JP5356032B2 - 眼球イオン浸透療法装置 - Google Patents

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Description

本発明は、イオン浸透による眼球組織への薬物供給に関する。
眼球イオン浸透は、典型的に、作用物質に電界を印加してそれらを一旦イオン化するとともに、限られた標的眼球組織にそれらを導くことを含む。このため、いわゆる「能動」電極である第1の電極が有効成分を含みつつ眼に隣接して配置された導電性媒質に電界を印加するとともに、いわゆる「受動」電極である第2の電極が患者の身体を介して電気回路を閉じる帰路電極としての役割を果たしている。
イオン浸透技術は、非侵襲性の技術であり、点眼液による局所的な供給(ほとんどの治療の適用において非効率的)、眼球の周囲への注射(外傷性であり、感染症、出血、白内障、網膜剥離の危険があり、急速な希釈を伴う)、レンズあるいは結膜嚢のような眼球表面に配置される薬物リザーバの形態のインサート(長期にわたる眼球の耐性が必要、排出のリスク、患者の順応性)、眼内レンズ(外科手術が必要、治療に費用がかかる、定期的な交換が必要、一旦植設すると治療の漸減あるいは促進の可能性がない)といった、眼球に物質を供給する従来技術の弱点を解決する。
米国特許第3,122,137号は、眼球の表面にではなく眼窩上に装着される、電流の供給源が組み込まれたイオン浸透アプリケータを記載している。この装置は、眼球を開いたままにしておく手段を提案しておらず、この装置を配置する精度の欠如に起因して薬物の大部分が全身循環に供給されると考えられる。
米国特許第5,522,864号および米国特許第6,101,411号に記載されているイオン浸透療法装置は、同一の弱点を有している。
米国特許第4,564,016号は、強膜上に装着される小さな装着表面(直径1mm)を有するとともに、「局所性のイオン浸透」のためのきわめて高い電流密度(50〜2000mA/cm2)を可能にする装置を開示している。これらの値は、Ophthalmology (January 1986, vol 93, number 1)の"Iontophoresis of fluorescing into the posterior segment of the rabbit eye."という表題のMauriceの論文において確認されているように、当該組織にとって有害である。
最後に、米国特許第6,154,671号は、様々な作用物質をイオン浸透によって安全にかつ正確に供給する装置の原理を開示し、眼科学におけるイオン浸透の殆どの問題に答を出している。
より最近では、米国特許第6,319,240号は、眼瞼の下方において(装着表面上の半透膜を介して)強膜上に装着される封止リザーバによる、従来の方法の改良を提案している。この装置の半透膜は、この装置の限られた厚みおよび小さな表面に起因して電極と眼球表面との間に発生し得るアーク放電効果を限られたものにすると想定される。
米国特許第6,442,423号は、薬物がゲル内に投入された、角膜に装着される装置を記載している。
これらの従来装置の全ては、いくつかの限られた組織に達するために、角膜あるいは強膜を介して物質を供給するように用いられる。
それにもかかわらず、イオン浸透療法によって実施されるいくつかの治療の効率を改善し、かつ治療の時間を減少させる必要がある。
例えば、イオン浸透療法による緑内障の治療を改善する必要がある。
緑内障は、高まった眼内圧(IOP、高眼圧症として知られている)によって特徴づけられる。
緑内障は、小柱網を介した眼房水の浸透率の低下によって生じる「開放隅角緑内障」、あるいは虹彩が前方に移動して前眼房角度が遮断されることによってあるいは先天的に生じる「閉塞隅角緑内障」に分類される。
緑内障の先天的な形態は、治療によってはめったに好転せず、より一般的には外科手術によって治療されるが、イオン浸透療法によって治療されることはない。
高くなったIOPは、β遮断薬あるいは炭酸脱水酵素阻害薬のような眼球内における眼房水の生成を減少させる薬物、または縮瞳薬あるいは交感神経興奮剤のような眼球からの眼房水の流出を増加させる薬物を投与することにより、少なくとも部分的に制御できることが知られている。
これらの薬理学的な取り組みは、毛様体による眼房水の生成を妨げることによって、あるいは小柱あるいは強膜を介した眼房水の流出を容易にすることによって、IOPの正常圧力状態への回復を助ける。
このため、ほとんどの薬物は、付随する全身作用を回避するために局所的に(点眼液によって)投与される。
IOPを低下させる様々な薬物による治療は緑内障患者にも適用できるが、これらの治療は効率あるいは副作用の面において限られたものとなっている。
加えて、従来のイオン浸透療法装置は、緑内障を治療するために特別に構成されてはいない。
本発明の第1の目的は、眼球内の組織に供給される薬物の濃度の増加に結びつくとともに、例えば緑内障の治療を改善する、眼球イオン浸透療法装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、中間体による薬物の吸収リスクを制限することにより、および/またはイオン化された薬物の誘導を高めることにより、標的組織に到達する前における薬物の損失を減少させるように構成された、眼球内組織をより充分に治療するイオン浸透療法装置を提供することによって第1の目的を達成することにある。
本発明の他の目的は、確定した量の作用物質を投与しつつ、この作用物質を投与するために必要な時間を減少させることにある。
本発明は、第1の態様において、作用物質を供給する眼球イオン浸透療法装置を提案することによってこの目的の達成を意図している。この装置は、作用物質を供給するための眼球イオン浸透療法装置であって、外壁とこの外壁によって少なくとも部分的に境界が定められる中空部分とを有するリザーバを備え、前記中空部分は、導電性の媒質およびこの媒質に含まれている作用物質を受け入れることができるとともに、眼球表面の限られた部分を受け入れることが意図されているいわゆる「装着表面」を画成する吐出口を有しており、前記装着表面は、眼球の光軸に向かって凹状の外側線によって少なくとも部分的に定められており、前記外壁は、前記外側線から前記光軸に対して外側へ向けて延びている。
本発明は、第2態様において、作用物質を供給する眼球イオン浸透療法装置を提案する。この装置は、リザーバおよび能動電極を備え、前記リザーバは、導電性の媒質およびこの媒質に含まれている作用物質を受け入れることができる中空部分を有しており、前記中空部分は第1の端部および第2の端部を有しており、前記第1の端部は、眼球表面の限られた部分を受け入れることが意図されているいわゆる「装着表面」を画成する吐出口であり、前記第2の端部は、前記第1の端部の反対側にあって前記リザーバの底部を画成しており、前記中空部分の境界を定めている少なくとも一つの壁が、前記底部の面積が前記装着表面の面積より大くなるように前記装着表面から前記底部まで延びており、前記能動電極は、分極したときに、前記媒質を介して前記眼球に電界を供給するように前記リザーバに組み合わされており、前記能動電極は、前記リザーバの底部の近傍へと延びるとともに前記装着表面の面積より大きい全体的な面積を有している。
