JP5369409B2 - 光学フィルム、その製造方法、偏光板および液晶パネル - Google Patents

光学フィルム、その製造方法、偏光板および液晶パネル Download PDF

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Description

本発明は、環状オレフィン系樹脂からなり、膜厚均一性および表面平滑性に優れた光学フィルム、その製造方法、該光学フィルムを用いた偏光板、および液晶パネルに関する。
環状オレフィン系樹脂は、透明性、耐熱性、耐湿性などに優れるため、光学フィルム用途に好適に用いられている。通常、環状オレフィン系樹脂からなるフィルムは、溶液流延法(溶液キャスティング法)や、溶融押出法などにより製膜され、必要に応じて延伸などを施して製造される。
光学フィルムは、透明性などの光学特性に優れることが求められるとともに、フィルムが均質で、光学ムラが少ないことが肝要である。光学フィルム製造時に生じる光学ムラを防止あるいは抑制して光学フィルムを製造する方法としては、例えばダイリップの欠陥形状を抑制した特定のTダイを用いることにより、溶融押出成形で光学フィルムを製造する際にフィルムの押出し方向にそって連続的に発生する凹凸状線状模様(ダイライン)の発生を抑制する方法が提案されている(特許文献1参照)。
近年、液晶パネルの大型化に伴い、偏光板に用いられる光学フィルムは、幅1000mmを超える広幅のものが求められている。しかしながら、工業的に広幅のフィルムを製造する場合には、幅方向におけるフィルム膜厚の均一性を保持するのが非常に困難である。また、上述したダイラインが少しでも発生すると、光学的に均質な広幅フィルムが得られず、フィルムの歩留まりが非常に悪くなると言う問題がある。
特開2005−148568号公報
本発明は、工業的に広幅のフィルムを製造する場合における、環状オレフィン系樹脂からなる膜厚均一性および表面平滑性に優れた光学フィルムを提供することを課題としている。
本発明の光学フィルムは、下記式(1)で表される化合物由来の構造単位を有する環状オレフィン系樹脂からなる幅1000mm以上の光学フィルムであって、
フィルム幅方向に沿って100mm毎に100mm×500mmの寸法のフィルムを切り出してサンプルとし、JIS K7210に準拠して260℃、98N荷重でのメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう)を測定した際、当該MFRのバラツキが±5%以内であることを特徴とする。
Figure 0005369409
(式(1)中、R1〜R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていても良い。また、R1〜R4 のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。)
ここで、上記環状オレフィン系樹脂の構造単位は、下記一般式(2)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 0005369409
(式(2)中、R1〜R4 、p、mの定義は上記式(1)に同じ。)
本発明の光学フィルムを製造する第一の方法は、同一組成で平均分子量が異なる数種の環状オレフィン系樹脂を混合して、成形機に供給される樹脂の平均分子量が一定になるように調整してペレットを成形し、当該ペレットを用いて光学フィルムを成形することを特徴とする。
さらに、本発明の光学フィルムを製造する第二の方法は、同一組成で平均分子量が異なる数種の環状オレフィン系樹脂を混合して、成形機に供給される樹脂の平均分子量が一定になるように調整し、光学フィルムを成形することを特徴とする。
次に、本発明は、上記光学フィルムをさらに延伸してなる光学フィルムに関する。
次に、本発明は、偏光子の少なくとも片面に、以上の光学フィルムが積層されてなることを特徴とする偏光板に関する。
次に、本発明は、液晶表示素子の少なくとも片面に、上記偏光板が積層されてなることを特徴とする液晶パネルに関する。
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂を含有し、膜厚均一性に優れ、表面平滑性に優れた広幅の光学フィルムを提供することができる。また、光学フィルムが延伸を施したフィルムである場合には、位相差や光軸の安定した、光学的にムラのないフィルムとして好適に用いることができる。本発明に係る光学フィルムは、膜厚均一性および表面平滑性に優れるので、光学的なムラが少なく、フィルムの歩留まりが良く、さらに延伸フィルムにおいてはヘイズ値が小さく透明性に優れており、これを用いた大画面の液晶ディスプレイなどは全面において歪みやムラのない高い性能を達成できる。
≪光学フィルム≫
<環状オレフィン系樹脂>
本発明の光学フィルムに用いられる環状オレフィン系樹脂としては、次のような(共)重合体が挙げられる。
(1)上記一般式(1)で表される特定単量体の開環重合体。
(2)上記一般式(1)で表される特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体。
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体。なお、(3)において、上記(1)の開環重合体の水素添加重合体の構造単位は、上記一般式(2)で表すことができる。
(4)上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体。
(5)上記一般式(1)で表される特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体。
(6)上記一般式(1)で表される特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体。
(7)上記一般式(1)で表される特定単量体とアクリレートとの交互共重合体。
<特定単量体>
上記特定単量体の具体例としては、次のような化合物が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5 ]−8−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5 ]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]−4−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。
これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
特定単量体のうち好ましいのは、上記一般式(1)中、R1およびRが水素原子または炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基であり、R およびR が水素原子または一価の有機基であって、RおよびRの少なくとも一つは水素原子および炭化水素基以外の極性を有する極性基を示し、mは0〜3の整数、pは0〜3の整数であり、より好ましくはm+p=0〜4、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくはm=1、p=0であるものである。m=1、p=0である特定単量体は、得られる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くかつ機械的強度も優れたものとなる点で好ましい。
上記特定単量体の極性基としては、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基などが挙げられ、これら極性基はメチレン基などの連結基を介して結合していてもよい。また、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基など極性を有する2価の有機基が連結基となって結合している炭化水素基なども極性基として挙げられる。これらの中では、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基が好ましい。
さらに、RおよびRの少なくとも一つが式−(CHCOORで表される極性基である単量体は、得られる環状オレフィン系樹脂が高いガラス転移温度と低い吸湿性、各種材料との優れた密着性を有するものとなる点で好ましい。上記の特定の極性基にかかる式において、Rは炭素原子数1〜12、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。また、nは、通常、0〜5であるが、nの値が小さいものほど、得られる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くなるので好ましく、さらにnが0である特定単量体はその合成が容易である点で好ましい。
また、上記一般式(1)において、R1またはRがアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、さらに好ましくは1〜2のアルキル基、特にメチル基であることが好ましく、特に、このアルキル基が上記の式−(CHCOORで表される特定の極性基が結合した炭素原子と同一の炭素原子に結合されていることが、得られる環状オレフィン系樹脂の吸湿性を低くできる点で好ましい。
