JP5360093B2 - 消費エネルギー測定装置、消費エネルギー測定方法および運動解析システム - Google Patents

消費エネルギー測定装置、消費エネルギー測定方法および運動解析システム Download PDF

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Description

本発明は、消費エネルギー測定装置、消費エネルギー測定方法および運動解析システムに関するものである。より詳細には、人の運動時に抽出された物理的な特徴量に基づいて、運動時の消費エネルギーを測定するための技術に関するものである。
健康状態の管理やリハビリテーションなど人の状態を認識して利用するために、人体にセンサを装着し、対象とする人(以下、「被験者」とも言う。)が行っている運動の消費エネルギー(日常的に消費カロリーと呼ばれるもの)を測定する方法は、従来広く考案されている。
特許文献1および特許文献2では、人体に加速度センサなどの運動センサを装着し、運動によって生じる加速度の変化から振幅や歪量といった運動強度を算出し、対応する消費エネルギーを測定している。また、特許文献3では、被験者に加速度センサに加えて血圧計と心拍数計を装着し、各測定値の大小の組み合わせから消費エネルギーを測定しており、特許文献4では脈拍計によって得られた脈拍値を、回帰式を用いて消費エネルギーを算出しているが、加速度センサによって被験者の状態を安静/運動のいずれかに識別することで精度の向上を図っている。
特開平6−176号公報 特開昭61−162935号公報 特開2004−267535号公報 特開平9−294727号公報
上記した従来技術について、特許文献1および特許文献2では、単純に運動センサを装着した部位のセンサデータ値の大小を用いて消費エネルギーを推定しているので、推定精度が期待できない。例えば、被験者の上腕にセンサを装着した場合、腕を動作させる運動と比較して下半身を動かす運動の消費エネルギーが低く見積もられてしまったり、推定ができなかったりする。一方、特許文献3および特許文献4では、血圧や心拍数、脈拍など消費エネルギーと相関のある生体情報を取得して推定に用いるため、推定精度の正確さは向上するものの、生体情報はセンサを人体に密着させることで取得する必要があるため、激しい運動などではセンサがずれることで取得できなかったり、運動を阻害したりするおそれがある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、人体に装着した運動センサのみによって得られるセンサデータを用いて、運動の種別と運動量を同時に認識することによって、運動時の消費エネルギーの測定精度を向上させることが可能な技術を提供することにある。
上記問題を解決するために、本発明のある観点によれば、被験者の動きを示す時系列データであるセンサデータに基づいて上記被験者の行っている運動の種別を認識する運動種別認識手段と、上記センサデータに基づいて上記被験者の運動量を認識する運動量認識手段と、上記運動種別認識手段によって認識された運動の種別と、上記運動量認識手段によって認識された上記運動量とに基づいて、上記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出する消費エネルギー算出手段と、を備えることを特徴とする、消費エネルギー測定装置が提供される。
上記消費エネルギー測定装置は、上記運動種別認識手段によって認識された運動の種別と、上記運動量認識手段によって認識された上記運動量とに基づいて、エネルギー係数を算出するエネルギー係数算出手段をさらに備え、上記消費エネルギー算出手段は、上記エネルギー係数算出手段により算出された上記エネルギー係数を用いて、上記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出してもよい。
上記消費エネルギー測定装置は、運動の種別ごとにあらかじめ教師データの特徴量の集合を蓄積している教師データ特徴量蓄積手段と、上記センサデータから特徴量の集合を抽出する特徴量抽出手段と、をさらに備え、上記運動種別認識手段は、上記特徴量抽出手段により抽出された上記特徴量の集合と上記教師データ特徴量蓄積手段により蓄積されている上記教師データの特徴量の集合を用いて機械学習を行い、上記被験者の行っている運動の種別を認識してもよい。
上記消費エネルギー測定装置は、上記センサデータを周波数領域に変換して各周波数におけるスペクトル強度を算出する周波数変換手段を備え、上記運動量認識手段は、上記周波数変換手段により算出された上記スペクトル強度から、上記被験者の行っている運動のペースを上記運動量として認識してもよい。