他の実施形態において、この眼球イオン浸透療法装置の装着表面は、少なくとも一つの眼瞼の外側表面上への配置に適するように構成され、眼瞼を介して眼球表面の限られた部分を受け入れる。好ましくは、眼瞼は閉じられる。能動電極に供給されるエネルギーは、媒質を介してかつ閉じた眼瞼を介して眼球へと電界を供給し、それによって閉じた眼瞼を介して作用物質を眼球に供給するように調整することができる。
図1を参照すると、眼球イオン浸透システムが備えているイオン浸透療法装置は、能動電極10と、(この装置における外壁24の内側の中空部分21として画成された)リザーバ20と、後側部分70、リザーバ20に収納された媒質35に含まれている少なくとも一つの作用物質30と、患者の身体を介して閉じた電気回路を可能とする受動電極40と、電極10および40に直流を供給する電源300とを有している。
電位差を生じさせる電源300は、この眼球イオン浸透療法装置の内側に収容され、あるいは通常の電線60を介してこの眼球イオン浸透療法装置から離した状態で組み合わせることができる。エネルギー供給源は、電位差を生じさせるために、(装置の表面に応じて)20mA/cm2を越えない、好ましくは10mA/cm2を越えない低い電圧の安定した直流を供給する。
能動電極10は、そこに取り付けられることにより、あるいは(例えば電気メッキによって)その内部に直接形成されることにより、リザーバ20の底部3の近傍に配置される。あるいは、リザーバ20と電極10および後側部分70から形成される組立体とを別部品とし、この組立体をイオン浸透を実施する直前にリザーバ20上に配置する。
能動電極10は、表面、(短絡の際のループワイヤのような)ワイヤ、均一場を供給するためにパターニングされた格子あるいは配列、または表面(すなわちフィルムあるいはプレート)から構成することができる。能動電極10を表面から構成する場合、その形状はリザーバ20の中空部分21の底部3の形状と実質的に同一とすることができる。
能動電極10は、リザーバ20の内容物と電気的に密接な関係に配置される。能動電極10は、リザーバ20の底部3(図1を参照)に配置し、または仏国特許公開FR2869531号公報に記載されているような電極10上に形成された保護層によって、あるいは能動電極10とリザーバ20との間に設けられた端部壁によってリザーバ20の内容物から分離することができる。
能動電極10は、治療する組織上におけるより高い効率を有するように、リザーバ20の装着表面2に対して平行に配置することができる。
選択的に、電極10は、眼球500の表面から実質的に一定な距離を保つために、眼球の凸面に対して相補的な予め定められた凹面形状を有する。
能動電極10は、作動中に約10mA/cm2以下の電流密度を呈するとともに、概ね10分あるいはそれ以下の時間にわたって分極する(すなわち電圧あるいは電流供給源によって活性化されあるいはエネルギーが与えられる)ように構成される。
能動電極10は、リザーバ20の底部3あるいは端部壁に直接形成することができる。この目的のため、以下の技術の一つを用いることができる。
−例えば金属製のフィルムを形成するための、導電材料によって導電層を形成する電気メッキ;
−導電層を成形するための、導電材料が充填されたインクの付着;
−導電層を形成するための、導電材料が充填された固体薄膜(例えばアセテート)の蒸着;および
−導電層を形成するための、それぞれ導電材料が充填されたポリマーのオーバーモールディング。
保護層は、能動電極を保護しあるいは作用物質30を金属不純物から保護するために、仏国特許公開FR2869531号公報に記載されているように、能動電極10上に選択的に形成される。
この装置は、電流に起因した眼球組織のいかなる損傷をも防止するべく、能動電極10と眼球表面との間の距離が有利に選択されるように配置される。これにより、この距離は眼球表面から4mmあるいはより大きなものとなり、本発明の能動電極10の電流は有利には10mA/cm2を越えず、かつ涙によるフィルム機能を維持するために装着時間は好ましくは10分を越えない。
リザーバ20内に収容される媒質35は、好ましくは、作用物質30を一時的に保持することができる材料から製造される。媒質35は、例えば天然あるいは合成のゲル部材や、眼球への装着に対して幾何学的および組成的な適合性を有した合成発泡体のような、溶液内の作用物質30あるいは単一の溶液を受け入れる複数の細網構造を有した天然あるいは網状の要素から構成することができる。水あるいはヒドロゲルのような導電性の媒質はまた、リザーバ20から眼球500の表面へと電界を導きかつ導通させるためにリザーバ20内に配置することができる。
作用物質30は好ましくは媒質35の1mlについて約0.1mg〜約10mgの濃度の薬剤あるいは薬品であり、かつこの媒質35のpHは約6.5〜約8.5の範囲とすることができる。
媒質35には、電解質、安定性添加物、薬剤保存添加物、pH調整緩衝剤、ポリエチレングリコールを付加した薬剤、および組み合わされたときに眼球内におけるその半減期あるいは生物学的利用能を増大させる任意の他の薬剤のような、補足的な薬剤を含めることができる。
作用物質30は、単独でイオン化し、あるいはそのイオン化を容易にする形態である。したがって、作用物質は、ポリマー、デンドリマー、ポリマーナノ粒子や微小球体、あるいはリポソーム(リポソームの壁ではなく水溶性コア内に含まれる作用物質)といった終末イオンを与える添加物に接合することができる。作用物質のイオン化を改善する技術の様々な他の実例は、"Progress in retinal and eye research" from Le Bourlais et al. (Vol. 17, No. 1 , p 33-58, 1998; Ophthalmic drug delivery systems - recent advances)"、"Recent developments in ophthalmic drug delivery" from Ding (PSTT Vol. 1 , No. 8 November 1998)、および"European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics" from Lallemand et al. (2003, "Cyclosporine A delivery to the eye: A pharmaceutical challenge")に見い出すことができる。
受動電極40は、(身体を介して電流の回路を「閉じる」ために)能動電極10の近傍、例えば耳、額、首、あるいは頬に配置することができる。能動電極10と同様に、受動電極40は、作用物質30が陽イオン性であるか陰イオン性であるに応じて陽極あるいは陰極から構成することができる。
リザーバ20の中空部分21は、眼球500の表面の限られた部分を受け入れることが意図された装着表面2において開口している。
