以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線端末同士が接続する例を示している。図1では2つの無線端末、無線端末201(STA201)と無線端末202(STA202)が接続している。無線端末は2つに限らず、複数存在し、各無線端末が他の複数の無線端末と接続するようになっていてもよい。
また図2のように一方が無線基地局であってもよい。図2で無線基地局101(AP101)が無線端末201(STA201)と接続している。無線基地局101は無線端末201以外の他の1つまたは複数の無線端末と接続していてもよく、あるいは他の1つまたは複数の無線基地局と接続していてもよい。また有線ネットワークに接続していてもよい。無線端末201は無線基地局101以外の他の1つまたは複数の無線端末と接続してもよい。以下、特に区別する必要のない場合、無線通信装置である無線基地局及び無線端末を、無線端末と記載する。
図1や図2のように1つの無線通信グループを形成する場合にこれをIEEE802.11無線LANでは特にBSS (Basic Service Set)と呼ぶ。
ここで、無線端末間の「接続」とは、互いに存在を認識し、なんらかの無線通信を実現するために必要な互いの能力(Capability)を把握し合っている状態のことをいう。この互いの能力の把握は例えば無線端末間で互いの能力を通知し合うことにより行う。1つの手段は認証過程を経ることである。IEEE802.11無線LANシステムでは例えばAssociation RequestとAssociation Responseという管理フレームの交換によって行うAssociation Processというものが当たる。もう1つの手段は互いに自分の能力を通知するフレームを送信し合い、把握する方法である。IEEE802.11無線LANシステムでは例えば無線端末が同期信号でもあり、通信グループ(BSS)の属性も示す役割もあるBeaconという管理フレームを送信する場合、このBeaconフレームに自分の能力も通知するフィールドがあり、Beaconフレームを受信した他の無線端末はそれにより当該無線端末の能力を把握することができる。
またこのBeaconフレームに類似した管理フレームで、Probe Requestフレームを送信するとその応答として得ることのできるProbe Responseフレームがあるが、このProbe Responseフレームにより送信元の無線端末の能力を把握することができる。接続状態にある無線端末間では無線通信を行うことができる。
<無線端末構成>
図3は、本実施形態に係る無線端末の構成例である。
図3に示すように、共通MAC処理部2は、第1の送受信部10と第2の送受信部20に接続しており、例えばIEEE802規格で規定された論理リンク制御(Logical Link Control; LLC)層(Layer; レイヤ)を介して生成されたデータを第1の送受信部10あるいは第2の送受信部20に振り分ける。また第1の送受信部10あるいは第2の送受信部20からの送信ステータスをLLCに渡す。また逆に第1の送受信部10あるいは第2の送受信部20を介して受信したフレームの内容(ペイロード)をLLCに渡す制御などを行う。無線基地局ではこの他に有線ネットワークに接続するようになっていてもよい。
第1の送受信部10は、第1のMAC (Media Access Control; メディアアクセス制御)処理部11、第1のPHY処理部15、第1の周波数変換回路16、第1のアンテナ18を備えている。
第2の送受信部20は、第2のMAC処理部21、第2のPHY処理部25、第1の周波数変換回路26、第2のアンテナ28を備えている。
第1のMAC処理部11と第2のMAC処理部21は共通MAC処理部2に接続しており、MACフレームの生成や送信時のアクセス制御、応答フレーム送信などを含む受信フレーム処理や、無線端末間の設定に関する管理などの処理を行う。これらには例えばIEEE802.11無線LAN (802.11a、b、e、g、h、i、j、nなどの一連の拡張・補完規格も含む。以下同様)システムやIEEE802.15無線PAN(802.15.3や802.15.3cなど一連の拡張・補完規格も含む)でのMAC層として規定されている動作がある。各々のMAC処理部の中にあるMAC管理部(第1のMAC処理部11では第1のMAC管理部12、第2のMAC処理部21では第2のMAC管理部22)が無線端末間の設定に関するなどの管理処理を行い、アクセス制御部(第1のMAC処理部11では第1のアクセス制御部13、第2のMAC処理部21では第2のアクセス制御部23)ではそれ以外のMACフレームの生成や送信時のアクセス制御、受信フレーム処理などを行う。
また作業領域やフレームバッファ、また無線端末情報などのためにメモリをMAC処理部に持っていてもよい。これらはアクセス制御部、MAC管理部個々に設けられていてもよいし、MAC処理部として共有できるようにしてもよいし、またMAC処理部に外付けされ、MAC層以外の他の処理にも使えるようにしてもよい。
図3では第1のMAC管理部12と第2のMAC管理部22が接続しているが、図4のように共通MAC管理部3を介して接続していてもよい。この場合、共通MAC管理部3は第1の送受信器と第2の送受信器で共有するような管理情報、例えば両送受信部での接続対象となる無線端末情報などを保持するようにしてもよい。接続対象となる無線端末とは一方だけと接続していてもよいし、あるいは両方に接続していなくてもよい。すなわち、接続対象となる無線端末は、第1と第2の周波数帯の両方で通信可能な能力を持つマルチモード無線端末のことである。この場合、例えば第1/第2のMAC管理部12/22では第1/第2の周波数帯で接続する際に必要な無線端末の設定情報を保持するようにして役割分担するようにしてもよい。
共通MAC処理部2は共通MAC管理部3からの情報を基に、第1の送受信器を用いて送信するか第2の送受信器を用いて送信するかの振り分けなどの判断を行うようにしてもよい。
第1のPHY処理部15と第2のPHY処理部25は各々第1のMAC処理部11、第2のMAC処理部21に接続しており、MACフレームからのPHYパケットの生成や変調符号化処理、また無線媒体(エア)の状態の把握、受信信号の復調復号化処理、MAC処理部への受信パケットや受信状態の情報の通知などを行う。これらは例えばIEEE802.11無線LANシステムやIEEE802.15無線PANシステムでのPHY層の規定動作である。
第1の周波数変換回路16と第2の周波数変換回路26は各々第1のPHY処理部15、第2のPHY処理部25と接続しており、デジタル信号をアナログ信号に変換したり、信号の周波数を段階的に変換するなどして各々第1のアンテナ18、第2のアンテナ28から電波を放射する。また各々、受信した電波が第1のアンテナ18、第2のアンテナ28から入力されると受信信号の周波数を段階的に変換し、第1のPHY処理部15あるいは第2のPHY処理部25で処理できるようにデジタル信号に変換する。
例えばLLC層から入力されたデータは共通MAC処理部2で第1の送受信部10あるいは第2の送受信部20に振り分けられ、各々の送受信部内でMAC処理部(第1のMAC処理部11あるいは第2のMAC処理部21)でMACフレームに変換され、PHY処理部(第1のPHY処理部15あるいは第2のPHY処理部25)でPHYパケットに変換され、周波数変換回路(第1の周波数変換回路16あるいは第2の周波数変換回路26)を経由してアンテナ(第1のアンテナ18あるいは第2のアンテナ28)から無線信号として送出される。
逆にアンテナ(第1のアンテナ18あるいは第2のアンテナ28)から受信した無線信号は周波数変換回路(第1の周波数変換回路16あるいは第2の周波数変換回路26)、PHY処理部(第1のPHY処理部15あるいは第2のPHY処理部25)、MAC処理部(第1のMAC処理部11あるいは第2のMAC処理部21)、共通MAC処理部2を経由して処理され、自端末宛てデータがLLC層などの上位層に出力される。
このように無線端末は第1の送受信部と第2の送受信部を持つマルチモード無線端末である。なお第1の送受信部と第2の送受信部は説明上便宜的に分けてあるものであり、必ずしも図3のような構成になっていなくてもよい。少なくとも第1のMAC処理部11と第2のMAC処理部21の間のインタフェース(Interface; I/F)と、第1のMAC処理部11と第1のPHY処理部15の間のI/F、第2のMAC処理部21と第2のPHY処理部25の間のI/Fで以降のように信号のやり取りができればよい。
なお図1あるいは図2のような構成のシステムは、本願のマルチモード無線端末のみから構成されていてもよいし、非マルチモード無線端末が混在していてもよい。非マルチモード無線端末が混在するような場合は、本願ではマルチモード無線端末同士での場合、特に両モードを使う可能性のある場合を対象とする。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、図3の無線端末構成を、図5のように第1の送受信部10をマイクロ波用送受信部10、第2の送受信部20をミリ波用送受信部20とする。
<ミリ波、マイクロ波>
ここでミリ波とは電磁波の波長がミリメートル(mm)オーダーのものを言う。周波数では30 GHz以上、300 GHz未満の周波数帯の電磁波である。ミリ波の送受信回路としては具体的には例えば57-66 GHz帯での電磁波の送受信回路である。
マイクロ波とはここでは例えば電磁波の波長がセンチメートル(cm)オーダー以上のものを差す。周波数では300 MHz以上、30 GHz未満の周波数帯の電磁波である。マイクロ波の送受信回路としては具体的には例えば5 GHz帯や2.4 GHz帯での電磁波の送受信回路である。
なお上述の図5では第1の送受信部10をマイクロ波帯用送受信部に、第2の送受信部20をミリ波帯用送受信部にしたが、これに限らず、例えば上記での第1の送受信部10は2.4 GHz帯用送受信部、第2の送受信部は5 GHz帯用送受信部にしてもよい。
一般に周波数帯が高くなるほど距離に対する電磁波(電波)の減衰が大きくなる。このような周波数帯の差、換言すれば電波の減衰特性の差、あるいはカバレッジエリアの差がある電磁波の送受信部を少なくとも2つ有する無線端末であればよい。通信に用いる周波数が低く電波の減衰が少ない、すなわちカバレッジエリアが広い方の周波数帯の送受信部を第1の送受信部10にし、通信に用いる周波数が高く電波の減衰が大きい、すなわちカバレッジエリアが狭い方の周波数帯の送受信部を第2の送受信部20にする。
また一般に周波数帯が高くなるほど広帯域を確保しやすく高い伝送レートでの伝送を期待することができる。逆に周波数帯が低いほど狭帯域しか確保できず、低い伝送レートに留まりがちな性質を持つともいえる。これらの特性を合わせて、カバレッジエリアが広いが狭帯域しか確保できず伝送レートの低い周波数帯の送受信部を第1の送受信部10にし、カバレッジエリアは狭いが広帯域を確保できる伝送レートの高い周波数帯の送受信部を第2の送受信部20としてもよい。
<マイクロ波とミリ波との相関情報取得>
図5のような構成を持つマルチモード無線端末がマイクロ波用送受信部10とミリ波用送受信部20でのアンテナ相関を取得する方法について、図6を用いて説明する。ここでは、マイクロ波用送受信部10でミリ波用送受信部20のアンテナ相関情報を把握する。
図6の動作を行う無線端末を図1の無線端末201とする。
無線端末201は、無線端末202からマイクロ波を用いて送信されたフレームを受信する。図5でマイクロ波PHY処理部15からマイクロ波MAC処理部11にマイクロ波PHY I/Fを介して当該フレーム受信が通知される。この際にマイクロ波アンテナ18で受信時のアンテナの重み付け情報W1を取得しておき、当該重み付け情報は受信フレームをマイクロ波MAC処理部11に渡す際に合わせて通知するようにする(ステップS1)。
アンテナの重み付け情報(antenna array weight vector)は、送受信する際にアンテナの指向性(ビーム)を制御するための情報である。
