JP5352968B2 - 高分子化合物および高分子発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は、高分子化合物およびそれを用いた高分子発光素子(高分子LED)に関する。
高分子量の発光材料は通常、溶媒に可溶であるため塗布法により発光素子における有機層を形成でき、素子の大面積化等の要求に合致している。このため、近年種々の高分子発光材料となりうる高分子化合物およびそれを用いた高分子発光素子が提案されている(例えば、非特許文献1)。
Advanced Materials Vol.12 1737-1750 (2000)
発光素子は、高い安定性を有していること、すなわち長寿命であること、さらに、その発光効率が高い、すなわち電流あたりの発光輝度が高いことが望まれる。しかしながら、これまでの高分子化合物を発光素子に用いたときに、その素子の効率および寿命のバランスは未だ十分なものではなかった。
本発明の目的は、発光素子の材料として用いた際に、長寿命と高い発光効率をバランスよく備えた発光素子を与えることができる高分子化合物を提供することにある。
即ち本発明は、第一の態様として、共役系高分子主鎖と、以下の(a)、(b)および(c)から選ばれる1種以上の側鎖とを有する高分子化合物を提供するものである。

(a)電子輸送性を有する側鎖であって、該側鎖のLUMOエネルギーの値と該共役系高分子主鎖のLUMOエネルギーの値とが互いに異なり、その差の絶対値が0.3eV以下である側鎖。
(b)正孔輸送性を有する側鎖であって、該側鎖のHOMOエネルギーの値と該共役系高分子主鎖のHOMOエネルギーの値とが互いに異なり、その差の絶対値が0.3eV以下である側鎖。
(c)電子輸送性および正孔輸送性を有する側鎖であって、該側鎖のLUMOエネルギーの値と該共役系高分子主鎖のLUMOエネルギーの値とが互いに異なり、その差の絶対値が0.3eV以下であり、かつ該側鎖のHOMOエネルギーの値と該共役系高分子主鎖のHOMOエネルギーの値とが互いに異なり、その差の絶対値が0.3eV以下である側鎖。
また、本発明は、第二の態様として、下記一般式(4)で表され、かつ下記一般式(2)で表される基を有する繰返し単位を含む高分子化合物を提供するものである。
Figure 0005352968

〔式中、Ar6はビフェニル−4,4’−ジイル基、フルオレン−2,7−ジイル基、フェナントレン−3,8−ジイル基、トリフェニルアミン−4,4’−ジイル基またはそれらから独立に選ばれる2つ以上の基が互いに結合した2価の基を表す。該Ar6は置換基を有していてもよい。R1a〜R8a、R1b〜R8bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、C3−C20ヘテロアリール基、C1−C12アルキルオキシ基、C6−C26アリールオキシ基、C3−C20ヘテロアリールオキシ基、C1−C12アルキルチオ基、C6−C26アリールチオ基、C3−C20ヘテロアリールチオ基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、−NQ23(ここに、Q2およびQ3はそれぞれ独立に、水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基またはC3−C20ヘテロアリール基を表す。)、−C≡N、−NO2、結合手または−Z’−で表される基(ここに、Z’は直鎖、分岐、もしくは環状のC1−C20アルキレン基、C6−C26アリーレン基、2価のC3−C20ヘテロ芳香族基、−O−、−S−、−C(=O)−、またはこれらの基から選ばれる2つ以上の基が組み合わされた2価の基である。)但し、R1a〜R8a、R1b〜R8bのうちの少なくとも一つは、結合手であるか、または−Z’−で表される基である。〕

Figure 0005352968
〔式中、A環及びB環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれA環又はB環上に存在し、YはA環上の2個の原子とB環上の2個の原子と一緒になって5員環又は6員環を形成する原子又は原子団を表す。〕
本発明の高分子化合物は、発光素子の材料として用いることにより、その発光素子の寿命と発光効率とを高いバランスで実現することができる。したがって、本発明の高分子化合物を含む高分子発光素子は、液晶ディスプレイのバックライトまたは照明用としての曲面状や平面状の光源、セグメントタイプの表示素子、ドットマトリックスのフラットパネルディスプレイなどの装置に好適に使用できる。
本発明における共役系高分子主鎖とは、共役系高分子からなる主鎖をいう。本発明における共役系高分子とは、主鎖骨格上に共役系が広がった高分子化合物であり、ポリフルオレン、ポリフェニレンといったアリーレン基を構成単位とするポリアリーレン;ポリチオフェン、ポリジベンゾフランといった2価のヘテロ芳香族基を構成単位とするポリへテロアリーレン;ポリフェニレンビニレン等のポリアリーレンビニレン、また、それらの構成単位が組み合わされた共重合体が例示される。また、主鎖内にへテロ原子等を構成単位として含んでいても実質的に共役がつながるものであればよく、構成単位としてトリフェニルアミンから導かれる構成単位等を含んでいてもよい。
本発明の高分子化合物における共役系高分子主鎖の中では、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を含むものが本発明の高分子化合物を高分子発光素子に用いる場合の効率、寿命の観点から好ましい。

Figure 0005352968
〔式中、A環及びB環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれA環およびB環上に存在し、YはA環上の2個の原子とB環上の2個の原子と一緒になって5員環又は6員環を形成する原子又は原子団を表す。〕
前記式(4)中、A環及びB環で表される芳香族炭化水素環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
前記式(4)中、Yとしては、例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含む基が挙げられ、具体的には、−C(Q4)(Q5)−、−C(=O)−、−O−、−S−、−SO2−、−N(Q6)−等の2価の基、および、それらから選ばれる2つの基が結合した−OC(Q4)(Q5)−、−N(Q6)C(Q4)(Q5)−等の2価の基が挙げられる。Q4、Q5、Q6はそれぞれ独立に、水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、又はC3−C20ヘテロアリール基を表す。
1−C12アルキル基(C1−C12は、炭素原子数が1〜12であることを示す。)としては直鎖状、分岐状、あるいは環状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が例示される。
4、Q5、Q6で表されるC1−C12アルキル基としては、溶解性の観点から、中でも、2−メチルブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のC5−C8アルキル基が好ましい。
6−C26アリール基としてはフェニル基、4−トリル基、4−ヘキシルフェニル基、4−オクチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル基、4−(2−エトキシエチルオキシ)フェニル基、9−アントラニル基などが例示される。アリール基は縮合環を有していてもよい。
4、Q5、Q6で表されるC6−C26アリール基としては、溶解性の観点から、中でも、4−ヘキシルフェニル基、4−オクチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル基、4−(2−エトキシエチルオキシ)フェニル基等のアルキル基、アルコキシ基で置換されたフェニル基が好ましい。
3−C20ヘテロアリール基としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基等が例示される。ヘテロアリール基は縮合環を有していてもよい。
前記式(4)で表される繰り返し単位としては、例えば、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、ベンゾフルオレンジイル基、ジベンゾフランジイル基、ジベンゾチオフェンジイル基、カルバゾールジイル基、ジベンゾピランジイル基、フェナントレンジイル基等が挙げられ、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、または置換基を有していてもよいベンゾフルオレンジイル基が好ましい。
本発明の高分子化合物は、第一の態様として、上記共役系高分子主鎖に加え、以下の(a)、(b)および(c)から選ばれる1種以上の側鎖とを有する。

