JP5353295B2 - 単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶等の単結晶を原料融液から育成する単結晶の製造方法および該製造方法により製造される単結晶に関し、特に、結晶欠陥の少ない高品質の単結晶を作製することが可能な単結晶の製造方法、及びこの製造方法により作製された単結晶に関するものである。
単結晶を製造するには種々の方法があるが、最も代表的な方法がチョクラルスキー法である。
このチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の育成では、シリコンの原料融液に種結晶を浸漬し、この状態から引き上げ速度および原料融液の加熱温度を制御しながら種結晶を引き上げることにより、種結晶の下方に円柱状のシリコン単結晶を育成する。
一方、半導体デバイスの製造工程では、シリコンウェーハ上に各種デバイスを作り込んでいるが、このシリコンウェーハは、育成されたシリコン単結晶から切り出される。
このようなシリコン単結晶の育成においては、円柱状のシリコン単結晶の直径を制御することと、シリコン単結晶の品質に強く影響する引き上げ速度の移動平均を制御することが,製品品質ならびに製造費用の観点から極めて重要となる。
一般的なシリコン単結晶の直径制御方法としては、引き上げ速度およびヒータ電力を操作変数とする制御方法がある。この一般的な直径制御方法の問題点は、シリコン単結晶の品質と強く相関する引き上げ速度が、直径制御の操作変数として利用されるために、シリコン単結晶の品質に強く影響する引き上げ速度の移動平均は制御されないことである。
そこで、これを解決する方法として、例えば、平均引き上げ速度とヒータ温度を独立に制御することにより、シリコン単結晶を育成する方法が提案されている(特許文献1)。
この方法は、より具体的には、単結晶の直径に関して目標と実績に偏差がない定常時には、平均引き上げ速度とヒータ温度の両方を一定に固定し、非定常時には、直径偏差に応じて所定時間だけ引き上げ速度を変動させ、かつ、ヒータ温度を変動させる方法である。
特開2001−316199号公報
しかしながら、上述した平均引き上げ速度とヒータ温度を独立に制御する方法では、シリコン単結晶の直径を精度良く制御しつつ、結晶欠陥の少ない高品質のシリコン単結晶を得ることが難しいという問題点があった。
そもそも、直径偏差が生じない定常時には直径制御は必要ではなく、直径偏差が生じる非定常時にこそ、直径制御が必要とされるのであるのに対し、前記の方法では、引き上げ速度の変動を所定時間のみに限定するため、平均引き上げ速度の変動が大きくならないことが期待されるものの、所定時間という限定が加わっていることにより、直径偏差をなくすことができない。
また、この直径偏差を補償するべくヒータ温度を操作したとしても、ヒータ温度が直径に影響するまでの時間は、引き上げ速度が直径に影響するまでの時間と比較してもはるかに長く、したがって、適切な直径制御を行うことが難しく、多くの場合、直径偏差が大きくなってしまうという問題点があった。
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであって、従来の直径制御に主眼を置いた単結晶の製造方法では難しかった引き上げ速度の移動平均値を制御することにより、結晶欠陥の少ない高品質の単結晶を作製することが可能な単結晶の製造方法、及びこの製造方法により作製された単結晶を提供することを目的とする。
本発明の単結晶の製造方法は、チョクラルスキー法により単結晶を育成する単結晶の製造方法において、
前記単結晶を引き上げる過程にて、前記引き上げ速度の操作量の上下限値の算出、及び、これら前記単結晶の引き上げ速度の設定値と上下限値に基づいたシリコン単結晶の品質と相関が強い前記単結晶の引き上げ速度の移動平均値の制御、を繰り返し行い、前記単結晶の直径を制御するとともに、
前記引き上げ速度の操作量の上下限値を、前記引き上げ速度の移動平均値が予め設定した許容範囲に入るように算出し、その制約条件内で直径を制御することにより引き上げ速度移動平均値も予め設定した許容範囲内に制御することを特徴とする。
