以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔内視鏡装置の全体説明〕
図1に示すように、内視鏡装置10は、内視鏡12と、各種弾性体で形成された細長管状の内視鏡用補助具(以下、単に補助具という)14と、補助具コントローラ16と、プロセッサ装置18と、光源装置20などから構成される。
内視鏡12は、小腸、大腸等の管腔内に挿入される挿入部22と、内視鏡12の把持及び挿入部22の操作に用いられる操作部24と、バルーン26と、バルーン27と、バルーン制御装置28とを備えている。
挿入部22は、可撓性を有する棒状体であり、先端側から周知の撮像部や照明部(図示せず)が設けられた挿入部先端部22a、及び湾曲部22b、軟性部22cを備えている。軟性部22cは、挿入部22の大半を占める長さを有している。湾曲部22bは、操作部24で操作することにより先端側の向きが自在に変えられる。
挿入部22の内部には、鉗子チャンネル30、図1には図示しないが空気や水が流れる送気・送水チャンネル、各バルーンに気体を供給排出するための給排気路等が設けられている。
鉗子チャンネル30は、柔軟性、防水性を有するチューブであり、患者の治療に用いられる鉗子や注射針等の処置具(図示せず)、及び補助具14などが挿通される。
操作部24は、アングルノブ32、鉗子入口34を備えている。アングルノブ32は、湾曲部22bの湾曲方向及び湾曲量を調整する際に回転操作される。鉗子入口34は、鉗子チャンネル30の入口側開口部である。補助具14等は、鉗子入口34から鉗子チャンネル30に挿通される。また、操作部24には、送気・送水等の各種の操作に用いられる操作ボタン36が設けられている。
操作部24に接続されたユニバーサルコード38には、前記の送気・送水チャンネルの他に、挿入部先端部22aの撮像部への配線、及び照明部へのライトガイドなどが組み込まれている。このユニバーサルコード38の先端部には、コネクタ部40aが設けられている。このコネクタ部40aは、光源装置20に接続する。また、コネクタ部40aからは、プロセッサ装置18に接続するコネクタ部40bや、バルーン制御装置28に接続するコネクタ部40cが分岐している。
プロセッサ装置18は、撮像部から入力された画像データ等に基づく内視鏡画像をモニタ(図示せず)に表示させる。光源装置20は、光源部から照明光を照射させ、ライトガイドに導く。
図2(A),(B)に示すように、挿入部先端部22aの前面には、観察窓42、照明窓44、送気・送水用ノズル46、鉗子出口48が設けられている。観察窓42及び照明窓44の後方には、それぞれ前記の撮像部、照明部が配置されている。送気・送水用ノズル46は、前記の送気・送水チャンネルの出口側開口部であり、管腔内及び観察窓42に空気や水を噴射する。鉗子出口48は、鉗子チャンネル30の出口側開口部である。鉗子入口34から鉗子チャンネル30内に挿通された処置具や補助具14は、鉗子出口48からその前方へ突出する。
<第1実施形態>
〔補助具に関連する構成〕
補助具14は、その直径が鉗子出口48、鉗子チャンネル30、鉗子入口34の直径よりも細く形成されており、鉗子チャンネル30内にスライド自在に挿通される。補助具14は、その補助具先端部14aが鉗子出口48の前方に位置する管腔の内壁(以下、前方管腔内壁という)に着脱可能に吸着する吸着補助具である。本発明では、補助具14を鉗子出口48から突出させて前方管腔内壁に吸着させることで、挿入部先端部22aをS字結腸50(図3参照)のような複雑に屈曲した管腔内で相対的に進める。
補助具14は、医師の手元での送出操作(鉗子出口48から補助具14を送出する操作)、及び牽引操作(鉗子出口48内に補助具14を牽引する操作)により鉗子出口48から出し入れ自由である。これにより、補助具先端部14aは、前方管腔内壁に当接する第1位置(図4参照)と、鉗子出口48の手前に位置する第2位置(図5参照)とに変位自在である。
補助具先端部14aには、負圧吸引力により前方管腔内壁に吸着する吸引口52が設けられている。吸引口52は、略ラッパ状(吸盤状)に拡開したラッパ形状(図2(B)参照)と、ラッパ形状よりも小さくなり、その一部がタック状に折り畳まれることで補助具先端部14aと同じ外径となり、鉗子出口48(鉗子チャンネル30)内に格納可能な閉じ形状(図2(A)参照)とに変形自在な弾性体である。
吸引口52の変形は、その内部に設けられたワイヤ54(図2(B)では図示を省略)を用いて行われる。各ワイヤ54は、通電加熱により弓状に湾曲して吸引口52をラッパ形状に変形させる形状記憶合金である。そして、各ワイヤ54への通電を停止すると、各ワイヤ54は温度が下がって任意の形状に変形自在となるので、吸引口52は自身の弾性復元力で元の閉じ形状に復元する。この際に、各ワイヤ54の温度が下がるのに時間がかかり、吸引口52の復元が遅い場合には、ペルチェ素子等の各種冷却手段でワイヤ54の温度を強制的に下げてもよい。
図1に戻って、補助具14の補助具後端部14bは、補助具コントローラ16に接続している。また、前記の各ワイヤ54の後端部は、補助具14内を通って補助具コントローラ16に接続している。この補助具コントローラ16は、ワイヤ54への通電(吸引口52の変形)を制御する通電装置56と、吸引口52からの空気の吸引(負圧吸引力の発生)を制御する吸引装置58と、補助具変位装置60と、制御装置62と、操作パネル64などから構成されている。
そして、この補助具コントローラ16は、補助具14の送出・牽引、吸引口52の開閉及び吸引・吸引停止からなる処理(以下、単に補助具14の吸着・牽引処理という)を自動制御する。
また、図6に示すように、補助具14の吸引口52には、接触センサ66及び吸引圧力検知センサ68が設けられ、内視鏡12の鉗子出口48には、補助具検知センサ70が設けられている。
通電装置56には、各ワイヤ54への通電が可能な各種電源装置が用いられる。この通電装置56は、各ワイヤ54への通電・通電停止を切り替えることで、吸引口52をラッパ形状と閉じ形状に変形させる。
吸引装置58には、周知の真空ポンプが用いられる。この吸引装置58は、補助具後端部14bから補助具14内の空気を吸引することで、吸引口52に負圧吸引力を発生させる。そして、吸引装置58は、吸引口52の負圧吸引力を「強」と「弱」の2段階に調整することができる。なお、負圧吸引力「強」は、前方管腔内壁を傷付けない程度の力に抑えられている。
図1に戻って、補助具変位装置60は、補助具14の送出・牽引を自動で行なうための装置であり、補助具14を搬送する搬送ローラ対72と、この搬送ローラ対72を駆動する搬送モータ74と、搬送ローラ対72の補助具搬送方向上流側に設けられた一対のパスローラ76と、この両パスローラ76の間に設けられたダンサーローラ78とから構成さ れる。
