JP5377531B2 - スピンmos電界効果トランジスタ - Google Patents
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本発明は、フルホイスラー合金を用いた磁気抵抗効果素子、及びスピンMOS電界効果トランジスタ、磁気記憶装置、磁気ヘッドなどを含むスピンデバイスに関する。
近年、強磁性体/絶縁体/強磁性体のサンドイッチ構造で構成されるトンネル型磁気抵抗効果(TMR:Tunneling MagnetoResistance effect)素子を記憶素子として用いた磁気記憶装置(MRAM:Magnetic Random Access Memory)への応用が提案されている。これは一つの強磁性体層のスピンを固定し(磁化固定層)、もう一つの強磁性体層のスピンを制御する(フリー層)ことによってサンドイッチ構造間の抵抗を変化させ、メモリとして利用するものである。固定層とフリー層のスピンが平行の場合は抵抗が小さく、反平行の場合は抵抗が大きくなる。このスピン効率の指標となる磁気抵抗変化率(TMR比)は数年前までは室温下で数10%であったが最近では500%にまで達し、MRAMに限らず、さまざまなスピンデバイスとしての可能性が拡がっている。その一つに、スピンMOS電界効果トランジスタ(スピンMOSFET)が提案されている。これは、通常のMOSFETに強磁性体を組み合わせることで、キャリアにスピンの自由度を付加したものである。
高効率な磁気記憶装置やスピンMOSFETなどを実現するためには、TMR比を大きくすることが重要である。そのためには、スピン偏極率(P)の大きい強磁性体を用いることが必要で、P=100%のハーフメタル材料を用いれば、Julliereの法則からTMR比は無限大を示すと考えられている。室温ハーフメタル材料の候補としては、CrO2、Fe3O4、ホイスラー合金などがあり、近年ではCo基フルホイスラー合金で高いTMR比が実現しており、これらを用いたスピンデバイスが期待される。ホイスラー合金(またはフルホイスラー合金とも言う)とは、X2YZの化学組成をもつ金属間化合物の総称であり、ここで、Xは周期表上で、Co、Fe、Ni、あるいはCu等の遷移金属元素または貴金属元素、YはMn、Fe、V、NiあるいはTi等の遷移金属、ZはIII族、IV族、V族の典型元素である。ホイスラー合金X2YZは、X・Y・Zの規則性から3種類の結晶構造に分けられる。3元素の区別ができるX≠Y≠Zとなる最も規則性の高い構造がL21構造、次に規則性の高いX≠Y=Zとなる構造がB2構造、そして3元素の区別ができないX=Y=Zとなる構造がA2構造である。
B2または、L21構造を有するフルホイスラー合金は、体心立方格子(bcc)下地上に成長しやすいことが知られている(例えば、特許文献1参照)が、フルホイスラー合金を実用化するためには、以下に示したスピンの固定層として非磁性層を介して強磁性層間が反強磁性結合した強磁性層/非磁性層/強磁性層からなる人工的に作製された反強磁性結合(Syn-AF:Synthetic antiferromagnetまたは、Synthetic Ferrimagenet)構造(以下Syn-AF構造と略する)を用いることが必要となる。
現在、TMR素子(磁気抵抗効果素子)を磁気ヘッド、スピンメモリ、スピンMOSFETへ応用する場合、スピンの固定層として非磁性層を介して強磁性層間が反強磁性結合した強磁性層/非磁性層/強磁性層からなる人工的に作製された反強磁性結合構造(Syn-AF構造)が用いられている。これは強磁性層の間にRu、Rh、IrやCrなどの非磁性層を用いることにより、強磁性層間の交換相互作用により磁区形成を抑制するとともに、漏れ磁場によるフリー層への影響を低減させることができる。これまでCoFeB、CoFe、CoFeNi、Feなどの強磁性体においてはSyn-AF構造が有効であることが明らかになっている。
しかし、フルホイスラー合金を用いた場合、通常の非磁性層であるRu、Rh、IrやCrを用いても、フルホイスラー合金/非磁性層/フルホイスラー合金および、フルホイスラー合金/非磁性層/強磁性層では、反強磁性結合が生じないことが今回明らかになった。よって、フルホイスラー合金をスピンデバイスとして用いる場合には、Syn-AF構造を構成する物質との組合せが必須となる。
ホイスラー合金を用いたTMR素子の例としては、例えば特許文献2に、スピン分極率の高い材料であるホイスラー合金を、非磁性層と磁化固定層との界面、或いは非磁性層とフリー層との界面に用いたTMR素子の構造が記載されている。
しかし、特許文献2では、ヘッド応用として提案されているホイスラー合金は、NiMnSb、PtMnSbなどのハーフホイスラー合金系(XYZ)である。ハーフホイスラー合金系はスピン分極率の高い材料として予測されているが、これまでの研究において、室温でTMR比が10%程度と非常に低いため、Syn-AF構造を構成する磁性体との組合せに用いることは難しい。
本発明は、スピン分極率の高いフルホイスラー合金と反強磁性結合を形成する磁性体を含む、TMR比が高い磁気抵抗効果素子を用いたスピンMOS電界効果トランジスタを提供する。
一実施態様のスピンMOS電界効果トランジスタは、半導体基板上に形成されたフルホイスラー合金層と、前記フルホイスラー合金層上に形成された、面心立方格子構造を有する第1強磁性層と、前記第1強磁性層上に形成された非磁性層と、前記非磁性層上に形成された第2強磁性層とを含む構造をソース及びドレインに具備し、前記非磁性層を介して形成された前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間には反強磁性結合が形成され、ソースあるいはドレインのいずれか一方の前記第2強磁性層上には反強磁性体層が形成され、ソース上あるいはドレイン上の前記フルホイスラー合金層のうち、前記反強磁性体層が形成された側の前記フルホイスラー合金層が磁化が維持される磁化固定層となり、他方の前記フルホイスラー合金層が磁化が変化する磁化自由層となり、前記第1強磁性層は、Co−Fe−Niの3元状態図において、Co 0.7 Fe 0.3 、Co 0.97 Fe 0.03 、Co 0.95 Ni 0.05 、Ni、Fe 0.3 Ni 0.7 によって囲まれる組成からなることを特徴とする。
