以下、本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
本実施形態に係るテープ印字装置1およびテープカセット30について、図1〜図24を参照して以下に後述する。本実施形態の説明では、図1および図2の左下側をテープ印字装置1の前側とし、図1および図2の右上側をテープ印字装置1の後側とし、図1および図2の右下側をテープ印字装置1の右側とし、図1および図2の左上側をテープ印字装置1の左側とする。また、図4の右下側をテープカセット30の前側とし、図4の左上側をテープカセット30の後側とし、図4の右上側をテープカセット30の右側とし、図4の左下側をテープカセット30の左側とする。
なお、以下の説明で使用される図4等において、カセット装着部8の周囲を形成する壁が図示されている場合、これらの図はあくまでも模式図であるため、図中に示す壁は、実際よりも厚く描かれている。また、図4等のテープカセット30とカセット装着部8とを示す斜視図に図示されているギヤ91、93、94、97、98、101を含むギヤ群は、実際には、キャビティ8Aの底面により覆い隠されているが、これらのギヤ群を説明する必要上、これらの図には、キャビティ8Aの底面は図示されていない。また、図5、図6等において、カセット装着部8に装着された状態で図示されているテープカセット30は、上ケース31Aが取り外された状態のものである。さらに、図15等、テープカセット30の底面30B側から見た斜視図については、説明の便宜上、テープ駆動ローラ46等の図示は省略されている。これらの点については、他の実施形態の説明に使用される図も同様である。
はじめに、本実施形態に係るテープ印字装置1の概略構成について説明する。テープ印字装置1は1台で感熱紙テープのみが収納されたサーマルタイプ、印字テープとインクリボンとが収納されたレセプタタイプ、両面粘着テープとフィルムテープとインクリボンとが収納されたラミネートタイプ、両面粘着テープと感熱紙テープとが収納された感熱ラミネートタイプ等、各種のテープカセットに対応させることが可能な汎用のテープ印字装置である。
図1に示すように、テープ印字装置1は、略直方体形状の本体カバー2を備えている。本体カバー2上面の前側には、文字、記号及び数字等の文字キーや、種々の機能キー等を含むキーボード3が配設されている。キーボード3の後側には、入力した文字や記号を表示可能なディスプレイ5が設けられている。ディスプレイ5の後側には、テープカセット30(図4参照)の交換時に開閉されるカセットカバー6が設けられている。
カセットカバー6は、平面視略長方形状の蓋部である。カセットカバー6は、本体カバー2の背面上方の左右両端部において、図2に示す、本体カバー2の内部に形成されたカセット装着部8が露出する開放位置と、図1に示す、カセット装着部8を覆う閉鎖位置との間で回動可能に軸支されている。カセット装着部8は、テープカセット30を着脱自在な領域として形成されている。カセット装着部8には、テープカセット30からテープを引き出して搬送する搬送機構や、テープの表面に文字等を印字する印字機構等が設けられているが、詳細は後述する。
図2に示すように、カセットカバー6の前面略中央には、その下面から下方に突出する鉤状の係止ロック4Aが設けられている。本体カバー2には、係止ロック4Aに対応する位置にロック孔4Bが設けられており、図1に示すようにカセットカバー6が閉じられると、係止ロック4Aがロック孔4Bに嵌め込まれて係止されることで、カセットカバー6の自然開放が防止される。また、カセットカバー6の下面には、さらに、下面から下方へ突出する押え部材7A、7Bと、周縁押え部材9A〜9Cとが設けられている。
図3に示すように、第1押え部材7Aは、カセットカバー6の下面における左右方向の略中心位置から突出する角柱状の部材である。第1押え部材7Aは、テープカセット30がカセット装着部8に装着され、カセットカバー6が閉じられた場合に、テープカセット30の上ケース31Aに設けられた第1押え受部39C(図14参照)に上方から当接し、押圧する部材である。第2押え部材7Bは、カセットカバー6の下面における左縁部近傍から突出する角柱状の部材である。第2押え部材7Bは、テープカセット30がカセット装着部8に装着され、カセットカバー6が閉じられた場合に、テープカセット30の上ケース31Aに設けられた第2押え受部33(図14参照)に上方から当接し、押圧する部材である。第1押え受部39Cおよび第2押え受部33については、後で詳述する。
周縁押え部材9A〜9Cは、それぞれ、テープカセット30がカセット装着部8に装着され、カセットカバー6が閉じられた場合に、テープカセット30の周縁、より詳細には角部32Aの上面の3箇所に上方から当接し、押圧する部材である。なお、図3では、係止ロック4、周縁押え部材9A〜9C等の、押え部材7A、7B以外の図示は省略されている。
また、本体カバー2の左側面後方には、印字済みのテープを外部に排出するための排出スリット11Aが設けられており、カセットカバー6の左側面には、カセットカバー6を閉じた状態で排出スリット11Aを外部に露出させる排出窓11Bが形成されている。
次に、図4〜図12を参照して、カセットカバー6に対応する本体カバー2の内部構造について説明する。図4に示すように、カセット装着部8は、テープカセット30が装着された場合に後述するカセットケース31の底面30Bの形状と略対応するように凹設され、平面である底面を有するキャビティ8Aと、キャビティ8Aの外縁から水平に延びる平面部であるカセット支持部8Bとを有する。
カセット支持部8Bの2箇所に、2つの位置決めピン102、103が設けられている。より具体的には、キャビティ8Aの左側に位置決めピン102が、キャビティ8Aの右側に位置決めピン103が、それぞれ設けられている。位置決めピン102および103は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、テープカセット30の角部32Aの下面に形成された2つの凹部であるピン孔62および63(図15参照)がそれぞれ対応する位置に設けられている。各位置決めピン102、103は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合にピン孔62、63に挿入され、テープカセット30の周縁部の左右位置でテープカセット30を前後左右方向に位置決めする。
図4に示すように、カセット装着部8の前側には、発熱体(図示せず)を備えるサーマルヘッド10を搭載したヘッドホルダ74が固設されている。カセット装着部8の外側(図4では右上側)には、ステッピングモータであるテープ送りモータ23が配設されている。テープ送りモータ23の駆動軸の下端には駆動ギヤ91が固着されており、駆動ギヤ91は開口を介してギヤ93に噛合され、ギヤ93はギヤ94に噛合されている。ギヤ94の上面には、後述するリボン巻取スプール44(図5参照)の回転駆動を行うリボン巻取軸95が立設されている。さらに、ギヤ94にはギヤ97が噛合され、ギヤ97にはギヤ98が噛合され、ギヤ98にはギヤ101が噛合されている。ギヤ101の上面には、後述するテープ駆動ローラ46の回転駆動を行うテープ駆動軸100が立設されている。
テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態でテープ送りモータ23が反時計回り方向に回転駆動されると、駆動ギヤ91、ギヤ93、ギヤ94を介して、リボン巻取軸95が反時計回り方向に回転駆動される。リボン巻取軸95は、リボン巻取軸95が嵌挿されたリボン巻取スプール44を回転駆動させる。さらに、ギヤ94の回転は、ギヤ97、ギヤ98、ギヤ101を介してテープ駆動軸100に伝達されて、テープ駆動軸100が時計回り方向に回転駆動される。テープ駆動軸100は、テープ駆動軸100が嵌挿されたテープ駆動ローラ46を回転駆動させる。
図5および図6に示すように、ヘッドホルダ74の前側には、アーム状のプラテンホルダ12が軸支部12Aを中心に揺動可能に軸支されている。プラテンホルダ12の先端側には、サーマルヘッド10に相対して接離可能に設けられたプラテンローラ15と、テープ駆動軸100が嵌挿されるテープ駆動ローラ46に相対して接離可能に設けられた可動搬送ローラ14とが共に回転可能に軸支されている。
プラテンホルダ12には、カセットカバー6の開閉に連動して左右方向に移動する図示しないリリースレバーが連結されている。カセットカバー6が開放されると、リリースレバーが右方向に移動して、プラテンホルダ12が、図5に示す待機位置に向けて移動する。図5に示す待機位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8から離間する方向に移動するので、テープカセット30をカセット装着部8に着脱することができる。なお、プラテンホルダ12は、図示しない巻きバネにより常に待機位置に弾性付勢されている。