<共重合性単量体>
共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。
シクロオレフィンの炭素数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましいのは5〜12である。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
特定単量体/共重合性単量体の好ましい使用範囲は、重量比で100/0〜50/50であり、さらに好ましくは100/0〜60/40である。
<開環重合触媒>
本発明において、(1)特定単量体の開環重合体、および(2)特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体を得るための開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えば、Mg、Caなど)、IIB族元素(例えば、Zn、Cd、Hgなど)、IIIA族元素(例えば、B、Alなど)、IVA族元素(例えば、Si、Sn、Pbなど)、あるいはIVB族元素(例えば、Ti、Zrなど)の化合物であって、少なくとも1つの該元素−炭素結合あるいは該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。また、この場合に触媒の活性を高めるために、後述の(c)添加剤が添加されたものであってもよい。
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl、MoCl、ReOCl などの特開平1−132626号公報第8頁左下欄第6行〜第8頁右上欄第17行に記載の化合物を挙げることができる。
(b)成分の具体例としては、n−CLi、(CAl、(CAlCl、(C1.5AlCl1.5、(C)AlCl、メチルアルモキサン、LiHなど特開平1−132626号公報第8頁右上欄第18行〜第8頁右下欄第3行に記載の化合物を挙げることができる。
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、さらに特開平1−132626号公報第8頁右下欄第16行〜第9頁左上欄第17行に示される化合物を使用することができる。
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体とのモル比で「(a)成分:特定単量体」が、通常、1:500〜1:50,000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:10,000となる範囲とされる。
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で(a):(b)が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲とされる。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で(c):(a)が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲とされる。
<重合反応用溶媒>
開環重合反応において用いられる溶媒(分子量調節剤溶液を構成する溶媒、特定単量体および/またはメタセシス触媒の溶媒)としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素、クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどの、ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリールなどの化合物、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類などを挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒の使用量としては、「溶媒:特定単量体(重量比)」が、通常、1:1〜10:1となる量とされ、好ましくは1:1〜5:1となる量とされる。
<分子量調節剤>
得られる開環(共)重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節する。
ここに、好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
分子量調節剤の使用量としては、開環重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルとされる。
(2)開環共重合体を得るには、開環重合工程において、特定単量体と共重合性単量体とを開環共重合させてもよいが、さらに、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン化合物、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖に炭素−炭素間二重結合を2つ以上含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に特定単量体を開環重合させてもよい。
以上のようにして得られる開環(共)重合体は、そのままでも用いられるが、これをさらに水素添加して得られた(3)水素添加(共)重合体は、耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
<水素添加触媒>
水素添加反応は、通常の方法、すなわち開環重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が挙げられる。
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は、粉末でも粒状でもよい。
これらの水素添加触媒は、開環(共)重合体:水素添加触媒(重量比)が、1:1×10−6〜1:2となる割合で使用される。
このように、水素添加することにより得られる水素添加(共)重合体は、優れた熱安定性を有するものとなり、成形加工時や製品としての使用時の加熱によっても、その特性が劣化することはない。ここに、水素添加率は、通常、50%以上、好ましく70%以上、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは99%以上である。
また、水素添加(共)重合体の水素添加率は、500MHz、H−NMRで測定した値が50%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れたものとなり、本発明の波長板として使用した場合に長期にわたって安定した特性を得ることができる。
なお、本発明の環状オレフィン系樹脂として使用される水素添加(共)重合体は、該水素添加(共)重合体中に含まれるゲル含有量が5重量%以下であることが好ましく、さらに1重量%以下であることが特に好ましい。
また、本発明の環状オレフィン系樹脂として、(4)上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体も使用できる。
<フリーデルクラフト反応による環化>
(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化する方法は特に限定されるものではないが、特開昭50−154399号公報に記載の酸性化合物を用いた公知の方法が採用できる。酸性化合物としては、具体的には、AlCl3、BF3、FeCl3、Al23、HCl、CH2ClCOOH、ゼオライト、活性白土などのルイス酸、ブレンステッド酸が用いられる。
環化された開環(共)重合体は、(1)または(2)の開環(共)重合体と同様に水素添加できる。
さらに、本発明の環状オレフィン系樹脂として、(5)上記特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体も使用できる。
<不飽和二重結合含有化合物>
不飽和二重結合含有化合物としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテンなど、好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のオレフィン系化合物を挙げることができる。
特定単量体/不飽和二重結合含有化合物の好ましい使用範囲は、重量比で90/10〜40/60であり、さらに好ましくは85/15〜50/50である。
本発明において、(5)特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体を得るには、通常の付加重合法を使用できる。
<付加重合触媒>
上記(5)飽和共重合体を合成するための触媒としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびバナジウム化合物から選ばれた少なくとも一種と、助触媒としての有機アルミニウム化合物とが用いられる。