ダンサーローラ78は、図示しないダンサ機構により図中上下方向に移動自在に保持されている。このダンサーローラ78は、搬送モータ74が正転して搬送ローラ対72により補助具14が送出されると上昇し、搬送モータ74が逆転して搬送ローラ対72により補助具14が引き込まれると下降する。この補助具変位装置60による補助具14の最大送り出し量は、ダンサーローラ78の上下方向の最大ストローク量の2倍の長さになる。
このように補助具変位装置60は、搬送モータ74を正逆転させることで、補助具先端部14aを鉗子出口48から突出させたり、鉗子出口48内に格納したりすることができる。挿入部先端部22aと前記の前方管腔内壁との距離が離れていても、補助具先端部14aが前記の第1位置まで到達可能なように、ダンサーローラ78の最大ストローク量は充分確保されている。
また、補助具変位装置60から送出された補助具14は、鉗子入口34から鉗子チャンネル30内に挿通する。
図6に示すように、制御装置62には、前記の接触センサ66、吸引圧力検知センサ68、補助具検知センサ70が接続されている。また、制御装置62には、牽引終了判定回路(以下、判定回路という)80が設けられている。
接触センサ66は、吸引口52が前方管腔内壁に接触したときに、ON信号を制御装置62へ出力する。この接触センサ66の検知結果は、補助具先端部14aが前述の第1位置に到達したか否かの判定に用いられる。
吸引圧力検知センサ68は、吸引口52の負圧吸引力の大きさを検知し、この負圧吸引力が「強」になったときに、ON信号を制御装置62へ出力する。この吸引圧力検知センサ68の検知結果は、吸引口52の負圧吸引力が「強」まで達したか否か、つまり、吸引口52が前方管腔内壁に完全に吸着したか否かの判定に用いられる。
補助具検知センサ70は、例えば発光センサおよび受光センサからなる一対の光センサであり、発光センサから受光センサに向けて照射される光が補助具14により遮られたときに、ON信号を制御装置62へ出力する。この補助具検知センサ70の検知結果は、鉗子チャンネル30内に挿通された補助具先端部14aが鉗子出口48まで達したか否かの判定(後述する補助具先端部14aの突出量を求めるため)に用いられる。
判定回路80は、前記のように補助具先端部14aが第2位置へ牽引される際に、この補助具先端部14aが第2位置に到達したか否かを判定する。この判定は、鉗子出口48からの補助具先端部14aの突出量(以下、単に突出量という)を求めた結果に基づいて行なわれる。
判定回路80は、補助具検知センサ70により補助具先端部14aの通過が最初に検知された時に、前記の突出量を0にリセットした後、この突出量の算出を開始する。具体的には、搬送モータ74の回転数をカウントし、このカウント結果と、予め求めたモータ1回転当たりの補助具14の移動量Dとに基づいて、突出量を算出する。判定回路80は、搬送モータ74が1回正転する毎に移動量Dを突出量に加算するとともに、搬送モータ74が1回逆転する毎に移動量Dを突出量から減算する。
補助具先端部14aが第2位置にあるときの突出量(以下、目標突出量という)は既知である。このため、判定回路80は、補助具先端部14aの牽引が開始された後、算出した突出量が目標突出量に到達した時に、補助具先端部14aが第2位置まで牽引されたと判定し、牽引終了判定信号を出力する。なお、補助具先端部14aが補助具検知センサ70を通過してから第1位置に向かう途中で第2位置を通過するが、その時は牽引終了判定信号の出力は行なわない。
制御装置62は、操作パネル64や各センサ66,68,70から入力される信号に基づいて、通電装置56、吸引装置58、補助具変位装置60を統括的に制御して、補助具14の吸着・牽引処理を自動制御する。
〔バルーンに関連する構成〕
本発明では、図1に示すように、軟性部22cと挿入部先端部22aの2箇所にバルーンを設けているが、当該2箇所に設けたバルーンは各々同様の構成および作用効果を有するため、ここでは、主に挿入部先端部22aに設けたバルーンを代表して説明する。
図7は、挿入部先端部22aの拡大図である。図7(a)は挿入部先端部22aを側面から見た図、図7(b)は挿入部先端部22aの先端側から見た図である。
図7に示すように、挿入部先端部22aのバルーン26は、1対の第1バルーン26−1と1対の第2バルーン26−2から構成されている。そして、1対の第1バルーン26−1と1対の第2バルーン26−2を挿入部22の軸方向(管内移動体の進行方向)についてほぼ同じ位置に配置し、互いに外周方向に位相をずらして配置(平面配置)している。
図8は、バルーン構成の一例を示す図である。図8に示す実施例では、第1バルーン26−1および第2バルーン26−2として、ともに正進バルーンを使用する。ここで、正進バルーンとは、膨張するときに変形する方向に指向性を有する変形指向性バルーンであって、挿入部先端部22a側とは反対の方向、すなわち湾曲部22b側の方向に向かって変形しながら膨張するバルーンのことをいう。
図9は、図8におけるA−A断面図である。図9に示すように、第1バルーン26−1の内腔には、挿入部先端部22aの外周面に開口した給排気口82を介して、給排気路84が連通されている。給排気路84は、挿入部22の軸方向に亘って設けられ、図1に示す操作部24、ユニバーサルコード38内を通ってバルーン制御装置28に接続されている。
図10は、バルーン制御装置28のブロック構成図である。図10に示すように、バルーン制御装置28には、給排気路84(図9参照)を介して挿入部先端部22aの第1バルーン26−1にエアーを供給する給気ポンプ86と、第1バルーン26−1内のエアーを吸引する吸引ポンプ88がそれぞれ二台ずつ設けられている。そして、給気ポンプ86と吸引ポンプ88の動作をコントローラ90で制御することにより、一対の第1バルーン26−1がそれぞれ個別に膨張収縮される。
また、不図示であるが、挿入部先端部22aの第2バルーン26−2、および軟性部22cの第1バルーン27−1、第2バルーン27−2の内腔には、挿入部先端部22aの第1バルーン26−1の内腔と同様に、挿入部22の外周面に開口した給排気口を介して給排気路が連通され、給排気路は挿入部22の軸方向に亘って設けられ、図1に示す操作部24、ユニバーサルコード38内を通ってバルーン制御装置28に接続されている。
そして、図10に示すように、バルーン制御装置28には、給排気路(不図示)を介して挿入部先端部22aの第2バルーン26−2にエアーを供給する給気ポンプ92と、第2バルーン26−2内のエアーを吸引する吸引ポンプ94とがそれぞれ二台ずつ設けられている。そして、給気ポンプ92と吸引ポンプ94の動作をコントローラ90で制御することにより、一対の第2バルーン26−2がそれぞれ個別に膨張収縮される。
