内の気体を、送液ポンプ14の回転体14aの動作により、計量チャンバ12に隣接して配置されたシリンジ31に輸送するステップである。薬液量検出ステップS6は、計量チャンバ12内に輸送された薬液11aの量を画像として記録するカメラ18、及び、シリンジ31のバレル31a内部の気体の体積を検出する体積検出部19又はバレル31a内部の気体の圧力を検出する圧力検出部25のうちの少なくともいずれかにより計量チャンバ12内の薬液量を検出するステップである。
この方法により、外気による汚染を防止するための構造を保ったままで、薬液容器11から所定の量の薬液11aを自動的に取り出して、輸液バッグ26などに清浄な状態で注入できる。また、計量チャンバ12への薬液11aの輸送に伴い増加する、シリンジ31のプランジャ32の鍔部33に対する弾性体34の付勢力を、計量した薬液11aの吐出力としても利用できるので、薬液吐出の為の余分なアクチュエータを設けることなく、外気により汚染を防止する構造を保ったままで、自動かつ効率よく薬液11aを吐出できる。
次に、薬液輸送方法のフローチャートの各ステップにおける、薬液輸送装置30の動作状態を、特にシリンジモジュール35とその周辺について具体的に説明する。
図13に示すように、薬液輸送装置10の薬液11aを送り出す側において、例えば、バイアル容器などの薬液容器11が、吸引ポート(図示せず)に複合針16を取り付けて、倒立状態で弾性チューブ13と接続されている。一方、送り出された薬液11aを受け入れる側には、弾性チューブ13が、第2の電磁弁12d、挿入管12c及び接続基台27を介して計量チャンバ12に接続されている。また、シリンジモジュール35が、接続基台27及び接続管15bを介して計量チャンバ12に接続されている。このシリンジモジュール35は、計量チャンバ12内部が汚染された外気と接触することを防止する目的に加え、弾性チューブ13及び計量チャンバ12などの内部の気体を流入させて弾性体34の付勢力を蓄積し、薬液11aの吐出の時には、この付勢力による内部気体の圧力を利用して、薬液11aを吐出するために設けられている。このシリンジ31は、適量の清浄な気体、例えば、空気が予め内部に入れられている。この空気の量は、薬液11aを輸送するときに計量チャンバ12などの空気が、シリンジ31内に流入できる容量を残して少量入れられていればよい。しかしながら、この空気により弾性体34に、例えばスプリング圧などの付勢力が、架からねばならない。また、弾性体34に初期付勢力がかかっていれば、空気の量がゼロでも構わない。
図13は気体注入ステップS4が始まり、回転体14aが回転を始めて、弾性チューブ13内の気体がシリンジ31のバレル31a内部に流入することによりガスケット31dを押し、プランジャ32の鍔部33により弾性体34が押されて付勢力が増大していることを示している。この時に、バレル31a内部の気体の圧力も初期の圧力に比べて増大している。
図14は、薬液輸送ステップS5により、薬液容器11の薬液11aが、計量チャンバ12内に輸送され、同時にシリンジ31のバレル31a内部に計量チャンバ12内部の気体が流入し、弾性体34の付勢力が増大していることを示している。
図15は、吐出ステップS8において、シリンジモジュール35の弾性体34の付勢力の増大により、大気圧以上となったバレル31a内部の気体の圧力を利用して、計量チャンバ12内の薬液11aを輸液バッグ26に注入している状態を示す。この時に、薬液11aは、輸液バッグ26内の生理食塩水等と混合される。
この方法により、外気による汚染を防止するための構造を保ったままで、薬液容器11などを薬液輸送装置10にセットした後は人手に頼ることなく、薬液容器11から所定の量の薬液11aを自動的に取り出して、輸液バッグ26などに清浄な状態で注入できる。また、計量チャンバ12への薬液11aの輸送に伴い増加したシリンジ31のプランジャ32の鍔部33を付勢する弾性体34の付勢力を、計量した薬液11aの吐出力としても利用できるので、薬液吐出の為の余分なアクチュエータを設けることなく、外気による汚染を防止する構造も保ったままで、自動かつ効率よく薬液11aを吐出できる。
なお、1個の薬液容器11から複数の輸液バッグ26に薬液11aを分けて注入する場合には、図11に示す薬液輸送方法のフローチャートを繰り返し行えばよい。