ここで、チタン化合物としては、四塩化チタン、三塩化チタンなどを、またジルコニウム化合物としてはビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどを挙げることができる。
さらに、バナジウム化合物としては、一般式
VO(OR)、またはV(OR)
〔ただし、Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子であって、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦(a+b)≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦(c+d)≦4である。〕
で表されるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与付加物が用いられる。
上記電子供与体としては、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物、アルコキシシランなどの含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアナートなどの含窒素電子供与体などが挙げられる。
さらに、助触媒としての有機アルミニウム化合物としては、少なくとも1つのアルミニウム−炭素結合あるいはアルミニウム−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも一種が用いられる。
上記において、例えばバナジウム化合物を用いる場合におけるバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物の比率は、バナジウム原子に対するアルミニウム原子の比(Al/V)が2以上であり、好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜20の範囲である。
付加重合に使用される重合反応用溶媒は、開環重合反応に用いられる溶媒と同じものを使用することができる。また、得られる(5)飽和共重合体の分子量の調節は、通常、水素を用いて行われる。
さらに、本発明の環状オレフィン系樹脂として、(6)上記特定単量体、およびビニル系環状炭化水素系単量体またはシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型共重合体およびその水素添加共重合体も使用できる。
<ビニル系環状炭化水素系単量体>
ビニル系環状炭化水素系単量体としては、例えば、4−ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロペンテンなどのビニルシクロペンテン系単量体、4−ビニルシクロペンタン、4−イソプロペニルシクロペンタンなどのビニルシクロペンタン系単量体などのビニル化5員環炭化水素系単量体、4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセンなどのビニルシクロヘキセン系単量体、4−ビニルシクロヘキサン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキサンなどのビニルシクロヘキサン系単量体、スチレン、α―メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−フェニルスチレン、p−メトキシスチレンなどのスチレン系単量体、d−テルペン、1−テルペン、ジテルペン、d−リモネン、1−リモネン、ジペンテンなどのテルペン系単量体、4−ビニルシクロヘプテン、4−イソプロペニルシクロヘプテンなどのビニルシクロヘプテン系単量体、4−ビニルシクロヘプタン、4−イソプロペニルシクロヘプタンなどのビニルシクロヘプタン系単量体などが挙げられる。好ましくは、スチレン、α−メチルスチレンである。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
<シクロペンタジエン系単量体>
本発明の(6)付加型共重合体の単量体に使用されるシクロペンタジエン系単量体としては、例えばシクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン、5,5−メチルシクロペンタジエンなどが挙げられる。好ましくはシクロペンタジエンである。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
上記特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体は、上記(5)特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体と同様の付加重合法で得ることができる。
また、上記付加型(共)重合体の水素添加(共)重合体は、上記(3)開環(共)重合体の水素添加(共)重合体と同様の水添法で得ることができる。
さらに、本発明の環状オレフィン系樹脂として、(7)上記特定単量体とアクリレートとの交互共重合体も使用できる。
<アクリレート>
本発明の(7)上記特定単量体とアクリレートとの交互共重合体の製造に用いられるアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどの炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状または環状アルキルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−テトラヒドロフルフリルアクリレートなどの炭素原子数2〜20の複素環基含有アクリレート、ベンジルアクリレートなどの炭素原子数6〜20の芳香族環基含有アクリレート、イソボロニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートなどの炭素数7〜30の多環構造を有するアクリレートが挙げられる。
本発明において、(7)上記特定単量体とアクリレートとの交互共重合体を得るためには、ルイス酸存在下、上記特定単量体とアクリレートとの合計を100モルとしたとき、通常、上記特定単量体が30〜70モル、アクリレートが70〜30モルの割合で、好ましくは上記特定単量体が40〜60モル、アクリレートが60〜40モル割合で、特に好ましくは上記特定単量体が45〜55モル、アクリレートが55〜45モルの割合でラジカル重合する。
(7)上記特定単量体とアクリレートとの交互共重合体を得るために使用するルイス酸の量は、アクリレート100モルに対して0.001〜1モルとなる量とされる。また、公知のフリーラジカルを発生する有機過酸化物またはアゾビス系のラジカル重合開始剤を用いることができ、重合反応温度は、通常、−20℃〜80℃、好ましくは5℃〜60℃である。また、重合反応用溶媒には、開環重合反応に用いられる溶媒と同じものを使用することができる。
なお、本発明でいう「交互共重合体」とは、上記特定単量体に由来する構造単位が隣接しない、すなわち、上記特定単量体に由来する構造単位の隣は必ずアクリレートに由来する構造単位である構造を有する共重合体のことを意味しており、アクリレート由来の構造単位どうしが隣接して存在する構造を否定するものではない。
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂の好ましい分子量は、固有粘度〔η〕inhで0.2〜5dl/g、さらに好ましくは0.3〜3dl/g、特に好ましくは0.4〜1.5dl/gであり、テトラヒドロフランに溶解してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は8,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは12,000〜50,000であり、重量平均分子量(Mw)は20,000〜300,000、さらに好ましくは30,000〜250,000、特に好ましくは40,000〜200,000の範囲のものが好適である。また、分子量分布(Mn/Mw)は、好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜3.7であり、さらに好ましくは2.8〜3.5である。分子量分布が小さい樹脂を用いることにより、MFRのバラツキが小さいフィルムが得られる。
固有粘度〔η〕inh、数平均分子量および重量平均分子量が上記範囲にあることによって、環状オレフィン系樹脂の耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性と、本発明の光学フィルムとしての成形加工性が良好となる。
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、通常、110℃以上、好ましくは110〜350℃、さらに好ましくは120〜250℃、特に好ましくは120〜200℃である。Tgが110℃未満の場合は、高温条件下での使用、あるいはコーティング、印刷などの二次加工により変形するので好ましくない。一方、Tgが350℃を超えると、成形加工が困難になり、また成形加工時の熱によって樹脂が劣化する可能性が高くなる。
