本発明の電子部品収納用パッケージについて、添付の図面を参照しつつ説明する。
図1(a)は本発明の電子部品収納用パッケージの一例を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のX−X’線における断面図であり、図1(c)は図1(a)の要部拡大断面図である。同図において101は絶縁基体、102は配線導体、103は圧電振動子やIC等の電子部品、104は電子部品103が収容される凹部、105は第1のメタライズ層、106は第2のメタライズ層、107は金属枠体、108はろう材である。
そして、主として本発明の電子部品収納用パッケージは、絶縁基体101,第1のメタライズ層105,第2のメタライズ層106および金属枠体107から構成されている。
ここで、絶縁基体101は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,ガラスセラミックス等のセラミック材料から成る複数の絶縁層(符合なし)が積層されて形成されている。
絶縁基体101は、例えば、各絶縁層が酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、酸化アルミニウムを主成分とし、酸化ケイ素や酸化カルシウム,酸化マグネシウム等を添加してなるセラミック粉末を有機溶剤,バインダとともにシート状に成形して複数のセラミックグリーンシートを作製し、これらのセラミックグリーンシートを積層することにより作製することができる。
絶縁基体101は、例えば一辺の長さが2〜10mm程度で厚みが0.4〜2mm程度の直方体状である。そして、絶縁基体101の上面中央部に電子部品103を搭載するための搭載部(図1では凹部104の底面)が設けられている。電子部品103は、例えば、水晶振動子等の圧電素子や半導体素子,センサ素子等である。
絶縁基体101には、凹部104の内側から下面や側面等の外面にかけて配線導体102が形成されている。配線導体102は、凹部104に搭載される電子部品103の電極(図示せず)とボンディングワイヤや半田等の接続材(図示せず)を介して電気的に接続され、この電極を絶縁基体101の下面や側面に電気的に導出する導電路として機能する。
配線導体102は、タングステンやモリブデン,マンガン,銅,銀,パラジウム,金,白金等の金属材料からなる。配線導体102は、例えば、タングステンからなる場合であれば、タングステンの粉末を有機溶剤,バインダと混練して作製した金属ペーストを、絶縁基体101となるセラミックグリーンシートに所定の配線導体102のパターンで印刷しておくことにより形成される。
絶縁基体101の上面には、メタライズ層(符号なし)として第1のメタライズ層105および第2のメタライズ層106が順次被着されている。これらの第1および第2のメタライズ層105,106に、ろう材108により金属枠体107がろう付けされている。図1の(c)では、このろう付け部分が分かりやすいように、絶縁基体101の上面の金属枠体107がろう付けされている部分を拡大して断面図で図示している。
金属枠体107は、例えば鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属からなり、メタライズ層の形状に対応した枠状であり、例えば、各外辺の幅が0.15〜0.8mm程度、厚みが0.15〜0.8mm程度の寸法である。
金属枠体107は、金属製の蓋体109を絶縁基体101に接合するための下地金属として機能し、この金属枠体107上に蓋体109を載置するとともに、これらを例えばシームウエルド法等の方法で溶接することによって蓋体109が金属枠体107に接合される。
ろう材108は、例えば、銀−銅共晶組成をベースとする銀ろう(例えば、71〜73質量%銀−27〜29質量%銅、JIS名称:BAg−8)である。BAg−8の場合、融点は780℃程度である。このようなろう材108を使用することにより、800〜850℃程度の熱処理において金属枠体107をメタライズ層に強固にろう付けすることができる。このろう材108は、絶縁基体101の大きさや形状,用途等に応じて、濡れ性や溶融温度等の調整のために、錫,亜鉛等の金属元素が添加されていてもよい。
なお、配線導体102や金属枠体107の露出した表面には、酸化腐食を防止するとともに、半田やボンディングワイヤを接続する際の半田の濡れ性、ボンディングワイヤのボンディング性等の特性を向上させるために、ニッケルや金等のめっき層(図示せず)が被着されている。