一方、カセットカバー6が閉鎖されると、リリースレバーが左方向に移動して、プラテンホルダ12が、図6に示す印字位置に向けて移動する。図6に示す印字位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8に近接する方向に移動する。そして、図6に示すように、カセット装着部8にラミネートタイプのテープカセット30が装着されている場合には、プラテンローラ15がフィルムテープ59とインクリボン60とを介してサーマルヘッド10を押圧するとともに、可動搬送ローラ14が両面粘着テープ58とフィルムテープ59とを介してテープ駆動ローラ46を押圧する。これにより、図6に示す印字位置では、カセット装着部8に装着された各種テープカセット30を使用して印字を行うことが可能となる。なお、両面粘着テープ58、フィルムテープ59およびインクリボン60の詳細は、後述する。
また、図5に示すように、テープカセット30のテープ排出口49からテープ印字装置1の排出スリット11A(図2参照)までの間には、印字済テープ50が搬送される搬送経路が設けられている。この搬送経路には、印字済テープ50を所定位置で切断するカット機構17が設けられている。カット機構17は、固定刃18と、固定刃18に対向して前後方向(図5、図6に示す上下方向)に移動可能に支持された移動刃19と、で構成されている。なお、移動刃19は、カッターモータ24(図13参照)によって前後方向に移動される。
ここで、図5および図7〜図9を参照して、ヘッドホルダ74の詳細な構成について説明する。図7〜図9に示すように、ヘッドホルダ74は、1枚の板状部材から形成されており、キャビティ8Aの底面(図示せず)の下方に固定された台座部74Cと、台座部74Cから略垂直に屈曲され、上方へ延びるヘッド固着部74Dを備えている。ヘッド固着部74Dは、図5に示すように、テープ印字装置1の左右方向に沿って配置されている。カセット装着部8におけるヘッドホルダ74の配置位置は、テープカセット30が装着された場合に、後述するヘッド挿入部39に対応する位置である。ただし、ヘッドホルダ74の右端部は、ヘッド挿入部39の右端部よりも右側に延びている。サーマルヘッド10は、ヘッド固着部74Dの前面に固着されている(図5参照)。
ヘッド固着部74Dには、テープカセット30がテープ印字装置1に装着された場合にテープカセット30を下方から支持する第1ヘッド支持部74Aおよび第2ヘッド支持部74Bが設けられている。図8に示すように、第1ヘッド支持部74Aは、ヘッド固着部74Dの右端部を正面視でL字型に切り欠くことにより所定の高さ位置に形成された段差部である。図7および図9に示すように、第2ヘッド支持部74Bは、ヘッド固着部74Dの左端部の所定の高さ位置からヘッド固着部74Dに対して略垂直に屈曲して延びる側面視長方形状の延設片である。つまり、第1ヘッド支持部74Aと第2ヘッド支持部74Bとは、平面視で互いに略直交する方向に延びている。第1ヘッド支持部74Aと第2ヘッド支持部74Bは、それぞれ、サーマルヘッド10に対してテープ搬送方向上流側と下流側とでテープカセット30を支持する。なお、ヘッド支持部74A、74Bによるテープカセット30の支持については、後で詳述する。
また、図5および図6に示すように、プラテンホルダ12の後側面12B、つまり、サーマルヘッド10と対向する側の面には、その長手方向の中間位置からやや右側に、アーム検出部200が設けられている。以下では、プラテンホルダ12の後側面12Bをカセット対向面12Bという。アーム検出部200は、複数の検出スイッチ210を含み、各検出スイッチ210のスイッチ端子222が、カセット対向面12Bからカセット装着部8に向けて略水平に突出している。言い換えると、各検出スイッチ210は、カセット装着部8に対するテープカセット30の着脱方向(図4の上下方向)と略直交する方向に、カセット装着部8内に存在するテープカセット30の前面(より詳細には、後述するアーム前面35)と対向するように突出する。
各検出スイッチ210は、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着された状態で、後述するアーム識別部800(図4参照)と相対する高さ位置に設けられている。なお、以下では、アーム検出部200の検出スイッチ210を、アーム検出スイッチ210というものとする。
ここで、図10および図11を参照して、プラテンホルダ12におけるアーム検出スイッチ210の詳細な配置および構造について説明する。図10に示すように、プラテンホルダ12のカセット対向面12Bには、5つの貫通孔12Cが上下方向に3列に並べて設けられている。より具体的には、最上列に2つ、真ん中の列に2つ、最下列に1つの配置である。そして、貫通孔12C左右方向の位置は、それぞれ異なっている。具体的には、カセット対向面12Bの右側(図10の左側)から順に、最下列、最上列の右側、真ん中の列の右側、最上列の左側、そして真ん中の列の左側の順に、5つの貫通孔12Cがジグザグに配置されている。これらの貫通孔12Cに対応して、5つのアーム検出スイッチ210が設けられている。
図11に示すように、アーム検出スイッチ210は、プラテンホルダ12の内部に設置された略円筒状の本体部221と、本体部221の一端側から軸線方向に進退可能な棒状のスイッチ端子222とを備えている。各アーム検出スイッチ210の本体部221は、その他端側がスイッチ支持板220に取り付けられてプラテンホルダ12の内部に設置されている。また、各本体部221の一端側では、プラテンホルダ12のカセット対向面12Bに形成された複数の貫通孔12Cを介して、スイッチ端子222が進退可能である。各スイッチ端子222は、常には本体部221の内部に設けられたバネ部材(図示せず)によって、本体部221から伸出した状態に保持される。つまり、スイッチ端子222は、押圧されていないときは本体部221から伸出した状態(オフ状態)とされ、押圧されているときに本体部221内に押し込まれた状態(オン状態)となる。
カセット装着部8にテープカセット30が装着されている場合、プラテンホルダ12が待機位置に向けて移動すると(図5参照)、各アーム検出スイッチ210はテープカセット30から離間するため、全ての検出スイッチ210がオフ状態となる。一方、プラテンホルダ12が印字位置に向けて移動すると(図6参照)、アーム検出スイッチ210は、テープカセット30の前面(より詳細には、後述するアーム前面35)と対向し、後述するアーム識別部800によってアーム検出スイッチ210が選択的に押圧される。このときのアーム検出スイッチ210のオン・オフの組合せに基づいて、テープカセット30の種類が検出される。なお、アーム検出部200によるテープカセット30の種類検出については、後で詳述する。
また、図5および図6に示すように、プラテンホルダ12のカセット対向面12Bには、左右方向に延びる板状の突起部である係止片225が設けられている。係止片225は、アーム検出スイッチ210のスイッチ端子222と同様、カセット対向面12Bからカセット装着部8に向けて略水平に突出している。つまり、カセット装着部8内に存在するテープカセット30の前面(より詳細には、後述するアーム前面35)と対向するように突出している。係止片225は、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着された状態で、後述するテープカセット30のアーム前面35に設けられた係止孔820(図4参照)と相対する高さ位置に設けられている。
ここで、図10および図11を参照して、プラテンホルダ12における係止片225の配置および構成について説明する。図10に示すように、係止片225は、プラテンホルダ12のカセット対向面12Bにおいて、上下方向においては最上列のアーム検出スイッチ210より上方、左右方向においては最下列のアーム検出スイッチ210より右側(図12の左側)に配置されている。
図11に示すように、係止片225は、プラテンホルダ12のカセット対向面12Bから後方側(図11では左側)に突出するように、プラテンホルダ12と一体成型されている。係止片225のカセット対向面12Bを基準とした突出高さは、各アーム検出スイッチ210のスイッチ端子222のカセット対向面12Bを基準とした突出高さと比較して略同一か、若干大きくなっている。また、係止片225には、その先端側(図11では左側)に向けて厚みが漸減するように、下面の一部が水平方向に対して傾斜した傾斜部226が形成されている。
