次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図3は、本発明の実施形態に係る電磁スプール弁装置の軸方向に沿った縦断面図である。
図1〜図3に示されるように、電磁スプール弁装置10は、例えば、磁性金属材料によって有底円筒状に形成され、内部にリニアソレノイド部12が配設されたハウジング14と、前記ハウジング14と一体的に結合され、内部に弁機構部16が設けられたスリーブ状のバルブボデイ18とを含む。なお、前記ハウジング14及びバルブボデイ18は、本体部として機能するものである。
前記ハウジング14は、軸方向に沿って長尺に形成された円筒部14aと、前記円筒部14aの内側に所定間隔離間して形成され該円筒部14aと略平行に延在し且つ短尺に形成された円筒状ヨーク14bと、前記円筒部14a及び円筒状ヨーク14bの一端部に形成され内部に縦断面矩形状の凹部を有する膨出部14cとから構成される。この場合、前記円筒部14a、円筒状ヨーク14b及び膨出部14cが一体化されて形成される。
なお、前記円筒状ヨーク14bは、例えば、ハウジング14と別体で構成された略円筒体からなる他のヨーク(図示せず)を、ハウジング14の膨出部14cの内周面に形成した図示しない圧入嵌合部に圧入嵌合するように形成してもよい。
前記リニアソレノイド部12は、ハウジング14内に収容されるコイル組立体と、前記ハウジング14の閉塞端側に該ハウジング14と一体的に形成され前記コイル組立体の内部に配置される円筒状ヨーク14bと、前記ハウジング14の開口端部に結合されると共に、コイル組立体の内側で軸方向に沿って円筒状ヨーク14bと所定のクリアランスを介して配置される固定コア20と、前記円筒状ヨーク14b及び固定コア20に対して摺動可能に嵌挿された可動コア22とを有する。
なお、所定間隔離間して前記可動コア22と対向する前記固定コア20の一端部には、外周面が徐々に縮径するテーパ面を有し、縦断面が鋭角状に形成された環状の鍔部20aが設けられる。また、前記コイル組立体は、樹脂製材料によって形成され軸方向に沿って両端部にフランジを有するコイルボビン24と、前記コイルボビン24に巻回されるコイル26とから構成される。
前記ハウジング14と前記コイル26との間には、前記コイル26の外周面等をモールドする樹脂封止体28が設けられ、前記樹脂封止体28は、前記コイル26に連通するカプラ部30に連続して樹脂製材料によって一体成形される。前記カプラ部30には、前記コイル26と電気的に接続されるターミナルの端子部32が露呈するように設けられる。
前記可動コア22には、その中心部を貫通するシャフト34が固定され、前記シャフト34の軸方向に沿った一端部(上端部)は、ハウジング14の膨出部14cの凹部に装着された第1平軸受け36aを介して軸方向に摺動可能に軸支され、該シャフト34の他端部(下端部)は、固定コア20の中心部を貫通する貫通孔内に装着された第2平軸受け36bを介して軸方向に摺動可能に軸支される。なお、前記可動コア22とシャフト34とを別体で構成することなく、前記シャフト34を含んで可動コア22を一体成形するようにしてもよい。
前記第1平軸受け36a及び第2平軸受け36bを介して、前記シャフト34の両端部をそれぞれ摺動自在に軸支する両端支持構造とすることにより、該シャフト34と一体的に変位する可動コア22の安定した直進性を確保することができる。
固定コア20に対向する可動コア22の端面には、非磁性材料によって形成され、コイル26に対する通電が停止されたとき、残留磁気の影響によって可動コア22が固定コア20に吸着されたままになることを防止する機能(貼り付き防止機能)を有するリング体38がシャフト34を介して装着される。
この場合、図示しない電源をオンにしてコイル26に電流を流すことにより励磁作用が発生し、前記励磁作用によって可動コア22及びシャフト34が固定コア20側に向かって一体的に変位することにより、後記する第1スプール40及び/又は第2スプール42を作動(進退動作)させることができる。
前記弁機構部16は、第1インレットポート44a、第2インレットポート44b、第1アウトレットポート46a、第2アウトレットポート46b、第3アウトレットポート46c、ドレンポート48及び呼吸ポート50がそれぞれ一側部に並設されたバルブボデイ18と、リニアソレノイド部12のシャフト34の一端部と当接し前記シャフト34によって押圧されることにより、前記バルブボデイ18内部の空間部52に沿ってそれぞれ摺動可能に配設された第1スプール40及び第2スプール42とを含む。
なお、呼吸ポート50は、可動コア22の進退動作に対応してハウジング14内のエアを給排気するものである。また、前記第1インレットポート44a、第2インレットポート44b、第1アウトレットポート46a、第2アウトレットポート46b、第3アウトレットポート46c、ドレンポート48及び呼吸ポート50は、圧力流体が流通する複数のポートとして機能するものである。
