JP5356336B2 - 参照電極 - Google Patents

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Description

本発明は、電極電位の算出や電気化学測定の基準となる参照電極に関するものである。
pH測定等において一定の基準電位を提示するために用いられる内部電極は、例えば銀/塩化銀等からなる内部電極を高濃度のKCl溶液からなる内部液に浸し、この内部液がセラミックスやガラス等の多孔質部材からなる液絡部を介して試料液体に接触するように構成してあるものがある。
ところで、参照電極の内部液として高濃度のKCl溶液を使用すると、常にKとClが試料液体側に液絡部を介してKClが試料液体中に流出することにより、内部液のKCl濃度が低下してしまう。このKCl濃度の低下による基準電位の変動を防ぐためには、内部液を頻繁に補充、交換する必要がある。また、液体である内部液の揮発性を考慮して、内部液を収容する支持管内の容積を大きくする必要がある等の設計上の制約もある。
例えば、液間電位差の変動や液絡部の目詰まり、又はKCl溶液の試料液体への流出による減少を防ぐために、KCl溶液を内部液として用いつつ、液絡部をゲル化した疎水性イオン液体により構成して塩橋とした参照電極について本出願人は出願している(特許文献1、2参照)。
しかしながら、これらの参照電極では、試料液体と接触するゲル化した疎水性イオン液体からは、わずかながらイオン液体を構成するイオンが試料液体へと流出する。そのため、ゲル中のイオン液体が所定量以下になることがあり、製品寿命を長くすることが難しくなる可能性がある。
このような問題に対して、疎水性イオン液体のゲルの厚みを大きくして多量のイオン液体を含ませることも考えられるが、例えば、疎水性イオン液体のゲル単独で形状を保ち続けることができる程度の硬さを保ちつつ、ゲルの厚みや大きさを大きくすることは、製造技術的に非常に難しく大きなコストがかかってしまう。
特開2007−64971号公報 国際公開公報WO2008/032790号公報
本発明は上述したような問題点を鑑みてなされたものであり、製造するのが困難な所定以上の硬度又は粘度を有するとともに厚み等が大きいゲル化した疎水性イオン液体を用いる必要がなく、製品寿命を向上させることができる参照電極を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の参照電極は、内部電極と、前記内部電極と試料液体とを電気的に接続する充填材とを収容する収容体を備えた参照電極であって、前記内部電極と、前記試料液体と前記充填材とが接触するための前記収容体に設けられた開口部との間において当該充填材が層を形成しており、前記充填材が、水溶性電解質溶液からなり、前記内部電極に接触するように形成された第1層と、疎水性イオン液体からなり、前記第1層と接触するように形成された第2層と、ゲル化された疎水性イオン液体からなり、前記第2層に接触するとともに前記開口部に形成された第3層とから構成されることを特徴とする。なお、「疎水性イオン液体」とは、詳細は後述するが、有機又は無機陽イオンと有機又は無機陰イオンとの組み合わせからなり、融点が100℃以下で、水への溶解度が数mM(mmol/dm)程度以下の疎水性の塩を主として意味する。ここで、イオン液体は、イオン性液体又は常溶解塩等とも呼ばれる。さらに、「参照電極」とは、参照極、照合電極、基準電極、比較電極と同義である。また、本明細書中では、「溶液」及び「液体」は特に限定されていない限り、通常の液体だけでなく、ゲル化されて流動する状態及び形状を保つことができる状態をも含む概念である。
このようなものであれば、試料液体と接触する第3層から疎水性イオン液体を構成するイオンが試料液体に流出したとしても、第2層を構成する疎水性イオン液体からイオンが補充され、第2層がバッファーの働きをするので、第3層を構成する疎水性イオン液体のゲルがやせ細ってしまうのを防ぐことができる。従って、第3層を構成する疎水性イオン液体のゲルを厚く形成する必要がなく、所定の硬さを保ちつつ、容易に製造ができる程度の厚さで形成しておくことができる。
また、第3層は収容体の開口部に形成されているので、ゲル化した疎水性イオン液体は、開口部を塞ぐことができ、シール機能を保つことができる必要最小限度の量だけ用いればよく、厚みを大きくする必要がない。
さらに、第2層を構成する疎水性イオン液体は、収容体において第3層により蓋がされた状態となっているので、第2層単体で形状をしっかりと保つ必要が無く、液体や硬度の小さいゲル状の疎水性イオン液体を用いることができる。つまり、製造の容易な液体又は硬度の小さいゲル状の疎水性イオン液体で第2層を構成することができ、第3層にイオンを補充するのに必要な量を十分に充填しやすい。