また、図5および図6に示すように、ヘッドホルダ74の後ろ側には、カセットフック75が設けられている。ここで、カセットフック75について、図12を参照して説明する。なお、図12は、図5のI−I線における矢視方向断面図を、わかりやすく表示するために反時計周りに90度回転したものである。カセットフック75は、キャビティ8Aの底面(図示せず)から略垂直に上方へ突出する板状の突出部75Aを備えている。突出部75Aの上端部は、断面視略三角形状を有し、後方(図12では左方向)に突出する爪部75Bである。突出部75Aは、テープ印字装置1の前後方向(図12の左右方向)の可撓性を有している。爪部75Bは、後述するテープカセット30の係止部38(図15参照)のキャビティ8Aの底面からの高さに対応して設けられている。テープカセット30は、カセット装着部8に装着された場合、カセットフック75により係止される。この点については、後で詳述する。
次に、図13を参照して、テープ印字装置1の電気的構成について説明する。図13に示すように、テープ印字装置1は、制御基板上に形成される制御回路部400を備えている。制御回路部400は、各機器を制御するCPU401、CPU401にデータバス410を介して接続されたROM402、CGROM403、RAM404、および入出力インターフェース411等から構成されている。
ROM402には、キーボード3から入力された文字や数字等のキャラクタのコードデータに対応させて液晶駆動回路(LCDC)405を制御する表示駆動制御プログラム、サーマルヘッド10やテープ送りモータ23を駆動する印字駆動制御プログラム、各印字ドットの形成エネルギー量に対応する印加パルス数を決定するパルス数決定プログラム、カッターモータ24を駆動して印字済テープ50を所定の切断位置で切断する切断駆動制御プログラム、その他のテープ印字装置1の制御上必要な各種のプログラム等が各々記憶されている。つまり、CPU401は、これら各種プログラムに基づいて各種演算を行う。
CGROM403には、アルファベット文字や記号等の多数のキャラクタの各々に関して、キャラクタを印字するための印字用ドットパターンデータが、書体(ゴシック系書体、明朝体書体等)毎に分類され、各書体毎に6種類(例えば、16、24、32、48、64、96のドットサイズ)の印字文字サイズ分、コードデータに対応させて記憶されている。
RAM404には、テキストメモリ、印字バッファ等、複数の記憶エリアが設けられている。テキストメモリには、キーボード3から入力された文書データが格納される。印字バッファには、複数の文字や記号等の印字用ドットパターンや各ドットの形成エネルギー量である印加パルス数等がドットパターンデータとして格納される。つまり、サーマルヘッド10はこの印字バッファに記憶されているドットパターンデータに従ってドット印字を行う。その他記憶エリアには、各種演算データ等が記憶される。
入出力インターフェース411には、アーム検出スイッチ210、キーボード3、液晶ディスプレイ(LCD)5に表示データを出力するためのビデオRAM(図示外)を有する液晶駆動回路(LCDC)405、サーマルヘッド10を駆動するための駆動回路406、テープ送りモータ23を駆動するための駆動回路407、カッターモータ24を駆動するための駆動回路408等が各々接続されている。
次に、図4〜図6、図12、図14〜図19を参照して、本実施形態に係るテープカセット30の構成について説明する。以下では、その内部に収納されるテープの種類、および、インクリボンの有無などを適宜変更することによって、先述のサーマルタイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープ種類を実装可能な汎用カセットとして構成されたテープカセット30を例示する。より詳しくは、汎用カセットをラミネートタイプにして実装したテープカセット30を例示する。
図4に示すように、テープカセット30は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略直方体状(箱型)の筐体であるカセットケース31を有している。カセットケース31は、カセットケース31の底面30Bを含む下ケース31Bと、カセットケース31の上面30Aを含み、下ケース31Bの上部に固定される上ケース31Aとで構成される。以下では、底面30Bから上面30Aまでの距離を、テープカセット30またはカセットケース31の高さという。
なお、カセットケース31は、上面30Aおよび底面30Bの周縁部全体が側面によって囲われている必要はなく、側面の一部(例えば背面)にカセットケース31内を露出させるような開口部が設けられていたり、その開口部を臨む位置に上面30Aおよび底面30Bを接続するボスが設けられたりしてもよい。
カセットケース31は、テープカセット30の種類にかかわらず、同一の幅(上下方向の長さが同一)に形成された角部32Aを有する。角部32Aは、平面視で直角をなすように外側方向に突出している。ただし、平面視で左下の角部32Aは、テープ排出口49が角に設けられているために、直角はなしていない。角部32Aの下面は、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、カセット装着部8内において前述したカセット支持部8Bに対向する部位である。カセットケース31の上下(高さ)方向において角部32Aと同一の位置、且つ、同一の幅でカセットケース31の側面を全周に亘って取り巻く部位(角部32Aを含む)を、共通部32という。より詳細には、共通部32は、カセットケース31の上下(高さ)方向における中心線に関して、上下方向に対称に形成された部位である(図17、図19参照)。テープカセット30の高さは、収納するフィルムテープ59や両面粘着テープ58(つまり、印字済テープ50)のテープ幅に応じて異なっている。しかし、共通部32の幅(上下方向の長さ)Tは、印字済テープ50のテープ幅にかかわらず、同一寸法に設定されている。
例えば、共通部32の幅Tが12mmである場合、印字済テープ50のテープ幅が大きくなると(例えば、18mm、24mm、36mm)、それに応じてカセットケース31の高さも大きくなるが、共通部32の幅T(図17参照)は12mmで一定である。なお、印字済テープ50のテープ幅が共通部32の幅T以下である場合は(例えば、6mm、12mm)、カセットケース31の高さ(幅)は、共通部32の幅(12mm)+所定幅である。この場合、カセットケース31の高さは最も小さくなる。
図4に示すように、上ケース31Aおよび下ケース31Bには、それぞれ、後述する第1テープスプール40、第2テープスプール41およびリボン巻取スプール44(図5および図6参照)を回転可能に支持する支持孔65A、66A、67A、および支持孔65B、66B、67B(図15参照)が設けられている。図5および図6に示すラミネートタイプのテープカセット30では、カセットケース31内には、第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58、第2テープスプール41に巻回された透明なフィルムテープ59、およびリボンスプール42に巻回されたインクリボン60の3種類のテープロールが収納されている。両面粘着テープ58は一面に剥離紙が貼着された両面テープであり、印字済みのフィルムテープ59の印字面側に貼り合わされる。
両面粘着テープ58は、カセットケース31内の左後部に設けられた第1テープ収納部301に収納される。第1テープ収納部301では、両面粘着テープ58の剥離紙を外側に向けて巻回した第1テープスプール40が、支持孔65Aおよび65Bを介して回転可能に配置されている。フィルムテープ59は、カセットケース31内の右後部に設けられた第2テープ収納部302に収納される。第2テープ収納部302では、フィルムテープ59が巻回された第2テープスプール41が、支持孔66Aおよび66Bを介して回転可能に配置されている。さらに、インクリボン60は、カセットケース31内の右前部に設けられたインクリボン収納部303に収納される。インクリボン収納部303では、インクリボン60が巻回されたリボンスプール42が、上記テープと同様に支持孔を介して回転可能に配置されている。
カセットケース31内における第1テープスプール40とリボンスプール42との間には、リボンスプール42からインクリボン60を引き出すとともに、文字等の印字にて使用されたインクリボン60を巻き取るリボン巻取スプール44が、支持孔67Aおよび67Bを介して回転可能に配置されている。なお、リボン巻取スプール44の下部には、リボン巻取スプール44が逆転することで巻き取ったインクリボン60が緩んでしまうのを防止するためのクラッチバネ(図示せず)が取り付けられている。
