観察者の視度を光学的偏向によって矯正する視度矯正具として、観察者の頭部に装着されるめがねや、観察者の眼球に装着されるコンタクトレンズが存在する。
観察者は、そのような視度矯正具を装着している状態で、前述のカラー画像表示装置によって表示されたカラー画像を観察する場合がある。
この場合には、視度矯正具による色収差(例えば、めがねのレンズの屈折による色収差)を原因として、各画素を構成する複数の色別成分光間の分離が発生する。このような色分離が発生すると、観察者によって観察されるカラー画像に色ずれまたは色にじみが発生してしまう。観察者によって観察されるカラー画像に色ずれが発生すると、観察者は、正規のカラー画像を観察することができず、画質が低下する。
この問題は、照明光の色スペクトル構造が大きく異なることによって生じる。つまり、カラー画像の色スペクトルが離散的である場合(例えば、RGBレーザによって2次元走査画像が形成された場合や、RGBレーザによって空間変調器が照明された場合)に、顕著に画質が低下する。これは、色スペクトルが広帯域を有する場合(すなわち、通常の太陽光や白色電灯により照明される場合)に物体が発する色と、色スペクトルが狭帯域であり離散的である場合(すなわち、単色光であるRGBレーザにより照明される場合)に物体が発生する色との間で、色スペクトル構造が大きく異なる事に起因している。このため、RGBレーザにより画像が形成される場合には、人間は、視覚に関する脳神経処理において知覚的な整合が取れず、単なる白色点を観察する時も、RGBの各色が、そもそも同一場所から発生して白く見えていると感じるのではなく、RGBの各色がそれぞれ互いに異なる異なる場所から発生して、RGBの3色に離散した複数の色に見えていると感じるのである。
以上の説明から明らかなように、観察者が視度矯正具を装着している状態でカラー画像を観察する場合には、視度矯正具による色収差を原因として、観察者が観察するカラー画像に色ずれが発生するが、このような色ずれは、他の光学素子による色収差を原因としても発生する。そのような光学素子は、カラー画像表示装置内に収容される光学素子である。
すなわち、カラー画像の色ずれは、カラー画像表示装置の外部に存在する光学素子を原因として発生する場合もあれば、カラー画像表示装置の内部に存在する光学素子を原因として発生する場合もあるのである。
以上説明した事情を背景として、本発明は、カラー画像を観察者に対して表示するヘッドマウント型のカラー画像表示装置であって、光学素子による色収差を原因として、観察者が観察するカラー画像に発生する色ずれが減少するものを提供することを課題としてなされたものである。
その課題を解決するために、本発明の一側面によれば、色が互いに異なる複数の単色画像を互いに重ね合わせることにより、カラー画像を形成し、その形成されたカラー画像を観察者に対して表示するヘッドマウント型のカラー画像表示装置であって、
前記複数の単色画像を形成する単色画像形成部と、
形成された複数の単色画像を互いに重ね合せることにより、前記カラー画像を形成するカラー画像形成部と、
観察者の操作に基づき、観察者の視界を表す2次元的な表示領域内における前記複数の単色画像の表示位置間の相対関係を補正する補正装置と
を含み、
その補正装置は、
前記複数の単色画像にそれぞれ対応する複数の位置合わせマークを、それら位置合わせマークが互いに接近する状態で、かつ、各位置合わせマークが、対応する単色画像の表示位置に連動して移動するように、観察者に対して表示する位置合わせマーク表示部であって、前記複数の位置合わせマークの表示位置間の相対関係により、前記複数の単色画像の表示位置間の相対関係を視覚的に表現するものと、
前記操作に基づき、前記複数の位置合わせマークの表示位置間の相対関係を変更する第1変更部と、
前記操作に基づき、前記複数の単色画像の表示位置間の相対関係を変更する第2変更部と
を含むカラー画像表示装置が提供される。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
(1) 色が互いに異なる複数の単色画像を互いに重ね合わせることにより、カラー画像を形成し、その形成されたカラー画像を観察者に対して表示するヘッドマウント型のカラー画像表示装置であって、
前記複数の単色画像を形成する単色画像形成部と、
形成された複数の単色画像を互いに重ね合せることにより、前記カラー画像を形成するカラー画像形成部と、
観察者の操作に基づき、観察者の視界を表す2次元的な表示領域内における前記複数の単色画像の表示位置間の相対関係を補正する補正装置と
を含むカラー画像表示装置。
このカラー画像表示装置によれば、観察者の操作に基づき、観察者の視界を表す2次元的な表示領域内における複数の単色画像の表示位置間の相対関係が補正される。
したがって、このカラー画像表示装置によれば、観察者は、カラー画像を表す画像光を観察者の眼に誘導するために当該カラー画像表示装置の内部または外部に位置する光学素子による色収差を原因としてカラー画像に発生する色ずれが減少するように、複数の単色画像の表示位置間の相対関係を補正することが可能となる。
このカラー画像表示装置の一具体例においては、複数の単色画像の表示位置間の相対関係が、色収差を原因として、複数の単色画像の表示位置間に発生すべき位置ずれ(個々の画素に着目すれば、個々の画素を構成する複数の色別成分光(R光、G光およびB光)間の位置ずれ)が減少する向きに、その位置ずれの大きさに応じた量で補正される。この補正により、色収差を原因としてカラー画像に発生する色ずれが完全にまたは部分的にキャンセルされる。
本項に係るカラー画像表示装置の別の具体例においては、各画素ごとに、すなわち、表示すべき画像を構成する複数の画素について順次、複数の単色画像の形成およびカラー画像の形成が行われる。さらに別の具体例においては、各画像フレームごとに、単色画像の形成およびカラー画像の形成が行われる。
本項に係るカラー画像表示装置のさらに別の具体例においては、各単色画像の表示位置が、1画像単位で、他の単色画像の表示位置に対して相対移動させられ、これにより、各単色画像の表示位置の移動距離が、すべての画素に共通に決定される。
本項に係るカラー画像表示装置のさらに別の具体例においては、各単色画像の表示位置が、1画素単位または1画素グループ単位で、他の単色画像の表示位置に対して相対移動させられ、これにより、各単色画像の表示位置の移動距離が、1画素単位または1画素グループ単位で、ローカルに決定される。
(2) 前記補正装置は、観察者の視度を光学的偏向によって矯正する視度矯正具を観察者が装着している状態で観察者が前記カラー画像を観察する場合に、前記視度矯正具による色収差を原因として、観察者によって観察される前記カラー画像に発生する色ずれが減少するように、前記複数の単色画像の表示位置間の相対関係を補正する(1)項に記載のカラー画像表示装置。
このカラー画像表示装置によれば、視度矯正具による色収差を原因としてカラー画像に発生する色ずれが減少するように、観察者の視界を表す2次元的な表示領域内における複数の単色画像の表示位置間の相対関係が補正される。
(3) 前記補正装置は、
