ところで、かかる本発明に従う重合体組成物において用いられるβ−ピネン重合体は、比重が0.85以上1.0未満であり、ガラス転移温度が80℃以上であり、重量平均分子量が3万〜100万であり、且つカチオン重合法で製造されてなる、(a−1)β−ピネン単独重合体又は(a−2)カチオン重合性単量体を0.001〜10モル%含むβ−ピネン共重合体である。ここで、本明細書におけるβ−ピネン重合体とは、重合体(ポリマー)中の全モノマー単位あたりのβ−ピネンの含有量が50モル%以上のものをいう。
かかるβ−ピネン重合体を製造する際の原料となるβ−ピネンとしては、従来より公知のものが何れも使用可能である。例えば、松や柑橘類等の植物から採取されたものを、精製した後、直接、用い得ることは勿論のこと、植物から採取されたα−ピネン等のテルペン類や石油由来の化合物を用いて、従来より公知の手法(例えば、米国特許第3278623号明細書に開示の手法)に従って製造されたβ−ピネン等も、用いることが可能である。このような植物由来のβ−ピネンを用いて得られたβ−ピネン重合体は、カーボンニュートラルな材料であり、この点において、本発明に係る重合体組成物は、循環型社会の形成や地球温暖化防止に貢献できる材料となっているのである。
また、本発明で使用されるβ−ピネン重合体は、上記したβ−ピネンの単独重合体であっても、また、β−ピネンと共重合可能な他の単量体の少なくとも1種以上との共重合体であっても、何等差し支えない。β−ピネンと共重合可能な他の単量体としては、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体、配位重合性単量体及び植物由来のテルペン類等を挙げることが出来る。
なお、本発明において、β−ピネン重合体を製造する際に用いられる、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体及び配位重合性単量体としては、従来より一般的に用いられているものを使用することが可能である。また、植物由来のテルペン類も、カチオン重合法、ラジカル重合法又は配位重合法の何れかの重合法において、重合性単量体として用いることが可能である。具体的には、カチオン重合性単量体としては、イソブチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、インデン、アルキルビニルエーテル、ノルボルネン等を、また、ラジカル重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フマル酸エステル、マレイミド等を挙げることが出来る。また、配位重合性単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、シクロペンテン、ノルボルネン等を例示することが出来、更に、植物由来のテルペン類としては、ミルセン、アロオシメン、オメシン、α−ピネン、ジペンテン、リモネン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、2−カレン、3−カレン等を、例示することが出来る。これらの中から、β−ピネンの使用量等に応じて、一種又は二種以上のものが適宜に選択されて用いられることとなる。β−ピネン重合体はカチオン重合法によって有利に得られることから、上述の如き重合性単量体の中でも、特にカチオン重合性単量体が有利に用いられる。
また、上記共重合可能な単量体をβ−ピネンと共重合する場合において、その共重合量は、ポリマー中の全モノマー単位あたり0.001〜50モル%が好ましく、中でも0.01〜20モル%がより好ましく、0.05〜10モル%が最も好ましい。なお、その共重合量が多過ぎると、吸水率が増加したり、耐熱性が低下してしまう等の問題を生じるため、好ましくない。
一方、前記した共重合性単量体と共に、或いは前記共重合性単量体に代えて、少量の2官能以上の架橋性の単量体(以下、架橋性単量体という)を共重合することが出来る。かかる架橋性単量体は、重合体を製造する際に、分岐剤若しくは架橋剤として一般的に用いられているが、その使用量を少量とすることにより、所謂、長鎖分岐構造を有し、有機溶媒への不溶部が生じない程度の分子量を有するβ−ピネン重合体が、有利に得られる。本発明において用いられ得る架橋性単量体としては、具体的に、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等の2官能性ビニル化合物を挙げることが出来、それらの中でも、経済性や反応性の観点から、m−ジイソプロペニルベンゼンが特に好ましく用いられる。
そのような架橋性単量体をβ−ピネン(及びβ−ピネンと共重合可能な他の単量体)と共重合する場合に、その共重合量は、ポリマー中の全モノマー単位あたり0.001〜7モル%が好ましく、中でも0.01〜5モル%がより好ましく、0.05〜4モル%が最も好ましい。その共重合量が多過ぎると、得られるβ−ピネン重合体がゲル状となり、熱可塑性を失ってしまい、好ましくない。
ところで、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、公知の重合手法の中から適宜に選択することが出来る。例えば、アニオン重合法、カチオン重合法、ラジカル重合法及び配位重合法のうちの何れかを、選択して用いることが出来るが、一般にカチオン重合法が採用される。