なお、本発明の光学フィルムに用いられる環状オレフィン系樹脂は、得られる光学フィルムのMFRのバラツキが小さいものになるために、樹脂自体のMFRのバラツキが小さいものであることが好ましい。具体的には、分子量分布の小さい樹脂を得ることが好ましい。当該分子量分布が小さい樹脂を得るためには、上記一般式(1)で表される化合物および触媒成分を2段階以上の多段階に分けて、開環重合あるいは付加重合を行う、多段重合を行うことが特に好ましい。
具体的には、上記(1)あるいは(2)の開環(共)重合の場合における多段重合は、重合槽を直列に配置して、重合槽に単量体成分と触媒成分を供給した後に、一定時間を経過したところで、連続的または回分的に、次段の重合槽に一部重合した単量体成分とポリマー成分および触媒成分の混合液を供給する。次段の重合槽に、上記の成分を供給するとともに、新たな単量体成分および触媒成分を供給し、さらなる重合を行い、さらに次の段階の重合槽に混合液成分を供給する。二段目と同様に、三段目の重合槽でも重合を実施し、このような方法により、重合体への転化率を少なくとも80%以上、好ましくは、85%以上、さらに好ましくは88%以上、もっとも好ましくは、90%以上とするような方法が挙げられる。
また、上記(5)〜(7)の付加(共)重合の場合における多段重合も、上記開環重合に準じて行えばよい。
以上の環状オレフィン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば特開平9−221577号公報、特開平10−287732号公報に記載されている、特定の炭化水素系樹脂、あるいは公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、有機微粒子、無機微粒子などを配合しても良い。
また、本発明に用いる環状オレフィン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲において、耐熱劣化性や耐光性の改良のために公知の酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤を添加することができる。例えば、下記フェノール系化合物、チオール系化合物、スルフィド系化合物、ジスルフィド系化合物、リン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を、本発明の環状オレフィン系樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部添加することで、耐熱劣化性を向上させることができる。
本発明の環状オレフィンからなる光学フィルムには、下記の添加剤を添加できるが、その添加量によりMFRが変化するので、その量はコントロールされている必要性がある。特に、成形時に樹脂ペレットと添加剤とを押出機中で連続的に混合して成形する場合、添加剤の添加量のバラツキの範囲は、±5%以内であることが好ましい。
フェノール系化合物:
フェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ―t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)―6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕―1,1−ジメチルエチル]―2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、などを挙げることができる。好ましくは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられ、特に好ましくは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などを挙げることができる。
チオール系化合物:
チオール系化合物としては、t−ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1−メチル−2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5,6−ジメチルベンズイミダゾール、2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、1−メチル−2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1,3−ジメチルベンズイミダゾール、メルカプト酢酸などを挙げることができる。
スルフィド系化合物:
スルフィド系化合物としては、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル3,3’−チオジプロピオネートなどを挙げることができる。
ジスルフィド系化合物:
ジスルフィド系化合物としては、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−ニトロフェニル)ジスルフィド、2,2’−ジチオジ安息香酸エチル、ビス(4−アセチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルバモイルフェニル)ジスルフィド、1,1’−ジナフチルジスルフィド、2,2’−ジナフチルジスルフィド、1,2’−ジナフチルジスルフィド、2,2’−ビス(1−クロロジナフチル)ジスルフィド、1,1’−ビス(2−クロロナフチル)ジスルフィド、2,2’−ビス(1−シアノナフチル)ジスルフィド、2,2’−ビス(1−アセチルナフチル)ジスルフィド、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステルなどを挙げることができる。
リン系化合物:
リン系化合物としては、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどを挙げることができる。
さらに、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、N−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、あるいは2−エチルオキサニリド、2−エチル−2’−エトキシオキサニリドなどのオキサニリド系化合物を、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部添加することにより、耐光性を向上させることができる。
また、本発明に係る環状オレフィン系樹脂には、溶融押出しによりフィルムなどに成形する場合には、溶融押出時の熱履歴により該樹脂が熱劣化するのを防止するため酸化防止剤を添加してもよい。
上記酸化防止剤の具体例としては、例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアネート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、また、これらについても、溶融押出する環状オレフィン系樹脂のTgによっては不適な場合がある。なお、本発明の効果を損なわない限り、これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で使用しても良い。
これらの酸化防止剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部、さらに好ましくは、0.1〜1.5重量部である。酸化防止剤の添加量が0.01重量部に満たない場合には、押出加工時に樹脂にゲルが発生しやすくなり、これに起因して、得られたフィルム上に欠陥として認識されることがあり好ましくない。一方、添加剤量が、5重量部を超えると、加工時に目やにの発生などを招くことがあり、この目やにがダイライン、フィルム上のフィッシュアイ、焼けなどの原因となるため好ましくない。
係る酸化防止剤は、環状オレフィン系樹脂を製造する際に添加してもよいし、溶融押出する際に環状オレフィン系樹脂のペレットとともに配合してもよい。
また、本発明の環状オレフィン系樹脂を溶融押出しにより成形する場合においては、本発明の効果を損なわない範囲において、滑剤、紫外線吸収剤、染料あるいは顔料などの上記酸化防止剤以外の添加剤を用いることができる。もちろんこの場合でも、融点を有する添加剤の場合、その融点が本発明の必須酸化防止剤の融点の範囲にあることが好ましい。
≪光学フィルムの製造方法≫
<MFRバラツキが小さい樹脂を得る方法>
本発明の光学フィルムに用いられる環状オレフィン系樹脂は、得られる光学フィルムのMFRのバラツキが小さいものになるために、樹脂自体のMFRのバラツキが小さいものであることが好ましい。MFRのバラツキが小さい樹脂を得る方法としては、好ましいものとして下記の2つの方法が挙げられる。
(i)同一組成で平均分子量が異なる数種の環状オレフィン系樹脂を混合して、成形機に供給される樹脂の平均分子量が一定になるように調整してペレットを成形し、当該ペレットを用いて光学フィルムを成形する方法。