前記複数の単色画像にそれぞれ対応する複数の位置合わせマークを、それら位置合わせマークが互いに接近する状態で、かつ、各位置合わせマークが、対応する単色画像の表示位置に連動して移動するように、観察者に対して表示する位置合わせマーク表示部であって、前記複数の位置合わせマークの表示位置間の相対関係により、前記複数の単色画像の表示位置間の相対関係を視覚的に表現するものと、
前記操作に基づき、前記複数の位置合わせマークの表示位置間の相対関係を変更する第1変更部と、
前記操作に基づき、前記複数の単色画像の表示位置間の相対関係を変更する第2変更部と
を含む(1)または(2)項に記載のカラー画像表示装置。
このカラー画像表示装置によれば、観察者は、複数の位置合わせマークの表示位置間の相対関係を視覚的な媒介として、複数の単色画像の表示位置間の相対関係を認識しつつ、色収差を原因としてカラー画像に発生する色ずれが完全にまたは部分的にキャンセルされるように、当該カラー画像表示装置を操作する(例えば、特定の物理的なまたは仮想的な操作部を操作する)ことが可能となる。
その結果、このカラー画像表示装置によれば、色収差を原因としてカラー画像に発生する色ずれが完全にまたは部分的にキャンセルされるように、複数の位置合わせマークの表示位置間の相対関係、ひいては、複数の単色画像の表示位置間の相対関係が変更される。
したがって、このカラー画像表示装置によれば、観察者は、複数の位置合わせマークを参照することなく、実際に表示されるカラー画像(色収差によって位置ずれが相互間に発生している複数の単色画像の組合せ)のみを参照しつつ、色収差を原因としてカラー画像に発生する色ずれが完全にまたは部分的にキャンセルされるように、当該カラー画像表示装置を操作しなければならない場合より、色収差を補正するための操作を正確にかつ簡単に行うことが可能となる。
(4) 前記複数の位置合わせマークは、位置固定の主スケールとして機能する位置合わせマークと、位置可変の副スケールとして機能する位置合わせマークとを含む(3)項に記載のカラー画像表示装置。
(5) 前記副スケールは、バーニャスケールを含む(4)項に記載のカラー画像表示装置。
このカラー画像表示装置によれば、主スケールに付随する副スケールがバーニャスケールとして構成されているため、観察者は、主スケールの最小目盛以下の精度で、複数の単色画像の表示位置間の相対関係を補正することが可能となる。
したがって、このカラー画像表示装置によれば、観察者は、色収差を原因としてカラー画像に発生する色ずれを高精度でキャンセルすることが容易となる。
(6) 前記複数の単色画像のうちの一つは、前記操作にもかかわらず表示位置が固定された基準単色画像であり、
前記複数の位置合わせマークのうちその基準単色画像に対応するものは、前記操作にもかかわらず表示位置が固定された基準位置合わせマークである(3)ないし(5)項のいずれかに記載のカラー画像表示装置。
(7) 前記操作は、観察者の第1操作および第2操作を含み、
前記補正装置は、
前記第1操作に基づき、前記複数の単色画像の表示位置間の、上下方向における相対関係を補正する上下方向補正部と、
前記第2操作に基づき、前記複数の単色画像の表示位置間の、左右方向における相対関係を補正する左右方向補正部と
を含む(3)ないし(6)項のいずれかに記載のカラー画像表示装置。
このカラー画像表示装置によれば、観察者は、複数の単色画像の表示位置間の、上下方向における相対関係と、左右方向における相対関係との双方を、かつ、互いに分離して、補正することが可能となる。
(8) 前記上下方向補正部は、前記第1操作に基づき、前記複数の位置合わせマークの表示位置間の、上下方向における相対関係を変更する上下方向変更手段を含む(7)項に記載のカラー画像表示装置。
(9) 前記左右方向補正部は、前記第2操作に基づき、前記複数の位置合わせマークの表示位置間の、左右方向における相対関係を変更する左右方向変更手段を含む(7)または(8)項に記載のカラー画像表示装置。
(10) 前記位置合わせマーク表示部は、前記複数の位置合わせマークから成る位置合わせマークセットを少なくとも一つを、前記表示領域のうちの一部にローカルに表示する(3)ないし(9)項のいずれかに記載のカラー画像表示装置。
(11) 前記位置合わせマーク表示部は、前記複数の位置合わせマークから成る位置合わせマークセットを複数、前記表示領域内において互いに異なる複数の位置にそれぞれローカルに表示する(3)ないし(9)項のいずれかに記載のカラー画像表示装置。
(12) 前記複数の位置合わせマークセットは、4つの位置合わせマークセットを含み、
前記位置合わせマーク表示部は、それら4つの位置合わせマークセットを、前記表示領域の4個の隅部にそれぞれ表示する(11)項に記載のカラー画像表示装置。
(13) さらに、
各単色画像ごとに、各単色画像をそれぞれ表す複数の画素データをビットマップ形式で記憶する複数の単色画像バッファを含み、
前記第2変更部は、前記操作に基づき、少なくとも一つの単色画像につき、対応する複数の画素データを、対応する単色画像バッファ上において移動させる画素データ移動手段を含む(3)項に記載のカラー画像表示装置。
このカラー画像表示装置によれば、観察者の操作に基づき、少なくとも一つの単色画像につき、対応する複数の画素データが、対応する単色画像バッファ上において移動させられる。その移動は、色収差を原因としてカラー画像に発生する色ずれが減少する向きに、その位置ずれに応じた距離で行われる。
したがって、このカラー画像表示装置によれば、後述の(18)項に係るカラー画像表示装置とは異なり、特別の電子回路や特別の信号処理に依存することなく、画素データの集まりである画像データを画像バッファとしての画像メモリ上において移動させるという比較的単純なデータ処理により、複数の単色画像の表示位置間の相対関係が補正される。
(14) 前記画素データ移動手段は、前記操作に基づき、前記少なくとも一つの単色画像につき、対応する複数の画素データを、対応する単色画像バッファ上において、バイリニア法またはバイキュービック法により、サブピクセル単位で、移動させる(13)項に記載のカラー画像表示装置。
(15) 前記位置合わせマーク表示部は、前記複数の位置合わせマークから成る位置合わせマークセットを一つのみ表示し、
当該カラー画像表示装置は、さらに、
前記一つの位置合わせマークセットに関連付けられた操作部であって、観察者により、前記一つの位置合わせマークセットに属する複数の位置合わせマークの表示位置間の相対関係を変更するために操作されるものを含み、
前記画素データ移動手段は、前記操作部の操作に基づき、少なくとも一つの単色画像につき、対応する複数の画素データを、対応する単色画像バッファ上において移動させる距離を、その単色画像バッファ全域において一様に決定する一様移動距離決定手段を含む(13)または(14)項に記載のカラー画像表示装置。
本項における「操作部」は、例えば、物理的な操作部としたり、仮想的な操作部とすることが可能である。
(16) 当該カラー画像表示装置は、さらに、
前記複数の位置合わせマークセットにそれぞれ関連付けられた複数の操作部であって、各操作部は、観察者により、対応する位置合わせマークセットに属する複数の位置合わせマークの表示位置間の相対関係を変更するために操作されるものを含み、