装着表面2は、そこから外壁24が発散するようにして延びる凸状に湾曲した外側線4によって少なくとも部分的に境界が定められている(図3を参照)。
選択的に、この外側線4は実質的に円、あるいは円に似た輪とすることができる。
外壁24は、眼球500の光軸1に対して実質的に一定な傾斜角αを有するように設計することができる。外壁24は、装着表面2から離れるにつれてその断面が次第に大きくなるテーパ状に境界が定められている。
選択的に、装着表面2は、そこから内側壁26が延びる内側線5によって少なくとも部分的に境界が定められている(図4を参照)。この内側線5は、円弧、ループ、あるいは円のような、実質的に凹状とすることができる。
内壁26は、光軸1に対して収束するように、平行に、あるいは発散するように内側線5から延びている。内側壁26は、光軸1に対して実質的に一定な傾斜角βを有するように設計することができる。
図2A〜図2Eは、完全なリング(図2A)、円板(図2b)、リングの一部を構成する形状(図2c)、楕円(図2d)、あるいは目の形(図2E)といった、リザーバ20の装着表面2に付与することができる特定の形状を示している。作用物質30を受け入れるべく選択される眼球の領域に応じ、他の形状を選択することもできる。これらの異なる形状は、治療する眼球表面の形状および面積に近くあるいはより大きくなければならない。特別なケースでは、これらの形状は治療する眼球の表面を複製したものである。
リザーバ20はまた、電極10に隣接する表面3によってその底部の境界が定められている。
リザーバ20の壁は、プラスチック材料、シリコーン材料、ポリマー、あるいは他の同等な材料といった電気的に絶縁性の材料から製造される。
図3は、光軸1の周囲にテーパ状の形状を有したリザーバ20の斜視図を、内壁26を省略して示している。
図4は、それぞれ角度「β」および角度「α」で光軸1から発散するテーパ状の内壁26および外壁24を有したリザーバ20の斜視図を示している。中空部分21は、内壁26と外壁24との間に配置されている。
あるいは、リザーバ20は前記テーパ状の形状の一部分としてその境界が定められる。この部分は、第1に、図4のリザーバ20を(図4に示したように、表面101,102に沿って)横方向に2つの部分に切断することによって見い出すことができる。第2に、これらの2つの部分のうちの一つを閉じるために、いくつかの追加の壁が切断面101,102に沿って設けられる。例えば、図2Cに示されているような装着表面2を有したリザーバ20が得られる。
あるいは、この最後のリザーバ20は、それを一体にモールド成形することによって得ることができる。
眼球500の表面によって覆われる装着表面2の形状および面積は、リザーバの実施容易性の制約および治療する眼内組織の性質によって決めることができる。
したがって、眼球500のうち作用物質30の投与にとって有用な部分への作用物質30の分配を最大にするべく、眼内組織に作用物質30を供給する最も大きい装着表面2を選択することができる。
あるいは、眼球500の特定の部分への作用物質30の投与を最適化し、作用物質30の損失を限定して治療する眼球組織内における作用物質30の濃度を最大にするために、眼内組織のその部分に作用物質30を供給する限られた装着表面2を選択することもできる。そして、薬物の投与は眼内組織に正確に目標が定められ、全身での吸収が回避される。
例えば患部組織が角膜内にあるいは虹彩内にある場合、装着表面2は、角膜501の全体を受け入れるように選択することができるが、虹彩に到達するための追加的な経路であるに毛様体に作用物質30を投与するために強膜502の外周部にまで延びることができる。
前方角膜上皮の除去は、残存する角膜組織(すなわち間質および後方角膜上皮)を作用物質30に対してより透過性のあるものにするために、予め実施することができる。
他の実施例では、患部組織が網膜内にあるいは脈絡膜内にある場合、リザーバ20から作用物質30を受け入れることが意図される眼球500の表面上に選択される眼球領域は、作用物質30にアクセス可能な強膜502の全体とすることができ、強膜のうち眼瞼の下方に位置する部分にまで延びることができる。
この装置のリザーバ20は、
−角膜501単独の少なくとも一部、
−強膜502の少なくとも一部および角膜501の少なくとも一部、あるいは
−強膜502単独の少なくとも一部
を介して作用物質30を投与するのに適するように構成することができる。
角膜501は、眼球の全領域の約5%を占めるとともに、角膜輪部503において強膜502に接合している。人間の場合、角膜輪部503の直径は約11.7mmである。
本発明の好ましい実施形態において、この装置は、限られた標的組織、すなわち強膜502よりも非常に重要な眼球の一部である角膜501に到達するために、強膜502の少なくとも一部を介して作用物質30を投与するように構成される。
加えて、強膜502は、大径粒子に対して角膜501よりも透過性がある。
(媒質35および有効成分30が充填される空間を定めている)中空部分21に付与される容積および形状は、イオン化した有効成分30が高められた効率および増加した濃度で限られた標的眼球組織に到達するように、(能動電極10によって供給される)電界が電極10から装着表面2に導かれるように設計される。
例えば、図5を参照すると、図3の装置が作動状態で示されているが、この装置は、能動電極10によって供給される電界Eを導くことができる導電性の溶液あるいはゲル35を含んだリザーバ20を有している。この導電性の媒質35は、例えば水溶液あるいはヒドロゲルとすることができる。
このリザーバ20は、眼球500の光軸1の周りでテーパ状であり、その中空部分21の断面積は眼球500に近づくにつれて次第に減少する。能動電極10は、円板状であって湾曲しており、かつリザーバ20の底部3と実質的に同じ面積を有しているので、能動電極10の面積「Se」は、装着表面2の面積「Sa」よりも大きい。
したがって、リザーバ20内に含まれているイオン化物質30上に電極10で生じた電界Eによって負荷される力は、クーロンの法則によって定まり、かつ電荷および電界の強度に依存するので、同一の長さ「L」および同一の「Sa」を有している従来技術から知られたている円筒状のリザーバに比較すると、イオン化物質30の電荷および迅速さは増加する。
電界強度が比率「Se/Sa」に比例して増加するので、作用物質30を同じだけ供給するためにこの装置を眼球上に残存させる時間が減少し、あるいは同じ装着時間において作用物質30が供給される量は既知のイオン浸透療法装置よりもきわめて多い。
さらにまた、リザーバ20の長さ「L」は十分に長く選択されているので、選択された媒質35が電極10から装着表面2へと電界Eを導くと、中空部分21の断面に沿って実質的に増加した束密度が得られる。特にリザーバ壁24と眼球表面とが接触する箇所において漏出する電流がほとんどないかあるいは全くないようにしつつ、眼球500の表面において全体的に真っ直ぐでかつ収束する電界Eが得られ、装着表面2において眼球500が損傷を受け得る電流限界を上回ることがない。