このような電子部品収納用パッケージは、製造時の取り扱いを容易なものとするために、複数の絶縁基体101が配線基板領域として母基板(図示せず)に縦横の並びに配列されて作製することもできる。例えば、絶縁基体101が酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、酸化アルミニウム等の原料粉末をシート状に成形したセラミックグリーンシートを複数枚準備するとともに、各セラミックグリーンシートに複数の絶縁基体101となる領域を縦横の並びに配列し、次に、このセラミックグリーンシートの一部のものについて適当な打ち抜き加工を施して凹部104を形成するための打ち抜き部分を設けた後、積層し、焼成することによって作製される。
この母基板の配線基板領域への金属枠体107のろう付けは、例えば以下のようにして行なわれる。まず、複数の絶縁基体101が配列形成された母基板の外辺に位置決め用の切り欠き部(図示せず)を形成しておく。次に、この切り欠き部の対応する位置に位置決めピンが主面に設けられているとともに、この主面に、それぞれが金属枠体107の外形寸法に対応する複数の穴が、母基板の配線基板領域の並びに対応して配列されたろう付け用の治具を準備する。そして、治具の穴にそれぞれ金属枠体107を入れた後、治具に母基板を、切り欠き部に位置決めピンが挿入されるようにして載置し、これらを炉中でろう材108のろう付け温度(銀−銅ろうの場合であれば約750〜900℃程度)に加熱することによって行なわれる。なお、この場合、金属枠体107の絶縁基体101とろう付けされる面に、あらかじめろう材108をフィルム状に被着させておくとよい。治具は、耐熱性が良好で、熱膨張係数が小さい材料、例えばカーボンにより形成されている。
この工程により、絶縁基体101の第1のメタライズ層105および第2のメタライズ層106に金属枠体107がろう付けされることとなる。
第1のメタライズ層105および第2のメタライズ層106は、金属枠体107を絶縁基体101に接続するための下地金属として機能する。また、第2のメタライズ層106は、絶縁基体101と金属枠体107との間に適度にろう材108の溜まりを形成するための支持部(いわゆるスペーサ等)としての機能も兼ねている。
第1のメタライズ層105および第2のメタライズ層106からなるメタライズ層は、配線導体102と同様にタングステンやモリブデン,マンガン,銅,銀,パラジウム,金,白金等の金属材料から成り、同様の方法により形成される。金属枠体107がろう付けされる第1のメタライズ層105および第2のメタライズ層106の表面には、金属枠体107をろう付けするろう材108との濡れ性を向上させるために、あらかじめニッケルめっき層等のめっき層(図示せず)が被着されている。
本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、メタライズ層は、上記のように、凹部104を囲んで絶縁基体101の上面に被着された四角枠状の第1のメタライズ層105と、第1のメタライズ層105の辺部分のみにおいて第1のメタライズ層105の上面に被着された、第1のメタライズ層105よりも幅が狭い第2のメタライズ層106とにより構成されている。このような構成によれば、メタライズ層(第1のメタライズ層105および第2のメタライズ層106)の厚みばらつきを抑制でき、ろう付け後における金属枠体107の変形を抑制しながら、第1および第2のメタライズ層105,106に金属枠体107を強固にろう付けすることができる。
具体的には、メタライズ層となる金属ペーストを用いてスクリーン印刷法で形成すると、金属ペーストの表面張力や粘性に起因する金属ペーストの厚みばらつきが生じる傾向があるのに対し、この現象を第1のメタライズ層105だけに留めておき、特に金属枠体107の変形に対して影響が大きい第2のメタライズ層106について、厚みが比較的大きくなる傾向のあるコーナー部分には被着しないようにしたので、その第2のメタライズ層106の厚みばらつきを効果的に抑制することができる。
そのため、金属枠体107に部分的に大きな応力が加わることが抑制されるので、金属枠体107の変形を抑制することができる。また、金属枠体107のコーナー部分において、第2のメタライズ層106は被着されていないものの、第1のメタライズ層105と金属枠体107との間にろう材108の溜まりを形成できることから、金属枠体107をメタライズ層に強固にろう付けし、気密封止の信頼性を確保することができる。