前記第1スプール40と前記第2スプール42とは、それぞれ別体で略円筒状に構成され、前記バルブボデイ18の空間部52内に略同軸状に配設される。この場合、図7に示されるように、前記第2スプール42の最大外径D2(後記する第7ランド60g及び第8ランド60hの外径)は、前記第1スプール40の最大外径D1(後記する第1〜第6ランド60a〜60fの外径)よりも大きく設定される(D1<D2)。
なお、図1に示されるように、前記各ポートの近傍部位には、前記バルブボデイ18が、例えば、自動車用エンジン等の他の部材54の側壁に装着された際、各ポートと他の部材54との連結部位をシールする単一のシール部材56が設けられる。
第1スプール40には、図7に示されるように、軸方向に沿って延在しリニアソレノイド部12側の上端部で閉塞すると共に、第2スプール42側の下端部で開口する長孔58が形成される。また、前記第1スプール40の上端部の近傍であって、後記する第1ランド60aと第2ランド60bとの間には、前記長孔58に連通し且つ軸方向と直交する方向に貫通する第1連通孔62aが形成される。
さらに、前記第1スプール40の下端と後記する第6ランド60fとの間には、前記長孔58に連通し且つ軸方向と直交する方向に貫通する第2連通孔62bが形成される。この場合、図2に示される第1リフト状態(後記する)において、第1アウトレットポート46a、第1連通孔62a、長孔58、第2連通孔62b、後記する第3連通孔62c及びドレンポート48が相互に連通することにより、第1アウトレットポート46a側の圧油をドレンポート48から好適に排出することができる。
第2スプール42の上端部には、図7に示されるように、第1スプール40の下端部が臨むと共に、前記下端部が当接可能に設けられた窪み部64が形成される。また、前記窪み部64の側壁には、第1スプール40の第2連通孔62bと連通可能に設けられ、第2スプール42の軸方向と直交する方向に貫通する第3連通孔62cが形成される。さらに、第2スプール42には、前記窪み部64に連通して軸方向に沿って貫通する段付き貫通孔66が形成される。
さらに、弁機構部16は、図1に示されるように、前記第2スプール42の端面と対向するように配置されバルブボデイ18の空間部52を閉塞するキャップ部材68と、第1スプール40と第2スプール42との間の重畳部位に介装された第1ばね部材70と、前記第2スプール42とキャップ部材68との間に介装された第2ばね部材72とを有する。なお、前記キャップ部材68は、バルブボデイ18の一端部として機能するものである。また、前記キャップ部材68の外周面には、環状溝を介して装着部位を液密乃至気密に保持するシールリング74が設けられ、バルブボデイ18の孔部に対して前記キャップ部材68が圧入嵌合される。
この場合、前記第2ばね部材72のスプリング荷重(ばね定数)L2は、前記第1ばね部材70のスプリング荷重(ばね定数)L1よりも大きく設定されている(L1<L2)。
本実施形態では、それぞれコイルスプリングからなる第1ばね部材70及び第2ばね部材72を用いて説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図示しない板ばねやゴム等の弾性部材であって、第1スプール40及び第2スプール42を付勢(押圧力を付与)する付勢部材であればよい。
前記第1インレットポート44a及び第2インレットポート44bは、供給油路を介して油圧ポンプ等の図示しない油圧源(圧力流体供給源)にそれぞれ接続され、前記第1〜第3アウトレットポート46a〜46cは、出力油路を介して図示しない油圧機器の油圧作動部に接続され、ドレンポート48は、図示しないリザーバタンクに接続される。なお、本実施形態では、圧油を用いて説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧縮エア等を含む圧力流体を作動媒体として用いることが可能である。
第1スプール40の外周面には、図7に示されるように、半径外方向に向かって所定長だけ膨出形成された環状突起部からなり、リニアソレノイド部12側からキャップ部材68側に向かう軸方向に沿って順に第1〜第6ランド60a〜60fが所定間隔離間して形成される。前記第1〜第6ランド60a〜60fは、それぞれ同一外径からなり、第1スプール40の最大外径D1を構成するものである。
この場合、第1スプール40の相互に隣接する第2ランド60bと第3ランド60cとの間には、第1インレットポート44aと第1アウトレットポート46aとを連通させる第1環状凹部76aが形成される(図3の第2リフト状態参照)。また、第1スプール40の相互に隣接する第3ランド60cと第4ランド60dの間には、第1インレットポート44aと第1アウトレットポート46aとを連通させる第2環状凹部76bが形成される(図1のリニアソレノイド部オフ状態参照)。