(a)電子輸送性を有する側鎖であって、該側鎖のLUMOエネルギーの値と該共役系高分子主鎖のLUMOエネルギーの値とが互いに異なり、その差の絶対値が0.3eV以下である側鎖。その差の絶対値は0.2eV以下であることが好ましく、0.15eV以下であることがより好ましい。また、該絶対値は0.01eV以上であることが好ましく、0.05eV以上であることがより好ましい。
(b)正孔輸送性を有する側鎖であって、該側鎖のHOMOエネルギーの値と該共役系高分子主鎖のHOMOエネルギーの値とが互いに異なり、その差の絶対値が0.3eV以下である側鎖。その差の絶対値は0.2eV以下であることが好ましく、0.15eV以下であることがより好ましい。また、該絶対値は0.01eV以上であることが好ましく、0.05eV以上であることがより好ましい。
(c)電子輸送性および正孔輸送性を有する側鎖であって、該側鎖のLUMOエネルギーの値と該共役系高分子主鎖のLUMOエネルギーの値とが互いに異なり、その差の絶対値が0.3eV以下であり、および、該側鎖のHOMOエネルギーの値と該共役系高分子主鎖のHOMOエネルギーの値とが互いに異なり、その差の絶対値が0.3eV以下である側鎖。その差の絶対値は0.2eV以下であることが好ましく、0.15eV以下であることがより好ましい。また、該絶対値は0.01eV以上であることが好ましく、0.05eV以上であることがより好ましい。
本発明の高分子化合物は、上記(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖を2種以上有していてもよい。
本発明の高分子化合物は、上記(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖以外の側鎖を有していてもよい。
本発明の高分子化合物が有する、上記(a)、(b)および(c)から選ばれる1種以上の側鎖としては、(a)または(c)の側鎖が好ましく、中でも(c)の側鎖がより好ましい。
なお、LUMO(最低空軌道、Lowest Unoccupied Molecular Orbital)とは、電子の入っていない分子軌道のうちで、もっともエネルギーが低い分子軌道をいうものであり、同様にHOMO(最高被占軌道、Highest Occupied Molecular Orbital)とは、電子の入った軌道のうちで、もっともエネルギーが高い分子軌道をいうものであり、
上記(a)、(b)および(c)における、側鎖のLUMOおよびHOMOエネルギーの値は、該側鎖に水素原子を付加して得られるモデル化合物につき分子軌道計算を行うことにより求められたエネルギーの値をいう。
分子軌道計算は以下のように行うことができる。
即ち、上記モデル化合物につき、半経験的分子軌道法 MOPAC2002 Version 1.00を用い、AM1法(Dewar,M.J.S.et al,J.Am.Chem.Soc.,107,3902(1985))により最安定構造を求める計算を行い(キーワード:AM1 PRECISE EF により最終収束に達するまで計算を繰り返す)、
これにより、該モデル化合物のLUMOおよびHOMOの分布およびエネルギー値を得ることができる。
共役系高分子主鎖のLUMOおよびHOMOエネルギーの値は、次のようにして決定したモデル化合物につき、上記と同じ方法で分子軌道計算を行うことにより求められたエネルギーの値をいう。
共役系高分子主鎖のLUMOおよびHOMOエネルギーの値の計算に用いるモデル化合物は、計算対象の高分子化合物が有する、全ての側鎖を水素原子で置換して得られるポリマーの構造により以下のように決定される。
(i)該ポリマーが、ホモポリマー、交互コポリマー、3種以上の副単位が規則的に並んだコポリマーである周期コポリマーである場合:主鎖を構成する構成繰返し単位が3つ連なった2価の基に2個の水素原子を結合した化合物
〔例〕構成単位Aからなるホモポリマ−(・・・−A−A−A−A−A−・・・)の場合
:モデル化合物 はH−A−A−A−H (構成繰り返し単位はA)
〔例〕副単位A及びBからなる交互コポリマー(・・−A−B−A−B−A−B−・・・・・)の場合
:モデル化合物 H−A−B−A−B−A−B−H(構成繰り返し単位は、−A−B−)
(ii)該ポリマーがランダムコポリマーの場合
ランダムコポリマーを構成する副単位の比率と等しい最小単位(副単位の組み合わせ)で、同成分同士が最も隣り合わないように配置したものを繰り返し単位として、その繰返し単位が3つ連なった2価の基に2個の水素原子を結合した化合物。
〔例〕A:Bが1:2のランダムコポリマーの場合
:モデル化合物 H−A−B−A−A−B−A−A−B−A−H
(副単位の比率と等しい最小単位(副単位の組み合わせ)で、同成分同士が最も隣り合わないように配置した繰返し単位は、−A−B−A−)
(iii)該ポリマーがブロックコポリマーの場合
(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖が結合している主鎖中の副単位が属するブロックに関して、そのブロックがホモポリマー、交互コポリマー、3種以上の副単位が規則的に並んだコポリマーである周期コポリマーのいずれかからなる場合は、上記(a)により、ランダムコポリマーからなる場合は(b)によりモデル化合物を決定する。
該側鎖の結合したブロックが複数種類ある場合は、それらのブロックすべてに関し、同様の方法で計算したLUMOエネルギーの値の中で、最も側鎖のLUMOエネルギーの値に近いものを主鎖のLUMOエネルギーとする。
またそれらのブロックすべてに関し、同様の方法で計算したHOMOエネルギーの値の中で、最も側鎖のHOMOエネルギーの値に近いものを主鎖のHOMOエネルギーの値とする。
上記(a)における電子輸送性を有する側鎖とは、電子を輸送する機能を有する部分構造を有する側鎖(基を含む)であり、非局在化したLUMOの分布を有する2個以上の芳香環が共役した構造を有するものが挙げられ、広い意味で、電子注入性基、正孔阻止性基も電子輸送性基に含まれる。従来、電子の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の電子注入層、電子輸送層に使用される公知の化合部の部分構造を用いることができる。
その具体的な構造としては、例えばピリジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環のような含窒素芳香環が含まれる共役した構造を有する基が挙げられ、より具体的には、以下に示すような化合物の部分構造を有する基が挙げられる。
ここで、以下に示す化合物のいずれかの原子部位に結合手が設けられ、電子輸送性を有する側鎖となる)


Figure 0005352968
上記(b)における正孔輸送性を有する側鎖とは、正孔を輸送する機能を有する部分構造を有する側鎖(基を含む)であり、非局在化したHOMOの分布を有する2個以上の芳香環が共役した構造を有するものが挙げられ、広い意味で、正孔注入性基、電子阻止性基も正孔輸送性基に含まれる。従来、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知の化合物の部分構造を有する側鎖を用いることができる。
。その具体的な構造としては、芳香族アミン骨格を有する基や、カルバゾール骨格を有する基が挙げられ、より具体的には、以下に示すような化合物の部分構造を有する基が挙げられる。
(ここで、以下に示す化合物のいずれかの原子部位に結合手が設けられ、正孔輸送性を有する側鎖となる)


Figure 0005352968
上記(c)における電子輸送性および正孔輸送性を有する側鎖とは、電子及び正孔を輸送する機能を有する部分構造を有する側鎖(基を含む)であり、非局在化したHOMOの分布を有する2個以上の芳香環が共役した構造、および、非局在化したLUMOの分布を有する2個以上の芳香環が共役した構造を有する。
電子輸送性および正孔輸送性を有する側鎖としては、具体的には、下式で表される、電子輸送性、および、正孔輸送性の両方を有する化合物として知られる(4,4’−ビス(9−カルバゾイル)−ビフェニル)(CBP)の構造を含む基が例示される。
Figure 0005352968
本発明の高分子化合物が有する(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖の中では、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも1つの水素原子の結合部位が結合手である化合物残基または当該残基に、さらに−Z−で示される基が結合してなる化合物残基が好ましい。

Figure 0005352968
〔式中、Ar1はC6−C26アリーレン基、2価のC3−C20ヘテロ芳香族基、トリフェニルアミン−4,4’−ジイル基、またはこれらの基から選ばれる2個以上の基が直接または −N(Q1)− で表される2価の基(ここに、Q1は水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基またはC3−C20ヘテロアリール基を表す。)を介して結合した2価の芳香族基を表し、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5はそれぞれ独立にC6−C26アリーレン基または2価のC3−C20ヘテロ芳香族基を表し、XaはAr2、Ar3および窒素原子と一緒になって、6員環を形成するための原子もしくは原子団または直接結合を表し、XbはAr4、Ar5および窒素原子と一緒になって、6員環を形成するための原子もしくは原子団または直接結合を表す。Zは2価の基を表す〕
前記式(1)中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5で表されるC6−C26アリーレン基の環を構成する炭素数は6〜26である。このアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ターフェニルジイル基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ペンタレンジイル基、インデンジイル基、ヘプタレンジイル基、インダセンジイル基、トリフェニレンジイル基、ビナフチルジイル基、フェニルナフチレンジイル基、スチルベンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5で表されるアリーレン基は、置換基を有していてもよく、その置換基を含めた炭素数は6〜60程度である。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5で表される2価のC3−C20ヘテロ芳香族基の環を構成する炭素数は、3〜20である。ここで、2価のヘテロ芳香族基とは、芳香族複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。この2価の複素環基の具体例としては、ピリジン−ジイル基、ジアザフェニレン基、キノリンジイル基、キノキサリンジイル基、アクリジンジイル基、ビピリジルジイル基、フェナントロリンジイル基等が挙げられる。Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5で表される2価のC3−C20ヘテロ芳香族基は、置換基を有していてもよく、その置換基を含めた炭素数は3〜60程度である。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5で表されるC6−C26アリーレン基、および2価のC3−C20ヘテロ芳香族基が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、C3−C20ヘテロアリール基、C1−C12アルキルオキシ基、C6−C26アリールオキシ基、C3−C20ヘテロアリールオキシ基、C1−C12アルキルチオ基、C6−C26アリールチオ基、C3−C20ヘテロアリールチオ基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、−N(Q2)(Q3)(ここに、Q2およびQ3はそれぞれ独立に、水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基またはC3−C20ヘテロアリール基を表す。)、−C≡N、−NO2が挙げられる。
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
1−C12アルキル基(としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC1−C12アルキル基と同様の基が例示される。
6−C26アリール基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC6−C26アリール基と同様の基が例示される。
3−C20ヘテロアリール基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC3−C20ヘテロアリール基と同様の基が例示される。
1−C12アルキルオキシ基としては直鎖状、分岐状、あるいは環状のいずれでもよく、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、2−メチルブチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が例示される。
6−C26アリールオキシ基としては、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが例示される。
3−C20ヘテロアリールオキシ基としては、2−チエニルオキシ基などが例示される。
1−C12アルキルチオ基としては、前記C1−C12アルキルオキシ基の例示における酸素原子を硫黄原子に置き換えたものが例示される。
6−C26アリールチオ基としては、前記C6−C26アリールオキシ基の例示における酸素原子を硫黄原子に置き換えたものが例示される。
3−C20ヘテロアリールチオ基としては、前記C3−C20ヘテロアリールオキシ基の例示における酸素原子を硫黄原子に置き換えたものが例示される。
2−C12アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、1―スチリル基、2−スチリル基などが例示される。
2−C12アルキニル基としては、アセチレニル基、プロピニル基、フェニルアセチレニル基などが例示される。
−N(Q2)(Q3)で表される基としては、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ−(4−トリル)アミノ基、ジ−(4−メトキシフェニル)アミノ基、ベンジルアミノ基などが例示される。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5で表されるC6−C26アリーレン基、および2価のC3−C20ヘテロ芳香族基が有してもよい置換基としては、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、−N(Q2)(Q3)で表される基が好ましい。
Ar1で表される基の中では、置換されていてもよいフェニレン基、置換されていてもよいビフェニルジイル基、又は下記構造式(3):
Figure 0005352968
(3)
〔式中、a環及びb環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれa環及び/又はb環上に存在し、Xはa環上の2個の原子と及びb環上の2個の原子と一緒になって5員環又は6員環を形成する原子又は原子団を表す。〕
で表される基が、本発明の高分子化合物を高分子発光素子に用いる場合の効率、寿命の観点から好ましい。
前記式(3)中、a環及びb環で表される芳香族炭化水素環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
前記式(3)中、Xとしては、例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含む基が挙げられ、具体的には、−C(Q7)(Q8)−、−C(=O)−、−O−、−S−、−SO2−、−N(Q9)−等の2価の基、および、それらから選ばれる2つの基が結合した2価の基が挙げられる。Q7、Q8、Q9はそれぞれ独立に、水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、又はC3−C20ヘテロアリール基を表す。
1−C12アルキル基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC1−C12アルキル基と同様の基が例示される。
6−C26アリール基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC6−C26アリール基と同様の基が例示される。
3−C20ヘテロアリール基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC3−C20ヘテロアリール基と同様の基が例示される。
前記式(3)で表される基としては、例えば、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、ジベンゾフランジイル基、ジベンゾチオフェンジイル基、カルバゾールジイル基、ジベンゾピランジイル基、フェナントレンジイル基等が挙げられる。
中でも、下記一般式(1)で表される化合物の1つの水素原子が結合手または−Z−(Zは2価の基を表す)に置換された基が合成の容易さの観点から好ましい。
−Z− で表される2価の基としては、合成の容易さの観点から、直鎖、分岐、もしくは環状のC1−C20アルキレン基、C6−C26アリーレン基、2価のC3−C20ヘテロ芳香族基、−O−、−S−、−N(Q10)−、−C(=O)−、または、それらから選ばれる2つ以上の基が組み合わされた2価の基が好ましい。Q10は、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C12アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C26アリール基、又は置換基を有していてもC3−C20ヘテロアリール基を表す。
1−C12アルキル基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC1−C12アルキル基と同様の基が例示される。
6−C26アリール基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC6−C26アリール基と同様の基が例示される。
3−C20ヘテロアリール基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC3−C20ヘテロアリール基と同様の基が例示される。
1−C20アルキレン基としては直鎖、分岐、あるいは環状のいずれでもよく、メチレン基、1,2−エタンジイル基、1,1−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基、1,2−プロパンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,2−シクロペンタンジイル基、1,6−ヘキサンジイル基、1,4−シクロヘキサンジイル基、1,2−シクロヘキサンジイル基、1,8−オクタンジイル基、1,10−デカンジイル基等が例示される。
前記式(1)において、Xaは直接結合、または、Ar2、Ar3、窒素原子と一緒になって、6員環を形成するための原子または原子団を表し、Xbは直接結合、または、Ar4、Ar5、窒素原子と一緒になって、6員環を形成するための原子または原子団を表す。
Ar2、Ar3、窒素原子と一緒になって、6員環を形成するための原子または原子団;Ar4、Ar5および窒素原子と一緒になって、6員環を形成するための原子または原子団としては、−O−、−S−、−N(Q11)−等があげられる。Q11は、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C12アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C26アリール基、又は置換基を有していてもC3−C20ヘテロアリール基を表す。
1−C12アルキル基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC1−C12アルキル基と同様の基が例示される。
6−C26アリール基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC6−C26アリール基と同様の基が例示される。
3−C20ヘテロアリール基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC3−C20ヘテロアリール基と同様の基が例示される。
Xa、Xbとしては直接結合が好ましい。
前記式(1)で表される基の中では、下記一般式(2)で表される基が好ましい。