また、同様に、軟性部22cの第1バルーン27−1にエアーを供給する給気ポンプ87と、軟性部22cの第1バルーン27−1内のエアーを吸引する吸引ポンプ89とがそれぞれ二台ずつ設けられ、軟性部22cの第2バルーン27−2にエアーを供給する給気ポンプ93と、軟性部22cの第2バルーン27−2内のエアーを吸引する吸引ポンプ95とがそれぞれ二台ずつ設けられている。
また、前記の図9に示すように、本実施例では、挿入部先端部22aの第1バルーン26−1は正進バルーンであり、挿入部22の進行方向(挿入部22の湾曲部22bから挿入部先端部22aに向かう方向)の後方の部分26a(斜線で示す。以下、単に後方部分という。)、および円周方向の部分26b(斜線で示す。以下、単に円周部分という。)が、他の部分よりも肉厚が厚く形成されている。
そのため、給気ポンプ86から給排気路84を介してエアーが供給されると、挿入部先端部22aの第1バルーン26−1は、図11に示すように膨張する。すなわち、後方部分26aおよび円周部分26bが他の部分よりも肉厚に形成されていることにより、後方部分26aおよび円周部分26bが他の部分よりも膨張率が低くなり、後方部分26aおよび円周部分26bよりも他の部分のほうが伸びて、点線で示すように挿入部22の進行方向の後方に向かって略扇形状に膨張する。
なお、挿入部先端部22aの第1バルーン26−1は、後方部分26aおよび円周部分26bに他の部分よりも膨張率が低い低膨張材を備えていることにより、後方部分26aおよび円周部分26bが他の部分よりも膨張率が低くなるとしてもよい。具体的には、後方部分26aおよび円周部分26bに、低膨張材として、例えば、PET繊維やアラミド繊維などを表面に接合、あるいは埋め込み、若しくは一体成形し、部分的に膨張率を異ならせてもよい。
バルーンの仕様はこれに限らず、様々な仕様が考えられる。
例えば、第1バルーン26−1,27−1を正進バルーンとし、第2バルーン26−2,27−2を係止バルーンとすることが考えられる。ここで、係止バルーンとは膨張時に変形指向性を有さず、全体的にほぼ均一に変形するバルーンである。
なお、本実施例では、挿入部先端部22aの第2バルーン26−2、および軟性部22cの第1バルーン27−1、第2バルーン27−2も、挿入部先端部22aの第1バルーン26−1と同様な構成からなる正進バルーンとしている。
また、第1バルーン26−1,27−1と第2バルーン26−2,27−2の組み合わせとして、いずれか一方を正進バルーンとし、他方を逆進バルーンとすることが考えられる。ここで、逆進バルーンとは、膨張時に正進バルーンとは反対の方向に変形する変形指向性バルーンであって、挿入部先端部22aの先端側の方向に向かって変形しながら膨張するバルーンである。逆進バルーンは、具体的には、挿入部22の進行方向の前方の部分、および円周方向の部分が、他の部分よりも膨張率を低くしている。
また、挿入部先端部22aにおいて、図12に示すように、挿入部22の軸を中心とした周方向に一周に亘って形成するバルーン(符号108,110,112に示す)を、挿入部22の軸方向に3つ並べて配置してもよい。また、軟性部22cにおいても、このように挿入部22の軸方向に3つ並べたバルーンを配置する。
また、図13に示すような断面形状のバルーンを配置してもよい。図13(A)に示すバルーンは、膨張収縮自在なラテックスゴムの端部に形状記憶素材や人工筋などから構成されている。図13(B)に示すバルーンは、全体が膨張収縮自在なラテックスゴムからなり3つの圧力室が構成されている。そして、形状記憶素材や人工筋などを伸長収縮させ、あるいは、両端の圧力室を膨張収縮させることで、バルーンを回転させる。
〔吸着・牽引処理および送り込み動作の説明〕
次に、図14(タイミングチャート)及び図15(フローチャート)を用いて、補助具コントローラ16による補助具14の吸着・牽引処理、及びバルーン制御装置28によるバルーンの送り込み動作の自動制御について詳しく説明する。
前記の図3に示すように、医師は、内視鏡12の挿入部22を患者の肛門(図示せず)から挿入した後、この挿入部22の押し出し操作を行なう。これにより、挿入部22が直腸(図示せず)を経てS字結腸50内に挿入される。
医師が押し出し操作を行なうと、挿入部先端部22aは、S字結腸50の腸壁に沿って、例えば、S字結腸50の上行部50b(屈曲部50aから略上方向に延びた部分)を望む位置、または下行結腸51側の屈曲部50a(S字結腸50と下行結腸51の移行部)を望む位置まで進む。
なお、ここでは、S字結腸50の上行部50bを望む位置まで進めた場合を例に挙げて説明する。
医師は、上行部50bを望む位置まで挿入部先端部22aを進めた後、補助具変位装置60と鉗子入口34とをガイドチューブTで接続し、補助具14を内視鏡12にセットする(ステップS1)。
次に、操作パネル64で補助具14の吸着・牽引処理の開始指示(操作)を行なう(ステップS2)。
この開始指示がなされると、制御装置62は、補助具変位装置60の搬送モータ74を正転させて、補助具14の送出を開始する(ステップS3、図14の「t1」)。これにより、補助具先端部14aがガイドチューブT及び鉗子入口34を経て、鉗子チャンネル30内に挿通される。
さらに、挿入部先端部22aのバルーン26の腸壁への係止を開始する(ステップS4)。このように、挿入部先端部22aのバルーン26を腸壁へ係止させることで、挿入部先端部22aの視野を確保することができる。そのため、後述するように補助具14を吸着させる際に、吸着位置を探索し易くなる。
次に、補助具先端部14aが鉗子出口48まで達すると、補助具検知センサ70から制御装置62へON信号が出力される(図14の「t2」)。このON信号が制御装置62に入力されると、判定回路80は、補助具先端部14aの突出量を0にリセットした後、この突出量の算出を開始する。
制御装置62は、判定回路80の算出結果に基づき、補助具先端部14aが鉗子出口48から突出したと判定した(ステップS5)後、通電装置56を動作させて、吸引口52をラッパ形状に変形させる(ステップS6、図14の「t3」)。同時に、制御装置62は、吸引装置58を動作させて、吸引口52に「弱」の負圧吸引力を発生させる(ステップS7)。
補助具変位装置60による補助具14の送出処理が引き続き行われ、前記の図4に示すように、補助具先端部14aが上行部50bに当接すると、接触センサ66はON信号を制御装置62へ出力する(ステップS8、図14の「t4」)。制御装置62は、接触センサ66からのON信号が入力されると、補助具変位装置60による補助具14の送出処理を停止させる(ステップS9)。これにより、更なる補助具14の送り出しが防止されるため、補助具先端部14aで腸壁が穿孔されてしまうことが防止される。また、挿入部先端部22aのバルーン26の腸壁への係止を解除させる(ステップS10)。