さらに、第1スプール40の相互に隣接する第4ランド60dと第5ランド60eの間には、第1インレットポート44aと第2アウトレットポート46bとを連通させる第3環状凹部76cが形成される(図2の第1リフト状態参照)。さらにまた、第1スプール40の相互に隣接する第5ランド60eと第6ランド60fの間には、第2アウトレットポート46bとドレンポート48とを連通させる第4環状凹部76dが形成される(図3の第2リフト状態参照)。またさらに、第1スプール40の第6ランド60fと下端部との間には、第2アウトレットポート46bとドレンポート48とを連通させる第5環状凹部76eが形成される(図1のリニアソレノイド部オフ状態参照)。
第1スプール40に近接する第2スプール42の上端部には、軸方向に沿って所定長だけ延在する窪み部64が形成され、前記窪み部64の底壁64aに第1ばね部材70の一端部が係着され、第1スプール40の第6ランド60fの側壁に前記第1ばね部材70の他端部が係着される。この場合、第2スプール42の窪み部64の内径は、第1スプール40の下端部の外径よりも大きく設定されており、第1スプール40の下端部は、第1ばね部材70を圧縮させながら第2スプール42の窪み部64に沿って挿入されると共に、前記窪み部64の底壁64aと当接可能に設けられている(図5及び図6参照)。
第2スプール42の外周面には、図7に示されるように、軸方向に沿って幅広な第7ランド60g及び第8ランド60hが半径外方向に向かって膨出形成されると共に、前記第7ランド60gと第8ランド60hとの間であって第2スプール42の略中央部には、第2インレットポート44bと第3アウトレットポート46cとを連通させる第6環状凹部76fが形成される(図3の第2リフト状態参照)。
バルブボデイ18の内壁には、図8に示されるように、空間部52に向かって突出し軸方向に沿って幅広な第1環状突出部78aと、軸方向に沿って幅狭な第2〜第7環状突出部78b〜78gとがそれぞれ形成され、前記第1〜第7環状突出部78a〜78gは、リニアソレノイド部12側からキャップ部材68側に向かって所定間隔だけ離間して順に配置される。
前記したように、第1スプール40の最大外径D1と第2スプール42の最大外径D2とが異なるように設定されているため、この最大外径の相違(D1<D2)に対応して、前記バルブボデイ18の空間部52に設けられた第1〜第7環状突出部78a〜78gの内径もそれぞれ異なるように設定される。すなわち、図8に示されるように、バルブボデイ18の略中央部を基点としてハウジング14側に近接する第1〜第5環状突出部78a〜78eの内径d1は、略中央部からキャップ部材68側に近接する第6環状突出部78f及び第7環状突出部78gの内径d2と比較して小さく設定されている(d1<d2)。
従って、バルブボデイ18の内径は、リニアソレノイド部12側からキャップ部材68側(バルブボデイの一端部側)に向かって小径から大径となるように形成されることにより、前記大径側からの空間部52の切削加工や第1スプール40、第2スプール42等の組付作業(後記する)を簡便に遂行することができる。また、図4及び図8に示されるように、バルブボデイ18の空間部52に設けられた第5環状突出部78eに隣接する部位には、リニアソレノイド部12がオフ状態のときに第2スプール42の上端部が当接してストッパとして機能する環状段差部80が設けられる。
なお、前記環状段差部80は、バルブボデイ18の内壁に形成され、第2スプール42の一端部(上端部)が当接する環状当接部として機能するものである。
本実施形態に係る電磁スプール弁装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
先ず、電磁スプール弁装置10の組み付け作業について説明する。
バルブボデイ18の内壁の内径は、リニアソレノイド部12側からキャップ部材68側(バルブボデイの一端部側)に向かって小径から大径となるように形成され、図9に示されるように、バルブボデイ18の大径側開口部18aから空間部52に沿って第1スプール40及び第1ばね部材70を装填し、続いて、第2スプール42及び第2ばね部材72をそれぞれ装填した後、キャップ部材68を圧入して、前記大径側開口部18aを閉塞する。
この場合、第1ばね部材70に係着する第2スプール42の一端部は、バルブボデイ18の内壁の略中央部に形成された環状段差部80に当接し(図9中の破線参照)、空間部52内で所定位置に位置決めされる。従って、第1スプール40が組み付け時に空間部52内である程度フリー状態であっても、第2スプール42が第2ばね部材72の押圧力によって環状段差部80に当接した位置で保持されるため、組み付け作業が容易となって組み付け性を向上させることができる。
なお、バルブボデイ18の小径側開口部18bは、予めユニット化して構成されたリニアソレノイド部12の端面薄肉部を内側に加締めることにより(図1乃至図3参照)、バルブボデイ18とハウジング14とが一体的に結合されて閉塞される。