本発明の第1の単結晶の製造方法は、チョクラルスキー法により単結晶を育成する単結晶の製造方法において、前記単結晶を引き上げる過程にて、前記引き上げ速度の操作量の上下限値の算出、及び、これら設定値と上下限値に基づ前記単結晶の引き上げ速度の移動平均値の制御、を繰り返し行い、前記単結晶の直径を制御することができる。
本発明の第2の単結晶の製造方法は、上記の単結晶の製造方法において、前記引き上げ速度の操作量の上下限値を、前記引き上げ速度の移動平均値が予め設定した許容範囲に入るように算出し、その制約条件内で直径を制御することにより引き上げ速度移動平均値も予め設定した許容範囲内に制御することができる。
本発明の第3の単結晶の製造方法は、上記の単結晶の製造方法において、前記単結晶の引き上げ速度の引上開始前に引き上げ速度の目標値を予め設定しておき、前記単結晶の引き上げ速度を、前記引き上げ速度の移動平均値の実測値が前記目標値に一致するように、修正することができる。
本発明の単結晶は、上記のいずれか記載の単結晶の製造方法により製造されたことができる。
本発明の第1の単結晶の製造方法によれば、単結晶を引き上げる過程にて、単結晶の引き上げ速度の設定値及び引き上げ速度の操作量の上下限値の算出、及び、これら設定値、上下限値に基づく単結晶の引き上げ速度の移動平均値の制御、を繰り返し行い、単結晶の直径を制御するので、単結晶の引き上げ速度の移動平均値を時々刻々制御することにより、単結晶の軸方向の品質のばらつきを低減することができ、高品質の単結晶を安定して製造することができる。
本発明の第2の単結晶の製造方法によれば、引き上げ速度の移動平均値が許容範囲に入るように算出するので、単結晶の軸方向の品質のばらつきをさらに低減することができ、高品質の単結晶をより安定して製造することができる。
本発明の第3の単結晶の製造方法によれば、単結晶の引き上げ速度の引上開始前に引き上げ速度の目標値を予め設定しておき、単結晶の引き上げ速度を、引き上げ速度の移動平均値の実測値が目標値に一致するように、修正するので、単結晶の引き上げ速度を最適化することができ、単結晶の軸方向の品質のばらつきをさらに低減することができ、高品質の単結晶をさらに安定して製造することができる。
本発明の単結晶によれば、上記のいずれか記載の単結晶の製造方法により製造されたので、軸方向の品質のばらつきを低減することができ、しかも、高品質の単結晶である。
本発明の一実施形態の単結晶の製造方法を示す流れ図である。 本発明の実施例の引き上げ速度の移動平均を制御する様を示す図である。 図2の拡大図である。
本発明の単結晶の製造方法及び単結晶を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本発明の一実施形態の単結晶の製造方法について、図1に基づき説明する。
(1)引き上げ速度の移動平均を評価する引き上げ長LC1の決定
まず、引き上げ速度の設定値V0に合致させるべき引き上げ速度の移動平均値V1を算出するための引き上げ長LC1を決定する(SP1)。
この引き上げ長LC1は、シリコン単結晶の品質と相関が強い引き上げ速度の移動平均値を算出するための引き上げ長である。
この引き上げ長LC1としては、単結晶が、結晶欠陥に影響する空孔や格子間シリコンを拡散させることができる温度領域を通過する時間に相当する引き上げ長さが好ましい。
(2)許容範囲の決定
引き上げ速度の設定値V0と、引き上げ長LC1に対応する引き上げ速度の移動平均値V1の偏差の許容範囲を決定する(SP2)。
この許容範囲は、欠陥密度の低い高品質の単結晶シリコンを得るために許容できる範囲とすることが好ましく、欠陥密度の低い高品質のシリコン単結晶を育成する際の引き上げ速度の移動平均値V1と結晶欠陥の関係の実績から決定することができる。
(3)引き上げ速度の移動平均値V2の算出
SP1にて決定した引き上げ長L1の範囲内から適当な任意の値を取り出して引き上げ長LC2(LC2<LC1)とし、この引き上げ長L2に基づき引き上げ速度の移動平均値V2を算出する(SP3)。
この引き上げ速度の移動平均値V2は、引き上げ速度の操作量の上下限値を修正する際に利用される。