Figure 0005352968
〔式中、Ar6はビフェニル−4,4’−ジイル基、フルオレン−2,7−ジイル基、フェナントレン−3,8−ジイル基、トリフェニルアミン−4,4’−ジイル基またはそれらから独立に選ばれる2つ以上の基が互いに結合した2価の基を表す。該Ar6は置換基を有していてもよい。R1a〜R8a、R1b〜R8bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、C3−C20ヘテロアリール基、C1−C12アルキルオキシ基、C6−C26アリールオキシ基、C3−C20ヘテロアリールオキシ基、C1−C12アルキルチオ基、C6−C26アリールチオ基、C3−C20ヘテロアリールチオ基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、−N(Q12)(Q13)(ここに、Q12およびQ13はそれぞれ独立に、水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基またはC3−C20ヘテロアリール基を表す。)、−C≡N、−NO2、結合手または−Z’−で表される基(ここに、Z’は直鎖、分岐、もしくは環状のC1−C20アルキレン基、C6−C26アリーレン基、2価のC3−C20ヘテロ芳香族基、−O−、−S−、−N(Q14)−、−C(=O)−、またはこれらの基から選ばれる2つ以上の基が組み合わされた2価の基である。(ここに、Q14はそれぞれ独立に、水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基またはC3−C20ヘテロアリール基を表す。))但し、R1a〜R8a、R1b〜R8bのうちの少なくとも一つは 結合手であるか、または−Z’−で表される基である。〕
1a〜R8a、R1b〜R8bで表されるハロゲン原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、C3−C20ヘテロアリール基、C1−C12アルキルオキシ基、C6−C26アリールオキシ基、C3−C20ヘテロアリールオキシ基、C1−C12アルキルチオ基、C6−C26アリールチオ基、C3−C20ヘテロアリールチオ基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、−N(Q12)(Q13)は、それぞれ、前記Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5で表されるC6−C26アリーレン基、および2価のC3−C20ヘテロ芳香族基が有してもよい置換基として説明した基とハロゲン原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、C3−C20ヘテロアリール基、C1−C12アルキルオキシ基、C6−C26アリールオキシ基、C3−C20ヘテロアリールオキシ基、C1−C12アルキルチオ基、C6−C26アリールチオ基、C3−C20ヘテロアリールチオ基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、−N(Q2)(Q3)と同様の基が例示される。
1a〜R8a、R1b〜R8bで表される基としては、水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、−N(Q12)(Q13)で表される基が好ましい。
1a〜R8a、R1b〜R8bで表される基のうち、−Z’−で表される2価の基としては、合成の容易さの観点から、直鎖、分岐、もしくは環状のC1−C20アルキレン基、C6−C26アリーレン基、2価のC3−C20ヘテロ芳香族基、−O−、およびそれらから選ばれる2つ以上の基が組み合わされた2価の基が好ましい。
1−C20アルキレン基としては、前記−Z−の説明におけるC1−C20アルキレン基と同様の基が例示される。
6−C26アリーレン基としては、前記Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5で表されるC6−C26アリーレン基と同様の基が例示される。
2価のC3−C20ヘテロ芳香族基としては、前記Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5で表される2価のC3−C20ヘテロ芳香族基と同様の基が例示される。
前記から選ばれる2つ以上の基が組み合わされた2価の基としては、−R1c−O−、−R2c−O−R3c−、−O−R4c−O−、−R5c−R6c−(R1c、R2c、R3cおよびR4cはそれぞれ独立に、C1−C20アルキレン基又はC6−C26アリーレン基を表し、R5cはC1−C20アルキレン基を表し、R6cはC6−C26アリーレン基を表す。)で表される2価の基が例示される。
式(2)で示される側鎖の中では、R1a〜R8a、R1b〜R8bのうち結合手または−Z’−であるものが1つだけであることが好ましく、R3a、R3b、R6a、R6bのいずれか一つが結合手または−Z’−であるものがより好ましい。
また、結合手、−Z’−の中では、結合手、−O−、C1−C20アルキレン基、または、−R2c−O−R3c−で示される基が好ましく、C1−C20アルキレン基、または、−R2c−O−R3c−で示される基がより好ましい。
−R2c−O−R3c−で示される基としてより具体的には、1,3−フェニレンオキシ−1,3−プロパンジイル基、1,4−フェニレンオキシ−1,3−プロパンジイル基、1,4−フェニレンオキシ−1,6−ヘキサンジイル基、1,1−エタンジイルオキシ−1,3−プロパンジイル基、1,1−エタンジイルオキシ−1,6−ヘキサンジイル基等の基が例示される。
本発明の高分子化合物において、共役系高分子主鎖内に、前記一般式(4)で表される繰り返し単位を含む場合、(a)、(b)および(c)から選ばれる1種以上の側鎖が、上記一般式(4)で表される繰り返し単位に結合していることが好ましい。
この場合、(a)(b)および(c)から選ばれる1種以上の側鎖は、A環またはB環に結合していてもよいし、Yに結合していてもよい。
本発明の高分子化合物における(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖の含有量(合計)としては、高分子化合物全体を100重量部としたとき、通常0.01重量部〜99.9重量部の範囲である。
本発明の高分子化合物における前記一般式(1)で表される側鎖の含有量としては、高分子化合物全体を100重量部としたとき、通常0.01重量部〜99.9重量部の範囲である。その下限としては、0.1重量部以上であることが好ましく、10重量部以上であることがさらに好ましく、40重量部以上であることがさらにより好ましい。その上限としては、特に限定されるものではないが、99重量部以下であることが好ましく、合成の容易さの観点からは、95重量部以下であることが好ましく、91重量部以下であることがより好ましい。
本発明の高分子化合物は、第二の態様として、前記一般式(4)で表され、かつ前記一般式(2)で表される基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物である。