また、第1層は水溶性電解質溶液により構成されており、第2層は疎水性イオン液体で構成されているため、第1層と第2層はお互いに溶けあうこともなく、たとえ混じりあったとしても自然に分離させることができる。
例えば、参照電極を横向きに倒した場合等において、第1層を構成する水溶性電解質溶液と第2層を構成する疎水性イオン液体とが混じり合うのを防ぐには、前記第1層を構成する水溶性電解質溶液が、ゲル化されたものであればよい。
前記第1層と前記第2層とが混じり合わないようにして、参照電極を常にすぐに使える状態を保てるようにするための具体的な実施の態様としては、前記第1層を構成する水溶性電解質溶液の粘度が、エマルジョンとならない程度の100mPa・s以上であればよい。
参照電極に用いる硬くゲル化された疎水性イオン液体の量をできる限り少なくし、製造を容易にするには、前記第2層を構成する疎水性イオン液体が、ゲル化されていない液体であればよい。
第1層と第2層とが混じり合うのをより防ぎやすくするには、前記第2層を構成する疎水性イオン液体が、ゲル化されたものであればよい。さらに、製造上の容易性を考えた場合、第2層の疎水性イオン液体の硬度又は粘度は、第3層の疎水性イオン液体の硬度又は粘度よりも小さいものにしておけばよい。
第1層と第2層の混合を好適に防ぐための具体的な態様としては、前記第2層を構成する疎水性イオン液体の粘度が、100mPa・s以上1000mPa・s以下であればよい。
第1層と第2層とが混じり合ったとしても、自然に第1層と第2層とをこの順で分離させるには、前記第1層を構成する水溶性電解質溶液の比重が、前記第2層を構成する疎水性イオン液体の比重よりも軽いものであればよい。
第3層を構成するゲル化された疎水性イオン液体の量をできる限り少なくし、第3層を開口部に固定しやすくするには、前記開口部が、前記収容体の内部側よりも外部側の方が小さく形成されていればよい。
第1層及び第2層の重量等により、第3層が開口部から外れてしまうのを防ぐには、前記第3層を構成する疎水性イオン液体の粘度が、1000mPa・s以上であればよい。
このように本発明の参照電極によれば、試料液体と接触する第3層から疎水性イオン液体を構成するイオンが流出したとしても、第2層がバッファーの働きをしてイオンが適宜補充されるので、第3層のゲルがやせ細ってしまうことを防ぐことができる。従って、第3層は薄くても問題はなく、硬く厚みのある疎水性イオン液体のゲルにする必要がないので、非常に製造しやすいものにすることができる。さらに、疎水性イオン液体によるシール機能は保たれ続けるので、製品寿命を従来よりも長くすることができ、基準電位の変動を防げる状態を長期間保つことができる。
本発明の一実施形態に係る参照電極を示す模式図。 同実施形態における支持管先端部における内部構造を示す模式的断面図。 別の実施形態における支持管先端部における内部構造を示す模式的断面図。 さらに別の実施形態における支持管先端部における内部構造を示す模式的断面図。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る参照電極100は、図1の外観図及び図2の試料液体4につけた状態での拡大図に示すように、概略円筒形状であるガラス製の支持管3(本発明の収容体に相当)を備えたものである。この支持管3が内部には、内部電極1が収容してあり、前記内部電極1と試料液体4とを電気的に接続する充填材2が充填してある。前記内部電極1には、リード線11が接続してあり、リード線11はこの支持管3の基端部から外部に延出し、図示しない計測機器に接続されるように構成してある。
前記支持管3は、前記試料液体4と前記充填材2とが接触できるようにその先端を開口させて開口部31が形成してあるとともに、その先端中央部が突出させて、外径を基端側に比べて小さくしてある。
前記内部電極1は、例えばAg/AgCl電極であり、内部の銀を塩化銀で被覆して構成してある。その他の態様としては、Hg/HgCl電極、Hg/HgSO電極であっても構わない。
前記充填材2は、図2に示すように図前記内部電極1から前記支持管3の先端にある開口部31との間において複数の層をなすように充填してある。より具体的には、前記充填材2は、水溶性電解質溶液からなり、前記内部電極1に接触するように形成された第1層21と、疎水性イオン液体からなり、前記第1層21と接触するように形成された第2層22と、ゲル化された疎水性イオン液体からなり、前記第2層22に接触するとともに前記開口部31に形成された第3層23とから構成してある。