したがってリザーバ20は、能動電極10が、眼球500に対向しているリザーバ20の装着表面2から、「Sa」の最も長い直線寸法のほぼ3倍あるいはさらに離れて位置するように構成することができる。
本発明の装置を用いることにより、眼球内組織における作用物質30の濃度が増加しかつ最適化される。
図6を参照すると、図4の装置と同じ原理が用いられており、その装着表面2は光軸1の周りに環状であって、装着表面2の内輪から延びるテーパ状の内壁26は、装着表面2の外輪から発散して延びる外壁24の傾斜角「α」より小さい傾斜角「β」で発散している。
能動電極10が環状であって、リザーバ20の環状の底部3と同一の面積を有しているので、能動電極の面積「Se」は装着面積「Sa」よりも大きい。
このリザーバ20においては、図5を参照して前述したのと同一の効果および結果が、環状の装着表面2に対向する眼球組織に認められる。
本発明の他の実施形態において、図7は、例えば先に説明したように緑内障の問題を処理するために毛様体510にいくつかの作用物質を供給する特別の装置を示している。
この装置は、使用の際、光軸1の周りに環状な装着表面2と、装着表面2の内輪から延びるテーパ状の内壁26と、装着表面2の外輪から延びるテーパ状の外壁24とを有しており、両方の壁24,26はそれぞれ光軸1に対し同一の傾斜角「α」で全体的に発散している。
これにより、リザーバ20の全体が光軸1に対して角度「α」で傾斜していて、中空部分21が実質的に一定な断面を有していると考えられる。
装着表面2の内輪の内径「di」、および装着表面の外輪の外径「do」は、装着表面2が毛様体510の前方(投影方向)にあるように選択される。
模式的に示されている眼球500が、角膜501、強膜502、レンズ504、虹彩508、毛様体510、脈絡膜505、網膜506、および視神経507を有していることが判る。
毛様体510は、前房ひだ状毛様体511(あるいは「毛様体ひだ部」)と、後房扁平毛様体512(あるいは「毛様体扁平部」)とから構成されている。
前房ひだ状毛様体511は、前後方向の寸法が約2.5mmであって、毛様体510の筋肉を含んでいる。
後房扁平毛様体512は、幅が鼻部において約3mmであるとともに側頭部において約4.5mmであり、前房ひだ状毛様体511から網膜506の前房部分の始まりに近い領域へと延びている。
図7を参照すると、この装置は前房ひだ状毛様体511を特別に治療するために設計されており、約12mmの「di」および約16mmの「do」を有した装着表面2を備えて、約2mmの幅のリザーバ20をもたらしている。
あるいは毛様体510の全体を治療するために、「di」を約12mm、「do」を約21mmとすると、約4.5mm幅のリザーバ20が得られる。
能動電極10は、環状であってリザーバ20の底部3と実質的に同じ面積を有し、外壁24および内壁26に対して垂直である。
ここで注目されるべきことは、能動電極10の外径をDeとし、内径をDiとすると、
(De−Di) ≒ (de−di)
であり、かつ
(De+Di) > (de+di)
であるから、
(De−Di)(De+Di) > (de−di)(de+di)
であり、したがって、
(π/4)(De―Di) > (π/4)(de―di)である。
これにより、図7の装置は、装着表面2の面積よりも大きい面積を有した能動電極10を備えている。
角度「α」は毛様体510への装着のために選択されており、このリザーバ20は眼球表面の局所に対して実質的に垂直である。この角度「α」は、約30度〜約40度の間で選択することができる。
したがって、電界および電流は毛様体510に対して実質的に垂直に導かれ、電流の強さが適している場合には、前房ひだ状毛様体511内における作用物質30の濃度が最適化される。
毛様体510のイオン浸透治療によって緑内障の問題を処理するために、以下の作用物質30を用いることができる。
−ベータ受容体遮断薬:ベタキソロール、レボブノロール、チモロール、カルテオロールベフノロール、メチプラノロール
−αアドレナリン性作動薬:ブリモニジン、アプラクロニジン、ジピベフリン
−炭酸脱水酵素阻害薬:ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミド、メタゾルアミド
−非特異的アドレナリン性作動薬あるいは交感神経様作動薬:エピネフリン、フェニレフリン、ジペベフリン、アプラクロニジン
−アセチル−コリン作動性作動薬(抗コリンエステラーゼ薬)あるいは副交感神経作動薬:ピロカルピン、カルバコール、アセクリジン、エコチオパート
−プロスタグランジン類似体:ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト。
これらの薬理学的な取り組みは、毛様体510による眼房水の生成を阻止することによって(最初の3つの物質)、あるいは小柱若しくは強膜を介した眼房水の流出を容易にすることによって(最後の3つの物質)、IOPの正常圧力状態への回復を助ける。
図8は、例えば先に説明したように緑内障の問題を処理するための、毛様体510にいくつかの作用物質を供給するための他の装置を示している。
この装置は、使用の際、眼球500の光軸1の周りに環状の装着表面2と、装着表面2の内輪から延びる円筒状の内壁26と、装着表面2の外輪から光軸1に対して傾斜角「α」で延びるテーパ状の外壁24とを備えている。
そして、中空部分21は、図6を参照して既に説明したように、眼球500の表面から次第に増加する断面を有している。
能動電極10は、環状であり、かつリザーバ20の環状の底部3と実質的に同一の面積を有している。
したがって、能動電極10の面積「Se」は装着表面2の面積「Sa」よりも大きい。
加えて、能動電極10は、外壁24あるいは内壁26に対して垂直な表面を有している。また、その位置は装着表面2に対して平行に選択することができる。
装着表面2の内輪の内径「di」および装着表面2の外輪の外径「do」は、装着表面2が毛様体510に対して前方(投影方向)にあるように選択することができる。
この装置は、約17mmの「di」および約21mmの「do」を有して約2mm幅の装着表面2を有しているリザーバ20によって、特に後房扁平毛様体512を治療するために設計されている。
あるいは「di」を約12mm、「do」を約16mmとして、約2mmの幅のリザーバ20をもたらし、前房ひだ状毛様体511を治療する。
外壁24の角度「α」は、毛様体510に対して後者が実質的に垂直であるように選択される。この角度「α」は、30度〜約40度の間で選択することができる。
この構成により、電流は、後房扁平毛様体512に対してより垂直に導かれ、図6を参照して説明したものよりも高い強度を有する。
図9を参照すると、本発明による特別な環状の眼球イオン浸透療法装置が示されている。この装置は、貫通開口を有して環状の構造をもたらすとともに、断面が環状であるリザーバ20の底部3に配置された能動電極10を備えている。
先に説明したように、このリザーバ20は、眼球500の限られた眼球領域をカバーするように意図された装着表面2に沿って延びている。この装置から作用物質30を受け入れることが意図されている眼球領域は、後述するように、少なくとも強膜502の一部であり、かつ特に毛様体510あるいはその一部である。