なお、カチオン重合法に従って、本発明で使用されるβ−ピネン重合体を得る場合において、その重合触媒としては、公知のカチオン重合触媒が用いられることとなる。具体的には、BF3 、BF3 OEt2 、BBr3 、BBr3 OEt2 、AlCl3 、AlBr3 、AlI3 、TiCl4 、TiBr4 、TiI4 、FeCl3 、FeCl2 、SnCl2 、SnCl4 、WCl6 、MoCl5 、SbCl5 、TeCl2 等の、周期律表3族〜16族までの金属ハロゲン化合物;HF、HCl、HBr等の水素酸;H2 SO4 、H3 BO3 、HClO4 、CH3 COOH、CH2 ClCOOH、CHCl2 COOH、CCl3 COOH、CF3 COOH、パラトルエンスルホン酸、CF3 SO3 H、H3 PO4 、P2 O5 等のオキソ酸、およびこれらの基を有するイオン交換樹脂等の高分子化合物;燐モリブデン酸、燐タングステン酸等のヘテロポリ酸;SiO2 、Al2 O3 、SiO2 −Al2 O3 、MgO−SiO2 、B2 O3 −Al2 O3 、WO3 −Al2 O3 、Zr2 O3 −SiO2 、硫酸化ジルコニア、タングステン酸ジルコニア、H+ 又は希土類元素と交換したゼオライト、活性白土、酸性白土、γ−Al2O3、P2O5をケイソウ土と担持させた固体燐酸等の固体酸等を挙げることが出来る。
これらのカチオン重合触媒は、組み合わせて用いても良く、また他の化合物等を重合系に添加しても良い。かかる他の化合物等は、例えばそれを添加することにより触媒の活性を向上させることができる化合物等である。そして、金属ハロゲン化合物の酸性化合物としての活性を向上させる化合物の例としては、MeLi、EtLi、BuLi、Et2 Mg、EtMgBr、Et3 Al、Et2 AlCl、EtAlCl2 、Et3 Al2 Cl3 、(i−Bu)3 Al、Et2 Al(OEt)、Me4 Sn、Et4 Sn、Bu4 Sn、Bu3 SnCl等の金属アルキル化合物;2−メトキシ−2−フェニルプロパン、t−ブタノール、1,4−ビス(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、2−フェニル−2−プロパノール等の、リビングカチオン重合における重合開始剤として用いられる化合物等が、例示される。
また、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の重合方法として、溶媒を用いた溶液重合法を用いてもよい。使用可能な溶媒としては、採用される重合法により異なるため、一義的に規定することは困難であるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;エステル、エーテル等の含酸素系溶媒等を挙げることが出来る。なお、反応性を考慮すると、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等の使用が、好ましい。これらの溶媒は、単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
かくの如き溶媒の使用量は特に限定されないが、β−ピネン等の単量体100質量部に対して、通常100〜10000質量部程度、好ましくは150〜5000質量部、より好ましくは200〜3000質量部である。この溶媒量が少ないと、重合触媒の均一な混合が困難になるため、反応が不均一となり、均一な樹脂が得られなかったり、反応の制御が困難になる。一方、溶媒量が多いと、生産性が低下してしまう問題がある。
そして、重合反応を行なう場合、反応温度は通常、−80℃〜100℃が好ましく、中でも−40℃〜80℃がより好ましく、−20℃〜80℃が最も好ましい。この反応温度が低過ぎると、反応の進行が遅く、高過ぎると、反応の制御が困難であり、再現性が得られ難い。
また、重合反応を行なうための反応圧力は、特に限定されるものではないが、0.5〜50気圧が好ましく、0.7〜10気圧がより好ましい。通常、1気圧前後で重合反応が行なわれることとなる。
ところで、重合反応によって生成したβ−ピネン重合体は、例えば、再沈殿、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチーム・ストリッピング)等の、重合体を溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離、取得することが出来る。
本発明で使用されるβ−ピネン重合体は、耐光性、耐衝撃性、耐熱性の観点から、そのオレフィン性二重結合が水素添加されていることが好ましい。そして、その水素添加率としては、一般に90%以上水素添加されていることが好ましく、中でも95%以上水素添加されていることがより好ましく、99%以上水素添加されていることが、最も好ましい。特に、本発明にあっては、前記β−ピネン重合体は、水素添加されたものであって、その水素添加率を示す([水素添加されたオレフィン性二重結合の数]/[水素添加前の重合体中のオレフィン性二重結合の数])×100の値が95%以上であることが、望ましいのである。
