JP5378260B2 - 開口部の閉塞部材、航空機 - Google Patents

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Description

本発明は、航空機の機体に設けられる開口部の閉塞部材、およびこれを備えた航空機に関する。
航空機の主翼は、桁材の上下に翼表面を形成する翼面パネルを取り付けることで、中空構造とされている。このような主翼の内部空間が燃料タンクとされているのが一般的である。
そして、燃料タンクの内部の点検・保守作業等を行うため、主翼の表面に、開口部が形成されている。通常時においては、この開口部はアクセスドアにより閉塞され、点検・保守作業等を行うときには、アクセスドアを開放する。(例えば、特許文献1参照。)。
アクセスドアは、開口部に対して主翼の内部空間側に配置されるドア本体と、主翼の外部側に配置されるクランプリングとから構成される。
ドア本体、クランプリングは、それぞれ開口部よりも大きな外形寸法を有している。ドア本体の外周部と、クランプリングの外周部とで、開口部の周縁部を挟み込んだ状態で、ドア本体とクランプリングとがファスナ部材等により締結されることで、ドア本体により開口部を閉塞する。
"Airframe Structural Design" Michael C. Y. Niu, Conmilit Press Ltd.社, 香港, 1988年, p.265, Fig. 8.3.16
ところで近年、航空機の主翼に炭素繊維を用いた複合材料を用いることが検討されている。主翼が通常の金属材料により形成されている場合、アクセスドアに雷が落ちても、雷による電流はアクセスドアから主翼の翼面パネルへと流れて分散する。しかし、主翼が複合材料により形成されている場合、アクセスドアに雷が直撃した場合、電流が分散しにくく、アクセスドアの外周部でアーク放電が生じる可能性があるため、確実な耐雷対策を施す必要がある。
また、炭素繊維を用いた複合材料は、わずかではあるが電流を流す。アクセスドアを形成する材質に関わらず、アクセスドアが電気的に孤立してしまうことを防ぐため、アクセスドアと翼面パネルの間で電気的ボンディングを確保する必要がある。
航空機の機体を炭素繊維複合材料で形成する場合、接触面で電気的ボンディングを確保しようとすると、ドア本体やクランプリングを形成する材料は、炭素繊維複合材料と同種金属と見做せる金属である、チタニウム合金、CRES等に限定されてしまう。しかし、チタニウム合金、CRES(ステンレス合金)ともに、難加工材であり、さらに、チタニウム合金は高価であり、CRESは比重が大きく重量増に繋がるという問題がある。
なお、このような問題は、航空機の機体に設けられた他の開口部についても共通する。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、耐雷性能に優れる開口部の閉塞部材を提供することを目的とする。
かかる目的のもとになされた本発明は、航空機の機体の外表面を構成する炭素繊維を含んだ複合材料からなるパネルに形成された開口部の閉塞部材であって、閉塞部材は、少なくとも機体の外方側に臨む側がチタン合金、ステンレス合金、炭素繊維を含んだ複合材料のいずれかにより形成されるとともに、パネルの一面側に配置され、開口部よりも大きな外径寸法を有して開口部を塞ぐ閉塞部材本体と、体の外方に臨む側が炭素繊維を含んだ複合材料により形成され、機体の内方に臨む側が金属材料により形成されるとともに、前記パネルの他面側に配置され、前記開口部よりも大きな外径寸法を有したリング状のクランプ部材と、閉塞部材本体の外周部とクランプ部材の外周部とでパネルを挟み込んだ状態で、閉塞部材本体とクランプ部材とを締結するファスナと、を備え、閉塞部材本体とクランプ部材の内周部とが突き当たり、クランプ部材の外周部と開口部の内周縁部とが突き当たることで、閉塞部材がクランプ部材を介し、パネルに電気的に接続されていることを特徴とする。
このようにして閉塞部材本体に雷が直撃した場合に、クランプ部材を構成する炭素繊維を通して電流を開口部周囲のパネルへと流すことができる。
また、クランプ部材において、機体の外表面を構成するパネルと接する部分を、パネルと同じ炭素繊維複合材料により形成することで、チタンやCRESのような炭素繊維複合材料と電気的に同属の金属を用いた場合と比べ、安価かつ軽量に、電気的ボンディングを確保することが可能となる。