次に、電磁スプール弁装置10の動作について説明する。
リニアソレノイド部12の非通電時には、図1に示されるように、前記リニアソレノイド部12の電磁力(電磁推力)が何ら発生しないため(電磁推力F=0)、第1スプール40は、第1ばね部材70のばね力(L1)によってリニアソレノイド部12側に向かって押圧された状態にあると共に、第2スプール42は、第2ばね部材72のばね力(L2)によって第1スプール70側に向かって押圧され、前記第2スプール42の上端部が環状段差部80に当接して上方への変位が規制された状態にある。
従って、リニアソレノイド部12のオフ状態では、図1に示されるように、第1スプール40の外周面に形成された第2環状凹部76bによって、第1インレットポート44aと第1アウトレットポート46aとが連通した状態にあり、第1インレットポート44aから導入された圧油が第2環状凹部76b及び第1アウトレットポート46a(OUT1)を経由して他の部材54に供給される。
同時に、リニアソレノイド部12のオフ状態では、図1に示されるように、第1スプール40の下端部分と第2スプール42の上端部分とが重畳する。従って、第2アウトレットポート46bは、第1スプール40の第5環状凹部76eを介してドレンポート48と連通した状態にあり、第2アウトレットポート46bに残存する圧油がドレンポート48から排出される。
図1に示されるリニアソレノイド部12のオフ状態では、第2スプール42の外周面に形成された第8ランド60hとバルブボデイ18の第7環状突出部78gとが当接し、第2インレットポート44bと第3アウトレットポート46cとが非連通状態にある。
このように、リニアソレノイド部12のオフ状態では、第1ばね部材70のスプリング荷重L1が第2ばね部材72のスプリング荷重L2よりも小さく設定されていると共に、前記リニアソレノイド部12の電磁推力Fが零で第1ばね部材70のスプリング荷重L1よりも小さくなっているため、可動コア22が最上端の原位置にある(F<L1<L2、F=0)。
続いて、図示しない電流値切換装置によって所定の中間電流をリニアソレノイド部12に流すことにより、リニアソレノイド部12に対して通電された第1リフト状態となる。この第1リフト状態では、図2に示されるように、コイル26へ流れる電流値に比例した電磁力(電磁推力F1)によって可動コア22が固定コア20側に向かって吸引され、前記可動コア22が中間位置で停止する。
すなわち、可動コア22及びシャフト34の変位が第1スプール40に伝達され、前記第1スプール40が第1ばね部材70のばね力(L1)に抗して第2スプール42側に向かって接近する方向に変位し、第1スプール40の下端部が第2スプール42の窪み部64の底壁64aに当接することによってその変位が規制される(図5参照)。
従って、図2に示されるように、第1スプール40の第3ランド60cとバルブボデイ18の第3環状突出部78cとが当接して第1インレットポート44aと第1アウトレットポート46aとの連通状態が遮断されると共に、第1スプール40の外周面に形成された第3環状凹部76cによって第1インレットポート44a及び第2アウトレットポート46b間が連通した状態に弁位置が切り換えられる。この結果、第1インレットポート44aから導入された圧油は、第3環状凹部76c及び第2アウトレットポート46b(OUT2)を経由して他の部材54に供給される。
同時に、図5に示されるように、第1スプール40の下端部分と第2スプール42の上端部分との重畳部位において、第1スプール40の第2連通孔62bと第2スプール42の第3連通孔62cとが略水平方向でラップする。従って、図2に示されるように、第1アウトレットポート46aは、第1スプール40の第1連通孔62a、長孔58、第2連通孔62b、第2スプール42の第3連通孔62cを経由してドレンポート48と連通した状態となり、前記第1アウトレットポート46aに残存する圧油がドレンポート48から好適に排出される。
所定の中間電流がリニアソレノイド部12に通電された第1リフト状態では、第1ばね部材70のスプリング荷重L1よりも大きく、且つ、第2ばね部材72のスプリング荷重L2よりも小さい電磁推力F1がリニアソレノイド部12で発生するため、可動コア22が中間位置で停止する(L1<F1<L2)。従って、リニアソレノイド部12で発生する電磁推力F1によって第1スプール40のみを押圧して変位させることができるが、第2スプール42を押圧して変位させることはできない。
この結果、第1リフト状態では、第1スプール40のみが変位して第2スプール42に当接してその変位が規制されると共に、第2スプール42はそのまま原位置に停止した状態にある。