ここにおいて、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の水素添加の方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることが出来る。例えば、ウィルキンソン錯体、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム等の均一系触媒、ケイソウ土、マグネシア、アルミナ、シリカ、アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア、シリカ−アルミナ、合成ゼオライト等の担持体に、ニッケル、パラジウム、白金等の触媒金属を担持させた不均一系触媒等による公知の方法を用いることが出来る。
また、かかる水素添加する場合に用いることのできる溶媒としては、重合体が溶解され、且つ水素添加触媒に不活性な有機溶媒であれば、使用することが可能である。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;エステル、エーテル等の含酸素系溶媒等を用いることが出来る。なお、反応性を考慮すると、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒等が好ましい。これらの溶媒は、単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用しても、何等差し支えない。
さらに、水素添加反応の反応温度は、使用する水素添加触媒や水素圧力に依存するが、一般に20℃〜250℃程度が好ましく、中でも25℃〜150℃がより好ましく、更には40℃〜100℃が最も好ましい。反応温度が低くなり過ぎると、反応が円滑に進行し難く、また反応温度が高過ぎると、副反応や分子量低下が起こり易い。なお、水素圧力としては、好ましくは常圧〜200kgf/cm2 程度、より好ましくは5〜100kgf/cm2 を用いることが出来る。この水素圧力が低過ぎると、反応が円滑に進行し難く、また水素圧力が高過ぎると、装置上の制約がかかってしまう。
なお、そのような水素添加反応系中におけるβ−ピネン重合体の濃度は、通常2質量%〜40質量%程度であり、好ましくは3質量%〜30質量%、より好ましくは5質量%〜20質量%である。β−ピネン重合体の濃度が低いと、生産性の低下が起こり易く、好ましくない。また、β−ピネン重合体の濃度が高過ぎると、水素化重合体が析出したり、反応混合物の粘度が高くなり、攪拌が円滑に行なえなくなる場合が生じ、好ましくない。
また、水素添加反応の反応時間は、使用する水素添加触媒や水素圧力、反応温度に依存するが、通常、0.1時間〜50時間程度、好ましくは0.2時間〜20時間、より好ましくは0.5時間〜10時間が採用されることとなる。
さらに、水素添加反応後のβ−ピネン重合体は、例えば、再沈殿、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチーム・ストリッピング)等の、重合体を溶媒から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離、取得されることとなる。
ところで、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の分子量は、重合溶液の粘度や溶融粘度、成形性、耐熱性の観点から、重量平均分子量で3万〜100万程度であることが好ましく、4万〜50万がより好ましく、特に6万〜25万が好ましく、中でも9万〜20万が最も好ましい。なお、重合体の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で求めるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)や、静的光散乱測定(SLS)等の公知の分析手法を用いて、算出することが出来る。
また、本発明で使用されるβ−ピネン重合体のガラス転移温度(Tg)は、本発明に係る重合体組成物を用いてなる成形体の使用環境を考慮すると高いほうが好ましいことから、80℃以上である必要があり、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上である。このガラス転移温度の上限は特に定めないが、200℃程度であることが望ましい。ガラス転移温度が高過ぎると、高分子の絡み合いが少なくなり、成形品が脆くなる場合があるからである。
さらに、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の全光線透過率は、高い方が好ましく、一般に80%以上が好ましく、中でも85%以上がより好ましく、そして90%以上が最も好ましい。
更にまた、本発明で使用されるβ−ピネン重合体は、寸法安定性の観点から、吸水率が低い方が好ましい。かかるβ−ピネン重合体の吸水率は、60℃、90%RH雰囲気下に置いたときの飽和吸水率として0.2%以下が好ましく、中でも0.1%以下がより好ましく、0.05%以下が最も好ましい。このような吸水率を与えるβ−ピネン重合体が、有利に選択されることとなる。