閉塞部材本体とクランプ部材の内周部との突き当たり面、クランプ部材の外周部と開口部の内周縁部との突き当たり面は、機体表面に直交する方向に対して傾斜したテーパ面とするのが好ましい。このようにすることで、炭素繊維の切断面同士を突き合わせることができ、電気的ボンディングを確実に行うことができる。
また、クランプ部材を構成する金属材料としては、アルミ合金が例示される。
クランプ部材は、複合材料により形成された第一の層と、金属材料により形成された第二の層との間に、絶縁層を設けることができる。この場合、第一の層と第二の層とを、接着剤により一体に接合することができる。
このような閉塞部材が設けられる開口部は、いかなる用途、構成であっても良いが、開口部が、機体を構成する主翼に設けられ、主翼内に設けられた燃料タンクへの出入り口である場合、アーク放電の発生を抑えることができるため、特に好ましい。
本発明によれば、閉塞部材に雷が直撃した場合に、電流を、クランプ部材を構成する炭素繊維を通して開口部周囲のパネルへと流すことができる。その結果、閉塞部材を、耐雷性能に優れるものとすることができる。
本実施の形態における航空機の主翼に設けられたアクセスドアを示す斜視図である。 主翼の翼面パネルに対するアクセスドアの取付構造を示す断面図である。 主翼の翼面パネルに対するアクセスドアの取付構造の他の例を示す断面図である。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における開口部の閉塞部材を適用した航空機の機体を構成する主翼10に設けられたアクセスドア(閉塞部材)20を、主翼10の内側から見た斜視図である。
アクセスドア20は、主翼10の内部空間に設けられた燃料タンク内に整備担当員が出入りするため、主翼10の上側または下側の表面を形成する翼面パネル(パネル)11に設けられている。
図2に示すように、翼面パネル11には、主翼10の内外を連通する開口部12が形成されている。この開口部12は、例えば、長円系、楕円形、円形等、適宜形状とすることができる。
アクセスドア20は、開口部12に対して主翼10の内部空間側に配置されるドア本体(閉塞部材本体)30と、主翼10の外部側に配置されるクランプリング(クランプ部材)40と、これらドア本体30とクランプリング40とを締結するファスナ部材(ファスナ)50と、から構成される。
ドア本体30は、開口部12よりも大きな外形寸法を有している。ドア本体30は、翼面パネル11の翼外表面11aと連続した面を形成する外表面31aを有し、開口部12よりも小さな外形寸法とされたプレート部31と、プレート部31の外周部に一体に形成され、主翼10の内部空間側において、開口部12の周囲に突き当たるフランジ部32と、を備えている。
フランジ部32は、主翼10の内部空間側において、開口部12の周囲に突き当たる突き当たり面32aと、突き当たり面32aよりも内側において、クランプリング40に対向する部分に形成された、ファスナ部材50の受け部33と、を備えている。
受け部33は、ドア本体30の外周部の周方向に沿って、ファスナ部材50の設置位置に対応して複数が設けられている。
各受け部33は、主翼10の内部空間側に向けて突出しており、クランプリング40に対向する側に開口した凹部33aが形成されている。そして、凹部33a内に、ファスナ部材50を構成するナット51を保持するとともに、ファスナ部材50を構成するファスナ本体52の軸部52aを収容する。
クランプリング40は、開口部12の内径寸法よりも大きな外径と、開口部12の内径寸法よりも小さな内径を有したリング状をなしている。クランプリング40は、断面四角形状で、主翼10の外側となる外表面40aが、翼面パネル11の翼外表面11aと連続した面を形成し、ドア本体30の受け部33に対向する対向面40bが、外表面40aと平行に形成されている。
クランプリング40には、外表面40a、対向面40bを貫通する貫通孔41が、ドア本体30の受け部33に対応した位置に形成されている。各貫通孔41には、ファスナ部材50の軸部52aが挿通される。各貫通孔41において、主翼10の外表面に対向する側に、ファスナ部材50の頭部52cを収容するテーパ状の座面42が形成されている。