次いで、制御装置62は、吸引装置58を制御して、吸引口52の負圧吸引力を「強」に変更する(ステップS11)。これにより、吸引圧力検知センサ68で検知される負圧吸引力が「弱」から次第に高くなる。そして、吸引圧力検知センサ68は、負圧吸引力の検知結果が「強」に達した時に、ON信号を制御装置62へ出力する(ステップS12、図14の「t5」)。
制御装置62は、吸引圧力検知センサ68からのON信号が入力された後、つまり、吸引口52が上行部50bに完全に吸着して、補助具先端部14aが上行部50bに固定された後、搬送モータ74を逆転させる。これにより、補助具先端部14a及び上行部50bが一体に牽引される(ステップS13)。
補助具14の牽引が開始されると、判定回路80で算出される補助具14の突出量が減少する。そして、判定回路80は、算出した突出量が目標突出量に到達した時に、前記の図5に示すように、補助具先端部14aが第2位置まで牽引されたと判定し、牽引終了判定信号(ON信号)を出力する(ステップS14、図14の「t6」)。
制御装置62は、判定回路80から牽引終了判定信号が出力された時に、搬送モータ74の逆転(牽引処理)を停止させる(ステップS15)。これにより、挿入部22を上行部50bの近傍まで移動した後に、補助具先端部14aを上行部50bと一体に挿入部先端部22aの近傍まで牽引することができる(図5参照)。
このように、補助具先端部14aを上行部50bと一体に挿入部先端部22aの近傍まで牽引することにより、側方に位置する側方腸壁50cを手繰り寄せることができる。
なお、制御装置62は、前述の牽引処理が停止した後、補助具コントローラ16のモニタ(図示せず)等に、補助具14の吸着・牽引処理が終了した旨を表示させてもよい。
また、判定回路80から牽引終了判定信号が出力された時には、バルーン制御装置28に牽引終了判定信号が入力される。すると、バルーンにより側方腸壁50cを後方に送り込むための送り込み動作を行う(ステップS16)。
ここで、バルーンによる送り込み動作について説明する。なお、軟性部22cのバルーン27と挿入部先端部22aのバルーン26は同様の送り込み動作を行うため、ここでは、挿入部先端部22aのバルーン26を代表して説明する。
図16はバルーンによる送り込み動作のタイミングチャート図であり、図17はバルーンによる送り込み動作におけるバルーンの膨張収縮の概要を示す図である。図17の左図は前記の図8におけるA−A断面図であり、図17の右図は前記の図8におけるB−B断面図である。
まず、図17(a)に示すように、第1バルーン26−1と第2バルーン26−2を収縮させた状態から、第1バルーン26−1にエアーを供給する(図16および図17に示す工程A)。これにより、前記の図11のように、第1バルーン26−1が進行方向の後方に向かって略扇形状に膨張する。そして、図17(b)の左図に示すように、側方腸壁50cが進行方向の後方に送り込まれる。
次に、第2バルーン26−2にエアーを供給する(図16および図17に示す工程B)。これにより、前記の第1バルーン26−1と同様に、図17(c)の右図に示すように、側方腸壁50cが進行方向の後方に送り込まれる。
次に、第1バルーン26−1内のエアーを吸引して、図17(d)の左図に示すように、第1バルーン26−1を収縮させる(図16および図17に示す工程C)。
ここで、第1バルーン26−1を収縮させる時には、進行方向の前方に向かって収縮するので、側方腸壁50cを進行方向の前方に送り出そうとする。しかし、第2バルーン26−2が膨張して係止しているので、側方腸壁50cは進行方向の前方に送り出されない。
次に、再び第1バルーン26−1にエアーを供給する(図16および図17に示す工程D)。これにより、図17(e)の左図に示すように、さらに側方腸壁50cが進行方向の後方に送り込まれる。
次に、第2バルーン26−2内のエアーを吸引して、第2バルーン26−2を収縮させる(図16および図17に示す工程E)。
これにより、前記の図17(b)と同様に示される状態になる。
その後、工程B〜工程Eを繰り返すことにより、第1バルーン26−1と第2バルーン26−2の膨張収縮が繰り返され、これにより図18に示すように、側方腸壁50cが挿入部先端部22aから軟性部22c方向(進行方向の後方)に送り込まれる。
ここで、第1バルーン26−1と第2バルーン26−2による側方腸壁50cの送り込み動作の時間は、補助具14の突出量に基づいて定めること、が考えられる。具体的には、第1バルーン26−1と第2バルーン26−2による送り込み動作の時間をTとし、第1バルーン26−1と第2バルーン26−2による側方腸壁50cの単位長さあたりの送り込み時間をkとし、補助具14の突出量をLとし、第1バルーン26−1と第2バルーン26−2の起動時間をt0とすると、以下のような数式が考えられる。
[数1]
T=k×L+t0
このように、第1バルーン26−1と第2バルーン26−2による側方腸壁50cの送り込み動作の時間を補助具14の突出量に基づいて定めることにより、バルーンの不要な動作による腸壁の摺動を回避できる。
以上のようなバルーンによる送り込み動作として本実施例では、挿入部先端部22aのバルーン26および軟性部22cのバルーン27による送り込み動作を行う。これにより、側方腸壁50cが軟性部22cのさらに後方に送り込まれる。
図19は、挿入部先端部22aのバルーン26および軟性部22cのバルーン27による送り込み動作の第1の具体例を示す。なお、前記の図14における挿入部先端部22aのバルーン26および軟性部22cのバルーン27による送り込み動作のタイミングチャートは、この図19の具体例に対応して示している。
図19に示すように、まず、挿入部先端部22aのバルーン26による送り込み動作を開始し(ステップS101)、その後所定時間δ経過した後に軟性部22cのバルーン27による送り込み動作を開始する(ステップS102,S103)。
そして、挿入部先端部22aのバルーン26による送り込み動作の開始後、前記の数1に示す時間Tが経過し、側方腸壁50cが所定量送り込まれると、挿入部先端部22aのバルーン26による送り込み動作を停止させる(ステップS104,S105)。
次に、軟性部22cのバルーン27による送り込み動作の開始後、前記の数1に示す時間Tが経過し、側方腸壁50cが所定量送り込まれると、軟性部22cのバルーン27による送り込み動作を停止させる(ステップS106,S107)。
以上が、挿入部先端部22aのバルーン26および軟性部22cのバルーン27による送り込み動作の第1の具体例である。