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態のフルホイスラー合金を有するトンネル磁気抵抗効果素子(以下、TMR素子と記す)について説明する。図1は、第1実施形態のフルホイスラー合金を有するTMR素子の構造を示す断面図である。
まず、本発明の第1実施形態のフルホイスラー合金を有するトンネル磁気抵抗効果素子(以下、TMR素子と記す)について説明する。図1は、第1実施形態のフルホイスラー合金を有するTMR素子の構造を示す断面図である。
第1実施形態のTMR素子は、図1に示すように、フリー層である強磁性体層11上に、絶縁体層12、フルホイスラー合金層13、面心立方格子(以下、fccと記す)構造を有する強磁性体層14、非磁性層15、強磁性体層16、及び反強磁性体層17が順次積層された構造を有している。
詳述すると、強磁性体層11上には、絶縁体層12が形成されている。強磁性体層11は、フルホイスラー合金であっても良いし、絶縁体層12に接する部分がフルホイスラー合金であれば他の強磁性体を用いても良い。フルホイスラー合金とは、X2YZの化学組成をもつ金属間化合物の総称であり、ここで、Xは周期表上で、Co、Fe、Ni、あるいはCuなどの遷移金属元素または貴金属元素、YはMn、Fe、V、NiあるいはTiなどの遷移金属、ZはIII族、IV族、V族の典型元素である。ここでは、フルホイスラー合金として、例えば、B2またはL21構造を有するフルホイスラー合金:Co2FeAlxSi1−x,Co2MnSixAl1−x,Fe2NiAlxSi1−x(0≦x≦1)が用いられる。
絶縁体層12としては、MgO(酸化マグネシウム)、SiO2(酸化シリコン)、Al2O3(酸化アルミニウム)、AlN(窒化アルミニウム)、BiO2(酸化ビスマス)、MgF2(フッ化マグネシウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、LaAlO3(ランタンアルミネート)、Al−N−O(酸化窒化アルミニウム)、HfO(酸化ハフニウム)などの各種絶縁体を用いることができる。特に、絶縁体層として(001)配向したMgO層を用いると、フルホイスラー合金をエピタキシャル成長させることができるためより好ましい。また、絶縁体層12は、トンネル障壁として用いるため3nm以下が好ましく、2nm以下であることがより好ましい。
絶縁体層12上には、フルホイスラー合金層13が形成されている。このフルホイスラー合金層13上には、fcc構造を有する強磁性体層14が形成されている。fcc構造を有する強磁性体層14は、反強磁性結合(Syn-AF)構造を形成する強磁性体である。
我々は、フルホイスラー合金層上に体心立方格子(bcc)構造を有する強磁性体を用いた場合と、fcc構造を有する強磁性体を用いた場合のTMR素子を作製し、bcc構造ではフルホイスラー合金のスピン分極率が減少することを見出した。よって、フルホイスラー合金上に形成する強磁性体はfcc構造であることが重要である。fcc構造を有する強磁性体は、CoxFe1−x、FeyNi1−y、Ni1−zCoz、Co−Fe−Ni合金、またはこれらの化合物から構成されている。fcc構造を有するCoxFe1−xの組成比はx=0.7〜0.97、FeyNi1−yの組成比はy=0〜0.3、Ni1−zCozの組成比はz=0〜0.95であり、この範囲において形成された強磁性体を用いると良い。この範囲を超えた場合、強磁性体はfcc構造を形成せず、TMR比は著しく低下することを我々は見出した。
fcc構造を有する強磁性体層14上には、非磁性層15が形成されている。この非磁性層15は、強磁性体との交換相互作用により反強磁性的結合を示す材料であり、Cr、Ru、Rh、Ir、またはこれらを用いた合金の非磁性材料からなる。この非磁性層15の膜厚は、反強磁性的結合を示す3nm以下が好ましい。
非磁性層15上には、強磁性体層16が形成されている。この強磁性体層16は、fcc構造を有する強磁性体層でも、その他の構造を有する強磁性体層でも良いが、素子の作製を簡素化するために、fcc構造を有する強磁性体層を形成したほうがより好ましい。この強磁性体層16上には、反強磁性体層17が形成されている。この反強磁性体層17は、Ir−Mn、PtMnなどからなる。
本実施形態のTMR素子では、強磁性体層11は磁化が変化するフリー層(磁化自由層)となり、フルホイスラー合金層13、強磁性体層14、非磁性層15、及び強磁性体層16からなる積層構造は磁化が維持されるピン層(磁化固定層)となる。このピン層では、非磁性層15を介して強磁性体層14と強磁性体層16とが反強磁性結合した反強磁性結合構造(以下、Syn-AF構造)を形成している。フリー層の磁化とピン層の磁化の相対的な関係をスピン注入法や電流磁場印加法等により変化させることによって、TMR素子の抵抗値を変化させることができる。
今回、フルホイスラー合金にSyn-AF構造を構成する物質を組合せた場合、Syn-AF構造を構成する強磁性体の結晶構造によってフルホイスラー合金層のスピン分極率が変化することを見出した。さらに、フルホイスラー合金を用いたTMR素子にSyn-AF構造を構成する場合、fcc構造を有した強磁性体を用いると、高いTMR比を実現することができる。