なお、この場合、四角枠状の第1のメタライズ層105の厚みがコーナー部分において厚くなったとしても、その第1のメタライズ層105の上に第2のメタライズ層106が被着されていることから、この厚みばらつきが抑制された第2のメタライズ層106の上に金属枠体107がろう付けされる。よって、第1のメタライズ層105の影響を受けにくい構造であることから、ろう材108の厚みばらつきによる金属枠体107の変形を抑制することができる。
この実施の形態の例において、第1のメタライズ層105は、その内周が平面視で凹部104の内側面と重なるように形成されている。これは、前述したように、治具により第1のメタライズ層105および第2のメタライズ層106に金属枠体107を位置決めする際に、凹部104の位置を分かりやすくして、その作業をしやすくするためである。
また、第1のメタライズ層105の幅は、金属枠体107のメタライズ層への位置決めのしやすさや熱処理時のろう材108の流れ出しの抑制等を考慮して、凹部104を取り囲む絶縁基体101の上面の枠状の部分(枠部)の幅の80%以上100%(つまり、この枠部の全面に第1のメタライズ層105が形成された状態)以下となるようにすればよい。例えば、絶縁基体101の枠部の幅が1.0mmの場合であれば、第1のメタライズ層105は幅が0.8〜1.0mmとなるように被着させればよい。
なお、このような電子部品収納用パッケージを、前述したように母基板に配列して製作するときに、絶縁基体101が、平面視で1辺の長さが約3.0mm以下の四角形状と小型であり、絶縁基体101の枠部の幅が狭い場合は、配線基板領域同士の間に分割溝を形成することにより、隣り合う配線基板領域の間で、熱処理時のろう材108の流れ出しによるメタライズ層同士の癒着を抑制することもできる。このようにすれば、絶縁基体101の枠部の上面の全面に第1のメタライズ層105を被着させることもできる。
また、第2のメタライズ層106が第1のメタライズ層105と金属枠体107との間に介在しているため、第1のメタライズ層105と金属枠体107との間にろう材108の溜まりを形成できる。そのため、金属枠体107に蓋体109をシーム溶接等で溶接する際の熱応力を緩和する効果があり、このような熱応力によりメタライズ層(特に熱応力が作用しやすい第1のメタライズ層105の外周部)が絶縁基体101から剥離することを抑制できるという効果もある。さらに、ろう材108はメタライズ層と金属枠体107との間に介在するだけでなく、その一部が金属枠体107の外周に沿ってフィレット状に被着されている。
第2のメタライズ層106は、前述のように、メタライズ層の厚みばらつきを抑制するために、四角枠状の第1のメタライズ層105の辺部分のみに被着されている。この場合の辺部分とは、例えば、第1のメタライズ層105が図1に示したようにコーナー部分が円弧状に成形されている場合であれば、その円弧状の部分を除いた直線状の部分に相当する。また、この直線部分の全長にわたって第2のメタライズ層106を被着させる必要はなく、円弧状のコーナー部分から辺部分に多少入り込んだ部分までを、第2のメタライズ層106を被着させない範囲としてもよい。
例えば、絶縁基体101が、平面視で1辺の長さが約3.0mmの正方形状で、その上面に約0.4mmの幅で四角枠状(コーナー部分が円弧状)の第1のメタライズ層105が被着されている場合に、第1のメタライズ層105の直線部分の長さが約1.6〜1.8mm程度とすると、第2のメタライズ層106は、1.2〜1.8mm程度の長さとすればよい。この場合、第2のメタライズ層106は、第1のメタライズ層105の各辺部分に、一方のコーナー部分側に偏らないようにしておくことが望ましい。これは、ろう材108の量がコーナー部分同士の間でばらつくことを抑制するためである。
また、第2のメタライズ層106の厚みは、メタライズ層としての機械的強度の確保や第2のメタライズ層106となる金属ペーストの印刷性、ろう材108の溜まりの形成等を考慮して、約15〜30μm程度とすればよい。
また、第2のメタライズ層106は、第1のメタライズ層105と金属枠体107との間にろう材108の溜まりを形成して、第2のメタライズ層106から第1のメタライズ層105に作用する応力を抑制すること等のために、第1のメタライズ層105よりも幅が狭くなっている。このような第2のメタライズ層106の幅は、第1のメタライズ層105の幅に対して約30%〜50%程度とすればよい。