また、図20は、挿入部先端部22aのバルーン26および軟性部22cのバルーン27による送り込み動作の第2の具体例を示す。なお、図21に示す挿入部先端部22aのバルーン26および軟性部22cのバルーン27による送り込み動作のタイミングチャートは、この図20の具体例に対応して示している。
図20に示すように、まず、挿入部先端部22aのバルーン26による送り込み動作を開始する(ステップS201)。
そして、前記の数1に示す時間Tが経過し、側方腸壁50cが挿入部先端部22aのバルーン26により所定量送り込まれると、挿入部先端部22aのバルーン26による送り込み動作を停止させる(ステップS202,S203)。
次に、軟性部22cのバルーン27による送り込み動作を開始する(ステップS204)。
そして、前記の数1に示す時間Tが経過し、側方腸壁50cが軟性部22cのバルーン27により所定量送り込まれると、軟性部22cのバルーン27による送り込み動作を停止させる(ステップS205,S206)。
以上が、挿入部先端部22aのバルーン26および軟性部22cのバルーン27による送り込み動作の第2の具体例である。
このように、挿入部先端部22aのバルーン26および軟性部22cのバルーン27による送り込み動作を行う。
次に、図14および図15に戻って、側方腸壁50cの送り込みが終わってバルーンの送り込み動作を停止させると、吸引口52からの気体の吸引を停止させる(ステップS17)。そして、モニタ映像を見ながらアングルノブ32の操作等を便宜行なって、補助具先端部14aの前面を新たな目標腸壁に向ける。
次いで、医師が、操作パネル64で補助具14の吸着・牽引処理の開始指示を行なうと(ステップS18)、前記のステップS3に戻って、再び補助具14の送出、吸引口52の吸着が行われる。
一方、医師が、操作パネル64で補助具14の吸着・牽引処理の開始指示を行なわず、
補助具14を使用しない場合(例えば、挿入部先端部22aを下行結腸51等の固定腸内に挿入した場合)には、操作パネル64で補助具先端部14aの格納開始指示を行なう(ステップS19)。
この指示がなされると、制御装置62は、通電装置56の動作を停止させて、吸引口52を閉じ形状に変形させる(ステップS20)。次いで、制御装置62は、判定回路80で算出される補助具14の突出量が「0」(補助具検知センサ70がOFF)になるまで、搬送モータ74を逆転させて、補助具先端部14a及び吸引口52を鉗子出口48内に格納させる(ステップS21)。
挿入部22を複雑に屈曲した管腔内に挿入したときは、上述の各処理・各操作を繰り返し実行することで、挿入部先端部22aを管腔内の目的ポイントまで到達させることができる。そして、医師は、挿入部先端部22aを目的ポイントまで到達させた後、補助具14及びガイドチューブを内視鏡12から手動で取り外す。
以上のように、本実施例によれば、補助具14により手繰り寄せた側方腸壁50cは、さらに挿入部先端部22aのバルーン26と軟性部22cのバルーン27により後方に送り込まれる。そのため、医師は、補助具14による腸壁吸引に集中でき、挿入部22の挿入効率の向上を図ることができる。このように、例えば、医師は、湾曲部22bのアングル操作と補助具14の出し入れに専念できる。
また、挿入部先端部22aのバルーン26を腸壁に係止させることにより、挿入部先端部22aの視界を早期に確保するので、医師は次の吸着箇所を探し易くなる。
また、牽引動作が終了し、牽引終了判定信号が立ち下がったところから挿入部先端部22aのバルーン26による送り込み動作が自動的に開始されるので、医師が挿入部先端部22aのバルーン26の起動指示を出す必要はない。
なお、以上示したような挿入部先端部22aのバルーン26および軟性部22cのバルーン27の代わりに、前記の図12に示すように、バルーンを挿入部22の軸を中心とした周方向に一周に亘って形成するバルーンを、挿入部22の軸方向に3つ並べて配置した場合のバルーンによる送り込み動作についても説明する。
前記の図12に示すように、挿入部先端部22aに進行方向の後方から順に、第1バルーン108と第2バルーン110と第3バルーン112の3つのバルーンが配置されている。この第1バルーン108と第2バルーン110と第3バルーン112は、ともに全体が膨張収縮自在なラテックスゴムからなる。
後述するように、第1バルーン108と第2バルーン110はともに膨張させて側方腸壁50cに係止させた状態で互いに接触するように配置されている。また、第2バルーン110と第3バルーン112はともに膨張させて側方腸壁50cに係止させた状態で互いに接触するように配置されている。一方、第1バルーン108と第3バルーン112はともに膨張させて側方腸壁50cに係止させた状態で互いに接触しないように配置されている。
また、図22は、第1バルーン108と第2バルーン110と第3バルーン112の圧力を制御するバルーン制御装置114のブロック構成図である。図22に示すように、バルーン制御装置114は主に、CPU116、ポンプ118、三方弁120、電磁弁122a,122b,122cなどから構成されている。そして、第1バルーン108と第2バルーン110と第3バルーン112を個々に独立して内圧が調整できる構造となっている。
図22に示すように、挿入部先端部22aの内部には、第1バルーン108に連通口124aを介して連通し気体が送られる送気管124(第1給排気ポート)と、第2バルーン110に連通口126aを介して連通し気体が送られる送気管126(第2給排気ポート)と、第3バルーン112に連通口128aを介して連通し気体が送られる送気管128(第3給排気ポート)とが設けられている。この送気管124と送気管126と送気管128は、湾曲部22b及び軟性部22c、ユニバーサルコード38(図1参照)の内部を通ってバルーン制御装置114に接続されている。
なお、後述する推進動作のフローは、CPU116により、ポンプ118の動作のON・OFFや、三方弁120の切り替えや、電磁弁122a,122b,122cの開閉などの制御が行なわれることによって実行される。
図23は、本発明の管内移動体アクチュエータの推進動作のタイミングチャート図である。また、図24は、図23に示す推進動作のタイミングチャート図に対応させて、各バルーンの膨張および収縮の様子を示した概略断面図である。なお、図24では、前記の送気管124,送気管126,送気管128を省略して示している。
まず、図24(a)に示すように第1バルーン108と第2バルーン110と第3バルーン112をともに収縮させた状態から、第1バルーン108に気体を充填して膨張させて、第1バルーン108を側方腸壁50cに係止させる(図23の工程A)。この時のバルーンの膨張および収縮の様子は、図24(b)のように表わすことができる。