次に、図示しない電流値切換装置によって所定の大電流をリニアソレノイド部12に流すことにより、リニアソレノイド部12に対して通電された第2リフト状態となる。この第2リフト状態では、図3に示されるように、コイル26へ流れる電流値に比例した電磁力(電磁推力F2)によって可動コア22が固定コア20側に向かってさらに吸引され、前記可動コア22が最下端位置(変位終端位置)で停止する。
すなわち、可動コア22及びシャフト34のさらなる変位が第1スプール40を通じて第2スプール42に伝達され、前記第2スプール42が第2ばね部材72のばね力(L2)に抗してキャップ部材68側に向かって接近する方向に変位する。
従って、図3に示されるように、第1スプール40の第4ランド60dとバルブボデイ18の第4環状突出部78dとが当接して第1インレットポート44aと第2アウトレットポート46bとの連通状態が遮断されると共に、第1スプール40の外周面に形成された第1環状凹部76aによって第1インレットポート44a及び第1アウトレットポート46a間が連通した状態に弁位置が切り換えられる。同時に、第2スプール42の外周面に形成された第6環状凹部76fを介して第2インレットポート44bと第3アウトレットポート46cとが連通状態となる。
この結果、第1インレットポート44aから導入された圧油が第1環状凹部76a及び第1アウトレットポート46a(OUT1)を経由して他の部材54に供給されると共に、第2インレットポート44bから導入された圧油が第6環状凹部76f及び第3アウトレットポート46c(OUT3)を経由して他の部材54に供給される。
第2アウトレットポート46bは、第1スプール40の外周面に形成された第4環状凹部76dを介してドレンポート48と連通した状態となり、前記第2アウトレットポート46bに残存する圧油がドレンポート48から好適に排出される。
この場合、図6に示されるように、第2スプール42の上端面と第1スプール40の下端部側に形成された第6ランド60fの側壁面とが略同一の高さHに設定されているため、第2アウトレットポート46bからドレンポート48への圧油の流れを円滑にすることができる。
また、図6に示されるように、第2スプール42には、軸方向に沿って貫通する段付き貫通孔66が設けられているため、第2スプール42の下端部とキャップ部材68との間に存在する圧油は、前記段付き貫通孔66、第2連通孔62b及び第3連通孔62cを経由して、ドレンポート48から好適に排出することができる。
所定の大電流がリニアソレノイド部12に通電された第2リフト状態では、第1ばね部材70のスプリング荷重L1よりも大きく、さらに、第2ばね部材72のスプリング荷重L2よりも大きい電磁推力F2がリニアソレノイド部12で発生することにより、可動コア22が最下端位置(変位終端位置)で停止する(L1<L2<F2)。従って、リニアソレノイド部12で発生する電磁推力F2によって第1スプール40及び第2スプール42をそれぞれ略同時に押圧して変位させることができる。
この結果、第2リフト状態では、リニアソレノイド部12で発生する電磁推力F2によって、第1ばね部材70及び第2ばね部材72のスプリング荷重L1、L2にそれぞれ抗して、第1スプール40及び第2スプール42をそれぞれ同軸状に変位させることにより、第1インレットポート44aと第1アウトレットポート46aとを相互に連通させると共に、第2インレットポート44bと第3アウトレットポート46cとを相互に連通させて、第1アウトレットポート46a(OUT1)及び第3アウトレットポート46c(OUT3)を通じて他の部材54に圧油を供給することができる。
このように、本実施形態では、リニアソレノイド部12のオフ状態(図1参照)と、リニアソレノイド部12に中間電流を通電した第1リフト状態(図2参照)と、リニアソレノイド部12に大電流を通電した第2リフト状態(図3参照)との3段階の状態に確実に高精度に切換制御することができる。
また、本実施形態では、第1〜第3アウトレットポート46a〜46cからなる3つのポートに対し、共通化された単一のドレンポート48を設けているため、通常の場合(出力ポートが3つであれば、ドレンポートが2つ以上)と比較して前記ドレンポート48の個数を減少させることができる。
さらに、本実施形態では、図6に示されるように、バルブボデイ18の空間部52内に同軸状に配置された第1スプール40の下端部分と第2スプール42の上端部分とが重畳するように設けられているため、ドレンポート48の軸方向の長さを短縮してバルブボデイ18の軸方向寸法をより一層短縮することができる。
次に、本実施形態と同様に油圧を3段階に切り換えることが可能な比較例を図13に示す。この比較例では、3ポート2位置電磁弁100(以下、3方弁100という)と2ポート2位置電磁弁110(以下、2方弁110という)からなる2つの電磁弁を組み合わせることによって油圧を3段階に切換制御している。