このような本発明で使用されるβ−ピネン重合体は、比重が小さいことが特徴である。比重が小さいことで、より軽い成形体を得ることが出来るのである。従って、本発明で使用されるβ−ピネン重合体の比重は0.85以上1.0未満である必要があり、特に、0.85〜0.98がより好ましい。0.85よりも小さな比重のβ−ピネン重合体を得ることは困難であり、また比重が1.0以上になると、得られる成形体の軽量化という目的を充分に達成し得なくなるからである。
一方、本発明に従う重合体組成物においては、上述したβ−ピネン重合体と共に、軟質重合体が必須の成分として配合される。ここで、本発明において使用される軟質重合体とは、通常30℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する重合体を意味するものであり、複数のガラス転移温度を有する重合体や、ガラス転移温度と融点(Tm)を有する重合体であっても、最も低いガラス転移温度が30℃以下のものであれば、本発明の軟質重合体として使用可能である。
かかる軟質重合体としては、(a)主としてエチレンやプロピレン等のα−オレフィンからなるオレフィン系軟質重合体、(b)主としてイソブチレンからなるイソブチレン系軟質重合体、(c)主としてブタジエンやイソプレン等の共役ジエンからなるジエン系軟質重合体、(d)ケイ素−酸素結合を骨格とする軟質重合体(有機ポリシロキサン)、(e)主としてα,β−不飽和酸とその誘導体からなる軟質重合体、(f)主としてビニルエステルからなる軟質重合体、(g)エポキシ化合物の重合体、(h)フッ素系ゴム、(i)その他の軟質重合体、等が挙げられる。これらの中で、耐衝撃性、耐熱性、低吸水性の観点から、(a)オレフィン系軟質重合体、(b)イソブチレン系軟質重合体及び(c)ジエン系軟質重合体が、好ましい。
そのような軟質重合体の具体例について、例えば、(a)オレフィン系軟質重合体としては、液状ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン及び1−デセン等の単独重合体;エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、エチレン−環状オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、及びスチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー等の共重合体を、挙げることが出来る。
また、(b)イソブチレン系軟質重合体としては、ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレンゴム、イソブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体等を挙げることが出来る。
さらに、(c)ジエン系軟質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の共役ジエンの単独重合体;ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の共役ジエンのランダム共重合体;ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−(イソプレン/ブタジエン)−スチレンブロック共重合体等の、共役ジエンと芳香族ビニル系炭化水素とのブロック共重合体、及びこれらの水素添加物等を、挙げることが出来る。
更にまた、(d)ケイ素−酸素結合を骨格とする軟質重合体としては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン等のシリコーンゴムを挙げることが出来る。
加えて、上記した(e)の軟質重合体としては、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル等のアクリルモノマーの単独重合体;ブチルアクリレート−スチレン共重合体等の、アクリルモノマーとその他のモノマーとの共重合体や、それらからなるコアシェル構造の粒子を、挙げることが出来る。
また、上記した(f)の軟質重合体としては、ポリステアリン酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を挙げることが出来る。
更にまた、上記(g)の軟質重合体としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴム等を、挙げることが出来る。
加えて、(h)フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム等を挙げることが出来る。
また、上記(i)の軟質重合体としては、天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、及び、特開平8−73709号公報に記載されているポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー及びポリアミド系熱可塑性エラストマー等を、挙げることが出来る。なお、これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性によって官能基が導入されたものであってもよい。