前記第1層21を構成する水溶性電解質溶液は、例えばKCl溶液である。なお、水溶性電解質溶液としては、内部電極1がAg/AgClからなるものである場合はClを含むものが使用でき、後述する第2層22の疎水イオン液体に入り込むものでなければよい。また、後述する第2層の疎水性イオン液体が塩橋として機能することで、液間電位の発生を抑えることができるので、例えば、NaCl溶液等を用いてもよい。また、Clと後述する疎水性イオン液体の陽イオンと同じカチオンからなる電解質溶液等を用いてもよい。これは疎水性イオン液体を構成するイオンと同じものは、電解質溶液から侵入しても特に問題がないためである。
このKCl溶液はゲル化してあり、常に前記内部電極1を被覆するとともに、その周辺の支持管3の内部を密閉するのに十分な粘度にして少なくとも前記内部電極1の周囲に設けてある。ここで、水溶性電解質溶液をゲル化する方法としては、特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリブチルアクリレート、及び、その他の合成ゴム等のポリマーを用いる方法が挙げられる。また、水溶性電解質溶液とポリマーの混合比を調整することにより、ゲルの粘度を調整してある。より具体的には、前記第1層21を構成する水溶性電解質溶液の粘度は前記100mPa・s以上にしてある。
前記第2層22を構成する疎水性イオン液体は、陽イオンが、4級アンモニウムカチオン、4級フォスフォニウムカチオン又は4級アルゾニウムカチオンの少なくとも1つ以上であり、陰イオンが、[RSONSO(R1、R2はそれぞれ炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)、フッ素及び4価のホウ素を含むボレートイオン、ビス(2−エチルヘキシル)スルホサクシネイト、AlCl 、AlCl 、NO 、BF 、PF 、CHCOO、CFCOO、CFSO 、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、F(HF) 、CFCFCFCFSO 、(CFCFSO、又はCFCFCFCOOの少なくとも1つ以上であるものが挙げられ、これらの疎水性イオン性液体から用途に合わせて適宜選択して用いている。
この第2層22を構成する疎水性イオン液体は、ゲル化されていない液体であり、第2層22の厚みが大きかったとしても容易に製造できるようにしてある。また、前記第1層21を構成する電解質溶液の比重が、前記第2層22を構成する疎水性イオン液体の比重よりも軽くなるようにしてある。
前記第3層23は、前記開口部31を塞ぐように設けられた疎水性イオン液体のゲル化膜であり、前記第2層22の疎水性イオン液体と同じ組成をもつものである。第3層23は、第2層22とともに塩橋として機能するとともに、第3層23により試料液体4が支持管3の内部に直接接触しないようにシール機能を発揮するようにしてある。この疎水性イオン液体をゲル化する方法は、前述した水溶性電解質溶液をゲル化する方法と同様であり、その粘度は、第1層21と第2層22の重量が加わったとしても前記第3層23が外れないようにしてある。より具体的には、第3層23を構成する疎水性イオン液体の粘度は1000mPa・s以上となるようにしてある。
このように構成された参照電極100によれば、第3層23を構成する疎水性イオン液体のゲルが、試料液体4と接触することにより自身を構成するイオンが流出したとしても、第2層22を構成する疎水性イオン液体がバッファーとして働き、イオンが補充されることになる。従って、構成イオンの流出によるゲルの縮小を防ぐことができるので、製造の難しい厚みの大きい硬いゲル状の疎水性イオン液体を作らなくても製品寿命を長くすることができる。つまり、第3層23を構成する疎水性イオン液体のゲルを厚く形成する必要がなく、所定の硬さを保ちつつ、容易に製造ができる程度の厚さで形成しておくことができる。
さらに、支持管3の先端の一部において小径に開口してある開口部31のみを塞ぐようにしてあるので、疎水性イオン液体のゲル状膜を容易に製造することができる薄さにできる。
また、前記第3層23をゲル状にして開口部31を塞ぐようにしてあり、蓋がされた状態となっているので、前記第2層22は自身で形状を保つ必要がなく、第2層22を構成する疎水性イオン液体は液体にすることができる。つまり、硬くする必要がないので、第2層22の厚みを大きくしたとしても容易に低コストで製造でき、第3層23に対してバッファーとして長期間機能するのに十分な量にすることができる。