上記特徴量抽出手段は、上記センサデータの自己相関係数をラグの系列として算出し、当該ラグの系列の要約統計量を上記特徴量として算出してもよい。
上記特徴量抽出手段は、上記センサデータの複数軸における相互相関係数をラグの系列として算出し、当該ラグの系列の要約統計量を上記特徴量として算出してもよい。
上記エネルギー係数算出手段は、上記運動種別認識手段によって認識された運動の種別に応じたエネルギー数計算式を選択し、上記運動量認識手段により算出された運動量を説明変数として上記エネルギー係数計算式を用いて上記エネルギー係数を算出することとしてもよい。
上記消費エネルギー測定装置は、運動量とエネルギー係数との対応を蓄積するエネルギー係数蓄積手段をさらに備え、上記エネルギー係数算出手段は、上記エネルギー係数蓄積手段により蓄積されている運動の種別ごとの運動量とエネルギー係数との対応を用いて回帰することにより、上記運動量認識手段により認識された運動量からエネルギー係数を算出してもよい。
上記運動量認識手段は、上記センサデータに基づいて上記被験者の行っている運動による筋肉負荷量を上記運動量として認識し、上記エネルギー係数算出手段は、上記運動種別認識手段によって認識された運動の種別と、上記運動量認識手段によって上記運動量として認識された上記筋肉負荷量とに基づいて、上記エネルギー係数を算出してもよい。
上記消費エネルギー測定装置は、上記運動種別認識手段により認識された運動の種別での運動が継続した時間を検出する運動時間検出手段を備え、上記消費エネルギー算出手段は、上記運動時間検出手段により検出された上記運動時間と上記エネルギー係数算出手段により算出された上記エネルギー係数とを用いて、上記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出してもよい。
上記センサデータは、1台の運動センサにより検出されたものであってもよい。
また、本発明の別の観点によれば、被験者の動きを示す時系列データであるセンサデータに基づいて上記被験者の行っている運動の種別を認識するステップと、上記センサデータに基づいて上記被験者の運動量を認識するステップと、上記運動の種別と上記運動量とに基づいて、上記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出するステップと、を含むことを特徴とする、消費エネルギー測定方法が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、被験者の動きを示す時系列データであるセンサデータを検出するセンシング手段を備える、センシング装置と、上記センサデータに基づいて上記被験者の行っている運動の種別を認識する運動種別認識手段と、上記センサデータに基づいて上記被験者の運動量を認識する運動量認識手段と、上記運動種別認識手段によって認識された運動の種別と、上記運動量認識手段によって認識された上記運動量とに基づいて、上記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出する消費エネルギー算出手段と、を備える、運動解析装置と、を有することを特徴とする、運動解析システムが提供される。また、上記センシング装置と上記運動解析装置とは、通信網を介して接続しても良い。
以上説明したように本発明によれば、人体に装着した運動センサのみによって得られるセンサデータを用いて、運動の種別と運動量を同時に認識することによって、運動時の消費エネルギーの測定精度を向上させることが可能となる。
運動解析システム全体の構成を示すブロック図である。 運動解析装置に備わるデータ処理手段の詳細な構成を示すブロック図である。 運動解析システムの動作を示すフローチャートである。 運動種別とエネルギー係数との対応関係を示す図である。 歩行/走行時における運動量とエネルギー係数との関係を示すグラフである。 運動種別ごとの運動量とエネルギー係数との関係を示す図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[構成の説明]
図1および図2に、本発明の実施形態に係る運動解析システムの機能構成を示すブロック図を示す。図1は、運動解析システム全体の構成を示すブロック図であり、図2は、運動解析システムを構成する運動解析装置に備わるデータ処理手段の詳細な構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る運動解析システムは、センシング装置100と運動解析装置200から構成される。センシング装置100は、人物の運動などによって得られる加速度などの時系列データ(以下、「運動データ」「センサデータ」とも言う。)を取得する装置である。図1に示すように、センシング装置100は、運動データを取得するセンシング手段11、運動解析装置200に運動データを送信するデータ送信手段12などを有する。なお、センシング装置100は、例えば、被験者の上腕や手首、腰部など、被験者の体表面に装着される。