本発明において、上述した軟質重合体は、それぞれ単独で、或いは2種以上のものを混合して用いることが出来る。好ましい軟質重合体の配合量としては、重合体組成物中において、β−ピネン重合体の60〜95質量%に対して、軟質重合体が5〜40質量%の割合にて配合されることが好ましく、β−ピネン重合体の70〜90質量%に対して、軟質重合体が10〜30質量%の割合にて配合されることが、より好ましい。重合体組成物中の軟質重合体の含有量が5質量%より少ないと、十分な耐衝撃性を得ることが出来ず、また含有量が40質量%より多いと、重合体組成物の弾性率が小さすぎて実用的でないからである。
なお、本発明に従う重合体組成物には、必要に応じて、各種配合剤を、単独で或いは二種以上を混合して用いることが出来る。
そのような各種配合剤の具体例としては、樹脂工業で通常用いられているものであれば、格別な制限はなく、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料等の着色剤、滑剤、可塑剤(柔軟化剤)、帯電防止剤、蛍光増白剤、充填剤等の配合剤を挙げることが出来る。
その中で、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられるが、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
用いられるフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、従来から公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等の特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されている如きアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン[即ちペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物等が挙げられる。
また、リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用されるものであれば、格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が特に好ましい。
更にまた、イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等を挙げることが出来る。
そして、これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、或いは二種以上を組み合わせて、用いることが出来る。このような酸化防止剤の配合量は、本発明の目的が損なわれない範囲で適宜に決定されることとなるが、重合体組成物の100質量部に対して、通常0.001〜5質量部程度、好ましくは0.01〜1質量部の範囲である。
また、紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;4−t−ブチルフェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾエート系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸3水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のアクリレート系紫外線吸収剤;[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル等の金属錯体系紫外線吸収剤等を用いることが出来る。
さらに、光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系光安定剤を挙げることが出来る。
加えて、近赤外線吸収剤としては、例えば、シアニン系近赤外線吸収剤;ピリリウム系近赤外線吸収剤;スクワリリウム系近赤外線吸収剤;クロコニウム系近赤外線吸収剤;アズレニウム系近赤外線吸収剤;フタロシアニン系近赤外線吸収剤;ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤;ナフトキノン系近赤外線吸収剤;アントラキノン系近赤外線吸収剤;インドフェノール系近赤外線吸収剤;アジ系近赤外線吸収剤等が挙げられる。また、市販品の近赤外線吸収剤として、SIR−103、SIR−114、SIR−128、SIR−130、SIR−132、SIR−152、SIR−159、SIR−162(以上、三井東圧染料株式会社製)、Kayasorb IR−750、Kayasorb IRG−002、Kayasorb IRG−003、Kayasorb IR−820B、Kayasorb IRG−022、Kayasorb IRG−023、Kayasorb CY−2、Kayasorb CY−4、Kayasorb CY−9(以上、日本化薬株式会社製)等を挙げること出来る。
また、染料としては、重合体組成物に均一に分散・溶解するものであれば、特に限定されるものではないが、本発明に係る重合体組成物との相溶性が優るところから、油溶性染料(各種C.I.ソルベント染料)が広く用いられる。この油溶性染料の具体例としては、The Society of Dyers and Colourists社刊のColor Index vol.3に記載されている各種のC.I.ソルベント染料が、挙げられる。