図4に示すように、カセットケース31の前面には、平面視で略半円状をなす溝部である半円溝34Kが、カセットケース31の高さ方向(つまり、上面30Aから底面30B)に亘って設けられている。半円溝34Kは、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、プラテンホルダ12の回転中心である軸支部12Aがカセットケース31と干渉しないように設けられた逃がし部である。カセットケース31の前面のうち、半円溝34Kから左に延びる部分を、アーム前面35という。アーム前面35と、アーム前面35から後方へ離間した位置に高さ方向に亘って設けられたアーム背面37とで規定される、テープカセット30右側から左方に延びる部位をアーム部34という。
本実施形態のテープカセット30は、ラミネートタイプとして実装されている(図5および図6参照)。そのため、アーム部34内には、第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59と、リボンスプール42から引き出されたインクリボン60とが共に案内されている。アーム前面35の先端部は後方へ向かって屈曲しており、アーム前面35とアーム背面37の先端により、開口34Aが形成されている。開口34Aで重合された状態となったフィルムテープ59とインクリボン60とは、後述する開口部77に向けて排出される。
図5および図6に示すように、アーム背面37と、アーム背面37から連続して設けられた周壁面とにより囲まれた、テープカセット30を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間は、ヘッド挿入部39である。ヘッド挿入部39は、カセットケース31の前方に設けられている。ヘッド挿入部39は、テープカセット30の前面に設けられた開口部77によってテープカセット30の前面でも外部とつながっている。ヘッド挿入部39には、テープ印字装置1のサーマルヘッド10を支持するヘッドホルダ74が挿入され、アーム部34の開口34Aから排出されたフィルムテープ59には、開口部77において、サーマルヘッド10による印字が行われる。
テープカセット30の底面30B側には、カセットケース31のヘッド挿入部39を臨む位置に、テープカセット30がテープ印字装置1に装着される際の上下方向の位置決めに使用される支持受部が設けられている。本実施形態では、印字媒体であるフィルムテープ59の搬送方向においてサーマルヘッド10の挿入位置(より詳細には印字位置)の上流側には第1ヘッド受部39Aが設けられ、下流側には第2ヘッド受部39Bが設けられている。ヘッド受部39A、39Bは、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、それぞれ、ヘッドホルダ74に設けられたヘッド支持部74A、74Bに当接し、ヘッド支持部74A、74Bによって下方から支持される部位である。
図15を参照して、ヘッド受部39A、39Bの構成について詳述する。図15に示すように、ヘッド受部39A、39Bは、いずれも下ケース31Bに形成された凹部である。そして、第1ヘッド受部39Aは、底面視でアーム前面35に沿った方向にヘッド挿入部39から凹んだ略長方形状を有し、第2ヘッド受部39Bは、底面視でアーム前面35とは直交する方向にヘッド挿入部39から凹んだ略長方形状を有している。つまり、第1ヘッド受部39Aと第2ヘッド受部39Bとは、互いに直交する方向からヘッド挿入部39を臨む凹部である。
また、図15に示すように、下ケース31Bにおいてヘッド挿入部39を臨む位置であって、且つ、ヘッド挿入部39の長手方向において、第1ヘッド受部39Aと第2ヘッド受部39Bの間には、底面視略長方形状の凹部である係止部38が設けられている。より詳細には、係止部38は、ヘッド挿入部39の長手方向のほぼ中心位置において、アーム背面37に対向する周壁部に設けられている。図12に示すように、係止部38の後壁部38Aは、テープ印字装置1のカセットフック75の爪部75Bの最も突出した位置に当接する位置の直下まで立設されている。よって、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、カセットフック75が後壁部38Aの上部に係止する。
さらに、図15に示すように、角部32A(図4参照)の下面の2箇所に、前述したテープ印字装置1の位置決めピン102、103に対応するピン孔62、63が設けられている。具体的には、ピン孔62は、カセットケース31の左前部(図15では右下側)に設けられた後述する支持孔64の後方(図15では上方)において、角部32Aの下面に設けられた凹部である。また、ピン孔63は、カセットケース31の右端部(図15では左側)の前後方向中央部近傍において、角部32Aの下面に設けられた凹部である。先述したように、ピン孔62、63はそれぞれ位置決めピン102、103が挿入されて、テープカセット30の前後左右方向の位置決めが行われる。
ところで、テープカセット30は、テープ印字装置1の印字動作時に回転駆動される可動部品(本実施形態では、テープ駆動ローラ46およびリボン巻取スプール44)を備えている。テープカセット30の可動部品は、テープ印字装置1の印字動作時に振動が発生しやすい部位である。そこで、テープカセット30の上面30A側には、テープ印字装置1によって回転駆動される可動部品と近接する位置に、カセット装着部8に装着されたテープカセット30を安定的に保持するための押え受部が設けられている(図15参照)。具体的には、リボン巻取スプール44と近接する位置に押え受部39Cが設けられ、テープ駆動ローラ46と近接する位置に押え受部33が設けられている。押え受部39C、33は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、それぞれ、カセットカバー6に設けられた押え部材7A、7Bに当接し、押え部材7A、7Bによって上方から押圧される部位である。
図14を参照して、押え受部39C、33の構成について詳述する。図14に示すように、押え受部39C、33は、いずれも上ケース31Aに形成された凹部である。具体的には、第1押え受部39Cは、上ケース31Aにおいて、テープの搬送方向においてサーマルヘッド10の挿入位置(より詳細には印字位置)の上流側のヘッド挿入部39を臨む位置に設けられている。つまり、第1押え受部39Cは、第1ヘッド受部39Aよりも上方、且つ、平面視で第1ヘッド受部39Aと重なる位置に設けられている。そして、第1押え受部39Cの後側(図14では上側)に、第1押え受部39Cと近接してリボン巻取スプール44を回転支持する支持孔67Aが設けられている。
第1押え受部39Cの後方には、傾斜部39Dが設けられている。傾斜部39Dは、第1押え受部39Cの後端部から上後方に向かって傾斜した、第1押え受部39Cの後端部から上面30Aに亘る壁面である。
第2押え受部33は、テープカセット30の左側縁部に設けられた共通部32Aの一部であって、上ケース31Aに形成された面部である。つまり、第2押え受部33は、ピン孔62が設けられた共通部32Aの上面である。そして、第2押え受部33の前側(図14では下側)に、第2押え受部33と近接してテープ駆動ローラ46を回転支持する支持孔64が設けられている。
カセット装着部8に装着されたテープカセット30を平面視した場合、第1押え受部39Cとリボン巻取スプール44とが前後に並び、且つ、テープ駆動ローラ46と第2押え受部33とが前後に並ぶ。そのため、押え受部39C、33を結ぶ仮想的な第1の線L1と、可動部品(テープ駆動ローラ46およびリボン巻取スプール44)を結ぶ仮想的な第2の線L2とは交差する(図14に示す二点鎖線を参照)。さらに、第1の線L1と第2の線L2とが交差する仮想的な点Pの近傍に、ヘッド挿入部39に挿入されたサーマルヘッド10が位置する。
図16を参照して、テープカセット30の各受部(第1ヘッド受部39A、第2ヘッド受部39B、第1押え受部39C、第2押え受部33)の高さ関係について説明する。
図16に示すように、テープカセット30の上下方向(高さ方向)において、第1押え受部39C(より詳細には、凹部の底面)と第2押え受部33(より詳細には、共通部32Aの上面)とは高さ位置が同じである。カセットケース31に収納される印刷媒体であるフィルムテープ59の上下方向中心位置(より詳細には、カセットケース31の上下方向中心線N)から、押え受部39C、33の高さ位置までの距離を、距離H1とする。距離H1は、テープカセット30の種類にかかわらず、つまりテープカセット30の上下方向の高さが異なっていても一定である。よって、カセットケース31に収納されるテープの幅がより広いテープカセット30ほど、上面30Aに設けられた凹部である押え受部39C、33の深さは大きくなる。