前記画素データ移動手段は、各操作部ごとに、各操作部の操作に基づき、前記少なくとも一つの単色画像につき、対応する複数の画素データを、対応する単色画像バッファ上において移動させる距離を、対応する位置合わせマークセットの表示位置に応じてローカルに決定するローカル移動距離決定手段を含む(13)または(14)項に記載のカラー画像表示装置。
本項における「複数の操作部」は、例えば、複数の物理的な操作部としたり、複数の仮想的な操作部としたり、1個の物理的な操作部であってその機能を切換え可能であるものとしたり、1個の仮想的な操作部であってその機能を切換え可能であるものとすることが可能である。
(17) 前記単色画像形成部は、
光源部と、
その光源部から入射した光を時間的または空間的に変調し、それにより、前記複数の単色画像を形成する変調器であって、時間と共に状態が変化する駆動信号に応じて動作するものと
を含み、
前記補正装置は、前記操作に基づき、前記変調器への前記駆動信号の出力タイミングを調整し、それにより、前記複数の単色画像の表示位置間の相対関係を補正するタイミング調整回路を含む(1)ないし(16)項のいずれかに記載のカラー画像表示装置。
このカラー画像表示装置によれば、変調器に電子回路としてのタイミング調整回路が設けられ、そのタイミング調整回路により、観察者の操作に基づき、変調器への駆動信号の出力タイミングが調整される。それにより、複数の単色画像の表示位置間の相対関係が補正される。
したがって、このカラー画像表示装置によれば、前述の(13)項に係るカラー画像表示装置とは異なり、画像メモリ上における画像データの移動に依存することなく、特別の電子回路により、複数の単色画像の表示位置間の相対関係が補正される。
(18) 前記タイミング調整回路は、前記操作に基づき、前記変調器への前記駆動信号の出力タイミングを、画素の整数倍に対応する周波数で調整する(17)項に記載のカラー画像表示装置。
(19) 前記光源部は、前記複数の単色画像をそれぞれ形成する複数の成分光であって色が互いに異なるものをそれぞれ出射する複数の光源を含む(17)または(18)項に記載のカラー画像表示装置。
(20) 前記光源部は、白色光を出射する白色光源を含み、
前記変調器は、その白色光源から出射した白色光を、各画素ごとに、色が互いに異なる複数の成分光に分解したうえで各成分光の透過度を制御するフラットパネルディスプレイを含む(17)または(18)項に記載のカラー画像表示装置。
(21) カラー画像を観察者に対して表示するヘッドマウント型のカラー画像表示装置であって、
前記カラー画像を表す画像光を観察者の眼に誘導するために当該カラー画像表示装置の内部または外部に位置する光学素子による色収差を原因として前記カラー画像に発生する色ずれが少なくとも部分的にキャンセルされるように、前記光学素子への入射光を、各成分光ごとに、前記光学素子による色収差を見込んで、ソフト的に変調する入射光変調装置を含むカラー画像表示装置。
(22) 当該カラー画像表示装置は、色が互いに異なる複数の単色画像を互いに重ね合わせることにより、前記カラー画像を形成し、
当該カラー画像表示装置は、さらに、前記複数の単色画像をそれぞれ表す複数の画像データをビットマップ形式で記憶するメモリを含み、
前記入射光変調装置は、前記複数の画像データを前記メモリ上において相対移動させることにより、観察者の視界を表す2次元的な表示領域内における前記複数の単色画像の表示位置間の相対関係を補正し、それにより、前記光学素子への入射光を、各成分光ごとに、ソフト的に変調するデータ移動手段を含む(21)項に記載のカラー画像表示装置。
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に従うカラー画像表示装置としてのヘッドマウントディスプレイ装置10が、観察者(ユーザ)の頭部12に装着された状態で、平面図で示されている。
まず、概略的に説明するに、このヘッドマウントディスプレイ装置10は、観察者に表示すべきカラー画像を表現する画像光を出射する出射口(図2参照)を有するとともに、観察者の頭部12に装着された状態で、出射口から画像光を出射して観察者の眼球14に照射することによって観察者に対してカラー画像を表示するように構成されている。
次に、このヘッドマウントディスプレイ装置10がカラー画像を形成する原理を説明するに、このヘッドマウントディスプレイ装置10は、各画素ごとに、色が互いに異なる複数の単色画像(すなわち、赤色画像(R画像)と、緑色画像(G画像)と、青色画像(B画像))を互いに重ね合わせることにより、カラー画像を形成する。
このヘッドマウントディスプレイ装置10は、射出瞳(図2参照)の位置が観察者の瞳孔16の位置に対して相対的に調整可能であるように構成されている。
さらに、このヘッドマウントディスプレイ装置10は、現実外界に重ねて表示画像を観察可能なシースルー型であるように構成されている。
図1に示すように、このヘッドマウントディスプレイ装置10は、装置本体20を備えている。
装置本体20は、概して矩形状を成すとともに内部空間を有するハウジング22を備えている。そのハウジング22内に、図2に光路図で示す全体光学系24と、図3にブロック図で概念的に表す電気回路部26とが収容されている。それら全体光学系24および電気回路部26は、後に、図2および図3を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、このヘッドマウントディスプレイ装置10は、さらに、ジョイント装置30を備えている。このジョイント装置30は、ヘッドマウントディスプレイ装置10の射出瞳(図2参照)の位置を観察者の眼球14の位置に対して相対的に変位させることを可能にする相対変位装置の一例である。このジョイント装置30は、装置本体20を、観察者に装着されているめがね34に着脱可能に装着するように構成されている。
ここに、「めがね」という用語は、観察者の視度を矯正する機能を有して観察者の両耳36,36と鼻38にかけられるめがねと、観察者の視度を矯正する機能を有することなく観察者の両耳36,36と鼻38にかけられるめがねとを含んでいる。
後者のめがねは、視度を矯正することが不要である観察者や、視度を矯正することが必要であるが矯正のためにコンタクトレンズなどを眼球14に使用している観察者により、このヘッドマウントディスプレイ装置10を観察者の頭部12に装着可能とするために、観察者の頭部12に装着される。
したがって、本明細書において、「めがね」という用語は、装置本体20を観察者の頭部12に装着するために機能することに着目し、アダプタと称したり、アタッチメントと称したり、支持フレームと称することが可能である。
いずれにしても、めがね34は、観察者の両耳36,36にそれぞれかけられる一対のつる40,40と、それらつる40,40をつなぐブリッジ42であってパッド部44を介して観察者の鼻38にかけられるものとを備えている。それらつる40,40とブリッジ42とは、一般に、折り畳み可能に互いに連結される。ブリッジ42には、左眼用および右眼用のレンズ46,46(例えば、凹レンズ)が装着されている。