次に、第2バルーン110に気体を充填して膨張させていく(図23の工程B)。この時のバルーンの膨張および収縮の様子は、図24(c)および図24(d)のように表わすことができる。
図24(c)に示すように、第1バルーン108を膨張状態として側方腸壁50cに係止させた状態で、第2バルーン110を膨張させていくことにより、第2バルーン110は第1バルーン108を徐々に押圧していく。
すると、第1バルーン108は、側方腸壁50cを係止したまま挿入部先端部22aの進行方向の後方に向かって傾くように倒れていく。あるいは、第1バルーン108は、その表面が側方腸壁50cを係止したまま挿入部先端部22aの進行方向の後方に向かって繰り出されるように回転する。
これにより、第1バルーン108は、側方腸壁50cに対し挿入部先端部22aの進行方向の後方(図24(c)の黒矢印)に向かって押圧力(推進力)を与える。
そのため、側方腸壁50cは挿入部先端部22aの進行方向の後方に送り込まれる。
そして、さらに第2バルーン110に気体を充填して膨張させていくと、図24(d)に示すように、第2バルーン110が側方腸壁50cに係止される。この時、図24(d)に示すように、第1バルーン108は膨張状態であるため、第2バルーン110は挿入部先端部22aの進行方向の前方に傾いた状態で側方腸壁50cに係止される。
次に、第1バルーン108から気体を吸引して収縮させて、第1バルーン108を側方腸壁50cから離間させる(図23の工程C)。この時のバルーンの膨張および収縮の様子は、図24(e)および図24(f)のように表わすことができる。
ここで、前記の図23の工程B(図24(d))において、第2バルーン110を挿入部先端部22aの進行方向の前方に傾いた状態で側方腸壁50cに係止させておいた。そのため、図24(e)に示すように、第1バルーン108は収縮し側方腸壁50cへの係止が解除されると、第2バルーン110は側方腸壁50cに係止されたまま挿入部先端部22aの進行方向の後方に傾くように倒れ込む。あるいは、第2バルーン110は、その表面が側方腸壁50cを係止したまま挿入部先端部22aの進行方向の後方に向かって繰り出されるように回転する。
これにより、第2バルーン110は、側方腸壁50cに対し挿入部先端部22aの進行方向の後方(図24(e)の黒矢印)に向かって押圧力を与える。
そのため、側方腸壁50cは挿入部先端部22aの進行方向の後方に送り込まれる。
そして、さらに第1バルーン108から気体を吸引して収縮させていくと、図24(f)に示すように、第1バルーン108と第3バルーン112が収縮した状態で、第2バルーン110が側方腸壁50cに係止した状態になる。
次に、第3バルーン112に気体を充填して膨張させていく(図23の工程D)。この時のバルーンの膨張および収縮の様子は、図24(g)および図24(h)のように表わすことができる。
図24(g)に示すように、第2バルーン110を側方腸壁50cに係止させた状態で、第3バルーン112を膨張させていくことにより、第3バルーン112は第2バルーン110を徐々に押圧していく。すると、第2バルーン110は、側方腸壁50cを係止したまま挿入部先端部22aの進行方向の後方に向かって傾くように倒れていく。あるいは、第2バルーン110は、その表面が側方腸壁50cを係止したまま挿入部先端部22aの進行方向の後方に向かって繰り出されるように回転する。
これにより、第2バルーン110、側方腸壁50cに対し挿入部先端部22aの進行方向の後方(図24(g)の黒矢印)に向かって押圧力を与える。
そのため、側方腸壁50cは挿入部先端部22aの進行方向の後方に送り込まれる。
そして、さらに第3バルーン112に気体を充填して膨張させていくと、図24(h)に示すように、第3バルーン112が側方腸壁50cに係止する。この時、図24(h)に示すように、第2バルーン110は膨張状態であるため、第3バルーン112は挿入部先端部22aの進行方向の前方に傾いた状態で側方腸壁50cに係止される。
次に、第2バルーン110から気体を吸引して収縮させて、第2バルーン110を側方腸壁50cから離間させる(図23の工程E)。この時のバルーンの膨張および収縮の様子は、図24(i)および図24(j)のように表わすことができる。
ここで、前記の図23の工程D(図24(h))において、第3バルーン112を挿入部先端部22aの進行方向の前方に傾いた状態で側方腸壁50cに係止させておいた。そのため、図24(i)に示すように、第2バルーン110が収縮し側方腸壁50cへの係止が解除されると、第3バルーン112は側方腸壁50cに係止されたまま挿入部先端部22aの進行方向の後方に傾くように倒れ込む。あるいは、第3バルーン112は、その表面が側方腸壁50cを係止したまま挿入部先端部22aの進行方向の後方に向かって繰り出されるように回転する。
これにより、第3バルーン112は、側方腸壁50cに対し挿入部先端部22aの進行方向の後方(図24(i)の黒矢印)に向かって押圧力を与える。
そのため、側方腸壁50cは挿入部先端部22aの進行方向の後方に送り込まれる。
そして、さらに第2バルーン110から気体を吸引して収縮させていくと、図24(j)に示すように、第1バルーン108と第2バルーン110が収縮した状態で、第3バルーン112が側方腸壁50cに係止した状態になる。
次に、第1バルーン108に気体を充填して膨張させていく(図23の工程F)。次に、第3バルーン112から気体を吸引して収縮させて、第3バルーン112を側方腸壁50cから離間させる(図23の工程G)。
これにより、第1バルーン108と第2バルーン110と第3バルーン112の膨張収縮の状態は、前記の図24(b)で示した状態に戻る。そして、正進動作を継続させる場合には、以上のような図23の工程B〜工程G(図24(b)〜(l))を繰り返す。
このように、膨張体として第1バルーン108と第2バルーン110と第3バルーン112を使用するので、各バルーンの膨張率の調整は容易である。そのため、各バルーンの膨張率を大きくすることにより、確実に側方腸壁50cに推進機構を接触させることができる。したがって、曲がりくねった腸管内で推進力を腸壁に確実に伝えることができる。
以上が、バルーンを挿入部22の軸を中心とした周方向に一周に亘って形成するバルーンを、挿入部22の軸方向に3つ並べて配置した場合のバルーンによる送り込み動作の説明である。
なお、ここまで挿入部先端部22aにバルーン26を配置する例を挙げたが、これに限らず、挿入部先端部22aの代わりに湾曲部22bにバルーンを配置することも考えられる。この場合も挿入部先端部22aにバルーン26を配置する例と同様な効果を得ることができる。例えば、湾曲部22bのバルーンを腸壁に係止させることにより、挿入部先端部22aの視界を早期に確保するので、医師は次の吸着箇所を探し易くなる。