運動解析装置200は、センシング装置100により取得された運動データを解析し、その運動により消費されるエネルギー(以下、「消費エネルギー」とも言う。)を測定する装置である。運動解析装置200は、消費エネルギー測定装置として機能し得る。図1に示すように、運動解析装置200は、センシング装置100から運動データを受信するデータ受信手段21、データ受信手段21により受信された運動データを蓄積するデータ蓄積手段22、消費エネルギーを測定する処理を実行するデータ処理手段23、データ処理手段23による処理結果を表示する表示手段24などを有する。運動解析装置200は、例えば、一般的なパーソナルコンピュータに備わる機能を有している。
図2に示すように、データ処理手段23は、被験者の運動などによって得られた運動データからその運動の消費エネルギーを測定する機能を有し、特徴量抽出手段231、運動種別認識手段232、教師データ特徴量蓄積手段233、周波数変換手段234、運動量認識手段235、エネルギー係数算出手段236、エネルギー係数蓄積手段237、消費エネルギー算出手段238、体格データ蓄積手段239から構成される。各手段の機能については、以下の動作の説明で述べる。
[動作の説明]
図3は、本発明の実施形態に係る運動解析システムの動作を示すフローチャートである。図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る運動解析システムの動作の説明を行う。なお、図2に示した教師データ特徴量蓄積手段233には、運動種別の認識を行うために、複数種類の運動の各々に対応付けて、後述するS101〜S103の処理により得られた特徴量を蓄積しておくものとする。
複数種類の運動は、一例としてスポーツクラブでの運動を取り上げると、ショルダープレス、レッグエクステンション、トレッドミル、エアロバイク、クロストレーナといった機器ごとの分類でもよいし、上半身の筋力トレーニング、下半身の筋力トレーニング、ランニング、サイクリングといったカテゴリごとの分類でもよい。同様にして、体格データ蓄積手段239には、被験者の体重を記憶しておく。また、エネルギー係数蓄積手段237に蓄積しておく情報は、後述のエネルギー係数算出(S107)で述べる。
最初に、センシング(S101)において、センシング装置100内のセンシング手段(運動センサ)11は、加速度データなどの運動データを検出し、データ送信手段12は、センシング手段11により検出された運動データを運動解析装置200に送信する。運動解析装置200のデータ受信手段21は、センシング装置100から運動データを受信し、運動解析装置200のデータ蓄積手段22は、データ受信手段21により受信された運動データを蓄積する。
次に、データ処理手段23は、前処理(S102)として、運動データから処理対象とする運動波形の切り出しを行う。データ処理手段23は、運動データにおいて処理対象とする運動波形と他の運動波形との差異が明確に区別することができる場合には、一運動の始点と終点を決めることにより運動波形の切り出しを行うことができる。一方、データ処理手段23は、運動データにおいて処理対象とする運動の波形と他の運動の波形との差異が明確に区別することが難しい場合には、2秒毎、4秒毎などといった所定時間毎に、処理対象とする運動波形を切り出してもよい。
特徴量抽出手段231は、運動種別の認識のため、切り出された運動波形から特徴量抽出(S103)を行う。特徴量抽出手段231は、運動波形に対して演算処理を施すことにより、認識対象とするクラス間の差異を捉えやすい値に運動データを変換するため、例えば、次のような処理を行う。すなわち、特徴量抽出手段231は、データ処理手段23により運動データ(被験者の上腕に装着した3軸加速度センサにより検出されたデータ系列)からnサンプルに切り出されたサンプル値系列をデータ系列x、y、z(k=1,・・・,n)とした場合、数式1に示すように、データ系列x、y、zに対する平均サンプル数sの指数平滑移動平均を取ることにより高周波成分のノイズを除去することができる。
Figure 0005360093
…(数式1)
特徴量抽出手段231は、センシング装置100(例えば、被験者の上腕に装着した3軸加速度センサ)の装着位置のずれを緩衝するため、x軸とz軸方向のデータ系列x’、z’(例えば、加速度)を数式2に示すように合成することができる。ここで、例えば、被験者が直立した状態において、x軸方向は被験者から見た前後方向、z軸方向は被験者から見た左右方向を表している。
Figure 0005360093