例えば、IEEE802.11無線LANでは信号を受信する場合、PHY層(PHY処理部15、25)で有効なフレーム開始(start frame delimiter; SFD)とPLCP (Physical Layer Convergence Protocol)ヘッダの受信を検出するとPHY-RXSTART.indicationというI/F信号(プリミティブ)をMAC層(MAC処理部11、21)に出す。このPHY-RXSTART.indicationにはRXVECTORというパラメータセットが入っており、これによりPHY処理部15、25で把握した受信情報のうちMAC処理部11、21で必要なものを通知するようになっている。受信情報として、例えばPHYパケットのペイロード部(PLCP Service Data Unit; PSDU)の長さや受信電力(Receive Signal Strength Indicator; RSSI)などを通知するが、ここに当該アンテナの重み付け情報W1を合わせて情報として入れるようにしてもよい。それ以外のMAC-PHY I/F信号を新規に定義し、別に当該アンテナの重み付け情報W1をMAC処理部11がPHY処理部15から取得できるようにしてもよい。なお、IEEE802.11無線LANではPHY処理部15、25で受信復号したPHYパケットをPSDUとしてMAC処理部11、21に渡す際に、PHY-DATA.indicationというプリミティブを使いPSDUをオクテット単位に分けて渡す。またPHY処理部15、25は一連の信号の受信処理を完了するとその受信完了通知をPHY-RXEND.indicationとしてMAC処理部11、21に出す。MAC処理部11、21はこれらPHY-RXSTART.indication、PHY-DATA.idication、PHY-RXEND.indicationを受けることにより、PHY処理部15、25のPSDUをMAC処理部11、21で扱うMPDU (MAC Protocol Data Unit)として受け取り、また当該受信に付随した情報を受信情報として受け取る。PHY-RXEND.indicationは受信の際にエラーが発生したかどうかのステータスも入れており、MAC処理部11はPHY-RXEND.indicationを受信すると、これをフレームとフレームの間の間隔を測るなどのアクセス制御情報として用いる。このように、受信情報は、MAC処理部11,21よりも下位のレイヤで、フレームを受信した際に得られ、MAC処理部11,21へ渡される情報、すなわち受信に付随する情報であり、ここでは、マイクロ波とミリ波との相関情報を生成するために用いられる情報である。
MPDUは、MAC層上位に渡されるデータ (送信の場合はMAC層上位で生成されたデータ。但し、MAC層で空のデータを生成する場合もある)であるデータフレーム(Data frame)、MAC層レベルの管理情報を送信する管理フレーム(Management frame)、MAC層でのアクセス制御に関連する制御フレーム(Control frame)のいずれかになる。
データフレームと管理フレームを受け取ったMAC処理部11、21は、より詳細には、MPDUのMACヘッダ部のアドレスフィールドにより自分宛てであることを認識すると、同様にアドレスフィールドから送信先無線端末のアドレスを抽出する。同一の無線端末から送信されたもので、MACヘッダ内にあるシーケンス番号フィールド(Sequence Number field)の値が同一であり、フラグメント番号フィールド(Fragment Number field)が異なるMPDUに関してフラグメント番号順にMPDUを並べ直し、データフレームではMSDU (MAC Service Data Unit)、管理フレームではMMPDU (MAC Management Protocol Data Unit)という単位に再構築する(デフラグメント処理)。
アンテナの重み付け情報W1とは、マイクロ波アンテナ18で複数のアンテナブランチを有し、無線信号を受信する際に調整した複数のアンテナブランチそれぞれの重み付け係数の情報である。このためにマイクロ波アンテナ18は、アンテナブランチの重み付け係数を計算するアンテナ重み付け計算部を有する。
図6の説明に戻り、上記のようにしてマイクロ波MAC処理部11は、受信フレームとフレーム受信時のアンテナの重み付け情報W1を含む受信に付随した情報をマイクロ波PHY処理部15から受信すると(ステップS1)、受信フレームから送信元アドレスを抽出する(ステップS2)。図1の無線端末202からフレームを受信した場合、例えばIEEE802.11無線LANではその無線端末202のMACアドレスが受信フレームのMACヘッダのアドレスフィールド部に記載されているので、そのMACアドレスを抽出する。ここでは無線端末202のMACアドレスを便宜的にA1と表す。
そして、マイクロ波MAC処理部11は、ミリ波MAC処理部21にミリ波確認要求信号をマイクロ波/ミリ波 I/Fを介して出力する(ステップS3)。このミリ波確認要求信号では、ミリ波MAC処理部21が無線端末202に対してミリ波通信を行えるかどうかの確認を行うように、無線端末202のアドレスA1を合わせて通知する。マイクロ波/ミリ波 I/F信号としてミリ波確認要求信号を出す際に、例えば無線端末202のアドレスA1をI/F信号のパラメータとして入れる。
例えば、マイクロ波MAC処理部11のマイクロ波アクセス制御部13は、マイクロ波PHY処理部15から、受信フレームとフレーム受信時のアンテナの重み付け情報W1とを含む受信に付随した情報を受け取ると、受信フレームの送信元アドレスの無線端末がすでに当該無線端末と接続しているかをマイクロ波MAC管理部12に確認する。
マイクロ波MAC管理部12は、すでに接続設定が確立している(すなわち当該無線端末の能力を把握している)無線端末に関しては、そのアドレスなどを接続管理テーブルに保持しているとする。この場合、マイクロ波MACアクセス制御部13からの、無線端末202は接続しているかどうかの問い合わせ信号に対して、マイクロ波MAC管理部12は、接続管理テーブルを参照し、接続しているか否かを回答する。
あるいは、無線端末201として無線接続を確立している相手無線端末の情報を共通MAC管理部3で保持していてもよい(すなわち、接続管理テーブルを共通MAC管理部3で保持する)。この場合には、マイクロ波アクセス制御部13からの問い合わせ信号に対して、マイクロ波MAC管理部12は、共通MAC管理部3に確認して回答するようにしてもよい。
このようにして、マイクロ波MAC管理部12は、受信したフレームの送信元無線端末202との接続設定が確立していない場合には、その旨の情報を取得することになる。あるいはマイクロ波MAC管理部12を介さずに、マイクロ波アクセス制御部13は直接共通MAC管理部3に問い合わせて確認できるようにしてもよい。この場合も、マイクロ波MAC管理部12は、最終的にマイクロ波アクセス制御部13あるいは共通MAC管理部3から、受信したフレームの送信元無線端末202との接続設定が確立していない場合には、その旨の情報を取得することになる。
そして、マイクロ波MAC管理部12は、受信したフレームの送信元無線端末202との接続設定が確立しておらず、これから接続設定を行わなくてはならないということを把握すると、例えば、上記ミリ波確認要求信号をミリ波MAC管理部22にマイクロ波/ミリ波 I/F信号として出力する。
あるいは、マイクロ波アクセス制御部13で受信フレームを処理し、その受信フレームが管理フレームであり、接続設定要求フレームであると把握した場合(例えば当該フレームを受信している無線端末が無線端末201の代わりに、図2のように無線基地局101であり、無線端末201からIEEE802.11無線LANのAssociation Requestフレームを受信するような場合)、接続設定要求フレームの情報をマイクロ波MAC管理部12に渡す。このような接続設定を開始する際に上記ミリ波確認要求信号をミリ波MAC管理部22に出すようにしてもよい。
実際には、Requestフレームに対しACKフレームという制御フレームで受信応答し、その後、Requestフレームのフレーム内に入れられた接続要求内容に関して応答するフレームの内容をMAC管理部12が生成して、アクセス制御部13を介してResponseフレームとして送信する。このResponseフレームの送信先無線端末はこれを受信するとACKフレームで受信応答をする。このような動作は一般に単一の無線端末を直接の送信先にするユニキャストのRequestとResponseの対となる管理フレームの交換において共通である。
この管理フレームは先のAssociation Requestフレームに限らない。例えば図1の無線端末202が無線端末201に対してIEEE802.11無線LANで選択再送(Block Ack)方式の使用を開始するために、その設定要求としてADDBA Requestフレームという管理フレームを送信し、送信先無線端末がそれを受信するとADDBA Responseフレームを返すが、そのADDBA Requestフレームを受信した場合に、ミリ波確認要求信号を出すようにしてもよい。
またADDBA Requestフレームはトラヒック種別(Traffic IDentifier; TID)ごとに設定を行うものであるため、そのADDBA RequestフレームによるBlock Ack方式の設定が当該無線端末202との初めての接続設定フレームである場合に、ミリ波確認要求信号を出すようにしてもよい。
また、図2のような無線基地局が存在するような構成において、図2では無線端末201しか存在しないが、例えば無線端末202も無線基地局101の構成するBSSに存在する場合、無線端末201と無線端末202が直接送受信を行うために無線端末間で直接交換するフレームがあればそれを用いるのでもよい。
また、上記ミリ波確認要求信号をミリ波MAC処理部21に出力するか否かを、受信したフレームの受信に付随した情報によりフィルタリングするようにしてもよい。例えばフレームを受信した際の受信電力値(RSSI)がある閾値よりも高い場合に、このミリ波確認要求信号を出すようにしてもよい。マイクロ波での受信電力値が設定された閾値よりも低ければ、ミリ波で相手無線端末にフレームを送信しても相手無線端末に到達する確率は低いと予想することができる。従って、ミリ波確認要求の送信を、マイクロ波での受信電力値がある閾値よりも高い場合に制限するようにすれば、カバレッジがマイクロ波よりも狭いミリ波で相手無線端末と送受信できる確度を、制限しない場合よりも上げることができる。
この閾値は、例えば、情報管理ベース(Management Information Base; MIB)値としてマイクロ波MAC管理部12で(例えば保持して)参照できるようにする。またこれはユーザにより値が書き換え可能(調整可能)になっていてもよい。
受信電力値の変わりに信号対雑音電力比(Signal-to-Noise Ratio)を算出、通知することができればこれを用いるようにしてもよい。また受信EVM (Error Vector Magnitude)でもよい。
このようにしてミリ波MAC処理部21は、マイクロ波MAC処理部11からミリ波確認要求信号を受け取ると、その要求信号から無線端末のアドレスA1を抽出し、当該無線端末宛ての送信フレームを生成する(ステップS4)。そして、ミリ波PHY処理部25にミリ波PHY I/Fを介して当該フレームの送信を要求し、ミリ波周波数変換回路26、ミリ波アンテナ28を介して当該フレームを送信する(ステップS5)。ここではミリ波で相手無線端末を確認できるかどうかを当該フレームの応答により調べるために、当該フレームを探索フレームと呼ぶことにする。
探索フレームをミリ波PHY I/Fを介してミリ波PHY処理部25に送信するよう指示を出す際に、ミリ波MAC処理部21は、予め定められた時間で切れるタイマーを設定するようにしてもよい(ステップS5´)。
探索フレームを受信した送信先無線端末(ここでは、無線端末202)は、それに対しての応答フレームを送信する。これは、探索フレームを管理フレームとすると、それに対する送達確認の応答制御フレーム、例えば802.11無線LANでのACKフレームのようなものであってもよいし、送達確認の応答制御フレームとは別に、探索フレームに対する応答の管理フレームであってもよい。例えば、後者の場合ACKフレームを送信した後、管理フレームの探索応答フレームを送信するのが一般的な動作だが、ACKフレームを省略して送信せずに、管理フレームの探索応答フレームを送信するようにしてもよい。
探索フレームを送信した無線端末は、ミリ波用送受信部20でフレームを受信すると、ミリ波PHY処理部25からミリ波PHY I/Fを介して、当該受信フレームをミリ波MAC処理部21に渡す(ステップS6)。
ミリ波MAC処理部21は、当該受信フレームが、探索応答フレームであるかどうかを確認する(ステップS7)。例えば、受信フレームのMACヘッダのアドレスフィールド中の送信元アドレスなどを調べることにより、当該受信フレームの送信元が当該無線端末202であること、当該受信フレームの送信元の無線端末が探索フレームの送信先無線端末であることなどを確認し、当該受信フレームが、探索フレームに対する応答フレームであると確認できた場合に、マイクロ波MAC処理部11にマイクロ波/ミリ波 I/Fを介してミリ波確認応答信号を出す(ステップS8)。