加えて、第1層21は水溶性電解質溶液により構成されており、第2層22は疎水性イオン液体で構成されているため、第1層21と第2層22はお互いに溶けあうこともなく、たとえ混じりあったとしても自然に分離させることができ、しかも、第1層21の方が第2層22よりも比重が軽いので、参照電極100を立てておくだけで層の順番を元に戻すことができる。
また、前記第1層21を構成する水溶性電解質溶液はゲル化されており、支持管3内に隙間がないようしてあるので、参照電極100を横向けにした場合でも第1層21と第2層22が混じりあうことを防ぐことができる。
その他の実施形態について説明する。
前記実施形態では第2層を構成する疎水性イオン液体は、ゲル化されていない液体の状態であったが、ゲル化しても構わない。この場合、第3層を構成する疎水性イオン液体のゲルの硬さよりも、ゆるいゲル状にしておき、製造を容易にしておくことが好ましい。第2層を構成する疎水性イオン液体の具体的な粘度としては100mPa・s以上1000mPa・s以下の範囲にあればよい。このような範囲で第2層をゲル化しておくことにより、製造が容易であるとともに第1層と第2層とが混じり合うのを防ぐこともできる。
また、前記実施形態では、第1層を構成する水溶性電解質溶液がゲル化されていたが、液体であっても構わない。ここで水溶性電解質溶液やイオン液体がゲル化されていない液体の状態であるとは、例えば、各液体とゲル化のためのポリマーを混合していない状態のものや、ポリマーがごく少量だけ混合されていたとしても実質的に粘度等に変化が生じていない状態のものが挙げられる。またゆるいゲル状とは、例えば水溶性電解質溶液やイオン液体が単体で形状を保つことができず、ゲル化されていない液体の状態よりは、粘度が高い状態が挙げられる。
第3層は前記実施形態では、支持管の先端における突出部分だけを塞ぐように設けていたが、製造が容易な範囲でさらに内部側まで層の厚みがあってもよい。図3に示すように、第3層23を薄平板状の中央部をわずかに突出させた形状にしたゲルにしておけば、第3層23が支持管に対して引っ掛かる場所ができるので、第3層23を開口部31に対してより脱落しにくくできる。また、開口部21に多孔質材を設けておき、その孔にゲル化した疎水性イオン液体を含ませておくことで、第3層23が保持されやすいようにしてもかまわない。
加えて、前記実施形態の開口部31は、まっすぐに穴が形成してあったが、例えば、図4に示すように、前記開口部31がテーパ状になっており、支持管3の内側の開口径が先端側の開口径よりも大きく設定してあるものであっても構わない。このようなものであっても、第3層を構成するゲル化した疎水性イオン液体が脱落するのを防ぎやすくすることができる。
加えて、第1層、第2層の厚みも適宜変更可能であり、例えば、第1層と第2層に内部電極が接触するようにしてもかまわない。この場合は、温度補償等の補正手段を用いて基準電圧が変動しないようにすればよい。また本発明の参照電極と種々の測定用電極とを組み合わせることにより、イオン濃度測定やpH測定等に用いても構わない。
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
100・・・参照電極
1・・・内部電極
2・・・充填材
21・・・第1層
22・・・第2層
23・・・第3層
3・・・支持管(収容体)
4・・・試料液体

Claims (5)

  1. 内部電極と、前記内部電極と試料液体とを電気的に接続する充填材とを収容する収容体を備えた参照電極であって、
    前記内部電極と、前記試料液体と前記充填材とが接触するための前記収容体に設けられた開口部との間において当該充填材が層を形成しており、
    前記充填材が、水溶性電解質溶液からなり、前記内部電極に接触するように形成された第1層と、疎水性イオン液体からなり、前記第1層と接触するように形成された第2層と、ゲル化された疎水性イオン液体からなり、前記第2層に接触するとともに前記開口部に形成された第3層とから構成されることを特徴とする参照電極。
  2. 前記第1層を構成する水溶性電解質溶液が、ゲル化されたものである請求項1記載の参照電極。
  3. 前記第2層を構成する疎水性イオン液体が、ゲル化されていない液体である請求項1又は2記載の参照電極。
  4. 前記第1層を構成する水溶性電解質溶液の比重が、前記第2層を構成する疎水性イオン液体の比重よりも軽い請求項1、2又は3記載の参照電極。
  5. 前記第3層を構成する疎水性イオン液体の粘度が、1000mPa・s以上である請求項1、2、3又は4記載の参照電極。
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