本発明の高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、溶解性、成膜性等の観点から、103〜108であることが好ましく、3×103〜106であることが好ましく、5×103〜5×105であることがさらに好ましい。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量は103〜108であることが好ましく、成膜性の観点から3×103〜107であることが好ましく、5×103〜5×106であることがさらに好ましい。
本発明の高分子化合物としては、(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖を有する繰返し単位からなるホモポリマー、(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖を有する繰返し単位に加えて、他の繰返し単位を含むランダムコポリマー、交互コポリマー、もしくはブロックコポリマー等が挙げられる。
本発明の高分子化合物としては、また、前記一般式(4)で表され、かつ前記一般式(2)で表される基を有する繰り返し単位からなるホモポリマー、前記一般式(4)で表され、かつ前記一般式(2)で表される基を有する繰り返し単位に加えて、他の繰返し単位を含むランダムコポリマー、交互コポリマー、もしくはブロックコポリマー等が挙げられる。
(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖を有する繰返し単位、または、前記一般式(4)で表され、かつ前記一般式(2)で表される基を有する繰り返しとしては、前記一般式(2)で表される基を有するフルオレンジイル基、または前記一般式(2)で表される基を有するベンゾフルオレンジイル基が好ましく、
下記式(U−01、U−02,U−03、U−05、U−11、U−12,U−13、U−15)で表される繰返し単位がより好ましく、

Figure 0005352968
〔式中、Sは、(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖、または、前記一般式(2)で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、又はC3−C20ヘテロアリール基を表す。複数個のRおよびSはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕
上記式U−01、U−05、U−11、U−15で表される繰返し単位が、合成の容易さの観点からさらに好ましい。
上記式(U−01、U−02,U−03、U−05、U−11、U−12,U−13、U−15におけるRで表される基としては、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基が好ましい。
上記式(U−01、U−02,U−03、U−05、U−11、U−12,U−13、U−15におけるRで表されるC1−C12アルキル基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC1−C12アルキル基と同様の基が例示され、溶解性の観点から、中でも、2−メチルブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のC5−C8アルキル基が好ましい。
上記式(U−01、U−02,U−03、U−05、U−11、U−12,U−13、U−15におけるRで表されるC6−C26アリール基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC6−C26アリール基と同様の基が例示され、溶解性の観点から、中でも、4−ヘキシルフェニル基、4−オクチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル基、4−(2−エトキシエチルオキシ)フェニル基等のアルキル基、アルコキシ基で置換されたフェニル基が好ましい。
上記式(U−01、U−02,U−03、U−05、U−11、U−12,U−13、U−15におけるRで表されるC3−C20ヘテロアリール基としては、前記Q4、Q5、Q6の説明におけるC3−C20ヘテロアリール基と同様の基が例示される。
(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖を有する繰返し単位、または、前記一般式(4)で表され、かつ前記一般式(2)で表される基を有する繰り返し単位としては、下記一般式で表される繰返し単位がより好ましい。
Figure 0005352968

Figure 0005352968

〔式中、Rは前記と同じ意味を表し、Rxは直鎖、分岐、もしくは環状のC1−C20アルキレン基、C6−C26アリーレン基、2価のC3−C20ヘテロ芳香族基およびそれらから選ばれる2つ以上の基が組み合わされた2価の基を表す。複数個のRxは同一であっても異なっていてもよい〕
(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖を有する繰返し単位、または、前記一般式(4)で表され、かつ前記一般式(2)で表される基を有する繰り返し単位として、より具体的には、以下の繰り返し単位が好ましく例示される。
Figure 0005352968

Figure 0005352968

Figure 0005352968



Figure 0005352968

Figure 0005352968


本発明の高分子化合物の中で、ランダムコポリマー、交互コポリマー、もしくはブロックコポリマーにおいて、(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖を有する繰返し単位、または、前記一般式(4)で表され、かつ前記一般式(2)で表される基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(5)で表され、(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖、または、前記一般式(2)で表される基を有さない繰り返し単位を含むことが好ましい。

Figure 0005352968
〔式中、α環及びβ環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれα環又はβ環上に存在し、Wはα環上の2個の原子とβ環上の2個の原子と一緒になって5員環又は6員環を形成する原子又は原子団を表す。〕
前記式(5)中、α環及びβ環で表される芳香族炭化水素環は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
前記式(5)中、Wとしては、例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含む基が挙げられ、具体的には、−C(Q11)(Q12)−、−C(=O)−、−O−、−S−、−SO2−、−N(Q13)−等の2価の基、および、それらから選ばれる2つの基が結合した2価の基が挙げられる。Q11、Q12、Q13はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C12アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C26アリール基、又は置換基を有していてもC3−C20ヘテロアリール基を表す。
前記式(5)で表される繰り返し単位としては、例えば、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、ベンゾフルオレンジイル基、ジベンゾフランジイル基、ジベンゾチオフェンジイル基、カルバゾールジイル基、ジベンゾピランジイル基、フェナントレンジイル基等が挙げられ、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、または置換基を有していてもよいベンゾフルオレンジイル基が好ましい。
本発明の高分子化合物は、本明細書に例示するように、(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖を有する繰返し単位、または、前記一般式(4)で表され、かつ前記一般式(2)で表される基を有する繰返し単位において、該繰返し単位が有する他の繰返し単位との結合手の代わりに、用いる重合反応に適した官能基を有する単量体(モノマー)を合成した後に、必要に応じ、有機溶媒に溶解し、例えばアルカリや適当な触媒、配位子を用いた公知のアリールカップリング等の重合方法により重合、もしくは他のモノマーを更に加えて共重合することにより合成可能である。
また、予め合成した高分子主鎖をハロゲン化、ホルミル化、アシル化等した後に、それらの基と反応し結合を形成することの可能な官能基を有する(a)、(b)および(c)から選ばれる側鎖、または、前記一般式(2)で表される基の前駆体と反応させることによっても合成可能である。

アリールカップリングによる重合方法に関しては、特に限定されるものではないが、例えば、前記重合反応に適した官能基として、ホウ酸基又はホウ酸エステル基を有するモノマーと、官能基として臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、又はトリフルオロメタンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基などのスルホネート基を有するモノマーとを炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、フッ化カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの有機塩基の存在下、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド、ビス(シクロオクタジエン)ニッケルなどのPdもしくはNi錯体と、必要に応じ、さらにトリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィンなどの配位子とからなる触媒を用いたSuzukiカップリング反応により重合する方法、
ハロゲン原子又はトリフルオロメタンスルホネート基などのスルホネート基を有するモノマー同士をビス(シクロオクタジエン)ニッケルなどのニッケルゼロ価錯体とビピリジルなどの配位子からなる触媒を用い、もしくは[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライドなどのNi錯体と、必要に応じ、さらにトリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィンなどの配位子とからなる触媒と亜鉛、マグネシウム等の還元剤を用い、必要に応じて脱水条件で反応させる、Yamamotoカップリング反応により重合する方法、
ハロゲン化マグネシウム基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とを[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライドなどのNi触媒を用い、脱水条件で反応させる、アリールカップリング反応により重合するKumada−Tamaoカップリング反応により重合する方法、
水素原子を官能基として、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法などが例示される。

反応溶媒に関しては用いる重合反応、モノマーおよびポリマーの溶解性などを考慮して選択されるべきであるが、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒などの有機溶媒、もしくはそれらと水との二相系が例示される。
Suzukiカップリング反応においては、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒などの有機溶媒、もしくはそれらと水との二相系が好ましい。反応溶媒は一般に副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが好ましい。
Yamamotoカップリング反応においては、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの2種以上の混合溶媒などの有機溶媒が好ましく例示される。反応溶媒は一般に副反応を抑制するために、脱酸素処理を行うことが好ましい。

反応温度に関しては、反応媒体が液状を保つ温度範囲であれば、特に限定されるものではないが、その下限としては、反応性の観点から、一般に−100℃以上が好ましく、−20℃以上がさらに好ましく、0℃以上がより好ましい。その上限としては、モノマーおよび高分子化合物の安定性の観点から、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下がさらにより好ましい。

上記アリールカップリング反応の中でも、反応性の観点から、Suzukiカップリング反応、Yamamotoカップリング反応が好ましく、Suzukiカップリング反応とニッケルゼロ価錯体を用いたYamamotoカップリング反応がより好ましい。
より詳細には、Suzukiカップリングによる重合に関しては、例えば、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.39,1533−1556(2001)に記載されている公知の方法を参考にできる。Yamamotoカップリングによる重合に関しては、例えば、Macromolecules 1992,25,1214−1223に記載されている公知の方法を参考にできる。

また、予め合成した高分子主鎖をハロゲン化等した後に、それらの基と反応し結合を形成することの可能な官能基を有する側鎖、または、基の前駆体と反応させることによる合成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、溶液中で酸性条件で臭素を反応させるといった方法などにより臭素化した後に、Suzukiカップリング反応により、ホウ酸基又はホウ酸エステル基を有する前駆体と反応させるといった方法が例示される。