本実施形態においては、クランプリング40は断面台形状で、外表面40aと対向面40bの間にテーパ面40c、40dが形成されている。これらテーパ面40c、40dは、対向面40b側から外表面40a側に向けて、それらの間隔が漸次拡大するよう傾斜されている。
前記のプレート部31の外周部には、クランプリング40の内周側のテーパ面40cに当たる当たり面34が形成されている。本実施形態において、当たり面34は、外表面31aから、主翼10の内側を向く内表面31b側に向けて、プレート部31の外径寸法が漸次拡大するよう、クランプリング40のテーパ面40cに対応した角度で傾斜して形成されている。
また、翼面パネル11の開口部12の内周部には、クランプリング40の外周側のテーパ面40dに当たる当たり面14が形成されている。本実施形態において、当たり面14は、クランプリング40のテーパ面40dに対応した角度で傾斜して形成されている。
このようなアクセスドア20は、開口部12を閉塞した状態においては、ドア本体30のフランジ部32の突き当たり面32aと、クランプリング40とで、開口部12の内周縁部を挟み込む。そして、ファスナ部材50のファスナ本体52を、クランプリング40の貫通孔41に主翼10の外側から挿入し、軸部52aをナット51にねじ込むことによって、ドア本体30とクランプリング40とが締結される。
この状態で、開口部12の当たり面14とクランプリング40のテーパ面40dとが突き当たり、クランプリング40のテーパ面40cとドア本体30のプレート部31の当たり面34とが突き当たる。
さて、本実施形態において、上記のドア本体30は、少なくとも機体の外方側に臨む側が炭素繊維を用いたCFRP(複合材料)、チタン合金、CRES(ステンレス合金)のいずれか一つによって形成されている。ドア本体30が複合材料で形成されている場合、ドア本体30のプレート部31の当たり面34は、主翼10の表面に沿った方向に設けられた導電性を有する炭素繊維の端部が露出している。
一方、クランプリング40は、炭素繊維を用いたCFRP(複合材料)により形成されている。テーパ面40c、40dには、主翼10の表面に沿った方向に設けられた導電性を有する炭素繊維の端部が露出している。
また、図3に示すように、クランプリング40は、主翼10の外側に臨む外表面40aが、炭素繊維を用いたCFRPからなる複合材料層60により形成され、ドア本体30の受け部33に対向する対向面40bが、アルミ合金等からなる金属材料層61により形成されたハイブリッド構造とすることもできる。これら複合材料層60と金属材料層61とは、例えば絶縁性のエポキシ系材料からなる接着剤62により一体に接合された積層構造とされている。
ここで、複合材料層60には、接着剤62による接着面側に、ガラス繊維(絶縁材料)が焼き付けられることによって、図示しない絶縁膜が形成されている。
金属材料層61には、接着剤62による接着面側に絶縁材料が塗装されることによる絶縁膜(図示なし)が形成されている。
これら複合材料層60の絶縁膜、接着剤62、金属材料層61の絶縁膜により、絶縁層を形成することができる。
また、クランプリング40のテーパ面40c、40dは傾斜面であるため、クランプリング40全体(図2の構成の場合)、あるいは複合材料層60(図3の構成の場合)を構成する、主翼10の表面に沿った方向に設けられて導電性材料を有する炭素繊維の端部が、テーパ面40c、40dに露出している。
また、主翼10の開口部12の当たり面14においても、翼面パネル11を形成し、主翼10の表面に沿った方向に設けられて導電性を有する炭素繊維の端部が露出している。
このような構成により、ドア本体30、クランプリング40、翼面パネル11の開口部12は、ドア本体30の当たり面34とクランプリング40のテーパ面40cとの突き合わせ部分、クランプリング40のテーパ面40dと開口部12の当たり面14との突き合わせ部分において、導電性材料どうしの面ボンディングにより電気的に接続される。これにより、ドア本体30に落雷しても、電流は、ドア本体30からクランプリング40を経て翼面パネル11へと拡散していくので、耐雷性を向上させることができる。