リザーバ20の中空部分21は、ここでは2つの部分に分離されている。
−外壁24の前側部分24bおよび内壁26の前側部分26bによって境界が定められている、リザーバ20の前部(眼球500に最も近い前側の部分)に配置された第1の容器22。
−外壁24の後側部分24aおよび内壁26の後側部分26aによって境界が定められている、リザーバ20の後部に配置された第2の容器23。
第1の容器22は作用物質30を含む媒質35を受け入れることが意図されており、かつ第2の容器23は水溶液あるいはヒドロゲルに類似の導電性材料37を受け入れることが意図されている。第1および第2の容器22,23は、媒質37に含まれている導電成分には透過性を有するが第1容器22内の作用物質30には非透過性を有する半透膜80によって分離されている。
媒質35の濃度は、作用物質30の容積を最小限に減少させるとともにその含有物の正確な投与を可能にするために制限されており、イオン浸透の制御およびそのコストを改善している。
好ましくは、外壁24および内壁26は、電極10の表面から延びて装着表面2に接近するにつれて次第に減少する環状の断面を有した中空部分21(すなわち第2の容器23および第1の容器22)をその間に画成している。
さらにまた、第2の容器23には好ましくは十分な長さが選択されて、その内部にある導電性媒質37が能動電極10から第1の容器22を介して装着表面2へと真っ直ぐな電界を導くようになっている。これにより、電流の漏れが制限される。
先に説明したように、中空部分21の長さは、装着表面の最も長い直線寸法の3倍に近いあるいはより大きい値を選択することができる。
装着表面2は、選択的に、角膜501の直径をDとしたときに、D<di≦1.2Dとなる平均内径diを有する。
このような場合、イオン浸透は主として強膜502を介して生じる。
装着表面2は、選択的に、1.3D<de≦1.8Dとなる平均外径deを有する。
光軸1に対する外壁24の全体的な傾斜角は、10度〜80度の範囲、特に約30度〜約40度の間とすることができる。
光軸1に対する内壁26の全体的な傾斜角は、0度〜80度の範囲、特に約30度〜約40度の間とすることができる。
後方外壁24aの一端は、第2容器23の底壁を形成する水平壁(図示せず)によって、後方内壁26aの一端に接続することができる。そして能動電極10は、その底壁上に配置されあるいは形成される。
変形例では、能動電極10は、(図7に示したように)リザーバ20の端部壁を構成するように、第2の容器23の後方壁面24aおよび26aを閉じるべく配置されあるいは形成される。
いずれにしても、リザーバ20は、その底部3の面積が装着表面2のそれより大きくなるように設計することができる。能動電極10の面積「Se」は装着表面2の面積「Sa」より大きく、前述した利点を有している。
能動電極10は、選択的に、適切な電源(図示せず)に接続されたときに電力を供給する電線60の接続部50をリザーバ20の外側にずらすことができるようにするオフセット部分15を有し、このオフセット部分15の一端は電極10に電気的に接続され、かつこのオフセット部分15の他端は電線60を受け入れる。それによって、電気的な接続から発生し得る有害な影響(ジュール効果による局部的な加熱、局部的な漏れ電流...)を回避することができる。
加えて、この装置は、この装置全体を保持するのに十分に補強されあるいは強固な後側部分70を有しており、眼球500上に配置されたときにリザーバ20を大きく変形させることなく、かつ能動電極10の形状を維持する。
能動電極10は、装着表面2に対して実質的に平行とするために凹状となっている。
この場合、能動電極10は後側部分70とリザーバ20の間に介在されて、強固な後側部分70に当接する。
したがって、リザーバ20が所定の位置にあるときには、眼瞼およびユーザの手によって負荷される機械的な応力にもかかわらず、能動電極10の表面と眼球500の表面との間の距離をほぼ一定に維持することができる。
能動電極10によって形成されるリングは、眼瞼あるいはユーザによって負荷される圧力下においてその形状を保つことができる。それによって、電界に起因する眼球組織のいかなる損傷をも防止するために、能動電極10と装着表面2との間の距離を限界距離よりも大きく保つことができる。この限界距離は(前述したように)装着表面2から約4mmに選択することができる。さもなければ、能動電極10と眼球組織との間に確立される好都合な電流線によって短絡の危険が生じるからである。
外壁の前側部分24bおよび内壁の前側部分26bは、(放電の影響によって)装置の作動を妨げ得る外側の汚染物質および涙液に対する障壁として作用するために軟質の材料からできている。
内壁の前側部分26bの自由端は、外壁の前側部分24bの自由端に対して選択的にわずかにオフセットしており、リザーバ20の(これらの自由端の間の)開口が、眼球500の表面の凸状の湾曲形状に対して全体的に相補的な形状の装着表面2を画成するようになっている。
側壁の前側部分24b,26bの柔軟な部分は、眼球500と接触させるのに高度に適しているポリジメチルシロキサン(PDMS)のシリコンから製造することができる。
しかしながら、その柔軟性は間違いなく、その形状を幾何学的に正確に保つことを可能としない。
これは、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)のような材料、あるいは機械的な拘束下においてその初期形状を維持するために適した比抵抗(弾性率/重量配分比)を有する任意の強固なポリマー材料で、強固なあるいは補強された後側部分24a,26a,70(および側壁の前側部分24b,26b)を製作することが適していることの理由である。
PMMAは、能動電極10の形状を保つために適した強固な材料である。しかしながら、この材料は(眼球の傷つきやすい粘液膜に対してあまりに外傷性であり)、眼球500との接触が意図されている側壁の前側部分24b,26bを作ることには適していない。
したがって、これらの2つの材料の組合せは、眼球イオン浸透療法に完全に適した装置構造を提供する。
リザーバ20の強固な後側部分70と内壁および外壁の後側部分24a,26aは、例えば機械加工、モールド成形、真空鋳造、あるいはポリスチレン(PS)、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、PMMA、ポリウレタン(PUR)のような強固なあるいは半硬質のポリマー材料の加工に適したその他の方法によって作ることができる。
部分を製造する間に、リザーバ20に作用物質30を充填するためのモールド成形手段、あるいはまたリザーバ20内の作用物質30を循環させる手段を設けることができる。例えば、作用物質30を供給しあるいは循環させるチューブであり、選択的に排出チューブ(図示せず)を設けることもできる。
能動電極10は、例えば前述した方法の一つを用いて、リザーバ20の底部3の表面上に蒸着することができる。