高分子化合物の取り出しは公知の方法に準じて行うことが可能である。例えば、メタノールなどの低級アルコールに反応溶液を加えて析出させた沈殿をろ過、乾燥することにより、高分子化合物を得ることができる。上記の後処理で得られた高分子化合物の純度が低い場合は、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィーなどの通常の方法にて精製することが可能である。
次に本発明の高分子化合物の用途について説明する。
本発明の高分子化合物は、通常は、固体状態で蛍光又は燐光を発し、高分子発光体(高分子量の発光材料)として用いることができる。
また、該高分子化合物は優れた電荷輸送能を有しており、高分子発光素子用材料や電荷輸送材料として好適に用いることができる。該高分子化合物を用いた高分子発光素子は低電圧、高効率で駆動できる高性能の高分子発光素子である。従って、該高分子発光素子は液晶ディスプレイのバックライト、又は照明用としての曲面状や平面状の光源、セグメントタイプの表示素子、ドットマトリックスのフラットパネルディスプレイ等の装置に好ましく使用できる。
また、本発明の高分子化合物はレーザー用色素、有機太陽電池用材料、有機トランジスタ用の導電性薄膜、有機半導体薄膜などの電気伝導性薄膜用材料としても用いることができる。
さらに、蛍光や燐光を発する発光性薄膜材料としても用いることができる。
本発明の高分子化合物と溶媒とを含有する溶液を用いると、通常、塗布法により、発光素子の発光層を形成できる。従って、本発明の高分子化合物と溶媒とを含有する溶液は、溶媒を含有し、通常、−40〜40℃、1.0×105Paの圧力下で溶液の状態であるものが好ましい。
前記溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等が例示される。これらの溶媒を用いた場合、高分子化合物の分子量等にもよるが、通常、該溶媒に対して高分子化合物を0.1重量%以上溶解させることができる。なお、これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
本発明の高分子化合物と溶媒とを含有する溶液における、該溶媒の量は、該溶液中の該溶媒以外の成分の合計100重量部に対して、通常、1000〜100000重量部程度である。
本発明の溶液を用いて作成できる薄膜は本発明の高分子化合物を含有する薄膜であり、その例としては、発光性薄膜、導電性薄膜、有機半導体薄膜が例示される。
本発明の発光性薄膜は、本発明の高分子化合物を含有する発光性薄膜である。
該発光性薄膜としては、高分子発光素子への適用の観点から、電圧を印加することにより蛍光または燐光を発する発光性薄膜であることが好ましい。
本発明の導電性薄膜は、本発明の高分子化合物を含有する導電性薄膜である。
該導電性薄膜としては、表面抵抗が1KΩ/□以下であることが好ましい。薄膜に、ルイス酸、イオン性化合物などをドープすることにより、電気伝導度を高めることができる。表面抵抗が100Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以上であることがさらに好ましい。
本発明の有機半導体薄膜は、本発明の高分子化合物を含有する有機半導体薄膜である。
該有機半導体薄膜は、電子移動度又は正孔移動度のいずれか大きい方が、10-5cm2/V/秒以上であることが好ましい。より好ましくは、10-3cm2/V/秒以上であり、さらに好ましくは、10-1cm2/V/秒以上である。
SiO2などの絶縁膜とゲート電極とを形成したSi基板上に該有機半導体薄膜を形成し、Auなどでソース電極とドレイン電極を形成することにより、有機トランジスタとすることができる。
本発明の高分子発光素子は、本発明の高分子化合物を含むものであり、より具体的には、例えば、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられ前記高分子化合物を含む発光層とを有するものである。この高分子発光素子は、如何なる方法によって作製してもよいが、例えば、前述の本発明の高分子化合物と溶媒とを含有する溶液から作製することができる。
本発明の高分子発光素子には、例えば、(1)陰極と発光層との間に電子輸送層を設けた高分子発光素子、(2)陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた高分子発光素子、(3)陰極と発光層との間に電子輸送層を設け、かつ陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた高分子発光素子等も含まれる。
本発明の高分子発光素子の構造としては、例えば、以下のa)〜d)が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下、同じである。)
発光層とは、発光する機能を有する層をいう。正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層をいう。電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層をいう。なお、正孔輸送層と電子輸送層を総称して電荷輸送層という。発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上存在してもよい。
また、電極に隣接して設けた正孔輸送層、電子輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、それぞれ、特に正孔注入層、電子注入層(以下、これら二層を総称して「電荷注入層」ということがある。)と一般に呼ばれることがある。
さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
積層する層の種類、順番、層数、及び各層の厚さは、発光効率、素子寿命等を勘案して、適宜、調整・選択すればよい。
発光層は、例えば、本発明の高分子化合物を含む溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また、該高分子化合物を含む溶液中に電荷輸送材料や発光材料を混合した場合でも同様な手法が適用できるので、製造上非常に有利である。
溶液からの成膜には、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
発光層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように調整すればよいが、例えば、1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜600nmであり、さらに好ましくは5nm〜400nmである。
本発明の高分子発光素子において、発光層に前記高分子化合物以外の発光材料を混合してもよい。また、このような高分子化合物以外の発光材料を含む発光層が、前記高分子化合物を含む発光層と積層されていてもよい。
前記発光材料としては、公知のものが使用できる。低分子化合物では、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、三重項発光錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等を用いることができる。具体的には、例えば、特開昭57-51781号公報、特開昭59-194393号公報等に記載されているもの等の公知のものが使用可能である。
三重項発光錯体としては、例えば、イリジウムを中心金属とするIr(ppy)3、Btp2Ir(acac)、白金を中心金属とするPtOEP、ユーロピウムを中心金属とするEu(TTA)3phen等が挙げられる。
Figure 0005352968
Figure 0005352968
Figure 0005352968
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三重項発光錯体として具体的には、例えば、Nature, (1998), 395, 151、Appl. Phys. Lett. (1999), 75(1), 4、Proc. SPIE-Int. Soc. Opt. Eng. (2001), 4105(Organic Light-Emitting Materials and DevicesIV), 119、J. Am. Chem. Soc., (2001), 123, 4304、Appl. Phys. Lett., (1997), 71(18), 2596、Syn. Met., (1998), 94(1), 103、Syn. Met., (1999), 99(2), 1361、Adv. Mater., (1999), 11(10), 852 、Jpn.J.Appl.Phys.,34, 1883 (1995)などに記載されている。
本発明の高分子発光素子が正孔輸送層を有する場合、通常、該正孔輸送層には正孔輸送材料(低分子、高分子のものがある。)が用いられる。正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等が例示される。具体的には、該正孔輸送材料としては、特開昭63-70257号公報、特開昭63-175860号公報、特開平2-135359号公報、特開平2-135361号公報、特開平2-209988号公報、特開平3-37992号公報、特開平3-152184号公報に記載されているもの等が例示される。
これらの中で、正孔輸送材料としては、好ましくは、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物の残基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等の高分子の正孔輸送材料であり、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
ポリビニルカルバゾール及びその誘導体は、例えば、ビニルモノマーからカチオン重合又はラジカル重合によって得られる。
ポリシラン及びその誘導体としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
正孔輸送層の成膜の方法は、特に制限されないが、低分子の正孔輸送材料では、前記高分子バインダーとの混合溶液から成膜する方法が例示され、高分子の正孔輸送材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解させるものであれば、特に制限されない。この溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
溶液からの成膜には、溶液からの、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
前記高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。高分子バインダーとしては、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
正孔輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように調整すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
本発明の高分子発光素子は、とりわけ芳香族アミンから誘導される構成単位を有するポリアミンの正孔輸送層を用いることで、さらに高発光効率を得ることができる。
本発明の高分子発光素子が電子輸送層を有する場合、通常、該電子輸送層には電子輸送材料(低分子、高分子のものがある。)が用いられる。電子輸送材料としては、公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が例示される。
該電子輸送材料としては、具体的には、特開昭63-70257号公報、特開昭63-175860号公報、特開平2-135359号公報、特開平2-135361号公報、特開平2-209988号公報、特開平3-37992号公報、特開平3-152184号公報に記載されているもの等が例示される。
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子の電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、及び溶液又は溶融状態からの成膜による方法が例示され、高分子電子輸送材料では溶液又は溶融状態からの成膜による方法が例示される。溶液又は溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解又は均一に分散できるものが好ましい。具体的には、前記正孔輸送層の項において、正孔輸送層の溶液からの成膜に用いる溶媒として例示したものが挙げられる。この溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
溶液又は溶融状態からの成膜方法としては、前記正孔輸送層の項において、正孔輸送層の溶液からの成膜方法として例示したものが挙げられる。
電子輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、電子輸送層の膜厚は、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
溶液又は溶融状態からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
前記高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリシロキサンなどが例示される。
電子輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように調整すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、電子輸送層の膜厚としては、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、陽極として、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜調整することができるが、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μm、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボン等からなる層、又は金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜調整することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μm、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機層との間に、導電性高分子からなる層、又は金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよく、陰極作製後、該高分子発光素子を保護する保護層を設けてもよい。高分子発光素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを設けることが好ましい。
保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等を用いることができる。保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等を用いることができ、該カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
本発明において、電荷注入層を設けた高分子発光素子としては、例えば、陰極に隣接して電荷注入層を設けた高分子発光素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた高分子発光素子が挙げられる。具体的には、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
電荷注入層の具体例としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層等が挙げられる。
電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10-5S/cm以上103S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10-5S/cm以上102S/cm以下がより好ましく、10-5S/cm以上101S/cm以下がさらに好ましい。通常、該導電性高分子の電気伝導度を10-5S/cm以上103S/cm以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオン等が挙げられる。カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
電荷注入層の膜厚は、通常、1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等が例示される。
膜厚2nm以下の絶縁層は、電荷注入を容易にする機能を有するものである。絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。
膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子発光素子としては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子発光素子、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子発光素子が挙げられる。具体的には、例えば、以下のq)〜ab)の構造が挙げられる。
q)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/陰極
r)陽極/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
s)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
t)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
v)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
w)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
x)陽極/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
y)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
z)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
ab)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
本発明の高分子発光素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。通常、本発明の高分子発光素子が有する陽極及び陰極の少なくとも一方が透明又は半透明である。陽極側が透明又は半透明であることが好ましい。
本発明の高分子化合物、高分子発光素子は、例えば、曲面状光源、平面状光源等の面状光源(例えば、照明等);セグメント表示装置(例えば、セグメントタイプの表示素子等)、ドットマトリックス表示装置(例えば、ドットマトリックスのフラットディスプレイ等)、液晶表示装置(例えば、液晶表示装置、液晶ディスプレイのバックライト等)等の表示装置等に用いることができる。
本発明の高分子発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極又は陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にOn/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、又は面状の照明用光源として好適に用いることができる。フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(数平均分子量及び重量平均分子量)
ここで、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)については、GPCによりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を求めた。
<GPC測定法> GPC(東ソー製:HLC−8220GPC)により、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)3本を直列に繋げたカラムを用いて、テトラヒドロフランを展開溶媒として、0.5mL/minの流速で流し、40℃で測定した。検出器には示差屈折率検出器を用いた。
<合成例1>(化合物E、化合物Fの合成)
−化合物Aの合成−
不活性雰囲気下、300ml三つ口フラスコに、1−ナフタレンボロン酸5.00g(29mmol)、2−ブロモベンズアルデヒド6.46g(35mmol)、炭酸カリウム10.0g(73mmol)、トルエン36ml、及びイオン交換水36mlを入れ、室温で撹拌しつつ20分間アルゴンバブリングした。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム16.8mg(0.15mmol)を入れ、さらに室温で撹拌しつつ10分間アルゴンバブリングした。100℃に昇温し、25時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで有機層を抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。こうして得られた化合物を、トルエン:シクロヘキサン=1:2(容積比)の混合溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムで精製することにより、下記式:
Figure 0005352968