<第2実施形態>
次に、図25を用いて本発明の第2実施形態の内視鏡装置130について説明を行なう。内視鏡装置130は、前述の第1実施形態と同様に、補助具14の吸着・牽引処理、及びバルーンの送り込み動作を自動制御する。
ただし、第2実施形態では、内視鏡装置130の内視鏡12の内部に、鉗子チャンネル30の他に補助具挿通用の補助具チャンネル132が設けられている。補助具14は、補助具チャンネル132内にスライド自在に常時挿通しており、内視鏡12と一体化している。なお、補助具14は、例えば内視鏡12の洗浄・消毒・滅菌(リプロセス処理)を行う時などは、内視鏡12から取り外すことができる。
補助具14の吸着・牽引処理の自動制御は、第1実施形態で説明したように補助具コントローラ16により行なわれる。補助具コントローラ16は、前記の弛み防止用のガイドチューブTを介して内視鏡12の操作部24に接続している。補助具14は、ガイドチューブT及び補助具チャンネル132内を挿通している。
図26(A)に示すように、補助具コントローラ16は、補助具14の吸着・牽引処理を行わない時、或いは補助具14の格納操作が成された時は、吸引口52を閉じ形状に変形させるとともに、補助具先端部14a及び吸引口52を補助具チャンネル132の補助具出口(補助具専用口)132a内に格納する。
補助具出口132aには、前述の第1実施形態で説明した補助具検知センサ70が設けられており、補助具コントローラ16の判定回路80は、前述の第1実施形態と同様にして補助具出口132aからの補助具先端部14aの突出量を求める。そして、補助具コントローラ16は、補助具先端部14aを補助具出口132a内に格納する際には、判定回路80で算出される補助具先端部14aの突出量が「0」(補助具検知センサ70がOFF)になるまで補助具14の牽引を行なう。
図26(B)に示すように、補助具コントローラ16は、補助具14の吸着・牽引処理の開始操作がなされた時は、補助具14の送出を開始するとともに、その補助具先端部14aが補助具出口132aから突出した後、吸引口52をラッパ形状に変形させる。それ以降の処理は、第1実施形態と同様である。
以上のように本発明の第2実施形態は、鉗子チャンネル30が補助具14により塞がらないので、補助具14を抜いてから処置具を鉗子チャンネル30に挿通する手間が省ける。
<第3実施形態>
また、図27に示すように、挿入部先端部22aの側面(周面)に、その周方向に沿って複数の挿入部吸引口134を設けてもよい。挿入部吸引口134は、負圧吸引力により、挿入部先端部22aの側方に位置する管腔の内壁である側方管腔内壁に吸着する。なお、挿入部吸引口134の数、配置位置、形状は、特に限定されず任意に変更できる。
図28に示すように、挿入部吸引口134の内側には、一端が閉口し且つ他端が閉じた略円筒形状の吸引具134aが設けられている。各吸引具134aの側面には、それぞれエアチューブ134bが接続している。各エアチューブ134bは、図示しない分岐コネクタを介して、挿入部22や操作部24やユニバーサルコード38の内部に亘って設けられた吸引チャンネル(図示せず)に接続している。
従って、各吸引具134aは、エアチューブ134b及び吸引チャンネルを介して挿入部吸引装置144(図29参照)に接続しており、この挿入部吸引装置144が作動したときに空気を吸引して、各挿入部吸引口134に負圧吸引力を発生させる。この負圧吸引力は、側方管腔内壁を傷付けない程度の力に抑えられている。なお、挿入部吸引口134から空気を吸引する構成は、図28に示した構成に限定されない。
また、図29は、第3実施形態の内視鏡装置のブロック構成図である。図29に示すように、第1実施形態(図6参照)と異なる点として、内視鏡12内に挿入部吸引口134が設けられ、この挿入部吸引口134の開口周縁部には挿入部接触センサ136が設けられている。また、補助具コントローラ138の制御装置140には、LANI/F142が設けられている。
また、挿入部吸引口134の吸引・吸引停止処理を自動制御する挿入部吸引装置144が設けられ、この挿入部吸引装置144には前記の挿入部接触センサ136が接続している。そして、この挿入部吸引装置144にはCPU145が設けられ、また、LANI/F148が設けられ、図示しないLANケーブル等を介して、補助具コントローラ138の制御装置140のLANI/F142に接続している。
その他の構成は、第1実施形態(図6参照)と共通している。
図30は、補助具コントローラ138による補助具14の吸着・牽引処理、及びバルーン制御装置28によるバルーンの送り出し処理の自動制御についてのタイミングチャート図である。
図30に示すように、挿入部吸引口134を設けた例においては、前記のように軟性部22cに設けられたバルーン27による側方腸壁50cの送り込み動作を終了した時(図30の「t7」)に、挿入部吸引口134に「弱」の負圧吸引力を発生させる。
次に、挿入部吸引口134が側方腸壁50c(図31参照)に接触すると、挿入部接触センサ136が挿入部吸引装置144へON信号を出力する(図30の「t8」)。
CPU140aは、挿入部接触センサ136からのon信号が入力されると、挿入部吸引装置144を制御して、挿入部吸引口134に「強」の負圧吸引力を発生させる。これにより図31に示すように、挿入部吸引口134が側方腸壁50cに吸着して、挿入部先端部22aが側方腸壁50cに固定されることで、S字結腸50内での挿入部先端部22aの相対位置が固定される。
そして、制御装置140は、挿入部吸引装置144から入力される負圧吸引情報に基づき、挿入部吸引口134の負圧吸引力が「強」に変更されたと判断した時に、挿入部吸引装置144の作動を停止させて、吸引口52からの空気の吸引を停止させる。これにより、吸引口52の吸着が解除されるため、挿入部吸引口134が側方腸壁50cに吸着してS字結腸50内での挿入部先端部22aの相対位置が固定された状態で、補助具14の吸着・牽引処理を再度行うことができる。
<第4実施形態>
また、図32に示すように、挿入部22に補助具チャンネル150を設け、この補助具チャンネル150内に挿入部固定用補助具152をスライド自在に挿通し、この挿入部固定用補助具152を用いて挿入部先端部22aの固定を行なってもよい。なお、補助具チャンネル150は、前記の補助具チャンネル132と同様である。
挿入部固定用補助具152は、挿入部先端部22aの前面に設けた補助具チャンネル150の補助具出口150aから出し入れ自在であり、基本的には前記の補助具14と同じ構成である。ただし、この挿入部固定用補助具152の補助具先端部152aは、略90度屈曲した屈曲形状と、挿入部先端部22aの前面に対して垂直になり、補助具出口150a内に格納可能な格納形状とに変形自在である。この変形は、前記の吸引口52と同様に、形状記憶合金からなるワイヤ(図示せず)を用いて行なわれる。