最後に、柔軟な側壁の前側部分24b,26bは、例えばポリウレタンタイプのエラストマポリマー、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、シリコン(Si)、あるいはスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)といったポリマー材料から製造するとともに、例えば接着剤、(例えば、超音波、回転、ミラーによる)ヒートシール、あるいはオーバーモールディングといった任意の適切な方法を用いて組立体に取り付けることができる。
リザーバ20の柔軟な側壁の前側部分24b,26bはまた、最も厚い部分から最も薄い部分へと、かつ最も柔軟な部分から最も硬い部分へと、硬度が次第に変化する材料の部分を逐次追加し、リザーバの硬度が装着表面2から離れるにつれて次第に増加するように作ることができる(下記および図10A〜図10Cを参照)。
区画を画成するための内壁をリザーバ20内に選択的に設けるとともに、能動電極10を能動電極の各部分に小分けし、能動電極の各部分はそれ自身の区画内への配置に適するように構成する。異なる区画をそれぞれ占めている異なる作用物質30を用いて、同時にあるいは異なる方法で投与することにより(その場合、各電極部分はそれ自身が電流を制御する)、特別な治療を実施することができる。有利には、薬物30を充填しあるいはまた循環させる手段を各区画に設ける。
図10A〜図10Cを参照すると、側壁の前側部分24b,26bのいくつかの実施形態が示されており、それぞれ装着表面2から離れるにつれて次第により大きくなる断面を有している。
図10Aを参照すると、側壁の前側部分24b,26bは、強固な側壁の後側部分24a,26aの厚みに達するまでリザーバ20の装着表面2から次第に傾斜する斜面を形成している。
図10Bを参照すると、側壁の前側部分24b,26bが形成する前壁は、リザーバ20の装着表面2から離れるにつれて厚くなるリップ状の断面であり、かつその側面は凹状となっている。
図10Cを参照すると、側壁の前側部分24b,26bは、(リザーバ20の装着表面2から離れるにつれて)次第に厚くなる断面の引き続く層から構成されている。これらの層の硬度は、選択的に、次第に増加させることができる。
能動電極10は、(図11および12に示すように)円筒状の外壁24に対して平行とすることもできるし、凸状の眼球表面に対して凹形に撓ませることもできる。後者の場合、能動電極10の撓みは、能動電極10と眼球500の表面との間が全体的に等距離となることを保証するように選択することができる。
図11および図12を参照すると、本発明のイオン浸透療法装置の他の実施形態が示されているが、リザーバ20の中空部分21の断面は、眼球500の光軸1に対する内壁26の傾斜に起因して装着表面2から増加するものの、外壁24は全体的に円筒状となっている。内壁26の傾斜は、眼球500から離れるにつれて内壁26が収束するテーパ状となるように選択される。
図11を参照すると、内壁26はリザーバ20の底部3に接触している。また、中空部分21の断面は光軸1に沿った全体にわたり完全に環状となっている。
あるいは、図12を参照すると、内壁26は、1つの点または1つの表面29において接合され、リザーバ20の底部3には接触していない。中空部分21の断面は、この点あるいは表面の接合部29から装着表面2の側では環状であり、かつこの点あるいは表面の接合部29からリザーバ20の底部3の側には円板状となっている。
本発明のイオン浸透療法装置のこの実施形態においては、能動電極10の面積「Se」が装着表面2の面積領域「Sa」より大きくなっている。このことは、前述した利点を有している。
試験No. 1
譲受人は、ウサギに対し、図7に示されている(毛様体を治療するための内壁26および外壁24が同一の傾斜角35度を有している)イオン浸透療法装置、および局所的な手段(典型的に片方の眼に薬品のいくつかの液滴の投与)による、いくつかの比較試験を行った。
各試験においては、用いた媒質35(水)および投与した作用物質30(3H−クロニジン)の濃度は実質的に同一であった(作用物質30については0.25%体積濃度。すなわち100mlの溶液に含まれている物質30のグラム数)。
局所的な条件は、片眼上に0.05mlであった。
イオン浸透の条件は、約2mAの強さの電流を約4分間供給した。装置は、0.5mlの溶液を含んでいた。
ウサギの眼球組織は、作用物質30を投与した後、0.5時間、1時間および6時間後にサンプリングした。サンプリングした組織は毛様体を含んでいる。
これらの眼球組織内における作用物質30の濃度は、事前に放射能の標識が付けられていた作用物質30からの放射線の放射によって測定した。計測単位は、組織についてng/gである。結果は、表1に示されている。
Figure 0005356032
注目されるべきことは、(これらの2つの技術のそれぞれの誤差限界を考慮すると)電流なしの場合は、イオン浸透(0mA)の有効性が局所的な投与と同じということである。この条件は互いに同じであると考慮することができる。
それにもかかわらず、2mAを負荷しつつイオン浸透療法装置を用いたときには、局所的な方法を用いた場合に比較し、少なくとも3倍の作用物質30が毛様体510に見い出された。
したがって、本発明のイオン浸透技術は、毛様体510の治療においては局所的な方法よりも明らかに効率的であり、緑内障の治療においてもより良好な結果を与えるはずである。
試験No. 2
譲受人は、ウサギについて、(従来技術において知られている)円筒状の外壁および内壁を有した第1のイオン浸透療法装置、および図7に示されている(内壁26および外壁24が同一の傾斜角でテーパ状の)第2のイオン浸透療法装置により、いくつかの比較試験を行った。
2つの装置は、
−装着表面2、および
−能動電極10と装着表面2との間の距離が、
同一となるように設計された。
第2の装置の能動電極10の面積は、第1の装置のそれより約3倍大きかった。
加えて、各比較試験において用いた媒質35(緩衝剤なしの水)および投与した作用物質30(デキサメタゾンリン酸二ナトリウム)は同じものであり、その濃度も実質的に同一(作用物質30について40mg/ml)である。
各比較試験においては、イオン浸透の条件は同一であった(2mA〜4分)。
イオン浸透の後、ウサギの眼球組織をサンプリングした。サンプリングした組織には脈絡膜および網膜が含まれる。
次いで、これらの眼球組織における作用物質30の濃度を測定した。
第2の装置を用いたときには、第1の装置を用いたときに比較して、少なくとも3倍の作動物質30が組織内に見い出された。
特に、濃度の増加は脈絡膜で3.7倍、網膜で3.4倍であった。
したがって、第2の装置は、第1の装置よりも明らかに優れている。
これらの主な改善は、第1の装置と第2の装置との間における能動電極30の面積の増加(面積が約3倍)によってのみ説明することができる。
均等物
本発明の特定の実施形態に関連して本発明を説明したが、更なる変更も可能であることは理解される。さらにまた、この出願は、本発明が関連する分野において公知のあるいは慣習的な実施の範囲に含まれる本発明の開示からの逸脱を含めて、本発明のいかなる変更、使用あるいは改作をもカバーすることが意図されており、それらは添付の請求の範囲に包含される。