管理フレームの探索応答フレームが送信される場合は、MACヘッダのフレーム種別で管理フレームであるか、さらに期待する管理フレーム種別であるかを確認するようにしてもよい。先のACKフレームのような、送達確認の応答制御フレームの場合なら、固定時間以内(例えばIEEE802.11無線LANでは一般的にSIFS (Short InterFrame Space)という固定時間で応答制御フレームを受ける)に受信したフレームであるか、や、MACヘッダのフレーム種別で制御フレームであるか、さらに期待する制御フレーム種別であるかを確認するようにしてもよい。
なお、前述したように、タイマを設定した場合には、ステップS7で、所望の探索応答フレームを受信した場合にはタイマーをリセットする。そして、ステップS8で、ミリ波確認応答信号を出す。また、ステップS7で、タイマが起動している間に所望の探索応答フレームを受信せず、そのままタイマがタイムアウトした場合には、タイマがタイムアウトした際にミリ波確認応答信号を出す(ステップS8)。
このようにタイマを用いる場合には、ミリ波確認応答信号に図6で示すように、実際にミリ波MAC処理部21で探索応答フレームを受信したか否か、すなわち無線端末A1からミリ波を用いての応答があったか否かの情報(図6では「探索応答の有無」と表現)を合わせて通知する。この探索応答の有無は先のPHY-RXEND.indicationでのステータスを表すコードと同様なものであってもよい。
ここではタイマをミリ波MAC処理部21で設ける場合を示したが、代わりにマイクロ波MAC処理部11においてミリ波確認要求信号を出す際に(ステップS3)、タイマを設定するようにしてもよい。この場合は、ミリ波確認応答信号は所望の無線端末からの探索応答フレームを受信した際に出され、ミリ波MAC処理部21で所望の無線端末からの探索応答フレーム受信がなければ出されない。マイクロ波MAC処理部11のタイマは、ミリ波確認応答信号を受信するとリセットされ、ミリ波確認応答信号を受信せずにタイムアウトした場合には、マイクロ波MAC処理部11はミリ波確認応答信号はなかったとして認識する。
このようにしてマイクロ波MAC処理部11では、ミリ波MAC処理部21からミリ波確認応答信号をマイクロ波/ミリ波 I/Fを介して受け取ると、少なくともミリ波用送受信部20でフレームを受信した際に、ステップS1で前記マイクロ波PHY I/Fを介して取得したアンテナの重み付け情報W1をマイクロ波/ミリ波相関テーブル(以下、簡単に相関テーブルと呼ぶ)に相関情報として格納する(ステップS9)。あるいは、マイクロ波MAC処理部11では、ミリ波MAC処理部21からミリ波確認応答信号をマイクロ波/ミリ波 I/Fを介して受け取ると、ステップS9において、W1に対応する無線端末(ここではアドレスA1の無線端末)からミリ波用送受信部20でフレームを受信したか否かの情報を、相関情報として相関テーブルに格納するようにしてもよい。
この相関テーブルは、マイクロ波とミリ波での無線リンクの相関を把握するための相関情報を格納するためのものである。マイクロ波用送受信部10でフレームを受信した際にその受信フレームのアンテナの重み付け情報W2をW1と比較し、その相関が高い場合には当該フレームの送信元無線端末とミリ波でも通信が行える可能性が高いと期待できるように加工処理した情報であってもよい。例えばある幅を持つ重み付け情報内ではミリ波での応答フレームを受信する確率がいくらか、というような情報の保持の仕方も考えられる。
相関情報は、第1の送受信器で通信が行える場合に第2の送受信器で通信が行える可能性の有無または可能性の高さを第1のMAC処理部11が決定するための情報である。
この相関テーブルはマイクロ波MAC管理部12に格納する。
ミリ波確認応答信号は、ミリ波アクセス制御部23からミリ波MAC管理部22に通知され、ミリ波MAC管理部22からマイクロ波MAC管理部12に通知されるようにしてもよいし、ミリ波アクセス制御部23からマイクロ波アクセス制御部13に通知され、マイクロ波アクセス制御部13からマイクロ波MAC管理部12に通知されるようにしてもよい。
上述したように、マイクロ波用送受信部10で(例えば無線端末202から送信された)フレームを受信してから、当該フレームの送信元無線端末にミリ波用送受信部10を用いて探索フレームを送信し、その応答フレームを受信して相関テーブルを蓄積していく手順を複数回、(例えばマイクロ波で異なる無線端末からフレームを受信した場合に)行うようにしてもよい。このようにして、相関テーブルの情報量を増やすことにより、マイクロ波用送受信部10で例えば新たな無線端末からフレームを受信した際に、ミリ波用送受信部20での通信リンクの確立の可能性を予測することができる。
マイクロ波用送受信部10でのアンテナの重み付け情報での相関値の閾値を定めておき、マイクロ波用送受信部10で異なる無線端末からフレームを受信した場合に通知されたアンテナの重み付け情報W2が、先に取得した重み付け情報W1と当該相関値の閾値よりも高ければ、上述のミリ波での探索(ステップS3〜ステップS9)は行わず、当該相関値の閾値よりも低ければ、ミリ波での探索を行うようにすれば、マイクロ波でのアンテナの重み付け情報に対するミリ波の通信リンク確立の可能性に関する情報を全体的に効率よく把握することができる。
上述のような手段により相関テーブルが得られた状態で、次に、別の無線端末からマイクロ波用送受信部10でフレームを受信した場合について図7を用いて説明する。
新たに別の無線端末、例えば無線端末203からマイクロ波用送受信部10でフレームを受信するとする。その場合、上述同様に受信したフレームと当該受信の際に用いたアンテナの重み付け情報W2を含む受信に付随した情報の通知を、マイクロ波MAC処理部11はマイクロ波PHY処理部15からマイクロ波PHY I/Fを介して受け取る(ステップS11)。
すると、マイクロ波MAC処理部11では、送信元無線端末のアドレスを抽出し、マイクロ波/ミリ波の相関情報を保持する上記相関テーブルを参照して、当該送信元無線端末とミリ波で通信が可能かどうかを判断する(ステップS12)。
例えば上記のようにマイクロ波でのアンテナの重み付け情報全体に対してミリ波での同一無線端末に対する応答の有無の確認手順を踏んだとする。
マイクロ波用送受信部10でのアンテナの重み付けを角度的なイメージで捉え、当該アンテナの重み付けに対してミリ波用送受信部20での応答があった場合を相対的に表現すると図8(a)のようになるとする。破線で示した部分がマイクロ波用送受信部10の重み付け全体を表現しているとすると、斜線で示した部分がミリ波用送受信部20での応答があった部分というイメージである。斜線の領域は先の情報取得手段により、当然連続的である必要はない。あるいは前述のように応答確率として把握し、特にある確率以上であった場合が斜線で示されていると捉えるようにしてもよい。
さらにマイクロ波用送受信部10での受信フレームのアンテナの重み付け情報に対し、例えば図8(b)のように中心軸に近いほど受信電力が高いというように受信電力値の関係も表現するようにして、ミリ波用送受信部20での応答があった場合をマッピングするようにしてもよい。
ミリ波通信においては、アンテナの設計に依存して無指向(omni-directional)送受信はできず、準無指向(quasi-omni-directional)になることが考えられ、その場合、このようにマイクロ波では全般的に送受信できるとしても、ミリ波では送受信できる方向が制限される。
マイクロ波送受信部10で受信したフレームの送信元無線端末、例えば無線端末203のアドレスをここでは便宜的にA2と表現すると、マイクロ波送受信部10でのアンテナの重み付け情報W2(また図8(b)のように受信電力値も加味するようにしてもよい)と上記のようなマイクロ波/ミリ波の相関情報から、無線端末203とミリ波で通信が可能かどうかを判断する。ここで前述のようにマイクロ波での受信フレームの受信電力などを加味したフィルタリング後に、相関情報を用いてミリ波で通信が可能か判断するようにしてもよい。
ステップS12で可能と判断した場合には、ミリ波通信開始要求信号をマイクロ波/ミリ波 I/Fを介してミリ波MAC処理部21に出力する(ステップS13)。このミリ波通信開始要求信号では、無線端末203のアドレスA2を合わせて通知する。
ミリ波MAC処理部21は上記ミリ波通信開始要求信号を受け取ると、送信先アドレスをA2とするフレームを生成し(ステップS14)、ミリ波PHY I/Fを介して当該フレームをミリ波PHY処理部25に送信指示する(ステップS15)。
このフレームは、例えば無線端末203(アドレスA2)とミリ波での接続設定を開始するための管理フレームである。IEEE802.11無線LANでの例えばAssociation Requestフレームなどに相当する。そして設定開始に対する応答フレーム(IEEE802.11無線LANでのAssociation Responseフレームなどに相当)を無線端末203から受信し、接続設定が成功すると接続完了したということでミリ波用送受信部20を用いて当該無線端末203と通信を開始する。
例えばこのミリ波での接続設定が成功しなければ、ミリ波MAC処理部21からマイクロ波/ミリ波 I/Fを介してマイクロ波MAC処理部11に当該無線端末203とのミリ波での接続設定が失敗したことを通知するようにしてもよい。
そしてマイクロ波MAC処理部10では、このようなミリ波での接続結果に関するフィードバック情報を用いるようにしてもよい。例えば設定に失敗した無線端末情報(少なくとも無線端末のアドレス情報)をテーブルなどに保持するようにし、マイクロ波/ミリ波の(相関テーブルに登録されている)相関情報に基づきミリ波で通信可能かどうかを判断する前に、無線端末のアドレスが当該テーブルにあるかどうかを確認し、ある場合にはミリ波使用判断は行わず、ない場合にミリ波使用判断を行うようにする。
また、ある一定期間が経過した後は、このフィードバック情報を削除し、再度ミリ波使用可能かの判断を行い、使用可と判断した場合にはミリ波での接続設定を再度トライするようにしてもよい。
これらは共通MAC管理部3を介した処理にしてもよい。
例えば、ミリ波での接続結果に関するフィードバック情報は共通MAC管理部3に通知するようにし、マイクロ波MAC処理部11はミリ波使用判断を行う前に、一旦対象となる無線端末に関してのフィードバック情報があるかを共通MAC管理部3に問い合わせ、ミリ波接続失敗の履歴がある場合にはミリ波使用判断を行わず、ない場合にミリ波使用判断を行う。
このようにすることにより、LLCから共通MAC処理部2にデータが渡された場合に、共通MAC処理部2は共通MAC管理部3に当該フィードバック情報を問い合わせ、マイクロ波用送受信部10からマイクロ波で、送信先無線端末にデータをフレームとして送信するようにするか、ミリ波用送受信部20からミリ波で、送信先無線端末にデータをフレームとして送信するようにするかを判断することもできる。
あるいは、共通MAC管理部3は共通MAC処理部2の中に内包され、ミリ波での接続結果に関するフィードバック情報は共通MAC処理部2で直接参照し、データをマイクロ波あるいはミリ波どちらで送信するかの振り分けの判断に用いるようにしてもよい。
マイクロ波での受信フレームをトリガとしてこのようにミリ波接続設定の試行を行い、ミリ波接続のフィードバック情報を得れば、ミリ波で確立されている無線端末間の通信リンク情報が各無線端末で保持できることになり、そのミリ波での通信リンク情報を無線端末間で交換することによって、ミリ波でマルチホップを実現することもできる。このミリ波での通信リンク情報は例えばマイクロ波MAC処理部11(特にマイクロ波MAC管理部12)で保持するようにして、マイクロ波で当該管理情報を無線端末間で交換するようにすれば、マイクロ波で、ミリ波よりも広い通信エリア内の複数の無線端末に情報を流すことができる。
ミリ波で確立された無線端末間の通信リンク情報を、他の無線端末からマイクロ波で受信すると、マイクロ波用送受信部10(好ましくはマイクロ波MAC管理部12)からマイクロ波/ミリ波 I/Fを介してミリ波用送受信部20(好ましくはミリ波MAC管理部22)に通知され、ミリ波でのフレーム生成に用いられるようにしてもよい。例えば図1で無線端末201、202以外に203もいるとし、無線端末202と203の間がミリ波で接続可能だという情報を無線端末202からマイクロ波で受けると、無線端末201は無線端末203へのデータを送信するに当たり、ミリ波アクセス制御部23において無線端末202経由で無線端末203に送信するようなミリ波でのフレームを生成することができる。