で表される化合物A5.18g(収率86%)を白色結晶として得た。
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ7.39〜7.62(m、5H)、7.70(m、2H)、7.94(d、2H)、8.12(dd、2H)、9.63(s、1H)
MS(APCI(+)):(M+H)+ 233
−化合物Bの合成−
不活性雰囲気下で300mlの三つ口フラスコに、前記と同様に合成した化合物A 8.00g(34.4mmol)と脱水THF46mlを入れ、−78℃まで冷却した。次いで、n−オクチルマグネシウムブロミド(1.0mol/l THF溶液)52mlを30分かけて滴下した。滴下終了後、0℃まで昇温し、1時間撹拌した後、室温まで昇温して45分間撹拌した。氷浴して1N塩酸20mlを加えて反応を終了させ、酢酸エチルで有機層を抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、トルエン:ヘキサン=10:1(容積比)の混合溶媒を展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することにより、下記式:
Figure 0005352968

で表される化合物B7.64g(収率64%)を淡黄色のオイルとして得た。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)測定では2本のピークが見られたが、LC/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析法)測定では同一の質量数であったので、異性体の混合物であると推測される。
−化合物Cの合成−
不活性雰囲気下、500ml三つ口フラスコに、化合物B(異性体の混合物)5.00g(14.4mmol)と脱水ジクロロメタン74mlを入れ、室温で撹拌、溶解させた。次いで、三フッ化ホウ素のエーテラート錯体を室温で1時間かけて滴下し、滴下終了後、室温で4時間撹拌した。撹拌しながらエタノール125mlをゆっくりと加え、発熱が収まったらクロロホルムで有機層を抽出し、得られた有機層を2回水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することにより、下記式:
Figure 0005352968

で表される化合物C3.22g(収率68%)を無色のオイルとして得た。
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ0.90(t、3H)、1.03〜1.26(m、14H)、2.13(m、2H)、4.05(t、1H)、7.35(dd、1H)、7.46〜7.50(m、2H)、7.59〜7.65(m、3H)、7.82(d、1H)、7.94(d、1H)、8.35(d、1H)、8.75(d、1H)
MS(APCI(+)):(M+H)+ 329
−化合物Dの合成−
不活性雰囲気下200ml三つ口フラスコに、イオン交換水20mlを入れ、撹拌しながら水酸化ナトリウム18.9g(0.47mol)を少量ずつ加え、溶解させた。得られた水溶液を室温まで冷却した後、トルエン20ml、前記と同様に合成した化合物C5.17g(15.7mmol)、及び臭化トリブチルアンモニウム1.52g(4.72mmol)を加え、50℃に昇温した。臭化n−オクチルを滴下し、滴下終了後、50℃で9時間反応させた。反応終了後、トルエンで有機層を抽出し、得られた有機層を2回水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することにより、下記式:
Figure 0005352968

で表される化合物D5.13g(収率74%)を黄色のオイルとして得た。
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ0.52(m、2H)、0.79(t、6H)、1.00〜1.20(m、22H)、2.05(t、4H)、7.34(d、1H)、7.40〜7.53(m、2H)、7.63(m、3H)、7.83(d、1H)、7.94(d、1H)、8.31(d、1H)、8.75(d、1H)
MS(APCI(+)):(M+H)+ 441
−化合物Eの合成−
空気雰囲気下、50mlの三つ口フラスコに、化合物D4.00g(9.08mmol)と、酢酸:ジクロロメタン=1:1(容積比)の混合溶媒57mlを入れ、室温で撹拌し、溶解させた。次いで、三臭化ベンジルトリメチルアンモニウム7.79g(20.0mmol)を加えて撹拌しつつ、塩化亜鉛を三臭化ベンジルトリメチルアンモニウムが完溶するまで加えた。室温で20時間撹拌した後、5重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10mlを加えて反応を停止し、クロロホルムで有機層を抽出し、得られた有機層を炭酸カリウム水溶液で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ヘキサンを展開溶媒とするフラッシュカラムクロマトグラフィーで2回精製した後、エタノール:ヘキサン=1:1(容積比)の混合溶媒で再結晶し、次いで、エタノール:ヘキサン=10:1(容積比)の混合溶媒で再結晶することにより、下記式:
Figure 0005352968

で表される化合物E4.13g(収率76%)を白色結晶として得た。
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ0.60(m、4H)、0.91(t、6H)、1.01〜1.38(m、20H)、2.09(t、4H)、7.62〜7.75(m、4H)、7.89(s、1H)、8.20(d、1H)、8.47(d、1H)、8.72(d、1H)
MS(APPI(+)):M+ 596
−化合物Fの合成−
100mLの4口丸底フラスコをアルゴンガス置換後、化合物E(3.2g、5.3mmol)、ビスピナコーラートジボロン(3.8g、14.8mmol)、PdCl2(dppf)(0.39g、0.45mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン(0.27g、0.45mmol)、及び酢酸カリウム(3.1g、32mmol)を仕込み、脱水ジオキサン45mlを加えた。アルゴン雰囲気下、100℃まで昇温し、36時間反応させた。放冷後、セライト2gをプレコートして濾過を行い、濃縮したところ黒色液体を得た。この黒色液体をヘキサン50gと混合し、こうして得られた混合溶液を、ラジオライト5gをプレコートして濾過を行い、活性炭で着色成分を除去することにより、37gの淡黄色液体を得た。この淡黄色液体に、酢酸エチル6g、脱水メタノール12g、及びヘキサン2gを加え、ドライアイス−メタノール浴に浸して晶析し、ろ過、乾燥することにより、下記式:
Figure 0005352968

で表される化合物F 2.1gの無色結晶を得た。

合成例2
<重合体1の合成>
アルゴン雰囲気下、ジムロートを接続した1L三つ口フラスコに、前記と同様に合成した化合物E17.0g(28.4mmol)、前記と同様に合成した化合物F19.4g(28.0mmol)、及びトルエン311mLを加えた後、窒素ガスバブリングにより容器内のガスを窒素置換した。45℃に昇温した後に、酢酸パラジウム19mg、及びトリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン118mgを加え、45℃で5分間攪拌した後に、33重量%のビス(テトラエチルアンモニウム)カーボネート水溶液25.9mLを加え、114℃で24時間攪拌した。次いで、4−ブロモトルエン5.27g(30.8mmol)を加え、114℃で1時間攪拌し、さらに4−t−ブチルフェニルボロン酸5.48g(30.8mmol)を加え、114℃で1時間攪拌した。65℃まで冷却し、5重量%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液で2回、2規定塩酸で2回、10重量%酢酸ナトリウム水溶液で2回、水で6回洗浄した後、得られた有機層をセライトろ過し、減圧濃縮し、メタノール中へ滴下することによりポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥して粉末を得た後、再度トルエンに溶解しメタノール中に滴下して沈殿させる操作を2回繰り返した。こうして得られた沈殿を減圧乾燥することにより、下記式:
Figure 0005352968

で表される構成単位を有する重合体(仕込み原料からの推測)(以下、「重合体1」という。)を22.4g(収率90.3%)得た。また、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは7.9×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.7×105であった。
合成例3
<重合体2の合成:重合体1のブロモ化>
アルゴンガス雰囲気下、100mLフラスコに、重合体1(1.0g、ベンゾフルオレン繰り返し単位換算で2.28mmol)、クロロホルム50mLを仕込み、室温にて攪拌して溶解させた後に、トリフルオロ酢酸3.5mL、臭素91μL(1.78mmol、ベンゾフルオレン単位に対して78モル%)を順次仕込み、遮光下で6時間攪拌した。反応マスをメタノール250mLに攪拌下で滴下することにより、沈殿化させた。得られた沈殿をろ過、メタノールで洗浄、減圧乾燥することで、重合体1.09gを得た。この重合体を、アルゴンガス雰囲気下、100mLフラスコに仕込み、そこへクロロホルム50mLを仕込み、室温にて攪拌して溶解させた後に、トリフルオロ酢酸3.4mL、臭素41μL(0.80mmol、ベンゾフルオレン単位に対して36モル%)を順次仕込み、遮光下で17時間攪拌した。反応マスをメタノール250mLに攪拌下で滴下することにより、沈殿化させた。得られた沈殿をろ過、メタノールで洗浄、減圧乾燥することで、重合体1.08gを得た。得られた重合体を重合体2と呼ぶ。得られた重合体2のポリスチレン換算の数平均分子量は、Mn=7.4×104、重量平均分子量は、Mw=1.6×105、分散度は、Mw/Mn=2.2であった。
元素分析の結果より、Br基を有する繰り返し単位(式P−2)とBr基を含有しない繰り返し単位(式P−1)の比率は(P−1)/(P−2)=35/65に相当し、(全ベンゾフルオレン繰り返し単位)/Br基=61/39に相当する。
元素分析測定値:C80.20%、H8.40%、N<0.3%、Br10.56%
元素分析計算値:C80.92%、H8.51%、N0%、Br10.56%((P−1)/(P−2)=35/65での計算値)
Figure 0005352968
合成例4
<化合物Gの合成>
Figure 0005352968