ジョイント装置30は、装置本体20をめがね34に装着するために使用される。ヘッドマウントディスプレイ装置10は、観察者の両眼球14,14のうちの一方、例えば、図1に示すように、左眼球14のみに画像光を投影するように構成されている。
そのため、ジョイント装置30は、装置本体20を、一対のつる40,40のうちの一方、例えば、図1に示すように、左耳36にかけられるつる40のみに、片持ち状で装着するように構成されている。さらに、このジョイント装置30は、装置本体20をめがね34に、少なくとも2軸まわりの相対回動が可能であるように連結するように構成されている。
具体的には、図1に示すように、このジョイント装置30は、つる40に着脱可能に装着されるクリップ50と、第1および第2のリンク52,54と、第1および第2のボールジョイント(ユニバーサルジョイントの一例)56,58とを備えている。
第1のリンク52は、それの一端部においてクリップ50に固定される一方、他端部において、第2のリンク54の他端部に、第1のボールジョイント56を介して回動可能に連結されている。これに対し、第2のリンク54は、それの他端部において、第2のボールジョイント58を介して、装置本体20のハウジング22に形成されたボールジョイント受部60に回動可能に連結されている。
図1に示すように、このヘッドマウントディスプレイ装置10は、さらに、ハーフミラー64を備えている。このハーフミラー64は、装置本体20からの入射光を、観察者の眼球14に向かって反射するとともに、観察者の前方に位置する現実外界からの光を、観察者の眼球14に向かって透過させる。
その結果、観察者は、ハーフミラー64を通して現実外界を観察すると同時に、装置本体20からの画像光を、ハーフミラー64の反射によって受光して表示画像を観察することが可能である。すなわち、このヘッドマウントディスプレイ装置10は、前述のように、現実外界に重ねて表示画像を観察可能なシースルー型なのである。
図1には、観察者が、左眼球14により、ヘッドマウントディスプレイ装置10による表示画像を観察する際の観察光軸OAと視野FOVとが示されている。
次に、図2を参照することにより、装置本体20のうちの全体光学系24を説明する。
まず、概略的に説明するに、全体光学系24は、光源部70と走査部72とを有する。この全体光学系24においては、光源部70から入射したビーム状の光であって各画素ごとに強度変調されたものが、走査部72を用いて、面状の画像光に変換される。そのようにして形成された画像光は、観察者の瞳孔16を経て直接的に観察者の網膜上に投影され、それにより、観察者が画像を虚像として観察することが可能になる。
全体光学系24は、光源部70と、色消しコリメートレンズ74と、水平走査用スキャナ76と、垂直走査用スキャナ78と、瞳拡大光学系79と、アイピース光学系80とを備えている。水平走査用スキャナ76は、圧電素子82(図3参照)を駆動源として備えており、また、垂直走査用スキャナ78は、圧電素子84(図3参照)を駆動源として備えている。
水平走査用スキャナ76に入射した光ビームは、その水平走査用スキャナ76によって水平走査されてそこから出射する。その出射光は、垂直走査用スキャナ78に入射し、その垂直走査用スキャナ78によって垂直走査されてそこから出射する。それら水平走査用スキャナ76および垂直走査用スキャナ78が互いに共同して走査部72を構成している。
本実施形態においては、全体光学系24の光路の上流側に水平走査用スキャナ76が高速スキャナとして配置される一方、下流側に垂直走査用スキャナ78が低速スキャナとして配置されている。
なお付言するに、本実施形態においては、全体光学系24の光路の上流側に水平走査用スキャナ76が配置される一方、下流側に垂直走査用スキャナ78が配置されているが、上流側に垂直走査用スキャナ78を配置する一方、下流側に水平走査用スキャナ76を配置してもよい。
さらに付言するに、本実施形態においては、走査部72が、水平走査用スキャナ76と垂直走査用スキャナ78との組合せとして構成されているが、1枚の偏向ミラーを2軸まわりに揺動させることにより、1枚の偏向ミラーによって水平走査と垂直走査とを実現してもよい。
図1に示すように、光源部70は、カラーレーザ光(画像光)を発生させる複合光源として構成されていて、赤レーザビームを発するRレーザ(赤光源)90と、緑レーザビームを発するGレーザ(緑光源)92と、青レーザビームを発するBレーザ(青光源)94とを備えている、
それらRレーザ90,Gレーザ92およびBレーザ94はいずれも、時間と共に状態が変化する各駆動信号に応じて動作し、各駆動信号のレベルに応じた強度で、各レーザビームを出力する。
したがって、それらRレーザ90,Gレーザ92およびBレーザ94はいずれも、それ自体、出力レーザビームの強度を時間的に変調する機能を有している。すなわち、それらRレーザ90,Gレーザ92およびBレーザ94はいずれも、強度変調器付きのレーザ源であると考えることができるのである。
それらRレーザ90,Gレーザ92およびBレーザ94はそれぞれ、図5に示すように、個別のドライバ100,102,104によって駆動される。それらレーザ90,92,94から出射する3色のレーザビームは、各瞬間ごとに、対応する画素の色を反映する1本のカラーレーザビーム(画像光)として合成される。その合成されたレーザビームは、色消しコリメートレンズ74に入射する。
図2に示すように、光源部70は、さらに、赤レーザビームは透過するが緑レーザビームは反射する上流側ダイクロイックミラー(波長選択性ミラー)110と、赤レーザビームおよび緑レーザビームは透過するが青レーザビームは反射する下流側ダイクロイックミラー(波長選択性ミラー)112とを備えている。
Rレーザ90から出射した赤レーザビームは、上流側ダイクロイックミラー110および下流側ダイクロイックミラー112をそれらの順に透過する。Gレーザ92から出射した緑レーザビームは、上流側ダイクロイックミラー110で反射した後、下流側ダイクロイックミラー112を透過する。Bレーザ94から出射した青レーザビームは、下流側ダイクロイックミラー112で反射する。
図2に示すように、赤レーザビームと、上流側ダイクロイックミラー110から反射した緑レーザビームと、下流側ダイクロイックミラー112から反射した青レーザビームとは、同じ光軸を共有する。その結果、下流側ダイクロイックミラー112からは、赤レーザビームと緑レーザビームと青レーザビームとが合成された1本のカラーレーザビーム(画像光)が出射する。
図2に示すように、色消しコリメートレンズ74から出射したカラーレーザビーム(画像光)は、水平走査用スキャナ76に入射する。水平走査用スキャナ76から出射したカラーレーザビームは、垂直走査用スキャナ78に入射する。
垂直走査用スキャナ78から出射した画像光は、瞳拡大光学系79(例えば、回折格子)に入射し、それにより、射出瞳が拡大される。瞳拡大光学系79から射出した画像光は、アイピース光学系80を通過する。その結果、ヘッドマウントディスプレイ装置10は、出射口から画像光を射出する。
出射口から射出した画像光は、めがね34のレンズ46を経て、観察者の眼球14に入射する。画像光がレンズ46を通過する際に、レンズ46の屈折による色収差が発生する。