また、第2のメタライズ層106は、第1のメタライズ層105の辺部分のみに被着されるため、例えば、平面視で細長い長方形状(角部分が円弧状に成形されているものも含む)等の形状である。
例えば、絶縁基体101が、酸化アルミニウム質焼結体からなり、第1および第2のメタライズ層105,106がタングステンからなる場合に、鉄−ニッケル−コバルト合金からなる金属枠体107をろう付けして製作した電子部品収納用パッケージの具体例を挙げると、本発明の電子部品収納用パッケージの効果は以下のようになる。
すなわち、絶縁基体101は、1辺の長さが約2.5×2.0mmの長方形状で、厚みが約0.6mmであり、その上面に約2.1×1.6mmの寸法で凹部104が形成されたものとした。絶縁基体101の上面には、凹部104を取り囲んで四角枠状の第1のメタライズ層105が約0.15mmの幅で形成され、第1のメタライズ層105の辺部分(長さが約1.9mmおよび約1.2mm)に第2のメタライズ層106を約0.1mmの幅で被着させておいた。
この電子部品収納用パッケージに鉄−ニッケル−コバルト合金からなる金属枠体107を、銀−銅ろう(JIS規格:B−Ag8)を用いてろう付けした後、金属枠体107の反り(変形)の程度を測定した。また、比較例として、従来技術の電子部品収納用パッケージ(図5に示した、第2のメタライズ層206が第1のメタライズ層205の全周にわたって四角枠状に被着されたもの)についても、金属枠体(207)の反りの程度を測定した。比較例の電子部品収納用パッケージは、第2のメタライズ層206以外は本発明の電子部品収納用パッケージの具体例と同様の条件で作製した。
その結果、図2(a)に示すように、本発明の電子部品収納用パッケージでは、金属枠体107の反りが3.7〜6.9μm(サンプル数が10個で、算術平均が4.7μm)であったのに対し、比較例の電子部品収納用パッケージでは、金属枠体の反りが6.5〜9.5μm(サンプル数が10個で、算術平均が8.4μm)であった。ここで、金属枠体107の反りは、図2(b)に示すように、金属枠体107のコーナー部分と辺部分との高さの差を、非接触の高さ測定器(レーザ光を用いた高さ測定器)で計測することにより測定した。この場合、金属枠体107の反りとは、金属枠体107の表面における最も高い部分と最も低い部分との差を示す値である。
このように、本発明の電子部品収納用パッケージによれば、金属枠体107の反りを、従来の電子部品収納用パッケージに比べて小さく(上記の例では算術平均で約55%程度に)抑えることができる。なお、図2(a)は、本発明の電子部品収納用パッケージおよび従来技術の電子部品収納用パッケージそれぞれの金属枠体107の反りの測定結果を示す散布図であり、図2(b)は、反りを測定する状況を模式的に示す側面図である。図2(b)において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
また、この具体例の電子部品収納用パッケージについて、凹部104内に電子部品103として水晶振動子を収容して蓋体109をろう付けした後、−55℃〜+125℃の温度サイクル試験を10サイクル施した後、絶縁基体101とメタライズ層(特に第1のメタライズ層105)との界面の剥離状態や水晶振動子の周波数特性の変化等を観察して、気密封止の信頼性を確認した(サンプル数n=5(個))。その結果、評価した電子部品収納用パッケージについては、いずれも絶縁基体101とメタライズ層との界面の剥離が見られず、水晶振動子の周波数特性の劣化も見られず、気密封止の信頼性が十分であることが確認できた。
また、本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、金属枠体107の幅が第2のメタラ
イズ層106の幅よりも広く、金属枠体107の下面の内周部および外周部の少なくとも一方に、それぞれ下面の内周および外周に沿って、側面が第2のメタライズ層106の側面と対向
し合う突出部110が形成されている。金属枠体107を第1および第2のメタライズ層106に
ろう材108で接合する際、突出部110が第2のメタライズ層106を挟むようにして金属枠体107がろう付けされる。そのため、金属枠体107の位置ずれをより効果的に抑制することが
できる。