また、フリー層である強磁性体層11に換えて、絶縁体層12のフルホイスラー合金層13が形成された面と反対側の面に、フルホイスラー合金層、fcc構造を有する強磁性体層、非磁性層、及び強磁性体層を順次積層した構造を用いても良い。この構造により、フリー層の磁区生成を抑制し、漏れ磁場による影響を低減させることができる。
以上説明したように本実施形態においては、フルホイスラー合金層にfcc構造を有する強磁性体層を接するように形成することにより、高いスピン分極率を保持したフルホイスラー合金層を形成することができる。ここで、fcc構造を有する強磁性体層としてSyn-AF構造を形成する強磁性体を用いれば、高いスピン分極率を保持したフルホイスラー合金をTMR素子に用いることが可能となる。これにより、高いTMR比を有するTMR素子を実現することができる。このTMR素子は、例えばスピンMOSFET、MRAM(スピンメモリ)、磁気ヘッドへ応用可能である。以下に、TMR素子を、スピンMOSFET、MRAM(スピンメモリ)、磁気ヘッドへ応用した例を説明する。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態のスピンMOSFETについて説明する。図2は、第2実施形態のスピンMOSFETの構造を示す断面図である。
本発明の第2実施形態のスピンMOSFETについて説明する。図2は、第2実施形態のスピンMOSFETの構造を示す断面図である。
図2に示すように、半導体基板10の表面領域には、ソースまたはドレイン部としての不純物拡散層10Aがイオン注入法によって形成されている。不純物拡散層10A上には、フルホイスラー合金層13が形成され、このフルホイスラー合金層13上にはfcc構造を有する強磁性体層14が形成されている。強磁性体層14上には非磁性層15が形成され、非磁性層15上には強磁性体層16が形成されている。強磁性体層14と強磁性体層16との間には、非磁性層15を介して反強磁性結合が形成されている。図2では、ソース部及びドレイン部それぞれの不純物拡散層10Aの上に、フルホイスラー合金層13、強磁性体層14、非磁性層15、強磁性体層16の積層構造が形成されているが、ソース部及びドレイン部のうち片方の不純物拡散層10Aの上に当該積層構造が形成されていてもよい。
ここで、不純物拡散層10Aとフルホイスラー合金層13との間に、トンネル障壁として絶縁体層を用いても良い。絶縁体層としては、MgO(酸化マグネシウム)、SiO2(酸化シリコン)、Al2O3(酸化アルミニウム)、AlN(窒化アルミニウム)、BiO2(酸化ビスマス)、MgF2(フッ化マグネシウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、LaAlO3(ランタンアルミネート)、Al−N−O(酸化窒化アルミニウム)、HfO(酸化ハフニウム)などの各種絶縁体を用いることができる。特に、(001)配向したMgOを用いると、フルホイスラー合金13をエピタキシャル成長させることができるためより好ましい。
ここで、トンネル障壁となる絶縁体層は、キャリアのスピン緩和が起こらず、かつキャリアがトンネル可能な膜厚が望ましく、スピン拡散長より十分小さい3nm以下が望ましい。前述した第2実施形態のスピンMOSFETでは、移動度を向上させるために絶縁体層は5nmより薄く、より好ましくは3nmより薄いことが好ましい。特に、情報書き込みにスピン注入法を用いる場合、低抵抗化の観点から1nm以下の膜厚にすることが好ましい。
この構造により、ソース及びドレイン部から供給されるスピンを持ったキャリアをトンネル伝導によって半導体中に伝導させることが可能となる。さらに、ソースまたはドレイン部のいずれか一方の強磁性体層16上に反強磁性体層17を形成することにより、磁化固定層を形成する。ソースとドレイン部との間の半導体基板10上にはゲート絶縁膜21が形成され、このゲート絶縁膜21上にはゲート電極22が形成されている。
フルホイスラー合金層13上には、fcc構造を有する強磁性体層14が形成されている。このfcc構造を有する強磁性体層14は、Syn-AF構造を形成する強磁性体である。
我々は、フルホイスラー合金層上にbcc構造を有する強磁性体層を用いた場合と、fcc構造を有する強磁性体層を用いた場合のTMR素子を作製した。その結果、bcc構造を有する強磁性体層では、フルホイスラー合金のスピン分極率が減少することを見出した。よって、フルホイスラー合金層上に形成する強磁性体層はfcc構造であることが重要である。
fcc構造を有する強磁性体層は、CoxFe1−x、FeyNi1−y、Ni1−zCoz、Co−Fe−Ni合金、またはこれらの化合物から構成されている。fcc構造を有するCoxFe1−xの組成比はx=0.7〜0.97、FeyNi1−yの組成比はy=0〜0.3、Ni1−zCozの組成比はz=0〜0.95であり、この範囲において形成された強磁性体層を用いると良い。
fcc構造を有する強磁性体層14上には、非磁性層15が形成されている。この非磁性層15は、強磁性体との交換相互作用により反強磁性的結合を示す材料であり、Cr、Ru、Rh、Ir、またはこれらを用いた合金の非磁性材料からなる。非磁性層15の膜厚は、反強磁性的結合を示す3nm以下が好ましい。
非磁性層15上には、強磁性体層16が形成されている。この強磁性体層16はfcc構造を有した強磁性層でも、その他の構造を有した強磁性層でも良いが、素子の作製を簡素化するためにfcc構造を有した強磁性層を形成したほうがより好ましい。また、ソースまたはドレイン部の強磁性体層16上には、ソースまたはドレイン部のいずれか一方が磁化固定層となるように反強磁性体層17が形成されている。この反強磁性体層17は、IrMn、PtMnなどからなる。