例えば、複数のタンクにそれぞれ平均分子量の異なる樹脂の溶液を貯蔵し、各樹脂の固有粘度をあらかじめ測定して、混合樹脂の目標値となる固有粘度を定め、当該目標値となるような混合割合で樹脂溶液を混合し、当該混合樹脂溶液をペレットに成形する。成形方法としては、例えば、多段ベント方式の押出成形機等を用いて脱溶媒すると共に成形する方法が好ましく用いられる。
平均分子量の異なる樹脂を押出機中で混合するには、あらかじめ混合機で樹脂をブレンドするのが好ましく、混合機としては、ヘンシェルミキサーなどが好ましく用いられる。
バンバリーミキサーなどの加熱溶融するものは、酸化劣化の懸念があるため、酸化されない条件であれば使用できる。
(ii)同一組成で平均分子量が異なる数種の環状オレフィン系樹脂を混合して、成形機に供給される樹脂の平均分子量が一定になるように調整し、光学フィルムを成形する方法。
好ましくは、上記(i)と同様の方法で混合樹脂溶液を調整し、多段ベント方式の押出成形機を用いて脱溶媒すると共にフィルム形状に成形する方法が用いられる。
これらの方法は、複数重合バッチの樹脂を用いてフィルム成形を行う場合、各バッチによるMFRのバラツキを緩和することができる、非常に有効な手段である。
<フィルム成形>
環状オレフィン系樹脂フィルムの成形方法としては、溶剤キャスト法(溶液流延法)や溶融押出法などが挙げられるが、製造コスト面においては溶融押出法が好ましい。
溶融押出法により環状オレフィン系樹脂フィルムを得る方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を適用すればよい。例えば、押出機に取り付けられたダイから溶融状態の環状オレフィン系樹脂を押し出し、当該樹脂を鏡面ロール表面に圧着し、その後、冷却して剥離し、シート化する方法が挙げられる。その際、上記(i)の方法で得られた樹脂を用いるか、上記(ii)の方法で得られたペレットを用いるか、または上記(ii)の方法を用いて押出機中で樹脂を混合して押出成形を行うことにより、MFRのバラツキが小さいフィルムを得ることができる。
ダイから押出されたフィルムを冷却してシート化する方法としては、ニップロール方式、静電印加方式、エアナイフ方式、カレンダー方式、片面ベルト方式、両面ベルト方式、3本ロール方式などが挙げられるが、光学歪の少ないシートを製造するには、片面ベルト式、中でもスリーブ式と呼ばれるシート製造装置、静電印加方式などが好ましく用いられる。例えば、ダイの吐出口下方に鏡面ロールと金属ベルトが配置され、当該鏡面ロールと並行に並ぶように剥離ロールが配置されているフィルム製造装置が挙げられる。上記金属ベルトは、その内面に接するように設けられた2つの保持ロールによって張力が作用された状態で保持されている。吐出口より吐出された樹脂は、上記鏡面ロールと金属ベルトの間を通って挟圧され、鏡面ロールに転写されて冷却された後、剥離ロールにより剥離されフィルム化される。また、吐出されるフィルムの両端の位置で、ダイの吐出口下方の鏡面ロールに相対するように配置した、帯電電極から、フィルムを鏡面ロール側にはり付かせることで、光学歪を与えずにフィルムの表面性を良好にする方法なども好ましい方法である。
押出機としては、単軸、二軸、遊星式、コニーダーなどいずれを用いても良いが、好ましくは、単軸押出機が用いられる。また、押出機のスクリュー形状としては、ベント型、サブフライト型、先端ダルメージ型、フルフライト型など、圧縮比の大きなもの、小さなもの、圧縮部の長さが長い緩圧縮、長さが短い急圧縮タイプなどが挙げられるが、酸素の混入と押出機内部におけるせん断発熱により、樹脂中にゲルが発生しやすくなる。このゲルがフィルム中のフィッシュアイと呼ばれる点状欠陥や焼けの原因となるため、酸素の溶解を抑制でき、せん断発熱を抑制できるフライト形状・圧縮タイプのものが好ましく、好ましい圧縮比は、1.5〜4.5、特に好ましくは1.8〜3.6である。樹脂の計量に使用されるギアポンプは、内部潤滑式、外部潤滑式いずれを使用しても良いが、中でも外部潤滑方式が好ましい。
異物のろ過に使用するフィルターに関しては、リーフディスクタイプ、キャンドルフィルタータイプ、リーフタイプ、スクリーンメッシュなどが挙げられる。なかでも、樹脂の滞留時間分布を小さくする目的では、リーフディスクタイプが最も好ましく、フィルターの目の開きを意味する公称目開きは、20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下であることである。最も好ましくは3μm以下である。公称目開きが、20μmよりも大きい場合には、目に見える異物のほかに、ゲルなどを除去することが難しいために、光学フィルムを作るためのフィルターとしては、好ましくない。
ダイとしては、ダイ内部の樹脂流動を均一にすることが必須であり、フィルムの厚みの均一性を保つには、ダイ出口近傍でのダイ内部の圧力分布が幅方向で一定であることが必須である。このような条件を満たすものとしては、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、コートハンガーダイなどを用いることができ、これらの中では、コートハンガーダイが好ましい。またダイの流量調整には、ベンディングリップタイプが好ましい。また、ヒートボルト方式による自動制御により厚薄調整を行う機能がついているダイが特に好ましい。流量調整のためにチョークバーを取り付けることや、厚み調整のためのリップブロックを取り付けることは、取り付け部分に段差を生じたり、取り付け部分の隙間などに、空気などをかみこんだりして、焼けの発生原因になったり、ダイラインの原因になりうるので好ましくない。ダイの吐出口は、タングステンカーバイドなどの超硬コーティングなどのコーティングがなされていることが好ましい。また、ダイの材質としては、SCM系の鋼鉄、SUSなどのステンレス材などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、表面にクロム、ニッケル、チタンなどのメッキが施されたもの、PVD(Physical Vapor Deposition)法などにより、TiN、TiAlN、TiC、CrN、DLC(ダイアモンド状カーボン)などの被膜が形成されたもの、その他のセラミックスが溶射されたもの、表面が窒化処理されたものなどを用いることができる。このようなダイは、表面硬度が高く、樹脂との摩擦が小さいため、得られる透明樹脂シートに、焼けゴミなどが混入することを防止することができると共に、ダイラインが発生することを防止することができる点で、好ましい。
鏡面ロールは、内部に加熱手段および冷却手段を有するものが好ましく、その表面粗さは0.5μm以下、特に、0.3μm以下であることが好ましい。鏡面ロールとしては、金属ロールにメッキが施されたものを用いることが好ましく、クロムメッキ、無電解ニッケルメッキなどが施されたものが特に好ましい。
鏡面ロールの加熱方法は、ジャケット式オイル温調方式や、誘電加熱方式などが好ましい方法として用いられる。ロールの加熱方法は特に限定されないが、ロールの温度がフィルム製膜範囲で、温度差が無いことが好ましく、許容されるロールの幅方向の温度差は好ましくは2℃以内、さらに好ましくは1℃以内である。
片面ベルト式装置や、スリーブ式引き取り装置に使用する、金属ベルトとしては、継ぎ目のない無端ベルトを用いることが好ましい。金属ベルトを構成する材料としては、ステンレス、ニッケルなどを用いることができる。また、金属ベルトを保持する保持ロールは、その表面がシリコーンゴムまたその他の耐熱性を有するエラストマーなどによって被覆されていることが好ましい。金属ベルトの厚みは、0.1〜0.4mmが好ましく、0.1mm未満であると、たわみが大きくベルトにすぐに傷がつくことがあり好ましくない。一方、0.4mmよりも厚みがあると、加工時にフィルムに追従して変形しないため、好ましくない。
上記の装置により、例えば次のようにしてフィルムが製造される。
通常、押出機に環状オレフィン系樹脂を投入する前に、当該樹脂に含まれている水分、気体(酸素など)、残溶剤などを予め除去することを目的として、当該樹脂のTg以下の適切な温度で樹脂の乾燥を行う。
乾燥に用いる乾燥機は、好ましくは、不活性ガス循環式乾燥機、真空乾燥機が用いられる。また、ホッパー内で吸湿したり、酸素の吸収を抑制するため、ホッパーを窒素やアルゴンなどの不活性ガスでシールしたり、減圧状態に保持できる真空ホッパーを使用することも好ましい方法である。
押出機シリンダーは、溶融押出中に樹脂が酸化されてゲルなどが発生することを防止するために、窒素やアルゴンなどの不活性ガスによりシールすることが好ましい。
押出機により溶融された環状オレフィン系樹脂は、ダイ吐出口から垂直方向である下方に向かってシート状に押し出される。ダイ出口の温度分布は、樹脂の溶融粘度差を少なくするため、好ましくは±1℃以内に制御される。
その後、押し出された樹脂が、鏡面ロールと金属ベルトとによって挟圧され、冷却される。そして、鏡面ロール表面に転写された樹脂が、剥離用ロールによって鏡面ロールの表面から剥離されることにより、シート状のフィルムが製造される。