あるいは、マイクロ波用送受信部10から共通MAC管理部3などマイクロ波/ミリ波共通で情報を管理する場所に通知するようにし、LLCから送信するデータを受け取ると、そこでミリ波でのマルチホップが可能か判断し、可能ならミリ波用送受信部20にデータを渡すようにしてもよい。
さらに、無線端末201が、無線端末202との間の上記相関情報(相関テーブル)を有する場合、この相関情報を用いて、無線端末203へデータ送信するに当たり、無線端末202経由で送信する場合に無線端末201と無線通信端末202の間がミリ波で通信可能か否かを決定するようにしてもよい。
なお、ここまでは、マイクロ波/ミリ波の相関テーブルがある場合を説明してきた。しかし、例えば、前記タイマ処理などによりミリ波での応答がなかった、もしくはミリ波探索をまだしていない状態ではこの相関テーブルはないため、ミリ波で通信が可能かどうかの判断自体をスキップして、マイクロ波で通信を行うと判断することになる。
(効果)
カバレッジエリアが広い周波数帯の送受信部(例えばマイクロ波用送受信部10などの第1の送受信器)で受信したフレームの送信元端末に、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部(例えばミリ波用送受信部20などの第2の送受信器)でフレームを送信し、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での応答フレームの受信情報を取得することにより、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での受信情報と、第1の送受信器での受信情報の相関情報を取得することができる。
これによりカバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部での相手無線端末からのフレームの受信状況から、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部で当該相手無線端末からの送信の受信状況を予測することができるようになる。従って、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部でフレームを受信した際に、当該フレームの送信元無線端末とカバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部を用いて通信ができるかを判断することができる。
当該予測は、またカバレッジエリアは広いが例えば狭帯域しか確保できず、伝送レートの低い周波数帯の送受信部を用いるか、カバレッジエリアは狭いが広帯域が確保でき、伝送レートの高い周波数帯の送受信部を用いるか、の選択判断に用いることができる。
そして、当該判断を行うことによってカバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での通信リンク確立の確度を上げることができる。
またその後も同様の手法を用いることにより、継続して当該判断の情報を更新することができる。
相関情報がない場合には、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信器を用いて通信を行うと判断することにより、安定した通信を確保することができる。
さらにカバレッジエリアの広い周波数帯と、カバレッジエリアの狭い周波数帯を具体化するにより、無線端末の動作を具体化することができる。
カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部により送信されたフレームへの応答フレームを所定の時間内に受信したか否かの情報を受信情報として用いることにより、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部で全方向から信号を受信できない、もしくはカバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部で通信できても必ずしもカバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での通信ができない可能性がある場合に、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での通信が確立できるかどうかを判断することができる。
所定の時間内に受信しなかった場合に、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部を用いて通信を行うと判断し、安定した通信を確保することができる。
また、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部で受信したフレームに対し、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部でフレームを送信するに先立ち、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部での受信電力など受信時の状況によりフィルタリングを行うことにより、カバレッジエリアの狭い周波数帯の活用度がある程度保証される情報のみを用いて、通信リンク確立の確度をさらに上げることができる。またこれにより、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部で失敗する確率の高い送信を抑制し、動作を効率化することができるとともに、保持する情報量を抑えることができる。その結果、消費電力を抑えることもできる。
相関情報の取得では、既に取得したアンテナの重み付けなどの情報との相関に対して閾値によりフィルタリングすることで、冗長な動作を削減し、効率的にカバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部を用いた通信リンク確立の可能性に対する情報を全体的に効率的に把握することができる。
また、このような各無線端末でのカバレッジエリアの狭い周波数帯での接続設定の試行状況に関し、カバレッジエリアの広い周波数帯を用いて情報交換し共有することにより、カバレッジエリアの狭い周波数帯でのマルチホップの実現を効率化することができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、主に、第1の実施形態と異なる部分を説明する。
第2の実施形態では、ミリ波用送受信部20でのフレーム受信時にもマイクロ波用送受信部10と同様に受信に用いられたアンテナの重み付け情報を取得し、それをマイクロ波MAC処理部11に通知する点が、さらに追加されている。
図9を用いてマイクロ波/ミリ波の相関情報を保持する相関テーブルを生成する場合を説明する。
第1の実施形態では、ミリ波用送受信部20を用いてアドレスA1の無線端末の探索を行う場合に、受信フレームを受け取ると、特にそのフレーム受信時のミリ波アンテナ28でのアンテナの重み付け情報に関しては触れなかった。
しかし、第2の実施形態では、図9に示すように、ミリ波アンテナ28でのアンテナの重み付け情報w1をミリ波PHY I/Fを介してミリ波MAC処理部21に通知する(ステップS16)。この場合、ミリ波アンテナ28にもマイクロ波アンテナ18と同様、アンテナ重み付け計算部を有する。
ミリ波MAC処理部21は、受信フレームが探索応答フレームであるかどうかを確認する(ステップS17)。例えば、受信フレームのMACヘッダのアドレスフィールドを調べることにより、当該受信フレームの送信元が無線端末が当該無線端末202であること、当該受信フレームの送信元の無線端末が探索フレームの送信先無線端末であることなどを確認し、当該受信フレームが、探索フレームに対する応答フレームであると確認できた場合に、マイクロ波MAC処理部11にマイクロ波/ミリ波 I/Fを介してミリ波確認応答信号を出力するとともに、取得したアンテナの重み付け情報w1を通知する(ステップS18)。
管理フレームの探索応答フレームが送信される場合は、MACヘッダのフレーム種別で管理フレームであるか、さらに期待する管理フレーム種別であるかを確認するようにしてもよい。先のACKフレームのような、送達確認応答フレームの場合なら、固定時間以内に受信したフレームであるか、や、MACヘッダのフレーム種別で制御フレームであるか、さらに期待する制御フレーム種別であるかを確認するようにしてもよい。
ここで、アンテナの重み付け情報w1は、受信フレームと同時にミリ波PHY処理部25からミリ波MAC処理部21に渡さずに、前述のような探索応答フレームであるかの確認を行い、探索フレームに対する応答フレームであると決定された場合に、ミリ波MAC処理部21からミリ波PHY I/Fを介してミリ波PHY処理部25に当該フレームを受信した際のアンテナの重み付け情報w1を要求し、取得するようにしてもよい。
また、探索応答フレームを受信する際のアンテナの重み付け情報w1は1回行うのではなく、何回か探索フレームを送信して探索応答フレームを受信するようにして、例えば平均的な重み付け情報など統計的な情報を取得するようにしてもよい。
第1の実施形態と同様、タイマを設定した場合に、ステップS17で、所望の探索応答フレームを受信した場合にはタイマをリセットする。あるいは、複数回フレームを交換して統計的にアンテナの重み付け情報w1を取得するような場合、ステップS18では、タイマが切れてから、ミリ波確認応答信号をマイクロ波MAC処理部11に出すようにする。
タイマが起動している間に所望の探索応答フレームを受信せず、そのままタイマがタイムアウトした場合には、応答がなかった旨をマイクロ波MAC処理部11に通知する(ステップS18)。これは先のミリ波確認応答信号で、アンテナの重み付け情報をなし(Null; ヌル)として出すようにしてもよいし、エラーコードを入れるようにしてもよい。
マイクロ波MAC処理部11では、ミリ波MAC処理部21からミリ波確認応答信号をマイクロ波/ミリ波 I/Fを介して受け取ると、その中の有効なアンテナの重み付け情報w1と、ステップS1で前記マイクロ波PHY I/Fを介して取得したアンテナの重み付け情報W1を、相関テーブルに格納する(ステップS19)。
この相関テーブルは、マイクロ波とミリ波での受信波の相関を把握するための相関情報を格納するためである。ここでの相関情報とは、無線端末が第1のMAC処理部11が(第2の送受信器で通信が行える可能性の判断と、可能と判断した場合に)第2の送受信器での通信時のアンテナの重み付け情報を予測するための情報である。相関情報は、上記のように、アンテナの重み付け情報であるW1とw1である必要はない。例えば、マイクロ波用送受信部10でフレームを受信した際に、その受信フレームのアンテナの重み付け情報W2をW1と比較し、その相関が高い場合には、当該フレームの送信元無線端末とミリ波で送受信を行った際にも、アンテナの重み付け情報がw1と相関が高いと期待できるように加工処理した情報を相関情報として用いてもよい。
ミリ波用送受信部20から有効なアンテナの重み付け情報w1が得られる場合にのみ、アンテナの重み付け情報W1とw1を保持するようにし、有効なアンテナの重み付け情報w1が得られない場合は、当該情報は利用しない。これは、ミリ波で所望の無線端末からの探索応答フレームが受信できない場合に、その原因がマイクロ波では通信できる距離にあるがミリ波では通信できない距離にあるためなのか、一時的に直進性の強いミリ波通信リンク上に障害物があったためなのか、あるいは送信先無線端末がミリ波での送受信に(少なくとも探索フレーム送信時に)対応していなかったからなのか、など特定できないためである。
この相関テーブルは、マイクロ波MAC管理部12に格納する。ミリ波での探索応答フレームのアンテナの重み付け情報w1は、ミリ波アクセス制御部23からミリ波MAC管理部22に通知され、ミリ波MAC管理部22からマイクロ波MAC管理部12に通知されるようにしてもよい。または、ミリ波アクセス制御部23からマイクロ波アクセス制御部13に通知され、マイクロ波アクセス制御部13からマイクロ波MAC管理部12に通知されるようにしてもよい。
上記のような、マイクロ波用送受信部10でフレームを受信してから当該フレームの送信元無線端末への探索フレームをミリ波用送受信部20を用いて送信し、その探索応答フレームを受信して、相関テーブルにアンテナの重み付け情報を蓄積していく手順を、複数回、例えばマイクロ波で異なる無線端末からフレームを受信した場合にその都度行うようにしてもよい。このようにして、マイクロ波/ミリ波の相関テーブルの情報量を増やすことにより、マイクロ波用送受信部10で、新たな無線端末からフレームを受信した際に、ミリ波用送受信部20のアンテナの重み付け情報を予測することができる。