本発明の他の特徴、目的および利点は、次の図面によって例示されている以下の説明を読むことによって明らかとなる。
眼球上で作動する本発明のイオン浸透システムを模式的に示す断面図。 図2A〜図2Eは、本発明の装置を眼球上に適用する表面の様々な形状および領域を示す図。 本発明の装置の第1実施形態を示す斜視図。 本発明の装置の第2実施形態を示す斜視図。 眼球上に適用された第1実施形態の装置の縦断面図。 眼球上に適用された第2実施形態の装置の縦断面図。 眼球上に適用された第2実施形態の特別な装置の縦断面図。 眼球上に適用された第2実施形態の他の特別な装置の縦断面図。 第2実施形態の他の特別な装置の縦断面図。 図10A〜図10Cは、本発明の眼球イオン浸透療法装置のリザーバにおける柔軟部分の異なる形状を示す図。 本発明の装置の第3実施態様の2種類の装置をそれぞれ示す図。 本発明の装置の第3実施態様の2種類の装置をそれぞれ示す図。

Claims (44)

  1. 作用物質を眼球に供給するための眼球イオン浸透療法装置であって、
    前記眼球へ電界を供給する能動電極と、
    截頭円錐形状を有する外壁とこの外壁によって少なくとも部分的に境界が定められる中空部分とを有するリザーバであって、電界の入口及び吐出口を有し、前記電界の入口及び前記吐出口は、それぞれ所定の直径を有し、前記電界の入口の直径は前記吐出口の直径より大きい、リザーバとを備え、
    前記吐出口は、眼球表面の予め決められた部分を受け入れるための装着表面を画成し、前記能動電極の面積(「Se」)は、前記装着表面の面積(「Sa」)より大きく、これにより比率「Se/Sa」に比例して増加した電界強度を提供するようになっており、前記装着表面は、前記外壁のうち前記眼球に接触する端部によって囲まれた部分における表面であり、
    前記装着表面は、眼球の光軸に向かって凹状の外側線であって、前記装着表面の外周縁に位置する外側線によって少なくとも部分的に定められており、
    前記外壁は、前記外側線から前記光軸に対して外側へ向けて前記電界の入口方向に延び、 前記中空部分の境界を定める前記外壁の一部分は、前記光軸から実質的に離れる傾斜角を有することを特徴とする眼球イオン浸透療法装置。
  2. 前記外側線が環状であることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  3. 前記外側線が実質的に円形であることを特徴とする請求項2に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  4. 前記外壁が、前記光軸に対して実質的に一定な傾斜角を有していることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  5. 前記外壁が、前記光軸に対して実質的に一定な傾斜角を有していることを特徴とする請求項2に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  6. 前記外壁が、前記光軸に対して実質的に一定な傾斜角を有していることを特徴とする請求項3に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  7. 前記外壁が、前記光軸の周りにテーパ状であることを特徴とする請求項6に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  8. 前記装着表面はまた、内側線によってその境界が定められており、
    前記リザーバがこの内側線から延びる内壁を有しており、
    前記中空部分が前記内壁と前記外壁との間に位置していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  9. 前記内側線が前記光軸に向かって凹状であることを特徴とする請求項8に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  10. 前記内側線が環状であることを特徴とする請求項9に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  11. 前記内側線が実質的に円形であることを特徴とする請求項10に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  12. 前記内壁は、前記眼球イオン浸透療法装置が眼球上に装着されたときに前記内側線から眼球の光軸に対して外側へ向けて延びることを特徴とする請求項8に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  13. 前記内壁が、前記光軸に対して実質的に一定の傾斜角を有していることを特徴とする請求項12に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  14. 前記内壁が、前記光軸の周りにテーパ状であることを特徴とする請求項13に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  15. 前記内壁は、前記内側線から前記光軸に対して外側へ向けて延びていることを特徴とする請求項9に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  16. 前記外壁が、前記光軸に対して実質的に一定な傾斜角を有していることを特徴とする請求項15に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  17. 前記内壁が、前記光軸の周りにテーパ状であることを特徴とする請求項16に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  18. 前記装着表面は、眼球の角膜の少なくとも一部をカバーするように設計されていることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  19. 前記装着表面は、眼球の角膜の少なくとも一部および眼球の強膜の少なくとも一部をカバーするように設計されていることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  20. 前記装着表面は、眼球の強膜の少なくとも一部をカバーするように設計されていることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  21. 前記装着表面は、眼球の毛様体の少なくとも一部を投影方向にカバーするように設計されていることを特徴とする請求項20に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  22. 