また、フルホイスラー合金層13とfcc構造を有する強磁性体層14の間に、絶縁体層、フルホイスラー合金層を積層し、TMR素子を形成させても良い。絶縁体層としては、MgO(酸化マグネシウム)、SiO2(酸化シリコン)、Al2O3(酸化アルミニウム)、AlN(窒化アルミニウム)、BiO2(酸化ビスマス)、MgF2(フッ化マグネシウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、LaAlO3(ランタンアルミネート)、Al−N−O(酸化窒化アルミニウム)、HfO(酸化ハフニウム)などの各種絶縁体を用いることができる。特に、絶縁体層として、(001)配向したMgO層を用いると、絶縁体層上に形成するフルホイスラー合金をエピタキシャル成長させることができるためより好ましい。
なお、バリア層となる絶縁体層12は、キャリアのスピン緩和が起こらず、かつキャリアがトンネル可能な膜厚が望ましく、スピン拡散長より十分小さい3nm以下が望ましい。前述した第2実施形態のスピンMOSFETでは、移動度を向上させるために絶縁体層は5nmより薄く、より好ましくは3nmより薄いことが好ましい。特に、情報書き込みにスピン注入法を用いる場合、低抵抗化の観点から1nm以下の膜厚にすることが好ましい。
なお、前述したソース及びドレインは、図3に示すような埋め込み型で構成されていても良い。図3は、第2実施形態の変形例の埋め込み型スピンMOSFETの構造を示す断面図である。
図3に示すように、半導体基板10に加工された凹部(ソースまたはドレインが形成されるべき部分)には、絶縁体層12、フルホイスラー合金層13、fcc構造を有する強磁性体層14、非磁性層15、強磁性体層16が順次積層された構造となっている。また、ソースまたはドレイン部の強磁性体層16上には、ソースまたはドレイン部のいずれか一方が磁化固定層となるように反強磁性体層17が形成されている。さらに、ソースとドレインとの間の半導体基板10上には、ゲート絶縁膜21、ゲート電極22が順次積層されている。また、ゲート電極22の側面には、側壁膜23が形成されている。
本実施形態のスピンMOSFETでは、ソース上あるいはドレイン上のフルホイスラー合金層13のうち、反強磁性体層17が形成された側のフルホイスラー合金層13が磁化が維持されるピン層(磁化固定層)となり、他方のフルホイスラー合金層13が磁化が変化するフリー層(磁化自由層)となる。フリー層の磁化とピン層の磁化の相対的な関係を変化させることによって、トンネル磁気抵抗効果素子の抵抗値を変化させることができる。フリー層の磁化を変化させるためには、例えば、チャネル等を介したスピン注入法や電流磁場印加法等を用いることができる。
次に、図2に示したスピンMOSFETの製造方法について説明する。まず、半導体基板10にイオン注入法及びアニールを用いてチャネル領域を形成する。その後、半導体基板10上に、例えばシリコン酸化膜21及び多結晶シリコン膜22を順次形成する。次に、半導体基板10上において、ソース及びドレインが形成される部分のシリコン酸化膜21及び多結晶シリコン膜22をエッチングにより除去し、図4に示すように、ゲート絶縁膜21及びゲート電極22を形成する。
次に、ソース及びドレインが形成される半導体基板10の表面領域にイオン注入法及びアニールを用いて不純物拡散層10Aを形成する。続いて、不純物拡散層10A上に、スパッタ法によりフルホイスラー合金13、fcc構造を有する強磁性体層14、非磁性層15、強磁性体層16を順次積層する。続いて、リフトオフ法またはイオンミリング法、RIE法などを用いて、図5に示すように、フルホイスラー合金13、fcc構造を有する強磁性体層14、非磁性層15、及び強磁性体層16をパターニングしてソース電極及びドレイン電極を形成する。さらに、図5に示した構造上に、スパッタ法により反強磁性体層17を堆積する。続いて、リフトオフ法またはイオンミリング法、RIE法などを用いて反強磁性体層17をパターニングし、図2に示すように、ソースまたはドレイン部のいずれか一方に反強磁性体層17を形成する。以上により、図2に示したスピンMOSFETが製造される。
次に、図5に示したスピンMOSFETの製造方法について説明する。まず、半導体基板10にイオン注入法及びアニールを用いてチャネル領域を形成する。その後、半導体基板10上に、例えばシリコン酸化膜21及び多結晶シリコン膜22を順次形成する。次に、半導体基板10上において、ソース及びドレインが形成される部分のシリコン酸化膜21及び多結晶シリコン膜22をエッチングにより除去し、図6に示すように、ゲート絶縁膜21及びゲート電極22を形成する。
次に、半導体基板10上及びゲート電極22上に絶縁膜を形成する。そして、この絶縁膜をエッチバックして、図7に示すように、ゲート電極22の側面に側壁膜23を形成する。続いて、半導体基板10において、ソース及びドレインが形成される部分の半導体基板10をエッチングによって除去し、図7に示すように、半導体基板10に凹部を形成する。
次に、半導体基板10の凹部上に、絶縁体層12、フルホイスラー合金層13、fcc構造を有する強磁性体層14、非磁性層15、及び強磁性体層16を順次積層する。続いて、リフトオフ法またはイオンミリング法、RIE法などを用いて、図3に示すように、絶縁体層12、フルホイスラー合金層13、fcc構造を有する強磁性体層14、非磁性層15、強磁性体層16をパターニングしてソース電極及びドレイン電極を形成する。さらに、強磁性体層16上に、スパッタ法により反強磁性体層17を堆積する。続いて、リフトオフ法またはイオンミリング法、RIE法などを用いて反強磁性体層17をパターニングし、図3に示すように、ソースまたはドレイン部のいずれか一方に反強磁性体層17を形成する。以上により、図3に示したスピンMOSFETが製造される。