例えば、アンテナの重み付け情報での相関値の閾値を定めておく。そして、マイクロ波用送受信部10で異なる無線端末からフレームを受信した場合に、通知されたアンテナの重み付け情報W2と、先に取得した(相関テーブルに登録されている)W1との相関値が当該閾値よりも高ければ、上記ミリ波でのアンテナの重み付け情報w2を取得する手順(図9のステップS3〜ステップS19)は行わない。相関値が当該閾値よりも低ければ、上記取得手順(図9のステップS3〜ステップS19)を行い、ミリ波でのアンテナの重み付け情報w2を取得するようにする。この結果、マイクロ波でのアンテナの重み付け情報に対するミリ波のアンテナの重み付け情報を全体的に効率的に把握することができる。
次に、マイクロ波/ミリ波の相関情報を保持する相関テーブルが、マイクロ波MAC処理部11にあり、それを用いて新たに別の無線端末からマイクロ波用送受信部10でフレームを受信した際に、当該無線端末とミリ波での通信が可能かどうか判断を行う場合について図10を用いて説明する。
第1の実施形態(図7参照)と同様、フレームを受信し、その受信の際のアンテナの重み付け情報はW2であると通知されると(ステップS11)、ステップS22へ進み、マイクロ波MAC処理部11では、受信フレームの送信元無線端末アドレスを抽出し、前記相関テーブルを用いてミリ波通信が可能か判断を行う。ここでは受信フレームの送信元無線端末のアドレスをA2と表す。そして、通知されたW2から(当然この際、第1の実施形態と同様に、受信電力などを加味してもよい)A2に対してミリ波通信が可能かどうかを判断する。例えばW2と相関の高い相関テーブル内のアンテナの重み付け値W1があるか調べ、そのようなW1がある場合に、W1の受信フレームに対してミリ波用送受信部20から有効なw1を通知されていたかを調べる。そのようなw1がある場合には、ミリ波通信可能と判断する。そしてW2に対応するミリ波通信でのw2を、W1とw1の情報から予測する。
アドレスA2の無線端末に対し、上記のようにしてミリ波通信可能と判断されると予測されたミリ波通信でのアンテナの重み付けw2を含むミリ波通信開始要求信号が、マイクロ波MAC処理部11からマイクロ波/ミリ波 I/Fを介してミリ波MAC処理部21に通知される(ステップS23)。
ミリ波MAC処理部21では、ステップS24〜ステップS25において、この通知されたw2情報に基づき、アドレスA2の無線端末にフレームを送信することによって、ミリ波で必要なアンテナの重み付けの調整を予め行うことになる。
また、ミリ波で、その後アドレスA2の無線端末と接続設定を行い、フレーム交換を行う中で、ミリ波でのアンテナの重み付けを再計算するようにしてもよい。この場合、ミリ波でのフレーム交換により再計算したアンテナの重み付けをw2_newとすると、当該w2_new情報をマイクロ波/ミリ波 I/Fを介して、マイクロ波MAC処理部11に通知するようにすれば、マイクロ波MAC処理部11で管理する相関テーブルを更新することができる。例えばw2_newとマイクロ波MAC処理部11から通知されたw2を、マイクロ波MAC処理部11に通知するようにすれば、前記相関テーブルのw2をw2_newに更新することができる。あるいはw2_newとA2情報をマイクロ波MAC処理部11に通知するようにしても、マイクロ波MAC処理部11でA2から導出した予測値w2を再特定し、前記相関テーブルのw2をw2_newに更新することはできる。あるいは、ミリ波通信開始要求信号に対するミリ波通信開始応答信号をマイクロ波MAC処理部11に出力し、その際にw2_newを通知するようにすれば、当該ミリ波通信開始要求信号と対応した無線端末のアドレスはA2であること、そこから予測値w2を再特定し、更新することができる。
以上、アンテナの重み付け情報を用いて説明したが、例えばミリ波用送受信部20でセクタアンテナを用いている場合には、どのセクタを用いているかを通知してもよい。
セクタアンテナは、指向性のある複数のアンテナ素子を並べて、360°あるいは送受信可能範囲内の全方位を網羅する指向性が得られるように構成され、そのうち1つのアンテナ素子を選択して使用することにより、希望する方向の指向性を得ることができる。360°あるいは送受信可能範囲内の全方位は、各アンテナ素子が信号を送受信する角度によって分割されている。1アンテナ素子に割り当てられている角度をセクタと呼ぶ。
探索応答フレームを受信したときに、セクタアンテナのうち使用されたセクタのセクタ番号(sector index)をセクタアンテナ情報として、ミリ波MAC処理部21は取得し、それを図9のステップS18で、マイクロ波MAC処理部11に通知する。マイクロ波MAC処理部11では、マイクロ波アンテナ18とミリ波(セクタ)アンテナ28との相関を示す相関情報を相関テーブルに登録する。そして新たなフレームをマイクロ波用送受信部10で受信した際に、ミリ波通信が可能と判断した場合にはミリ波でのセクタ番号を予測する。
(効果)
カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部と、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での複数アンテナの重み付け情報を相関情報として保持することにより、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部で受信したフレームのアンテナの重み付け係数から、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での受信時のアンテナの重み付け係数を予測することができるようになる。従って、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部でフレームを受信した際に、当該フレームの送信元無線端末とカバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部を用いて通信ができるかを判断することができる。
そして、当該判断を行うことによってカバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での通信リンク確立の確度を上げることができる。
また、その後も同様の手法を用いることにより、継続して当該判断の情報を更新することができる。
また、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での重み付け係数が予測できることにより、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部で予め準最適な重み付け係数を用いた送信をすることができる。
カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部でのアンテナの重み付け情報の代わりに、フレームを受信した際の受信セクタアンテナ情報を用いるようにすれば、ミリ波でのセクタアンテナの構成にも対応できる上、さらに上記効果に加えて扱う情報を単純化し、保持する情報量を削減することができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態について、第1の実施形態や第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
第3の実施形態が第1の実施形態や第2の実施形態と異なる点は、アンテナの重み付け情報の代わりに到来角推定を行い、角度情報を用いることである。
特に、第1の実施形態で記載したようにミリ波用送受信部20で準無指向(quasi-omni-directional)で送受信可能角度幅に制限がある場合を想定する。
図11、図12を用いて、第3の実施形態に係る無線端末の動作を説明する。図11は無線端末の動作を示したものであり、図12は、図11に示した各動作を補足説明するためのものである。
図12(a)に示すように、360°全方位のうちミリ波で送受信可能な予め定められた角度幅(送受信可能角度幅)をδとすると、マイクロ波MAC処理部11は、当該δ情報を保持している(ステップS31)。ここではマイクロ波MAC処理部11が保持する場合を例にとり説明するが、共通MAC管理部3がある場合には、ここで、あるいは直接ミリ波MAC管理部22を参照して、当該δ情報を取得できるようにしてもよい。当然、ミリ波が準無指向(quasi-omni-directional)ではなく無指向で送受信できる場合にはδは360°であり、δ情報を保持するというステップS31は省略、以降δを360°として扱えばよい。
マイクロ波PHY I/Fを介して受信したフレームが渡される際に、第3の実施形態では受信時のアンテナの重み付け情報W1の代わりに到来角推定値Θ1を合わせて通知するようにする(ステップS32)。
マイクロ波アンテナ18は、アンテナ重み付け計算部の代わりに到来角推定部を有する。しかし到来角推定部とアンテナ重み付け計算部はほぼ等価で先の例のようにアンテナの重み付け情報を到来角推定部では角度情報に変換して認識できればよい。ここで到来角推定部では到来角推定用の基準軸(到来角推定用基準軸)を持つこととする。到来角推定用基準軸は、フレームを受信した際に、このフレームの到来方向をこの軸を基準とした角度で表すために用いられる。
第3の実施形態では、このマイクロ波アンテナ18の到来角推定用基準軸に対して、ミリ波での送受信可能角度幅の相対的な位置を把握することを試みるものである。ここでは、アドレスA1の無線端末からマイクロ波でフレームを受信した場合、そのフレーム受信が到来角推定用基準軸に対してΘ1である様子を図12(b)に示している。
マイクロ波MAC処理部11は、マイクロ波PHY I/Fを介して受信したフレームとその受信時の到来角推定値Θ1とを含む、受信に付随した情報を受け取ると、受信フレームの送信元無線端末のアドレス(ここではA1)を抽出する(ステップS33)。そして、前述の他の実施形態と同様にして、アドレスA1情報を含むミリ波確認要求信号を、マイクロ波/ミリ波 I/Fを介してミリ波MAC処理部21に渡す(ステップS34)。これは図12(c)に当たる。
ミリ波MAC処理部21は、当該ミリ波確認要求信号を受け取ると、アドレス情報としてのA1を抽出し、アドレスA1の無線端末宛ての探索フレームをミリ波で送信する(ステップS35〜ステップS36)。図12(d)には、ミリ波で送受信可能な角度全てを使ってアドレスA1宛ての探索フレームを送信している様子を示している。
その後、ミリ波でフレームを受信すると(ステップS37)、受信したフレームとともに受信時の到来角推定値θ1を含む受信に付随する情報が、ミリ波MAC処理部21にミリ波PHY I/Fを介して渡される。ミリ波アンテナ28にも到来角推定部を有しており、θ1はミリ波アンテナ28での到来角推定用基準軸に対する角度である。そして、ステップS38において、この受信フレームがアドレスA1の無線端末からの探索応答フレームであるかの確認を行う。
受信フレームが図12(e)に示すように、アドレスA1の無線端末からのミリ波でのフレームである場合には、ミリ波での到来角推定値θ1を図12(f)のように、マイクロ波/ミリ波 I/Fを介してマイクロ波MAC処理部11にミリ波確認応答信号として通知する(ステップS39)。
マイクロ波MAC処理部11では、ミリ波確認要求信号とミリ波確認応答信号を対応させ、先のミリ波での送受信可能角度幅δ、マイクロ波での到来角推定値Θ1、ミリ波での到来角推定値θ1から、図12(g)のように、マイクロ波用送受信部10の到来角推定基準軸に対してのミリ波用送受信部20の送受信可能な(相対的な)角度範囲を把握することができる(ステップS40)。
なお、タイマの動作などに関しては第1の実施形態と同様である。
以上の手順が、マイクロ波MAC処理部11で、ミリ波で送受信可能な範囲を把握する方法である。
例えば、無線端末の筐体としてマイクロ波とミリ波各々の到来角推定用の基本軸を共通にするように設計できるのであれば、マイクロ波MAC処理部11で、ミリ波で送受信可能な範囲を把握することができる。
また、近年の無線端末には、ジャイロを搭載するものが増えてきたが、ある状況でのジャイロ情報を基本にして、マイクロ波での到来角推定用基準軸とミリ波での到来角推定用基準軸の相対的な関係を把握するようなことができれば、これによってもマイクロ波MAC処理部11でミリ波での送受信可能範囲を把握することができるだろう。