…(数式2)
特徴量抽出手段231は、データ系列x、y、zの要約統計量をx、y、zの特徴量として算出することができる。データ系列x、y、zの要約統計量としては、データ系列x、y、zの各々の平均値、分散値、中央値、最小値、最大値、尖度、歪度などを用いることができる。例えば、尖度は、数式3により算出され得るものであり、歪度は、数式4により算出され得るものである。
また、特徴量抽出手段231は、要約統計量以外の算出値を特徴量として算出してもよく、例えば、後述する周波数変換(S105)によって得られるスペクトル強度の最大値とそのときの周波数を特徴量として算出してもよい。また、特徴量抽出手段231は、数式5に示すように、データ系列x(あるいは、y、z)の自己相関係数をラグの系列として算出し、ラグの系列の要約統計量を特徴量として算出してもよい。さらには、特徴量抽出手段231は、数式6に示すように、x軸とy軸(あるいは、y軸とz軸、z軸とx軸)の相互相関係数をラグの系列として算出し、ラグの系列の要約統計量を特徴量として算出してもよい。なお、数式5および数式6において、mean(x)はxの平均値、var(x)はxの分散値を示している。
Figure 0005360093
…(数式3)
Figure 0005360093
…(数式4)
Figure 0005360093
…(数式5)
Figure 0005360093
…(数式6)
運動種別認識手段232は、運動種別認識(S104)において、運動データに対する特徴量抽出により取得された特徴量の集合を入力ベクトルとし、あらかじめ複数種類の運動データに対する特徴量抽出が行われ、運動種別毎に教師データ特徴量蓄積手段233に蓄積されている特徴量の集合を教師信号とし、機械学習による認識を行う。機械学習には、サポートベクタマシン、隠れマルコフモデル、ニューラルネットワークなどを用いることができ、それらを複数組み合わせるブースティングを用いてもよい。また、特徴量の集合に対して主成分分析を行い、軸変換を行った後の特徴量のうち、寄与率が高い特徴量のみを機械学習に用いることも有効である。
機械学習による運動種別の認識には、一般的な技術を適用することができる。この運動種別認識(S104)により、例えば、被験者の運動が、ショルダープレス、レッグエクステンション、トレッドミル、エアロバイク、クロストレーナといった機器のうちどれを用いて行われているのか、もしくは、上半身の筋力トレーニング、下半身の筋力トレーニング、ランニング、サイクリングといったどのカテゴリに属する運動であるのかを認識することが可能となる。
また、周波数変換手段234は、運動量の認識のために、前処理(S102)において切り出された運動波形に対して周波数変換(S105)を適用することにより、スペクトル強度の遷移を求める。時系列データx、y、zに対して周波数変換を適用することにより、処理対象が時間領域から周波数領域に変換され、ナイキスト周波数(センシング装置100によるサンプリング周波数の1/2)までの各周波数におけるスペクトル強度が求められる。ここで、周波数変換の手法としてフーリエ変換を適用する場合を考えると、取得した運動データのサンプル値系列をx(ただし、k=0,1,2,・・・,n)、サンプル値系列xに対応する周波数領域の関数をX(ただし、k=0,1,2,・・・,n)とした場合、周波数変換は数式7によってなされ、そのスペクトル強度は|Xで定義される。
Figure 0005360093
…(数式7)
次に、運動量認識手段235は、運動量認識(S106)として、周波数変換によって得られたスペクトル強度から運動のペースを抽出する。一般にスポーツクラブの機器を使ったトレーニングや日常の走行、歩行といった運動には周期的な動作の繰り返しがあり、その周期に対応する周波数のスペクトル強度は大きな値をとるはずである。したがって、運動量認識手段235は、スペクトル強度の遷移から最大値をとるときの周波数を抽出すれば運動のペースが認識できる。また、人が行うことができる運動はペースに限りがあり、周波数にして0.15〜10Hz程度の周波数領域となる。そこで、運動データを周波数変換した系列からは、例えば、運動センサのサンプリング周波数を50Hzとした場合は0〜25Hzまでの周波数成分が得られるが、このうち0.15〜10Hzの範囲のみをペース認識の対象範囲とすることもできる。
さらに、前述の運動種別認識(S104)をここでの運動ペースの認識よりも先に実行しておき、現在の運動種別に応じた周波数成分の絞り込みを行うことができる。例えば、ウェイトマシンによる運動では0.15〜0.5Hz、トレッドミルによる運動では1〜3Hz、エアロバイクによる運動では1〜10Hzなどのように、あらかじめ運動種別ごとのペースの範囲をデータベースに蓄積しておき、その範囲での周波数成分を認識の対象範囲とすればよい。また、運動ペースの認識に関わる従来技術(特開2010−263953号公報「運動分析装置、プログラム及び方法、並びに、運動分析システム」)などを利用してもよい。