特に、このような第1および第2のメタライズ層105,106に金属枠体107をろう付けする場合には、金属枠体107と第1のメタライズ層105との間にろう材108の溜まりが形成されるので、ろう付け中にろう材108が溶融して流動性を有している間に、金属枠体107に位置ずれが生じる可能性がある。これに対し、上記のような突出部110を設けておけば、突出部110の側面が金属枠体107の側面に接することにより位置ずれを抑制することができる。
突出部110は、金属枠体107の位置ずれをより確実に抑制する上では、金属枠体107の内周部および外周部の両方に形成しておくことが好ましい。また、突出部110は、金属枠体107の内周部または外周部に形成されたときに、その内周部または外周部の全周にわたって形成しておくことが好ましい。
このような突出部110を有する金属枠体107は、例えば、金属枠体107の下面にろう材108が圧延法により一体的に形成されたろう材付きの金属枠体107(いわゆるクラッドタイプ)を用いる場合であれば、以下のようにして作製することができる。
すなわち、このようなクラッドタイプの金属枠体107を、金属枠体107となる金属の母材(金属板)の主面に、圧延法によってろう材108の箔を接合し、この母材とろう材108の箔とを、ともに金型等で所定の蓋体109の寸法で枠状に打ち抜き加工して作製する。そして、この打ち抜き加工時に、金属枠体107の下面の内周部および外周部に、内周および外周にそれぞれ沿って連続するように突出部110を形成することができる。
具体的には、金属枠体107を製作する際に、金属枠体107となる金属の母材を、ろう材108の箔を接合した側の主面から枠状に打ち抜くことにより、打ち抜き金型のクリアランスにより母材の打ち抜き部がだれて、打ち抜かれた金属枠体107の下面(つまり、金属枠体107とろう材108との界面)の内周部および外周部に沿って連続した突出部110が形成された金属枠体107を製作することができる。なお、突出部110の高さは、打ち抜き金型のクリアランス等を調整することによって所定の高さに調整することもできる。また、このようにして得られた金属枠体107は、さらにバレル研磨等の機械的研磨やエッチング等の化学的研磨を施して、突出部110の高さを調整してもよい。突出部110の高さとしては、例えばメタライズ層や金属枠体107が前述のような寸法であれば約5〜10μm程度が適当である。この高さであれば、金属枠体107をメタライズ層上に接合した際に第2のメタライズ層106の厚みよりも突出部110の高さが小さくなるため、メタライズ層上に安定した状態で金属枠体107を接合することができる。
なお、このような突出部110は、ろう材108の過剰な広がりを抑制する効果も有している。そのため、メタライズ層と凹部104内の配線導体102との間の短絡を抑制したり、多数個取り配線基板で絶縁基体101を製作する際に、隣接するメタライズ層同士がろう材108でつながって多数個取り配線基板の分割性が低くなるようなことを抑制することができる。
また、本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、金属枠体107の内周面が平面視で凹部104の内側面よりも内側に位置している場合には、凹部104の上方から見たときに金属枠体107の内周が凹部104の開口した部分となることから、金属光沢があり画像認識が容易な金属枠体107を基準として、電子部品103の搭載位置を容易に確認できる。
なお、金属枠体107の内周面が平面視で凹部104の内側に入り過ぎると、凹部104の開口寸法が小さくなるため、電子部品103の凹部104内への収容の作業性が低下する可能性がある。例えば、最近の小型化した電子部品収納用パッケージにおいて、凹部104の平面視した寸法が約2.1×1.6mm程度の場合であれば、金属枠体107の内周面が、平面視で、約0.1mm程度以下の寸法で凹部104の内側面よりも内側に位置するようにすればよい。
そして、絶縁基体101の凹部104に電子部品103を収容し、電子部品103の電極を凹部104内に露出した配線導体102に半田バンプや導電性接着剤,ボンディングワイヤ等を介して電気的に接続し、その後、金属枠体107の上面に蓋体109をシーム溶接等の方法で取着することにより、絶縁基体101と金属枠体107と蓋体109とから形成される容器の内部に電子部品103が気密封止され、電子装置として完成する。この電子装置について、配線導体102のうち絶縁基体101の外表面に導出された部位を外部電気回路基板に接続することにより、電子部品103が外部の電気回路と電気的に接続されることとなる。
