JP5381925B2 - 酸化物の構造評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化物の構造評価方法に関し、特に、酸化物を高温に加熱して溶融成分が生じる場合に、当該酸化物を構成する相の構造を評価するために用いて好適なものである。
高温での材料の状態変化をその場観察で求める手段として、従来、伸び計を用いて長さの変化を計る方法、機械的特性の変化を引っ張りや圧縮の強度の変化により求める方法、性質や相変態等の変化を重量変化により求める方法、X線回折法を用いて高温での相を測定する方法、等が知られている。X線回折法では、他の主要な構造解析法のひとつである電子線回折法と比較すると、多様な測定雰囲気を選択できることや、その場観察が可能であることや、多重散乱が少ないために、X線回折強度の定量が比較的容易であることから、精密な構造解析がし易いこと等の利点を有する(非特許文献1、特許文献1を参照)。
X線回折法において、X線回折強度を測定するためには、試料にX線を入射し、その入射方向となす角度を変えてX線検出器をスキャンさせる(例えば、非特許文献2を参照)。そのため、精度の高いX線回折強度の測定を行うには、X線検出器のスキャン中には試料の状態が変わらないことが必要である。つまり、高温に晒されること等で短時間に試料の構造変化が生じる場合には、X線検出器をスキャンしないで測定することが必要となる。そのため、X線検出器をスキャンする範囲内の、特定の一次元方向のX線回折強度(特許文献2を参照)、もしくは二次元面内のX線回折強度(非特許文献3を参照)を同時に測定可能なX線検出器を用いたX線回折強度の測定が行われる。
しかしながら、これらの手法では、解析可能なものは、固体の結晶性が高い相の構造に限定される。よって、酸化物を高温に加熱した際に溶融成分が生じる場合、当該酸化物を構成する相の構造を評価することはできない。そのため、例えば、高炉原料用の焼結鉱の作製で重要となる「鉄鉱石粉や石灰石等を原料にして、造粒過程、焼成過程を経て焼結鉱を製造するプロセスの解析」の障害となっていた。
特公平01−17763号公報 特開平05−126765号公報
「日本金属学会会報」、第28巻、1989年、p.208 菊田惺志著、「X線回折・散乱技術 上」、東京大学出版会、1992年、1章 M.Yonemura et al., Materials Transaction, Vol.47, No.9, pp.2292
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、酸化物を高温に加熱した際に溶融成分が生じる場合に、当該酸化物を構成する相の構造を評価できるようにすることを目的とする。
本発明者らは、酸化物を高温に加熱した際に生じる溶融成分は、溶液状態であっても一定のX線回折強度が観察されることに注目し、X線回折強度をフーリエ変換すれば溶融成分の原子の配列が得られるということを今回新たに見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
酸化物の、X線回折角度におけるX線回折強度を測定し、測定した結果を用いて、当該酸化物の構造を評価する酸化物の構造評価方法であって、前記酸化物を加熱チャンバー内で高温に加熱し、当該酸化物に溶融成分を生じさせる工程と、前記溶融成分を生じさせた酸化物にX線発生装置からX線を照射し、X線回折角度におけるX線回折強度を二次元X線検出器で測定する工程と、前記X線回折角度から得られる散乱ベクトルの大きさを独立変数とし、前記X線回折強度から得られる構造因子を従属変数として、当該構造因子に、当該散乱ベクトルの大きさを乗じた関数をフーリエ変換して、前記溶融成分を生じさせた酸化物中の原子配置を表す関数を求める工程と、前記原子配置を表す関数のピーク値により、前記溶融成分を生じさせた酸化物の溶融相及び結晶性の相を判別し、当該溶融相及び当該結晶性の相の構造を同時に評価する工程と、を含むことを特徴とする酸化物の構造評価方法。
本発明によれば、酸化物を高温に加熱した際に溶融成分が生じる場合に、当該酸化物を構成する相の構造を評価することができる。
酸化物構造評価システムの構成の一例を示す図である。 入射X線、散乱X線、散乱面、散乱ベクトルが観測されるデバイリングの関係の一例を模式的に示す図である。 X線回折角度とX線回折強度との関係の一例を示す図である。 原子相関の密度と原子相関の距離との関係の一例を示す図である。 実施例2で得られたX線回折強度マップの一例を示す図である。 実施例2で得られた酸化物の結晶相の構造の一例を示す図である。 実施例2で得られた酸化物の溶融相の構造の一例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