エネルギー係数算出(S107)では、エネルギー係数算出手段236は、運動種別認識によって得られた運動の種別と、運動量認識によって得られた運動量(例えば、運動のペース)を用いて、消費エネルギー算出に用いるエネルギー係数を決定する。エネルギー係数とは、運動によるエネルギー消費を数値化するための指標で、一例としてMETs(metabolic equivalents)がある。METsとは身体活動の強度を表す単位で、運動によるエネルギー消費量が安静時の何倍にあたるかを示すために使用され、図4に示すように、大まかな運動種別ごとにMETsが与えられている。
しかし、例えば『walking』と『running』を取り上げると、エネルギー係数は、最小2.0METsから最大18.0METsと最小値と最大値との間に大きな差がある。これは運動種別がトレッドミルであるからといって、特定のMETsを割り当てることが難しいことを示している。そこで、エネルギー係数算出手段236は、表に与えられているMETsから、運動のペースとそれに対応するMETsの推定を行う。
図5は、図4に示したMETs表に記載のある運動種別『walking』、『walking on job』、『running』のMETsを速度別(運動のペース別)にプロットしたものである。図5を参照すると、歩行/走行に関するMETsは、およそ速度(運動のペース)と比例関係にあるといえる。よって、エネルギー係数算出手段236は、運動の種別に応じたエネルギー数計算式(例えば、数式8に示すような計算式)を選択し、速度(運動のペース)を説明変数、METsを目的変数とした線形回帰を行うことで、選択したエネルギー数計算式を用いて、運動のペースからMETsを算出することが可能になる。
エネルギー係数算出手段236は、このようにして求めた運動のペースとMETsとの対応を、例えば、図6に示すように、エネルギー係数蓄積手段237に蓄積しておき、エネルギー本ステップ(S107)において運動の種別と運動のペースとに応じたMETsを算出する。すなわち、エネルギー係数算出手段236は、エネルギー係数蓄積手段237により蓄積されている運動の種別ごとの運動量とエネルギー係数との対応を用いて回帰することにより、運動量認識手段235により認識された運動量からエネルギー係数を算出することができる。
Figure 0005360093
…(数式8)
消費エネルギー算出手段238は、消費エネルギー算出(S108)では、得られたエネルギー係数、例えば、METsを用いて消費エネルギーを算出する。METsから消費エネルギーへの換算には、数式9で与えられる計算式を用いることができる。数式9中の「METs」としては、これまでの処理で算出した値、「時間」としては、測定対象とする運動種別での運動を継続した時間、「体重」としては、前述の通りあらかじめ体格データ蓄積手段239に記憶させてある被験者の体重を用いればよい。そして、表示手段24は、結果表示(S109)において、算出された消費エネルギーを表示することができる。
Figure 0005360093
…(数式9)
[効果の説明]
本実施形態を適用することにより、人体に装着した運動センサのみによって得られるセンサデータを用いて運動時の消費エネルギーを測定することができる。本実施形態によれば、従来技術と比較して、複数のセンサを装着する必要がないため、被験者に対する負担を低下させることができ(被験者による使用感の低下を抑制することができる)、システムに対して与える負荷も軽減することができる。また、本実施形態によれば、運動の種別と運動量を認識することにより、単純に運動センサにより検出されたセンサデータの値の大小を用いた消費エネルギー測定手法を適用した場合よりも精度の高い推定が実現できる。
従来技術によれば、例えば、被験者の腕に運動センサを装着させた場合、上半身を動かす運動(エアロビクスなど)による消費エネルギーと比較して、下半身を動かす運動(エアロバイクなど)による消費エネルギーが低く推定され得るという問題がある。一方、被験者の腰や下半身に運動センサを装着させた場合には、下半身を動かす運動による消費エネルギーよりも上半身を動かす運動による消費エネルギーが低く推定され得るという問題がある。
本実施形態によれば、上半身を動かす運動による消費エネルギーを測定する場合には、上半身を動かす運動専用のエネルギー係数を使用し、下半身を動かす運動による消費エネルギーを測定する場合には、下半身を動かす運動専用のエネルギー係数を使用することにより、上記したような問題が解決され得る。