前記装着表面は、眼球の前房ひだ状毛様体の少なくとも一部を投影方向にカバーするように設計されていることを特徴とする請求項21に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  23. 前記装着表面は、眼球の後房扁平毛様体の少なくとも一部を投影方向にカバーするように設計されていることを特徴とする請求項21に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  24. 前記外壁が、約30〜約40度の範囲の傾斜角で前記光軸の周りにテーパ状であることを特徴とする請求項21〜23のいずれか一項に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  25. 前記内壁は、前記光軸の周りにテーパ状であり、実質的に約0度で前記光軸に対して実質的に一定な傾斜角で前記装着表面から前記光軸に対して外側に延びていることを特徴とする請求項8に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  26. 前記リザーバは、作用物質および導電性の媒質を収容するための第1の容器と、導電成分収容するための第2の容器とを有しており、
    前記第1および第2の容器は、前記導電成分に対しては透過性を有するが前記作用物質に対しては非透過性を有する半透膜によって分離されていることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  27. 前記リザーバの前記外壁は、眼球上に装着される柔軟な前側部分を有しており、
    前記リザーバの前記外壁は、前記柔軟な前側部分から延びる補強されたあるいは強固な後側部分を有していることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  28. 前記外壁の柔軟な前側部分は、前記装着表面から次第に離れるにつれて次第により強固になることを特徴とする請求項27に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  29. 前記外壁の柔軟な前側部分は、前記装着表面から次第に離れるにつれて次第により厚くなり、それによって前記次第に変化する剛性を達成することを特徴とする請求項28に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  30. 前記リザーバ壁の柔軟な前側部分が、前記リザーバから洩れ出る電流に対する障壁および前記リザーバ内への外側の汚染物質の侵入に対する障壁のうち、少なくとも一方を形成していることを特徴とする請求項27〜29のいずれか一項に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  31. 前記リザーバは、タイトな区画を画成するために前記外壁から延びる複数の内部壁を有していることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  32. 導電性の媒質をさらに備え、前記導電性の媒質は、導電性の液体およびゲルより成るグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  33. 前記導電性の媒質は有効成分を含み、
    前記有効成分は、
    ベタキソロール、レボブノロール、チモロール、カルテオロール、ベフノロール、またはメチプラノロールを含むベータ受容体遮断薬;
    ブリモニジン、アプラクロニジン、またはジピベフリンを含むαアドレナリン作用性作動薬;
    ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミド、またはメタゾルアミドを含む酸脱水酵素阻害薬;
    エピネフリン、フェニレフリン、ジペベフリン、またはアプラクロニジンを含む非特異的アドレナリン作動の作動薬あるいは交感神経様作動薬;
    ピロカルピン、カルバコール、アセクリジン、またはエコチオパートを含むアセチルコリン性作動薬(抗コリンエステラーゼ薬)あるいは副交感神経作動薬;および
    ラタノプロスト、ビマトプロスト、またはトラボプロストを含むプロスタグランジン類似体、
    を含むグループから選択されることを特徴とする請求項32に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  34. 前記能動電極が、前記中空部分の底部と全体的に同一な形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の眼球イオン浸透療法装置。
  35. 前記能動電極が貫通開口を有していることを特徴とする請求項1に記載の眼球イオン浸透療法装置。
  36. 前記能動電極は、作動の際に、10mA/cm2以下の電流密度を呈して約10分間分極するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の眼球イオン浸透療法装置。
  37. 前記リザーバが、前記中空部分の底部を閉じる端部壁をさらに有し、そこに前記能動電極が作られていることを特徴とする請求項1に記載の眼球イオン浸透療法装置。
  38. 前記能動電極は、
    電気メッキ;
    導電性材料のインクの付着;
    導電性材料が充填された固体薄膜の蒸着;
    導電層を形成するための導電性材料が充填されたポリマーのオーバーモールディング;および
    導電性材料の一つのワイヤの付着;
    のうちの少なくとも一つのプロセスによって前記リザーバの端部壁に直接的に形成されることを特徴とする請求項37に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  39. 前記電極が、前記装着表面に対して実質的に平行であることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  40. 強固な後側部分をさらに備え、前記電極が、この強固な後側部分と前記リザーバとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  41. 前記内壁は、前記光軸の周りにテーパ状であり、約30度〜約40度の範囲で前記光軸に対して実質的に一定な傾斜角で前記装着表面から前記光軸に対して外側に延びていることを特徴とする請求項8に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  42. 導電性の媒質をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  43. 作用物質をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載した眼球イオン浸透療法装置。
  44. 作用物質は、薬剤、薬品またはその組合せを含むことを特徴とする請求項43に記載した眼球イオン浸透療法装置。
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