比較例に係る弁装置の動作を概略説明すると、図13(a)では、3方弁100及び2方弁110をそれぞれオフ状態とすることにより、3方弁100のOUT1からのみ圧油を導出させている。図13(b)では、3方弁100をオン状態とすると共に、2方弁110をオフ状態とすることによって、3方弁100のOUT2からのみ圧油を導出させている。図13(c)では、3方弁100をオフ状態とすると共に、2方弁110をオン状態とすることによって、3方弁100のOUT1から圧油を導出させると同時に2方弁110のOUT3から圧油を導出させている。
このように、3方弁100と2方弁110との2つの電磁弁を組み合わせて油圧を3段階の状態に切換制御する比較例では、電磁弁を2個使用するため(ソレノイド部も2個となる)、弁ボデイが大型化して重量が増大すると共に、コストが高騰するという不具合がある。
これに対して、本実施形態では、単一の本体部(ハウジング14及びバルブボデイ18の結合体)内に第1スプール40及び第2スプール42を同軸状に配設して連動させ、さらに、スプリング荷重がそれぞれ異なる第1ばね部材70及び第2ばね部材72を配設する構成を採用することにより、前記比較例と比較して、装置全体の小型・軽量化を達成することができると共に、コストを低減することができる。
なお、本実施形態では、第1〜第3アウトレットポート46a〜46cからなる3つのアウトレットポートを設けるようにしたが、もう1つアウトレットポート(図示せず)を増やして4つのアウトレットポートを設けるようにしてもよい。
次に、本発明の他の実施形態に係る電磁スプール弁装置10aについて以下説明する。なお、他の実施形態に係る電磁スプール弁装置10aの動作説明に関し、前記実施形態に係る電磁スプール弁装置10の動作説明と一部重複する部分もあるが、理解を容易にするために省略しないで説明する。
図10は、本発明の他の実施形態に係る電磁スプール弁装置であって、図1に示すリニアソレノイド部のオフ状態から前記リニアソレノイド部に小電流が供給された状態を示す縦断面図である。
すなわち、他の実施形態に係る電磁スプール弁装置10aでは、図1に示されるリニアソレノイド部12のオフ状態と、図2に示される第1リフト状態との間に、オフ状態にある前記リニアソレノイド部12に対して小電流(微小電流)が供給される弁初期状態を設けている点で、前記実施形態と相違している。なお、可動コア22が中間位置にある第1リフト状態では、前記リニアソレノイド部12に対して弁初期状態の小電流よりも大なる中間電流が供給される。
リニアソレノイド部12の非通電時には、図1に示されるように、前記リニアソレノイド部12の電磁力(電磁推力)が何ら発生しないため(電磁推力F=0)、第1スプール40は、第1ばね部材70のばね力(L1)によってリニアソレノイド部12側に向かって押圧された状態にあると共に、第2スプール42は、第2ばね部材72のばね力(L2)によって第1スプール40側に向かって押圧され、前記第2スプール42の上端部が環状段差部80に当接して上方への変位が規制された状態にある。
従って、リニアソレノイド部12のオフ状態では、図1に示されるように、第1スプール40の外周面に形成された第2環状凹部76bによって、第1インレットポート44aと第1アウトレットポート46aとが連通した状態にあり、第1インレットポート44aから導入された圧油が第2環状凹部76b及び第1アウトレットポート46a(OUT1
)を経由して他の部材54に供給される。
同時に、リニアソレノイド部12のオフ状態では、図1に示されるように、第1スプール40の下端部分と第2スプール42の上端部分とが重畳する位置に、前記第1スプール40及び第2スプール42が設定される。従って、第2アウトレットポート46bは、第1スプール40の第5環状凹部76eを介してドレンポート48と連通した状態にあり、第2アウトレットポート46bに残存する圧油がドレンポート48から排出される。
図1に示されるリニアソレノイド部12のオフ状態では、第2スプール42の外周面に形成された第8ランド60hとバルブボデイ18の第7環状突出部78gとが当接し、第2インレットポート44bと第3アウトレットポート46cとが非連通状態にある。
このように、リニアソレノイド部12のオフ状態では、第1ばね部材70のスプリング荷重L1が第2ばね部材72のスプリング荷重L2よりも小さく設定されていると共に、前記リニアソレノイド部12の電磁推力Fが零で第1ばね部材70のスプリング荷重L1よりも小さくなっているため、可動コア22が最上端の原位置にある(F<L1<L2、F=0)。
続いて、図示しない電流値切換装置(例えば、制御機構から導出される制御信号によって制御され、コイル26に電流を供給して前記コイル26を付勢する図示しないドライバ等)によって所定の小電流(例えば、微小電流)をリニアソレノイド部12に供給することにより、リニアソレノイド部12が弁初期状態となる。この弁初期状態では、図10に示されるように、オフ状態にあるリニアソレノイド部12に対して小電流が供給されても、前記第1スプール40及び第2スプール42は何ら変位することがなく、リニアソレノイド部12のオフ状態と同様な弁位置からなる弁初期状態に保持される。