さらに、有機系顔料としては、例えば、ピグメントレッド38等のジアリリド系顔料;ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド53、ピグメントレッド57:1等のアゾレーキ系顔料;ピグメントレッド144、ピグメントレッド166、ピグメントレッド220、ピグメントレッド221、ピグメントレッド248等の縮合アゾ系顔料;ピグメントレッド171、ピグメントレッド175、ピグメントレッド176、ピグメントレッド185、ピグメントレッド208等のベンズイミダゾロン系顔料;ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料;ピグメントレッド149、ピグメントレッド178、ピグメントレッド179等のペリレン系顔料;ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料が挙げられる。また、無機系顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、べんがら、クロムレッド、モリブデンレッド、リサージ、酸化鉄等が挙げられる。
ところで、本発明の重合体組成物を用いて成形体を作製するにあたり、かかる成形体に着色が必要とされるときは、染料と顔料の何れでも、本発明の目的の範囲で使用することが出来る。また、紫外線吸収剤が目視では黄色〜赤色の色を示すこともあり、近赤外線吸収剤が目視では黒色の色を示すこともあるため、これらと染料を厳密に区別して使用する必要はなく、また、組み合わせて使用しても何等差し支えない。
また、滑剤としては、脂肪族アルコールのエステル、多価アルコールのエステル或いは部分エステル等の有機化合物や無機微粒子等を用いることが出来る。有機化合物としては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等が挙げられる。
さらに、他の滑剤としては、一般に無機微粒子を用いることが出来る。ここで、無機微粒子としては、周期律表の1族、2族、4族、6〜14族元素の酸化物、硫化物、水酸化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩及びそれらの含水化物、それらを中心とする複合化合物、天然化合物などの微粒子が挙げられる。
また、可塑剤としては、例えば、トリクレジルフォスフェート、トリキシリルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリエチルフェニルフォスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、モノフェニルジクレジルフォスフェート、ジフェニルモノキシレニルフォスフェート、モノフェニルジキシレニルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート等の燐酸トリエステル系可塑剤;フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル系可塑剤;オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪酸一塩基酸エステル系可塑剤;二価アルコールエステル系可塑剤;オキシ酸エステル系可塑剤等が使用出来るが、これらの中でも、燐酸トリエステル系可塑剤が好ましく、トリクレジルフォスフェート、トリキシリルフォスフェートが特に好ましい。
さらに、可塑剤の具体例としては、スクアラン(C30H62、Mw=422.8)、流動パラフィン(ホワイトオイル、JIS−K−2231に規定されるISO VG10、ISO VG15、ISO VG32、ISO VG68、ISO VG100、ISO VG8及びISO VG21等)、ポリイソブテン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等が挙げられる。これらの中でも、スクアラン、流動パラフィン及びポリイソブテンが、好ましく用いられる。
更にまた、帯電防止剤としては、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の長鎖アルキルアルコール、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート等の多価アルコールの脂肪酸エステル等が挙げられるが、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが特に好ましい。
これらの配合剤は、単独で、又は二種以上を混合して用いることが出来、その割合は、本発明の目的が損なわれない範囲で適宜選択される。その配合量は、重合体組成物の100質量部に対して、通常0.001〜5質量部程度、好ましくは0.01〜1質量部の範囲である。