なお、バリア層となる絶縁体層12は、キャリアのスピン緩和が起こらず、かつキャリアがトンネル可能な膜厚が望ましく、スピン拡散長より十分小さい3nm以下が望ましい。前述した第2実施形態のスピンMOSFETでは、移動度を向上させるために絶縁体層は5nmより薄く、より好ましくは3nmより薄いことが好ましい。特に、情報書き込みにスピン注入法を用いる場合、トンネルバリアの破壊を防ぎ、且つ適した抵抗値を実現するために1nm程度の膜厚にする必要がある。
この第2実施形態によれば、フルホイスラー合金層にfcc構造を有する強磁性体層を接するように形成することにより、高いスピン分極率を保持したフルホイスラー合金層を形成することができる。ここで、fcc構造を有する強磁性体層としてSyn-AF構造を形成する強磁性体を用いれば、高いスピン分極率を保持したフルホイスラー合金をTMR素子に用いることが可能となる。これにより、高いTMR比を有するTMR素子を備えたスピンMOSFETを実現することができる。
さらに、第2実施形態のスピンMOSFETにおいては、非磁性層15を介して配置された強磁性体層14と強磁性体層16との間が反強磁性結合を形成している。このような構造を用いると、強磁性体層14と強磁性体層16の磁化が反平行であるため、強磁性体層14と強磁性体層16からの漏れ磁場を相殺し、結果としてフリー層、ピン層からの漏れ磁場を低減する効果がある。これにより、大規模集積回路(LSI)のような隣接セル同士が非常に近距離で接した場合でも漏れ磁場の影響によるセル間の特性ばらつきを排除することができる。さらに、反強磁性結合した強磁性体層14と強磁性体層16を用いると、熱揺らぎ耐性が向上するという効果もある。TMR素子としての効果は、前述した第1実施形態と同様である。
また、本実施形態のスピンMOSFETにおいて、フリー層またはピン層をなすフルホイスラー合金層における各スピンが成す角は、素子面上から見た場合、フルホイスラー合金層の面内方向に対して、平行の場合は0度であり反平行の場合は180度をなすものとする。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態のMRAMについて説明する。このMRAMにおけるメモリセルには、フルホイスラー合金を用いたTMR素子を用いている。図8は、第3実施形態のMRAMにおけるメモリセルの構造を示す断面図である。
次に、本発明の第3実施形態のMRAMについて説明する。このMRAMにおけるメモリセルには、フルホイスラー合金を用いたTMR素子を用いている。図8は、第3実施形態のMRAMにおけるメモリセルの構造を示す断面図である。
第3実施形態のMRAMにおけるメモリセルは、図8に示すように、半導体基板30に形成されたトランジスタ上に、電極層、多結晶金属下地配線37、TMR素子38、金属ビア(または金属ハードマスク)39を順次形成し、その上にビット線40を形成した構造を有している。
以下にMRAMにおけるメモリセルの構造を詳述する。半導体基板30には素子分離領域31が形成され、素子分離領域31に挟まれた半導体基板にはソース領域またはドレイン領域32が形成されている。ソース領域とドレイン領域との間の半導体基板30上には、ゲート絶縁膜33が形成されている。さらに、このゲート絶縁膜33上には、ゲート電極34が形成されている。また、半導体基板30上には層間絶縁膜35が形成され、ソース領域またはドレイン領域32上の層間絶縁膜35内には、コンタクトプラグ36を介して第1配線M1、第2配線M2、第3配線M3が順次形成されている。第3配線M3上のコンタクトプラグ36上には、多結晶金属下地配線37が形成されている。この多結晶金属下地配線37上には、TMR素子38が形成されている。さらに、TMR素子38上には金属ビア(または金属ハードマスク)39が形成され、この金属ビア39上にはビット線40が形成されている。
ここで、TMR素子38は、多結晶金属下地配線37上に、フリー層となるフルホイスラー合金層、絶縁体層、ピン層となるフルホイスラー合金層/fcc構造を有した強磁性体層/非磁性層/強磁性体層を順次積層した構造を有している。なお、前述した多結晶金属下地配線37上に、フリー層、絶縁体層、ピン層の順で形成された構造に限るわけではなく、多結晶金属下地配線37上に、ピン層、絶縁体層、フリー層の順で形成された構造であってもよい。即ち、後述する図9(a)または図9(b)のそれぞれの積層構造を上下逆とする構成としてもよい。
TMR素子38の詳細な断面構造を、図9(a)または図9(b)に示す。図9(a)に示すように、多結晶金属下地配線37上には、フリー層となるフルホイスラー合金層41、絶縁体層12、ピン層となるフルホイスラー合金層13が順次形成されている。フルホイスラー合金層13上には、fcc構造を有する強磁性体層14、非磁性層15、強磁性体層16、反強磁性体層17、及びキャップ層42が順次形成されている。強磁性体層14と強磁性体層16との間には、非磁性層15を介して反強磁性結合が形成されている。
また、図9(b)に示す、TMR素子38の他の断面構造例は、多結晶金属下地配線37上には、強磁性体層43、非磁性層44、強磁性体層45が順次形成されている。強磁性体層43と強磁性体層45との間には、非磁性層44を介して反強磁性結合が形成されている。強磁性体層45はfcc構造を有することが好ましく、強磁性体層43もfcc構造を有することが好ましい。強磁性体層45上には、フリー層となるフルホイスラー合金層41、絶縁体層12、固定層となるフルホイスラー合金層13が順次形成されている。フルホイスラー合金層13上には、fcc構造を有する強磁性体層14、非磁性層15、強磁性体層16、反強磁性体層17、及びキャップ層42が順次形成されている。強磁性体層14と強磁性体層16との間には、非磁性層15を介して反強磁性結合が形成されている。