本発明においては、樹脂の加工温度すなわち押出機およびダイの設定温度は、流動性が均一な溶融状態の樹脂をダイから吐出させることができ、樹脂の劣化を抑制することができる観点から、樹脂のTg+100℃以上でTg+200℃以下であることが好ましい。
また、鏡面ロールと金属ベルトにより樹脂を挟圧する際、すなわち、鏡面ロールに樹脂を転写する際の圧力は、好ましくは面圧で0.01〜0.8MPa、特に好ましくは、0.1〜0.6MPaである。特に好ましくは、0.15〜0.45MPaである。
この時、鏡面ロールと金属ベルトの周速度を近くすることが好ましい。好ましい範囲としては、鏡面ロールの周速度を1.00としたときに、金属ベルトの周速度は0.95〜1.05、特に好ましくは0.99〜1.01である。
さらに、フィルム剥離時の条件として、剥離温度T(℃)、剥離応力T(MPa)とする時、それぞれTg−30℃≦T≦Tg+5℃、0.01MPa≦T≦5MPaの範囲であることが好ましい。
ここで、冷却ロールである鏡面ロールの温度は、通常、Tg−80〜Tg+10℃、好ましくはTg−60〜Tg−2℃である。
本発明のダイの流路の水平部分はダイの出口の先端部分に当たるが、この先端の水平部分をダイランドと称する。ダイランドの長さは、10〜50mmであり、好ましくは、11〜40mmである。
<フィルム延伸加工>
本発明の光学フィルムは、上記のようにして流延法あるいは溶融押出法により得られる光学フィルムを、さらに延伸することもできる。その場合の延伸加工方法としては、具体的には、公知の一軸延伸法又は二軸延伸法を挙げることができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、円周の異なる二組のロールを利用する縦一軸延伸法など、あるいは横一軸と縦一軸を組合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法などを用いることができる。
一軸延伸法の場合、延伸速度は通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
二軸延伸法の場合、同時2方向に延伸を行う場合や一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する場合がある。この時、延伸後のフィルムの屈折率楕円体の形状を制御するための2つの延伸軸の交わり角度は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよく、通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
延伸加工温度は、特に限定されるものではないが、本発明の樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、通常はTg±30℃、好ましくはTg±15℃、さらに好ましくはTg−5℃〜Tg+15℃の範囲である。前記範囲内とすることで、位相差ムラの発生を抑えることが可能となり、また、屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
延伸倍率は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は1.01〜10倍、好ましくは1.03〜5倍、さらに好ましくは1.03〜3倍である。延伸倍率が10倍以上であると、位相差の制御が困難になる場合がある。
延伸したフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分間、さらに好ましくは1分〜60分間保持してヒートセットすることが好ましい。これにより、透過光の位相差の経時変化が少なく安定した位相差フィルムが得られる。
延伸加工を施さない場合の本発明の光学用フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
また、本発明の位相差フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
寸法収縮率を上記範囲内にするためには、本発明の樹脂の原料である単量体A,Bの選択に加え、キャスト方法や延伸方法によりコントロールすることが可能である。
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向し透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、延伸倍率、延伸温度あるいはフィルムの厚さなどにより制御することができる。例えば、延伸前のフィルムの厚さが同じである場合、延伸倍率が大きいフィルムほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。一方、延伸倍率が同じである場合、延伸前のフィルムの厚さが厚いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸前のフィルムの厚さを変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。また、上記延伸加工温度範囲においては、延伸温度が低いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸温度を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。
上記のように延伸して得た位相差フィルムの厚さは、通常100μm以下、好ましくは100〜20μm、さらに好ましくは80〜20μmである。厚みを薄くすることで位相差フィルムが使われる分野の製品に求める小型化、薄膜化に大きく応えることができる。ここで、位相差フィルムの厚みをコントロールするためには、延伸前の光学フィルムの厚さをコントロールしたり、延伸倍率をコントロールしたりすることによりなし得る。例えば、延伸前の光学フィルムを薄くしたり、延伸倍率を比較的に大きくしたりすることで、より一層位相差フィルムの厚さを薄くすることができる。
<フィルム特性>
以上のようにして得られる本発明の光学フィルム(溶融押出フィルム、延伸フィルム)は、図1に示すようにフィルム幅方向に沿って100mm毎に100mm(幅方向)×500mm(長手方向)の寸法のフィルムを切り出してサンプルとし、JIS K7210に準拠して260℃、98N荷重でのMFRを測定した際、当該MFRのバラツキが±5%以内、好ましくは±2%以内、特に好ましくは±1.5%以内である。なお、当該MFRのバラツキは、図1に示すとおり、フィルムの長軸方向における端部から幅方向に沿って反対側の端部までを直線上に測定して求めるものとする。
MFRのバラツキが±5%以内であるフィルムは、その幅方向において樹脂が均質であり、従って、膜厚均一性・表面平滑性に優れるとともに、光学的な屈折率のムラ、光学歪がないフィルムである。
また、本発明の光学フィルムを上記条件で測定したMFRの値は、39〜41g/10minの範囲内にあることが特に好ましい。
また、本発明の延伸された光学フィルムは、表面平滑性に優れるため、ASTM D1003に準じて測定した厚みが3mmにおけるヘイズ値が1%以下、好ましくは0.8%以下である。
また、フィルムの平均粗さRaは、0.2μm以下、好ましくは0.15μm以下、さらに好ましくは、0.1μm以下である。
≪偏光板≫
本発明の偏光板は、PVA系フィルムなどからなる偏光子の少なくとも片面に、本発明の光学フィルムを、PVA樹脂を主体とした水溶液からなる水系接着剤、極性基含有粘接着剤、光硬化性接着剤などを使用して貼り合わせ、必要に応じてこれを加熱または露光し、圧着して、偏光子と光学フィルムとを接着(積層)させることにより製造することができる。
≪液晶パネル≫
本発明の液晶パネルは、2枚のガラス基板間に液晶が挟持されてなる液晶表示素子の少なくとも片面に、本発明の偏光板を貼り合わせ、液晶表示素子と偏光板とを接着(積層)させることにより製造することができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」、「%」は、特に断りのない限り「重量部」、「重量%」を意味する。
また、以下の実施例において、ガラス転移温度、全光線透過率、ヘイズ、透過光の面内位相差、偏光板の透過率および偏光度、フィルムの厚み分布およびMFRは、下記の方法により測定した。
[ガラス転移温度(Tg)]
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素雰囲気で昇温速度が20℃/分の条件でガラス転移温度を測定した。
[全光線透過率、ヘイズ]
村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150型」を用い、全光線透過率ならびにヘイズを測定した。
[透過光の面内位相差(R0)]
王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」を用い、フィルムに垂直に光が入射したときの面内位相差(R0)を、波長550nmにおいて測定した。
[偏光板の透過率および偏光度]
大塚電子(株)製の「RETS」を用い、偏光板の透過率および偏光度を測定した。測定波長は550nmとした。