そのため、色収差補正を実行しないと、赤レーザビームと緑レーザビームと青レーザビームの合成光であるカラーレーザビームがレンズ46に入射すると、そのレンズ46の屈折(波長に依存した屈折力の違い)による色収差により、色分離が、図4に示すように、上下方向に発生するとともに、図5に示すように、左右方向にも発生してしまう。すなわち、複数の周波数成分を含む入射光が、レンズ46の屈折により、赤成分光と緑成分光と青成分光とに分離されてしまうのである。
そのため、色収差補正を実行しないと、観察者が観察するカラー画像に色ずれが発生して、画質が低下してしまう。
このような色ずれを抑制するために、このヘッドマウントディスプレイ装置10においては、概略的に説明するに、レンズ46による色収差の影響である色分離がキャンセルされるように、そのレンズ46への入射光が、各色別成分光ごとに、そのレンズ46による色収差を見込んで、ソフト的に変調される。
具体的には、このヘッドマウントディスプレイ装置10においては、観察者の視界を表す2次元的な表示領域内における複数の単色画像(すなわち、R画像、G画像およびB画像)の表示位置が、レンズ46による色収差を見込んで、互いにずらされることにより、色収差補正が行われる。
したがって、このヘッドマウントディスプレイ装置10によれば、観察者の視度を光学的偏向によって矯正する視度矯正具の一例を構成するレンズ46を観察者が装着している状態で観察者がカラー画像を観察する場合に、レンズ46による色収差を原因として、観察者によって観察されるカラー画像に発生する色ずれが減少する。
次に、図3を参照することにより、電気回路部26を説明する。
図3に示すように、電気回路部26は、コンピュータ170を主体とするコントローラ172を備えている。コンピュータ170は、よく知られているように、CPU(プロセッサの一例)174と、ROM(メモリの一例)176と、RAM(メモリの別の一例)178とがバス180を介して互いに接続されることによって構成されている。
ROM176には、図6にフローチャートで概念的に表されている色収差補正プログラムおよび図7にフローチャートで概念的に表されている画像表示処理プログラムを始めとする各種プログラムが予め記憶されている。随時、必要なプログラムがROM176から読み出されてCPU174によって実行される。
図8には、RAM178に記憶される複数種類のデータが示されている。
図8に示すように、RAM178には、R画像、G画像およびB画像をそれぞれ、を少なくとも1フレーム分、表示するために必要な画像データ(複数の画素データの集まり)をビットマップ方式で記憶するためのR画像バッファ190、G画像バッファ192およびB画像バッファ194が割り当てられている。
いずれのバッファ190,192,194においては、各画素データの記憶位置は、対応する画素の物理的な表示位置に1対1に関連付けられている。したがって、各画素データを、対応するバッファ190,192,194上で移動させれば、それに応じて、対応する画素が、視野FOV内において移動させられることになる。
具体的には、図9に概念的に表すように、例えばG画像バッファ192に記憶されている画像データを基準にして、R画像バッファ190上において、画像データをx方向に移動させれば、それに応じて、視野FOV内において、R画像が水平方向に移動させられる。
同様にして、例えばG画像バッファ192に記憶されている画像データを基準にして、R画像バッファ190上において、画像データをy方向に移動させれば、それに応じて、視野FOV内において、R画像が上下方向に移動させられる。
図3に示すように、Rレーザ90、Gレーザ92およびBレーザ94は、それぞれのドライバ100,102,104を介して、コントローラ172に接続されている。コントローラ172は、Rレーザ90、Gレーザ92およびBレーザ94から出射する赤レーザビーム、緑レーザビームおよび青レーザビームのオンオフならびに強度を、それぞれのドライバ100,102,104を介して制御する。
図3に示すように、水平走査用スキャナ76の圧電素子82および垂直走査用スキャナ78の圧電素子84は、それぞれのドライバ184,184を介してコントローラ172に接続されている。コントローラ172は、ドライバ184,184を介して、圧電素子134,134の駆動を制御する。
図3に示すように、コントローラ172には、色収差補正のために観察者によって操作される物理的な操作部材の一例として、十字キー196が接続されている。
この十字キー196は、観察者により、各単色画像ごとに、前後方向と左右方向とにそれぞれ、互いに独立して操作される。例えば、十字キー196は、各単色画像ごとに1つずつ、全体で3つ設けたり、十字キー196の数は1つであるが、その機能を別のスイッチによって切り換えることが可能である。
この十字キー196が前後方向に操作されると、複数の単色画像の表示位置を上下方向に相対移動させるための信号がコンピュータ170に出力される。一方、この十字キー196が左右方向に操作されると、複数の単色画像の表示位置を左右方向に相対移動させるための信号がコンピュータ170に出力される。
次に、図6を参照することにより、前述の色収差補正プログラムを説明する。
この色収差補正プログラムは、ヘッドマウントディスプレイ装置10の主電源スイッチ(図示しない)が観察者によってオンに操作されたことを動機として、コンピュータ170によって実行される。主電源スイッチがオンに操作されると、水平走査用スキャナ76および垂直走査用スキャナ78が駆動される。
この色収差補正プログラムの実行が開始されると、まず、ステップS1において、複数の位置合わせマークが観察者の視野FOV内に点灯するように、光源部70が駆動される。
本実施形態においては、図10に示すように、上下補正用位置合わせマークセット(以下、「上下補正用マークセット」と略称する。)200と、左右補正用位置合わせマークセット(以下、「左右補正用マークセット」と略称する。)202とが、一緒に、同じ視野FOV内において、カラー画像に色ずれが発生するとその色ずれが最も目立つ位置、例えば、中央位置に表示される。
図11に示すように、上下補正用マークセット200は、R画像の表示位置を表す位置合わせマーク(以下、「R用マーク」と略称する。)210と、G画像の表示位置を表す位置合わせマーク(以下、「G用マーク」と略称する。)212と、B画像の表示位置を表す位置合わせマーク204(以下、「B用マーク」と略称する。)とを有し、かつ、色収差がないと仮定した場合に、それらマーク210,212,214が、連続した水平直線を構成するように、設計されている。
R用マーク210は、赤色で表示され、G用マーク212は、緑色で表示され、B用マーク214は、青色で表示される。
一例においては、図11に示すように、それらマーク210,212,214のうち、G用マーク212が、十字キー196の操作にもかかわらず表示位置が変化しない主スケールとして機能し、一方、R用マーク210とB用マーク214とが、いずれも、十字キー196の操作に連動して表示位置が上下方向に変化する副スケールとして機能する。