また、本発明の電子部品収納用パッケージにおいて、例えば図3に示すように、第2のメタライズ層106が、両端部において幅が次第に狭くなっている場合には、特に金属枠体107の変形に対して影響が大きい第2のメタライズ層106について、その厚みばらつきをより効果的に抑制することができる。すなわち、直線状(細長い長方形状)である第2のメタライズ層106は、第2のメタライズ層106となる金属ペーストの粘性と表面張力とに応じた移動により、両端部において厚みが比較的厚くなる可能性がある。これに対して、その両端部で幅が次第に狭くなるようにした場合には、金属ペーストが第2のメタライズ層106の両端部に移動しにくくなるので、厚みばらつきがより効果的に抑制されたものとすることができる。そのため、金属枠体107に部分的に大きな応力が加わることが抑制されるので、金属枠体107の変形をより効果的に抑制することができる。なお、図3は、本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す平面図である。図3において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
具体的には、例えば、電子部品103として水晶振動子等の圧電振動子を収容する場合に多用されている、第1のメタライズ層105の幅が約0.25〜0.4mm程度で、外辺の長さが約1.6〜2.5mm程度の電子部品収納用パッケージにおいて、第2のメタライズ層106の外辺の長さを約1.1〜1.7mm程度とした場合であれば、第2のメタライズ層106の両端からそれぞれ長さ方向における中央に向かって第2のメタライズ層106の最大幅程度の長さの領域において、第2のメタライズ層106の幅が端に近づくに連れて次第に狭くなるようにすれば良い。
この場合、第2のメタライズ層106の両端部において幅が次第に狭くなるようにスクリーン(印刷用の版面)のパターンを形成しておき、スクリーン印刷法により第2のメタライズ層106となる金属ペーストを印刷すればよい。ここで、第2のメタライズ層106の幅が両端部で次第に狭くなるように形成する方法としては、スクリーンのパターンをそのような幅が次第に狭くなるパターンとする方法以外にも、スクリーンの開口率(いわゆるメッシュ)が両端部で端に近づくに連れて低くなるようにする方法等でもよい。このように第2のメタライズ層106が両端部において幅が次第に狭くなっていることにより、金属枠体107に部分的に大きな応力が加わることがより効果的に抑制されるので、金属枠体107の変形をより効果的に抑制することができる。
なお、第2のメタライズ層106について、その両端部における幅が次第に狭くなっている部分の外縁は、図3に示した例では2つの楕円弧を組み合わせたような形状(U字状)であるが、円弧状や、直線状で先細りになっている形状(いわゆるテーパ状等)や、折線状等の他の形状でもよい。
本発明の電子部品収納用パッケージは、以下の工程を備えた製造方法により製作することが望ましい。すなわち、例えば図4(a)〜(d)に示すように、上面に電子部品(図4では図示せず)を収容するための四角形状の凹部104を有し、凹部104の内側から絶縁基体101の外面にかけて形成され、凹部104を囲む上面に、凹部104を囲む四角枠状の第1のメタライズ層105と、第1のメタライズ層105の辺部分のみにおいて第1のメタライズ層105の上面に被着された、第1のメタライズ層105よりも幅が狭い第2のメタライズ層106が被着された絶縁基体101を準備する工程(a)と、下面の全面にろう材108aが層状に被着され、角部の下面において層状のろう材108aの表面に凸状にろう材108bが被着された四角枠状の金属枠体107を準備する工程(b)と、絶縁基体101の上面に金属枠体107を、凸状のろう材108bと第1のメタライズ層105の角部分とが対向するように位置合わせした後に加熱して、絶縁基体101と蓋体109とを層状のろう材108aおよび凸状のろう材108bを介してろう付けする工程(c)および(d)とを備える製造方法である。なお、図4(a)〜(d)は、それぞれ本発明の電子部品収納用パッケージの製造方法の実施の形態の一例を工程順に示す断面図である。図4において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