また、テープカセット30の上下方向(高さ方向)において、ヘッド受部39A、39B(より詳細には、凹部の底面)の高さ位置は同じである。カセットケース31の上下方向中心線Nから、ヘッド受部39A、39Bの高さ位置までの距離を、距離H2とする。距離H2は、テープカセット30の種類にかかわらず、つまりテープカセット30の上下方向の高さが異なっていても一定である。よって、カセットケース31に収納されるテープの幅がより広いテープカセット30ほど、底面30Bに設けられた凹部であるヘッド受部39A、39Bの深さは大きくなる。
さらに、本実施形態では、距離H1と距離H2とは等しくなるように、押え受部39C、33およびヘッド受部39A、39Bの深さが設定されている。なお、ヘッド支持部74A、74Bによるヘッド受部39A、39Bの支持と、押え部材7A、7Bによる押え受部39C、33の押圧とについては、後で詳述する。
ところで、テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態でプラテンホルダ12が印字位置に向けて移動すると(図6参照)、カセット対向面12Bに設けられたアーム検出部200および係止片225がアーム前面35に対向する。そこで、図4に示すように、アーム前面35には、アーム検出部200の検出スイッチ210を選択的に押圧することにより、テープ印字装置1にテープカセット30の種類を検出させる部位であるアーム識別部800と、係止片225が挿入される係止孔820とが設けられている。
アーム識別部800は、特定の配置パターンに応じて、アーム検出スイッチ210にそれぞれ対応する位置に設けられた、スイッチ端子222を挿脱可能な正面視正方形状のスイッチ孔である非押圧部801およびスイッチ端子222を挿脱不可能な面部である押圧部802のいずれかを含む。つまり、本実施形態のアーム識別部800は、5つのアーム検出スイッチ210に対応する5箇所の位置に、非押圧部801および押圧部802のいずれかを有する。また、係止孔820は、アーム識別部800の右側上方において左右方向に延びるスリット状の貫通孔である。なお、以下では、非押圧部801および押圧部802を総称する場合、または何れかを特定しない場合には、単に識別部という。
ここで、図4、図17〜図19を参照して、アーム識別部800および係止孔820の詳細な構成について説明する。なお、図4および図17は、印字済テープ50(ラミネートタイプの例ではフィルムテープ59および両面粘着テープ58)のテープ幅が所定幅(例えば、18mm)以上となるテープカセット30(以下、幅広カセット30という)におけるアーム識別部800と係止孔820の一例を示している。一方、図18および図19は、印字済テープ50のテープ幅が所定幅未満となるフィルムテープ59が収納されたテープカセット30(以下、幅狭カセット30という)におけるアーム識別部800と係止孔820の一例を示している。
まず、アーム識別部800について説明する。図17に示すように、アーム識別部800の識別部(非押圧部801および押圧部802)の少なくとも一部は、アーム前面35において所定の高さT1の範囲内に設けられる。所定の高さT1は、複数の異なる高さを有するテープカセット30のうち、最小高さを有するテープカセット30のカセットケース31の高さである。
アーム前面35における所定高さT1の範囲内にある領域を、共通識別部831という。より好適には、識別部(非押圧部801および押圧部802)の少なくとも一部は、アーム前面35における、カセットケース31の上下(高さ)方向における中心線Nを中心とした上下方向に対称な共通識別部831内に設けられる。また、図17に示すように、幅広カセット30の場合、アーム前面35の所定高さT2の範囲内において、共通識別部831の上方および下方の少なくともいずれかに、さらに識別部が設けられていてもよい。なお、アーム前面35の所定高さT2の範囲内で共通識別部831以外の領域を、拡張部832という。
なお、本実施形態では、各識別部の左右方向の位置は、それぞれ異なっている。つまり、上下方向に重なる識別部はなく、5つの識別孔は、ジグザグに配置されている。よって、各識別部を結ぶ線は、テープカセット30の着脱方向であるテープカセット30の上下方向と交差する。
本実施形態では、図17に例示される幅広カセット30では、5つの識別部のうち4つが共通識別部831の高さT1の範囲内に2列で設けられ、1つが共通識別部831とその下方の拡張部832にまたがって設けられている。より具体的には、共通識別部831内の上の列には、テープカセット30の左側に非押圧部801が設けられ、右側に押圧部802が設けられている。共通識別部831内の下の列には、テープカセット30の左側に押圧部802が設けられ、右側に非押圧部801が設けられている。そして、共通識別部831と下方の拡張部832にまたがって、押圧部802が設けられている。このように、幅広カセット30では、アーム前面35が広いのに対応して、より大きな面積でアーム識別部800を構成することで、テープ印字装置1によって検出可能なテープカセット30の種類数を増やすことができる。
所定幅以上のテープカセット30において、図17のように共通識別部831と共通識別部831の上方および下方の拡張部832の少なくともいずれかにまたがって識別部(図17では最下列の押圧部802)が設けられる場合には、図18および図19に示すように、幅狭カセット30の対応する位置には、対向するアーム検出スイッチ210を押圧しないように、貫通孔である逃がし孔803が形成される。または、逃がし孔803に代えて、内側に向けて階段状に曲げ形成した逃がし段差を設けてもよい。このような構成を有するアーム識別部800を用いたテープカセット30の種類検出については、後で詳述する。
係止孔820は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に係止片225が挿脱自在に対向配置される孔である。詳細には、係止孔820は、上ケース31Aと下ケース31Bとの結合部にまたがって、アーム識別部800の最も右側に位置する識別部(図17の例では、最下列の押圧部802)の右端を左端として形成された、平面視で左右方向に長い略長方形状の貫通孔である。また、係止孔820は、アーム前面35の上下方向の開口幅が最も大きく形成されており、内部に向かって漸減するように、係止孔820の下壁の一部が水平方向に対して傾斜する傾斜部821として形成されている(図24参照)。
なお、図4に示すように、アーム前面35において、下ケース31Bのアーム識別部800の左側には、正面視で縦長長方形状の貫通孔850が設けられているが、貫通孔850は、カセットケース31の成型時の金型の逃がし用に設けられたものであり、特定の機能は有しない。
また、図5および図6に示すように、アーム部34の開口34Aからテープ排出口49までのフィルムテープ59およびインクリボン60の搬送方向において、ヘッド挿入部39の下流側には支持孔64(図15参照)が設けられ、支持孔64の内側にテープ駆動ローラ46が回動可能に軸支されている。図5および図6に示すラミネートタイプのテープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合は、テープ駆動ローラ46は、対向する可動搬送ローラ14との協働により、第2テープスプール41からフィルムテープ59を引き出すとともに、第1テープスプール40から両面粘着テープ58を引き出し、フィルムテープ59の印字面にガイドして接着させる。
テープ駆動ローラ46の上流側には、上下一対の規制部材36が設けられている。規制部材36の基部は、サーマルヘッド10の下流側にて、印字後のフィルムテープ59を上下方向(テープ幅方向)に規制してテープ排出口49に向かって案内するとともに、フィルムテープ59と両面粘着テープ58との間に位置ズレを生じることなく適正に接着させる。規制部材36の近傍には、ヘッド挿入部39を経由して搬送された使用済みのインクリボン60をフィルムテープ59から離間させ、リボン巻取スプール44に向かって案内するための案内壁47が立設されている。案内壁47とリボン巻取スプール44との間には、案内壁47に沿って案内される使用済みのインクリボン60と、第1テープスプール40に巻回して支持された両面粘着テープ58とが互いに接触するのを防止するための分離壁48が立設されている。
以下に、本実施形態のテープカセット30がテープ印字装置1に装着された場合のテープカセット30とテープ印字装置1の作用について説明する。