したがって、例えば、図11において左側に示すように、色収差を原因として、3つの位置合わせマーク210,212,214が一直線上にない場合には、観察者は、R用マーク210が上昇してG用マーク212に一致するとともに、B用マーク210が下降してG用マーク212に一致するように、十字キー196を前後方向に操作する。
なお付言するに、図11に示す一例においては、3つの位置合わせマーク210,212,214の各々が、1本の直線を成す画像であるが、互いに平行な複数本の直線を成す図形としてもよい。さらに、位置合わせマーク212(位置固定の主スケール)が、等間隔にして互いに平行な複数本の直線を成す図形である場合に、位置合わせマーク210およびク214(いずれも、位置可変の副スケール)を、互いに平行な複数本の直線を用いたバーニャスケールとして構成してもよい。
図12に示すように、水平補正用マークセット202は、R画像の表示位置を表す位置合わせマーク(以下、「R用マーク」と略称する。)220と、G画像の表示位置を表す位置合わせマーク(以下、「G用マーク」と略称する。)222と、B画像の表示位置を表す位置合わせマーク224(以下、「B用マーク」と略称する。)とを有し、かつ、色収差がないと仮定した場合に、それらマーク220,222,224が、連続した垂直直線を構成するように、設計されている。
R用マーク220は、赤色で表示され、G用マーク222は、緑色で表示され、B用マーク224は、青色で表示される。
一例においては、図12に示すように、それらマーク220,222,224のうち、G用マーク222が、十字キー196の操作にもかかわらず表示位置が変化しない主スケールとして機能し、一方、R用マーク220とB用マーク224とが、いずれも、十字キー196の操作に連動して表示位置が左右方向に変化する副スケールとして機能する。
したがって、例えば、図12において上側に示すように、色収差を原因として、3つの位置合わせマーク220,222,224が一直線上にない場合には、観察者は、R用マーク220が左に移動してG用マーク222に一致するとともに、B用マーク220が右に移動してG用マーク222に一致するように、十字キー196を左右方向に操作する。
図6に示すステップS1においては、具体的には、それぞれの位置合わせマーク210,212,214,220,222,224を表示するために、対応する画像データが、3つの画像バッファ190,192,194のうち対応するものから読み出される。
その読み出された画像データに基づいて強度信号が生成され、その生成された強度信号が、3つのレーザ90,92,94のうち対応するものに、対応するドライバ100,102,104を介して供給される。その結果、光源部70が、2つのマークセット200,202が一緒に、同じ視野FOV内に表示されるように、駆動されることになる。
次に、ステップS2において、表示されている上下補正用マークセット200を観察しつつ、そのマークセット200が全体として一直線を描くように、観察者が、R用マーク210とB用マーク214とについてそれぞれ、十字キー196を上下方向に操作した量が、y方向操作量Ay(量のみならず、向きも有するパラメータ)として検出される。
続いて、ステップS3において、表示されている左右補正用マークセット202を観察しつつ、そのマークセット202が全体として一直線を描くように、観察者が、R用マーク220とB用マーク224とについてそれぞれ、十字キー196を左右方向に操作した量が、x方向操作量Ax(量のみならず、向きも有するパラメータ)として検出される。
その後、ステップS4において、検出されたy方向操作量Ayおよびx方向操作量Axが反映されるように、上下補正用マークセット200および左右補正用マークセット202のそれぞれのうち該当する位置合わせマークが、視野FOV内において、該当する方向に、該当する距離だけ移動させられる。
具体的には、例えば、図11に示すR用マーク210については、y方向操作量Ayに基づき、R用マーク210を表示するための画像データが、R画像バッファ190上において、例えばバイリニア法(バイキュービック法でも可)により、サブピクセル単位で、移動させられる。
このようにして取得された新たな画像データに基づいて光源部70が制御されることにより、R用マーク210が、視野FOV内において、y方向操作量Ayを反映する距離だけ、かつ、そのy方向操作量Ayの符号の正負を反映する向きに、移動させられる。
続いて、図6に示すステップS5において、観察者が十字キー196を介して入力したx方向操作量Axおよびy方向操作量Ayのそれぞれの現在値を最終値として確定させる意思を、図示しない操作部を介して、コンピュータ170に対して入力したか否かが判定される。
今回は、観察者が、x方向操作量Axおよびy方向操作量Ayのそれぞれの現在値を最終値として確定させる意思を未だコンピュータ170に対して入力していないと仮定すれば、ステップS5の判定がNOとなり、ステップS2に戻る。
これに対し、今回は、観察者が、x方向操作量Axおよびy方向操作量Ayのそれぞれの現在値を最終値として確定させる意思をコンピュータ170に対して入力したと仮定すれば、ステップS5の判定がYESとなり、ステップS6に移行する。
このステップS6においては、各位置合わせマーク220,222,224ごとに、x方向操作量Axの最終値が、対応する画像バッファ190,192,194のためのx方向移動距離Lxに換算される。
続いて、ステップS7において、各位置合わせマーク210,212,214ごとに、y方向操作量Ayの最終値が、対応する画像バッファ190,192,194のためのy方向移動距離Lyに換算される。
本実施形態においては、x方向移動距離Lx(各画素を画像バッファ190,192,194上において移動させるべき距離)が、1枚の画像フレームを構成するすべての画素に共通な値を有するように設定されている。したがって、1枚の画像フレームについて指定された1つのx方向操作量Axのみから、その画像フレームについての1つのx方向移動距離
その後、ステップS8において、上記のようにして取得されたx方向移動距離Lxおよびy方向移動距離Lyが、図8に示すように、RAM178にストアされる。
続いて、ステップS9において、上下補正用マークセット200および左右補正用マークセット202がいずれも、視野FOV内において、消灯される。以上で、この色収差補正プログラムの一回の実行が終了する。
次に、図7を参照することにより、前述の画像表示処理プログラムを説明する。この画像表示処理プログラムは、前述の色収差補正プログラムの実行後に実行が開始される。
この画像表示処理プログラムの実行が開始されると、まず、ステップS101において、これから表示すべきカラー画像を表す映像信号が外部から入力される。
次に、ステップS102において、入力された映像信号に基づき、R画像を表示する画像データが元画像データとして生成されてR画像バッファ190に保存され、G画像を表示する画像データが元画像データとして生成されてG画像バッファ192に保存され、そして、B画像を表示する画像データが元画像データとして生成されてB画像バッファ194に保存される。