この第3実施形態によれば、フルホイスラー合金層にfcc構造を有する強磁性体層を接するように形成することにより、高いスピン分極率を保持したフルホイスラー合金層を形成することができる。ここで、fcc構造を有する強磁性体層としてSyn-AF構造を形成する強磁性体を用いれば、高いスピン分極率を保持したフルホイスラー合金をTMR素子に用いることが可能となる。これにより、高いTMR比を有するTMR素子を備えたMRAMを実現することができる。その他のTMR素子としての効果は、前述した第1実施形態と同様である。
また、本実施形態のMRAMのTMR素子において、フリー層またはピン層をなすフルホイスラー合金層における各スピンが成す角は、素子面上から見た場合、フルホイスラー合金層の面内方向に対して、平行の場合は0度であり反平行の場合は180度をなすものとする。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態のTMRヘッドについて説明する。このTMRヘッドは、フルホイスラー合金を用いたTMR素子を用いて形成されており、ハードディスクドライブ(HDD)に使用される。図10(a)及び図10(b)は、第4実施形態のTMRヘッドの構造を示す断面図である。
次に、本発明の第4実施形態のTMRヘッドについて説明する。このTMRヘッドは、フルホイスラー合金を用いたTMR素子を用いて形成されており、ハードディスクドライブ(HDD)に使用される。図10(a)及び図10(b)は、第4実施形態のTMRヘッドの構造を示す断面図である。
このTMRヘッドは、図10(a)及び図10(b)に示すように、TMR素子が下部電極層46と上部電極層47の間に配置された構造を有している。TMR素子は、下部電極層46上に、フリー層、絶縁体層、ピン層が順次積層した構造を有している。詳述すると、図10(a)に示すように、下部電極層(磁気シールド層)46上には、フルホイスラー合金層41、絶縁体層12、フルホイスラー合金13、fcc構造を有する強磁性体層14、非磁性層15、強磁性体層16、反強磁性体層17、及びキャップ層42が順次形成されている。キャップ層42上には、上部電極層(磁気シールド層)47が形成されている。下部電極層46と上部電極層47の間には絶縁膜48が形成されている。強磁性体層14と強磁性体層16との間には、非磁性層15を介して反強磁性結合が形成されている。なお、図10(a)に示すように、下部電極層46上に、フリー層、絶縁体層、ピン層の順で形成された構造に限るわけではなく、下部電極層46上に、ピン層、絶縁体層、フリー層の順で形成された構造であってもよい。即ち、図10(a)の積層構造を上下逆とする構成としてもよい。
また、図10(b)に示す、TMR素子の他の断面構造例は、下部電極層46上に、強磁性体層43、非磁性層44、強磁性体層45が順次形成されている。さらに、強磁性体層45上には、フリー層となるフルホイスラー合金層41、絶縁体層12、固定層となるフルホイスラー合金層13が順次形成されている。フルホイスラー合金層13上には、fcc構造を有する強磁性体層14、非磁性層15、強磁性体層16、反強磁性体層17、及びキャップ層42が順次形成されている。さらに、キャップ層42上には、上部電極層47が形成されている。強磁性体層14と強磁性体層16との間には、非磁性層15を介して反強磁性結合が形成されている。さらに、強磁性体層43と強磁性体層45との間には、非磁性層44を介して反強磁性結合が形成されている。なお、図10(b)に示すように、下部電極層46上に、フリー層、絶縁体層、ピン層の順で形成された構造に限るわけではなく、下部電極層46上に、ピン層、絶縁体層、フリー層の順で形成された構造であってもよい。即ち、図10(b)の積層構造を上下逆とする構成としてもよい。
また、TMRヘッドにおける強磁性体層としては、Fe、Co−Fe合金、Fe−Ni合金、Ni−Co合金、Co−Fe−Ni合金またはこれらの化合物などを用いることができる。
前述した第3、第4実施形態において、絶縁体層12の膜厚は、キャリアのスピン緩和が起こらず、かつキャリアがトンネル可能な膜厚が望ましく、スピン拡散長より十分小さい3nm以下が望ましい。
また、以上説明した各実施形態においては、半導体基板の材料としては少なくとも表面にSi単結晶、Ge単結晶、GaAs単結晶、Si−Ge単結晶を有する基板またはSOI(Silicon on Insulator)基板であることを特徴としている。また、絶縁体層としては、MgO(酸化マグネシウム)、SiO2(酸化シリコン)、Al2O3(酸化アルミニウム)、AlN(窒化アルミニウム)、BiO2(酸化ビスマス)、MgF2(フッ化マグネシウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、LaAlO3(ランタンアルミネート)、Al−N−O(酸化窒化アルミニウム)、HfO(酸化ハフニウム)などの各種絶縁体を用いることができる。特に、絶縁体層として(001)配向したMgO層を用いると、絶縁体層上に形成するフルホイスラー合金をエピタキシャル成長させることができるためより好ましい。
この第4実施形態によれば、フルホイスラー合金層にfcc構造を有する強磁性体層を接するように形成することにより、高いスピン分極率を保持したフルホイスラー合金層を形成することができる。ここで、fcc構造を有する強磁性体層としてSyn-AF構造を形成する強磁性体を用いれば、高いスピン分極率を保持したフルホイスラー合金をTMR素子に用いることが可能となる。これにより、高いTMR比を有するTMR素子を備えたTMRヘッドを実現することができる。その他のTMR素子としての効果は、前述した第1実施形態と同様である。
また、本実施形態のTMRヘッドにおいて、フリー層またはピン層をなすフルホイスラー合金層における各スピンが成す角は、フルホイスラー合金層の面内方向に対して、90度をなすものとする。