(4)引き上げ速度上下限値の算出
引き上げ長LC1における引き上げ速度の移動平均値V1が引き上げ速度の設定値V0からの許容範囲内に入るように、引き上げ速度の上下限値を算出する(SP4)。
(5)引き上げ速度の設定値を修正するための評価対象の引き上げ長の決定
過去の引き上げ速度移動平均実績値を評価するための引き上げ長LP1と、将来の引き上げ速度移動平均を評価するための引き上げ長LP2を決定する(SP5)。
(6)過去の引き上げ長LP1に対応する引き上げ速度移動平均値の算出
過去の引き上げ長LP1に対応する引き上げ速度移動平均値を算出する(SP6)。
(7)引き上げ速度設定値に対する修正量の算出
初期に設定した引き上げ速度設定値に、引き上げ速度移動平均実績が合致するように、前記LC1と前記LP1の引き上げ速度移動平均実績値と前記LP2の各値から、引き上げプロセスにおいてねらいとする引き上げ速度設定値の修正量を算出する(SP7)。
(8)引き上げ速度設定値の修正
前記引き上げ速度修正量を、初期に設定した引き上げ速度設定値に足し合わせることにより、引き上げ速度設定値を修正する(SP8)。
(9)単結晶の直径制御
前記の修正した引き上げ速度設定値を用いて、前記の引き上げ速度の操作量の上下限値の範囲内で、この引き上げ速度の操作量を設定するとともに、この操作量の範囲内で、引き上げ速度及び育成する単結晶の原料融液を加熱するためのヒータ電力を操作変数とする単結晶の直径制御を行う(SP9)。
以上のように、チョクラルスキー法により育成する単結晶を引き上げる過程中に、時々刻々、単結晶の引き上げ速度の設定値を修正し、かつ引き上げ速度の操作量の上下限値を更新しながら、引き上げ速度及びヒータ電力を操作変数として単結晶の直径制御を行うので、単結晶の全長に亘って最適な引き上げ速度にて育成させることができる。したがって、単結晶の軸方向における直径のばらつきが極めて小さく、かつ引き上げ速度移動平均が制御されて、欠陥の無い高品質の単結晶を安定して製造することができる。
さらに、単結晶の引き上げ速度の引上開始前に引き上げ速度の目標値を予め設定しておき、単結晶の引き上げ速度を、引き上げ速度の移動平均値の実測値が目標値に一致するように修正することとすれば、単結晶の引き上げ速度をさらに最適化することができ、単結晶の軸方向の品質のばらつきをさらに低減することができ、高品質の単結晶をさらに安定して製造することができる。
以上説明したように、本実施形態の単結晶の製造方法によれば、引き上げ速度の操作量の上下限値の算出、及び、これら設定値と上下限値に基づく単結晶の引き上げ速度の移動平均値の制御、を時々刻々行い、単結晶の直径を制御するので、単結晶の軸方向の品質のばらつきを低減することができ、高品質の単結晶を安定して製造することができる。
以下、実施例により本発明を説明する。
図1に示す単結晶の製造方法により、シリコン単結晶の引き上げを行った。
ここでは、シリコン単結晶の直径制御を行うためのソフトウエアをチョクラルスキー法による単結晶引き上げ装置に搭載することで実施した。
引き上げ速度移動平均を評価する引き上げ長LC1を例えばXmmとすれば、引き上げ速度のXmm移動平均値の上下限値は、引き上げ速度のXmm移動平均値、引き上げ速度の設定値、及び許容割合の制約から記述することができる。
また、引き上げ速度のXmm移動平均は、連続するγmmとδmmの引き上げ速度の移動平均として記述することができる。
次に前記の各値を用いて、引き上げ速度の下限値及び上限値を算出することができる。
次いで、引き上げ速度の移動平均値の算出対象の引き上げ長、引き上げ速度の設定値を補正する将来の引き上げ長及び過去の引き上げ速度の移動平均値を用いて、引き上げ速度の設定値の補正量及び引き上げ速度の設定値の修正値を順次算出した。
以上のような工程の具体的な計算式を示すと以下の通りになる。
引き上げ速度の上下限値は、式(1)〜式(8)に基づき算出した。
ここで、式(1)及び式(2)は、引き上げ速度のXmm移動平均値の上下限値を許容割合から算出する計算式である。
PS_X≧(1−α)×PS_pf …(1)
PS_X≦(1+β)×PS_pf …(2)