窒素雰囲気下、50mlの三つ口フラスコに化合物Ga1.32g(6mmol)、脱水ジメチルホルムアミド26.4gを仕込み室温で撹拌溶解後0℃まで冷却した。次に1〜4℃で鉱物油に分散した水素化ナトリウム(含量60%)0.29g(7.2mmol)を35分かけ仕込み1〜2℃で2.5時間撹拌した。次に1.5〜2.5℃で化合物Gb 2.42g(4mmol)を5分割で5分かけ仕込んだ。1.5〜2℃で1時間、室温で2時間撹拌した。その後室温で化合物Ga0.44(2mmol)g、水素化ナトリウム0.15g(3.8mmol)を追加し室温で1.5時間撹拌した。300ml三つ口フラスコに水100mlを加え、これに撹拌しながら反応液をゆっくり加えた。この液をフラスコから300ml分液ロ−トに移しクロロホルム100mlで3回抽出した。クロロホルム層を500ml分液ロ−トに移し水100mlで3回洗浄した。クロロホルム層をエバポレ−タを用い75℃で減圧濃縮し濃縮物3.95gを得た。シリカゲルクロマトグラフィ−で4回精製{展開溶媒:クロロホルム/n−ヘキサン/トリエチルアミン(1/1/0.002, 容積割合)}することにより無色固体として化合物G1.64g(収率55.0%)を得た。

1H−NMR(270MHz/CDCl3):
δ1.33(s、12H)、2.23〜2.26(m、2H)、3.00〜3.05(t、2H)、4.03〜4.08(t、2H)、6.91〜6.95(d、2H)、7.28〜7.35(m、4H)、7.42〜7.53(m、7H)、7.68〜7.78(m、6H)、7.89〜7.93(m、4H)、7.99〜8.11(s、1H)、8.13〜8.19(m、3H)
Figure 0005352968

実施例1
<高分子化合物1の合成>
重合体2(500mg、ベンゾフルオレン繰り返し単位換算で1.56mmol)、化合物G(731mg、0.98mmol)、酢酸パラジウム(II)(1.5mg)、トリシクロヘキシルホスフィン(3.7mg)を100mLフラスコに仕込み、アルゴンガスにより置換した後、市販脱水トルエン60mLを仕込み、室温にて攪拌して溶解させた。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(1.4mol/L、2.4mL)を仕込み、110℃に昇温した後に、110℃で3時間攪拌した後、4−t−ブチル−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼン532mg、酢酸パラジウム(II)(0.4mg)、トリシクロヘキシルホスフィン(1.1mg)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(1.4mol/L、0.7mL)を仕込み、110℃で3時間攪拌した。室温に冷却した後、トルエンで希釈し、15%食塩水で洗浄し、得られた有機層をセライトろ過、減圧濃縮し、アセトン中へ滴下することにより沈殿化した。得られた沈殿をろ過、アセトンで洗浄、減圧乾燥することで、粗重合体815mgを得た。
上記粗重合体814mgをトルエン167mLに室温にて溶解し、あらかじめトルエンを通液したシリカゲルカラム及びアルミナカラムに溶液を通液し、さらにトルエンで洗い出した後に、3重量%アンモニア水溶液、水で順次洗浄し、減圧濃縮し15gの溶液を得た。これをアセトン中へ滴下することで、再沈した。沈殿を、ろ過、アセトンで洗浄、減圧乾燥することにより、重合体794mgを得た。得られた重合体を高分子化合物1と呼ぶ。得られた高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量は、Mn=8.7×104、重量平均分子量は、Mw=1.7×105、分散度は、Mw/Mn=2.0であった。
元素分析の結果より、繰り返し単位(式P−1)、Br基を有する繰り返し単位(式P−2)、側鎖を有する繰り返し単位(P−3)の比率は(P−1)/(P−2)/(P−3)=35/0/65に相当し、ベンゾフルオレン繰り返し単位と側鎖の比率は、ベンゾフルオレン/側鎖=61/39に相当する。
元素分析測定値:C88.92%、H7.57%、N2.05%、Br<0.1%
元素分析計算値:C89.06%、H7.55%、N2.16%、Br0%((P−1)/(P−2)/(P−3)=35/0/65での計算値)
Figure 0005352968
合成例5
(化合物Hの合成)
Figure 0005352968

窒素雰囲気下、50mlの三つ口フラスコに33%水酸化ナトリウム水14.3g、化合物Ha0.65g(2mmol)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド0.39g(1.2mmol)、トルエン6.5gを仕込み45℃まで昇温した。次に45〜50℃で化合物Hb3.03g(5mmol)を仕込み同温度で4時間撹拌した。撹拌後室温まで冷却し300ml分液ロートに反応液を移した。トルエン50mlを仕込み水100mlでトルエン層を3回洗浄した。トルエン層をエバポレータを用い75℃で減圧濃縮し
濃縮物3.77gを得た。シリカゲルクロマトグラフィーで2回精製{展開溶媒:クロロホルム/n−ヘキサン(1/1, 容積割合)}することにより淡赤色の固体2.42gを得た。
この固体にクロロホルム30gを加え0.5時間環流撹拌した。続いてn−ヘキサン45gを加え0.5時間環流撹拌した。室温に冷却後濾過しケ−キをn−ヘキサン10mlで洗浄した。この環流撹拌操作を2回繰り返し淡黄赤色の固体2.06gを得た。この固体をシリカゲルクロマトグラフィーで精製{展開溶媒:クロロホルム/n−ヘキサン(1/1,容積割合)}することにより淡黄色の固体1.67gを得た。この固体をクロロホルム100mlに50℃で溶解し活性炭1.7gを加え50℃〜45℃で1時間撹拌し室温に冷却後活性炭を濾別した。濾液をエバポレ−タを用い75℃で減圧濃縮し化合物H1.40g(収率50.9%)を得た。
1H−NMR(270MHz/CDCl3):
δ1.03〜1.06(m、4H)、1.99〜2.05(m、4H)、2.55〜2.60(t、4H)、6.99〜7.012(d、2H)、7.28〜7.56(m、24H)、7.65〜7.71(m、9H)、7.75(s、2H)、7.85〜7.91(m、9H)、8.10〜8.19(m、6H)
Figure 0005352968
実施例2
<高分子化合物2の合成>
Arガス雰囲気下、50mLフラスコに9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン 33mg(0.06mmol)、化合物H 291mg(0.24mmol)、2,2’−ビピリジル 103mg(0.66mmol)を脱水テトラヒドロフラン23mLに溶解させた後、Arガスを15分間バブリングした。60℃に昇温した後、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(cod)2} 182mg(0.66mmol)を加え3時間攪拌し反応させた。反応後、この反応液を室温(約25℃)まで冷却し、25%アンモニア水5.5g/メタノール22g/蒸留水28gの混合溶液中へ滴下することによりポリマーを沈殿化した。得られた沈殿をろ過、メタノールで洗浄、減圧乾燥することで、粗重合体277mgを得た。
上記粗重合体277mgをテトラヒドロフラン50mLに40℃にて溶解し、ラジオライトをろ過助剤としてろ過し、さらにテトラヒドロフランで洗い出した後に、あらかじめテトラヒドロフランを通液したシリカゲルカラム及びアルミナカラムに溶液を通液し、さらにテトラヒドロフランで洗い出した後に、減圧濃縮し10gの溶液を得た。これをメタノール中へ滴下することで、再沈した。沈殿を、ろ過、メタノールで洗浄、減圧乾燥することにより、重合体209mgを得た。得られた重合体を高分子化合物2と呼ぶ。得られた高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量は、Mn=6.8×104、重量平均分子量は、Mw=1.9×105、、分散度は、Mw/Mn=2.8であった。
仕込み比率から推測される高分子化合物2における繰り返し単位(式P−4)、(P−5)の比率は(P−4)/(P−5)=20/80である。
Figure 0005352968
<高分子化合物1及び2の主鎖、側鎖の、HOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの値>
<モデル化合物>
〔実施例1の高分子化合物1〕
実施例1の高分子化合物の側鎖は、上述の通り、
Figure 0005352968
である。
従って、側鎖のモデル化合物は、
Figure 0005352968

で示される化合物である。
実施例1の高分子化合物の側鎖を全て水素原子に置換したポリマーは、
Figure 0005352968
からなるホモポリマーである。
従って、共役系高分子主鎖のモデル化合物は、


Figure 0005352968
主鎖3量体1

である。
〔実施例2の高分子化合物2〕
実施例2の高分子化合物2の側鎖は、
Figure 0005352968
である。
従って、側鎖のモデル化合物は、

Figure 0005352968
である。

実施例2の高分子化合物2の側鎖を水素原子に置換したポリマーは、
下記
Figure 0005352968
からなるホモポリマーである。
従って、共役系高分子主鎖のモデル化合物は、