高温に加熱して溶融体が生じる酸化物(MOx)の構造を評価する場合、従来は、次のようにしていた。即ち、結晶性の相については、観察されるX線回折強度の強く鋭いピークを標準物質のものと比較して、その構造を決定していた。酸化物に溶融相が存在する場合、観測されるX線回折強度は非常にブロードで微弱である。このため、溶融相から観察されるX線回折強度は、結晶性の相から観察される、X線回折強度の強く鋭いピークにまぎれてしまう。よって、従来は、結晶性の相と共存する溶融相の構造評価は行われていなかった。
酸化物(MOx)の溶融体は、元素Mとその周りの最近接の酸素原子とから構成されるMOaユニットが、互いに共有結合的な配列により連結された状態になっている。そのため、酸化物の溶融体には、MOaユニットに起因する周期性が必ず存在する。この周期性は、固体結晶のそれに比べると低いため、観測されるX線回折強度は非常にブロードで微弱である。そのため、通常のX線回折法による構造解析法のように、X線回折強度の鋭いピークを標準物質のものと比較して解析する方法では、溶融相の構造を解析できない。そこで、結晶性の相と溶融相とが酸化物に存在する場合、観測されるX線回折強度を、結晶性の相と溶融相とで区別して評価するのではなく、全てのX線回折強度(回折角度2θで表される関数)をバッグランドも含めて(相関のある原子間の距離rで表される関数)フーリエ変換することにより、材料中に原子がどのように配列しているかを求められることを見出した。
一般的に、材料の結晶性の程度に関わらず、X線回折の強度と、材料中の原子との相関は次の(式1)で与えられる(例えば、「Waseda, The Structure of Non-Crystalline Materials, McGraw-Hill Int. Book Co., 1980)を参照)。
Figure 0005381925
ここで、Qは、散乱ベクトルの大きさ(≡4πsinθ/λ)であり、X線回折角度から得られる。a(Q)は、構造因子であり、X線回折強度から得られる。θは、回折角度の1/2である。λは、X線の波長である。ρ(r)は、ある原子がr=0にあった時、別の原子を距離rに見出す頻度(密度)である。言い換えると、ρ(r)は、材料中に原子がどのように配列しているかを示す関数であり、これを決定することにより材料の構造が決まる。(式1)の左辺のρ(r)が、相関のある原子の密度に対応する量であるから、(式1)の右辺のa(Q)を、実験(X線回折強度の測定)により求めれば、ρ(r)、即ち、酸化物の構造を決定することができる。
ρ(r)は、材料中に原子がどのように配列しているかを表す関数であり、結晶性の相に対応するピークは鋭く、溶融相に対応するピークはブロードになる。そこで、ピークの周期性とその幅(例えば、半価幅)とを評価することにより、溶融相及び結晶性の相を判別し、それぞれの相の構造を同時に評価することが可能になる。
以下に、酸化物を高温に加熱した際に溶融成分が生じる場合について、酸化物を構成する相の構造を評価する方法を具体的に述べる。尚、以下の説明では、ρ(r)を、必要に応じて「原子相関の密度」と称し、rを、必要に応じて「原子相関の距離」と称する。
図1は、酸化物構造評価システムの構成の一例を示す図である。図1(a)は、酸化物構造評価システムの概略構成を示す図であり、図1(b)は、酸化物構造評価システムを構成する各装置の位置関係を示す図である。尚、図1では、表記の都合上、酸化物構造評価システムを構成する装置自体の詳細を省略する。
図1に示すような酸化物構造評価システムを用いて実験(酸化物のX線回折強度の測定)を行うことにより、(式1)の右辺を求めることができる。
図1において、酸化物構造評価システムは、X線発生装置1と、平行化光学素子2と、高温チャンバー(加熱チャンバー)4と、二次元タイプのX線検出器である二次元X線検出器5と、を有する。
X線発生装置1は、X線を発生(照射)するX線源である。平行化光学素子2は、X線発生装置1で発生したX線の試料3への入射方向を平行化するものである。二次元X線検出器5は、試料3に入射したX線の反射方向に配置され、試料3から反射したX線を二次元的に検出するものである。
高温チャンバー4は、試料3に溶融成分を生じさせるものであり、その上面に、X線が透過可能な窓を有する。この窓は、例えば、ベリリウムや金属薄膜を蒸着した耐熱性有機物を用いることにより構成される。高温チャンバー4内に、酸化物の試料3を入れたサンプルホルダーを配置し、ヒータにより試料3を高温に加熱する。また、高温チャンバー4内のガス雰囲気を変えることにより、異なるガス雰囲気中でのX線回折強度の測定が可能となる。X線発生装置1により発生するX線は、真空、大気、及び各種ガス中を透過可能であるため、試料3を種々のガス雰囲気で高温に保持した条件でX線回折強度を測定することが可能になる。