続いて、ステップS103において、RAM178から、x方向移動距離Lxが取り込まれる。その後、ステップS104において、R画像につき、それのx方向移動距離Lxに基づき、R画像を表示するための画像データが、R画像バッファ190上において、例えばバイリニア法(バイキュービック法でも可)により、サブピクセル単位で、左右方向に移動させられる。
以上のようにして、R画像についての元画像データが、x方向移動距離Lxを反映するように補正される。同様にして、B画像についての元画像データが、x方向移動距離Lxを反映するように補正される。
なお付言するに、G画像は、本実施形態においては、位置不変の基準単色画像であるため、G画像についての元画像データは補正されない。
続いて、ステップS105において、RAM178から、y方向移動距離Lyが取り込まれる。その後、ステップS106において、R画像につき、それのy方向移動距離Lyに基づき、R画像を表示するための画像データが、R画像バッファ190上において、例えばバイリニア法(バイキュービック法でも可)により、サブピクセル単位で、上下方向に移動させられる。
以上のようにして、R画像についての元画像データが、y方向移動距離Lyを反映するように補正される。同様にして、B画像についての元画像データが、y方向移動距離Lyを反映するように補正される。
なお付言するに、G画像は、本実施形態においては、位置不変の基準単色画像であるため、G画像についての元画像データは補正されない。
続いて、ステップS107において、R画像については、補正された元画像データに基づき、Rレーザ90のための強度信号(すなわち、前述の駆動信号)が生成され、B画像についても、同様に、補正された元画像データに基づき、Bレーザ94のための強度信号が生成される。ただし、G画像については、基準単色画像であるため、元画像データそのものに基づき、Gレーザ92のための強度信号が生成される。
その後、ステップS108において、そのようにして生成された強度信号がRレーザ90、Gレーザ92およびBレーザ94に対して出力される。
その結果、R画像が、視野FOV内において、x方向移動量Lxおよびy方向移動量Lyを反映する距離だけ、かつ、それらx方向移動量Lxおよびy方向移動量Lyの各符号の正負を反映する向きに、移動させられる。
同様にして、B画像が、視野FOV内において、x方向移動量Lxおよびy方向移動量Lyを反映する距離だけ、かつ、それらx方向移動量Lxおよびy方向移動量Lyの各符号の正負を反映する向きに、移動させられる。
その結果、R画像およびB画像をそれぞれ再現するための画像データおよび強度信号が、レンズ46による色収差を見込んで、その色収差を原因とするカラー画像の色ずれが少なくとも部分的にキャンセルされるように、補正される。以上で、この画像表示処理プログラムの一回の実行が終了する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、説明の便宜上、例えば、3つのレーザ90,92,94と、色消しコリメートレンズ74と、走査部72とが互いに共同して、前記(1)項における「単色画像形成部」の一例を構成し、ダイクロイックミラー110,112と、色消しコリメートレンズ74と、走査部72とが互いに共同して、同項における「カラー画像形成部」の一例を構成し、コンピュータ170のうち、図6に示す色収差補正プログラムならびに図7に示すステップS103ないしS106を実行する部分が同項における「補正装置」の一例を構成していると考えることが可能である。
さらに、本実施形態においては、説明の便宜上、例えば、コンピュータ170のうち、図6に示す色収差補正プログラムならびに図7に示すステップS103ないしS106を実行する部分が前記(2)項における「補正装置」の一例を構成していると考えることが可能である。
さらに、本実施形態においては、説明の便宜上、例えば、コンピュータ170のうち、図6に示すステップS1を実行する部分が前記(3)項における「位置合わせマーク表示部」の一例を構成し、コンピュータ170のうち、図6に示すステップS2ないしS5を実行する部分が同項における「第1変更部」の一例を構成し、コンピュータ170のうち、図6に示すステップS6ないしS8ならびに図7に示すステップS103ないしS106を実行する部分が同項における「第2変更部」の一例を構成していると考えることが可能である。
さらに、本実施形態においては、説明の便宜上、例えば、観察者による十字キー196の前後方向操作が前記(7)項における「第1操作」の一例を構成し、観察者による十字キー196の左右方向操作が同項における「第2操作」の一例を構成し、コンピュータ170のうち、図7に示すステップS105およびS106を実行する部分が前記(8)項における「上下方向補正部」の一例を構成し、コンピュータ170のうち、図6に示すステップS103およびS104を実行する部分が同項における「左右方向補正部」の一例を構成していると考えることが可能である。
さらに、本実施形態においては、説明の便宜上、例えば、コンピュータ170のうち、図6に示すステップS2およびS4を実行する部分が前記(8)項における「上下方向変更手段」の一例を構成し、コンピュータ170のうち、図6に示すステップS3およびS4を実行する部分が同項における「左右方向変更手段」の一例を構成していると考えることが可能である。
さらに、本実施形態においては、説明の便宜上、例えば、3つの画像バッファ190,192,194が前記(13)項における「複数の単色画像バッファ」の一例を構成し、コンピュータ170のうち、図7に示すステップS103ないしS106を実行する部分が同項における「画素データ移動手段」の一例を構成していると考えることが可能である。
さらに、本実施形態においては、説明の便宜上、例えば、十字キー196が前記(15)項における「操作部」の一例を構成し、コンピュータ170のうち、図6に示す色収差補正プログラムを実行する部分が同項における「一様移動距離決定手段」の一例を構成していると考えることが可能である。
さらに、本実施形態においては、説明の便宜上、例えば、コンピュータ170のうち、図6に示す色収差補正プログラムならびに図7に示すステップS103ないしS106を実行する部分が前記(21)項における「入射光変調装置」の一例を構成し、3つの画像バッファ190,192,194が前記(22)項における「メモリ」の一例を構成し、コンピュータ170のうち、図7に示すステップS103ないしS106を実行する部分が同項における「データ移動手段」の一例を構成していると考えることが可能である。
なお付言するに、本実施形態においては、光源部70が、Rレーザ90とGレーザ92とBレーザ94とを含むように構成され、かつ、各レーザ90,92,94は、それ自体、出力レーザビームの強度を時間的に変調する機能を有するように構成されている。
これに対し、光源部70を、白色光を出射する白色光源を含むように構成し、かつ、その白色光源から出射した白色光を空間的に変調する空間変調素子、すなわち、白色光を、各画素ごとに、色が互いに異なる複数の成分光に分解したうえで各成分光の透過度を制御するフラットパネルディスプレイを用いるように構成して、本発明を実施することが可能である。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については、同一の名称または符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ、詳細に説明する。