以下、実施例及び比較例を参照して本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
(比較例1)
本発明の比較例1として、図11に示すようなフルホイスラー合金を用いたSyn-AF構造を作製した。その作製手順を以下に示す。図11は、比較例1のフルホイスラー合金を用いたSyn-AF構造を有するTMR素子の構造を示す断面図である。
本発明の比較例1として、図11に示すようなフルホイスラー合金を用いたSyn-AF構造を作製した。その作製手順を以下に示す。図11は、比較例1のフルホイスラー合金を用いたSyn-AF構造を有するTMR素子の構造を示す断面図である。
まず、(001)配向したMgO基板50をスパッタクリーニングにより表面洗浄した後、アニール処理により基板中の水分除去を行う。次に、MgO(001)基板50上に、スパッタ法によりCoFe層(膜厚4nm)51、Cr層(膜厚0.95nm)52、Co2FeAl0.5Si0.5からなるフルホイスラー合金(膜厚4nm)53、MgO層54、Co2FeAl0.5Si0.5(膜厚5nm)55、及びIrMn(膜厚10nm)56を順次形成する。さらに、IrMn層56上に、スパッタ法によりキャップ層となるRu層(膜厚7nm)57を形成する。
上記の手順で積層した実施例1のTMR素子において、磁化の磁場依存性をVSM(Vibrating Sample Magnetometer)を用いて測定した。図12は、印加磁場を面方向に0°と45°傾けて測定した場合の結果を示す。図12に示すH=0Oe近傍で観測されているヒステリシスカーブがSyn-AF構造の磁化を示し、Syn-AF構造による交換結合の効果が観測されていないことを示している。
従って、比較例1からフルホイスラー合金を用いたSyn-AF構造はできていないことがわかった。よって、フルホイスラー合金を用いたSyn-AF構造を形成するためには、フルホイスラー合金とSyn-AF構造を形成する強磁性体とを組み合わせることが必要であることがわかった。
(実施例1)
本発明の実施例1として、フルホイスラー合金を有するTMR素子を作製した。その作製手順を以下に示す。図13は、実施例1のフルホイスラー合金を有するTMR素子の構造を示す断面図である。
本発明の実施例1として、フルホイスラー合金を有するTMR素子を作製した。その作製手順を以下に示す。図13は、実施例1のフルホイスラー合金を有するTMR素子の構造を示す断面図である。
(001)配向したMgO基板50をスパッタクリーニングにより表面洗浄した後、アニール処理により基板中の水分除去を行う。次に、MgO(001)基板50上に、スパッタ法によりCr層52を形成する。さらに、Cr層52上に、スパッタ法によりCo2FeAl0.5Si0.5からなるフルホイスラー合金層(膜厚30nm)53、MgO層54、Co2FeAl0.5Si0.5からなるフルホイスラー合金層(膜厚5nm)55、CoxFe1−x層(膜厚3nm)58、及びIrMn層(膜厚10nm)56を順次形成する。さらに、IrMn層56上に、スパッタ法によりキャップ層となるRu層(膜厚7nm)57を形成する。なお、Cr層52は、フルホイスラー合金層53をエピタキシャル成長させ、結晶性(規則度)を高めるために用いた。
CoxFe1−x層58の組成比としてはbcc構造をとるx=0.5を用いた場合と、fcc構造をとるx=0.9を用いた場合について作製した。
上記の手順で積層した実施例1のTMR素子において、CIPT(Current In-Plane Tunneling)法を用いてTMR比を測定した。その測定結果であるTMR比と、抵抗面積(RA)を図14に示す。CoxFe1−x層58としてbcc構造をとるx=0.5を用いた場合ではTMR比=39.7%となり、CoxFe1−x層としてfcc構造をとるx=0.9を用いた場合ではTMR比=110.6%であった。また、x=1.0であるhcp構造のCo層を用いた場合では19.4%であった。なお、図14において、「無し」とはSyn-AF構造が無い場合のデータを示す。
従って、実施例1からフルホイスラー合金上には、bcc、hcp構造の強磁性体よりfcc構造の強磁性体を用いたほうが高いTMR比を実現することがわかった。よって、フルホイスラー合金上にSyn-AF構造を形成する場合、fcc構造の強磁性体を用いると良いことがわかった。
上記構造において、Co2FeAl0.5Si0.5からなるフルホイスラー合金(膜厚30nm)の代わりに、CoFe/Ru/fcc−CoFe/Co2FeAl0.5Si0.5,または、CoFe/Ru/bcc−CoFe/Co2FeAl0.5Si0.5をフリー層としたTMR素子も作製した。/は右の層が左の層の上に位置することを意味する。これらはいずれも、CoFeとfcc−CoFeとがRuを介して反強磁性結合している。ピン層は上記fcc構造の強磁性体を用いたフルホイスラー合金を含むピン構造である。その結果、bcc構造をとるx=0.5を用いた場合ではTMR比=37.5%となり、CoxFe1−x層としてfcc構造をとるx=0.9を用いた場合ではTMR比=105.2%であった。これにより、フリー層の場合もfcc構造を用いる方が好ましいことが明らかになった。
本傾向は、Co−FeをCo−Ni、Ni−Fe、Co−Fe−Niに変えても同様の傾向を示す。例えば、図16の3元状態図に示すように、CoxFe1−xの組成比はx=0.7〜0.97、FeyNi1−yの組成比はy=0〜0.3、Ni1−zCozの組成比はz=0〜0.95の範囲では、TMR比の極端な低下は生じないことが明らかになった。また、図16に示すCo−Fe−Niの3元状態図において、Co0.7Fe0.3、Co0.97Fe0.03、Co0.95Ni0.05、Ni、Fe0.3Ni0.7を直線で結んで囲まれた領域(直線上も含む)の組成からなる合金では、TMR比の極端な低下は生じないことが明らかになった。この実施例1に示した組成は、前述した第1〜第4実施形態における、面心立方格子(fcc)構造を有する強磁性体層としてのCo−Fe、Co−Ni、Ni−Fe、Co−Fe−Ni合金にも適用可能である。