この製造方法によれば、上記各工程を備えることから、部分的に第2のメタライズ層106が被着されない第1のメタライズ層105に金属枠体107を位置決めする際においても、金属枠体107の角部において金属枠体107の下面から突出している凸状のろう材108bが、第2のメタライズ層106が形成されていない部分に入り込むため、金属枠体107の位置合わせを容易で安定なものとすることができる。また、位置合わせしたときに、金属枠体107と、第2のメタライズ層106が被着されていない第1のメタライズ層105との間(隙間が生じるような部分)において、十分な量のろう材108を供給することができる。そのため、金属枠体107とメタライズ層とを強固に接合することができる電子部品収納用パッケージの製造方法を提供することができる。
この製造方法の工程フローを、図4(a)〜(d)の順に説明する。
まず、図4(a)に示すように、上記構成の絶縁基体101を準備する。
絶縁基体101は、例えば、前述したように複数のセラミックグリーンシートを積層し、焼成する方法で作製することができる。凹部104は、絶縁基体101となるセラミックグリーンシートのうち積層したときに最上層となるものや最上層から下側に複数の層となるものについて、その中央部分を金型等(図示せず)で打ち抜いて枠状としておくことにより形成することができる。
また、配線導体102についても、例えば前述したように、タングステン等の金属ペーストを絶縁基体101となるセラミックグリーンシートに所定の配線導体102のパターンで印刷しておき、絶縁基体101と同時焼成する方法で形成することができる。同様に、第1のメタライズ層105および第2のメタライズ層106も、金属ペーストを、絶縁基体101となるセラミックグリーンシートのうち凹部104を取り囲む部位に順次印刷して形成することができる。なお、これらの金属ペーストは、絶縁基体101との同時焼成で配線導体102やメタライズ層となる。
次に、図4(b)に示すように、上記構成の金属枠体107を準備する。
前述したように金属枠体107は、鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属板(母材)に打ち抜き加工を施すことによって、所定の枠状の形状に加工することができる。そして、この打ち抜き加工の際に、金属板の主面に層状のろう材108aとなる箔を接合しておき、金属板と層状のろう材108a(箔)とを、ともに金型等で枠状に打ち抜き加工すれば、下面の全面にろう材108aが層状に被着された金属枠体107を作製することができる。また、この層状のろう材108aのうち金属枠体107の角部の下面に相当する部分に、ろう材の箔を四角形状等に切断したろう材片(図示せず)を圧着や接着剤による接着等の接合方法で接合すれば、層状のろう材108aの表面に凸状のろう材108bを被着させることができる。
そして、図4(c)に示すように絶縁基体101の上面に金属枠体107を、凸状のろう材108bと第1のメタライズ層105の角部分とが対向するように位置合わせした後に加熱して、図4(d)に示すように、絶縁基体101と蓋体109とをろう材108(層状のろう材108aおよび凸状のろう材108b)を介してろう付けする。
なお、このろう材108としては、例えば、JIS規格BAg8等の銀−銅ろうを用いることができる。また、ろう付け時の加熱等の作業性やろう付け後の接合強度等を考慮すれば、層状のろう材108aと凸状のろう材108bとが同様の組成の材料であることが好ましい。
ここで、絶縁基体101の上面に金属枠体107を、凸状のろう材108bと第1のメタライズ層105の角部分とが対向するように位置合わせする際には、凸状のろう材108bの厚みが第2のメタライズ層106の厚みよりも厚くなるようにして、金属枠体107の角部において、凸状のろう材108bと第1のメタライズ層105とが直接に接するようにしてもよい。
また、凸状のろう材108bの形状は、例えば平面視で円形状や四角形状,三角形状等(底面が層状のろう材108aに接合された円柱状や四角柱状,三角柱状等)の形状とすればよく、くさび形等の形状でもよい。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えても何ら差し支えない。例えば、この例では絶縁基体101の凹部104内に形成された配線導体102を1対の配線導体102として形成したが、凹部104内に収容される電子部品103の形態に合わせて、凹部104内に形成される配線導体102の形状や数を変更してもよい。