試料3を保持するサンプルホルダーは、高温において試料3との反応性が低い材質が好ましい。例えば、試料3となる酸化物が、Fe-Ca-O系の化合物である場合、サンプルホルダーの材質として、アルミナ、サファイア、白金、BN又はTiC等が好ましい。溶融により試料3がサンプルホルダーからこぼれ出すことを防ぐためには、サンプルホルダーを、箱状、もしくは二重箱の構造にすれば良い。
ここで、X線検出器として、二次元タイプの二次元X線検出器5を配置する理由を述べる。前述したように、高温チャンバー4内に、高温での試料3との反応性が低い材質のサンプルホルダーを設置して、X線回折を測定するが、サンプルホルダーにおける試料3との反応性をさらに低減するには、できる限り短時間で測定することが好ましい。そのためには、X線検出器をスキャンさせる必要がない、二次元タイプの二次元X線検出器5を使用することが必要となる。二次元タイプの二次元X線検出器では、X線検出器をスキャンさせる必要がないため、短時間での測定が可能となり試料3とサンプルホルダーとの反応性を低減させることが可能となる。さらに、X線検出器をスキャンさせると、スキャン中に試料3の状態が変化した場合、試料3の異なる状態を測定することになるため、正しい構造解析ができない。これに対し、X線検出器をスキャンさせない二次元タイプの二次元X線検出器5を用いることにより、どの回折位置も、試料3の同じ状態の構造を反映したものとなり、構造解析の精度が飛躍的に向上する。
次に、二次元タイプの二次元X線検出器5を用いた場合のメリットを述べる。図2は、入射X線21、散乱X線22、散乱面23、散乱ベクトルQが観測されるデバイリング24の関係の一例を模式的に示す図である。酸化物の試料3中に、X線が照射される領域(通常、0.1[mm]〜10[mm]角、程度の範囲)を構成する結晶粒の数が充分多い場合には、散乱面23は任意の方向にあるため、(式1)の散乱ベクトルQの観察される方向は、X線の回折角度2θ≡θS+θDで決まる円錐の底面に相当する円周(デバイリング24)上に均一に観察される。なお、この円の直径は散乱ベクトルQの大きさ(≡4πsinθ/λ)に相当する。そのため、二次元検出器で散乱X線22を観察すると、この円周の一部(図2の円弧25)が観察され、その強度は均一である。しかし、高温での反応や結晶粒の成長により、回折に寄与する結晶粒の数が少なくなった場合には、観測されるデバイリングが不連続になる。そうすると、従来のX線検出器をスキャンする方法や一次元タイプの一次元X線検出器では、その測定方向がデバイリングにおける不連続点と一致すると、X線回折強度が著しく低下するか若しくは全く測定されない場合がある。これに対し、二次元タイプの二次元X線検出器5を用いてX線回折強度を測定し、デバイリング24の円弧25に沿ってX線回折強度を積算することにより、正しいX線回折強度を測定することが可能になり、試料3の構造解析の精度が飛躍的に向上する。
このように、試料3を加熱し、二次元タイプの二次元X線検出器5により、X線回折強度の測定をし、その測定の結果から得られるX線回折角度により、(式1)の散乱ベクトルの大きさQが求まると共に、X線回折強度により(式1)の構造因子a(Q)が決まる。よって、(式1)の右辺に示す、散乱ベクトルの大きさQを独立変数とし、構造因子a(Q)を従属変数として、当該構造因子に散乱ベクトルの大きさを乗じた関数をフーリエ変換して、原子配置を表す関数(原子相関の距離rの関数)にすることにより、(式1)の左辺のρ(r)、即ち、酸化物(試料3)の構造を決定することができる。
(式1)の右辺の積分範囲は、厳密にはQ=0〜∞[nm-1]となっているが、現実の酸化物材料内の原子の配列では、原子サイズよりも小さな距離に隣接原子が存在する確率や、無限大の距離に存在する原子と相関がある確率は、どちらも無視でき、(式1)の右辺の積分範囲は、ある有限の範囲にすればよい。通常のX線回折測定では、例えば、X線回折角度2θは、数[°]から180[°]であり、X線の波長λは、0.071[nm](Cu K・
線)、0.154[nm](Mo K・線)であるので、Q=10〜70 nm-1 (Cu K・線)、Q=20
〜160 nm-1 (Mo K・線)程度となる。よって、この範囲の測定でも、十分に実用に耐え
る結果を得ることができる。