(比較例2)
本発明の比較例2として、フルホイスラー合金を有するTMR素子を作製した。その作製手順を以下に示す。図15は、比較例2のフルホイスラー合金を有するTMR素子の構造を示す断面図である。
本発明の比較例2として、フルホイスラー合金を有するTMR素子を作製した。その作製手順を以下に示す。図15は、比較例2のフルホイスラー合金を有するTMR素子の構造を示す断面図である。
(001)配向したMgO基板60をスパッタクリーニングにより表面洗浄した後、アニール処理により基板中の水分除去を行う。次に、MgO(001)基板60上に、スパッタ法によりbcc構造をとるCo0.5Fe0.5層61、Co2MnAl0.5Si0.5、または、Fe2NiAlxSi1−xからなるフルホイスラー合金層(膜厚30nm)62、MgO層63、Co2MnAl0.5Si0.5(膜厚5nm)、または、Fe2NiAlxSi1−x層64、及びIrMn層(膜厚10nm)65を順次形成する。さらに、IrMn層65上に、スパッタ法によりキャップ層となるRu層(膜厚7nm)66を形成する。
上記の手順で積層した比較例2のTMR素子に対して、CIPT(Current In-Plane Tunneling)法を用いてTMR比を測定した。その結果、Co2MnAl0.5Si0.5、またはFe2NiAlxSi1−xの場合、それぞれ、TMR比=15.6%、18.2%であった。
従って、比較例2からbcc構造の強磁性体層上に、フルホイスラー合金を形成した場合、TMR比が非常に小さくなることわかった。よって、フルホイスラー合金を用いたTMR素子において下部にSyn-AF構造を形成する場合、bcc構造の強磁性体を用いるとTMR比が減少することがわかった。
本発明の実施例によれば、フルホイスラー合金を用いたTMR素子を作製することが可能となり、高いTMR比をもつスピンMOSFET、MRAM、TMRヘッドなどの実現に極めて有用である。
また、前述した各実施形態、実施例はそれぞれ、単独で実施できるばかりでなく、適宜組み合わせて実施することも可能である。さらに、前述した各実施形態・実施例には種々の段階の発明が含まれおり、各実施形態において開示した複数の構成要件の適宜な組合せにより、種々の段階の発明を抽出することも可能である。
10…半導体基板、11…強磁性体層、12…絶縁体層、13…フルホイスラー合金層、14…fcc構造を有する強磁性体層、15…非磁性層、16…強磁性体層、17…反強磁性体層、10A…不純物拡散層、21…ゲート絶縁膜、22…ゲート電極、23…側壁膜、30…半導体基板、31…素子分離領域、32…ソース領域またはドレイン領域、33…ゲート絶縁膜、34…ゲート電極、35…層間絶縁膜、36…コンタクトプラグ、37…多結晶金属下地配線、38…TMR素子、39…金属ビア(または金属ハードマスク)、40…ビット線、41…フルホイスラー合金層、42…キャップ層、43…強磁性体層、44…非磁性層、45…強磁性体層、46…下部電極層(磁気シールド層)、47…上部電極層(磁気シールド層)、48…絶縁膜、M1…第1配線、M2…第2配線、M3…第3配線。
Claims (4)
- 半導体基板上に形成されたフルホイスラー合金層と、
前記フルホイスラー合金層上に形成された、面心立方格子構造を有する第1強磁性層と、
前記第1強磁性層上に形成された非磁性層と、
前記非磁性層上に形成された第2強磁性層と、
を含む構造をソース及びドレインに具備し、前記非磁性層を介して形成された前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間には反強磁性結合が形成され、
ソースあるいはドレインのいずれか一方の前記第2強磁性層上には反強磁性体層が形成され、
ソース上あるいはドレイン上の前記フルホイスラー合金層のうち、前記反強磁性体層が形成された側の前記フルホイスラー合金層が磁化が維持される磁化固定層となり、他方の前記フルホイスラー合金層が磁化が変化する磁化自由層となり、
前記第1強磁性層は、Co−Fe−Niの3元状態図において、Co 0.7 Fe 0.3 、Co 0.97 Fe 0.03 、Co 0.95 Ni 0.05 、Ni、Fe 0.3 Ni 0.7 によって囲まれる組成からなることを特徴とするスピンMOS電界効果トランジスタ。 - 前記半導体基板と前記フルホイスラー合金層との間に形成された絶縁体層をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のスピンMOS電界効果トランジスタ。
- 前記絶縁体層は、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ビスマス、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、チタン酸ストロンチウム、ランタンアルミネート、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウムのいずれかを含むことを特徴とする請求項2に記載のスピンMOS電界効果トランジスタ。
- 前記フルホイスラー合金層は、B2またはL21構造を有するCo2FeAlxSi1−x,Co2MnSixAl1−x,Fe2NiAlxSi1−x(0≦x≦1)のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスピンMOS電界効果トランジスタ。
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