[フィルム厚み分布]
フィルム厚み分布測定装置(MOCON)を使用して、フィルム幅方向に測定した。
[メルトフローレート(MFR)]
図1に示すようにフィルム幅方向に沿って100mm毎に100mm×500mmの寸法のフィルムを切り出してサンプルとし、JIS K7210に準拠して260℃、98N荷重でのMFRを測定した。
<調製例1>
反応容器に蒸留水 250部を仕込み、この反応容器にアクリル酸ブチル 90部と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 8部と、ジビニルベンゼン 2部と、オレイン酸カリウム 0.1部とを添加した後、この系をポリテトラフルオロエチレン(テフロン:登録商標)製の撹拌羽根により撹拌して分散処理した。その後、この反応容器内を窒素置換した後、この系を50℃まで昇温し、過硫酸カリウム 0.2部を添加して重合を開始した。重合開始から2時間経過後に、さらに、重合反応系に過硫酸カリウム 0.1部を添加した後、この系を80℃まで昇温し、1時間にわたって重合反応を継続させることにより重合体分散液を得た。
次いで、エバポレータを用いて、重合体分散液を固形分濃度が70%となるまで濃縮することにより、アクリル酸エステル系重合体の水系分散体からなる水系粘着剤(極性基を有する粘着剤)を得た。
このようにして得られた水系粘着剤(以下、「水系粘着剤A」という)を構成するアクリル酸エステル系重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は69,000、重量平均分子量(Mw)は135,000であった。
また、水系粘着剤Aについて、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh)を測定したところ1.2dl/gであった。
<合成例1>
(1)合成例1−1
窒素置換した反応容器に、特定単量体aとして8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセン225部と、特定単量体bとしてビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン25部と、分子量調節剤として1−ヘキセン27.0部と、溶媒としてトルエン750部とを仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム1.5モル/lを含有するトルエン溶液0.62部と、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)を含有する濃度0.05モル/lのトルエン溶液3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液を得た。
この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環共重合体溶液を構成する開環共重合体(以下、「重合体(1)」ともいう)の30℃のクロロホルム中における固有粘度(ηinh )を測定したところ、0.507dl/gであった。
(2)合成例1−2
上記合成例1−1において、分子量調節剤である1−ヘキセンの添加量を27.4部とした以外は合成例1−1と同様にして、開環共重合体溶液を得た。得られた開環共重合体(以下、「重合体(2)」ともいう)の30℃のクロロホルム中における固有粘度(ηinh )を測定したところ、0.496dl/gであった。
(3)合成例1−3
上記合成例1−1において、分子量調節剤である1−ヘキセンの添加量を27.8部とした以外は合成例1−1と同様にして、開環共重合体溶液を得た。得られた開環共重合体(以下、「重合体(3)」ともいう)の30℃のクロロホルム中における固有粘度(ηinh )を測定したところ、0.492dl/gであった。
(4)合成例1−4
上記合成例1−1において、分子量調節剤である1−ヘキセンの添加量を26.8部とした以外は合成例1−1と同様にして、開環共重合体溶液を得た。得られた開環共重合体(以下、「重合体(4)」ともいう)の30℃のクロロホルム中における固有粘度(ηinh )を測定したところ、0.510dl/gであった。
水添反応
得られた重合体(1)〜(4)の溶液4000部を各々オートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、それぞれRuHCl(CO)[P(Cを0.48部添加して、水素ガスを10MPa、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。
水素添加反応により得られた各樹脂(それぞれ、樹脂(a−1)〜(a−4)とする)の水素添加率を、日本電子株式会社製の核磁気共鳴スペクトル(400MHz、1H−NMRスペクトル)により、クロロホルムd(CDCl)に溶解して測定したところ、いずれも99.9%であり、また、芳香環は実質的に水素添加されていないことが確認された。
同様に、特定単量体aの重量%は、88.8重量%であり、特定単量体bの重量%は11.2重量%であった。
また、樹脂(a−1)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は20,800、重量平均分子量(Mw)は62,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.00であった。
また、樹脂(a−1)〜(a−4)のガラス転移温度(Tg)はいずれも130℃であり、23℃における飽和吸水率は0.3重量%であった。また、樹脂(a−1)のSP値を測定したところ、19(MPa1/2 )であった。さらに、樹脂(a−1)〜(a−4)について、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh )を測定したところ、それぞれ、樹脂(a−1):0.507dl/g、樹脂(a−2):0.496dl/g、樹脂(a−3):0.492dl/g、樹脂(a−4):0.510dl/gであった。
<合成例2>
特定単量体aとして8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセン237部と、特定単量体bとして5−(4−ビフェニルカルボニルオキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン13部とを用いたこと以外は合成例1と同様にして開環共重合体(以下、「樹脂(5)」ともいう。)溶液を得た。また、さらに分子量調節剤である1−ヘキセンの添加量を27.5部に増量して、開環共重合体(以下、「樹脂(6)」ともいう)溶液を得た。
その後、合成例1と同様の方法により、樹脂(5)および(6)に対しそれぞれ水素添加反応を実施し、水素添加重合体(a−5)および(a−6)を得た。得られた樹脂について、それぞれ水素添加率を、NMRにより測定したところ、99.9%であり、また、芳香環は実質的に水素添加されていないことが確認された。
同様に、特定単量体aの重量%は、94.9重量%、特定単量体bの重量%は、5.1重量%であった。
また、樹脂(a−5)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:テトラヒドロフラン)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は19,000、重量平均分子量(Mw)は57,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.00であった。
また、樹脂(a−5)および(a−6)のガラス転移温度(Tg)は150℃であり、23℃における飽和吸水率は0.3重量%であった。また、樹脂(a−5)および(a−6)について、30℃のクロロホルム中で固有粘度(ηinh )を測定したところ、それぞれ樹脂(a−5):0.470dl/g、樹脂(a−6):0.457dl/gであった。
[実施例1]
合成例1により製造した樹脂(a−1)〜(a−4)の溶液(固形分濃度20重量%)に、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を、それぞれ樹脂100部に対して0.30部を添加した。
ここで、樹脂(a−1)の溶液と樹脂(a−2)の溶液を、30℃、クロロホルム中で測定した樹脂混合物の固有粘度が0.499dl/gになるような割合で混合して樹脂溶液(I)を得、これをタンクAに貯蔵した。
また、樹脂(a−3)の溶液と樹脂(a−4)の溶液を、30℃、クロロホルム中で測定した樹脂混合物の固有粘度が0.497dl/gになるような割合で混合して樹脂溶液(II)を得、これをタンクBに貯蔵した。
次に、タンクAとタンクBから、樹脂溶液(I)と樹脂溶液(II)を、30℃、クロロホルム中で測定した樹脂混合物の固有粘度が0.498dl/gになるような割合で、それぞれ樹脂溶液を連続供給し、供給された溶液を混合して、該混合溶液を日本精線製の孔径5μmの金属繊維焼結フィルターを用い、差圧が0.4MPa以内に収まるように溶液の流速をコントロールしながら濾過させた後、二軸押出機(東芝機械株式会社製;TEM−48)を用いて、3段ベントにより、トルエンを脱気しながら、ギアポンプを用いて下流に押出を行い、ストランドダイより流出させた樹脂を冷却水槽で冷却の後、ストランドカッターに送り込み、米粒状に裁断し、ペレットを得た。