まず、テープカセット30の装着態様について説明する。テープカセット30がカセット装着部8に装着される場合、テープカセット30は、キャビティ8Aの底面に対して、テープカセット30の底面30Bが対向するように上方から垂直に嵌め込まれる。キャビティ8Aの底面(図示せず)からは、図4に示すヘッドホルダ74、リボン巻取軸95およびテープ駆動軸100が突出している。よって、ユーザは、これらにヘッド挿入部39、リボン巻取スプール44、およびテープ駆動ローラ46の軸孔をそれぞれ挿入しながら、テープカセット30を嵌め込む。前述したように、ヘッドホルダ74の右端部と左端部には、それぞれ第1ヘッド支持部74Aと第2ヘッド支持部74Bとが設けられている。また、テープカセット30のこれらに対応する位置、具体的には、ヘッド挿入部39の右側および左後側のヘッド挿入部39を臨む位置には、第1ヘッド受部39Aと第2ヘッド受部39Bとが設けられている。
したがって、ユーザがテープカセット30を下方向に押し込むと、図20に示すように、テープカセット30の第1ヘッド受部39Aは、ヘッドホルダ74のヘッド固着部74Dに設けられた第1ヘッド支持部74Aに当接し、第1ヘッド受部39Aの下方向へのそれ以上の移動が規制される。また、図21に示すように、テープカセット30の第2ヘッド受部39Bは、ヘッドホルダ74のヘッド固着部74Dに設けられた第2ヘッド支持部74Bに当接し、第2ヘッド支持部74Bの下方向へのそれ以上の移動が規制される。そして、テープカセット30は、ヘッド支持部74A、74Bによってヘッド受部39A、39Bが下方から支持された状態で維持される。
そして、印字のためにカセットカバー6が閉じられると、押え部材7A、7Bは、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の上面30Aに設けられた押え受部39C、33にそれぞれ当接し、テープカセット30を上方から押圧する。図1および図2に示すように、カセットカバー6は、テープ印字装置1の背面上方の左右両端部において軸支されている。よって、カセットカバー6が閉じられる場合、押え部材7A、7Bの先端は、装着されているテープカセット30の上面30Aに対して垂直方向に接近するのではなく、後方から前方に向かって鋭角に接近する。
ここで、第1押え受部39Cの後方に設けられた傾斜部39Dは、第1押え部材7Aが第1押え受部39Cに接近する際の干渉をなくすための逃がし部として機能する(図14参照)。本実施形態では、第1押え受部39Cのみに傾斜部39Dを設けているが、第2押え受部33の後方にも傾斜部39Dと同様の逃がし部を設けてもよい。
このように、本実施形態のテープカセット30は、カセット装着部8に装着されてカセットカバー6が閉じられると、リボン巻取スプール44と近接する位置に設けられた第1押え受部39Cが、第1押え部材7Aによって上方から押圧される。また、テープ駆動ローラ46と近接する位置に設けられた第2押え受部33が、第2押え部材7Bによって上方から押圧される。そのため、テープ駆動軸100によって回転駆動されるテープ駆動ローラ46の振動が抑制されるとともに、リボン巻取軸95によって回転駆動されるリボン巻取スプール44の振動が抑制される。さらに、ヘッド挿入部39に挿入されたサーマルヘッド10の上流側および下流側でテープカセット30が押圧されるので、サーマルヘッド10近傍に対する可動部材(リボン巻取スプール44およびテープ駆動ローラ46)の振動の影響が抑制される。したがって、テープ印刷装置1の印字動作時にテープカセット30の可動部品に発生する振動が低減され、可動部品の振動に起因するテープの走行不良や印字品質の劣化などを抑制することができる。
また、テープカセット30がカセット装着部8に装着されると、ヘッド挿入部39におけるサーマルヘッド10の挿入位置と近接する位置に設けられたヘッド受部39A、39Bが、ヘッド支持部74A、74Bによって上方から支持される。つまり、テープカセット30は、押え受部39C、33が上方から押圧されるのに加えて、印字ヘッドと近接した位置でヘッド受部39A、39Bが下方から支持される。これにより、サーマルヘッド10による上下方向の印字中心位置とフィルムテープ59のテープ幅方向中心位置を精度よく維持される。特に、テープカセット30は、印字媒体であるフィルムテープ59の搬送方向において、サーマルヘッド10の挿入位置、より詳細には印字位置に対して上流側と下流側の両側で支持される。よって、テープカセット30の上下方向の位置決めを特に正確に行うことができる。
さらに、テープカセット30がカセット装着部8内で上下から挟まれた状態で保持されるので、テープ印刷装置1の印字動作時にテープカセット30の可動部品に発生する振動がさらに低減される。そして、サーマルヘッド10の印字位置近くで適切に位置決めされたテープカセット30が、可動部品の振動によって上方向に移動すること(所謂、浮き)を規制することができる。その結果、サーマルヘッド10による上下方向の印字中心位置とフィルムテープ59のテープ幅方向中心位置を精度よく維持することができ、テープの搬送および印字を安定して行うことが可能となる。
また、テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態では、先述したように、第1の線L1と第2の線L2とが交差する点Pの近傍にサーマルヘッド10が位置する(図14参照)。つまり、テープ印字装置1に装着されたテープカセット30が、サーマルヘッド10の近傍を中心としてバランスよく上方から押圧される。したがって、テープ駆動ローラ46およびリボン巻取スプール44の振動がさらに抑制されるとともに、特にサーマルヘッド10に対するテープカセット30の上下方向位置を安定的に保持することができる。
また、本実施形態のテープカセット30の第1ヘッド受部39Aと第2ヘッド受部39Bとは、互いに直交する方向からヘッド挿入部39を臨んでいる。いずれも凹部であるヘッド受部39A、39Bに、互いに直交する方向に延びるヘッド支持部74A、74Bが挿入されて支持されるので、テープカセット30は、上下方向のみならず、前後方向および左右方向の移動も規制される。これにより、サーマルヘッド10とヘッド挿入部39との適正な位置関係を保持することができる。
図20および図21に示すテープカセット30よりも高さが低いテープカセット30がカセット装着部8に装着された場合にも、図22および図23に示すように、ヘッド支持部74A、74Bにヘッド受部39A、39Bが当接し、支持される。また、カセットカバー6が閉じられると、押え部材7A、7Bは押え受部39C、33にそれぞれ当接し、テープカセット30を上方から押圧する。図22および図23に示すテープカセット30の方が、図20および図21に示すテープカセット30よりも、底面30Bに設けられた凹部であるヘッド受部39A、39Bの深さは小さく設定されている。また、図22および図23に示すテープカセット30の方が、図20および図21に示すテープカセット30よりも、上面30Aに設けられた凹部である押え受部39C、33の深さは小さく設定されている。しかしながら、先述の距離H1および距離H2は、テープカセット30の種類に関わらず一定である。
このように、テープカセット30の種類にかかわらず、つまりテープカセット30の上下方向の高さが異なっていても距離H1および距離H2を一定とすることにより、同一のテープ印字装置1で高さの異なる複数種類のテープカセット30を使用することができる。また、ヘッド受部39A、39Bおよび押え受部39C、33の寸法精度を高めることにより、テープカセット30の加工精度を効率よく管理することができる。また、幅が異なるテープであっても、テープ幅方向の中心が一致する位置で搬送することで、テープ幅方向で中心に一致していないときにテープ幅方向でのテープへの圧力差によって生じる蛇行を防止することができる。
さらに、本実施形態では、テープカセット30の種類に係わらず、距離H1と距離H2とが等しい。つまり、上下方向高さの異なる複数のテープカセット30のいずれかが装着される場合でも、その高さにかかわらず、押え受部39C、33に対する上方からの押圧と、ヘッド受部39A、39Bに対する下方からの支持とが、良好なバランスで行われる。したがって、サーマルヘッド10による上下方向の印字中心位置と印字媒体であるテープのテープ幅方向中心位置との適切な位置関係を安定して維持することができる。
次に、図12を参照して、カセットフック75によるテープカセット30の係止について説明する。ユーザによって、テープカセット30がカセット装着部8に嵌め込まれ、下方向に押し込まれると、まず、テープカセット30の底面30Bがカセットフック75の爪部75Bの上部に当接する。爪部75Bの上部は後方(図12では左側)に向かって傾斜しているので、ユーザがさらに下方向にテープカセット30を押し込むと、底面30Bからの押圧により、可撓性を有する突出部75Aは前方向(図12で右側)に撓む。