Figure 0005352968

である。
<分子軌道計算>
上記それぞれモデル化合物につき、半経験的分子軌道法 MOPAC2002 Version 1.00を用い、AM1法(Dewar,M.J.S.et al,J.Am.Chem.Soc.,107,3902(1985))により最安定構造を求める計算を行い(キーワード:AM1 PRECISE EF により最終収束に達するまで計算を繰り返す)、これにより、高分子化合物1および2の主鎖、側鎖のLUMOおよびHOMOの分布およびエネルギー値を得ることができた。表1に結果を示す。
(表1:分子軌道計算結果)
Figure 0005352968
比較例1
<高分子化合物3の合成>
化合物E22.5gと2,2’−ビピリジル17.6gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして、脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)1500gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を31g加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
反応後、この反応溶液を冷却した後、この溶液に、25%アンモニア水200ml/メタノール900ml/イオン交換水900ml混合溶液をそそぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿を濾過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。このトルエン溶液を濾過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、アルミナを充填したカラムを通過させることにより精製した。次に、このトルエン溶液を、1規定塩酸水溶液で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、約3%アンモニア水で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、メタノール中にそそぎ込み、再沈生成した。
次に、生成した沈殿を回収し、メタノールで洗浄した後、この沈殿を減圧乾燥して、重合体6.0gを得た。この重合体を高分子化合物2と呼ぶ。得られた高分子化合物2のポリスチレン換算重量平均分子量は、8.2x105であり、数平均分子量は、1.0x105であった。
高分子化合物3は繰り返し単位(式P−1)からなる。
Figure 0005352968
比較例2
<高分子化合物4の合成>
2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン65.8g、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(2−メチルブチル)フルオレン14.0gおよび2,2’−ビピリジル55.0gを脱水したテトラヒドロフラン4000mLに溶解した後、窒素でバブリングして系内を窒素置換した。窒素雰囲気下において、この溶液に、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(COD)2}(101.16g)加え、60℃まで昇温し、攪拌しながら8時間反応させた。反応後、この反応液を室温(約25℃)まで冷却し、25%アンモニア水3000mL/メタノール3000mL/イオン交換水3000mL混合溶液中に滴下して0.5時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、その後、トルエン2775mLに溶解させてからろ過を行い、ろ液にトルエンを加え、約7000mLの溶液としたのちに、1規定塩酸水5000mlで1時間、4%アンモニア水5500mLで1時間、イオン交換水2500mLで10分間、さらにイオン交換水2500mLで10分間、有機層を洗浄した。有機層を50℃にて、1481gになるまで減圧濃縮したのちに、メタノール8300mLに滴下して0.5時間攪拌し、析出した沈殿をろ過し、メタノール1250mLで2回洗浄した後に、50℃にて5時間減圧乾燥した。得られた共重合体の収量は52.9gであった。この共重合体を高分子化合物4と呼ぶ。ポリスチレン換算の重量平均分子量は、それぞれMw=4.7x105であった。
仕込み比率から推測される高分子化合物4における繰り返し単位(式P−4)、(P−6)の比率は(P−4)/(P−6)=80/20である。
Figure 0005352968
合成例6
<高分子化合物5の合成>
不活性雰囲気下、N、N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N、N‘−ビス(4−n−ブチルフェニル)1、4−フェニレンジアミン(1.911g)、N、N’−ビス(4−ブロモフェニル)フェニルアミン(0.484g)、2,2‘−ビピリジル(1.687g)をあらかじめアルゴンでバブリングした、脱水テトラヒドロフラン109mLに溶解した。この溶液を60℃まで昇温後、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(COD)2}(2.971g)を加え、攪拌し、5時間反応させた。この反応液を室温まで冷却し、25%アンモニア水14mL/メタノール109mL/イオン交換水109mL混合溶液中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して減圧乾燥し、トルエン120mlに溶解させた。溶解後、ラヂオライト0.48gを加えて30分攪拌し、不溶解物を濾過した。得られた濾液をアルミナカラムを通して精製を行った。次に4%アンモニア水236mLを加え、2時間攪拌した後に水層を除去した。さらに有機層にイオン交換水約236mLを加え1時間攪拌した後、水層を除去した。その後、有機層をメタノール376mlに注加して0.5時間攪拌し、析出した沈殿をろ過して減圧乾燥した。得られた重合体(以後、高分子化合物5と呼ぶ)の収量は1.54gであった。また、ポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量は、それぞれMn=7.4x103、Mw=7.6x104であった。
<正孔注入層の作成>
高分子化合物5と架橋剤DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製KAYARAD DPHA)を80/20の割合でトルエンに混合し溶解させた。その後0.2ミクロン径のテフロン(登録商標)フィルターでろ過して塗布溶液を調整した。スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、上記溶液をスピンコートにより製膜し、窒素雰囲気下において300℃/20minの条件でベークして正孔注入層を作成した。ベーク後の正孔注入層の膜厚を触針式膜厚計(ビーコ社製DEKTAK)で測定したところ、約50nmであった。
<発光層用溶液組成物の調製>
高分子化合物を表2に示される塗布溶媒に溶解させた。その後0.2ミクロン径のテフロン(登録商標)フィルターでろ過して塗布溶液を調整した。
実施例3
<素子の作成および評価>
正孔注入層の上に調製した高分子発光体塗布溶液を用いてスピンコートにより約70nmの厚みで成膜した。さらに、これを減圧下90℃で1時間乾燥した後、陰極バッファー層として、フッ化リチウムを4nm、陰極として、カルシウムを5nm、次いでアルミニウムを100nm蒸着して、高分子発光素子を作製した。蒸着のときの真空度は、すべて1〜9×10-5Torrであった。得られた、発光部が2mm×2mm(面積4mm2 )の素子に電圧を段階的に印加することにより、高分子発光体からのEL発光の輝度を測定し、それより発光効率値を得た。得られた素子の発光効率の最大値、PL蛍光強度の最大値を表2に示す。
寿命試験は、10mAの定電流駆動で行った。初期輝度と輝度半減時間を表2に示す。
また、発光効率と寿命のバランスの指標として、最大効率と輝度半減時間の積(項目:効率×寿命)を表2に示す。
(表2:素子結果一覧)
Figure 0005352968
表2に示されるように、高分子化合物1と3、高分子化合物2と4をそれぞれ比較すると、実施例の高分子化合物を用いて作成した素子は、比較例の高分子化合物を用いた場合に比較して、寿命試験において、長寿命を示し、さらに発光効率と寿命のバランスにも優れる高分子発光素子となる。

Claims (15)

  1. 共役系高分子主鎖と、以下の(c)から選ばれる1種以上の側鎖とを有する高分子化合物であって、
    共役系高分子主鎖内に、下記一般式U−01、U−02、U−03、U−05、U−11、U−12、U−13またはU−15で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。

    (c)電子輸送性および正孔輸送性を有する側鎖であって、該側鎖のLUMOエネルギーの値と該共役系高分子主鎖のLUMOエネルギーの値とが互いに異なり、その差の絶対値が0.3eV以下であり、かつ該側鎖のHOMOエネルギーの値と該共役系高分子主鎖のHOMOエネルギーの値とが互いに異なり、その差の絶対値が0.3eV以下である側鎖。

    Figure 0005352968
    〔式中、Sは、(c)から選ばれる側鎖である下記一般式(2)で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、又はC3−C20ヘテロアリール基を表す。複数個のRおよびSはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕

    Figure 0005352968
    〔式中、Ar6はビフェニル−4,4’−ジイル基、フルオレン−2,7−ジイル基、フェナントレン−3,8−ジイル基またはそれらから独立に選ばれる2つ以上の基が互いに結合した2価の基を表す。該Ar6は置換基を有していてもよい。R1a〜R8a、R1b〜R8bはそれぞれ独立に、水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、結合手または−Z’−で表される基(ここに、Z’は直鎖、分岐、もしくは環状のC1−C20アルキレン基、C6−C26アリーレン基、2価のC3−C20ヘテロ芳香族基、−O−、またはこれらの基から選ばれる2つ以上の基が組み合わされた2価の基である。)を表す。但し、R1a〜R8a、R1b〜R8bのうちの少なくとも一つは、結合手であるか、または−Z’−で表される基である。〕
  2. 高分子化合物における前記一般式(2)で表される側鎖の含有量が高分子化合物全体を100重量部としたとき、0.1〜99重量部である請求項1に記載の高分子化合物。
  3. 下記一般式(U−01)、(U−05)、(U−11)または(U−15)で表される繰り返し単位を含む、請求項1または2に記載の高分子化合物。
    Figure 0005352968
    〔式中、Sは、前記一般式(2)で表される基を表し、Rは水素原子、C1−C12アルキル基、C6−C26アリール基、又はC3−C20ヘテロアリール基を表す。複数個のRおよびSはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕
  4. 下記一般式のいずれか一つで表される繰り返し単位を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子化合物。
    Figure 0005352968

    Figure 0005352968
    〔式中、Rは前記と同じ意味を表し、Rxは直鎖、分岐、もしくは環状のC1−C20アルキレン基、C6−C26アリーレン基、2価のC3−C20ヘテロ芳香族基またはそれらから選ばれる2つ以上の基が組み合わされた2価の基を表す。複数個のRxは同一であっても異なっていてもよい。〕
  5. 前記一般式U−01、U−02、U−03、U−05、U−11、U−12、U−13またはU−15で表される繰返し単位の高分子化合物における含有量が高分子化合物全体を100重量部としたとき、0.1〜100重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の高分子化合物。
  6. ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である請求項1〜5のいずれかに記載の高分子化合物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の高分子化合物と溶媒とを含有する溶液。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の高分子化合物を含有する発光性薄膜。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の高分子化合物を含有する導電性薄膜。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載の高分子化合物を含有する有機半導体薄膜。
  11. 発光層が、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子化合物を含む高分子発光素子。
  12. 請求項11に記載の高分子発光素子を含む面状光源。
  13. 請求項11に記載の高分子発光素子を含むセグメント表示装置。
  14. 請求項11に記載の高分子発光素子を含むドットマトリックス表示装置。
  15. 請求項11に記載の高分子発光素子を含む液晶表示装置。
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