また、本実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、図9及び図10に示す薬液輸送方法の他のフローチャートにより動作させることができる。
すなわち、図9のフローチャートは、図12に示すフローチャートを基本に、外部配管接続ステップS11と、初期気体注入ステップS12と、をさらに備え、気体注入ステップS4の前に、初期気体注入ステップS12を行う方法としている。ここで、外部配管接続ステップS11は、シリンジ31から計量チャンバ12への気体輸送路の一部に配置された大気への接続管15bに、外部の気体供給部(図示せず)からの配管を接続するステップである。初期気体注入ステップS12は、接続管15bの途中に配置された第3の電磁弁15cを開放することにより、気体供給部から弾性収縮体15内部へ気体を注入し、シリンジ31のバレル31a内部の気体の圧力を増加させるステップである。これらのステップは、シリンジ31のバレル31a内部に気体を注入し、シリンジ31のプランジャ32の鍔部33にかかる、弾性体34の付勢力を高める、すなわちバレル31a内部の気体の圧力を高めるために行う。これにより、計量チャンバ12に輸送された薬液11aを、吐出ステップS8で効率よく吐出できるようにしている。
すなわち、この方法により、予めシリンジ31のバレル31a内部に気体を注入することにより、シリンジ31のプランジャ32の鍔部33にかかる、弾性体34の付勢力を高めると同時に、バレル31a内部の気体の圧力も高めている。これにより、計量した薬液11aは、効率よく計量チャンバ12から吐出される。
同様に、図10のフローチャートは、図12に示すフローチャートを基本に、外部配管接続ステップS11と、初期気体注入ステップS12と、をさらに備え、吐出ステップS8の後に、初期気体注入ステップS12を行う方法としている。吐出ステップS8が終わり、取外しステップS9を行う前に、予めシリンジ31のバレル31a内部に気体を注入することにより、シリンジ31のプランジャ32の鍔部33にかかる、弾性体34の付勢力を高める、すなわちバレル31a内部の気体の圧力を高めている。これにより、1つの薬液容器11から複数の輸液バッグ26に連続して所定の量の薬液11aを輸送し、効率よく混合することができる。
この方法により、外気による汚染を防止するための構造を保ったままで、繰り返し所定の量の薬液11aを薬液容器11から計量チャンバ12を介して外部に取り出すことができる。また、予めシリンジ31のバレル31a内部に気体を注入することにより、シリンジ31のプランジャ32の鍔部33にかかる、弾性体34の付勢力を高める、すなわちバレル31a内部の気体の圧力を高めることができる。したがって、計量した薬液11aは、効率よく計量チャンバ12から吐出される。
以上のように、本実施の形態2の薬液輸送装置は、内部に充填された薬液が吸引されて取り出される薬液容器と、上記薬液容器内の上記薬液を受け入れる計量チャンバと、上記薬液容器と前記計量チャンバとを接続する弾性チューブと、上記弾性チューブが周囲に巻き付いた回転体を有し、上記回転体を上記弾性チューブに隣接させて回転させ、上記弾性チューブ内の少なくとも一部の気体又は液体を上記計量チャンバに輸送する送液ポンプと、上記計量チャンバの近傍に配置され、上記計量チャンバと接続された、プランジャの鍔部が弾性体により付勢されたシリンジと、を備え、上記送液ポンプの上記回転体を回転させることにより、上記弾性チューブ内及び上記計量チャンバ内の気体を上記計量チャンバを介して上記シリンジに輸送すると共に、上記弾性チューブを介して、上記薬液容器から上記計量チャンバに上記薬液を輸送する構成からなる。
この構成により、外気による汚染を防止する構造を保ちつつ、薬液容器から所定の量の薬液を自動的に取り出して、輸液バッグなどに清浄な状態で注入できる。また、計量チャンバへの薬液の輸送に伴い増大するシリンジのプランジャの鍔部の付勢力を、計量チャンバ内の薬液の吐出力としても利用できるので、薬液吐出の為の余分なアクチュエータを設けることなく、外気に対する汚染を防止する構造も保ったままで、自動かつ効率よく薬液を吐出することができる。