このペレットを窒素雰囲気下で100℃×4時間乾燥の後、単軸押出機(90mmΦ)に送り込み、260℃で溶融しながら、ギアポンプで定量押出を実施し、公称の目開きを10μmとした日本精線製の金属繊維焼結フィルターを用いて、溶融ろ過を行い、コートハンガー型のダイ(1700mm幅)を用いて、コートハンガーダイ出口の間隙を0.5mmとして260℃で膜状に押出した。このときに用いたダイのダイランド長(ダイ出口の平行部分の長さ)は、20mmであった。ダイ出口からロール圧着点までの距離を65mmとして、押出したフィルムを、表面粗さが0.1Sの250mmΦの鏡面ロールと、0.3mm厚の金属ベルトの間に挟んで、フィルムの表面を光沢面に転写した。金属ベルト(幅1650mm)は、ゴム被覆のロール(保持するロールの径は150mmΦ)と、冷却ロール(ロール径150mm)により保持したもので、市販のスリーブ式転写ロール(千葉機械工業製)を用いて、転写した。転写するときのロール間隔は、0.35mmであり、転写圧力は、0.35MPaであった。
このときの、鏡面ロールの外周の周速度を10m/minとした。このときの鏡面ロールの温度は、オイル温調機を用いて125℃、ゴム被覆ロールの温度は、115℃に設定した。
鏡面ロールの下流側には、250mmΦの冷却ロール1が配置してあり、鏡面ロールから剥ぎ取ったフィルムは、115℃に設定した冷却ロール1に圧着するまでの時間を2.1秒間として冷却した。
冷却ロール2の後で、フィルムを剥離張力、0.4MPa・cmで剥離して、片面にマスキングフィルムを貼合して、巻き取り機で巻き取り、幅100mmで長さ500mの樹脂フィルムを得た(以下、「樹脂フィルム(a)」という)。
得られた樹脂フィルム(a)の幅方向に沿って、図1に記載のように100mm毎に100mm×500mmの寸法のフィルムを切り出してサンプルとし、JIS K7210に準拠して260℃、98N荷重でのメルトフローレート(MFR)を測定した。MFRの値は、39.5〜40.2g/10minであり、そのバラツキは±0.9%であった。また、フィルムの幅方向の厚み分布は、100.2±0.5μmであった。
[実施例2]
実施例1において、合成例2で得られた樹脂(a−5)の溶液をタンクAに、樹脂(a−6)の溶液をタンクBに貯蔵し、タンクAとタンクBから、樹脂(a−5)溶液と樹脂(a−6)溶液を、30℃、クロロホルム中で測定した樹脂混合物の固有粘度が0.464dl/gになるような割合で、それぞれ樹脂溶液を連続供給したこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得、樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(b)」という)を得た。得られたフィルムについて実施例1と同様にMFRを測定したところ、MFRの値は、39.8〜40.4g/10minであり、そのバラツキは±1.5%であった。また、フィルムの幅方向の厚み分布は、100.1±0.4μmであった。
[比較例1]
実施例1で、樹脂溶液の段階で溶液混合を実施せずに、樹脂(a−1)溶液をプラグフローで単軸押出機に樹脂溶液をフィードし、脱溶してペレットを得た。このペレットを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(c)」ともいう)を得た。得られたフィルムについて実施例1と同様にMFRを測定したところ、MFRの値は、38.5〜45.8g/10minであり、そのバラツキは±17%であった。また、フィルムの幅方向の厚み分布は、100.3±3.5μmであった。
[実施例3]
実施例1で得た樹脂フィルム(a)を用い、130℃でロールニップ式の縦一軸延伸機を用いて1.2倍に延伸後、130℃でテンター式の横延伸機を用いて1.4倍に延伸して厚さ70μmの延伸フィルム(以下、「延伸フィルム(A)」という)を得た。延伸フィルム(A)の位相差は、フィルム面内の位相差(R0)が60nmであった。また、当該延伸フィルム(A)の全光線透過率は93%、ヘイズは0.2%であった。また、フィルムの幅方向の厚み分布は、70.2±0.3μmであった。
[実施例4]
実施例3において、樹脂フィルム(a)に代えて実施例2で得た樹脂フィルム(b)を用いたことおよび延伸温度を155℃としたこと以外は実施例3と同様にして、延伸フィルム(以下、「延伸フィルム(B)」という)を得た。延伸フィルム(B)の位相差は、フィルム面内の位相差(R0)が63nmであった。また、当該延伸フィルム(B)の全光線透過率は93%、ヘイズは0.2%であった。また、フィルムの厚み分布は、58.4±0.2μmであった。
[比較例2]
実施例3において、樹脂フィルム(a)に代えて比較例1で得た樹脂フィルム(c)を用いること以外は実施例3と同様にして、延伸フィルム(以下、「延伸フィルム(C)」ともいう)を得た。延伸フィルム(C)の位相差は、フィルム面内の位相差(R0)が63nmであった。また、当該延伸フィルム(C)の全光線透過率は93%、ヘイズは1.5%であり、フィルム表面に曇りが発生した。また、フィルムの厚み分布は、70.5±3.1μmであった。
[実施例5]
厚さ50μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素5g、ヨウ化カリウム250g、ほう酸10g、水1000gからなる40℃の浴に浸漬しながら約5分間で4倍まで一軸延伸して偏光膜を得た。この偏光膜の表面に、調整例1で得られた水系粘着剤を用い、実施例1で作製した樹脂フィルム(a)と実施例3で作製した延伸フィルム(A)をそれぞれ偏光膜に片面ずつ接着させ偏光板(1)を得た。この偏光板(1)の透過率と偏光度を測定したところ、それぞれ43%、99.99%であった。また、当該偏光板(1)を二枚クロスニコル状態にして、一方から輝度10000cdのバックライトで照射したときに、もう一方から観察しても光漏れに起因する帯スジ状のムラは全く確認されなかった。
[比較例3]
樹脂フィルム(a)の替わりに樹脂フィルム(c)を、また延伸フィルム(A)の替わりに延伸フィルム(C)を使用したこと以外は実施例5と同様にして、偏光板(2)を得た。当該偏光板の透過率と偏光度を測定したところ、それぞれ42%、99.89%であった。また、当該偏光板(2)を二枚クロスニコル状態にして、一方から輝度10000cdのバックライトで照射した場合、もう一方から観察したときに拡散光に起因すると思われる光漏れが確認された。
本発明の光学フィルムおよび偏光板は、例えば携帯電話、ディジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイなどの各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、CD、CD−R、MD、MO、DVDなどの光ディスクの記録・再生装置に使用される波長板としても有用である。
本発明におけるMFR測定用のサンプリング方法を示した模式図である。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表される化合物由来の構造単位を有する環状オレフィン系樹脂からなる幅1000mm以上の光学フィルムであって、
    同一組成で固有粘度が異なる数種の前記環状オレフィン系樹脂を混合して、成形機に供給される樹脂の固有粘度が一定になるように調整してペレットを成形したのち、当該ペレットを用いて成形され、
    フィルム幅方向に沿って100mm毎に100mm×500mmの寸法のフィルムを切り出してサンプルとし、JIS K7210に準拠して260℃、98N荷重でのメルトフローレート(MFR)を測定した際、当該メルトフローレートのバラツキが±5%以内であることを特徴とする、光学フィルム。
    Figure 0005369409
    (式(1)中、R1〜R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていても良い。また、R1〜R4 のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。)
  2. 環状オレフィン系樹脂の構造単位が、下記式(2)で表される構造を有する、請求項1に記載の光学フィルム。
    Figure 0005369409
    (式(2)中、R1〜R4 、p、mの定義は上記式(1)に同じ。)
  3. 請求項1または2に記載のフィルムをさらに延伸してなる光学フィルム。
  4. 偏光子の少なくとも片面に、請求項1または2に記載の光学フィルムが積層されてなることを特徴とする、偏光板。
  5. 液晶表示素子の少なくとも片面に、請求項記載の偏光板が積層されてなることを特徴とする、液晶パネル。
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