本発明に従う重合体組成物は、上述してきたβ−ピネン重合体、軟質重合体及び必要に応じて各種配合剤を、各々、所定割合にて配合し、混合することにより調製されることとなるが、かかる調製は、JIS−K−7111に準拠して測定されるシャルピー衝撃強度が、好ましくは2.0kJ/m2 以上となるように、より好ましくは5.0kJ/m2 以上となるように、行なわれる。また、β−ピネン重合体等の混合方法は、特に限定されるものではなく、二軸混練機、ニーダー等を用いて溶融混合する方法や、適当な溶媒(例えば、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等)に溶解又は分散させて混合する方法を、用いることが出来る。
そのようにして得られた重合体組成物を用いて成形体を作製するにあたり、その成形方法としては、従来より公知の成形方法に従えば良く、射出成形、押出成形、押出ブロー成形、延伸ブロー成形、真空成形、回転成形等が挙げられるが、射出成形及び押出成形が好ましい。
以上のようにして得られた成形体にあっては、優れた耐熱性を有し、低吸水性であって、軽量且つ耐衝撃性にも優れているところから、通信用、電気・電子機器用の絶縁成形体、医薬関連器材等に好適に用いられ得るのである。
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
先ず、β−ピネン重合体水素添加物を、以下の如くして合成した。
十分に乾燥させたガラス製コック付フラスコについて、その内部を充分に窒素置換した後、これに、脱水したN−ヘキサン:184質量部と、脱水した塩化メチレン:210質量部と、脱水したジエチルエーテル:0.5質量部とを加え、−78℃に冷却した。それらの混合物を−78℃にて撹拌しながら、二塩化エチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度:1.0mol/L):7.2質量部を更に加えた。次いで、フラスコ内を−78℃に保持した状態にて、p−ジクミルクロライドのヘキサン溶液(濃度:0.1mol/L):3.0質量部を添加したところ、赤燈色に変化した。その後、直ちに蒸留精製したβ−ピネン:60質量部を、1時間かけてフラスコ内に添加したところ、次第に濃燈色になり、溶液の粘度が上昇した。β−ピネンの添加終了後、メタノール:30質量部を添加して、反応を終了させた。フラスコ内に、蒸留水:100質量部にクエン酸:5質量部を添加してなる水溶液を添加し、5分撹拌した後、水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、アルミ化合物を除去した。得られた有機層をメタノール/アセトン(50/50vol%)の混合溶媒:5000質量部に再沈せしめた後、十分に乾燥して、β−ピネン重合体(A1):60質量部を得た。得られたβ−ピネン重合体(A1)の重量平均分子量は116,000、数平均分子量は51,000、ガラス転移温度は95℃であった。
窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器に、シクロヘキサン:70質量部と、上述の如くして得られたβ−ピネン重合体(A1):30質量部を加え撹拌することにより、β−ピネン重合体(A1)を完全に溶解した。次いで、水素添加触媒として5%パラジウム担持アルミナ(N.E.ChemCat製):30質量部を加え、撹拌して十分に分散させた後、耐圧容器内を十分に水素で置換し、室温下、1000rpmで撹拌しながら、100℃、水素圧40kgf/cm2 で、6時間反応させた後、常圧に戻した。反応後の溶液をシクロヘキサン200質量部加えて希釈した後、0.5μmのテフロン(登録商標)フィルターによりろ過して触媒を分離除去した後、メタノール/アセトン(50/50vol%)の混合溶媒:5000質量部に再沈せしめた後、十分に乾燥して、β−ピネン重合体水素添加物(H1):29質量部を得た。得られたβ−ピネン重合体水素添加物(H1)の水素添加率を 1H−NMRから求めたところ、99.9%であり、重量平均分子量は112,000、数平均分子量は50,800、ガラス転移温度は130℃、比重は0.930であった。
なお、上記した各工程で得られる材料について、その物性特定は、以下の如くして行なった。
−分子量−
数平均分子量及び重量平均分子量は、何れも、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で求められたものである。ここでは、GPC装置として、東ソー株式会社製のHLC−8020(品番)を用い、カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel・GMH−Mの2本とG2000Hの1本とを直列に繋いだものを用いた。
−水素添加率−
1H−NMRスペクトルから、原料樹脂のオレフィン性二重結合プロトン(4〜6ppm)の減少率(%)により、水素添加率{([水素添加されたオレフィン性二重結合の数]/[水素添加前の重合体中のオレフィン性二重結合の数])×100(%)}を求めた。
−ガラス転移温度(Tg)−