上記のように、マイクロ波用送受信部10の到来角推定基準軸に対する、ミリ波用送受信部20の送受信可能角度範囲を把握することができる状態で、マイクロ波用送受信部10での受信フレームに基づき、ミリ波用送受信20を用いた通信を当該フレームの送信元無線端末と行えるか判断する動作を、図13及び図14を用いて説明する。図13は、無線端末の動作を説明したものであり、図14は図13に示す各動作を補足説明するためのものである。
マイクロ波用送受信部10の到来角推定基準軸に対する、ミリ波用送受信部20の送受信可能角度範囲を把握することができる状態を図14(a)に示す。
図14(b)に示すように、アドレスA2の無線端末からのフレームをマイクロ波用送受信部10で受信し、その到来角推定値がΘ2とすると、マイクロ波MAC処理部11では、マイクロ波PHY I/Fを介して受信フレームと受信時の到来角推定値Θ2を含む受信に付随した情報(受信情報)を受け取る(ステップS51)。そして当該Θ2からミリ波用送受信部20で通信を試みた際に送受信可能角度幅δの範囲内になりそうかを、先の情報を用いて判断する(ステップS52)。
例えば図14(b)に示すように、アドレスA3の無線端末から到来角推定値がΘ3であるようなフレームを受信した場合には、破線で表されているミリ波での送受信可能角度範囲ではない。従って、ミリ波用送受信部20で通信を試みてもアドレスA3の無線端末からのフレームは、ミリ波送受信可能角度範囲に収まらない(NG)と判断する。図14(b)に示すように、アドレスA2の無線端末からフレームを受信した場合には、ミリ波送受信可能角度範囲に受信フレームは来ると予想される(OK)。この場合、図14(c)に示すように、マイクロ波/ミリ波I/Fを介して、ミリ波MAC処理部21に、ミリ波通信開始要求信号をアドレス情報A2を含めて出力する(ステップS53)。
これを受けて、ミリ波MAC処理部21は、図14(d)に示すように、ミリ波送受信可能角度範囲に、ミリ波での受信フレームが来ると予想されるアドレスA2の無線端末に対して、第1の実施形態と同様に、フレームを生成し、これを送信する(ステップS54〜ステップS55)。
図14(d)に示すように、ミリ波でアドレスA2の無線端末からフレームを受信する場合に、さらに、ミリ波での受信フレームの到来角推定値(ここではθ2とする)を、ミリ波MAC処理部21はミリ波PHY I/Fを介して取得する。この到来角推定値θ2を、マイクロ波/ミリ波 I/Fを介してマイクロ波MAC処理部11に通知して、マイクロ波MAC処理部11で保持する、ミリ波用送受信部20の送受信可能角度範囲またはこれに関する情報を更新するようにしてもよい。例えば、先のミリ波送受信範囲を把握する場合と同様、ミリ波通信開始要求信号に対し、ミリ波通信開始応答信号をマイクロ波MAC処理部11に出力し、その際にθ2を通知する。これにより、ミリ波通信開始要求信号と対応した無線端末のアドレスはA2であること、従ってマイクロ波MAC処理部11でアドレスA2の無線端末からのミリ波での到来角推定値がθ2であること、マイクロ波での到来角推定値はΘ2であることから、δ、Θ2、θ2より、マイクロ波MAC処理部11で保持される、ミリ波用送受信部20の送受信可能角度範囲に関する情報を更新することができる。
いずれの実施形態にも適用できることだが、同一名の要求信号と応答信号が複数交換される場合に、要求信号と応答信号の対応を把握するために、信号に固有の整理番号を入れるようにして、整理番号とそのときの信号内に入れたパラメータ(例えば無線端末のアドレスなど)を保持するテーブルを用意し、管理するようにしてもよい。
あるいは、マイクロ波MAC処理部11では、管理テーブルなどにより無線端末アドレス(ここではA2)とマイクロ波での受信の到来角推定値(ここではΘ2)を対応させて管理できるようにしてもよい。この場合、ミリ波通信開始応答信号でミリ波での到来角推定値を通知する場合に、到来角推定を行ったフレームの送信元無線端末のアドレスも合わせて通知するようにする。その結果、マイクロ波MAC処理部11では、ミリ波通信開始応答信号のアドレス(ここではA2)から、マイクロ波での到来角推定値(ここではΘ2)を把握し、当該値とミリ波での(通知された)到来角推定値(ここではθ2)とδとから、マイクロ波MAC処理部11で保持する、ミリ波用送受信部20の送受信可能角度範囲に関する情報を更新することができる。
ここで、ミリ波アンテナ28では、第2の実施形態で示した例のように、セクタアンテナを用い、セクタ番号をミリ波確認応答信号での到来角推定値θ1の代わりに通知してもよい。この場合、マイクロ波MAC処理部11では、δ、Θ1とこのセクタ番号により、ミリ波での送受信可能角度範囲を把握する。また同様に、ミリ波通信開始応答信号での到来角推定値θ2の代わりにフレームを受信したセクタ番号を通知してもよい。
第2の実施形態のように、Θ2に対して予めマイクロ波でミリ波でのθ2を予測し、この予測されたθ2をミリ波通信開始要求信号で通知するようにすれば、ミリ波でθ2に基づき予めアンテナの重み付けの調整を行うことができる。
(効果)
カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部で受信したフレームの送信元端末に、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部でフレームを送信し、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での応答フレームの受信情報を取得することにより、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部の到来角推定用基準軸上に、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部の送受信可能角度範囲をマッピングすることができる。
これによりカバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部での相手無線端末からのフレームの受信状況から、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部の送受信可能角度範囲で、当該相手無線端末からの送信が受信できるかを予測することができる。すなわち、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部で相手無線端末からのフレームを受信した際に、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部を用いて当該相手無線端末と通信ができるかを判断することができる。
そして当該判断を行うことによってカバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での通信リンク確立の確度を上げることができる。
このようなマッピング情報を得ることは特にカバレッジエリアの狭い周波数帯が準無指向となるような、送受信方向が制限される場合に有効である。
カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での受信情報を、さらに到来角推定情報とすることにより、カバレッジエリアの広い周波数帯での送受信部の到来角推定用基準軸上にカバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での送受信可能角度範囲をより精度高くマッピングすることができる。
これにより、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部での相手無線端末からのフレームの受信状況から、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部の送受信可能角度範囲で当該相手無線端末からの送信を受信できるかをより精度高く予測することができる。すなわち、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部でフレームを受信した際に、当該フレームの送信元無線端末と、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部を用いて通信ができるかの判断の確度をさらに高めることができる。
そして当該判断を行うことによってカバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部での通信リンク確立の確度をより上げることができる。
また、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部でも、同様に複数のアンテナを重み付けにより送信の調整が可能ならば、当該カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部での到来角推定に用いたアンテナの重み付け情報をもとに、カバレッジエリアの広い周波数帯の送受信部で受信したフレームの送信元無線端末に、カバレッジエリアの狭い周波数帯の送受信部を用いて通信を行う際に前記重み付けを参考にして効率的に通信を開始することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態について、第1の実施形態に基づき、特に補足する点を中心に説明する。
第1の実施形態では、ミリ波確認要求信号を出す際に、受信情報として受信電力を用いる。そして、ある閾値以上の受信電力の場合にミリ波確認要求信号を出し、そうでなければミリ波確認要求信号を出さない、というようにフィルタリングすることを記載した。このようにすることで、マイクロ波通信よりもミリ波通信の方が電波特性的にエリアのカバレッジが狭いため、マイクロ波用送受信部10で受信したフレームの受信電力が弱いものであれば、ミリ波通信ではさらに相手無線端末からのフレーム受信時の電力は弱くなると予想され、また、無線リンクでの送受信の特性がほぼ対称であるとすれば、送信でも相手無線端末に探索フレームが到達し、正常に受信される確率は低いと予想することができ、ミリ波での通信の確度が低い場合に無駄になる可能性の高いミリ波での通信試行を阻止することができる。
第4の実施形態では、このフィルタリング動作に関して補足する。なお当該フィルタリング動作はミリ波確認要求信号を出す際のみならず、ミリ波通信開始要求信号を出す際にも適用することができる。
802.11無線LANなどでは、フレームが誤りのない正常な状態で受信されたかを判断するためにFrame Check Sequence (FCS)をフレームの末尾に入れる。例えばIEEE802.11無線LANでの一般的なMACフレームフォーマットは図15のようになっている。末尾のFCSはCyclic Redundancy Code (CRC)から形成され、MACヘッダとLLCからのデータなどを入れるFrame Bodyフィールドから計算される値である。
受信側ではCRCのチェックを行い、誤りがあると検出された場合には、送信元無線端末のアドレスの抽出(例えば、図6のステップS2)と、それに伴うミリ波MAC処理部21へのミリ波確認要求信号(例えば図6のステップS3)やミリ波通信開始要求信号(例えば図7のステップS13)といったI/F信号を出さない。
CRCチェックの結果誤りが検出されなかった場合には、先のように送信元無線端末のアドレスの抽出を行い、受信電力値によるフィルタリングを行った結果に応じてミリ波MAC処理部21へのI/F信号を出す。なおここでCRCチェックの結果誤りが検出されなかった場合に、送信元無線端末のアドレスの抽出を行い、受信電力値によるフィルタリングを行わずI/F信号を出すようにしてもよい。
マイクロ波MAC処理部11は、マイクロ波PHY I/Fから受信フレームを受け取り、CRCの確認をすると、その後に、自端末宛てのフレームであるかを確認し、自端末宛ての場合に送信元アドレスを抽出するという手順に進むようにしてもよい。
IEEE802.11無線LANではMACヘッダの最初のアドレスフィールド(図15のAddress 1)に送信先無線端末のアドレスを書き込むようになっているため、受信フレームが自端末宛てかどうかは最初のアドレスフィールドを見て、自端末のアドレスと比較すればよい。なお、フレームの直接の送信元無線端末のアドレスは、IEEE802.11無線LANではMACヘッダの2つ目のアドレスフィールド(図15のAddress 2)に書き込むようになっている。
IEEE802.11無線LANでは、同一の無線通信グループ(BSS)内でやり取りされるフレームに関しては無線通信グループの識別子(BSS Identifier; BSSID)をアドレスフィールド(図15のAddress 1、Address 2、Address 3、Address 4のいずれかのフィールド)に入れるようになっている。無線通信グループの識別子をどのアドレスフィールドに入れるかは、無線通信グループ内での送受信の無線端末各々の役割によって異なる。