ユーザがさらに下方向にテープカセット30を押し込むと、係止部38の後壁部38Aが爪部75Bの最も突出した位置を越えるので、突出部75Aは再び元の位置に戻り、図12に示すように、爪部75Bが後壁部38Aの上部を係止する。このとき、テープカセット30はヘッド受部39A、39Bにおいて支持された状態である。したがって、押え部材7A、7Bによる押え受部39C、33の押圧と同様に、テープ印字装置1に装着された後、テープカセット30が浮き上がる方向、つまり上方への移動をさらに確実に規制することができ、テープの搬送および印字を安定して行うことが可能となる。
次に、アーム検出部200によるテープカセット30の種類の検出および係止片225による係止孔820への係止について説明する。ユーザによってテープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着され、カセットカバー6が閉じられると、プラテンホルダ12が、図5に示す待機位置から図6に示す印字位置に向けて移動する。すると、プラテンホルダ12のカセット対向面12Bに設けられたアーム検出部200および係止片225が、テープカセット30のアーム前面35に設けられたアーム識別部800および係止孔820にそれぞれ対向する位置に移動する。
カセット対向面12Bから突出する5つのアーム検出スイッチ210のスイッチ端子222は、アーム識別部800の対応する位置にそれぞれ設けられた非押圧部801または押圧部802に対向し、選択的に押圧される。図4および図17に示す幅広カセット30では、共通識別部831の高さT1の範囲内の上の列の左側に非押圧部801、右側に押圧部802、下の列の左側に押圧部802、右側に非押圧部801、そして、共通識別部831にまたがって、その下方の所定高さT2の範囲内に、押圧部802が設けられている。よって、図24に示すように、共通識別部831内の上の列の右側の押圧部802、下の列の左側の押圧部802、および共通識別部831およびその下方の拡張部832にまたがって設けられた押圧部802に対向したスイッチ端子222は、押圧部802であるアーム前面35の面部に押圧され、アーム検出スイッチ210がオン状態となる。一方、共通識別部831の高さT1の範囲内の上の列の左側および下の列の右側の非押圧部801に対向したスイッチ端子222は、非押圧部801であるスイッチ孔に挿入され、アーム検出スイッチ210がオフ状態となる。
また、図18および図19に示す幅狭カセット30では、共通識別部831に、逃がし孔803が設けられている。よって、このテープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、逃がし孔803に対向するスイッチ端子222は押圧されないので、このアーム検出スイッチ210は常にオフ状態となる。このようにして得られた5つのアーム検出スイッチ210のオン・オフの組合せに基づいて、テープカセット30の種類が特定される。より詳細には、アーム検出スイッチ210のオン・オフの組合せがテープカセット30の種類に対応付けられているカセット特定テーブルが、あらかじめROM402(図13参照)に記憶されている。そして、CPU401(図13参照)が、カセット特定テーブルを参照して、アーム検出スイッチ210のオン・オフの組合せに対応するテープカセットの種類を特定する。
なお、図17に示す幅広カセット30の例では、最下列の識別部(押圧部802)は、共通識別部831およびその下方の拡張部832にまたがって設けられているが、共通識別部831にまたがらず、拡張部832に完全に含まれる識別部(押圧部802)を設けてもよい。この場合は、図18および図19に示す幅狭カセット30がカセット装着部8に装着された場合、アーム前面35の下端はこの識別部に対応する高さ位置よりも上になる。よって、このような場合、幅狭カセット30に逃がし孔803や逃がし段差を設ける必要はない。また、幅広カセット30の共通識別部831の上方の拡張部832のみに識別部を設けてもよいし、上方および下方の拡張部832の両方に識別部を設けてもよい。
本実施形態では、テープカセット30がテープ印字装置1に装着される際、上下方向の位置決めに用いられるヘッド受部39A、39Bが、ヘッド挿入部39を臨む位置、つまり、アーム識別部800が設けられたアーム部34に連接する位置に設けられている。したがって、テープカセット30がテープ印字装置1に装着される際、アーム検出スイッチ210とアーム識別部800との位置関係が精度よく確保されるので、アーム検出スイッチ210による誤検出を防止することができる。
また、幅広カセット30の場合、共通識別部831からテープカセット30の上下方向に拡大されたアーム前面35の所定領域(拡張部832)にも識別部が形成される。このように、拡張部832を有効活用して、テープ印字装置1によって検出可能なテープカセット30の種類数を増やした場合でも、検出精度を確保することができる。
また、係止片225は、前述したように、各スイッチ端子222と比較した突出高さが略同一または大きい。よって、テープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着されていれば、係止孔820に挿入される。一方、テープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着されておらず、係止片225が係止孔820でなくアーム前面35の面部に対向した場合には、スイッチ端子222はいずれもアーム前面35によって押圧されない。
本実施形態では、ヘッド受部39A、39Bにより、テープカセット30の上下方向の位置決めを正確に行うことができるが、下方向への押し込みが足りない場合等、テープカセット30が適正に装着されていない場合は、このように、係止片225が各スイッチ端子222とアーム識別部800との接触を妨げる。よって、アーム検出スイッチ210はすべてオフ状態となる。したがって、前述したカセット特定テーブルにおいて、すべてオフの組合せをテープカセット30が適正に装着されていない状態であると定めておけば、テープカセット30の装着状態を検出することができる。
また、前述したように、係止片225は下面に形成された傾斜部226によって先端の厚みが漸減し、係止孔820はアーム前面35に向かうほど、下壁部に形成された傾斜部821によって上下方向の開口幅が漸増する。そのため、係止片225が係止孔820に対して僅かに下方向にずれた位置(カセットケース31がカセット装着部8の適正位置から僅かに浮いた状態)にある場合、プラテンホルダ12が印字位置に向けて移動すると、傾斜部226および傾斜部821の相互作用によって係止片225が係止孔820の内部に案内される。これにより、カセットケース31がカセット装着部8の適正位置から僅かに浮いた程度であれば、係止片225を係止孔820内に適切に挿入させて、アーム検出スイッチ210をアーム識別部800に正確に対向させることができる。
また、前述したように、アーム識別部800に設けられた識別部は、ジグザグに配置されており、左右方向において同一位置に設けられた識別部はない。つまり、係止片225が設けられていないテープ印字装置1や係止孔820が設けられていないテープカセット30の場合、テープカセット30が上下方向にずれていると、同様に、すべてのアーム検出スイッチ210がオン状態となる。したがって、このような検出結果が得られた場合はテープカセット30が適正に装着されていない状態であることをテープ印字装置1に認識させることができ、誤検出が生じる可能性を低減することができる。
以上に説明したように、テープカセット30が上下方向の適正な位置で位置決めされてカセット装着部8に装着されると、テープ駆動軸100がテープ駆動ローラ46に嵌挿され、リボン巻取軸95がリボン巻取スプール44に嵌挿される。そして、カセットカバー6が閉鎖されるとプラテンホルダ12が印字位置に移動して、プラテンローラ15がサーマルヘッド10に相対するとともに、可動搬送ローラ14がテープ駆動ローラ46を押圧する。これにより、テープ印字装置1は、印字媒体であるテープへの印字を実行することが可能な状態となる。また、アーム検出部200により、テープカセット30の種類が精度よく検出される。