また、ドア本体30の当たり面34、クランプリング40のテーパ面40c、40d、開口部12の当たり面14は、例えば、ドア本体30、クランプリング40の着脱方向、すなわちドア本体30や翼面パネル11の表面に直交する面内である場合、これらの面に露出した炭素繊維の端部が、ドア本体30やクランプリング40の着脱を繰り返すうちにこすれてほぐれてしまう可能性がある。これに対し、これらの面をテーパ面とすることで、炭素繊維がほぐれるのを防止することができる。
さらに、テーパ面どうしの面接触であるため、クランプリング40のテーパ面40dと開口部12の当たり面14には、炭素繊維の切断面が大量に露出する。これにより、クランプリング40のテーパ面40dと開口部12の当たり面14の炭素繊維どうしの接触面積を増やし、これらを確実に接触させて電気的な導通を確保することができる。
なお、上記実施の形態では、ドア本体30とクランプリング40について説明をしたが、それらの締結構造や、ドア本体30やクランプリング40の形状等については、上記したものに何ら限定する意図はなく、適宜他の構成とすることが可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
10…主翼、11…翼面パネル(パネル)、12…開口部、14…当たり面、20…アクセスドア(閉塞部材)、30…ドア本体(閉塞部材本体)、31…プレート部、31a…外表面、31b…内表面、32…フランジ部、33…受け部、34…当たり面、40…クランプリング(クランプ部材)、40a…外表面、40b…対向面、40c…テーパ面、40d…テーパ面、41…貫通孔、50…ファスナ部材(ファスナ)、60…複合材料層、61…金属材料層、62…接着剤

Claims (7)

  1. 航空機の機体の外表面を構成する炭素繊維を含んだ複合材料からなるパネルに形成された開口部の閉塞部材であって、
    前記閉塞部材は、
    少なくとも前記機体の外方に臨む側がチタン合金、ステンレス合金、炭素繊維を含んだ複合材料のいずれかにより形成されるとともに、前記パネルの一面側に配置され、前記開口部よりも大きな外径寸法を有して前記開口部を塞ぐ閉塞部材本体と、
    記機体の外方に臨む側が炭素繊維を含んだ複合材料により形成され、前記機体の内方に臨む側が金属材料により形成されるとともに、前記パネルの他面側に配置され、前記開口部よりも大きな外径寸法を有したリング状のクランプ部材と、
    前記閉塞部材本体の外周部と前記クランプ部材の外周部とでパネルを挟み込んだ状態で、前記閉塞部材本体と前記クランプ部材とを締結するファスナと、を備え、
    前記閉塞部材本体と前記クランプ部材の内周部とが突き当たり、前記クランプ部材の外周部と前記開口部の内周縁部とが突き当たることで、前記閉塞部材が前記クランプ部材を介し、前記パネルに電気的に接続されていることを特徴とする開口部の閉塞部材。
  2. 前記閉塞部材本体と前記クランプ部材の内周部との突き当たり面、前記クランプ部材の外周部と前記開口部の内周縁部との突き当たり面が、前記機体表面に直交する方向に対して傾斜したテーパ面とされていることを特徴とする請求項1に記載の開口部の閉塞部材。
  3. 前記クランプ部材は、前記複合材料により形成された第一の層と、前記金属材料により形成された第二の層との間に、絶縁層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の開口部の閉塞部材。
  4. 前記第一の層と前記第二の層とが、接着剤により一体に接合されていることを特徴とする請求項3に記載の開口部の閉塞部材。
  5. 前記クランプ部材を構成する前記金属材料が、アルミ合金であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の開口部の閉塞部材。
  6. 前記開口部が、前記機体を構成する主翼に設けられ、前記主翼内に収容された燃料タンクへの出入り口であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の開口部の閉塞部材。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載の前記開口部の閉塞部材を備えた航空機。
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