[変形例の説明]
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、本実施形態においては、センシング装置100のセンシング手段11として、主に3軸加速度センサを使用する場合を想定しているが、運動の時間的変化を観測することのできるセンサであればどのようなものを使用してもよい。例えば、センシング手段11として、角速度センサや、筋電位センサ、傾きセンサ、1軸加速度センサ、2軸加速度センサなどを使用してもよい。また、これらのセンサが複数搭載されているデバイスを用いれば特徴量を増やすことができ、ユーザの運動を阻害せずに消費エネルギーの算出精度を向上することができる。センシング手段11としては、人体に装着できるものに限らず、ドップラーセンサ、映像からのモーションキャプチャのような環境設置型のセンサを使用してもよい。
データ送信手段12、データ受信手段21における通信は、どのような通信手段により行われてもよい。例えば、データ送信手段12、データ受信手段21における通信は、Bluetooth、ZigBee、無線LANなどの無線通信により行われてもよく、ケーブル接続による有線通信により行われてもよい。
データ蓄積手段22、教師データ特徴量蓄積手段233、エネルギー係数蓄積手段237、体格データ蓄積手段239などは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性メモリなどにより構成され得る。特徴量抽出手段231、運動種別認識手段232、周波数変換手段234、運動量認識手段235、エネルギー係数算出手段236、消費エネルギー算出手段238などは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)などから構成され、図示しない記憶部により記憶されているプログラムがCPUによりRAMに展開されて実行されることにより、その機能が実現され得る。
データ蓄積手段22に蓄積されたデータをメモリカードなどの記録媒体に蓄積することができれば、運動解析装置200を、データ受信手段21とデータ蓄積手段22から構成される装置(ロガー装置)と、それ以外の構成要素(データ処理手段23、表示手段24)からなる装置に分けることができる。これにより、運動データを取得する際には、被験者にセンシング装置100とロガー装置を装着して運動データを取得し、運動データの解析を行う際には、記録媒体に記録された運動データを運動解析装置200の各機能を備えるパーソナルコンピュータなどを用いて解析を行うことができる。
なお、センシング機能、ログ機能、運動解析機能を具備する一体型の装置を提供することも可能である。その場合、例えば、この一体型の装置を被験者の腕等に装着することが可能である。また、上記の構成に限定されず、例えば、上記ロガー装置と上記データ処理手段23(サーバとしての機能)との間をインターネット等の通信網で接続したクラウドコンピューティングの構成にする場合でも実施可能である。かかる構成により、例えば、データ処理手段23は、複数のロガー装置からデータを受け付けて、運動解析を行うことが可能となる。データ処理手段23による処理結果は、例えば、通信網を介して表示手段24に送信され、画面上に表示される。
本実施形態においては、周波数変換としてフーリエ変換を行うことを想定として記載したが、時系列データを周波数成分に変換できる手法であれば、どのような手法であっても周波数変換の手法として採用することができる。例えば、周波数変換として、アダマール変換、コサイン変換、ヒルベルト変換、連続ウェーブレット変換、ウィグナー分布による周波数解析などを用いてもよい。
以上においては、運動量として対象とする運動のペース、エネルギー係数としてMETsを用いた消費エネルギー測定について述べた。しかし、運動量としては、運動のペース以外の値を使用することも可能である。例えば、センサデータに基づいて運動をしているときの被験者の筋肉の負荷量を運動量として使用すれば、被験者がトレッドミルを用いて同じペースで走っている場合であっても、傾斜の有無による消費エネルギーの違いを判断できるようになる。また、被験者がウェイトマシン機器を用いて同じペースでリフティングを行っている場合であっても、ウェイトの違いによる消費エネルギーの違いを判断できるようになる。したがって、より正確な消費エネルギーを算出することができるようになる。
筋肉の負荷量に関する従来技術としては、特開2004−141223号公報「筋肉測定装置」、特開2004−167056号公報「歩行訓練装置」に記載された技術などが利用できる。筋肉の負荷量を説明変数に、または、運動のペースと筋肉の負荷量の両方を説明変数にしたときの消費エネルギーの算出においては、METsのような指標は存在しないため、説明変数を変化させたときの消費エネルギーを、呼気ガス分析装置などを使って測定し、これら説明変数と消費エネルギーの回帰式を事前に与える必要がある。