充分に乾燥して、溶媒を除去したサンプルを用いて、示差走査熱量測定法(DSC)により、測定した。先ず、サンプルを、窒素100mL/分の気流下、25℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで加熱して、DSCカーブを得る。次に、この得られたDSCカーブを用い、図1に示される如く、その中央接線Bと転移前のベースラインCの交点を通り温度軸に対して平行な平行線Eと、中央接線Bと転移後のベースラインDの交点を通り温度軸に対して平行な平行線Fを引く。本明細書では、この2本の平行線E、Fを2等分する平行線GとDSCカーブの交点における温度Aを、ガラス転移温度(Tg)とした。また、ここでは、測定装置としては、メトラー・トレド株式会社製のDSC30(品番)を用いた。
−比重−
JIS−K−7112:1999のA法に準じて、測定した。
次いで、上記で得られたβ−ピネン重合体水素添加物(H1)を用いて、以下の実験を行なった。なお、以下の各実験例で得られた成形体の特性は、比重については上記したものと同様の手法に従って測定し、比重以外の物性については、以下の手法に従って測定し、評価した。
−シャルピー衝撃強度−
JIS−K−7111に準拠して、厚さ:3mmの成形品(ノッチ付)を試験片として用いて、23℃、湿度:47%の条件にて測定した。判定基準は、以下の通りである。
○:シャルピー衝撃強度が10kJ/m2 以上
×:シャルピー衝撃強度が10kJ/m2 未満
−荷重たわみ温度−
JIS−K−7191−1,2に準拠して、1.8MPaの条件で、HOT.VSPT.TESTER S−3M(品番;株式会社東洋精機製作所製)を用いて、測定した。
−吸水率−
プレス成形した長さ:140mm×幅:60mm×厚さ:0.8mmの板状成形体を、60℃、90%RH雰囲気下に10日間載置し、初期重量に対する増加した重量の割合を吸水率とした。
吸水率(%)=(重量増加分/初期重量)×100
−誘電率、誘電正接−
空洞共振器摂動法による誘電体材料計測装置(関東電子応用開発株式会社製)を使用し、測定周波数:10GHzにて測定を行なった。
−実験例1−
β−ピネン重合体水素添加物(H1)の70質量部、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水素添加物(株式会社クラレ製、商品名:セプトン4055、結合スチレン量:30質量%、Mw:280,000)の30質量部を、溶融混練機(株式会社東洋精機製作所製、製品名:ラボプラストミル)を用いて、100rpm、240℃の条件にて5分間、混合し、重合体組成物(S1)を得た。かかる重合体組成物(S1)を所定の形状にプレス成形し、得られた成形体について各物性を測定した。その測定結果を、下記表1に示す。
−実験例2−
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水素添加物に代えて、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(三井化学株式会社製、商品名:3085、エチレン含有量:62質量%、プロピレン含有量:33.5質量%、ジエン含有量:4.5質量%)を用いた以外は実験例1と同様にして、重合体組成物(S2)を得た。かかる重合体組成物(S2)を所定の形状にプレス成形し、得られた成形体について各物性を測定した。その測定結果を、下記表1に示す。
−実験例3−
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水素添加物に代えて、エチレン−プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、商品名:タフマーP−0080K)を用いた以外は実験例1と同様にして、重合体組成物(S3)を得た。かかる重合体組成物(S3)を所定の形状にプレス成形し、得られた成形体について各物性を測定した。その測定結果を、下記表1に示す。
−実験例4−
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水素添加物に代えて、オレフィン系エラストマー(三井化学株式会社製、商品名:ミラストマー6030N)を用いた以外は実験例1と同様にして、重合体組成物(S4)を得た。かかる重合体組成物(S4)を所定の形状にプレス成形し、得られた成形体について各物性を測定した。その測定結果を、下記表1に示す。
−実験例5−
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水素添加物に代えて、エチレン−1−オクテン共重合体(ダウ・ケミカル日本株式会社製、商品名:エンゲージ EG8200)を用いた以外は実験例1と同様にして、重合体組成物(S5)を得た。かかる重合体組成物(S5)を所定の形状にプレス成形し、得られた成形体について各物性を測定した。その測定結果を、下記表1に示す。
−実験例6−
β−ピネン重合体水素添加物(H1)のみを所定の形状にプレス成形し、得られた成形体について、各物性を測定した。その測定結果を、下記表1に併せて示す。
かかる表1に示されるように、本発明に従う重合体組成物の成形体にあっては、何れもシャルピー衝撃強度が10kJ/m2 以上と優れた耐衝撃性を有しており、また、吸水率が低く、荷重たわみ温度も高いため、寸法安定性に優れていることが確認された。また、誘電率が低く、誘電正接も小さいため、優れた絶縁性を有し、高周波部材に有利に用いられ得ることが認められた。更に、比重も小さいため、軽量の成形体が得られることも確認された。