補助具先端部152aには、吸引口154が設けられている。この吸引口154は、前記の吸引口52と同じものであり、ワイヤ54(図2参照)への通電・通電停止を切り替えることで、ラッパ形状と閉じ形状とに変形する。吸引口154は、負圧吸引力により、補助具出口150aの略前方に位置する管腔の内壁である第2の前方管腔内壁に吸着する。なお、補助具チャンネル150内には、吸引口154が第2の前方管腔内壁に吸着している時に、挿入部22に対して挿入部固定用補助具152を固定する固定装置(図示せず)が設けられている。
補助具先端部152aの突出・格納・屈曲、及び吸引口154の開閉・吸引・吸引停止処理は、前記の補助具コントローラ16とほぼ同じ構成の固定用補助具コントローラ(図示せず)により制御される。
固定用補助具コントローラは、補助具先端部14aが第2位置まで牽引され、バルーンによる送り込み動作が終了した時に、補助具先端部152aを補助具出口150aから突出させる。そして、固定用補助具コントローラは、補助具先端部152aを格納形状から屈曲形状に変形させるとともに、吸引口154をラッパ形状に変形させる。なお、補助具先端部152aが補助具出口150aから突出した時に、腸壁に穿孔が発生することを防止するため、吸引口154にも吸引口52と同様に接触センサが設けられている。
次いで、固定用補助具コントローラは、吸引口154に負圧吸引力を発生させて、この吸引口154を第2の前方管腔内壁に相当するS字結腸50の腸壁50d(図33参照)に吸着させる。この際に、吸引口154の負圧吸引力を2段階で調整するようにしてもよい。また、吸引口154の吸着後に、前記の固定装置を作動させて、挿入部22に対して挿入部固定用補助具152を固定する。これにより、S字結腸50内での挿入部先端部22aの相対位置を固定することができる。
図33に示すように、吸引口154が腸壁50dに吸着した後、補助具コントローラ16は吸引口52の吸着を解除する。挿入部固定用補助具152により挿入部先端部22aを固定しているので、吸引口52の吸着解除後に、S字結腸50が元の形状・位置に復元して挿入部先端部22aの位置が相対的に後退することが防止される。
上記図32及び図33に示した実施形態では、補助具出口150aが挿入部先端部22aの前面に設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、挿入部先端部22aの側面に設けられていてもよい。この場合には、例えば、挿入部22内で補助具チャンネル150の先端部を湾曲或いは屈曲すればよく、特に湾曲させた場合には補助具先端部152aを屈曲形状に変形させる必要がなくなる。
<その他の実施形態>
上記各実施形態では、吸引口52が閉じ形状に変形された時にその一部がタック状に折り畳まれる場合を例に挙げて説明を行なったが、本発明はこれに限定されない。例えば、図34(A),(B)に示すように、吸引口52の閉じ形状が略円筒形状であってもよい。この場合には、吸引口52がラッパ形状に弾性変形し易いように、この吸引口52を変形容易な素材(例えばゴム)で形成する。
また、図35(A),(B)に示すように、吸引口52の閉じ形状が先細り形状(朝顔のつぼみ形状)になるように、この吸引口52を捩って折り畳むようにしてもよい。
上記各実施形態では、補助具先端部14aに吸引口52を設け、この吸引口52を管腔内壁に吸着させることで、補助具先端部14aを管腔内壁に固定する場合を例に挙げて説明を行なったが、本発明はこれに限定されない。例えば、図36に示すように、補助具先端部14aに一対のフック156を設け、このフック156で補助具先端部14aを管腔内壁に固定してもよい。
一対のフック156は、図示しないリンク機構により嘴状に開閉自在であり、管腔内壁にフックする開き形状と、鉗子出口48(鉗子チャンネル30)内に格納可能な閉じ形状(点線)とに変形自在である。リンク機構には、例えば操作ワイヤと、フック156が常時閉じ形状になるようにリンク機構を付勢するバネとが接続されている。この操作ワイヤを引き込み操作することで、リンク機構が作動してフック156が開き形状に変形し、操作ワイヤの引き込み操作を停止することで、バネの付勢力によりフック156が閉じ形状に変形する。
以上のように、本発明の管内移動体用アクチュエータは、補助具14により手繰り寄せた側方腸壁50cを後方へ送り込むように挿入部先端部22aのバルーン26と軟性部22cのバルーン27の内圧を制御するので、医師の作業負担を軽減しつつ複雑に屈曲したS字結腸50内でも挿入部22を容易に進めることができる。
また、バルーンのみ用いる場合に比べて、補助具14を用いることで手繰り寄せのストロークを大きくすることができ、挿入部22の挿入効率を大きくすることができる。
以上、本発明の管内移動体用アクチュエータおよびその作動方法、内視鏡について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
例えば、上記各実施形態では、吸引口52をラッパ形状に変形させているが、本発明はこれに限定されず、前方管腔内壁に吸着し易い形状(例えば、開口面積が拡がった形状)であれば特に限定されない。
また、補助具変位装置や通電装置やフック差動装置などを小型して、内視鏡12に内蔵させてもよい。これにより、補助具コントローラ16を内視鏡12と別体に設ける必要が無くなる。
また、上記各実施形態では、吸引口52の吸引力を「強」・「弱」の2段階に調整可能であるが、本発明はこれに限定されず、3段階以上に調整可能であってもよく、1段階のみとしてもよい。
また、接触センサ66や挿入部接触センサ136の代わりに、近接スイッチを設けてもよい。
また、補助具コントローラ16がプロセッサ装置18と一体化されていてもよい。また、内視鏡12のボタン等で、補助具コントローラ16の操作が行なえるようにしてもよい。
また、補助具14に、その補助具先端部14aの向きを自在に変えることができる湾曲部などを設けてもよい。これにより、吸引口52を前方管腔内壁に吸着させた状態で補助具先端部14aを湾曲させることができるので、例えば、観察し難い箇所をめくって観察し易くすることができる。
また、例えば、補助具14の送出操作を医師がモニタ映像を見ながら、手動で行なうこととしてもよい。また、医師が通電スイッチ(不図示)をON・OFFすることにより、吸引口52をラッパ形状と閉じ形状に変形させることとしてもよい。また、医師が吸引スイッチ(不図示)をON・OFFすることにより、吸引口52に負圧吸引力を発生・停止させることとしてもよい。
また、上記実施形態では、バルーン内に流体として気体を供給したが、その他、液体を供給することも考えられる。