上記した例では、消費エネルギー算出手段238におけるMETsを利用した消費エネルギー測定においては、体重も説明変数としているが、必ずしも体重を説明変数として利用しなくてもよい。例えば、エネルギー係数として体重に無関係な指標を用意してもよいし、体重の代わりに基礎代謝量を利用するような指標を用意してもよい。
また、上記したように、消費エネルギー算出手段238における消費エネルギー算出のためには、運動時間が必要である。運動時間としては、運動種別の認識に使用したセンサデータの長さを用いてもよい。すなわち、運動解析装置200は、運動種別の認識に使用したセンサデータの長さに応じた時間を運動時間として検出する運動時間検出手段を備えてもよい。また、運動解析装置200に、対象とする運動種別での運動を継続した時間を運動種別認識手段232からの出力(運動種別)の変化から検出する運動時間検出手段を別途用意して運動時間を算出させてもよい。
尚、本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
11 センシング手段
12 データ送信手段
100 センシング装置
21 データ受信手段
22 データ蓄積手段
23 データ処理手段
200 運動解析装置
231 特徴量抽出手段
232 運動種別認識手段
233 教師データ特徴量蓄積手段
234 周波数変換手段
235 運動量認識手段
236 エネルギー係数算出手段
237 エネルギー係数蓄積手段
238 消費エネルギー算出手段
239 体格データ蓄積手段
24 表示手段

Claims (12)

  1. 被験者の動きを示す時系列データであるセンサデータに基づいて前記被験者の行っている運動の種別を認識する運動種別認識手段と、
    前記センサデータに基づいて前記被験者の運動量を認識する運動量認識手段と、
    前記運動種別認識手段によって認識された運動の種別と、前記運動量認識手段によって認識された前記運動量とに基づいて、前記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出する消費エネルギー算出手段と、
    を備え
    前記運動種別認識手段によって認識された運動の種別と、前記運動量認識手段によって認識された前記運動量とに基づいて、エネルギー係数を算出するエネルギー係数算出手段をさらに備え、
    前記消費エネルギー算出手段は、
    前記エネルギー係数算出手段により算出された前記エネルギー係数を用いて、前記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出し、
    前記エネルギー係数算出手段は、
    前記運動種別認識手段によって認識された運動の種別に応じたエネルギー係数計算式を選択し、前記運動量認識手段により算出された運動量を説明変数として前記エネルギー係数計算式を用いて前記エネルギー係数を算出する、
    ことを特徴とする、消費エネルギー測定装置。
  2. 前記消費エネルギー測定装置は、
    運動の種別ごとにあらかじめ教師データの特徴量の集合を蓄積している教師データ特徴量蓄積手段と、
    前記センサデータから特徴量の集合を抽出する特徴量抽出手段と、
    をさらに備え、
    前記運動種別認識手段は、
    前記特徴量抽出手段により抽出された前記特徴量の集合と前記教師データ特徴量蓄積手段により蓄積されている前記教師データの特徴量の集合を用いて機械学習を行い、前記被験者の行っている運動の種別を認識する、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の消費エネルギー測定装置。
  3. 前記消費エネルギー測定装置は、
    前記センサデータを周波数領域に変換して各周波数におけるスペクトル強度を算出する周波数変換手段を備え、
    前記運動量認識手段は、
    前記周波数変換手段により算出された前記スペクトル強度から、前記被験者の行っている運動のペースを前記運動量として認識する、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の消費エネルギー測定装置。
  4. 前記特徴量抽出手段は、
    前記センサデータの自己相関係数をラグの系列として算出し、当該ラグの系列の要約統計量を前記特徴量として算出する、
    ことを特徴とする、請求項に記載の消費エネルギー測定装置。
  5. 前記特徴量抽出手段は、
    前記センサデータの複数軸における相互相関係数をラグの系列として算出し、当該ラグの系列の要約統計量を前記特徴量として算出する、