図5および図6に示すラミネートタイプのテープカセット30が装着されている場合、テープ印字装置1における印字実行時には、テープ駆動軸100を介して回転駆動されるテープ駆動ローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって、第2テープスプール41からフィルムテープ59を引き出す。また、リボン巻取軸95を介して回転駆動されるリボン巻取スプール44が、印字スピードと同期してリボンスプール42から未使用のインクリボン60を引き出す。第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59は、リボンスプール42の外側を通過しながらアーム部34内の搬送経路に沿って搬送される。さらに、フィルムテープ59はその表面にインクリボン60が重合された状態で開口34Aからヘッド挿入部39に供給され、テープ印字装置1のサーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。この間も、ヘッド受部39A、39B、押え部材7A、7B、さらにはカセットフック75の作用により、安定した装着状態が保たれる。
そして、サーマルヘッド10による上下方向の印字中心位置とフィルムテープ59のテープ幅方向中心位置が精度よく維持された状態で、サーマルヘッド10によって、フィルムテープ59の印字面に対して文字、図形、記号等が印字される。その後、使用済みのインクリボン60は案内壁47にて印字済みのフィルムテープ59から剥がされ、リボン巻取スプール44に巻き取られる。一方、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、第1テープスプール40から両面粘着テープ58が引き出される。この両面粘着テープ58は、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との間にガイドされて巻き込まれながら、印字済みのフィルムテープ59の印字面に重ねられて貼着される。両面粘着テープ58が貼着された印字済みのフィルムテープ59(つまり、印字済テープ50)は、さらにテープ排出口49に向かって搬送され、カット機構17によって切断される。
なお、本実施形態では、汎用カセットであるテープカセット30を、汎用機であるテープ印字装置1にて使用している。それにより、テープ印字装置1は1台で感熱タイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ、感熱ラミネートタイプ等、各種のテープカセットに対応させることが可能であり、1台毎に異なるテープ印字装置を用いる必要がない。また、テープカセットの製造に際し、カセットケースは通常複数の金型を組み合わせた上で樹脂を流し込んで形成するが、同じテープ幅のテープに対応したテープカセットであれば、アーム識別部800を形成する部分を含む金型等、一部の金型を除いて共通の金型を使用可能なため大変なコスト削減になる。
ところで、上記実施形態において、第1テープ収納部301および第2テープ収納部302が、本発明の「テープ収納部」にそれぞれ相当する。インクリボン収納部303が、本発明の「インクリボン収納部」に相当する。ヘッド挿入部39が、本発明の「ヘッド挿入部」に相当する。テープ駆動ローラ46が、本発明の「テープ駆動ローラ」に相当する。リボン巻取スプール44が、本発明の「リボン駆動ローラ」に相当する。第1押え部材7Aによって押圧される第1押え受部39Cが、本発明の「第1押え受部」に相当する。第2押え部材7Bによって押圧される第2押え受部33が、本発明の「第2押え受部」に相当する。第1ヘッド支持部74Aによって下方から支持される第1ヘッド受部39Aが、本発明の「第1支持受部」に相当する。第2ヘッド支持部74Bによって下方から支持される第2ヘッド受部39Bが、本発明の「第2支持受部」に相当する。
なお、本発明のテープカセット30およびテープ印字装置1は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、ラミネートタイプに実装されたテープカセット30を例示したが、これに限定されない。本発明は、テープ印字装置1によって回転駆動される可動部品(テープ駆動ローラ46およびリボン巻取スプール44)を備えたテープカセット30であれば適用することができる。例えば、テープカセット30は、第1テープスプール40または第2テープスプール41に印字テープが巻回され、リボンスプール42にインクリボン60が巻回された、いわゆるレセプタタイプとして実装されていてもよい。この場合も、上記実施形態と同様に、押え受部39C、33が押え部材7A、7Bによって押圧されることで、印字テープの搬送時におけるテープ駆動ローラ46の振動と、インクリボン60の巻取時におけるリボン巻取スプール44の振動とが抑制される。
また、テープカセット30は、第1テープスプール40または第2テープスプール41に感熱紙テープが巻回された、いわゆるサーマルタイプとして実装されていてもよい。テープカセット30がサーマルタイプである場合、リボン巻取軸95によってリボン巻取スプール44が回転駆動されると、インクリボン60の巻取は行われないものの、リボン巻取スプール44が空転して振動を生じる。そのため、上記実施形態と同様に、押え受部39C、33が押え部材7A、7Bによって押圧されることで、感熱紙テープの搬送時におけるテープ駆動ローラ46の振動と、空転時におけるリボン巻取スプール44の振動とが抑制される。
また、テープカセット30に設けられる押え受部39C、33の形状や位置は、前述の実施形態で例示した形状や位置に限られない。上記実施形態では、第1押え受部39Cは平面視略長方形状であり、第2押え受部33は平面視三角形であるが、他の矩形状や円形状等、その他の形状でも構わない。また、押え受部39C、33の位置は、押え部材7A、7Bによって押圧され、且つ、可動部品(テープ駆動ローラ46およびリボン巻取スプール44)の近傍であればよい。さらに、第1押え受部39Cは、テープカセット30をより安定的に保持するために、第1ヘッド受部39Aよりも上方、且つ、平面視で第1ヘッド受部39Aと重なる位置であることが望ましい。
テープカセット30に設けられるヘッド受部39A、39Bの形状や位置も、前述の実施形態で例示した形状や位置に限られない。例えば、ヘッド受部39A、39Bは底面視略長方形状であるが、三角形等、その他の形状でも構わない。また、第1ヘッド受部39Aの場合、サーマルヘッド10の挿入位置、より詳細にはサーマルヘッド10による印字位置よりも印字媒体であるテープの搬送方向上流であればよい。よって、例えば、アーム背面37に対向する周壁面側に設けられていてもよい。また、第2ヘッド受部39Bの場合、サーマルヘッド10の挿入位置、より詳細にはサーマルヘッド10による印字位置よりも印字媒体であるテープの搬送方向下流であればよい。
上記実施形態においては、汎用のカセットを汎用のテープ印字装置にて使用したが、何れも必ずしも汎用である必要はない。
アーム識別部800における非押圧部801と非押圧部802の形状、サイズ、数、および配置パターンは、前述の実施形態で例示されたものに限らず、適宜変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、アーム識別部800の非押圧部801は正面視正方形状の貫通孔であるが、例えば平面視円形状の貫通孔としてもよいし、他の異なる形状としてもよい。
テープ印字装置1においても、適宜変更が可能である。例えば、第1および第2の実施形態では、カセットカバー6が左右方向の軸回りに回動して後方に向かって開くタイプを例示したが(図1および図2参照)、この例に限られない。例えば、図25および図26は、変形例に係るテープ印字装置1を示している。図25および図26の右上側がテープ印字装置1の右側、左下側がテープ印字装置1の左側、左上側がテープ印字装置1の後ろ側、右下側が前側である。
変形例に係るテープ印字装置1は、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータ装置に接続可能なタイプであり、キーボードやディスプレイを備えていない。そして、カセットカバー6は、テープ印字装置1の上面右端部において軸支されており、前後方向の軸周りに回動して右方に向かって開く。押え部材7A、7Bは、カセットカバー6が閉じられた場合にテープカセット30の押え受部39C、33に上方から当接して押圧できる限り、その形状は限定されないため、図26に示すように、この変形例では、カセットカバー6の下面から下方に突出する円柱状の部材で構成されている。
なお、カセットカバー6が右方に向かって開くテープ印字装置1では、第1押え部材7Aは、左右方向に延びる空間であるヘッド挿入部39に沿って第1押え受部39Cに接近するので、第1押え受部39Cに当接する前にテープカセット30と干渉することはない。しかし、第1押え受部39Cの後方に傾斜部39Dを設けておけば、カセットカバー6が後方に向かって開くタイプ(図1および図2)、右方に向かって開くタイプ(図25および図26)のいずれのテープ印字装置1でも使用が可能である。同様に、第2押え受部33の後方にも傾斜部を設けてもよい。