フーリエ変換して得られた(式1)の左辺のρ(r)をプロットすると、酸化物である試料3を高温に加熱した際に、当該酸化物が構成する相の構造(原子相関)に対応するピークを得ることができる。このピークは、溶融相と結晶相との両方に対応するものであるが、原子相関から、各ピークがどの相に対応するかは容易に判断することができる。すなわち、結晶性の固体に対応するピークは鋭く、溶融成分に対応するピークはブロードになっている。そのため、溶融相の同定も容易に可能である。例えば、ピークの鋭さを表す指標(例えば半価幅)に対して閾値を設定し、その閾値を超えたか否かによって、各ピークがどの相に対応するかを判断することができる。各相の同定の後、そのピークの強度(面積)を比較することにより、各相の分率を求めることができる。
二次元X線検出器5で検出されたX線回折強度から、結晶性の相と溶融相とを同定し、各相の分率を求めることは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種のインターフェースを備えた情報処理装置(例えばPC)を用いることにより実現できる。
以上のように本実施形態では、高温チャンバー4内で加熱されている酸化物の試料3に対してX線発生装置1からX線を照射し、試料3におけるX線回折強度を、二次元X線検出器5により測定する。そして、そのX線回折強度をフーリエ変換して、溶融成分を生じさせた酸化物中の原子配置を表す関数を求め、当該原子配置を表す関数のピーク値から、前記溶融成分を生じさせた酸化物の溶融相及び結晶性の相を判別し、該溶融相および該結晶性の相の構造を同時に評価することにより、酸化物の構造を評価する。したがって、酸化物を高温に加熱した際に溶融成分が生じる場合に、当該酸化物を構成する相の構造を評価することができる。
次に、実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、X線発生装置1として回転対陰極型のX線発生装置を用いた。また、試料3を入れた白金製のサンプルホルダーを、高温チャンバー4内において、ヒータ上に配置した。高温チャンバー4には、ベリリウム製の窓を設置し、照射されたX線及び回折したX線が当該窓を透過することが可能になっている。X線検出器は、必要に応じて、二次元タイプの二次元X線検出器5を一次元タイプの一次元検出器に取り替えることができるような構造にした。
高温チャンバー4は、試料3の表面中心軸(θ軸)の周りに回転可能となっており、試料3をその表面がほぼ水平になるように設置する。高温チャンバー4の周りに、このθ軸を中心に回転可能なアームを二台設置し、それぞれのアームにX線発生装置1及びX線検出器5を設置する。そして、X線発生装置1を設置したアーム、および、X線検出器5を設置したアームをそれぞれ、試料表面から、角度θS及びθDの角度だけ回転させた位置に配置することにより、X線回折強度の測定を行う。角度θSは試料3へのX線の入射角度、角度θDは試料3からの回折X線の出射角度に相当する。角度θS+θD(≡2θ)は、X線の回折角度に対応する。試料表面とX線の回折面が平行になるような条件(つまり、θS=θD)で測定するのが、解析が簡単になるので望ましい。しかし、試料3内の結晶がランダムに配列していない場合や、試料深さ方向に構造の不均一がある場合には、敢えて、θS≠θDの条件、例えば、θSを固定して、θDだけを増加させて測定することもある。なお、どのような条件で測定しても、X線の回折角度2θ≡θS+θDに対して、その強度を測定すれば、本発明は適用可能である。
二次元X線検出器5としてイメージングプレートを設置した装置を用いて、酸化物である試料3の高温でのX線回折強度を測定した。X線源としては、エネルギーが12.0[keV]の放射光を用いた。
チタン板を試料3として、大気中で1800[℃]の高温に試料3を加熱した後、800[℃]まで1分で試料3を冷却し、X線回折強度を測定した。図3は、X線回折角度とX線回折強度との関係の一例を示す図である。図4は、図3に示したX線回折角度に対するX線回折強度から構造因子a(Q)を決定し、これを(式1)に代入してフーリエ変化した結果の一例を示す図である。具体的に、図4は、原子相関の密度ρ(r)と原子相関の距離rとの関係(酸化物の構造の相関)の一例を示す図である。図4に示す結果から、酸化物である試料3の構造を推定した。バックグランドを差し引いて求めた原子相関の密度ρ(r)のピークを、Gaussian関数とLorenz関数とを足し合わせた関数でフィッティングし、その半価幅が小さいもの(通常0.03[nm]程度より小さいもの)を結晶相とし、半価幅が大きいもの(通常0.03nm程度以上のもの)を溶融相とし、それらの強度の比率から、結晶相と溶融相との比率を決定した。溶融相と結晶相の比率は、それぞれ18[%]、82[%](質量分率)であった。そして、結晶相の構造は、周期性の位置(原子相関の距離rが、0.2[nm]及び0.36[nm]付近)から、試料3は、アナターゼ型のTiO2に近い構造であることが分かった。