ここで無線基地局とは、他の端末(無線端末に加え、有線で接続された端末も含む。また無線基地局を含む。)からのデータを転送できる無線端末と言ってもよい。例えばIEEE802.11無線LANでは、複数の無線通信グループをいくつかまとめて1つの無線通信システム(Extended Service Set; ESS)を構築することができる。そしてこの無線通信システム内での無線通信グループ間はDistributed System (DS)と呼ばれる。DSは有線であっても無線であってもよいが、無線基地局はこのDSに接続することができる無線端末というように置き換えてもよい。
IEEE802.11無線LANでは、無線基地局のアドレスが無線通信グループの識別子となっている。よって、例えば送信する無線端末が無線基地局であり、送信先無線端末が非無線基地局(非無線基地局端末)であるなら、無線通信グループの識別子はAddress 2フィールドに入れるようになっており、非無線基地局端末が基地局端末に送信する場合は、無線通信グループの識別子はAddress 1フィールドに入れるようになっている。
非無線基地局端末同士でフレームを送受信する場合(例えば、図1のように無線基地局がいないBSSや、図2で無線端末201以外に無線端末202も存在し、無線端末201と無線端末202が通信する場合)には、無線通信グループの識別子はAddress 3に入れるようになっている。例えば、図1の場合、IEEE802.11無線LANでは、通信グループの識別子は通信グループを開始した無線端末が乱数から定める。無線基地局端末同士でフレームを送受信する場合には、先の無線通信グループと無線通信グループをつなぐDSレベルでのフレームとなるため、無線通信グループの識別子ということは特定することができない(送信先アドレスは一方の無線通信グループの識別子と同じになり、フレームの直接の送信元アドレスはもう一方の無線通信グループの識別子と同じになるからである)。
マイクロ波MAC処理部11は、マイクロ波PHY I/Fを介して受信フレームを受け取ると、正常なフレームを受信したかを、CRCのチェックなどを行って判断する。そして、正常と判断したフレームに対して、無線通信グループの識別子が自無線端末の属する無線通信グループの識別子と同一であるかを、所定のアドレスフィールドを見て判断する。同一と判断した場合に、前述の自端末宛てであるかのフィルタリングを経るなどして(経なくてもよい)送信元アドレスを抽出するという手順に進むようにしてもよい。
第1の実施形態では、マイクロ波MAC処理部11でミリ波用送受信部20を用いた相手無線端末の探索や通信の開始の判断を行う際に、受信フレームの受信電力値、SNRあるいは受信EVMでフィルタリングをかける例を示した。この他に、あるいはこれらと組み合わせて受信フレームの伝送レートを加味するようにしてもよい。
複数の変調符号化方式(Modulation and Coding Scheme; MCS)がある場合、通信を行う2無線端末間で無線リンクの状態に応じて変調符号化方式を変更することができる。これを一般的にリンクアダプテーション (Link Adaptation)と呼んでいる。変調符号化方式により伝送レートが決まる。
無線リンクの状態は、例えば、自無線端末が送信したフレームに対して応答フレーム (特に即時応答フレーム、IEEE802.11無線LANではAckフレームやBlock Ackフレーム、あるいはRTSフレーム送信に対するCTSフレーム)を期待する場合、その応答フレームが来るか来ないかなどの情報によりフレーム送信側での情報のみで判断する方法がある。また、フレーム送信での伝送レートを変更したい無線端末(例えば無線端末201)が、フレームの送信先無線端末(例えば無線端末202)に、無線端末201からのフレームの受信状況に関してのフィードバックを要求し、無線端末202からの当該フィードバック情報により判断する方法もある。
前者は、オープンループリンクアダプテーション(Open Loop Link Adaptation)と呼ばれ、後者はクローズドループリンクアダプテーション (Closed Loop Link Adaptation)と呼ばれる。
クローズドループリンクアダプテーションでは、無線端末202が無線端末201からの受信状態に応じて推奨する変調符号化方式をフィードバック情報として返すような方法でもよい。例えば複数のアンテナを用いる場合、それらを用いたチャネル状態の情報(Channel State Information; CSI)や信号対雑音電力比(Signal-to-Noise Radio; SNR)をフィードバック情報として返すような方法でもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
CRCチェックあるいは、PHY処理部でのPHYヘッダのパケット長情報と受信信号から復号したパケット長が合わない、あるいは途中で受信信号をロストしたなど、の情報に関しても、例えばある無線端末からの受信を期待している時間に受信したなど当該受信フレームの送信元無線端末が推定できる場合には、送信元無線端末との間の無線リンク状態の把握として情報を用いることができる。
なお、通信を行う無線端末間でお互いに対応可能な(capable)伝送符号化方式を選択する必要がある。
前述したように、IEEE802.11無線LANのフレームは、データフレーム、管理フレーム、制御フレームに大きく分けられるが、さらにその下で複数のフレーム種別に分けられる。
フレーム交換を行う無線端末間でお互いに対応可能な(capable)伝送符号化方式を選択する必要があり、またフレーム種別毎の目的などにより、リンクアダプテーションで選択する変調符号化方式に制限を加える場合がある。例えば、同期や無線通信グループの情報を報知するために送信される管理フレームのBeaconフレームは、不特定多数の無線端末にブロードキャスト送信される。従って、Beaconフレームの変調符号化方式は、少なくとも無線通信グループに属する無線端末全てが受信できる(あるいは受信できなくてはならないと要求する)変調符号化方式の中から選択される。
また、相手無線端末との接続設定に関連するフレーム(前述のAssociationに関連するフレームなど)も、その変調符号化方式は、相手無線端末の送信可能・受信可能な変調符号化方式を把握する前に、相手無線端末と送受信を行うために、無線通信グループに属する無線端末全てが受信できる(あるいは受信できなくてはならないと要求されている)変調符号化方式の中から選択される。
データフレームの場合、単一の無線端末に送信するユニキャスト送信ではなく、複数の不特定多数の無線端末に送信するブロードキャスト送信、あるいは複数の特定多数の無線端末に送信するマルチキャスト送信(これらを総称してグループアドレスフレームと言う)の場合には、無線通信グループに属する無線端末全てが受信できる(あるいは受信できなくてはならないと要求されている)変調符号化方式の中から変調符号化方式が選択される。
このように、変調符号化方式が無線通信グループに属する無線端末全てが受信できる(あるいは受信できなくてはならないと要求されている)変調符号化方式の中から選択されるフレームに関しては、リンクアダプテーションとして無線リンクの状態以外の制約がかけられることから、一般的に伝送レートは無線リンク状態から選択されるものよりも低く制限されることとなり、伝送レートを前記フィルタリングに加味することは適切ではない。
そこで、上記のようなフレーム以外、すなわち無線リンク状態により変調符号化方式を選択していると期待できるフレームに対して、伝送レートを前記フィルタリングに加味することとする。
一般的に、伝送レートが高くなるほど変調多値数が増加する関係から、受信特性は劣化する傾向にある。そこで伝送レートが高い変調符号化方式のフレームを正常に受信することができると、送受信の無線端末間での無線リンクの状態がよいと期待することができる。
マイクロ波MAC処理部11において、ある伝送レートに対する閾値を設定し、(受信フレームの種別の判断を上記のように行った上で)その閾値の伝送レート以上で受信されたフレームの送信元無線端末に対しては、ミリ波でも送受信ができる可能性が高いと決定し、ミリ波での探索あるいは通信の開始要求を出すようにする。あるいは、伝送レートでフィルタリングを行った上で、受信電力値などでフィルタリングを行うようにしてもよい。
実際のこのフィルタリングに関連するマイクロ波MAC処理部11内の動作としては、例えば伝送レートのフィルタリングをマイクロ波アクセス制御部13で行い、閾値以上の伝送レートであるなら当該受信フレーム情報をマイクロ波MAC管理部12に渡し、マイクロ波MAC管理部12で受信電力値が受信電力のフィルタリングに用いる閾値以上かを確認する、というようにアクセス制御部とMAC管理部で分担するようにしてもよい。
また、伝送レートのフィルタリングは行わずに受信電力値のフィルタリングのみを行う場合と、伝送レートと受信電力値のフィルタリングを組み合わせて行うような場合とが混在する場合、前述のように前者の対象となるフレームは後者の対象となるフレームよりも相対的に低い伝送レートで送信されることが期待されるため、前者の受信電力値フィルタリング用の閾値をPwr 1、後者の受信電力値フィルタリング用の閾値をPwr 2というように別々に設けるなら、Pwr 1 > Pwr 2という関係になるように閾値を設けることが望ましい。
これら一連の閾値は前述のようにMIBなどで管理する。
(効果)
このように、フィルタリングの動作を入れることにより、ミリ波での通信の確度が低い場合に無駄になる可能性の高いミリ波での通信試行を抑え、効率化を図ることができる。また活用度がある程度保証される情報のみを保持して、保持する情報量を抑えることができる。その結果、消費電力を抑えることもできる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、これまでの実施形態でのマイクロ波での受信フレームに基づくミリ波での無線端末の探索動作や、通信開始を試みる動作をいつ行うかトリガについて説明する。
例えば、第1の実施形態で説明したように、接続している無線端末情報を管理するようにしておき、マイクロ波でのフレーム受信時に、送信元無線端末がすでに接続設定が完了しているかどうかを確認し、接続設定が完了していない場合には、ミリ波での探索や通信開始を試みるようにしてもよい。これは受信フレームが接続を要求するフレーム(例えばIEEE802.11無線LANでのAssociation Requestフレームなど)であれば、接続設定は完了していないと決定できるので、接続設定が完了しているかの確認を省くこともできる。
接続完了していない場合に、マイクロ波とミリ波での前述の相関情報が十分であれば(例えば探索動作により十分な数のサンプルが得られているなど)、探索は省略し、当該相関情報に基づき、通信開始の動作を行うかの判断を行うようにしてもよい。当該相関情報が十分でなければ、相関情報を構築あるいは補充するために、ミリ波での探索動作を行うのに適した無線端末かを前述のフィルタリング動作により判断し、適していると判断した場合にミリ波探索の一連の動作に移るようにするようにしてもよい。
あるいは、一定周期が経過したら相関情報を更新するために、ミリ波での探索もしくは通信開始のフレーム交換をすべく、適当な無線端末を選択するためにマイクロ波でのフレーム受信に伴う動作を行うようにしてもよい。
あるいは、ミリ波アクセス制御部23に、優先度の高い送信フレームが送信(アクセス)権獲得を待つための送信キューに最初に詰まれた段階で、相関情報を確認するために、マイクロ波で当該送信フレームの送信先無線端末と同一の無線端末から送信されたフレームをマイクロ波で受信すると、前記動作を行うようにしてもよい。最初に詰まれた場合以外にも、例えば優先度の高い送信フレームがしばらく送信キューに詰まれず、送信を行っていない状態で一定期間経過後に、送信キューに詰まれた場合でも、確実に送信先無線端末に確実にミリ波で送信するために同様に動作するようにしてもよい。