すなわち、前記弁初期状態では、リニアソレノイド部12に対して小電流が供給されコイル26によって微小な電磁推力F0が発生するが、前記電磁推力F0は、第1ばね部材70のスプリング荷重L1及び第2ばね部材72のスプリング荷重L2よりも小さいF0<L1<L2の関係に設定されている。従って、前記リニアソレノイド部12の弁初期状態では、前記リニアソレノイド部12で発生する電磁推力F0が、前記第1ばね部材70のスプリング荷重L1及び前記第2ばね部材72のスプリング荷重L2よりも小さく設定されているため、第1スプール40及び第2スプール42に駆動力が伝達されることがなく、前記第1スプール40及び第2スプール42は、リニアソレノイド部12のオフ状態と同様に、第1スプール40の下端部分と第2スプール42の上端部分とが重畳する位置に設定される。
続いて、図示しない電流値切換装置によって電流値(I)を切換制御し前記小電流よりも大なる所定の中間電流をリニアソレノイド部12に供給することにより(図11参照)、リニアソレノイド部12が第1リフト状態となる。この第1リフト状態では、図2に示されるように、コイル26へ流れる電流値に比例した電磁力(電磁推力F1)によって可動コア22が固定コア20側に向かって吸引され、前記可動コア22が中間位置で停止する。
すなわち、可動コア22及びシャフト34の変位が第1スプール40に伝達され、前記第1スプール40が第1ばね部材70のばね力(L1)に抗して第2スプール42側に向かって接近する方向に変位し、第1スプール40の下端部が第2スプール42の窪み部64の底壁64aに当接することによってその変位が規制される(図6参照)。
従って、図2に示されるように、第1スプール40の第3ランド60cとバルブボデイ18の第3環状突出部78cとが当接して第1インレットポート44aと第1アウトレットポート46aとの連通状態が遮断されると共に、第1スプール40の外周面に形成された第3環状凹部76cによって第1インレットポート44a及び第2アウトレットポート46b間が連通した状態に弁位置が切り換えられる。この結果、第1インレットポート44aから導入された圧油は、第3環状凹部76c及び第2アウトレットポート46b(OUT2)を経由して他の部材54に供給される。
同時に、図6に示されるように、第1スプール40の下端部分と第2スプール42の上端部分との重畳部位において、第1スプール40の第2連通孔62bと第2スプール42の第3連通孔62cとが略水平方向でラップする。従って、図2に示されるように、第1アウトレットポート46aは、第1スプール40の第1連通孔62a、長孔58、第2連通孔62b、第2スプール42の第3連通孔62cを経由してドレンポート48と連通した状態となり、前記第1アウトレットポート46aに残存する圧油がドレンポート48から好適に排出される。
弁初期状態の小電流から電流値(I)が切り換えられて前記小電流よりも大なる所定の中間電流がリニアソレノイド部12に供給された第1リフト状態では、第1ばね部材70のスプリング荷重L1よりも大きく、且つ、第2ばね部材72のスプリング荷重L2よりも小さい電磁推力F1がリニアソレノイド部12で発生するため、可動コア22が中間位置で停止する(L1<F1<L2)。従って、リニアソレノイド部12で発生する電磁推力F1によって第1スプール40のみを押圧して変位させることができるが、第2スプール42を押圧して変位させることはできない。
この結果、第1リフト状態では、第1スプール40のみが変位して第2スプール42に当接してその変位が規制されると共に、第2スプール42はそのまま原位置に停止した状態にある。
他の実施形態では、弁初期状態から第1リフト状態に変位する際、リニアソレノイド部12に対して予め小電流が供給された状態にあるため、リニアソレノイド部12に対して何ら電流が供給されていないリニアソレノイド部12のオフ状態(図1参照)から第1リフト状態(図2参照)に変位した場合と比較して、弁初期状態から第1リフト状態へ迅速に移行することができ、切換制御時における弁動作の遅延を極力抑制して、弁作動応答性を向上させることができる。
換言すると、他の実施形態では、リニアソレノイド部12のオフ状態(図1参照)からリニアソレノイド部12の第1リフト状態(図2参照)へ直接的に移行することがなく、前記オフ状態と前記第1リフト状態との間に、リニアソレノイド部12へ微小電流を供給する準備段階(弁初期状態)を設けることにより、図11に示されるように、電流値切換時におけるパルス信号の立ち上がり波形を良好なものとして、弁作動応答性を向上させることができる。