第1実施形態においては、図10に示すように、1つの上下補正用マークセット200と、1つの左右補正用マークセット202とが、視野FOV内において、中央位置に、互いに近接して表示される。
これに対し、本実施形態においては、図13に示すように、1つの上下補正用マークセット200と1つの左右補正用マークセット202とが互いに近接して配置されたマークユニットが4つ、視野FOV内において、互いに異なる4つの位置にそれぞれローカルに表示される。
具体的には、それら4つのマークユニットは、視野FOVの4つの隅部にそれぞれ表示される。
第1実施形態においては、1枚の画像フレームに対してx方向操作量とy方向操作量とが一つずつ指定される。すなわち、同じ方向については、1つの操作量のみ指定されるのである。そして、同じ方向については、指定された1つの操作量のみから、1枚の画像フレームを構成するすべての画素に共通に1つの移動量が決定される。
したがって、第1実施形態においては、同じ方向については、各画素データの、対応する画像バッファ190,192,194上における移動量が、すべての画素について一様に決定される。
これに対し、本実施形態においては、1枚の画像フレームに対してx方向操作量とy方向操作量とが4つずつ指定される。すなわち、同じ方向については、互いに異なる4つの位置について4つの操作量がそれぞれみ指定されるのである。そして、同じ方向については、指定された4つの操作量から、1枚の画像フレームを構成するすべての画素に個々に移動量が決定される。
さらに、本実施形態においては、各マークユニットごとに、少なくとも1つの十字キー196が関連付けられる。その結果、4つのマークユニット全体としては、少なくとも4つの十字キー196が用いられる。
したがって、本実施形態においては、同じ方向については、各画素データの、対応する画像バッファ190,192,194上における移動量が、すべての画素について非一様に決定される。
そのために、本実施形態においては、各方向について指定された4つの操作量A1,A2,A3,A4と任意の1つの画素の2次元位置px,pyとを引数とする関数f(A1,A2,A3,A4,px,py)であって、4つの操作量A1,A2,A3,A4と任意の1つの画素の2次元位置px,pyとを一意に特定すると、その位置における画素移動量が誘導されるものが用いられる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については、同一の名称または符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ、詳細に説明する。
第1実施形態においては、レンズ46(カラー画像を表す画像光を観察者の眼に誘導するために当該カラー画像表示装置の内部または外部に位置する光学素子の一例)による色収差を原因としてカラー画像に発生する色ずれが少なくとも部分的にキャンセルされるように、レンズ46への入射光が、各成分光ごとに、レンズ46による色収差を見込んで、ソフト的に変調される。
具体的には、R画像を表す画像データおよびB画像を表す画像データを、R画像バッファ190およびB画像バッファ194上においてそれぞれ移動させることにより、観察者の視界FOV内におけるR画像、G画像およびB画像の表示位置間の相対関係を補正し、それにより、レンズ46への入射光が、各成分光ごとに、ソフト的に変調される。
これに対し、本実施形態においては、各レーザ90,92,94(正確には、各レーザ90,92,94のうち強度変調器として機能する部分)への各駆動信号の出力タイミングが水平方向(左右方向)と垂直方向(上下方向)とにそれぞれ調整され、それにより、観察者の視界FOV内におけるR画像、G画像およびB画像の表示位置間の相対関係が水平方向と垂直方向とにおいてそれぞれ補正される。
図14に示すように、Rレーザ90,Gレーザ92およびBレーザ94には、水平方向タイミング発生回路240が接続されている。この水平方向タイミング発生回路240は、Rレーザ90,Gレーザ92およびBレーザ94にそれぞれ、水平方向タイミング信号を供給する。
一方、本実施形態においては、各レーザ90,92,94から連続的に出力されるレーザビームが、水平走査用スキャナ76によって水平方向に走査される。したがって、水平方向タイミング発生回路240により、複数の単色画像の表示位置間の相対関係を、水平走査用スキャナ76の走査方向と同じ方向すなわち水平方向に変更することが可能である。
図14に示すように、垂直走査用スキャナ78には、垂直方向タイミング発生回路242が接続されている。この垂直方向タイミング発生回路242は、垂直走査用スキャナ78に、垂直方向タイミング信号を供給する。
水平方向タイミング発生回路240は、Rレーザ90,Gレーザ92およびBレーザ94にそれぞれ水平方向タイミング信号を、互いに異なる遅延時間のもとに(互いに異なるタイミングで)供給することが可能である。したがって、この水平方向タイミング発生回路240は、視界FOV内におけるR画像、G画像およびB画像の、水平方向における表示位置を、各単色画像ごとに個別に変更することが可能である。
さらに、この水平方向タイミング発生回路240は、視界FOV内におけるR画像、G画像およびB画像の、垂直方向における表示位置も、各単色画像ごとに個別に変更することが可能である。例えば、この水平方向タイミング発生回路240が、Rレーザ90に、水平方向タイミング信号を、1本の水平走査線に見合う時間より長い時間遅延するように供給すれば、R画像の、垂直方向における表示位置も個別に変更することが可能である。
一方、垂直方向タイミング発生回路242から出力される垂直方向タイミング信号を参照すれば、画像フレームの表示開始点の、垂直方向における位置が特定される。
図14に示すように、コントローラ172は、タイミング調整部244を備えている。このタイミング調整部244は、水平方向タイミング発生回路240と垂直方向タイミング発生回路242とに接続されている。このタイミング調整回路244は、水平方向タイミング発生回路242から各レーザ90,92,94への駆動信号の出力タイミングを、画素の整数倍に対応する周波数で調整する。
具体的には、タイミング調整部244は、各単色画像ごとに、前述のx方向移動量Lxおよびy方向移動量Lyと、垂直方向タイミング発生回路242から出力された垂直方向タイミング信号とに基づき、水平方向タイミング発生回路242から各レーザ90,92,94への駆動信号の出力タイミングの遅延量を決定する。このタイミング調整部244は、各単色画像ごとに、決定した遅延量を表す電気信号、各レーザ90,92,94に出力する。
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の開示]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。