IEEE802.11無線LANでは、送信の優先度の違いによってトラヒック種別(Traffic IDentifier; TID)が異なり、LLCで生成されたデータを送信する場合にはLLCからアクセス制御部(例えば図3では、アクセス制御部13、23に相当)にデータとともに渡される優先度情報が、当該アクセス制御部で、あるトラヒック種別にマッピングされることになる。MAC管理部(例えば図3では、MAC管理部12、22に相当)で生成された管理フレームには最も優先度の高いトラヒック種別が割り当てられる。当該アクセス制御部では、送信するフレームにTIDを付随して処理するようになっている。そしてそのTIDあるいはTIDをアクセス制御の優先度としてさらにマッピングしたアクセスカテゴリ(Access Category; AC)ごとに送信キューに詰まれ、送信されることになる。それによって優先度の高い送信フレーム、優先度の高い送信キューは区別することができる。
あるいは、マイクロ波での媒体使用率がある一定の値以上となった場合にミリ波送信を行うとして前記相関情報の把握のための動作や、ミリ波通信の開始のための動作を行うためにマイクロ波で受信したフレームを用いるようにしてもよい。
また、例えば保持している相関情報の更新を行った場合に、その更新量がある一定以上の変動がある場合には、相関情報全体に関して見直しを行うために、第1の実施形態等で説明したような相関情報を取得する動作や、第3の実施形態等で説明したようなマイクロ波用送受信部10の到来角推定基準軸に対するミリ波用送受信部20の送受信可能確度範囲を把握するための動作を行う(ミリ波で探索開始を行う)ようにしてもよい。
そして当然これらを組み合わせた条件を満足するときを、ミリ波探索開始、ミリ波通信開始のトリガとしてもよい。
以上、一連の周期に関する値や媒体使用率での閾値なども例えばMIBなどで管理すればよい。他でも同様である。
(効果)
以上説明したように、マイクロ波での受信フレームに基づき、ミリ波での無線端末の探索動作や通信開始を試みる動作を開始するトリガを明確にすることができる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、マイクロ波とミリ波の相関情報を取得した後の動作について、これまでの実施形態に補足する点を中心に説明する。
第6の実施形態で補足する点は、ミリ波用送受信部20の電源処理である。
マイクロ波とミリ波の相関情報を取得した後、ミリ波用送受信部20の電源を切り、例えば図7に示した動作によりマイクロ波MAC処理部11でミリ波通信開始要求信号を出す場合、例えば、図7のステップS12では、図16に示すような動作を行う。すなわち、前述したように、ミリ波を使用するか否か(ミリ波が使用可能か否か)を判断し(ステップS101)、ミリ波を使用すると決定した場合には(ステップS102)、ステップS103へ進み、ミリ波用送受信部20の電源を投入する。そして電源投入と同時にタイマを設定し、予め定められた時間(タイマ値)の計測を開始する。タイマが切れる前に(当該時間が経過するまでに)、ミリ波で通信リンクの確立が完了しなければ(ステップS104)、タイムアウトと同時にミリ波用送受信部20の電源を再び切る(ステップS105)。そして、マイクロ波での通信を継続する(ステップS107)。
一方、タイムアウトまでに、ミリ波で通信リンクの確立が完了したときには(ステップS104)、ステップS106へ進み、ミリ波での通信を開始する。
ここでのタイマ動作は前述の第1の実施形態でのミリ波での無線端末の探索動作に用いるタイマ動作と同様である。
設定するタイマ値は、例えばマイクロ波での受信フレームの受信電力値が高ければ短く、受信電力値が低ければ長くするようにしてもよい。このようにすれば、無線端末間の実際の物理的な距離は短く受信電力値が高いが、当該無線端末間に障害物などがあり、マイクロ波では無線リンクが確立できるが、ミリ波では直進性が強く透過波の減衰が大きいために無線リンクが確立できないような状況では、タイマ値を短くすることで早期にミリ波の試行を切り上げることができる。また、無線端末間の物理的な距離が離れている場合には受信電力値が低いことが予想され、その場合はタイマ値を長くすることでミリ波での最適なパス、換言すれば最適なアンテナ重み付けの調整のための時間的猶予を与えるというようなことを加味することができる。
そして、ミリ波通信の終了が判断できるなら、再びミリ波用送受信部20をOFFにしてもよい。またある固定時間の間、ミリ波用送受信部20で送受信を行わなければ、ミリ波用送受信部20をOFFするようにしてもよい。
(効果)
上記第6の実施形態によれば、ミリ波用送受信部20を用いて通信する場合を判断して効率的に電源投入することができ、無線端末としての消費電力を抑えることができる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、これまでの実施形態に基づくが、特に異なる点を中心に説明する。
これまでの実施形態と異なる点は、マイクロ波MAC処理部11からマイクロ波/ミリ波I/Fを介してミリ波確認要求信号を受けることで、ミリ波での無線端末の探索を行うのではない点である。
すなわち、第7の実施形態では、ミリ波MAC処理部21でフレームを受信すると、ミリ波確認要求信号を受けていなくても、その受信情報をフレームの送信元無線端末情報とともにマイクロ波/ミリ波 I/Fを介してマイクロ波MAC処理部11に通知する。この信号をここでは便宜的にミリ波受信通知信号と呼ぶ。
マイクロ波MAC処理部11でも、ミリ波MAC処理部21と同様に独自にフレームを受信すると、その受信情報をフレームの送信元無線端末情報とともに保持しておく。そして、ミリ波受信通知信号で通知された送信元無線端末情報と同一の無線端末からのフレームをマイクロ波用送受信部10で受信すると、当該マイクロ波用送受信部10で受信した際の受信情報と、ミリ波受信通知信号を介して取得した(ミリ波用送受信部20で受信したフレームの)受信情報とから、マイクロ波/ミリ波の相関テーブルを作成する、あるいはマイクロ波でミリ波送受信可能範囲を把握する。受信情報とはこれまでの実施形態でのアンテナの重み付け情報や推定到来角である。
図17は、受信情報としてアンテナの重み付け情報を用いた場合の相関テーブルを作成する動作を示したものである。
マイクロ波MAC処理部11、ミリ波MAC処理部21ではそれぞれフレームを受信すると(ステップS201、ステップS203)、各々受信フレームの送信元無線端末のアドレスを抽出する(ステップS202、ステップS204)。ここでは、ともにアドレスA1を抽出したとする。
マイクロ波MAC処理部11では、マイクロ波PHY I/Fを介して受信したアンテナの重み付け情報(ここではW1)と、当該抽出した送信元無線端末のアドレス(A1)との対を保持するなどする。この保持された情報(W1とA1)は、後半での同一無線端末アドレスに対するアンテナのマイクロ波での重み付け情報とミリ波での重み付け情報とを対応させて相関情報を作成するために利用できる。
ミリ波MAC処理部21は、ミリ波PHY I/Fを介して受信したアンテナの重み付け情報(ここではw1)を、受信したフレームから抽出した送信元無線端末のアドレス(A1)とともに、ミリ波受信通知信号でマイクロ波/ミリ波 I/Fを介してマイクロ波MAC処理部11に通知する(ステップS205)。
マイクロ波MAC処理部11では、当該ミリ波受信通知信号を受信すると、ステップS206において、まず、マイクロ波用送受信部10で受信したフレームから得られた情報(アンテナの重み付け情報、アドレス)の中から、ミリ波用送受信部20で受信したフレームの送信元無線端末のアドレス(例えばA1)と同一の無線端末に対応するものを探す。ある場合には、マイクロ波用送受信部10とミリ波用送受信部20各々のアンテナの重み付け情報(W1とw1)を関連づけ、これを相関情報として相関テーブルに登録する。
図17では、すでにアドレスA1の無線端末からのフレームをマイクロ波用送受信部10で受信しているので、そのときのアンテナの重み付け情報W1と、ミリ波用送受信部20でアドレスA1の無線端末から受信したフレームのアンテナの重み付け情報w1とを関連づけたもの(例えば(W1,w1))を、相関情報として相関登録に保持する。
ミリ波受信通知信号を受けたマイクロ波MAC処理部11は、当該ミリ波受信通利信号に含まれているアドレスの無線端末からのフレームをマイクロ波で受信していない場合も、当該ミリ波受信通知信号に含まれているアンテナ重み付け情報(ここでは例えばw1)をアドレス(ここでは例えばA1)とともに保持する。このようにすれば、将来マイクロ波MAC処理部11で、当該アドレス(ここでは例えばA1)の無線端末からのフレームを受信した場合に、図17と同様にして相関情報を作成することができる。
マイクロ波MAC処理部11で保持する、{マイクロ波用送受信部10で受信したフレームの送信元無線端末のアドレス、アンテナの重み付け情報}、または{ミリ波受信通知信号を受けて取得したミリ波用送受信部20で受信したフレームの送信元無線端末のアドレス、アンテナの重み付け情報}という対の情報は、これを取得した時点からの経過時間を計測し、予め定められた時間が経過したときに廃棄(消去)するようにしてもよい。そのためには、上記対の情報を取得したときにタイマを起動する。
図17では、マイクロ波用送受信部10とミリ波用送受信部20の各々において、アドレスがA1の無線端末からしかフレームを受信していないが、複数の無線端末から受信していてもよい。その場合、上記手順によれば、取得及び通知されたアドレスに基づき、同一アドレスの無線端末に対応するマイクロ波とミリ波での相関情報を得ることができる。
ミリ波で効率的に無線端末の探索を行うために、これまでの実施形態のように探索用フレームを送信して、それに対する探索応答フレームを受信するようにしてもよい。
例えば、無線端末として同一の無線通信グループに存在することを把握している無線端末のアドレスを保持していれば、その無線端末のアドレスを宛先にした探索フレームを前述の実施形態の要領で送信し、応答を待つ。マイクロ波用送受信部10で検出した無線端末のアドレスをマイクロ波MAC管理部12に保持し、ミリ波MAC管理部22がマイクロ波MAC管理部12に問い合わせて、探索フレームの送信先無線端末のアドレスを取得するようにしてもよい。あるいは共通MAC処理部2や共通MAC管理部3などで、他の無線端末のアドレスを共用して保持している場合は、そこにある無線端末のアドレスをミリ波MAC処理部21で探索フレームの送信先として利用してもよい。この共有情報としての無線端末アドレスは、例えば先のマイクロ波用送受信部10で検出した無線端末のアドレスであってもよいし、あるいはLLCなどの上位層から送信するデータが渡された際にデータの宛先のアドレスをコピーして保持したものであってもよい。
マイクロ波用送受信部10でフレームを受信したとき、あるいはマイクロ波用送受信部10でフレームをフィルタリングし、ミリ波での送達の確度が高いと判断した場合に、ミリ波確認要求信号を出し、探索フレームを送信していた。すなわち、マイクロ波用送受信部10でのフレーム受信をトリガにして探索フレームを送信していた。
しかし、第7の実施形態において、探索フレームを送信する場合、これまでの実施形態とは異なり、上記のようなマイクロ波用送受信部10でのフレーム受信をトリガにしないことから、ミリ波用送受信部20で探索フレームへの応答を受信しない確率が高くなると言える。
そこで、ミリ波MAC処理部21で探索フレームを送信した場合には、タイマを用いて、探索フレームに対する応答フレームの待ち時間を予め定められた時間以内に設定し、この待ち時間以内に探索を終了するようにすることが望ましい。このタイマの動作は前述の施形態での探索フレームの送信に対して応答フレームを待つ場合と同様の要領に、探索フレームの送信時にタイマを起動させればよい。そしてタイマに設定されている時間以内に、所望の無線端末からのフレームをミリ波で受信しなかった場合には、当該無線端末のアドレスと、探索に失敗した旨の内容をミリ波確認要求信号でマイクロ波MAC処理部11に通知するようにしてもよい。マイクロ波MAC処理部11では、これまでの実施形態におけるミリ波確認応答で探索応答フレームを受信しなかった場合と同様の要領で、その情報も用いてマイクロ波/ミリ波の相関情報を作成することができる。
このミリ波用送受信部20での無線端末の探索方法をマイクロ波用送受信部10でも適用してもよい。例えば、共有する無線端末のアドレスを共通MAC処理部2や共通MAC管理部3などから取得し、マイクロ波MAC処理部11で探索フレームを生成し、探索フレームに対する応答フレームを受信して受信情報を取得するようにしてもよい。
(効果)
上記第7の実施形態によれば、ミリ波用送受信部20での無線端末の探索をマイクロ波用送受信部10でのフレーム受信に依存せずに行うことができ、マイクロ波/ミリ波の相関情報の構築の時間を短縮することができ、効率化を図ることができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。