    ことを特徴とする、請求項に記載の消費エネルギー測定装置。
  6. 前記消費エネルギー測定装置は、
    運動量とエネルギー係数との対応を蓄積するエネルギー係数蓄積手段をさらに備え、
    前記エネルギー係数算出手段は、
    前記エネルギー係数蓄積手段により蓄積されている運動の種別ごとの運動量とエネルギー係数との対応を用いて回帰することにより、前記運動量認識手段により認識された運動量からエネルギー係数を算出する、
    ことを特徴とする、請求項に記載の消費エネルギー測定装置。
  7. 前記運動量認識手段は、
    前記センサデータに基づいて前記被験者の行っている運動による筋肉負荷量を前記運動量として認識し、
    前記エネルギー係数算出手段は、
    前記運動種別認識手段によって認識された運動の種別と、前記運動量認識手段によって前記運動量として認識された前記筋肉負荷量とに基づいて、前記エネルギー係数を算出する、
    ことを特徴とする、請求項に記載の消費エネルギー測定装置。
  8. 前記消費エネルギー測定装置は、
    前記運動種別認識手段により認識された運動の種別での運動が継続した時間を運動時間として検出する運動時間検出手段を備え、
    前記消費エネルギー算出手段は、
    前記運動時間検出手段により検出された前記運動時間と前記エネルギー係数算出手段により算出された前記エネルギー係数とを用いて、前記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出する、
    ことを特徴とする、請求項に記載の消費エネルギー測定装置。
  9. 前記センサデータは、
    1台の運動センサにより検出されたものである、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の消費エネルギー測定装置。
  10. 被験者の動きを示す時系列データであるセンサデータに基づいて前記被験者の行っている運動の種別を認識するステップと、
    前記センサデータに基づいて前記被験者の運動量を認識するステップと、
    前記運動の種別と前記運動量とに基づいて、前記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出するステップと、
    を含み、
    前記運動の種別と、前記運動量とに基づいて、エネルギー係数を算出するステップをさらに含み、
    前記エネルギーを算出するステップにおいては、前記エネルギー係数を用いて、前記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出し、
    前記エネルギー係数を算出するステップにおいては、前記運動の種別に応じたエネルギー係数計算式を選択し、前記運動量を説明変数として前記エネルギー係数計算式を用いて前記エネルギー係数を算出する、
    ことを特徴とする、消費エネルギー測定方法。
  11. 被験者の動きを示す時系列データであるセンサデータを検出するセンシング手段を備える、センシング装置と、
    前記センサデータに基づいて前記被験者の行っている運動の種別を認識する運動種別認識手段と、
    前記センサデータに基づいて前記被験者の運動量を認識する運動量認識手段と、
    前記運動種別認識手段によって認識された運動の種別と、前記運動量認識手段によって認識された前記運動量とに基づいて、前記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出する消費エネルギー算出手段と、
    を備え
    前記運動種別認識手段によって認識された運動の種別と、前記運動量認識手段によって認識された前記運動量とに基づいて、エネルギー係数を算出するエネルギー係数算出手段をさらに備え、
    前記消費エネルギー算出手段は、
    前記エネルギー係数算出手段により算出された前記エネルギー係数を用いて、前記被験者の行っている運動により消費されるエネルギーを算出し、
    前記エネルギー係数算出手段は、
    前記運動種別認識手段によって認識された運動の種別に応じたエネルギー係数計算式を選択し、前記運動量認識手段により算出された運動量を説明変数として前記エネルギー係数計算式を用いて前記エネルギー係数を算出する、
    運動解析装置と、
    を有することを特徴とする、運動解析システム。
  12. 前記センシング装置と前記運動解析装置とは、通信網を介して接続していることを特徴とする、請求項11に記載の運動解析システム。
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