ただし、PS_X:引き上げ速度のXmm移動平均値
PS_pf:引き上げ速度の設定値
α:負方向の許容割合
β:正方向の許容割合
式(3)は、引き上げ速度のγmm移動平均値と引き上げ速度のβmm移動平均値が満たす関係式である。
PS_X=PS_γ×γ/X+PS_δ×δ/X …(3)
ただし、PS_γ:γmm移動平均値
PS_δ:δmm移動平均値
X:移動平均を算出する引き上げ長
式(4)は、γ及びβが満たす関係式である。
γ+β=X …(4)
式(5)及び式(6)は、式(3)から得られる式である。
PS_δ×δ/X=PS_X−PS_γ×(γ/X) …(5)
PS_δ=(PS_X−PS_γ×γ/X)×(X/δ) …(6)
式(7)は、引き上げ速度の下限値を算出する式であり、式(6)及び式(1)から得られる。
δma_V_LL=((1−α)×PS_pf−PS_γ×γ/X)×(X/δ) …(7)
式(8)は、引き上げ速度の上限値を算出する式であり、式(6)及び式(2)から得られる。
δma_V_UL=((1+β)×PS_pf−PS_γ×γ/X)×(X/δ) …(8)
式(9)〜式(11)は、補正後の引き上げ速度の設定値を算出する式である。
PS_pf={LP1×PS_LP1+LP2×(PS_pf+PS_pf_r)}/(LP1+LP2) …(9)
PS_pf_r={PS_pf×(LP1+LP2)−LP1×PS_LP1}/LP2−PS_pf …(10)
PS_pf_mod=PS_pf+PS_pf_r …(11)
ただし、LP1:引き上げ速度の移動平均値を算出する過去の引き上げ長(mm)
LP2:引き上げ速度の設定値を補正する将来の引き上げ長(mm)
PS_LC1:過去L1(mm)の引き上げ速度の移動平均値(mm/min)
PS_pf:引き上げ速度の設定値(mm/min)
PS_pf_r:引き上げ速度の設定値の補正量(mm/min)
PS_pf_mod:引き上げ速度の設定値の修正値(mm/min)
図2は、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の引き上げを行った場合の引き上げ速度の移動平均を制御する様を示す図、図3は図2の拡大図である。
これらの図では、引き上げ速度の瞬時値を細線、引き上げ速度の移動平均を太線、引き上げ速度の目標値を二点鎖線、引き上げ速度の移動平均の許容範囲を破線、直径制御の操作変数である引き上げ速度の上下限値を一点鎖線で表してある。
ここでは、許容割合であるαおよびβを、各々3%と設定した。
これらの図から、引き上げ速度の動きと引き上げ速度の上下限値が対応していることが分かる。すなわち、230mm近辺で引き上げ速度の上限値および下限値は上方にシフトしているが、その前の210mm近辺、あるいは220mm近辺での引き上げ速度は目標値を下回っている。
このように、引き上げ速度の過去の実績を評価し、将来の引き上げ速度の制約条件を時々刻々設定することで、引き上げ速度の移動平均を目標値からの許容割合内に制御することができることが分かる。

Claims (2)

  1. チョクラルスキー法により単結晶を育成する単結晶の製造方法において、
    前記単結晶を引き上げる過程にて、前記引き上げ速度の操作量の上下限値の算出、及び、これら前記単結晶の引き上げ速度の設定値と上下限値に基づいたシリコン単結晶の品質と相関が強い前記単結晶の引き上げ速度の移動平均値の制御、を繰り返し行い、前記単結晶の直径を制御するとともに、
    前記引き上げ速度の操作量の上下限値を、前記引き上げ速度の移動平均値が予め設定した許容範囲に入るように算出し、その制約条件内で直径を制御することにより引き上げ速度移動平均値も予め設定した許容範囲内に制御することを特徴とする単結晶の製造方法。
  2. 前記単結晶の引上開始前に引き上げ長毎に引き上げ速度の目標値を予め設定しておき、 前記単結晶の引き上げ速度を、前記引き上げ速度の移動平均値の実測値が前記目標値に一致するように、修正することを特徴とする請求項記載の単結晶の製造方法。
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