(実施例2)
実施例2でも、実施例1と同様の装置を作製し、X線発生装置1として、回転対陰極型のX線発生装置(Co K線、10[kW])を用い、発生するX線ビームを平行化光学素子2により平行化して試料3に照射した。X線検出器として、二次元X線検出器であるDECRTIS社製のPILATUS(登録商標)を用いた。
試料3として、FeOOH(62[質量%])、Fe2O3(18[質量%])、及びCaCO3(8[質量%])、SiO2(12[質量%])を混合した粉末を用いた。試料3を大気中で20[K/min]の速度で1773[K]まで加熱し、その温度で試料3を10[min]保持した後、焼温時と同様の速度で常温まで冷却した。昇温〜降温の間、回折角度2θ=20[°]〜50[°]の範囲のX線回折強度を二次元X線検出器5で測定した(X線検出器は固定し、測定時間を10[sec]とした)。このような装置を用いて、高温での酸化物の構造を測定した。
図5は、温度T=1473[K]付近で測定した回折デバイリングの一部(X線回折強度マップ)の一例を示す図である。図5では、回折角度2θに対応するX線回折強度を濃淡で示したもので、白色である程、X線回折強度が強いことを示している。図5では、試料3からのX線回折強度が、円錐方向(デバイリング)の一部の円弧として観測されている。観察されるX線回折強度(デバイリング)が、X線回折角度によっては不連続になっているのは、高温での反応や結晶粒の成長により、X線回折に寄与する結晶粒の数が少なくなったためであると考えられる。
そこで、デバイリング24の円弧25に沿ってX線回折強度を積算することにより、正しいX線回折強度を測定し、前述した手法で試料3の構造解析を行った。即ち、図5に示すX線回折強度のフーリエ変換を行って、酸化物の構造を推定した。その結果、溶融相と結晶相との比率は、それぞれ14[質量%]、86[質量%]であった。結晶相は、Fe2O3(41[質量%])、Fe3O4(23[質量%])、及びCa2Fe9O12.8(22[質量%]))から構成される。図6は、Fe2O3(図6(a))、Fe3O4(図6(b))、及びCa2Fe9O12.8(図6(c))の構造を示す図である。図6(a)、(b)、(c)の白抜きの八面体構造ユニットは、その中央に位置した鉄原子の周りに6個の酸素原子が配位した構造を示す。また、図6(c)の網掛けで示した多面体構造ユニットは、その中央に位置したカルシウム原子の周りに酸素原子が配位した構造を示す。また、図7は、X線回折強度をフーリエ変換して求めた、溶融相の構造を示す原子相関(図7(a))と構造モデル(図7(b)))を示す。図7(b)に示すように、鉄−酸素の構造ユニット(白抜きの八面体構造)とカルシウム−酸素の構造ユニット(網掛けの多面体構造)が頂点を共有して互いに配列している様子が、図7(a)に示される相関(Ca-Fe間の距離)から推定される。
尚、以上説明した本発明の実施形態のうち、情報処理装置が行う処理は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
1 X線発生装置
2 平行化光学素子
3 試料
4 高温チャンバー
5 二次元X線検出器

Claims (1)

  1. 酸化物の、X線回折角度におけるX線回折強度を測定し、測定した結果を用いて、当該酸化物の構造を評価する酸化物の構造評価方法であって、
    前記酸化物を加熱チャンバー内で高温に加熱し、当該酸化物に溶融成分を生じさせる工程と、
    前記溶融成分を生じさせた酸化物にX線発生装置からX線を照射し、X線回折角度におけるX線回折強度を二次元X線検出器で測定する工程と、
    前記X線回折角度から得られる散乱ベクトルの大きさを独立変数とし、前記X線回折強度から得られる構造因子を従属変数として、当該構造因子に、当該散乱ベクトルの大きさを乗じた関数をフーリエ変換して、前記溶融成分を生じさせた酸化物中の原子配置を表す関数を求める工程と、
    前記原子配置を表す関数のピーク値により、前記溶融成分を生じさせた酸化物の溶融相及び結晶性の相を判別し、当該溶融相及び当該結晶性の相の構造を同時に評価する工程と、
    を含むことを特徴とする酸化物の構造評価方法。
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