次に、図示しない電流値切換装置によって電流値(I)を切換制御し前記中間電流よりも大なる所定の大電流をリニアソレノイド部12に供給することにより(図11参照)、リニアソレノイド部12の第2リフト状態となる。この第2リフト状態では、図3に示されるように、コイル26へ流れる電流値に比例した電磁力(電磁推力F2)によって可動コア22が固定コア20側に向かってさらに吸引され、前記可動コア22が最下端位置(変位終端位置)で停止する。
すなわち、可動コア22及びシャフト34のさらなる変位が第1スプール40を通じて第2スプール42に伝達され、前記第1スプール40及び第2スプール42が第2ばね部材72のばね力(L2)に抗してキャップ部材68側に向かって接近する方向に一体的に変位する。
従って、図3に示されるように、第1スプール40の第4ランド60dとバルブボデイ18の第4環状突出部78dとが当接して第1インレットポート44aと第2アウトレットポート46bとの連通状態が遮断されると共に、第1スプール40の外周面に形成された第1環状凹部76aによって第1インレットポート44a及び第1アウトレットポート46a間が連通した状態に弁位置が切り換えられる。同時に、第2スプール42の外周面に形成された第6環状凹部76fを介して第2インレットポート44bと第3アウトレットポート46cとが連通状態となる。
この結果、第1インレットポート44aから導入された圧油は、第1環状凹部76a及び第1アウトレットポート46a(OUT1)を経由して他の部材54に供給されると共に、第2インレットポート44bから導入された圧油は、第6環状凹部76f及び第3アウトレットポート46c(OUT3)を経由して他の部材54に供給される。第2アウトレットポート46bは、第1スプール40の外周面に形成された第4環状凹部76dを介してドレンポート48と連通した状態となり、前記第2アウトレットポート46bに残存する圧油がドレンポート48から好適に排出される。
この場合、図6に示されるように、第2スプール42の上端面と第1スプール40の下端部側に形成された第6ランド60fの側壁面とが略同一の高さHに設定されているため、第2アウトレットポート46bからドレンポート48への圧油の流れを円滑にすることができる。
また、図6に示されるように、第2スプール42には、軸方向に沿って貫通する段付き貫通孔66が設けられているため、第2スプール42の下端部とキャップ部材68との間に存在する圧油は、前記段付き貫通孔66、第2連通孔62b及び第3連通孔62cを経由して、ドレンポート48から好適に排出することができる。
第1リフト状態の中間電流から電流値(I)が切り換えられて前記中間電流よりも大なる所定の大電流がリニアソレノイド部12に供給された第2リフト状態では、第1ばね部材70のスプリング荷重L1よりも大きく、さらに、第2ばね部材72のスプリング荷重L2よりも大きい電磁推力F2がリニアソレノイド部12で発生することにより、可動コア22が最下端位置(変位終端位置)で停止する(L1<L2<F2)。従って、リニアソレノイド部12で発生する電磁推力F2によって第1スプール40及び第2スプール42をそれぞれ略同時に押圧して一体的に変位させることができる。
この結果、第2リフト状態では、リニアソレノイド部12で発生する電磁推力F2によって、第1ばね部材70及び第2ばね部材72のスプリング荷重L1、L2にそれぞれ抗して、第1スプール40及び第2スプール42をそれぞれ同軸状に変位させることにより、第1インレットポート44aと第1アウトレットポート46aとを相互に連通させると共に、第2インレットポート44bと第3アウトレットポート46cとを相互に連通させて、第1アウトレットポート46a(OUT1)及び第3アウトレットポート46c(OUT3)を通じて他の部材54に圧油を供給することができる。
このように、他の実施形態では、リニアソレノイド部12のオフ状態(図1参照)及び弁初期状態(図10参照)と、リニアソレノイド部12に中間電流を供給した第1リフト状態(図2参照)と、リニアソレノイド部12に大電流を供給した第2リフト状態(図3参照)との3段階の状態に確実に高精度に切換制御することができる。
なお、他の実施形態では、図示しない電流値切換装置によってリニアソレノイド部12に通電される電流値(I)を、小電流、中間電流、大電流に順次切り換えた状態(図11参照)を例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図12に示されるように、弁初期状態の小電流からいきなり第2リフト状態の大電流に電流値(I)を切り換えることが可能である。
また、前記とは逆に、リニアソレノイド部12に通電される電流値(I)を減少させる方向に、例えば、大電流、中間電流、小電流に順次切り換えることや、大電流からいきなり小電流に切り換えることができる。このように、他の実施形態では、図示しない電流値切換装置によってリニアソレノイド部12に通電される電流値(I)を、小電流と中間電流と大電流との3つの電流値間で自在に切り換えることができる。